JP5575601B2 - フェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、この鋼で得られる降伏強度は800MPa程度までであるため、一層の高強度化を目指すべく、下記のような多くの取り組みがなされている。
ここで、一つの部品内に強度差を付与させる技術としては、浸炭処理、肌焼処理、窒化処理、部分焼入れなど、熱処理を用いれば実現できることは知られているが、非調質で強度差を付与できる技術については報告されていない。
鍛造部品において高強度化を実現するためには、鋼の冷却中に変態と同時に起こる相界面析出を活用することにより、微細な析出物を均一に分散させることができ、大きな析出強化量を確保できることが知られている。ここで、本発明の目標とする降伏強度950MPa以上を実現するには、加熱処理工程において炭化物形成元素を多量に固溶させておき、その後の変態で析出させる必要がある。しかし、非調質鍛造部品用の鋼に使われる中炭素鋼は炭素の含有量が多く、炭化物が非常に安定に形成されるため、炭化物形成元素を多量に溶かすことが難しい。加えて、非調質鍛造部品用の鋼は、冷却中に析出物を析出させる必要があるため、変態と同時に析出できるような析出強化能力のある元素を含有させることが重要である。この様な条件を満たす元素および含有量について検討した結果、Vが最適であり、目標の降伏強度とするには0.2質量%以上含有させることが必要であることを見出した。
以上の知見から、本発明者らは以下の本発明を創出した。
TVC(℃)=−9500/(log([%C]・[%V])−6.72)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%V]は、前記C、前記Vの各含有量(質量%)とする。)
そして、冷却工程において、低強度化させる部分については、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から500℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように冷却させることにより、オーステナイト域で粗大なVCを析出させ、フェライト−パーライト変態時の相界面析出による微細析出を抑制することができる。
その結果、高強度化させる部分(降伏強度:950MPa以上)と低強度化させる部分(降伏強度:800MPa以下)との降伏強度の差の最大値を150MPa以上とすることができる。
TVC(℃)=−9500/(log([%C]・[%V])−6.72)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%V]は、前記C、前記Vの各含有量(質量%)とする。)
加えて、本発明に係るフェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法によれば、高強度化させる部分について、破壊に対する抵抗の一つの指標である絞りを向上させることができる。
なお、フェライト−パーライト型とは、フェライト−パーライトを主体(例えばフェライト及びパーライトの合計が面積率で70%以上、好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上)とするものである。
本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる鋼は、C:0.20〜0.80質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.40〜1.00質量%、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下、V:0.20〜0.80質量%、N:0.0100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる。
以下に、本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる鋼の各組成を数値限定した理由について説明する。
Cを0.20質量%以上含有させると、Vと結び付きV炭化物を析出させ、析出強化量を高めることでフェライト−パーライトで鋼の降伏強度(ビッカース硬さ)の向上に寄与する。一方、Cの含有量が0.80質量%を超えると、フェライト変態やパーライト変態が抑制されるため、ベイナイトが形成されるようになり、相界面析出が起こらなくなることで降伏強度が低下する。
したがって、Cの含有量は、0.20〜0.80質量%とする。
なお、好ましくはCの含有量は、0.30〜0.60質量%、さらに好ましくは0.40〜0.50質量%である。
Siは、固溶強化で降伏強度(ビッカース硬さ)の向上に寄与するが、Siの含有量が0.50質量%を超えると、焼入れ性が高くなり、ベイナイトが形成され降伏強度低下の要因となる。
したがって、Siの含有量は、0.50質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
Mnは、固溶強化で降伏強度(ビッカース硬さ)の向上に寄与するが、Mnの含有量が1.00質量%を超えると、焼入れ性が高くなり、ベイナイトが形成され降伏強度低下の要因となる。また、Mnの含有量が0.40質量%未満であると、Mnの添加による降伏強度の向上の効果が得られない。
したがって、Mnの含有量は、0.40〜1.00質量%とする。
Pは、鋼に不可避的に含まれるが、Pの含有量が0.050質量%を超えると、鋼を脆化させてしまう。
