JP6432932B2 - 耐ピッチング性および耐摩耗性に優れる高強度高靱性機械構造用鋼製部品およびその製造方法 - Google Patents

耐ピッチング性および耐摩耗性に優れる高強度高靱性機械構造用鋼製部品およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、高面圧が負荷される機械構造用鋼製部品に用いられる、ガス浸炭、真空浸炭などを施して製造される歯車やシャフトなどに用いられる耐ピッチング性および耐磨耗性だけでなく、高強度(曲げ疲労強度、ねじり疲労強度)でありながら高靭性も求められる機械構造用鋼製部品とその製造方法に関する。
機械構造用鋼製部品、例えば、歯車などの高面圧を受ける部品は、鋼材を熱間鍛造、冷間鍛造、切削などの工法により部品形状に成形したのち、ガス浸炭や真空浸炭などを施してから、必要に応じてショットピーニング等の追加処理を施してから使用に供される。浸炭処理は鋼をオーステナイト化温度以上の高温に加熱することで鋼に対するCの固溶限を高めた状態にしたのち、鋼表面からCを内部に浸入させる処理である。一般には浸炭処理により鋼部品の表面に0.8%程度のCを浸入させる。その後は浸炭温度から直接的に焼入れする、あるいは浸炭温度から一般的な焼入れ温度程度まで冷却してから焼き入れする、あるいは浸炭処理後にいったん冷却し、再加熱してから焼入れする、といった焼入れとそれに続く焼戻しが行われる。このような浸炭部品では0.8%程度のCを含有する表面においても、通常は炭化物がほとんど析出していない。それとは対照的に、浸炭状態の鋼表面と同様の0.8%程度のC量を含む鋼を溶製法によって製造した場合には、浸炭を行わずに浸炭と同様の熱履歴のみを与えると鋼中のCはオーステナイト中への固溶限の制限により鋼中に固溶できないものが炭化物として鋼中に残存する。このような炭化物は、粒界に析出すると靭性に対して悪影響があるが、一方、耐磨耗性を向上するという有益な効果をもたらす。
そこで、耐面圧部品に用いられる浸炭部品に対して、この炭化物の効用を付与する考え方が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。すなわち、この特許文献1では、耐高面圧部材およびその製造方法が提案されており、耐高面圧部品とするためのM3C炭化物制御について規定されている。また、浸炭部品およびその製造方法が提案されている(例えば、特許文献2参照。)。この特許文献2では、鋼部品の表面のC濃度を1.2%以上の高濃度にすることで炭化物を析出させ、軟化抵抗性を高めることで耐ピッチング性を高める技術が提示されている。一方、耐高面圧部品においては、作動環境によっては例えば歯元などに強い衝撃荷重が負荷される場合があり、そのような部品では衝撃強度も必要となる。それに対して、上記した特許文献においては、例えば特許文献1では、結晶粒を微細化するための規定はなされておらず、また結晶粒が微細化しているという示唆や開示もないので、高靭性化の効果は得られていないと考えられる。同様に、特許文献2においても、結晶粒を微細化するという示唆や開示はみられない。かつ、鋼部品の表面のC量を高濃度とする必要があることから、鋼の靭性が低下するので衝撃特性に劣るものとなる。
一方、本願と発明者が重複する特許文献3では、浸炭焼入れ後に1回以上の繰返し焼入れを行ってから、焼戻しを施し、さらに浸炭異常層を除去する方法による高強度浸炭部品の製造方法が提案されている。この特許文献3の方法では、衝撃強度および曲げ強度が優れたものとなるが、本願において後述するような浸炭表層のC量の規定や、炭化物粒径や面積率の規定が無く、したがって、耐ピッチング性や耐磨耗性に優れたものであるかどうかは不明である。また、特許文献3の方法では、結晶粒を過度に微細化することで、焼入性が低下するため、部品の大きさが大きくなると、マルテンサイト変態温度の低い浸炭層内に不完全焼入れが発生する可能性が高く、汎用性の点で課題が残っている。
以上に記載した事柄を鑑みて、本願の発明者は、耐ピッチング性および耐磨耗性だけでなく、高強度高靭性を備えた機械構造用鋼製部品とその製造方法について鋭意研究を行った。その結果、高強度高靭性を得るために有効な結晶粒微細化に関し、平均結晶粒径が5μm程度以下となるような極端な微細化を行わなくても、表層の平均結晶粒径が8.0μm以下程度で、かつ炭化物の大きさや面積率を制御されたものとすることによって、十分な高靭性が得られることを見出した。さらに、この炭化物規制を通じて、耐ピッチング性および耐磨耗性にも優れることが明らかとなった。
特開2002−348615号公報 特開2006−161141号公報 特開2009−114484号公報
