JP7092265B2 - 鋼板 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板に関する。
近年、自動車の燃費や衝突安全性などの向上を目的に、自動車部品において高強度鋼板の使用比率が高まっている。また、自動車の衝突安全性を高める観点から、衝突時の吸収エネルギーを増加させることも自動車部品に要求される。この要求に対して、自動車部品を構成する鋼板の降伏強さを上昇させることが有効である。しかし、鋼板は降伏強さが高いほど曲げ加工時の弾性回復量(スプリングバック量)が大きい。そのため、降伏強さが高い鋼板で部品を作製する場合、寸法精度(形状凍結性)が悪化するという問題があった。
この形状凍結性の問題に対し、例えば、特許文献1には、鋼板の集合組織を制御し形状凍結性を改善する技術が開示されている。特許文献2には、鋼板の降伏比を低くしてプレス成型や曲げ加工時の形状凍結性を改善した技術が開示されている。特許文献3には、未再結晶フェライトと降伏伸びを制御して形状凍結性を改善した技術が開示されている。特許文献4には、降伏伸びを制御することで降伏比が高く成形性が良好な鋼板の技術が開示されている。
特開2008-255491号公報 特開2010-222688公報 特開2017-2333号公報 特開2008-274360号公報 特開2016-28174号公報
特許文献1に記載の技術では、熱間圧延工程における制約条件が多く、製品の安定製造性や多品種生産ラインへの適用性に欠ける。特許文献2に記載の技術では、形状凍結性は高まるが降伏強さが低いため衝突特性の向上が望まれる。特許文献3に記載の技術では、未再結晶フェライトが活用されているが、焼鈍工程における適正な温度の範囲が狭く、材質を確保するには生産技術上の困難性が残る。特許文献4に記載の技術では、降伏伸びを得る方法が開示されているが、降伏比が高く形状凍結性や加工性の観点から引張強さを700MPa以下にしている。
本発明は、係る事情に鑑み、形状凍結性に優れつつ引張強さTS700MPa以上と加工性を確保することを課題とし、そのような特性を有する高強度鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた。その結果、降伏比が高く、降伏伸びを有することにより形状凍結性が向上することを見出した。強度を高くするためには組織中にマルテンサイトを有することが有効であるが、マルテンサイトや残留オーステナイトは降伏強さ(YP)を低下させる原因となる。そこで、鋼板の組織をフェライト、セメンタイト、およびパーライトを主体とし、そこにNi-Al複合析出物を析出させることにより、700MPa以上の引張強さと高い降伏比を確保しつつ、降伏伸びが発現することを見出した。このような組織は、AlとNiを複合添加した鋼の熱間圧延後の冷却速度を制御することにより得られることも見出した。
Ni-Al金属間化合物の析出強化の観点では特許文献5の鋼板が提案されている。特許文献5の鋼板は、伸びフランジ性(加工性)を確保する観点からC(炭素)を極力少なくし、Ni-Al金属間化合物で析出強化した鋼板が提案されている。しかし、特許文献5の鋼板は、Cを極力少なくしているため、強度が低く抑えられていることと、降伏伸びが抑制され形状凍結性がよくない。
降伏伸びを有する鋼板が形状凍結性に優れる理由は明確ではない。降伏伸びを有する鋼板においては、曲げ変形が曲げ稜線部に集中し、塑性変形部位が小さくなる。この効果により弾性回復が少なく、スプリングバック量が減少すると考えられる。この効果は、降伏伸びが大きいほど得られるが、降伏現象そのものにより曲げ加工を受ける稜線部が集中的に変形を受けるため、降伏伸びは約0.5%以上であれば効果を奏する。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)
成分組成が、質量%で、
C:0.0090%以上0.6500%以下、
Si:0%超3.000%以下、
Mn:0.050%以上3.600%以下、
P:0.030%以下、
S:0.0200%以下、
Al:0.500%以上5.000%以下、
N:0.0100%以下、
Ni:1.000%以上12.400%以下、
Cu:4.800%以下、
Mo:2.500%以下、
Ca:0.0200%以下、
Mg:0.0200%以下、および
REM:0.0200%以下
を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
下記(式1)、(式2)、および(式3)を同時に満足し、
組織は、フェライト、セメンタイト、およびパーライトの1種以上とNi-Al複合析出物を合せて面積率で98.0%以上を含み、
引張強さが700MPa以上であって、引張強度(TS)と破断伸び(EL)の積(TS×EL)が15000MPa%以上である鋼板。
(Ni%+12×C%+2×Mn%+1.2×Cu%)-2.0×(Al%+0.5×Si%+0.25×Mo%)≧0.000 (式1)
