JP4699341B2 - 疲労限度比に優れた高強度熱間鍛造非調質鋼部品 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車などの輸送機器、建設機械、その他の産業機械などの部品として使用される熱間鍛造鋼部品に関し、特に、熱間鍛造後に熱処理を行なわなくても(非調質)、高い疲労限度比と高強度を有する熱間鍛造非調質鋼部品に関するものである。本発明の熱間鍛造非調質鋼部品は、特に、歯車、シャフト類、軸付き歯車などに好適に用いられる。
自動車、建設機械、その他の各種産業機械に用いられる機械部品であって、特に高強度が要求される機械部品は、通常、熱間鍛造後に、焼入れ−焼戻しなどの熱処理(いわゆる調質処理)を施して必要な機械特性を付与して製造される。しかしながら、低コスト化や製造効率などの観点から、熱間鍛造まま(非調質)でも、所望の機械的特性、特に、強度と疲労限度比に優れた機械部品の提供が切望されている。
強度向上の観点からは、例えば、C量を高めることが考えられるが、被削性が低下するといった問題がある。
そこで、鋼中にTi、Nb、Vなどの析出強化元素を添加して疲労強度[特に、疲労限度比(=疲労強度/引張強度)]の改善を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1および特許文献2)。しかしながら、特許文献1の方法では、高い疲労限度比を達成できるが引張強度は850MPa程度と低く、一方、特許文献2の方法では、高い引張強度を確保できるが疲労限度比が低下するといった問題がある。
特開昭62−167855号公報 特許第3485805号公報
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、熱間鍛造まま(非調質)でも、引張強度と疲労限度比の両方に優れた熱間鍛造非調質鋼部品を提供することにある。
上記課題を解決することのできた本発明に係る疲労限度比に優れた高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、(1)鋼中成分は、C:0.10〜0.50%(質量%の意味、以下同じ。)、Si:0.05〜2%、Mn:0.3〜3%、Al:0.005〜0.1%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.5%以下(0%を含まない)、O:0.003%以下(0%を含まない)、N:0.02%以下(0%を含まない)を含有し、更に、Nb,Ti,Vのうち、少なくともNb及び/又はTiを含み、Vを含んでいても良く、Nbを含む場合は、Nb:0.2%以下(0%を含まない)であり、Tiを含む場合は、Ti:0.20%以下(0%を含まない)、N:0.010%未満(0%を含まない)、およびTi/N≧3.4をすべて満足し、Vを含む場合は、V:0.6%以下(0%を含まない)であり、残部:Feおよび不可避不純物を満足し、且つ、(2)フェライト中に、Nb及び/又はTi含有析出物(Vを更に含んでいてもよい)を含有し、且つ、下式(1)で表されるMP値がMP≧0.05を満たす径15nm以下の前記析出物を下記手順に従って測定したとき、前記析出物を50個/μm2以上含有するところに要旨を有している。
MP=[{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]/[{[V]/51}+{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]・・・(1)
式中、[ ]は、前記析出物中に含まれる元素の含有量(質量%)を意味する。
(ア)10%アセチルアセトン、80%メタノール、および10%塩化テトラメチルアンモニウムを含有する電解液を用い、TEM観察用の抽出レプリカを作製する。
(イ)次に、抽出レプリカ法で処理した試料を、倍率10万倍でTEM観察し、任意に、粒径が15nm以下の析出物20個を測定した後、当該析出物中に含まれるTi、Nb、VをEDX分析する。
(ウ)次いで、前述した式(1)に基づき、各析出物のMP値を算出する。これにより、TEM観察(10万倍)によって同定された上記析出物(合計20個)中、MP≧0.05を満足する析出物の個数が得られるので、全析出物中、MP≧0.05を満足する析出物の比率を算出しておく(この比率を「X」とする)。
(エ)次に、任意の領域について、TEMにて倍率15万倍で20視野分の写真(20視野の合計面積0.75μm 2 )を撮影し、粒径15nm以下の析出物の個数を算出する。このようにして得られた析出物の個数(20視野分の合計個数)を、1μm 2 当たりの個数に換算する(この個数を「Y」とする)。
(オ)最後に、このようにして得られたY(粒径15nm以下の析出物の個数/μm 2 )に、前述したX(全析出物中、MP≧0.05を満足する析出物の比率)を乗じることによって、MP≧0.05を満足する超微細析出物の個数を得る。
好ましい実施形態において、上記の高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、更に、Mo:1%以下、及び/又はB:0.015%以下を含有する。
好ましい実施形態において、上記の高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、更に、Ni:2%以下、Cu:2%以下、およびCr:3%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