発明が解決しようとする課題は、高面圧が負荷される歯車やシャフトなどの機械構造用鋼製部品の部品素材にガス浸炭や真空浸炭などを施して製造する歯車やシャフトなどの耐ピッチング性および耐磨耗性に優れ、さらに曲げ疲労強度やねじり疲労強度などが高強度であり、その上に高靭性でもある機械構造用鋼製部品およびその製造方法を提供することである。
上記の課題を解決するための本発明の手段は、請求項1の手段では、質量%で、C:0.14〜0.50%、Si:0.15〜0.80%、Mn:0.10〜0.60%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Cr:1.60〜3.00%、Al:0.015〜0.060%、N:0.030%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、最表面〜表面下0.2mmまでの範囲の領域において円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.5%〜5.0%析出しており、なおかつ最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域における平均結晶粒径が8.0μm以下であって、靭性は衝撃値比で1.5以上、曲げ疲労強度は負荷応力比で1.4以上、耐ピッチング性はピッチング発生までの平均サイクル数の比で2.0以上、および耐磨耗比は比磨耗量で0.5以下であることを特徴とする耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品である。
請求項2の手段では、請求項1に記載の鋼成分に加えて、質量%でNi:0.2〜2.0%、Mo:0.06〜0.50%、B:0.0010〜0.0050%、Ti:0.020〜0.200%、Nb:0.02〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域において円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.50%〜5.00%析出しており、なおかつ最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域における平均結晶粒径が8.0μm以下であって、靭性は衝撃値比で1.5以上、曲げ疲労強度は負荷応力比で1.4以上、耐ピッチング性はピッチング発生までの平均サイクル数の比で2.0以上、および耐磨耗比は比磨耗量で0.5以下であることを特徴とする耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品である。
ただし、上記の選択成分のうち、Tiおよび/またはBを含有する場合は、請求項1の鋼成分におけるNの値は、N:0.010%未満とする。
請求項3の手段では、上記の請求項1または請求項2に記載の鋼成分からなる機械構造用鋼製部品素材の浸炭の加熱温度を880〜1030℃とし、浸炭表層のC濃度を0.70〜0.90%とする浸炭後に、焼入れを行わずに浸炭温度から浸炭表層におけるAr3点に対して50℃以上低い温度である冷却終了温度までの温度範囲を平均1.5℃/s以下の冷却速度で冷却し、再び850〜900℃に加熱してから焼入れし、次いで焼戻し処理を施す工程からなり、最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域において円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.50%〜5.00%析出しており、なおかつ最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域における平均結晶粒径が8.0μm以下であることを特徴とする耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品の製造方法である。
焼入れを行なわずに浸炭温度から浸炭表層におけるAr3点に対して50℃以上低い温度である冷却終了温度は、200℃以下であることを特徴とする請求項3に記載の耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品の製造方法である。
