JP5035159B2 - 高強度鋼製粗形品およびその製造方法 - Google Patents
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ただし、CR=10/(ID1.5)
ID={0.36+0.46×(C−0.4)}×(1+0.70×Si)
×(1+3.3×Mn)×(1+2.2×Cr)×(1+3.0×Mo)
×(1+0.36×Ni)
なお、上記の式におけるC、Si、Mn、Cr、MoおよびNiは、鋼材中のその元素の質量%での含有量を表す。
ただし、CR=10/(ID1.5)
ID={0.36+0.46×(C−0.4)}×(1+0.70×Si)
×(1+3.3×Mn)×(1+2.2×Cr)×(1+3.0×Mo)
×(1+0.36×Ni)
なお、上記の式におけるC、Si、Mn、Cr、MoおよびNiは、鋼材中のその元素の質量%での含有量を表す。
C:0.4〜0.9%
Cは、部品の強度を高めるのに有効な元素であり、Cの含有量が0.4%未満では強度が不十分で、他の要件を満たしていても所望の硬さが得られない。一方、Cの含有量が0.9%を超えると、初析セメンタイトが生成しやすくなり、靱性が著しく低下する。したがって、Cの含有量を0.4〜0.9%とした。なお、C含有量の望ましい下限は0.5%であり、また、望ましい上限は0.7%である。
Siは、部品の強度を高めるのに有効な元素であり、Siの含有量が0.4%未満では強度が不十分で、他の要件を満たしていても所望の硬さが得られない。一方、Siの含有量が1.5%を超えると、その効果が飽和し、むしろ靱性が低下する。したがって、Siの含有量を0.4〜1.5%とした。なお、Si含有量の望ましい下限は0.6%であり、また、望ましい上限は1.0%である。
Mnは、部品の強度を高めるのに有効な元素であり、Mnの含有量が0.5%未満では強度が不十分で、他の要件を満たしていても所望の硬さが得られない。一方、Mnの含有量が2.0%を超えると、その効果が飽和し、むしろ靱性が低下する。したがって、Mnの含有量を0.5〜2.0%とした。なお、Mn含有量の望ましい下限は0.9%であり、また、望ましい上限は1.5%である。
Vは、C、Nと結合して炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物として鋼中に析出し、特にオーステナイトからパーライトに変態するときの界面で析出すると、微細に析出して部品の強度を高めるのに有効であり、Vの含有量が0.3%未満では強度が不十分で、他の要件を満たしていても所望の硬さが得られない。一方、Vの含有量が0.9%を超えると、その効果が飽和し、むしろ靱性が低下する。したがって、Vの含有量を0.3〜0.9%とした。なお、V含有量の望ましい下限は0.4%であり、また、望ましい上限は0.7%である。
Pは、粒界偏析して粒界を脆化させやすい元素である。このため、コンロッドのように、部品の製造中に破断分離させる工程が含まれる場合には、破断時の変形を抑制するために積極的に添加する必要がある。しかしながら、その含有量が多くなって特に0.10%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Pの含有量を0.10%以下とした。なお、破断分離を行わない部品においては、Pの含有量は低減する方が好ましく、0.03%以下とすることが好ましい。
Sは、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有する。しかしながら、その含有量が0.005%未満では、前記の効果が得難い。一方、粗大なMnSは疲労強度を低下させる傾向があり、Sの含有量が0.2%を超えると、粗大なMnSを形成しやすくなって疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Sの含有量を0.005〜0.2%とした。なお、Sを0.02%以上含有する場合には、被削性が一層向上するので、より被削性を重視する場合には、S含有量の下限は0.02%とすることが好ましい。また、より疲労強度を重視する場合には、S含有量の上限は0.05%とすることが好ましい。
Alは、脱酸作用を有すると同時に、Nと結合してAlNを形成しやすく、結晶粒を微細化させるため、靱性向上に有効である。しかしながら、Alの含有量が0.01%未満ではこれらの効果は得難い。一方で、Alは硬質な酸化物系介在物を形成して疲労強度を低下させてしまう。特に、Alの含有量が0.05%を超えると、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Alの含有量を0.01〜0.05%とした。なお、Al含有量の望ましい下限は0.02%であり、また、望ましい上限は0.04%である。
Nは、Al、V、Nb、Tiと結合して窒化物、あるいは炭窒化物を形成しやすく、結晶粒を微細化させるため、靱性向上に有効である。しかしながら、Nの含有量が0.003%未満ではこの効果は得難い。一方で、Nの含有量が0.020%を超えると、粗大な窒化物が形成されやすくなり、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Nの含有量を0.003〜0.020%とした。なお、N含有量の望ましい下限は0.006%であり、また、望ましい上限は0.015%である。
Oは、Alと結合して硬質な酸化物系介在物を形成しやすく、特にOの含有量が0.0015%を超えると、粗大な酸化物系介在物を形成しやすくなり、疲労強度が低下する場合がある。したがって、Oの含有量を0.0015%以下とした。さらに、不純物としてのOの含有量はできる限り少なくすることが望ましいが、製鋼でのコストを考慮すると、0.0010%以下にすることが好ましい。