好ましい実施形態において、上記の高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、更に、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、およびREM:0.02%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
好ましい実施形態において、上記の高強度熱間鍛造非調質鋼部品は、更に、Zr:0.1%以下、Ta:0.1%以下、およびHf:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する。
本発明によれば、熱間鍛造まま(非調質)でも、引張強度と疲労限度比の両方に優れた熱間鍛造非調質鋼部品を提供することができた。
本発明者は、Ti、Nb、Vなどの析出強化元素添加による疲労強度改善技術において、更に、引張強度を必要以上に高くすることなしに疲労限度比を一層高めることを目的として鋭意検討してきた。その結果、(a)フェライト中に、ナノレベル(具体的には、径15nm以下)のNb及び/又はTi含有析出物を多数含有するものや、更にVを含む前記Nb及び/又はTi含有析出物では当該析出物中にNb及び/又はTiを一定量以上含有する(具体的には、後記するMP≧0.05)ものは、所望の特性が達成されること、(b)このような部品を得るためには、特に、鍛造前の加熱条件を1250℃以上で1時間以上とし、高温で長時間加熱保持することが極めて重要であり、且つ、鍛造後の冷却条件(平均冷却速度)を適切に制御することが必要であることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明に到達した経緯を説明する。以下では、説明の便宜上、径15nm以下のNb及び/又はTi含有析出物を「ナノサイズの超微細析出物」、あるいは単に「超微細析出物」と呼ぶ場合がある。上記のNb及び/又はTi含有析出物は、Vを更に含有しても良いし、含有しなくてもよい。両者を区別するため、Vを含有する上記析出物を特に「V含有超微細析出物」などと呼び、Vを含有しない上記析出物を特に「V非含有超微細析出物」などと呼ぶ場合がある。
一般に、析出強化は、加熱時に固溶したVなどの析出強化元素が、鍛造後の冷却時のフェライト変態時に、フェライト中に微細に多数析出することによって得られる。析出強化に寄与する析出物は、主に、NaCl型の結晶構造を有するMX型化合物(M=Metallic elements、X=carbonまたはnitrogen)であり、例えば、鋼中にTi,Nb、Vの析出強化元素を含む場合は、(Ti、Nb、V)(C、N)析出物が生成し、鋼中にTi,Nbの析出強化元素を含む場合は、(Ti、Nb)(C、N)析出物が生成する。ところが、析出強化元素を一定量以上添加すると上記作用は飽和してしまい、更なる特性改善(特に高強度化)を図ることは困難であった。
そこで、本発明者は、析出強化作用が飽和する原因を追究した。その結果、析出強化作用を一層高めるために析出強化元素の添加量を多くしても、鍛造後の冷却時に、フェライト中ではなくオーステナイト中でMX型析出物が析出してしまうために所望の特性が得られないこと、また、フェライト中で析出した場合でも析出後の粒成長が著しく速くなるため、MX型析出物が粗大に成長してしまい、析出強化作用が低減し、所望の高強度化を達成できないことを突き止めた。上記知見に基づき、本発明者は更に検討を重ねた。その結果、オーステナイト域での析出を抑制してフェライト中で上記析出物を微細に多数析出させるためには、鍛造前の加熱条件および鍛造後の冷却条件を適切に制御することが有効であり、特に、鍛造前の加熱条件を従来よりも高温で且つ長時間保持する必要があることを見出した。そして、このようにして得られた析出物を詳細に観察すると、(a)従来よりも一層微細なナノサイズの超微細析出物が多数析出していること、(b)特に、Vを含有する超微細析出物では、当該V含有超微細析出物中にNb及び/又はTiが一定量以上含まれていることが判明した。すなわち、これらの超微細析出物が、強度と疲労限度比の向上に大きく寄与していると考えられる。V含有超微細析出物において、上記(b)のように制御されていることによって特性が向上する理由は、詳細には不明であるが、V超微細析出物中に所定量のNb及び/又はTiが存在すると、(i)Nb及び/又はTiは、Vに比べて拡散速度が遅いために粒成長が抑制され、所望とするナノサイズの超微細析出物を多数確保でき、高強度化を達成できると共に、(ii)フェライトとの整合性が悪くなり、疲労限度比の改善も達成できるためと推察される。
本明細書において、「高強度」とは、熱間鍛造後の引張強度が約900MPa以上1300MPa未満のものを意味する。
また、本明細書において、「疲労限度比が高い」とは、熱間鍛造後、疲労強度/引張強度の比で表される疲労限度比が、おおむね、0.30以上(好ましくは、0.33以上)のものを意味する。
以下、本発明の熱間鍛造非調質鋼部品について詳しく説明する。
はじめに、本発明を最も特徴付けるナノサイズの超微細析出物について説明する。
本発明の非調質鋼部品は、フェライト中に、Nb及びTiの少なくとも一種を含有する析出物を含んでいる。上記の析出物は、Vを更に含んでいてもよい。Vは選択成分である。前述したように、Nb,Ti,Vは、いずれも、析出強化元素として有用であり、フェライト中にMX型化合物として存在することによって所望の特性が確保される。
以下、V含有超微細析出物、V非含有超微細析出物について、それぞれ、説明する。
(V含有超微細析出物)