したがって、Pの含有量は、0.050質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
Sは、鋼に不可避的に含まれ、Mnと反応しMnSを形成して切削性改善に寄与するが、Sの含有量が0.050質量%を超えると、靭性を低下させてしまう。
したがって、S含有量は0.050質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
Vを0.20質量%以上含有させることにより、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライト中にV炭化物もしくは炭窒化物として析出することでフェライトおよびパーライトを強化し、降伏強度(ビッカース硬さ)を向上させることができる。一方、Vの含有量が0.80質量%を超えると、熱間鍛造工程後の冷却工程において、フェライト変態やパーライト変態が抑制されてベイナイトが形成されるようになり、降伏強度が低下してしまう。
なお、従来からVの添加は行われていたものの、後記する本発明に係る冷却工程のような冷却制御を行なわない場合は、フェライト−パーライト変態が抑制されてしまうことにより、ベイナイトが形成されたり、変態温度が低くなりすぎフェライト中のVCの相界面析出が起こりにくくなったりしてしまう。よって、逆に降伏強度の低下を招いてしまっていた。
前記事項を考慮し、本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる鋼のVの含有量は、0.20〜0.80質量%とする。
なお、好ましくはVの含有量は、0.35〜0.80質量%、さらに好ましくは0.45〜0.80質量%である。
Nは、Vと結合しV炭窒化物を形成することで析出強化に寄与するが、Nの含有量が0.0100質量%を超えると、加熱時に溶解しなくなり、粗大なV窒化物が形成される。その結果、VN近傍にVの枯渇領域が形成され、その周囲の析出強化量が低下し、降伏強度を低下させてしまう。
したがって、Nの含有量は、0.0100質量%以下とする。なお、0質量%でもよい。
不可避不純物としては、例えば、Sn、Sb、O等が挙げられ、本発明の効果を妨げない範囲で含有することが許容される。
本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる被加工材は、前記組成の鋼から構成される。なお、当該被加工材に対し、後記する各工程の処理を施すことにより、十分な降伏強度が付与された部分(高強度化させる部分)と、切削加工性を向上させるために降伏強度が抑えられた部分(低強度化させる部分)とを形成させる。
なお、本発明に係る鍛造部品の製造方法で用いる被加工材は、例えば、鋳造、鍛造加工、押出加工等によって準備すればよい。
なお、鍛造部品は、基本的に高強度化が要求されるものであるため、切削加工性を向上させる必要がある部分以外の全ての部分を、高強度化させる部分Xと判断してもよい。
加熱処理工程は、被加工材を、下記式(1)で算出されるTVC+50℃以上、1350℃以下となるように加熱する工程である。
ここで、TVCは、TVC(℃)=−9500/(log([%C]・[%V])−6.72)−273・・・(1)で表される。ただし、前記式(1)において、[%C]、[%V]は、前記C、前記Vの各含有量(質量%)とする。
なお、加熱処理工程は、図1の(a)→(b)の間の一部の工程である。
加熱処理工程において、被加工材を、TVC+50℃以上、1350℃以下となるように加熱する。これは、VCが完全に固溶する温度TVCから、さらに50℃上げた温度(TVC+50℃)以上に加熱することで、鋼のVCを完全に固溶させるためである。
ここで、TVCはVCの溶解度積(日本鉄鋼協会、鉄鋼便覧第3版、第1巻基礎、1981年、p.412)から式変形して導出した温度であり、当該温度以上に加熱することで鋼のVCは完全に固溶する。なお、実際には、当該温度に加熱しても加熱時間が短いとVCが完全には固溶しない場合があるので、加熱時間によらず完全にVCを固溶できる温度として、TVC+50℃以上という温度を規定した。
なお、加熱処理工程での温度とは、加熱処理工程での被加工材の最高到達温度とする。
加熱処理工程において、被加工材をTVC+50℃以上、1350℃以下となるように加熱するが、加熱する手段については、特に限定されず、被加工材全体を、均一に加熱できるものであればよい。
加熱処理工程における熱履歴は、図2の時間t0→t2に示すとおりである。
時間t0→t1において、被加工材の温度をT0→T1まで上昇させるが、この間の加熱速度については、加熱手段の性能によるものであり、特に限定されない。しかし、図2に示すとおり、略均一の加熱速度で加熱するのが好ましい。なお、T1は、TVC+50℃以上、1350℃以下である。
時間t1→t2の加熱保持時間については、特に限定されないが、製造時の安定性、生産性の観点から、60秒以上、1時間以下が好ましい。
熱間鍛造工程は、加熱処理工程の後に行う工程であり、被加工材を、AC3点以上、950℃以下として、熱間鍛造を行い、当該熱間鍛造により前記被加工材の相当歪量を0.2以上とする工程である。
なお、熱間鍛造工程は、図1の(a)→(b)の間の一部の工程である。
熱間鍛造工程において、被加工材を、AC3点以上、950℃以下として、熱間鍛造を行う。また、当該熱間鍛造により前記被加工材の相当歪量を0.2以上とする。
熱間鍛造を行う直前に、被加工材の温度が、AC3点以上、950℃以下となっていれば、熱間鍛造中の温度は特に限定されない。しかし、熱間鍛造を行う処理の間、被加工材の温度がAC3点以上、950℃以下となっていることが好ましい。
