JP5639494B2 - フェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、この鋼で得られる降伏強度は800MPa程度までであるため、一層の高強度化を目指すべく、下記のような多くの取り組みがなされている。
また、一般的に、鋼を高強度化するに従い、延性は低下してしまうが、輸送機の構成部品として用いられる熱間鍛造部品では、疲労亀裂進展防止の観点から高延性化も重要な特性として求められている。
ここで、一つの部品内に強度差を付与させる技術としては、浸炭処理、肌焼処理、窒化処理、部分焼入れなど、熱処理を用いれば実現できることは知られているが、非調質で強度差を付与できる技術については報告されていない。
鍛造部品において高強度化を実現するためには、鋼の冷却中に変態と同時に起こる相界面析出を活用することにより、微細な析出物を均一に分散させることができ、大きな析出強化量を確保できることが知られている。ここで、本発明の目標とする降伏強度1000MPa以上を実現するには、加熱処理工程において炭化物形成元素を多量に固溶させておき、その後の変態で析出させる必要がある。しかし、非調質鍛造部品用の鋼に使われる中炭素鋼は炭素の含有量が多く、炭化物が非常に安定に形成されるため、炭化物形成元素を多量に溶かすことが難しい。加えて、非調質鍛造部品用の鋼は、冷却中に析出物を析出させる必要があるため、変態と同時に析出できるような析出強化能力のある元素を含有させることが重要である。この様な条件を満たす元素および含有量について検討した結果、Vが最適であり、目標の降伏強度とするには0.2質量%以上含有させることが必要であることを見出した。
一方、高強度化と高延性化を両立するには、再結晶オーステナイト粒を微細化させることが有効であるが、高温域で鍛造を行うと粗大な再結晶オーステナイト粒が形成され、延性が低下してしまう。ここで、本発明者らが検討した結果、Vが完全固溶するような高温域においても炭化物として析出し易いNbを含有させることにより、析出NbCが鍛造後の再結晶オーステナイト粒をピン止めし、延性が改善されることを見出した。また、添加Nbの一部は固溶し、フェライト変態、パーライト変態時にVと複合析出物(V,Nb)Cとして相界面析出して、析出強化に寄与することを見出した。
さらに、鍛造の後、再結晶オーステナイト粒が微細化し、粒界面が増加したことにより、フェライト変態、パーライト変態が高温で進行しやすくなった状態で、析出強化量の大きい、微細な(V,Nb)Cを相界面析出させるために、適切な冷却速度制御を行う必要があることを見出した。
以上の知見から、本発明者らは以下の本発明を創出した。
−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。)
その結果、高強度化させる部分(降伏強度:1000MPa以上)と低強度化させる部分(降伏強度:800MPa以下)との降伏強度の差の最大値を200MPa以上とするとともに、高強度化させる部分の延性を20%以上とすることができる。
−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。)
なお、フェライト−パーライト型とは、フェライト−パーライトを主体(例えばフェライト及びパーライトの合計が面積率で70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)とするものである。
本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる鋼は、C:0.20〜0.80質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.40〜1.00質量%、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下、V:0.20〜0.80質量%、Nb:0.02〜0.30質量%、N:0.0100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
以下に、本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる鋼の各組成を数値限定した理由について説明する。
Cを0.20質量%以上含有させると、Vおよび/またはNbと結び付き(V,Nb)Cを析出させ、析出強化量を高めることでフェライト−パーライトで鋼の降伏強度(ビッカース硬さ)の向上に寄与する。一方、Cの含有量が0.80質量%を超えると、フェライト変態やパーライト変態が抑制されるため、ベイナイトが形成されるようになり、相界面析出が起こらなくなることで降伏強度が低下する。
したがって、Cの含有量は、0.20〜0.80質量%とする。
なお、好ましくはCの含有量は、0.30〜0.60質量%、さらに好ましくは0.40〜0.50質量%である。
Siは、固溶強化で降伏強度(ビッカース硬さ)の向上に寄与するが、Siの含有量が0.50質量%を超えると、焼入れ性が高くなり、ベイナイトが形成され降伏強度低下の要因となる。
したがって、Siの含有量は、0.50質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