まず、V含有超微細析出物について説明する。V含有超微細析出物は、(Ti、Nb、V)(C、N)析出物として表わすことができ、具体的には、例えば、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物、Ti炭化物、Ti窒化物、Ti炭窒化物、Nb−Ti複合炭化物、Nb−Ti複合窒化物、Nb−Ti複合炭窒化物、Nb−V炭化物、Nb−V窒化物、Nb−V炭窒化物、Ti−V炭化物、Ti−V窒化物、Ti−V炭窒化物、Nb−Ti−V複合炭化物、Nb−Ti−V複合窒化物、Nb−Ti−V複合炭窒化物が挙げられる。これらのうち少なくとも一種を含んでいるものはすべて、本明細書における「V含有超微細析出物」に包含される。また、本発明における析出物の存在形態は、特に限定されず、例えば、上記のNb炭化物などが単独で存在しても良いし、あるいは、上記のNb炭化物に他の析出物(例えば、Al窒化物など)が結合した状態で存在しても良い。また、CrやMoを更に含有する場合は、CrやMoを含む炭化物や炭窒化物などとして存在してもよい。
V含有超微細析出物の場合、フェライト中に、下式(1)で表されるMPの値がMP≧0.05を満たす径15nm以下の上記超微細析出物を50個/μm2以上含んでいる。後に詳述する測定方法により、フェライト中に存在するMP≧0.05で且つ径≦15nmの超微細析出物の個数を測定したとき、これらの要件をすべて満足する超微細析出物の個数が50個/μm2以上であれば、高強度だけでなく、高い疲労限度比も得られることが判明した(後記する実施例を参照)。本発明によれば、上記のようにナノサイズの超微細析出物を多数析出させることによって強度の向上を図ることができ、且つ、上記のようにMP値を制御することによって疲労限度比も一層高められるようになる。高強度化に加え、高い疲労限度比も確保するためには、ナノサイズの超微細析出物を多数析出させるだけでは不充分であり、MP値が上記範囲を満足することが必要であって、MP値が上記範囲を有しないナノサイズの超微細析出物を多数析出させたときは、高強度化を確保できても高い疲労限度比は得られないことを実験によって確認している。
MP=[{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]/[{[V]/51}+{[Nb]/93}+{[Ti]/48}] ・・・ (1)
式中、[ ]は、前記析出物中に含まれる元素の含有量(質量%)を意味する。
上式(1)で表されるMPは、Metallic elements(注:MX型化合物のM) Precipitateの略である。上式に示すように、Ti、Nb、Vの各元素は、すべて、原子割合で表されており、式中、分母、すなわち、[{[V]/51}+{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]は、フェライト中に存在する超微細析出物(MX型化合物)におけるM(ここでは、Ti,Nb,V)の原子割合の合計を意味し、分子、すなわち、[{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]は、Ti、Nbの原子割合の合計を意味している。すなわち、MP値は、Vを必須成分として含有するV含有超微細析出物において、高強度および高い疲労限度比の実現に有効なTi、Nbが当該V含有超微細析出物中に含まれる原子比を規定したものであり、Ti、Nbによる上記作用を有効に発揮させるための要件として、MP≧0.05を規定した。これは、V含有超微細析出物において、全超微細析出物中のTi,Nbの原子比が5%以上(MP≧0.05)であれば、結晶粒の成長(拡散)が阻害され、所望とする特性を確保することができるという経験的知見に基づいている。
MP値が大きいほど、すなわち、上記のV含有超微細析出物中に占めるNb及び/又はTiの原子割合が大きいほど、上記作用は顕著に発揮されるようになる。好ましいMPの値は、鋼中に含まれる上記成分の量などによっても相違するが、おおむね、0.10以上であることが好ましく、0.15以上であることがより好ましい。
次に、MP≧0.05を満足する超微細析出物の個数の測定方法について説明する。本発明では、透過型電子顕微鏡(transmission electron microscope、TEM)観察によって析出物を同定し、エネルギー分散型X線分析装置(Energy Dispersive X-ray、EDX)によって析出物中の元素分析を行ない、MP値を測定している。以下に詳述するように、本発明では、TEM観察の倍率を変えて(はじめは10万倍→次は15万倍)析出物を観察・分析しているが、これは、EDX分析に多くの時間を要することを考慮し、測定効率を高める目的で便宜的に行なったものである。
(TEM観察用抽出レプリカの作製)
まず、熱間鍛造後の試料を用い、D/4(Dは直径または厚み)位置から、TEM観察用の抽出レプリカを作製する。具体的には、試料が円柱状の場合、高さ方向の中央部のD/4位置(D:直径)から抽出レプリカを作製し、試料が角形状または板状の場合、長手方向および幅方向の中央部のD/4位置(D:厚み)から、抽出レプリカを作製する。抽出レプリカは、下記(a)〜(e)の手順に添って行った。
(a)10%アセチルアセトン、80%メタノール、および10%塩化テトラメチルアンモニウムを含有する電解液を用い、試料を電解腐食する。
(b)試料の表面にカーボンを蒸着させる。
(c)サンプル平面上に2〜3mm角の碁盤目状の切れ目を入れる。
(d)上記の電解液で電解腐食させ、カーボンを浮上させる。
(e)アルコール中に保存して観察に用いる。
(倍率10万倍でTEM観察およびEDX分析)
次に、抽出レプリカ法で処理した試料を、倍率10万倍でTEM観察し、任意に、径が15nm以下の析出物20個を測定した後、当該析出物中に含まれるTi、Nb、VをEDX分析する。後記する実施例では、TEMとして日立製作所製「H−800」の透過型電子顕微鏡を使用している。なお、径は、下式に基づき、円相当径に換算したものである。