3.725×C%+0.16×Si%+0.63×Mn%-0.11×Al%+0.21×Ni%+0.45×Cu%+0.62×Mo%-1.818 ≦1.000 (式2)
Ni%-0.5×Cu%≧0.000 (式3)
ここで、C%、Si%、Mn%、Al%、Ni%、Cu%、Mo%は、それぞれC、Si、Mn、Ni、Cu、Mo、Alの含有量[質量%]であり、含まない場合は0を代入する。
(2)
前記成分組成が、質量%で、
Cu:0.100%以上4.800%以下、
Mo:0.100%以上2.500%以下、
Ca:0.0001%以上0.0200%以下、
Mg:0.0001%以上0.0200%以下、および
REM:0.0001%以上0.0200%以下
のうちから選ばれる少なくとも1種を含有する(1)に記載の鋼板。
(3)
前記鋼板の少なくとも一方の表面に、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層または電気亜鉛めっき層を有する(1)または(2)に記載の鋼板。
(4)
スプリングバック量が、180度曲げ試験によって測定される開口角度で4°以下である上記(1)~(3)のいずれか一項に記載の高強度鋼板。
本発明によれば、形状凍結性に優れつつ、700MPa以上の高強度鋼板を得ることができる。このような本発明の高強度鋼板は、衝突吸収特性が要求される衝撃吸収部材に好適であり、自動車、輸送機器などの分野で構造材に好適である。例えば、本発明の高強度鋼板は、自動車部品に適用されることにより、車体軽量化による燃費向上や衝突安全性の更なる向上に寄与し得る。
以下、本発明の一実施形態について説明する。特に断りのない限り、各元素に関する「%」は鋼中の質量%を意味する。
[成分組成]
以下、本実施形態の鋼板の成分組成について説明する。
C:0.0090%以上0.6500%以下
C(炭素)は、降伏伸びを確保するために効果のある元素である。降伏伸びはフェライト中に固溶する炭素に起因して生ずる。Cが0.0090%未満では固溶C量が少なくなり降伏伸びが抑制され降伏点降下現象が十分に得られない場合がある。さらに、Cは引張強度を確保するために有効な元素でもある。Cが0.090%未満では、700MPa以上の引張強度を得ることができない。一方、C量が0.6500%を超えるとマルテンサイトが生成し易くなり、降伏伸びが得られない。
C含有量の下限値は、0.0095%、0.0100%、0.0105%、0.0110%、0.0120%、0.0150%、0.0175%、0.0200%、0.0300%、0.0400%、0.0500%、0.0600%、0.0700%、0.0800%、0.0900%、0.1000%、0.1100%、0,1200%、0.1300%、0.1400%、0.1500%、0.1600%、0.1700%、0.1800%、0.1900%、0.2000%の値を取り得る。
C含有量の上限値は0.6400%、0.6300%、0.6200%、0.6100%、0.6000%、0.5800%、0.5600%、0.5400%、0.5200%、0.5000%の値を取り得る。
Si:0%超3.000%以下
Siは、フェライト相を安定化させる元素であり、フェライト中に固溶し、フェライトを硬化させるのに有用な元素である。そのため、Siは少しでも(0%超)含有するとよい。一方、Siは焼入れ性を高めるため、熱延後の冷却過程において一定量のフェライトを生成するには、Si含有量は3.000%以下であるとよい。
Si含有量の下限値は、0.001%、0.002%、0.005%、0.010%、0.015%、0.020%、0.030%、0.040%、0.050%、0.060%、0.070%、0.080%、0.090%、0.100%、0.120%、0.150%、0.175%、0.200%の値を取り得る。
Si含有量の上限値は、2.900%、2.800%、2.700%、2.600%、2.500%、2.400%、2.300%、2.200%、2.100%、2.000%の値を取り得る。
Mn:0.050%以上3.600%以下
Mnは、オーステナイト相を安定化させる元素であり、さらに、Sによる熱間圧延時の表面疵を低減するのに有用な元素である。Mn含有量が0.050%未満では、表面疵を抑制できない。一方、焼入れ性を高めるため、熱延後の冷却過程においてフェライトを生成するためには、Mn含有量は3.600%以下にするとよい。
Mn含有量の下限値は、0.055%、0.060%、0.070%、0.080%、0.090%、0.100%、0.120%、0.150%、0.175%、0.200%、0.300%、0.400%、0.500%の値を取り得る。
Mn含有量の上限値は、3.550%、3.500%、3.400%、3.200%、3.000%、2.800%、2.600%、2.400%、2.200%、2.000%の値を取り得る。
P:0.030%以下