ここで、950℃以下と規定したのは、高強度化させる部分Xについて、熱間鍛造中および熱間鍛造後のオーステナイトの再結晶、粗大化を防止することにより、絞りを高めるためである。一方、AC3点以上と規定したのは、AC3点未満となると、低強度化させる部分Yについて、鍛造前にフェライトが形成された状態となり、この状態で鍛造を行うと、フェライト中に歪が導入され強度が高まってしまい、低強度化を確保できなくなるからである。
さらに、相当歪量0.2以上と規定したのは、低強度化させる部分Yについて、オーステナイト域でVCを粗大に分散させる必要があり、そのためには、VCの核生成サイトとなる転位をオーステナイト中に残存させなければならないからである。なお、相当歪量は生産性の観点より、7以下であることが好ましい。
また、相当歪とは、Von Miesesの降伏応力に対応する相当歪で、下式(2)で計算される歪をいう。なお、下式(1)において、相当歪を(ε)、長さ方向の真歪を(ε1)、幅方向の真歪を(ε2)、厚さ方向の真歪を(ε3)で示す。
加熱処理工程後、被加工材の温度がAC3点以上、950℃以下となるまで冷却する。ここでの冷却方法については、特に限定されない。
その後、被加工材に対し、熱間鍛造を行うが、熱間鍛造の装置、熱間鍛造の方法等については、特に限定されず、従来の装置を用いて従来の方法により行えばよい。また、熱間鍛造の回数についても、特に限定されず、1段または2段以上であればよい。
熱間鍛造工程の熱履歴は、図2の時間t2→t4に示すとおりである。
時間t2→t3において、被加工材の温度をT1→T2まで下げるが、この間の平均冷却速度については、特に限定されない。しかし、図2に示すとおり、略均一の冷却速度で冷却するのが好ましい。また、時間t3→t4の鍛造時間についても、特に限定されない。
なお、T2は、AC3点以上、950℃以下である。
冷却工程は、熱間鍛造工程の後に行う工程であり、被加工材の高強度化させる部分Xについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から急冷停止温度までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となり、急冷停止温度から500℃までの平均冷却速度が、0.5℃/s以上、2.0℃/s以下となり、被加工材の低強度化させる部分Yについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から500℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように、被加工材を冷却する工程である。
ここで、急冷停止温度とは、被加工材の高強度化させる部分Xに対する急冷を停止させる温度であり、550℃〜700℃である。
なお、冷却工程は、図1の(b)→(d)で表わされる。
高強度化させる部分Xについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から急冷停止温度(550℃〜700℃)までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となるように冷却する。
ここで、フェライト変態、パーライト変態時に相界面析出させることにより高強度化を達成するためには、オーステナイト域でのVCの析出を防止する必要がある。しかし、本発明では、熱間鍛造を低温域で、かつ、一定以上の相当歪量が生じるように実施しているので、転位が残存し、転位上析出が起こるためオーステナイト域での析出が起こりやすくなっている。よって、オーステナイト域での析出を防止するためにオーステナイト域での冷却速度を速くする必要がある。したがって、本発明で使用する鋼のフェライト変態開始温度である700℃以下までの平均冷却速度を3.0℃/s以上とした。ただし、3.0℃/s以上の速度で急冷しすぎると、フェライト−パーライト変態ができずに、ベイナイトが形成されるようになるため、当該速度での冷却は、550℃以上までとした。
なお、急冷停止温度を適正に制御するという観点より、急冷停止温度までの平均冷却速度は、100℃/s以下であることが好ましい。
これは、本発明ではV添加により特にパーライト変態が遅延されるため、平均冷却速度が2.0℃/sを超えるとベイナイトやマルテンサイトが形成されてしまうからである。一方、平均冷却速度が0.5℃/s未満となると、フェライト−パーライト変態が高温化し、変態と同時に起こる相界面析出により形成されるVCが粗大化して析出強化量が低下するため、強度を確保することができなくなるからである。
低強度化させる部分Yについて、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から500℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように冷却する。
これは、熱間鍛造工程終了時の被加工材の温度から急冷停止温度(550℃〜700℃)までについては、低冷却速度 (1.0℃/s以下)で冷却することにより、オーステナイト域でVCを粗大に析出させることで、フェライト−パーライト変態時の相界面析出による微細析出を抑制させるためである。一方、急冷停止温度(550℃〜700℃)から500℃までについては、オーステナイト域においてVCの析出を促進してもフェライト−パーライト変態時にある程度の相界面析出は避けられない。しかし、相界面析出は変態温度が高ければ粗大に形成され析出強化量が低下するので、フェライト−パーライトが形成される変態温度を高めて強度を低下させるために、平均冷却速度を1.0℃/s以下とした。なお、生産性の低下を防止するため、0.01℃/s以上であることが好ましい。