次いで、前述した式(1)に基づき、各析出物のMP値を算出する。これにより、TEM観察(10万倍)によって同定された上記析出物(合計20個)中、MP≧0.05を満足する析出物の個数が得られるので、全析出物中、MP≧0.05を満足する析出物の比率を算出しておく(この比率を「X」とする)。
(倍率15万倍でTEM観察および写真撮影)
次に、任意の領域について、TEMにて倍率15万倍で20視野分の写真(20視野の合計面積0.75μm2)を撮影し、径15nm以下の析出物の個数を算出する。このようにして得られた析出物の個数(20視野分の合計個数)を、1μm2当たりの個数に換算する(この個数を「Y」とする)。
(MP≧0.05を満足する超微細析出物の個数の算出)
最後に、このようにして得られたY(径15nm以下の析出物の個数/μm2)に、前述したX(全析出物中、MP≧0.05を満足する析出物の比率)を乗じることによって、MP≧0.05を満足する超微細析出物の個数を得た。
本発明では、更に、フェライト中に、MP値≧0.05を満足するV含有超微細析出物であって、径15nm以下の上記超微細析出物が50個/μm2以上存在することが必要である。このように、ナノサイズの超微細析出物がフェライト中に多数存在することによって、析出強化元素による強度向上作用を有効に発揮させつつ、高い疲労限度比も確保することができる(後記する実施例を参照)。
上記V含有超微細析出物のサイズは、径が15nm以下であれば良い。径は小さいほど良く、おおむね、10nmであることが好ましい。
また、上記V含有超微細析出物の個数は、50個/μm以上であれば良く、多いほど、所望の特性が有効に発揮される。上記超微細析出物の個数は、おおむね、100個/μm以上であることが好ましく、200個/μm以上であることがより好ましい。
本発明では、フェライト組織中に観察されるV含有超微細析出物を測定している。本発明の非調質鋼部品は、フェライト組織を主とするフェライト−パーライト組織から構成されるが、フェライト組織に限定したのは、当該V含有超微細析出物がフェライト組織中に存在しないと、所望の特性が有効に発揮されないからである。
(V非含有超微細析出物)
次に、V非含有超微細析出物について説明する。V非含有超微細析出物は、(Ti、Nb)(C、N)析出物として表わすことができ、具体的には、例えば、Nb炭化物、Nb窒化物、Nb炭窒化物、Ti炭化物、Ti窒化物、Ti炭窒化物、Nb−Ti複合炭化物、Nb−Ti複合窒化物、Nb−Ti複合炭窒化物が挙げられる。これらのうち少なくとも一種を含んでいるものはすべて、本明細書における「V非含有超微細析出物」に包含される。また、本発明における析出物の存在形態は、特に限定されず、例えば、上記のNb炭化物などが単独で存在しても良いし、あるいは、上記のNb炭化物に他の析出物(例えば、Al窒化物など)が結合した状態で存在しても良い。また、CrやMoを更に含有する場合は、CrやMoを含む炭化物や炭窒化物などとして存在してもよい。
V非含有超微細析出物の詳細は、MP≧0.05の要件を除き、前述したV含有超微細析出物と同じであり、サイズや個数などは、上記の内容を参照すればよい。MP値は、上述したように、V含有超微細析出物において有用な要件であって、Vを含有しない場合、MP値は計算によって1となるため、MP≧0.05を必然的に満たすからである。
以上、本発明を特徴付ける析出物について説明した。
次に、鋼の化学成分を説明する。
C:0.10〜0.50%
Cは、パーライトを形成すると共に、Ti、Nb、Viと結合してMX型化合物を形成してフェライトを強化し、高強度化に寄与する元素である。所定の強度を確保するため、C量は、0.10%以上とする。ただし、C量が過剰になると、パーライト分率が増えすぎてフェライトによる析出強化量が低減し、かえって疲労限度比が低下するため、上限を0.50%とする。C量は、0.20%以上0.45%以下であることが好ましく、0.26%以上0.40%以下であることがより好ましい。
Si:0.05〜2%
Siは脱酸剤として作用するほか、固溶強化によってフェライトおよびパーライトを強化し、疲労限度比の向上に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Si量を0.05%以上とする。ただし、Si量が2%を超えると、冷却時にベイナイトなどの過冷組織が生成し、かえって疲労限度比の低下を招くため、上限を2%とする。Si量は、0.1%以上1.5%以下であることが好ましく、0.4%以上1.0%以下であることがより好ましい。
Mn:0.3〜3%
Mnは、変態温度を低下させることによってフェライトを微細化して強度や疲労限度比、更には靭性の改善に寄与する元素である。Mn量が0.3%未満では、焼入れ性改善作用が少なく、上記作用が有効に発揮されないため、下限を0.3%とする。ただし、Mn量が過剰になると、冷却時にベイナイトなどの過冷組織が生成し、かえって疲労限度比が低下するため、その上限を3%とする。Mn量の下限は、0.5%であることが好ましく、0.75%以上であることがより好ましい。また、Mn量の上限は、2.5%以下であることが好ましく、2.0%以下であることがより好ましく、1.8%以下であることがさらに好ましい。
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸剤として有用であり、そのために0.005%以上添加する。ただし、Al量が過剰になると、介在物が多く発生し、疲労特性、更には靭性が低下するため、上限を0.1%とした。Al量は、0.01%以上0.07%以下であることが好ましく、0.015%以上0.05%以下であることがより好ましい。
P:0.05%以下、O:0.003%以下