P(リン)は、粒界に偏析しやすく、高強度鋼板においては脆化を助長し、加工性を阻害する。そのため、P含有量の上限を0.030%以下にするとよい。鋼板の機械特性を確保する観点からは、Pは少なければ少ないほどよく、P含有量の下限値は0%としてもよい。一方、Pを無くすことは製造コストの増加につながるため、P含有量の下限値は0.001%、0.002%、0.003%、0.005%としてもよい。
S:0.0200%以下
S(硫黄)はMnSなどの硫化物を形成し、割れの規定となり、加工性を悪化させる。S含有量が0.0200%を超えると介在物量が増加し、加工時の破断の起点となり、成形性が劣化する。そのため、S含有量は0.0200%以下とする。Sは少なければ少ないほどよく、S含有量の下限値は0%としてもよい。一方、Sを無くすことは製造コストの増加につながるため、S含有量の下限値は0.0001%、0.0002%、0.0005%としてもよい。
Al:0.500%以上5.000%以下
Alは、Siと同様、フェライト相を安定化する元素であり、鋼中で炭化物を形成しない元素である。また、NiとAlを鋼板中に複合的に含有させると、鋼板を高強度化することができる。このNiとAlとの複合含有による強度上昇効果を得るためには、熱延後にオーステナイトからフェライトへの変態を促進する必要がある。Al含有量が0.500%未満では十分な量のフェライトが生成しない。一方、Al含有量が5.000%を超えると、Ac1温度が上昇し、熱間圧延中にフェライトが生成するおそれがあるため、熱間圧延時に加工オーステナイトと加工フェライトとが形成される場合がある。この場合、熱間圧延後の冷却により、加工オーステナイトが変態したフェライトと、加工フェライトが回復・再結晶したフェライトとが生成する。つまり、これらのフェライトからなる混合組織が鋼板に形成される。このような混合組織の機械的特性は、その混合組織を構成する組織の比率により変動することから、安定した機械的特性を得ることができない。従ってAl含有量は0.500%以上5.000%以下とするとよい。
また、AlはNiとで複合析出物を形成する。複合析出物は、主にはNi-Al金属間化合物である。Ni-Al複合析出物を形成することにより、鋼板強度を上げることができる。そのため、フェライト主体の組織であってもNi-Al複合析出物を含有することにより高強度化ができる。このNi-Al複合析出物を生成するにはAlは0.500%以上にすることが好ましい。
Al含有量の下限値は、0.600%、0.700%、0.800%、1.000%、1.500%、2,000%、2.500%、3.000%の値を取り得る。
Al含有量の上限値は、4.900%、4.800%、4.700%、4.600%、4.500%、4.400%、4.300%、4.200%、4.100%、4.000%の値を取り得る。
Ni:1.000%以上12.400%以下
Niは、オーステナイト相を安定化する元素であり、鋼中で炭化物を形成しない元素である。 Alの項も述べたが、NiはAlとで複合析出物を形成する。複合析出物は、主にはNi-Al金属間化合物である。Ni-Al複合析出物を形成することにより、鋼板強度を上げることができる。そのため、フェライト主体の組織であってもNi-Al複合析出物を含有することにより高強度化ができる。このNi-Al複合析出物を生成するには、Ni含有量を1.000%以上にするとよい。一方、Ni含有量が12.400%を超えると、オーステナイト相の安定度が増加し、マルテンサイトが生成し易くなる。マルテンサイトは降伏伸びを減少させだけでなく、降伏強さを下げるため、好ましくない。そのため、Ni含有量の上限は12.400%とする。
Ni含有量の下限値は1.200%、1.500%、1.750%、2.000%、2.500%、3.000%、4.000%、5.000%、6.000%、7.000%、8.000%、9.000%、10.000%の値を取り得る。
Ni含有量の上限値は12.200%、12.000%、11.800%、11.500%の値を取り得る。
Cu:4.800%以下
Cuは、特に含まなくてもよい(0%であってもよい)。Cuは、オーステナイト相を安定化させる元素であるので0%超含有させてもよい。Cuによる熱間脆性防止の観点から、Ni含有量(質量%)の2倍の量(質量%)までCuを含有してもよい。一方、Cuは焼入れ性を向上させる元素であるため、熱延後の冷却過程において一定量のフェライトを生成するには、Cu含有量は4.800%以下であるとよい。
Cu含有量の上限値は4.800%、4.500%、4.200%の値を取り得る。
一方、オーステナイト相の安定化効果を確実に得るために、Cu含有量の下限値は0.100%、0.200%、0.300%、0.500%、1.000%、1.500%、2.000%、2.500%、3.000%、3.500%の値を取り得る。
Mo:2.500%以下
Moは、特に含まなくてもよい(0%であってもよい)。Moは、フェライト相を安定化させる元素であるので、0%超含有させてもよい。一方、Moは焼入れ性を向上させる元素であるため、熱延後の冷却過程において一定量のフェライトを生成するには、Mo含有量は2.500%以下であるとよい。