本発明の手段により、所定の化学成分を有する機械構造用鋼を熱間鍛造方法、亜熱間鍛造方法、切削方法もしくはそれらの複数の方法を組み合せた方法で歯車やシャフトなどの機械構造用鋼の部品素材を製造してから、該部品素材に浸炭を行い、浸炭後の焼入れを行なわずにいったん冷却した後、再加熱して焼入れおよび焼戻しを行い、その後、必要に応じて切削、研削、研磨、ショットブラスト、ショットピーニング、ハードショットピーニング、微粒子ショットピーニングなどの方法のいずれか1種またはこの中の複数の方法からなる表面処理を行った状態で、その部品素材の最表面〜0.2mmの範囲において円相当換算直径で平均で0.1〜0.3μmの炭化物を面積率で2.50〜5.00%析出せしめ、最表面〜0.2mmの範囲の平均結晶粒径を8.0μm以下とすることにより、耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性を有する機械構造用鋼製部品とすることで、自動車や、建設機械や、工作機械などのギアやシャフトなどの小型軽量化および長寿命化に寄与できるなどの優れた効果を奏するものである。
ローラーピッチング試験片を示す図である。 本発明の製造方法による機械構造用鋼からなる機械構造用鋼製部品における炭化物分散状態を示すミクロ写真である。
本発明の機械構造用鋼製部品における鋼成分の限定理由および該機械構造用鋼製部品の製造方法における技術手段の限定理由について以下に説明する。なお、鋼の化学成分における%は質量%を示す。
C:0.14〜0.50%、望ましくは0.15〜0.30%
Cは、機械構造用鋼製部品としての部品の浸炭処理後の芯部強度を確保するために必要な元素である。しかし、Cが0.14%未満ではその効果は十分に得られず、曲げ疲労強度が低下する。一方、Cが0.50%を超えると加工性が低下し、かつ焼入れ後の芯部硬さが硬くなり過ぎるために靱性および曲げ疲労強度が低下する。そこで、Cは0.14〜0.50%とし、望ましくは0.15〜0.30%とする。
Si:0.15〜0.80%、望ましくは0.35〜0.75%
Siは、溶製時の脱酸に必要な元素であり、また、鋼材の耐面圧性を高める元素である。しかし、Siが0.15%未満ではそれらの効果が十分に得られず、0.80%を超えると加工性が低下し、また、Siは浸炭部品表面の靭性を低下させる粒界酸化を助長する。さらに、Siは浸炭中の炭化物の形成を阻害する作用ももたらす。そこで、Siは0.15〜0.80%とし、望ましくは0.35〜0.75%とする。
Mn:0.10〜0.60%
Mnは、焼入性を確保するために必要な元素である。しかし、Mnが0.10%未満では焼入性の効果は十分に得られず、0.60%を超えると浸炭後の再加熱後の焼入れ時の結晶粒径を過度に微細化して、かえって粒成長による混粒組織や粗大粒組織を形成しやすくなり、靭性を劣化させる。そこで、Mnは0.10〜0.60%とする。
P:0.025%以下、望ましくは0.020%以下
Pは、溶製時にスクラップから含有される不可避な元素である。ただし、Pはオーステナイト粒界に偏析して衝撃強度や曲げ強度などの靱性を低下する元素である。そこで、Pは0.025%以下に制限する必要があり、望ましくは0.020%以下とする。
S:0.025%以下、望ましくは0.015%以下
Sは、被削性を向上させる元素である。しかし、非金属介在物であるMnSを生成して横方向の靱性および疲労強度を低下する。そこで、Sは0.025%以下とし、望ましくは0.015%以下とする。
Cr:1.60〜3.00%、望ましくは、1.80〜2.70%、さらに望ましくは1.80〜2.50%
Crは、浸炭後の再加熱後の焼入れ時の結晶粒の微細化ならびに粗大化の抑制に不可欠な炭化物の析出を促す必須の元素である。これらの効果を得るために、Crは1.60%以上必要である。一方、Crは過剰に添加すると加工性を損ない、また、浸炭性を阻害する。そこで、Crは1.60〜3.00%、望ましくは1.80〜2.70%、さらに望ましくは1.80〜2.50%とする。ところで、Crを1.60%以上添加した鋼では、表層で0.70〜0.90%の浸炭を施した後、いったん冷却する過程において、浸炭中に鋼中に過飽和に固溶したCのうちの若干量が炭化物として析出し、それに続く冷却と再加熱後の焼入れの昇温過程において依然、過飽和に固溶していたCの大部分が炭化物として析出し、マトリクスから排出される。このとき、炭化物はオーステナイト析出時の核として機能するとともに、析出したオーステナイトの成長を抑える働きをする。また、過飽和のCが吐き出されることでマトリクスの靭性が急回復する。
Ni:0.20〜2.00%
Niは、焼入性および靱性を向上させる元素であり、そのためには0.20%以上を添加するものとする。しかし、Niは2.0%を超えて含有されると、圧延あるいは鍛造後にベイナイトやマルテンサイト組織を形成し加工性を著しく低下させ、また浸炭後の冷却時にマルテンサイトを発生させやすくする。さらに、過剰なNiの添加はコストアップを招く。そこで、Niは0.20〜2.00%とする。