PおよびOは、いずれも、靭性を劣化させる元素であるため、極力低減することが好ましい。ここでは、特別な精錬処理による低減化を行なわなくても靭性を著しく劣化させない量の上限として、Pを0.05%、Oを0.003%とした。これらの元素は少ないほど良く、Pは、0.03%以下であることが好ましく、0.02%以下であることがより好ましく、0.015%以下であることが更に好ましい。また、Oは、0.002%以下であることが好ましく、0.0015%以下であることがより好ましい。
S:0.5%以下
Sは、MnSを形成して切削性改善に寄与する元素である。従って、切削性が要求される用途に使用する場合は、S量は、0.1%以上であることが好ましい。ただし、S量が過剰になると、靭性が劣化するため、上限を0.5%とする。S量は、0.2%以下であることが好ましい。なお、靭性が要求される場合には、S量は0.1%以下であることがより好ましい。
N:0.02%以下(0%を含まない)
Nは、Ti、Nb、V(更には、必要に応じて添加されるZr、Ta、Hf)と結合してMX型化合物を生成し、引張強度や疲労限度比の向上に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、N量は、0.0030%以上であることが好ましい。ただし、過剰に添加すると、粗大なMX型化合物が生成し、疲労特性が低下するため、上限を0.02%とする。N量は、おおむね、0.01%以下であることが好ましく、0.007%以下であることがより好ましく、0.0055%以下であることが更に好ましい。特には、析出強化元素としてTiを添加する場合は、後記するように、所望の超微細析出物が得られるよう、Ti量に応じてN量を適切に制御することが好ましい。
Nb,Ti,Vについて
これらの元素は、CやNと結合してMX型化合物を生成し、高強度化に寄与する元素である。このうち、NbやTiは、Vと異なって析出速度が非常に遅いため、NbやTiの添加により、フェライト中のMX型化合物の成長が著しく抑制され、所望とする超微細析出物が多数生成するようになる。従って、本発明では、少なくともNb及び/又はTiを含んでおり、Vは選択元素である。強度と疲労限度比の更なる向上といった観点からすれば、Vを含有していることが好ましく、Nb,Ti,Vをすべて含有していることが最も好ましい。以下、各成分について説明する。
Nbを含む場合はNb:0.2%以下
Nb添加による上記作用を有効に発揮させるためには、Nb量は、0.022%以上であることが好ましく、0.04%以上であることがより好ましい。ただし、過剰に添加すると、加熱時に固溶せずに未固溶のものが多くなり、粗大な化合物が析出しやすくなって当該粗大化合物が疲労の起点となり、疲労限度比が低下するため、上限を0.2%とする。Nb量の上限は0.1%であることが好ましく、0.08%以下であることがより好ましい。
Tiを含む場合は、Ti:0.20%以下、N:0.010%未満、およびTi/N≧3.4
Ti添加による上記作用を有効に発揮させるためには、上記のように、Ti量のみならず、N量と、TiとNの原子比を適切に制御する必要がある。Tiは、CよりもNとの反応性が強く、Nが0.01%以上含まれると粗大なTiNが凝固時に形成されるようになり、超微細析出物中に含まれるTi量が少なくなるためである。好ましくは、Ti:0.02%以上0.1%以下、N:0.0070%以下、Ti/N≧4.0であり、より好ましくは、Ti:0.04%以上0.08%以下、N:0.0055%以下、Ti/N≧5.0である。
なお、Nbは、Tiとは異なって前述した反応性の差は殆ど見られないため、Nb添加の場合は、N量と、NbとNの原子比を適切に制御する必要は特にない。
Vを含む場合は、V:0.6%以下
V添加による上記作用を有効に発揮させるためには、V量は、0.15%以上であることが好ましく、0.2%以上であることがより好ましい。ただし、過剰に添加すると、加熱時に固溶せずに未固溶のものが多くなり、粗大な化合物が析出しやすくなって当該粗大化合物が疲労の起点となり、疲労限度比が低下するため、上限を0.6%とする。V量の上限は0.5%であることが好ましく、0.4%以下であることがより好ましい。
本発明の高強度非調質熱間鍛造用鋼は、上記成分を含有し、残部:Feおよび不可避不純物である。
更に、本発明の非調質鋼部品は、他の特性改善などを目的として、下記の成分を含有しても良い。
Mo:1%以下、及び/又はB:0.015%以下
MoおよびBは、いずれも、変態温度を低下させることでフェライトを微細化して強度や疲労限度比の改善に寄与するほか、靭性の向上にも寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、Moを0.1%以上、Bを0.0003%以上添加することが好ましく、Moを0.2%以上、Bを0.0006%以上添加することがより好ましい。ただし、過剰に添加すると、冷却時にベイナイトなどの過冷組織が生成し、かえって疲労限度比が低下するため、上限を、Mo:1%、B:0.015%とすることが好ましい。より好ましい上限は、Mo:0.75%、B:0.005%であり、更に好ましい上限は、Mo:0.5%、B:0.0035%である。これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
Ni:2%以下、Cu:2%以下、およびCr:3%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