Mo含有量の上限値は2.400%、2.300%、2.200%、2.000%、1.900%、1.800%の値を取り得る。
一方、フェライト相の安定化効果を確実に得るために、Mo含有量の下限値は0.100%、0.200%、0.300%、0.400%、0.500%、0.600%、0.800%、1.000%の値を取り得る。
N:0.0100%以下
N(窒素)は、不純物であり、少なければ少ないほどよく、N含有量の下限値は0%としてもよい。Nは鋼中のAlと反応し主に窒化アルミニウム(AlN)として存在する。N含有量が0.0100%を超えると、粗大なAlNが生成し、加工時の破断の起点となり、成形性が劣化する。従って、N含有量は0.0100%以下とするとよい。一方、Nを無くすことは製造コストの増加につながるため、N含有量の下限値は0%超、0.0001%、0.0003%、0.0005%、0.0010%、0.0020%、0.0030%としてもよい。
Ca:0.0200%以下
Mg:0.0200%以下
REM:0.0200%以下
Ca、Mg、REMは、特に含まなくてもよい(0%であってもよい)。Ca、Mg、REMは、いずれも酸化物や硫化物などの介在物の形状を制御する元素であり、介在物を微細分散化し、加工時の破断起点の要因を減少させ、加工性向上に寄与する。そのためCa、Mg、REMのうち1種以上を含んでもよい。これらの効果を発現させるには、Ca、MgおよびREMのそれぞれの含有量を0.0001%以上とすることが好ましい。ただし、それぞれの含有量が0.0200%を超えると介在物の総数が増加し、鋼板の内部品質を悪化させるので、それぞれの元素の含有量は0.0200%以下とするとよい。なお、REMはスカンジウム(Sc)、イットリウム(Y)、およびランタノイド(ランタン(La)からルテチウム(Lu)まで)の17元素を指し、一般的に希土類元素、あるいはレアアースと呼ばれている。REMの含有量は、これらの元素の少なくとも1種を含有し、それらREM元素の合計含有量を意味する。
本実施形態の鋼板の成分組成の残部はFeおよび不純物である。不純物としては、鋼原料もしくはスクラップから混入した元素、および製造過程で混入した元素であって、本実施形態に係る鋼板の効果を得られる範囲で許容される元素が例示される。
前述の元素のうち、C、Si、Mn、Al、Ni、Cu、Moの含有量は下記(式1)から(式3)を同時に満たすとよい。

(Ni%+12×C%+2×Mn%+1.2×Cu%)-2.0×(Al%+0.5×Si%+0.25×Mo%)≧0.000 (式1)

3.725×C%+0.16×Si%+0.63×Mn%-0.11×Al%+0.21×Ni%+0.45×Cu%+0.62×Mo%-1.818 ≦1.000 (式2)

Ni%-0.5×Cu%≧0.000 (式3)

ここで、C%、Si%、Mn%、Al%、Ni%、Cu%、Mo%は、それぞれC、Si、Mn、Al、Ni、Cu、Mo、の含有量[質量%]を示す。それぞれの元素において含まない場合には0を代入すればよい。
式1は、熱間圧延中にフェライトを生成せず、オーステナイトの単相域となる条件を示す。C、Mn、Ni、Cuなどのオーステナイトを安定化する元素の含有量に対し、Si、Al、Moなどのフェライトを安定化する元素の含有量が多いと、熱間圧延中にオーステナイトだけでなくフェライトが形成される。Al含有量の限定理由でも述べたが、熱間圧延中にオーステナイトとフェライトが混在すると、圧延により各々加工オーステナイトおよび加工フェライトとなり、冷却後に加工オーステナイトが変態したフェライトと、加工フェライトが回復・再結晶したフェライトとが混在する混合組織を形成する。このような混合組織の機械的特性は、混合組織を構成する組織の割合により大きく変動することから、安定した機械的特性を得る観点から望ましくない。この混合組織を抑制する観点から化学成分が式1を満足するとよい。
式2は、熱間圧延後の冷却中にフェライトを生成するための条件を示す。本発明者らの実験によると、NiとAlの複合含有(複合添加)による強化の発現は、BCC結晶構造をもつフェライト組織で起こる。焼入れ性を高める元素が一定量以上になると、熱間圧延後の冷却中にフェライトが生成せずマルテンサイトが生成する。マルテンサイトは降伏伸びを消失させ、しかも降伏強さを下げるため、好ましくない。熱延後にマルテンサイトの生成を抑制する観点から、化学成分が式2を満足するとよい。
上記式3は、Cuの熱間脆性を防止する観点からNi含有量との条件を示す。NiをCuの半分以上含めれば、Cuによる熱間脆性が抑制される。
[組織]
次に、本実施形態に係る鋼板の組織について説明する。
本実施形態に係る鋼板の組織は、フェライト、セメンタイト、およびパーライトを1種以上とNi-Al複合析出物(Ni-Al金属間化合物を含む)を含み、これらの占める面積率が合計で98.0%以上であるとよい。種々の実験から、冷却中の鋼板強度の強化は、フェライトあるいはパーライト組織中にNi-Al複合析出物が析出することで発現することがわかった。すなわち十分な強化量を得るには、フェライトあるいはパーライトを鋼板が含むことが重要である。