Mo:0.06〜0.50%
Moは、焼入性および靱性を向上させる元素であり、そのためには0.06%以上を添加するものとする。しかし、Moは0.50%を超えて含有されると、加工性を低下させやすくしたり、浸炭後の冷却時にマルテンサイトを発生させやすくする。そこで、Moは0.06〜0.50%とする。
Al:0.015〜0.060%、望ましくは0.020〜0.060%
Alは、脱酸材として使用される元素であり、またNと結合してAlNとして析出することで、結晶粒粗大化抑制効果をもたらす元素である。この効果を得るためには、Alは0.015%以上を添加する必要がある。一方、Alは0.060%を超えると、アルミナ系酸化物が増加し、疲労特性および加工性を低下する。そこで、Alは0.015〜0.060%とし、望ましくは0.020〜0.060%とする。
N:0.030%以下、望ましくは0.010〜0.025%
Nは、鋼中でAlNやNb窒化物として微細析出し、結晶粒粗大化を防止する効果を有するため含有させるのが良い。しかし、Nが0.030%を超えると大型の窒化物が増加し、疲労強度や加工性が低下する。そこで、請求項1の発明では、Nは0.030%以下、望ましくは0.010〜0.025%とする。また、請求項2の発明のうち、後述するTi、Bを含有する鋼材以外の発明においても、同様のN量とする。
N:0.010%未満、望ましくは0.005%未満
請求項2の発明による鋼材のうち、特にTiを含有する鋼材では、Nが0.010%以上含有されると、TiNが過剰に生成して加工性や疲労強度を損なう。また、Bを含有する鋼材では、Nが0.010%以上含有されると、化合物のBNが生成して固溶Bが減少し、焼入性の向上効果が阻害される。そこで、請求項2に記載の発明のうち、Ti、および/またはBを含有する発明では、N:0.010%未満とする。望ましくは0.005%未満とする。
Ti:0.020〜0.200%、望ましくは0.020〜0.080%、さらに望ましくは0.020〜0.049%
Tiは、鋼中のfree−Nを固定し、BがNと結合してBNとなることを防ぐことでBの焼入性の効果を向上させると共に、Ti炭化物、Tiを含有する複合炭化物、Ti窒化物を微細に析出させることによって、AlNに代って浸炭時のオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制するために必要な元素である。特に、鋼中に微細分散したナノオーダーのTiCが結晶粒の成長を抑制する。Tiが0.020%未満ではこれらの効果が十分には得られない。一方、0.200%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を低下する。そこで、Tiは0.020〜0.200%、望ましくは0.020〜0.080%、さらに望ましくは0.020〜0.049%とする。
Nb:0.02〜0.20%、望ましくは0.04〜0.10%、さらに望ましくは0.05〜0.08%
Nbは、炭化物あるいは窒化物を形成し、Ti同様にオーステナイト結晶粒度の粗大化を抑制する効果を有する。特に、鋼中に微細に分散したナノオーダーのNbCが結晶粒の成長を抑制する。Nbが0.02%未満ではその効果が得られず、0.20%を超えると析出物の量が過剰となり加工性を阻害する。そこで、Nbは0.02〜0.20%、望ましくは0.04〜0.10%とする。さらに望ましくはNbは0.05〜0.08%とする。
B:0.0010〜0.0050%
Bは、極少量の含有によって鋼の焼入性を著しく向上させる元素で、選択的に含有される。しかし、0.0010%未満では焼入性の向上効果が小さく、0.0050%を超えると強度を低下する。そこで、Bは0.0010〜0.0050%とする。
機械構造用鋼製部品素材の浸炭の加熱温度を880〜1030℃とし、浸炭表層中のC濃度を0.70〜0.90%、望ましくは0.75〜0.90%とする浸炭を行う理由
浸炭の加熱温度を880〜1030℃とし、浸炭表層中のC濃度を0.70〜0.90%とする浸炭を行う理由は、880℃以下ではオーステナイト相中のCの固溶限が低く、浸炭中に炭化物がさかんに析出・成長して粗大化しやすくなる結果、目的とする炭化物分布が得られなくなり、靭性が向上せず、1030℃以上ではオーステナイト粒が粗大化することで同じく高靭性が得られなくなるためである。浸炭の加熱温度は、より望ましくは880〜1000℃とする。また、浸炭表層中のC濃度が0.70%未満では、オーステナイト中の炭素濃度の固溶限以下であるために、目的とする炭化物析出が殆ど起こらない。一方で、浸炭表層中のC濃度が0.90%を超えると、オーステナイト中における炭素濃度が固溶限以上となるためにオーステナイトの粒界に粗大炭化物を形成し、靭性を大きく低下させる。浸炭表層中のC濃度は、望ましくは0.75〜0.90%とする。浸炭の方法としては、ガス浸炭、真空浸炭のいずれによる方法でも良い。