Ni、Cu、およびCrは、いずれも、強度向上作用を有し、更には、靭性改善にも寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、下限を、Ni:0.2%、Cu:0.2%、Cr:0.3%とすることが好ましい。より好ましい下限は、Ni:0.5%、Cu:0.5%、Cr:0.5%である。ただし、過剰に添加すると、上記作用が低下するため、上限を、Ni:2%、Cu:2%、Cr:3%とすることが好ましい。より好ましい上限は、Ni:1.5%、Cu:1.5%、Cr:2%であり、更に好ましい上限は、Ni:1.2%、Cu:1.2%、Cr:1.5%である。これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、およびREM:0.02%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
Ca、Mg、REMは、いずれも、硫化物を形成し、MnSの伸長を防いで靭性改善に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、上記元素の下限を、Ca:0.0005%、Mg:0.0002%、REM:0.0005%とすることが好ましい。ただし、過剰に添加すると、かえって靭性が低下するため、上限を、Ca:0.005%、Mg:0.005%、REM:0.02%とすることが好ましい。より好ましい上限は、Ca:0.003%、Mg:0.003%、REM:0.01%である。これらの元素は、単独で添加しても良いし、2種以上を併用しても良い。
本明細書において、REMは、ランタノイド元素(周期表において、LaからLnまでの合計15元素)に、Sc(スカンジウム)とY(イットリウム)とを加えた元素群を意味する。これらの元素のなかでも、La、CeおよびYよりなる群から選ばれる少なくとも1種の元素を含有することが好ましく、Laおよび/またはCeを含有することがより好ましい。また、溶鋼へ添加するREMの形態は特に限定されず、例えば、REMとして、純Laや純Ce,純Yなど、或いは純Ca,純Zr,純Ti、更にはFe−Si−La合金,Fe−Si−Ce合金,Fe−Si−Ca合金,Fe−Si−La−Ce合金,Fe−Ca合金,Ni−Ca合金などを添加すればよい。また、溶鋼へミッシュメタルを添加してもよい。ミッシュメタルとは、セリウム族希土類元素の混合物であり、具体的には、Ceを40〜50%程度,Laを20〜40%程度含有している。ただし、ミッシュメタルは不純物としてCaを含むことが多いので、ミッシュメタルがCaを含む場合は、Ca量は上記範囲を満足していることが好ましい。後記する実施例では、ミッシュメタルを添加している。
Zr:0.1%以下、Ta:0.1%以下、およびHf:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種
Zr、Ta、およびHfは、いずれも、Nと結合して安定な窒化物を形成する元素であり、加熱時のオーステナイト粒径の成長を抑制して超微細析出物の生成を促進し、特に、靭性改善に寄与する元素である。このような作用を有効に発揮させるため、上記元素の下限を、Zr:0.005%、Ta:0.005%、Hf:0.005%とすることが好ましい。ただし、過剰に添加すると、粗大な窒化物が生成し、疲労特性が低下するため、いずれの元素も、上限を0.1%とすることが好ましい。より好ましい上限は、いずれの元素も、0.05%であり、更に好ましい上限は、いずれの元素も、0.025%である。
以上、本発明の鋼中成分について説明した。
次に、図1を参照しながら、本発明に係る高強度非調質熱間鍛造用鋼の製造方法の一実施形態を説明する。図1には、製造工程順に、鋳造工程、分塊圧延工程、熱間圧延工程、熱間鍛造工程の概略が模式的に示されている。このうち、本発明を特徴付ける工程は、熱間鍛造工程である。図1の熱間鍛造工程には、参考のため、従来の代表的なヒートパターンを点線で示している。
以下、工程順に説明する。
まず、前述した成分組成を満たす鋼を溶製し、鋳造する。鋳造条件は、特に限定されず、通常、用いられる方法を採用すれば良い。後に詳しく説明するように、本発明では、熱間鍛造条件を適切に制御することによって所望の超微細析出物を確保するものだからである。ただし、より微細でより多くの析出物の生成を目的として、鋳造条件を適切に制御することも有効であり、例えば、鋳造時の平均冷却速度(鋳造品中心部の平均冷却速度)をできるだけ速く(おおむね、200℃/hr以上)することが好ましい。
鋳造後、分塊圧延を行なう。分塊圧延は、分塊圧延前の均熱処理を包含してもよい。分塊圧延条件は特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。具体的には、例えば、1100〜1200℃の温度で0.5〜1時間加熱することが好ましい。勿論、より微細でより多くの析出物確保を目指して、より高い温度でより長時間加熱しても良く、これにより、特に、NbやTiの固溶が分塊時に促進され、所望とする超微細析出物が多く得られるようになる。また、分塊圧延前に均熱処理を行う場合は、おおむね、前述した分塊圧延と同じ条件で実施することが好ましい。
分塊圧延後、熱間圧延を行なう。熱間圧延条件も特に限定されず、通常、用いられる方法を採用することができる。具体的には、例えば、900〜1100℃の温度で0.5〜1時間加熱することが好ましい。熱間圧延工程においても、前述した分塊圧延工程と同様、より高い温度でより長時間加熱しても良く、これにより、所望とする超微細析出物の生成が一層促進されるようになる。
熱間圧延後、熱間鍛造を行なう。熱間鍛造工程は、所望の超微細析出物を確保し、強度と疲労限度比の両方の特性を高めるために最も重要な工程である。具体的には、以下に詳述するように、熱間鍛造時の加熱条件および鍛造温度、更には、熱間鍛造後の冷却条件を適切に制御することが必要であり、これらをすべて満たす条件で製造したもののみが、所望の特性を備えている(後記する実施例を参照)。