炭素を一定量含むため鋼板の組織は、フェライトおよびパーライトが主体となり、それ以外に、セメンタイトの含有も許容される。本実施形態に係る高強度鋼板のC含有量を考慮すると、その組織は、概括的に(A)実質的にパーライト単相、(B)フェライトおよびセメンタイトの混合組織、(C)フェライト、セメンタイト、およびパーライトの混合組織のいずれかになる。フェライトやパーライトを主体にすることで、降伏伸びを大きくすることができる。さらに、フェライトやパーライトの組織中にNi-Al複合析出物が析出することにより、析出強化により鋼板の引張強度(TS)を700MPa以上確保することができる。さらに降伏強さ(YP)も高くすることができるため降伏比(YR:YR=YP/TS)も高くできる。本発明者らは、降伏比(YR)が0.8以上確保できることを確認した。降伏伸びを確保でき、降伏比も高くできるので、スプリングバック量を小さくすることができる。即ち、高強度で加工性とともに形状凍結性に優れた鋼板を得ることができる。
フェライト、セメンタイト、およびパーライトとNi-Al複合析出物の占める面積率は98.0%以上あるとよい。なお、フェライト、セメンタイト、およびパーライトとNi-Al複合析出物の合計面積率が98.0%以上である限り、それぞれの含有量は特に限定されない。
Ni-Al析出物(金属間化合物)の面積率は特に限定しないが、3.0%以上40.0%以下とするとよい。この範囲内の面積率であれば、引張強さが700MPa以上、強度―伸びバランス(TS×EL)が15000MPa%以上を得ることができる。また、さらに高い強度―伸びバランスの観点から、Ni-Al析出物(金属間化合物)の面積率は、好ましくは4.0%以上、5.0%以上、さらには6.0%以上であるとよい。一方、Ni-Al析出物(金属間化合物)の面積率が多過ぎるとフェライト等が少なくなり伸びが確保できないため、その面積率は、好ましくは35.0%以下、さらには30.0%以下であるとよい。
フェライト、セメンタイト、およびパーライトとNi-Al複合析出物以外の組織は、マルテンサイトや残留オーステナイトである。マルテンサイトはできる限り含まない方がよい。冷却によりオーステナイトがマルテンサイトに変態する際、その周辺組織に転位が導入される。これらの転位は、加工時に低い応力でも動きやすく、降伏強さを低くし、降伏伸びも減少させる。従って、降伏伸びが抑制されることから、形状凍結性を確保できない。残留オーステナイトも加工にもとないマルテンサイトに変態する(加工誘起マルテンサイト)。従って、マルテンサイトと残留オーステナイトの合計の面積率は少ないほどよく、2%以下に制限するとよい。マルテンサイトと残留オーステナイトの合計の面積率は、好ましくは1.5%以下、1.0%以下、0.5%以下にするとよい。
ここで、面積率は、鋼板の厚さ方向の任意断面における各組織の面積率のことである。鋼板においては、厚さ方向断面での組織の面積率は、鋼板中の組織の体積率と同等である。従って面積率をそのまま体積率に読み替えても差し支えない。もちろん、その逆に体積率を面積率に読み替えても差し支えない。
本実施形態の鋼板の組織の面積率は以下のように測定される。まず、鋼板の板厚断面(板厚方向の断面)を有する試料を採取し、当該断面を観察面とする。鋼板の板厚をtとしたとき、観察面のうち鋼板表面からt/8以上、3t/8以下の深さ範囲の領域において、任意の100μm×100μmの矩形領域を観察領域とする。この観察領域をレペラーエッチングで腐食する。光学顕微鏡を用いてその腐食された観察領域を撮影し、組織画像を解析して組織の面積率を算出する。組織はフェライト、セメンタイト、パーライト、ベイナイト、マルテンサイトおよび残留オーステナイトとの組み合わせからなる。撮影した画像から、それぞれの組織の面積率を測定することができる。例えば、市販の画像処理ソフトにより面積率を測定してもよい。また、例えば、組織画像は黒色部分と灰色部分と白色部分に区別できる。このうち灰色部分にフェライトおよびベイナイトが含まれ、黒色部分にセメンタイトおよびパーライトが含まれ、白色部分にマルテンサイトや残留オーステナイトが含まれる。灰色部分において、ラス状の組織をベイナイトとみなし、ラス状の組織以外の組織をフェライトとみなす。また、黒色部分において点状に並ぶ組織をセメンタイト、黒色部分が列状に並びあるいは直径1.0μm超の塊状として存在する組織をパーライトとみなす。上記の測定を2か所以上の観察領域で行い、観察領域に占める各組織の割合を算出する。
後述するとおり、Ni-Alの複合析出物は微細であるため、光学顕微鏡による観察ではその面積率を測定することはできない。従って、後述する手順で求めるNi-Alの複合析出物の面積率を差し引いた残部組織の面積率を事前に算出し、この残部組織の面積率に対して上記の光学顕微鏡による観察で得た各組織の占める割合を乗じることで各組織の面積率を得ることができる。