Mnは、固溶強化で降伏強度(ビッカース硬さ)の向上に寄与するが、Mnの含有量が1.00質量%を超えると、焼入れ性が高くなり、ベイナイトが形成され降伏強度低下の要因となる。また、Mnの含有量が0.40質量%未満であると、Mnの添加による降伏強度の向上の効果が得られない。
したがって、Mnの含有量は、0.40〜1.00質量%とする。
Pは、鋼に不可避的に含まれるが、Pの含有量が0.050質量%を超えると、鋼を脆化させてしまう。
したがって、Pの含有量は、0.050質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
Sは、鋼に不可避的に含まれ、Mnと反応しMnSを形成して切削性改善に寄与するが、Sの含有量が0.050質量%を超えると、延性を低下させてしまう。
したがって、S含有量は0.050質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
Vを0.20質量%以上含有させることにより、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライト中にV炭化物もしくは炭窒化物として析出することでフェライトおよびパーライトを強化し、降伏強度(ビッカース硬さ)を向上させることができる。一方、Vの含有量が0.80質量%を超えると、熱間鍛造工程後の冷却工程において、フェライト変態やパーライト変態が抑制されてベイナイトが形成されるようになり、降伏強度が低下してしまう。
なお、従来からVの添加は行われていたものの、後記する本発明に係る冷却工程のような冷却制御を行なわない場合は、フェライト−パーライト変態が抑制されてしまうことにより、ベイナイトが形成されたり、変態温度が低くなりすぎフェライト中のVCの相界面析出が起こりにくくなったりしてしまう。よって、逆に降伏強度の低下を招いてしまっていた。
前記事項を考慮し、本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる鋼のVの含有量は、0.20〜0.80質量%とする。
なお、好ましくはVの含有量は、0.35〜0.80質量%、さらに好ましくは0.45〜0.80質量%である。
Nbは、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライト中にVとともに炭化物および炭窒化物として析出することでフェライトおよびパーライトを強化し、非調質鍛造部品の降伏強度の高強度化に寄与する元素である。また、NbはVが完全に固溶するような高温域においても一部は未固溶状態のNbCとして存在する。そして、NbCがオーステナイト再結晶粒のピン止め粒子として作用し、再結晶オーステナイト組織の微細化に寄与する。その結果、高延性のフェライト−パーライト組織が得られる。
Nbの含有量が0.02質量%未満では、非調質鍛造部品において、オーステナイト粒が粗大化し、延性が低下する。一方で、Nbの含有量が0.30質量%を超えると、降伏強度および延性の向上効果が飽和する。
したがって、Nbの含有量は、0.02〜0.30質量%とする。
なお、Nbの含有量は、好ましくは0.05〜0.25質量%、さらに好ましくは0.15〜0.23質量%である。
Nは、VまたはNbと高温で結合して炭窒化物を形成する元素である。N量が0.0100質量%を超えると、粗大な炭窒化物を形成する。そして、高温域でNと結合した分、相界面析出で微細に析出させ得るV、Nb量が減少するので、その分析出強化量が低下し、降伏強度が低下するようになる。
したがって、Nの含有量は、0.0100質量%以下であり、好ましくは0.0090質量%以下、さらに好ましくは0.0080質量%以下である。なお、0質量%でもよい。
不可避不純物としては、例えば、Sn、Sb、O等が挙げられ、本発明の効果を妨げない範囲で含有することが許容される。
本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる被加工材は、前記組成の鋼から構成される。なお、当該被加工材に対し、後記する各工程の処理を施すことにより、十分な降伏強度および延性が付与された部分(高強度化させる部分)と、切削加工性を向上させるために降伏強度が抑えられた部分(低強度化させる部分)とを形成させる。
なお、本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる被加工材は、例えば、鋳造、鍛造加工、押出加工等によって準備すればよい。
なお、鍛造部品は、基本的に高強度化が要求されるものであるため、切削加工性を向上させる必要がある部分以外の全ての部分を、高強度化させる部分Xと判断してもよい。
加熱処理工程は、被加工材を、TNbCの範囲となるように加熱する工程である。
ここで、TNbCは、−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)で表される。ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。
なお、加熱処理工程は、図1の(a)→(b)の間の一部の工程である。
加熱処理工程は、被加工材をTNbCの範囲の加熱温度で加熱処理する工程で、被加工材のV全量、およびNbの一部が固溶化する。加熱温度がTNbCの範囲の下限未満であると、Nbが0.01質量%以上固溶せず、非調質鍛造部品において、微細な(V、Nb)C複合析出物が十分に生成せずに、降伏強度が低下する。加熱温度がTNbCの範囲の上限を超えると、未固溶Nbが0.01質量%以下となり、再結晶オーステナイト粒をピン止めするNbCが十分に確保されず、再結晶オーステナイト粒が粗大になり延性が低下する。