Niは、強度を高めるのに有効な元素であるので、高強度化のためにNiを含有してもよい。しかしながら、Niを1.5%を超えて含有させても、強度を高める効果が飽和して、コストが嵩むばかりである。したがって、Niの含有量を1.5%以下とした。なお、Niの含有量は1.0%以下とすることが望ましい。
Crは、強度を高めるのに有効な元素であるので、高強度化のためにCrを含有してもよい。しかしながら、Crの含有量が1.5%を超えると、その効果が飽和し、むしろ靱性が低下する。したがって、Crの含有量を1.5%以下とした。なお、Crの含有量は0.8%以下とすることが望ましい。
Moも、強度を高めるのに有効な元素であるので、高強度化のためにMoを含有してもよい。しかしながら、Moを0.5%を超えて含有させても、強度を高める効果が飽和して、コストが嵩むばかりである。したがって、Moの含有量を0.5%以下とした。なお、Moの含有量は0.3%以下とすることが望ましい。
Nbは、C、Nと結合して炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を形成しやすく、結晶粒を微細化して靱性を高める作用を有するので、この効果を得るためにNbを含有してもよい。しかしながら、Nbの含有量が0.08%を超えると、粗大な炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を形成しやすくなり、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Nbの含有量を0.08%以下とした。なお、Nbの含有量は0.05%以下とすることが望ましい。
Tiも、C、Nと結合して炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を形成しやすく、結晶粒を微細化して靱性を高める作用を有するので、この効果を得るためにTiを含有してもよい。しかしながら、Tiの含有量が0.08%を超えると、粗大な炭化物、窒化物、あるいは炭窒化物を形成しやすくなり、疲労強度の低下が著しくなる。したがって、Tiの含有量を0.08%以下とした。なお、Tiの含有量は0.05%以下とすることが望ましい。
自動車、トラック、その他産業機械の部品であるシャフト、ハブユニット、等速ジョイント、コンロッドなど、鋼製部品の中で高強度が必要な部分は一部分であるため、本発明においては、高強度化が必要な部分の金属組織と硬さを規定する。さらに必要に応じて、高強度化が不要な部分の硬さも規定する。
B(℃)、R(%)、ひずみ速度10/秒:温度B(℃)でひずみ速度を10/秒として圧縮加工量R(%)つまり、[{12−加工後の長さ(mm)}/12]×100の値が「R」となる加工を行ったこと、
D(℃/秒):パターンXにおける加工後の冷却速度、
E(℃/秒):パターンYにおける加工後の冷却速度、
F(℃)×G(秒):温度F(℃)でG秒保持したこと。
・試験力:9.8N、
・測定数:10点、
・測定間隔:1mm。
・倍率:400倍、
・視野数:6、
・各視野の大きさ:0.25mm×0.25mm。
・倍率:200000倍、
・視野数:4、
・各視野の大きさ:0.3μm×0.4μm。
前記した表2〜4からわかるように、鋼材の少なくとも一部分を1100〜1300℃に加熱した後、仕上げ温度を900℃以上として熱間鍛造を行い、熱間鍛造終了後、550〜630℃の温度域まで冷却した後、その温度域に300秒以上保持することによって、少なくとも一つの断面S1における金属組織が、パーライトの単相組織またはパーライトとフェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上との混合組織からなり、前記混合組織の場合には各組織の割合が、パーライト:60%以上、フェライト:20%以下、かつベイナイト+マルテンサイト:20%以下であり、さらに、前記の単相組織または混合組織においてパーライトを構成するフェライト中に、粒径5nm以下の析出物が15nm以下の平均列間隔で点列状に存在し、しかも、前記の断面における平均ビッカース硬さが380〜540という条件を満足させることができる。なお、表3および表4中の平均列間隔の欄で、「測定できず」とあるものは、析出物自体が存在していないか、あるいは析出物の大きさが、今回使用した透過型電子顕微鏡によって識別できる大きさより小さかった(粒径がおよそ1nm未満)ため、「平均列間隔」を測定することができなかったものである。
ID={0.36+0.46×(C−0.4)}×(1+0.70×Si)
×(1+3.3×Mn)×(1+2.2×Cr)×(1+3.0×Mo)
×(1+0.36×Ni)
の式で求められるIDと一次の相関があることが知られている。
CR=10/(ID1.5)
の式で表されるCR以上の値であれば、良好な結果を得ることができることがわかる。ただし、熱間鍛造終了後に、100℃/秒以上の冷却速度を安定して確保することは難しい。一方、上記550〜630℃の温度域まで冷却した後、その温度域に保持時間が3000秒を超えても効果が飽和し、コストが嵩むだけである。
・試験力:9.8N、
・測定数:10点、
・測定間隔:1mm。
・倍率:400倍、
・視野数:6、
・各視野の大きさ:0.25mm×0.25mm。
・倍率:200000倍、
・視野数:4、