なお、Ni-Alの複合析出物はフェライトあるいはパーライト中に存在するため、フェライト、セメンタイト、およびパーライトとNi-Al複合析出物の合計面積率は、上記の測定方法によるフェライト、セメンタイト、およびパーライトの面積率の合計値(例えば上記の黒色部分と灰色部分の合計)とすることができる。
Ni-Alの複合析出物は主にNi-Alの金属間化合物であり、Ni-Alの金属間化合物は直径が20nm以下かつ長さが500nm以下の棒状の形状を有している。また、その面積率は、透過型電子顕微鏡(TEM)で得たTEM写真をもとに画像解析から求めることができる。まず、鋼板から精密切断機にてTEM観察用の素材を切り出し、これを観察位置である板厚方向t/4深さ位置までエメリー紙にて切削研磨し、素材厚みを0.1mmに調整後、素材から打抜きパンチで3mmφに打抜いた試料に両面ジェット電解研磨を行うことでTEM観察用の試料を作製する。このTEM観察試料において4μm×4μmの領域をランダムに選択し、EDSによる元素分析とナノビーム回折(NBD:Nano Beam Diffraction(微小部電子回折))法による結晶構造解析によってNi-Alの金属間化合物の生成場所を同定し、TEM写真を撮影する。この操作を繰り返し行うことで得た25枚のTEM写真において、観察領域に占める棒状析出物の面積率を測定して、Ni-Al複合析出物の面積率を求めることができる。
本実施形態に係る鋼板は、熱延鋼板や冷延鋼板であってよい。さらに、鋼板表面にめっき層(溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層または電気亜鉛めっき層など)を備えるものであってもよい。
また、板厚は特に限定しない。形状凍結性に優れるという特性を生かす観点から、自動車部品への適用などが考えられ、鋼板の板厚は0.8mm以上、4.0mm以下であることが好ましい。
[機械特性]
本実施形態に係る鋼板の機械的特性として、以下の特性を確認した。
降伏伸び(YP-EL)は0.5%以上とすることができる。
降伏比(YR)は0.8以上とすることができる。
それらの結果として、形状凍結性は180度曲げ試験によって測定されるスプリングバック量で4度以下とすることができ、良好な形状凍結性を有することを確認した。
引張強さ(TS)は、700MPa以上とすることができる。理由は定かではないが、AlとNiの複合含有によりNi-Al複合析出物(金属間化合物を含む)が析出し、鋼板を高強度化することができると考えている。
加工性については、従来から高強度鋼板の引張強度の加工性指標として使われている引張強度(TS)と破断伸び(EL)の積(TS×EL)である「強度―伸びバランス」にて評価した。強度―伸びバランス(TS×EL)が15000MPa%以上確保できれば、高強度鋼板(700MPa以上)でありながら良好な加工性を有する。
ここで、降伏強さ(YP),降伏伸び(YP-EL)、降伏比(YR)、引張強さ(TS)および伸び(EL)はJIS Z 2241(2011年)に準拠し、採取した5号試験片を用いて引張試験を行い測定した。また、スプリングバック量はJIS Z 2248(2006年)に記載の180度曲げ試験法に準拠して曲げ試験を行い、戻った角度をスプリングバック量として評価した。なお、曲げ方向は特に限定しないが、圧延方向と平行になるように、つまり曲げの稜線(折り曲げ線)が鋼板の幅方向に平行になるようにして180度曲げ、その後除荷し、戻った角度をスプリングバック量とした。曲げ方向が圧延方向に平行な場合、スプリングバック量が最大になるからである。
[製造方法]
本実施形態に係る鋼板を得るための製造方法を説明する。以下の説明は、本実施形態に係る鋼板を得るための製造方法の一例であって、製造方法は以下の方法に限定されるものではない。
従来、金属間化合物による強化を発現させるには、マルエージ鋼に代表されるように、室温まで温度が下がった鋼板を、例えば、450~550℃の温度域まで加熱して、5時間の時効処理をすることが必要とされた。この場合、熱延鋼板の製造においては、熱処理をする追加工程が必要であり、生産性が低くなるので、従来はこの方法に着目されていなかった。一方、本発明者らは、鋼成分と熱間圧延後の冷却条件を適正化にすることで、追加の熱処理なしに高強度化できることを見出した。この知見に基づき、本実施形態に係る鋼板の製造条件について以下に説明する。
まず、上記成分組成を満足する鋼片(スラブ)を製造する。この鋼片を製造する方法は特に限定されない。例えば、連続鋳造スラブ、薄スラブキャスターなどの一般的な方法で鋼片を製造することができる。
熱間圧延に際し、上記成分組成を満足する鋼片を加熱する。このときの加熱温度は、900℃以上1300℃以下であることが好ましい。加熱温度が900℃未満では、十分なオーステナイト変態が生じず、析出物の溶体化が不十分となり、所望の強度が得られない。一方、加熱温度が1300℃を超えると、スケール生成量が増加し、それに付随した表面疵が増加する。