また、TNbCの範囲に加えて、加熱温度の上限は、鋼の溶融温度未満とすることが好ましく、設備の能力等から、1300℃程度とすることがさらに好ましい。
ここで、TNbCはNbCの溶解度積(今井勇之進、庄野凱旋夫、鉄と鋼、1966年、p.110)から式変形して導出した温度であり、当該温度範囲の下限未満の温度に加熱することで固溶Nbが0.01質量%以下となり、当該温度範囲の上限を超える温度に加熱することで未固溶Nbが0.01質量%以下となる。
なお、加熱処理工程での温度とは、加熱処理工程での被加工材の最高到達温度とする。
加熱処理工程において、被加工材をTNbCの範囲となるように加熱するが、加熱する手段については、特に限定されず、被加工材全体を、均一に加熱できるものであればよい。
加熱処理工程における熱履歴は、図2の時間t0→t2に示すとおりである。
時間t0→t1において、被加工材の温度をT0→T1まで上昇させるが、この間の加熱速度については、加熱手段の性能によるものであり、特に限定されない。しかし、図2に示すとおり、略均一の加熱速度で加熱するのが好ましい。なお、T1は、TNbCの範囲である。
時間t1→t2の加熱保持時間については、特に限定されないが、製造時の安定性、生産性の観点から、60秒以上、1時間以下が好ましい。
また、時間t0→t1の加熱時間についても、特に限定されないが、V、Nbの固溶量、設備の能力等から、60秒〜1時間が好ましい。
熱間鍛造工程は、加熱処理工程の後に、被加工材を、1050℃以上、加熱処理工程における被加工材に対する加熱温度以下として、熱間鍛造を行い、当該熱間鍛造により前記被加工材の真歪量を0.3以上とする工程である。
なお、熱間鍛造工程は、図1の(a)→(b)の間の一部の工程である。
熱間鍛造工程において、被加工材を、1050℃以上、加熱処理工程における被加工材に対する加熱温度以下として、熱間鍛造を行う。
熱間鍛造を行う直前に、被加工材の温度が、1050℃以上、加熱処理工程における被加工材に対する加熱温度以下となっていれば、熱間鍛造中の温度は特に限定されない。しかし、熱間鍛造を行う処理の間、被加工材の温度が1050℃以上、加熱処理工程における被加工材に対する加熱温度以下となっていることが好ましい。
ここで、1050℃以上と規定したのは、熱間鍛造にともなうオーステナイト中での粗大な(V,Nb)Cの析出を防止するためである。さらに、1050℃以上の高温域で熱間鍛造を行うことにより、熱間鍛造時の変形抵抗が低下する。熱間鍛造温度が1050℃未満となると、熱間鍛造時にオーステナイト中で粗大な(V,Nb)Cが析出する結果、フェライト変態時にフェライト中に相界面析出により生成する微細な(V,Nb)Cが減少し、高強度化させる部分Xにおいて、降伏強度が1000MPa未満となる。
熱間鍛造の温度範囲に加えて被加工材の真歪量が0.3以上と規定したのは、熱間鍛造時のオーステナイト粒の再結晶を促進し、NbCのピン止めにより、微細な再結晶オーステナイト粒を得て、延性を改善するからである。そして、真歪量が0.3未満となると、熱間鍛造時にオーステナイト粒が再結晶せず、延性が低下するからである。好ましくは真歪量が0.4以上となるような熱間鍛造、さらに好ましくは真歪量が0.5以上となるような熱間鍛造を行う。そして、真歪量は、熱間鍛造時の変形抵抗が高くなりすぎないよう、5.0以下であることが好ましい。
なお、真歪量は、ln[(熱間鍛造前の被加工材の断面積)/(熱間鍛造後の被加工材の断面積)]で計算された歪量である。
次に、熱間鍛造工程の具体的な手順を説明する。
加熱処理工程後、被加工材の温度が、1050℃以上、加熱処理工程における被加工材に対する加熱温度以下となるまで冷却する。ここでの冷却方法については、特に限定されない。
その後、被加工材に対し、熱間鍛造を行うが、熱間鍛造の装置、熱間鍛造の方法等については、特に限定されず、従来の装置を用いて従来の方法により行えばよい。また、熱間鍛造の回数についても、特に限定されず、1段または2段以上であればよい。
熱間鍛造工程の熱履歴は、図2の時間t2→t4に示すとおりである。
時間t2→t3において、被加工材の温度をT1→T2まで下げるが、この間の平均冷却速度については、特に限定されない。しかし、図2に示すとおり、略均一の冷却速度で冷却するのが好ましい。また、時間t3→t4の鍛造時間についても、特に限定されない。
なお、T2は、1050℃以上、加熱処理工程における被加工材に対する加熱温度以下である。
冷却工程は、熱間鍛造工程の後に行う工程であり、被加工材の高強度化させる部分Xについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から急冷停止温度までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となり、急冷停止温度から400℃までの平均冷却速度が、0.1℃/s以上、1.5℃/s以下となり、被加工材の低強度化させる部分Yについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から600℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように、被加工材を冷却する工程である。