被加工材の高強度化させる部分Xと低強度化させる部分Yとを、異なる平均速度で冷却する必要があるため、高強度化させる部分Xのみに冷却材を吹き付けられるように低強度化させる部分Yを断熱材(ガラスウール等)で覆う。その後、高強度化させる部分Xにのみ冷却材を吹き付ける(図1の(c−1))。
なお、高強度化させる部分Xと低強度化させる部分Yとを、異なる平均速度で冷却できればよいため、前記方法のみに限定されることはなく、例えば、仕切り板等で冷却材が低強度化させる部分Yに当たらないようにするといった構成でもよい。
冷却工程の熱履歴は、図2の時間t4以降に示すとおりである。
時間t4→t5の高強度化させる部分Xの平均冷却速度については、3.0℃/s以上で、時間t5→t6の高強度化させる部分Xの平均冷却速度については、0.5℃/s以上、2.0℃/s以下である。
時間t4→t7の低強度化させる部分Yの平均冷却速度については、1.0℃/s以下である。なお、T3は、550℃〜700℃(急冷停止温度)であり、T4は、500℃である。
なお、時間t4→t7の冷却速度については、本発明では平均値で規定しているが、図2に示しているように、略一定速度で冷却されることが好ましい。
表1に示す化学成分組成からなる円柱状(φ40mm×60mm)を呈する鋼を、全体が均一な温度となるように均一加熱した。
その後、供試材がφ28.1mmの円柱状を呈するように熱間押出(熱間鍛造)を行った。なお、熱間鍛造前に、一部の供試材については、空冷もしくは強制冷却により、表2の熱間鍛造温度まで冷却している。
熱間鍛造後、図1の(c−1)、(c−2)、(c−3)、および、(c−4)に示すような圧縮ガスを用いて冷却する方法、並びに、(c−5)に示すようなガラスウールで構成された断熱材で供試材を覆うことで徐冷する方法を用いて、表2に示す平均冷却速度により供試材を冷却した。
なお、各条件の詳細な設定温度、時間等は表2に示した。
円柱状(φ3mm×7mm)を呈する丸棒試験片を、供試材の高強度化させる部分Xと、低強度化させる部分Yからそれぞれ切り出し、当該丸棒試験片の降伏強度をJIS Z2241 に記載のオフセット法により測定した。
なお、丸棒試験片の長手方向が供試材の径方向となるように、供試材から丸棒試験片を切り出した。
評価方法については、高強度化させる部分X(表2では、高強度部と記載)の降伏強度が950MPa以上であるとともに、低強度化させる部分Y(表2では、低強度部と記載)の降伏強度が800MPa以下であり、さらに、高強度化させる部分の絞り(RA)が30%以上となる場合を、効果ありと評価し、それ以外の場合を効果なしと評価した。
なお、表2の均一加熱温度とは、図2のT1であり、表2の均一加熱時間とは図2のt1→t2である。
表1に示すように、鋼種AのV含有量(0.10質量%)は、本発明が規定するV含有量の下限値(0.20質量%)よりも少なかった。よって、鋼種Aからなる供試材No.1は、高強度化させる部分の降伏強度が、700MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
また、表1に示すように、鋼種DのV含有量(1.00質量%)は、本発明が規定するV含有量の上限値(0.80質量%)よりも多かった。よって、鋼種Dからなる供試材No.4は、高強度化させる部分の降伏強度が、841MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
供試材No.5は、加熱処理工程において、供試材の均一加熱温度を1050℃とし、TVC+50℃(1066℃)よりも低かった。よって、高強度化させる部分の降伏強度が、921MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
供試材No.6は、熱間鍛造工程において、供試材の熱間鍛造温度を1150℃とし、950℃よりも高かった。よって、低強度化させる部分Yの降伏強度が、1020MPaとなり、800MPaを上回る結果となった。また、高強度化させる部分の絞り(RA)が10%となり、30%を下回る結果となった。
供試材No.7は、熱間鍛造工程において低強度化させる部分Yの相当歪量を0.1とし、0.2よりも低かった。よって、低強度化させる部分Yの降伏強度が、874MPaとなり、800MPaを上回る結果となった。
供試材No.8は、冷却工程において、高強度化させる部分Xの急冷停止温度までの平均冷却速度を1.8℃/sとし、本発明が規定する当該平均冷却速度の下限値(3.0℃/s)よりも遅かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、875MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
供試材No.9は、冷却工程において、高強度化させる部分Xの急冷停止温度から500℃までの平均冷却速度を0.1℃/sとし、本発明が規定する当該平均冷却速度の下限値(0.5℃/s)よりも遅かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、888MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
供試材No.10は、冷却工程において、高強度化させる部分Xの急冷停止温度から500℃までの平均冷却速度を2.5℃/sとし、本発明が規定する当該平均冷却速度の上限値(2.0℃/s)よりも速かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、895MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