まず、熱間鍛造時の加熱条件に関し、本発明では、1250℃以上の温度(図1中、T1)で1時間以上(図1中、t1)保持する。加熱時間(t1)は、当該加熱温度(T1)に達したときの保持時間を意味する。本発明の加熱パターンは、従来の代表的な加熱パターン(図1の点線部分)に比べ、温度が高く保持時間も長い。このように高温で長時間加熱保持することによって、析出強化元素であるNb、Ti、Vの固溶が促進され、特に、Vに比べて固溶し難いNbやTiの固溶が一層促進されるため、その後の冷却過程で析出する析出物へのNb、Tiの侵入が容易になり、結果的に、MP値が上昇するようになる。上記工程では、特に、加熱時間(t1)を適切に制御することが極めて重要であり、たとえ、加熱温度(T1)を1250℃以上に高めたとしても、加熱時間(t1)が1時間未満のものは、所望の特性が得られない(後記する図1を参照)。加熱温度(T1)は高いほど、保持時間(t1)は長いほど良い。例えば、加熱温度(T1)は1275℃以上が好ましく、1300℃以上がより好ましい。また、加熱時間(t1)は2時間以上がより好ましい。加熱温度の上限は特にされないが、設備などとの関係で、おおむね、1325℃とすることが好ましい。
加熱後の鍛造温度(図1中、T2)は、1100℃以上とする。鍛造温度を、従来に比べて高く設定することにより、析出強化に寄与しないオーステナイト中での析出物生成を抑制することができる。鍛造温度は高いほど良く、おおむね、1125℃以上であることが好ましく、1150℃以上であることがより好ましい。鍛造温度の上限は特に限定されず、通常、加熱温度(T1)以下となる。
上記のように鍛造を行なった後、冷却するが、本発明では、熱間鍛造後650℃までの範囲を約60℃/min以上の平均冷却速度(CR1)で冷却(急冷)した後、650〜500℃までの範囲を約10℃/min以下の平均冷却速度(CR2)で冷却(徐冷)する。このように、フェライト変態までの温度域を急冷することによってオーステナイト領域での粒成長が抑えられ、次いで、フェライト変態が完了するまでの温度域を徐冷することによってフェライト中への超微細析出物の生成が増大するため、最終的に、所望とする特性が有効に発揮されるようになる。CR1は大きいほど、CR2は小さいほど良いが、生産効率などとのバランスを考慮すれば、おおむね、CR1:80〜120℃/min、CR2:3〜8℃/minであることが好ましい。
上記のようにして鍛造を行なった後、切削等の機械加工によって所望の部品形状に成形し、鍛造部品とする。
以下、実施例を挙げて本発明の構成および作用効果をより具体的に説明するが、本発明は下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適切に変更を加えて実施することも可能であり、それらは何れも本発明の技術的範囲に含まれる。
(製造方法)
小型真空溶製炉を用いて表1に示すA〜Vの鋼(残部:鉄および不可避不純物)を溶製した後、鋳造した。次に、分塊均熱を模擬して、約1275℃で0.5時間加熱し、断面が155mm×155mmの鋼塊を得た。次いで、約1050℃で1時間加熱して熱間圧延を行なった後、表2に示す条件で、熱間鍛造を行ない、φ30mm×500mmの鍛造部品を得た。
(特性評価)
このようにして得られた鍛造部品(表2のNo.1〜29)を用い、前述した方法に基づいて、MP≧0.05を満たす平均粒径15nm以下の超微細析出物の個数を算出した。更に、以下のようにして引張強度および疲労限度を測定した。
引張強度は、JIS4号試験片を用い、JIS Z 2241に従って測定した。ここでは、引張強度が900MPa以上1300MPa未満のものを○(合格)、900MPa未満のものを×(不合格)とした。
疲労強度は、応力集中係数α=1.9の切り欠き付きの小野式回転曲げ疲労試験片を用い、表面の加工層の影響を取り除くために電解研磨を施した後、JIS Z 2274に記載の方法で疲労試験を行って測定した。疲労限度比は、疲労強度/引張強度の比で算出した。ここでは、疲労限度比が0.30未満のものを×(不合格)とし、0.30以上のものを○、0.33以上のものを◎(○および◎を合格)とした。
これらの結果を表2にまとめて示す。表2には、使用した鋼種(表1の鋼種)も併記している。また、表2に総合評価の欄を設け、下記基準で総合評価した。
×:強度および疲労限度比の少なくともいずれか一つが×
○:引張強度および疲労限度比の両方が○
◎:引張強度○、疲労限度比◎
表1に記載の鋼種のうち、鋼種A、C、F〜Sは、化学成分が本発明の範囲を満足する鋼であり、表1の鋼種B、D、E、T〜Vは、後に詳述するように、化学成分のいずれかが本発明の範囲を満足しない鋼である。また、本発明の範囲を満足する上記鋼種のうち、析出強化元素に着目して整理すると、鋼種A、G〜I、K〜SはNbおよびVを含有する(Tiなし)例、鋼種CはTiおよびVを含有する(Nbなし)例、鋼種FはTiとNbとVをすべて含有する例、鋼種JはTiのみを含有する(Nb、Vなし)例である。
表2より、以下のように考察することができる。
表2のNo.1〜8は、本発明の要件を満足する鋼種Aを用い、鍛造条件および鍛造後の冷却速度を変えて製造した例である。
このうち、No.3〜5は、いずれも、本発明で規定する条件で製造した本発明例であり、MP≧0.05を満たす所望の超微細析出物が多数生成しているため、強度および疲労限度比の両方に優れている。
これに対し、No.1は熱間鍛造時の加熱時間(t1)が短い例、No.2は熱間鍛造時の加熱温度(T1)が低い例、No.6は鍛造温度(T2)が低い例、No.7は鍛造後の冷却速度(CR1)が遅い例、No.8は鍛造後の冷却速度(CR2)が速い例であり、いずれも、所望とする超微細析出物の個数が少なく、疲労限度比が低下した。