ここで、急冷停止温度とは、被加工材の高強度化させる部分Xに対する急冷を停止させる温度であり、550〜720℃である。
なお、冷却工程は、図1の(b)→(d)で表わされる。
高強度化させる部分Xについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から急冷停止温度(550〜720℃)までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となるように冷却する。
ここで、フェライト変態、パーライト変態時に相界面析出させることにより高強度化を達成するためには、オーステナイト域での(V,Nb)Cの析出を防止する必要がある。しかし、本発明では、熱間鍛造の際に微細な再結晶オーステナイト粒が生じているため、粒界面が増加し、オーステナイト域での析出が起こりやすくなっている。よって、オーステナイト域での析出を防止するためにオーステナイト域での冷却速度を速くする必要がある。したがって、本発明で使用する鋼のフェライト変態開始温度である720℃以下までの平均冷却速度を3.0℃/s以上とした。好ましくは5.0℃/s以上である。ただし、3.0℃/s以上の速度で低温域まで急冷しすぎると、フェライト−パーライト変態ができずに、ベイナイトが形成されるようになるため、当該速度での冷却は、550℃以上までとした。
これは、本発明ではV、Nb添加により特にパーライト変態が遅延されるため、平均冷却速度が1.5℃/sを超えるとベイナイトやマルテンサイトが形成されてしまうからである。一方、平均冷却速度が0.1℃/s未満となると、フェライト−パーライト変態が高温化し、変態と同時に起こる相界面析出により形成される(V,Nb)Cが粗大化して析出強化量が低下するため、強度を確保することができなくなるからである。
低強度化させる部分Yについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から600℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように冷却する。
これは、熱間鍛造後、1.0℃/s以下で冷却すると、フェライト変態開始前にオーステナイト域で粗大な(V,Nb)Cが析出することにより、V、Nbの相界面析出量が減少し、析出強化量が低下するためである。また、1.0℃/s以下で冷却するとフェライト変態が開始する温度が高温化する。一般に、析出強化元素を本発明量程度添加した鋼を1050℃以上で熱間鍛造し、フェライト−パーライト組織となる範囲の速度で冷却すると、ある程度の析出強化が起こり、降伏強度800MPaを超えてしまうが、本発明では、特にNbCのピン止め効果により再結晶オーステナイト粒が微細化した結果、オーステナイト粒界面が増加し、フェライト変態が促進される。フェライト変態温度が高いと相界面析出が起こる際の(V,Nb)Cの析出駆動力が低下するので核生成する(V,Nb)Cサイズが粗大になったり、相界面析出自体が起こらなくなったりして析出強化量が小さなフェライトが形成される。好ましい平均冷却速度は0.8℃/s以下、さらに好ましい平均冷却速度は0.5℃/s以下である。なお、生産性の低下を防止するため、0.01℃/s以上であることが好ましい。
被加工材の高強度化させる部分Xと低強度化させる部分Yとを、異なる平均速度で冷却する必要があるため、高強度化させる部分Xのみに冷却材を吹き付けられるように低強度化させる部分Yを断熱材(ガラスウール等)で覆う。その後、高強度化させる部分Xにのみ冷却材を吹き付ける(図1の(c−1)等)。
なお、高強度化させる部分Xと低強度化させる部分Yとを、異なる平均速度で冷却できればよいため、前記方法のみに限定されることはなく、例えば、仕切り板等で冷却材が低強度化させる部分Yに当たらないようにするといった構成でもよい。
冷却工程の熱履歴は、図2の時間t4以降に示すとおりである。
時間t4→t5の高強度化させる部分Xの平均冷却速度については、3.0℃/s以上で、時間t5→t6の高強度化させる部分Xの平均冷却速度については、0.1℃/s以上、1.5℃/s以下である。そして、T3は、550〜720℃(急冷停止温度)であり、T4は、400℃である。
時間t4以降(600℃まで)の低強度化させる部分Yの平均冷却速度については、1.0℃/s以下である。
なお、時間t4以降の冷却速度については、本発明では平均値で規定しているが、図2に示しているように、略一定速度で冷却されることが好ましい。
表1に示す化学成分組成からなる円柱状(φ40.0mm×60mm)を呈する鋼を、全体が均一な温度となるように均一加熱した。
その後、供試材がφ20.0mmの円柱状を呈するように熱間押出(熱間鍛造)を行った。なお、熱間鍛造前に、一部の供試材については、空冷もしくは強制冷却により、表2の熱間鍛造温度まで冷却している。
熱間鍛造後、図1の(c−1)、(c−2)、(c−3)、(c−4)、(c−5)に示すような圧縮ガスおよび水を用いて冷却する方法、並びに、(c−6)に示すようなガラスウールで構成された断熱材で供試材を覆うことで徐冷する方法、および、(c−7)に示すように浸漬により水冷する方法を用いて、表2に示す平均冷却速度により供試材を冷却した。