続いて加熱した鋼片を熱間圧延する。この熱間圧延では、最終圧延温度(仕上圧延温度)を750℃以上とするとよい。750℃以上の温度で熱間圧延を終了することによって、圧延途中にフェライトが生成して加工オーステナイト(オーステナイト状態で加工(圧延)された組織)と加工フェライト(フェライト状態で加工(圧延)された組織)とが混在することを避けることができる。750℃以下で熱間圧延を終了すると、熱間圧延後の冷却時に、加工オーステナイトから変態したフェライトと、加工フェライトが回復・再結晶したフェライトが混合組織を形成する。このような混合組織の機械的特性は、混合組織を構成する組織の割合により大きく変動する。従って、このような混合組織を生じさせない製造条件にすることが好ましい。
熱間圧延後に鋼板を冷却する。この冷却工程では、750℃以下550℃以上の温度域における平均冷却速度が1℃/秒以上20℃/秒以下となるように、550℃以下まで冷却する。その後、鋼板を550℃以下で巻取ってもよい。この冷却工程において平均冷却速度を20℃/秒以下とすることにより、フェライト相中にNi-Al複合析出物(Ni-Al金属間化合物)が形成されやすくなり、鋼板の強度が高められる。Ni-Al複合析出物を形成する観点からは冷却速度は遅い方がよい。一方、この冷却速度が遅いほど鋼板の表面に生成するスケール量が増加し、表面疵やスケールを除去する酸洗工程でのコスト上昇につながるため、生産面で好ましくない。そのため、この冷却工程における平均冷却速度は1℃/秒以上であることが好ましい。
その後、必要に応じて酸洗浄を施し冷間圧延をしてもよい。冷間圧延の条件は特に限定されるものではなく、常法による冷間圧延を適用することができる。
また、得られた熱延鋼板または冷延鋼板の少なくとも一方の表面にめっきを施しても良い。めっきの種類は特に限定されない。例えば、溶融亜鉛めっき、合金化溶融亜鉛めっき、電気亜鉛めっき、アルミめっき、合金化アルミめっき、Zn-Al-Mn系めっきなどを施すことができる。めっき方法も特に限定されない。溶融亜鉛めっき法、電気めっき法など常法の製造方法を適用することができる。
次に実施例により本発明をさらに説明する。なお、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
表1に示した成分組成(単位:質量%)を有する鋼片を1050℃以上で60分以上加熱した後、表2に示す条件(仕上圧延温度、熱延後冷却での平均冷却速度、巻取り温度)で熱間圧延を施し熱延鋼板を製造した。熱延鋼板の板厚は3.2mmである。表1には上記式1、式2および式3の各左辺の値を記載した。
上記のようにして製造した鋼板の圧延方向に対し直角方向に試験片を採取し、引張試験により、降伏強さ(YP)、降伏伸び(YP-EL)、引張強さ(TS)、伸び(EL)を評価した。ここで、降伏強さ(YP)、降伏伸び(YP-EL)、降伏比(YR)、引張強さ(TS)および伸び(EL)は、JIS Z 2241(2011年)に準拠し、上記のようにして採取した5号試験片を用いて引張試験を行って測定した。これらの試験片に対し、JIS Z 2248:2006に記載の180度曲げ試験法に準拠して曲げ試験を行い、開口角度をスプリングバック量とし、形状凍結性を評価した。なお、曲げ方向は圧延方向と平行になるように、つまり曲げの稜線(折り曲げ線)が鋼板の幅方向に平行になるようにして180度曲げ、その後除荷し、戻った角度をスプリングバック量とし、4度以下を合格(良)とした。その他の特性の合否基準は以下の通りである。
降伏伸び(YP-EL):0.5%以上を合格とする。
降伏比(YR):0.8以上を合格とする。
引張強さ(TS):700MPa以上を合格とする。
TS×EL:15000MPa%以上を合格とする。
組織の面積率は、鋼板の幅をWとしたとき、鋼板の幅方向端部からW/4の位置において試験片を採取した。試験片の圧延方向に平行の板厚断面をレペラーエッチングで腐食し、鋼板の板厚をtとしたとき、観察面のうち鋼板表面からt/8以上、3t/8以下の範囲内にある100μm×100μmの矩形領域を、光学顕微鏡を用いて撮影した組織画像を解析した。このとき組織画像中の黒色部分の面積率をフェライト、セメンタイトおよびパーライトの1種以上とNi-Al複合析出物を合せた面積率(表2中の「フェライト等面積率」に記載し、その内数としてNi-Al複合析出物の面積率を示す。)とした。表2にその結果を示す。
表2に示すように、本発明例のNo.1~12および29~32は引張強さ700MPa以上で形状凍結性が良好な結果となり、強度-延性バランスに優れ、プレス成形性に優れる。他の例は以下の理由によって本発明の範囲外である。
No.13はCの含有量が少なく、降伏伸びが得られず、形状凍結性に劣った。
No.14、No.15、No.16はそれぞれC、Si、Mnの含有量が多く、マルテンサイトが生成し、降伏伸びが得られず、形状凍結性が劣った。
No.17、No.18はそれぞれP、Sの含有量が多く、引張試験において延性不良となった。
No.19とNo.22はそれぞれAl、Niの含有量が少なく、引張強さが700MPa未満となり、強度不足となった。