参考のため、図1に、熱間鍛造時の加熱時間(t1)と疲労限度比との関係を示す。図1は、表2のNo.1、3、4の結果をプロットしたものであり、これらは、鍛造時の加熱時間(t1)を0.5〜2時間の間で変化させたこと以外、他の条件をすべて同じにして製造した例である。鍛造時の加熱温度(T1)は1275℃である。図1に示すように、鍛造時の加熱時間(t1)が1時間以上であれば、高い疲労限度比を確保できることが分かる。
次に、表2のNo.9〜29について考察する。
No.10、13〜26は、いずれも、本発明で規定する条件で製造した本発明例であり、MP≧0.05を満たす所望の超微細析出物が多数生成しているため、強度および疲労限度比の両方に優れている。
これに対し、No.9はNbおよびTiの両方を含有しない鋼種Bを用いた例、No.11はTi添加鋼であってTi/Nの比が低い鋼種Dを用いた例であり、いずれも、MP≧0.05を満たす超微細析出物が全く得られず、疲労限度比が低下した。
No.12は、Ti添加鋼であってN量が多い鋼種Eを用いた例であり、N量が多いため、粗大なTiNが生成して破壊の起点となり、疲労限度比が低くなった。
No.27はTi量が多い鋼種Tを用いた例、No.28はC量が多い鋼種Uを用いた例であり、疲労限度比が低下した。
No.29は、C量が少ない鋼種Vを用いた例であり、強度が低下した。なお、No.29は、強度が低いため、疲労強度および疲労限度比の測定は行なわなかった(表2中、「−」)。
図1は、本発明の製造方法の一実施態様を模式的に示す概略工程図である。 図2は、実施例1において、熱間鍛造時の加熱時間と疲労限度比との関係を示すグラフである。

Claims (5)

  1. (1)鋼中成分は、
    C :0.10〜0.50%(質量%の意味、以下同じ。)、
    Si:0.05〜2%、
    Mn:0.3〜3%、
    Al:0.005〜0.1%、
    P :0.05%以下(0%を含まない)、
    S :0.5%以下(0%を含まない)、
    O :0.003%以下(0%を含まない)、
    N :0.02%以下(0%を含まない)、
    Nb,Ti,Vのうち、少なくともNb及び/又はTiを含み、Vを含んでいても良く、
    Nbを含む場合は、Nb:0.2%以下(0%を含まない)であり、
    Tiを含む場合は、Ti:0.20%以下(0%を含まない)、N:0.010%未満(0%を含まない)、およびTi/N≧3.4をすべて満足し、
    Vを含む場合は、V:0.6%以下(0%を含まない)であり、
    残部:Feおよび不可避不純物を満足し、且つ、
    (2)フェライト中に、Nb及び/又はTi含有析出物(Vを更に含んでいてもよい)を含有し、且つ、下式(1)で表されるMP値がMP≧0.05を満たす径15nm以下の前記析出物を、下記手順に従って測定したとき、前記析出物を50個/μm2以上含有することを特徴とする疲労限度比に優れた高強度熱間鍛造非調質鋼部品。
    MP=[{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]/[{[V]/51}+{[Nb]/93}+{[Ti]/48}]・・・(1)
    式中、[ ]は、前記析出物中に含まれる元素の含有量(質量%)を意味する。
    (ア)10%アセチルアセトン、80%メタノール、および10%塩化テトラメチルアンモニウムを含有する電解液を用い、TEM観察用の抽出レプリカを作製する。
    (イ)次に、抽出レプリカ法で処理した試料を、倍率10万倍でTEM観察し、任意に、粒径が15nm以下の析出物20個を測定した後、当該析出物中に含まれるTi、Nb、VをEDX分析する。
    (ウ)次いで、前述した式(1)に基づき、各析出物のMP値を算出する。これにより、TEM観察(10万倍)によって同定された上記析出物(合計20個)中、MP≧0.05を満足する析出物の個数が得られるので、全析出物中、MP≧0.05を満足する析出物の比率を算出しておく(この比率を「X」とする)。
    (エ)次に、任意の領域について、TEMにて倍率15万倍で20視野分の写真(20視野の合計面積0.75μm 2 )を撮影し、粒径15nm以下の析出物の個数を算出する。このようにして得られた析出物の個数(20視野分の合計個数)を、1μm 2 当たりの個数に換算する(この個数を「Y」とする)。
    (オ)最後に、このようにして得られたY(粒径15nm以下の析出物の個数/μm 2 )に、前述したX(全析出物中、MP≧0.05を満足する析出物の比率)を乗じることによって、MP≧0.05を満足する超微細析出物の個数を得る。
  2. 更に、Mo:1%以下、及び/又はB:0.015%以下を含有する請求項1に記載の高強度熱間鍛造非調質鋼部品。
  3. 更に、Ni:2%以下、Cu:2%以下、およびCr:3%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1または2に記載の高強度熱間鍛造非調質鋼部品。
  4. 更に、Ca:0.005%以下、Mg:0.005%以下、およびREM:0.02%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜3のいずれかに記載の高強度熱間鍛造非調質鋼部品。
  5. 更に、Zr:0.1%以下、Ta:0.1%以下、およびHf:0.1%以下よりなる群から選択される少なくとも一種を含有する請求項1〜4のいずれかに記載の高強度熱間鍛造非調質鋼部品。
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