供試材No.12は、冷却工程において、急冷停止温度を750℃とし、本発明が規定する急冷停止温度の上限値(700℃)よりも高かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、910MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。
供試材No.13は、冷却工程において、急冷停止温度を500℃とし、本発明が規定する急冷停止温度の下限値(550℃)よりも低かった。よって、高強度化させる部分Xの降伏強度が、870MPaとなり、950MPaを下回る結果となった。また、高強度化させる部分の絞り(RA)が8%となり、30%を下回る結果となった。
また、本発明に係る鍛造部品の製造方法によると、高強度化させる部分について、破壊に対する抵抗の一つの指標である絞りを向上させることができることがわかった。
Claims (2)
- C:0.20〜0.80質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.40〜1.00質量%、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下、V:0.20〜0.80質量%、N:0.0100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用いて、
前記鋼からなる被加工材を、下記式(1)で算出されるTVC+50℃以上、1350℃以下となるように加熱する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程の後に、前記被加工材を、AC3点以上、950℃以下として、熱間鍛造を行い、当該熱間鍛造により前記被加工材の相当歪量を0.2以上とする熱間鍛造工程と、
前記熱間鍛造工程の後に、前記被加工材の高強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から急冷停止温度までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となり、急冷停止温度から500℃までの平均冷却速度が、0.5℃/s以上、2.0℃/s以下となり、前記被加工材の低強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から500℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように、前記被加工材を冷却する冷却工程と、を含み、
前記急冷停止温度が550℃〜700℃であり、
前記高強度化させる部分の降伏強度を950MPa以上とし、前記高強度化させる部分と前記低強度化させる部分との降伏強度の差の最大値を150MPa以上とすることを特徴とするフェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法。
TVC(℃)=−9500/(log([%C]・[%V])−6.72)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%V]は、前記C、前記Vの各含有量(質量%)とする。) - C:0.20〜0.80質量%、Si:0.50質量%以下、Mn:0.40〜1.00質量%、P:0.050質量%以下、S:0.050質量%以下、V:0.20〜0.80質量%、N:0.0100質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避不純物からなる鋼を用いて、
前記鋼からなる被加工材を、下記式(1)で算出されるTVC+50℃以上、1350℃以下となるように加熱する加熱処理工程と、
前記加熱処理工程の後に、前記被加工材を、AC3点以上、950℃以下として、1段または2段以上の熱間鍛造を行い、当該熱間鍛造により前記被加工材の相当歪量を0.2以上とする熱間鍛造工程と、
前記熱間鍛造工程の後に、前記被加工材の低強度化させる部分を断熱材で覆うとともに、前記被加工材の高強度化させる部分のみに冷却材を吹き付け、前記高強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から急冷停止温度までの平均冷却速度が、3.0℃/s以上となるように、前記被加工材を冷却し、
前記冷却後、前記被加工材の全体に冷却材を吹き付け、前記高強度化させる部分について、急冷停止温度から500℃までの平均冷却速度が、0.5℃/s以上、2.0℃/s以下となり、かつ、前記低強度化させる部分について、前記熱間鍛造工程終了時の前記被加工材の温度から500℃までの平均冷却速度が、1.0℃/s以下となるように、前記被加工材を冷却する冷却工程と、を含み、
前記急冷停止温度が550℃〜700℃であり、
前記高強度化させる部分の降伏強度を950MPa以上とし、前記高強度化させる部分と前記低強度化させる部分との降伏強度の差の最大値を150MPa以上とすることを特徴とするフェライト−パーライト型非調質鍛造部品の製造方法。
TVC(℃)=−9500/(log([%C]・[%V])−6.72)−273・・・(1)
(ただし、前記式(1)において、[%C]、[%V]は、前記C、前記Vの各含有量(質量%)とする。)
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