No.20はAlの含有量が多く、強度は得られるが組織の不均一性により延性が著しく劣った。そのため強度―延性バランス性が劣位になり加工性に問題が生じた。
No.21はNの含有量が多く、粗大な窒化アルミニウム(AlN)が生成して加工時の破断の起点となり、延性が著しく劣った。そのため強度―延性バランス性が劣位になり加工性に問題が生じた。
No.23、No.24、No.25はそれぞれNi、Cu、Moの含有量が多く、マルテンサイトが生成し、降伏伸びが得られず、形状凍結性が劣った。
No.26は、上記式(1)を満たしておらず、熱間圧延中にフェライトが生成したため、回復・再結晶フェライトを含んで組織が不均一となったため、延性が劣り、形状凍結性は良かったものの、強度―延性バランス性(TS×EL)が劣った。
No.27は、仕上圧延温度が不適切であったので、熱間圧延中にフェライトが生成して加工オーステナイトと加工フェライトとが混在した組織となり、組織が不均一となったことで強度不足となり、その分強度―延性バランス性(TS×EL)が劣った。
No.28は、750~550℃における平均冷却速度が20℃/秒を超えており、マルテンサイトが生成し、降伏伸びが得られず、形状凍結性に劣った。
[実施例2]
上記実施例1で製造した試料符号8の熱延鋼板を660~720℃に加熱し、溶融亜鉛めっき処理あるいは、めっき処理後に540~580℃での合金化処理を行い、溶融亜鉛めっき鋼板あるいは合金化溶融亜鉛めっき鋼板とした後、実施例1と同じ材質試験を実施した。結果を表3に示す。
表3に示すように、いずれのめっき鋼板においても上記実施例1の本発明例と同様に形状凍結性や強度―延性バランス性(TS×EL)に優れており、溶融亜鉛めっき処理、あるいは、合金化溶融亜鉛めっき処理を行ったとしても、本発明の効果を得られることが確認された。
Figure 0007092265000001
Figure 0007092265000002
Figure 0007092265000003
本発明によれば、形状凍結性に優れる高強度鋼板を提供することができる。このような本発明の高強度鋼板は、衝突吸収特性が要求される衝撃吸収部材に好適であり、自動車、輸送機器などの分野で構造材に好適である。例えば、本発明の高強度鋼板は、自動車部品に適用されることにより、車体軽量化による燃費向上や衝突安全性の更なる向上に寄与し得る。

Claims (4)

  1. 成分組成が、質量%で、
    C:0.0090%以上0.6500%以下、
    Si:0%超3.000%以下、
    Mn:0.050%以上3.600%以下、
    P:0.030%以下、
    S:0.0200%以下、
    Al:0.500%以上5.000%以下、
    N:0.0100%以下、
    Ni:1.000%以上12.400%以下、
    Cu:4.800%以下、
    Mo:2.500%以下、
    Ca:0.0200%以下、
    Mg:0.0200%以下、および
    REM:0.0200%以下
    を含有し、残部がFeおよび不純物であり、
    下記(式1)、(式2)、および(式3)を同時に満足し、
    組織は、フェライト、セメンタイト、およびパーライトの1種以上とNi-Al複合析出物を合せて面積率で98.0%以上を含み、
    引張強さが700MPa以上であって、引張強度(TS)と破断伸び(EL)の積(TS×EL)が15000MPa%以上であることを特徴とする鋼板。
    (Ni%+12×C%+2×Mn%+1.2×Cu%)-2.0×(Al%+0.5×Si%+0.25×Mo%)≧0.000 (式1)
    3.725×C%+0.16×Si%+0.63×Mn%-0.11×Al%+0.21×Ni%+0.45×Cu%+0.62×Mo%-1.818 ≦1.000 (式2)
    Ni%-0.5×Cu%≧0.000 (式3)
    ここで、C%、Si%、Mn%、Al%、Ni%、Cu%、Mo%は、それぞれC、Si、Mn、Ni、Cu、Mo、Alの含有量[質量%]であり、含まない場合は0を代入する。
  2. 前記成分組成が、質量%で、
    Cu:0.100%以上4.800%以下、
    Mo:0.100%以上2.500%以下、
    Ca:0.0001%以上0.0200%以下、
    Mg:0.0001%以上0.0200%以下、および
    REM:0.0001%以上0.0200%以下
    のうちから選ばれる少なくとも1種を含有することを特徴とする請求項1に記載の鋼板。
  3. 前記鋼板の少なくとも一方の表面に、溶融亜鉛めっき層、合金化溶融亜鉛めっき層または電気亜鉛めっき層を有することを特徴とする請求項1または2に記載の鋼板。
  4. スプリングバック量が、180度曲げ試験によって測定される開口角度で4°以下であることを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の鋼板。
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