なお、各条件の詳細な設定温度、時間等は表2に示した。
作製した鍛造部品の降伏強度および延性(全伸び)を以下のように評価した。
鍛造部品の高強度化させる部分Xと、低強度化させる部分Yそれぞれより、長さ方向と平行に微小引張試験片を作製した。サイズは図3に示すサブサイズの引張試験片とした。それぞれ引張試験を行い、降伏強度および全伸びを測定した。その結果を表2に示す。
評価方法については、高強度化させる部分X(表2では、高強度部と記載)の降伏強度が1000MPa以上であり、延性(全伸び)が20%以上、かつ、低強度化させる部分Y(表2では、低強度部と記載)の降伏強度が800MPa以下の場合を効果ありと評価し、それ以外の場合を効果なしと評価した。
なお、表2の加熱温度とは、図2のT1(t1→t2)であり、表2の均一加熱時間とは図2のt1→t2である。
表1に示すように、鋼種AのV含有量(0.10質量%)は、本発明が規定するV含有量の下限値(0.20質量%)よりも少なかった。よって、鋼種Aからなる供試材No.1は、高強度化させる部分の降伏強度が、813MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
また、表1に示すように、鋼種DのV含有量(1.00質量%)は、本発明が規定するV含有量の上限値(0.80質量%)よりも多かった。よって、鋼種Dからなる供試材No.17は、高強度化させる部分の降伏強度が、810MPaとなり、1000MPaを下回るとともに、高強度化させる部分の延性(全伸び)が19%となり、20%を下回る結果となった。
さらに、表1に示すように、鋼種EのNb含有量(0質量%)は、本発明が規定するNb含有量の下限値(0.02質量%)よりも少なかった。よって、鋼種Eからなる供試材No.18は、高強度化させる部分の降伏強度が、979MPaとなり、1000MPaを下回るとともに、高強度化させる部分の延性(全伸び)が18%となり、20%を下回る結果となった。
供試材No.6は、加熱処理工程において、供試材の均一加熱温度を1070℃とし、TNbCの下限よりも低かった。よって、高強度化させる部分の降伏強度が、872MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
供試材No.7は、加熱処理工程において、供試材の均一加熱温度を1350℃とし、TNbCの上限よりも高かった。よって、高強度化させる部分の延性(全伸び)が14%となり、20%を下回る結果となった。
供試材No.8は、熱間鍛造工程において、供試材の熱間鍛造温度を900℃とし、1050℃よりも低かった。よって、高強度化させる部分の降伏強度が、869MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
供試材No.9は、熱間鍛造工程において、供試材の真歪量を0.2とし、0.3よりも低かった。よって、高強度化させる部分の衝撃値が延性(全伸び)が13%となり、20%を下回る結果となった。
供試材No.10は、冷却工程において、高強度化させる部分Xの急冷停止温度までの平均冷却速度を1.2℃/sとし、3.0℃/sよりも遅かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、878MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
供試材No.11は、冷却工程において、低強度化させる部分Yの600℃までの平均冷却速度を3.0℃/sとし、1.0℃/sよりも速かった。よって、低強度化させる部分Yの降伏強度が、860MPaとなり、800MPaを上回る結果となった。
供試材No.12は、冷却工程において、急冷停止温度を750℃とし、720℃よりも高かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、808MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
供試材No.13は、冷却工程において、急冷停止温度を500℃とし、550℃よりも低かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、856MPaとなり、1000MPaを下回り、高強度化させる部分Xの延性(全伸び)が15%となり、20%を下回る結果となった。
供試材No.14は、冷却工程において、高強度化させる部分Xの400℃までの冷却速度を2.0℃/sとし、1.5℃/sよりも速かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、810MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
供試材No.15は、冷却工程において、高強度化させる部分Xの400℃までの冷却速度を0.08℃/sとし、0.1℃/sよりも遅かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、899MPaとなり、1000MPaを下回る結果となった。
供試材No.16は、冷却工程において、急冷停止温度を設定せず、浸漬により水冷する方法(c−7)により一気に冷却した。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、977MPaとなり、1000MPaを下回り、低強度化させる部分Yの降伏強度が、969MPaとなり、800MPaを上回り、高強度化させる部分の延性(全伸び)が6%となり、20%を下回る結果となった。