・各視野の大きさ:0.3μm×0.4μm。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.4〜0.9%、Si:0.4〜1.5%、Mn:0.5〜2.0%、V:0.3〜0.9%、P:0.10%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.01〜0.05%およびN:0.003〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのOが0.0015%以下の化学組成を有する鋼材からなる鋼製粗形品であって、少なくとも一つの断面における金属組織が、パーライトの単相組織またはパーライトとフェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上との混合組織からなり、前記混合組織の場合には各組織の割合が、パーライト:60%以上、フェライト:20%以下、かつベイナイト+マルテンサイト:20%以下であり、さらに、前記の単相組織または混合組織においてパーライトを構成するフェライト中に、粒径5nm以下の析出物が15nm以下の平均列間隔で点列状に存在し、しかも、前記の断面における平均ビッカース硬さが380〜540であることを特徴とする高強度鋼製粗形品。
- 質量%で、C:0.4〜0.9%、Si:0.4〜1.5%、Mn:0.5〜2.0%、V:0.3〜0.9%、P:0.10%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.01〜0.05%およびN:0.003〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのOが0.0015%以下の化学組成を有する鋼材からなり、ビッカース硬さの最大値が540以下である鋼製粗形品であって、少なくとも特定の一つの断面S1における金属組織が、パーライトの単相組織またはパーライトとフェライト、ベイナイトおよびマルテンサイトのうちの1種以上との混合組織からなり、前記混合組織の場合には各組織の割合が、パーライト:60%以上、フェライト:20%以下、かつベイナイト+マルテンサイト:20%以下であり、さらに、前記の単相組織または混合組織においてパーライトを構成するフェライト中に、粒径5nm以下の析出物が15nm以下の平均列間隔で点列状に存在し、しかも、前記特定の断面S1における平均ビッカース硬さが380〜540で、かつ、断面S1以外において、断面S1の平均ビッカース硬さよりも、平均ビッカース硬さが50以上低い断面を有することを特徴とする高強度鋼製粗形品。
- 鋼材の化学組成が、質量%で、さらに、Ni:1.5%以下、Cr:1.5%以下およびMo:0.5%以下のうちの1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼製粗形品。
- 鋼材の化学組成が、質量%で、さらに、Nb:0.08%以下およびTi:0.08%以下のうちの1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項1から3までのいずれかに記載の高強度鋼製粗形品。
- 質量%で、C:0.4〜0.9%、Si:0.4〜1.5%、Mn:0.5〜2.0%、V:0.3〜0.9%、P:0.10%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.01〜0.05%およびN:0.003〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのOが0.0015%以下の化学組成を有する鋼材の少なくとも一部分を1100〜1300℃に加熱した後、仕上げ温度を900℃以上として熱間鍛造を行い、熱間鍛造終了後、CR℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で550〜630℃の温度域まで冷却した後、その温度域に300〜3600秒保持することを特徴とする高強度鋼製粗形品の製造方法。
ただし、CR=10/(ID1.5)
ID={0.36+0.46×(C−0.4)}×(1+0.70×Si)
×(1+3.3×Mn)×(1+2.2×Cr)×(1+3.0×Mo)
×(1+0.36×Ni)
なお、上記の式におけるC、Si、Mn、Cr、MoおよびNiは、鋼材中のその元素の質量%での含有量を表す。 - 質量%で、C:0.4〜0.9%、Si:0.4〜1.5%、Mn:0.5〜2.0%、V:0.3〜0.9%、P:0.10%以下、S:0.005〜0.2%、Al:0.01〜0.05%およびN:0.003〜0.020%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物としてのOが0.0015%以下の化学組成を有する鋼材を加熱して800℃以上、かつその少なくとも一部分を1100〜1300℃に、また、他の部分を1000℃以下にした後、熱間鍛造を行い、その熱間鍛造による加工部位のうちで前記1100〜1300℃に加熱した部分の仕上げ温度を900℃以上として熱間鍛造を終了し、次いで、被鍛造材を、前記1100〜1300℃に加熱した部分に該当する部位を基準に、CR℃/秒以上100℃/秒以下の冷却速度で550〜630℃の温度域まで冷却し、その後、前記の温度域に300〜3600秒保持することを特徴とする高強度鋼製粗形品の製造方法。
ただし、CR=10/(ID1.5)
ID={0.36+0.46×(C−0.4)}×(1+0.70×Si)
×(1+3.3×Mn)×(1+2.2×Cr)×(1+3.0×Mo)
×(1+0.36×Ni)
なお、上記の式におけるC、Si、Mn、Cr、MoおよびNiは、鋼材中のその元素の質量%での含有量を表す。 - 鋼材の化学組成が、質量%で、さらに、Ni:1.5%以下、Cr:1.5%以下およびMo:0.5%以下のうちの1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項5または6に記載の高強度鋼製粗形品の製造方法。
- 鋼材の化学組成が、質量%で、さらに、Nb:0.08%以下およびTi:0.08%以下のうちの1種以上を含有するものであることを特徴とする請求項5から7までのいずれかに記載の高強度鋼製粗形品の製造方法。
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