Claims (2)
- C:0.20〜0.80質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.40〜1.00質量%、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下、V:0.20〜0.80質量%、Nb:0.02〜0.30質量%、N:0.0100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用いて、
前記鋼からなる被加工材について、下記式(1)で算出されるTNbCとなるように加熱する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程の後に、前記被加工材を、1050℃以上、前記加熱処理工程における前記被加工材に対する加熱温度以下として、熱間鍛造を行い、当該熱間鍛造により前記被加工材の真歪量を0.3以上とする熱間鍛造工程と、
前記熱間鍛造工程の後に、前記被加工材の高強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から急冷停止温度までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となり、急冷停止温度から400℃までの平均冷却速度が、0.1℃/s以上、1.5℃/s以下となり、前記被加工材の低強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から600℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように、前記被加工材を冷却する冷却工程と、を含み、
前記高強度化させる部分とは、降伏強度を1000MPa以上とし、延性を20%以上とする部分であり、前記低強度化させる部分とは、降伏強度を800MPa以下とする部分であり、
前記急冷停止温度が550〜720℃である、ことを特徴とするフェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法。
−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。) - C:0.20〜0.80質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.40〜1.00質量%、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下、V:0.20〜0.80質量%、Nb:0.02〜0.30質量%、N:0.0100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用いて、
前記鋼からなる被加工材について、下記式(1)で算出されるTNbCとなるように加熱する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程の後に、前記被加工材を、1050℃以上、前記加熱処理工程における前記被加工材に対する加熱温度以下として、1段または2段以上の熱間鍛造を行い、当該熱間鍛造により前記被加工材の真歪量を0.3以上とする熱間鍛造工程と、
前記熱間鍛造工程の後に、前記被加工材の低強度化させる部分を断熱材で覆うとともに、前記被加工材の高強度化させる部分のみに冷却材を吹き付け、前記高強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から急冷停止温度までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となるように、前記被加工材を冷却し、
前記冷却後、前記被加工材の全体に冷却材を吹き付け、前記高強度化させる部分について、急冷停止温度から400℃までの平均冷却速度が、0.1℃/s以上、1.5℃/s以下となり、かつ、前記低強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から600℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように、前記被加工材を冷却する冷却工程と、を含み、
前記高強度化させる部分とは、降伏強度を1000MPa以上とし、延性を20%以上とする部分であり、前記低強度化させる部分とは、降伏強度を800MPa以下とする部分であり、
前記急冷停止温度が550〜720℃である、ことを特徴とするフェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法。
−14000/(log([%C]・0.01)−7.58)−273≦TNbC(℃)≦−14000/(log([%C]・([%Nb]−0.01))−7.58)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%Nb]は、前記C、前記Nbの各含有量(質量%)とする。)
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