最表面〜0.2mmの範囲において平均円相当換算直径が平均で0.10〜0.30μmの炭化物が面積率で2.50〜5.00%析出していること、最表面〜0.2mmの範囲における平均結晶粒径が8.0μm以下であることを規定する理由
耐ピッチング性、耐磨耗性に優れ、高強度高靭性を有する機械構造用鋼製部品の部品素材とするためには、最表面〜0.2mmの範囲において平均円相当換算直径が平均で0.10〜0.30μmの炭化物が面積率で2.50〜5.00%析出している必要があり、最表面〜0.2mmである表層における平均結晶粒径が8.0μm以下である必要がある。炭化物の粒径が0.10μmおよび分布が面積率で2.50%を下回る場合には、析出強化がもたらされてマトリクスが脆化するために高靭性が得られなくなり、かつ耐ピッチング性、耐磨耗性に対する効果も十分に得られない。また、炭化物の粒径が0.30μmおよび分布が面積率で5.00%を上回る場合には、転位の移動を抑制する効果が炭化物を利用しても得られなくなるために、靭性が向上しない。また、最表面〜0.2mmの範囲の平均結晶粒径が8.0μmを上回っていると靭性や曲げ疲労強度の向上効果が得られない。なお、耐ピッチング性、耐磨耗性に優れた部品としては表層硬さが58HRC以上であることが望ましい。
浸炭後に焼入れすることなく冷却し、再加熱した後に焼入れする理由
本願発明の方法における工程で、浸炭後に、焼入れを行うことなく、浸炭温度から該部品素材の浸炭表層におけるAr3点より50℃以上低い温度である冷却終了温度までの温度範囲を1.5℃/s以下の冷却速度で鋼からなる部品素材をいったん冷却する、もしくは浸炭温度から200℃以下までの温度範囲を1.5℃/s以下の冷却速度で鋼からなる部品素材をいったん冷却してから、再加熱した後に焼入れする理由について説明する。本発明の効果を得るためには、結晶粒は適度に微細化しつつ、炭化物を適度な大きさと面積率として分布しておく必要がある。そのためには、浸炭後に上記の方法に従って部品素材をいったん冷却したのち、再加熱した後に焼入れを行うのが良い。浸炭温度から浸炭表層におけるAr3点より50℃以上低い温度まで1.5℃/s以下の冷却速度で部品素材をいったん冷却する理由は、浸炭中に部品素材中に過飽和に固溶したCの一部を炭化物として析出させるためである。これよりも速い冷却速度で冷却された場合は、炭化物がほとんど析出しないため、再加熱時の炭化物の成長が不十分なものとなり、所望の耐摩耗性や耐ピッチング性が得られない。
さらに、上記において、浸炭した該部品素材を焼入れすることなく、200℃以下までいったん冷却する場合に、1.5℃/s以下の冷却速度とする理由は、一つは上記と同様に炭化物の一部を析出させるためである。もう一つは、冷却後の浸炭層内の組織としてマルテンサイトの生成を避けるためである。この際、冷却が早くてマルテンサイトが生成していると、炭化物が過飽和に固溶したまま冷却されるため、それに続く再加熱後の焼入れのみでは十分な大きさの炭化物が析出できずに微細に留まるために、やはり所望の耐摩耗性や耐ピッチング性が得られなくなる。なお、冷却の際、いったん室温まで冷却しても良い。望ましい冷却速度は1.0℃/s以下とする。上記のミクロ組織の状態で、かつ、適度に炭化物を析出・分散させた状態から再び850〜900℃に加熱してオーステナイト化することで、既に析出していた炭化物がオーステナイト析出核としての作用、ならびに析出したオーステナイトの成長抑制作用を発揮する。その結果、結晶粒径が適度に微細化し、その状態から焼入れすることで、焼入れ後も適度に微細な結晶粒径が維持可能となる。なお、再加熱過程における850〜900℃までの加熱および保持の過程において、新たに炭化物が析出して成長する反応や、既に析出していた炭化物が成長する反応が起こる。その結果、最表面〜0.2mmの範囲において平均円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.50〜5.00%析出しており、かつ表層の結晶粒径が8.0μm以下を満足することで、耐ピッチング性、耐磨耗性に優れ、高強度高靭性を有する機械構造用鋼製部品を得ることができる。上記において、再加熱温度が850℃を下回る場合は、機械構造用鋼製部品の芯部領域では、芯部が完全にオーステナイト化せず部分的に軟質なフェライトが残存するために曲げ疲労強度が低下する。また、900℃を上回る場合は、析出していた炭化物が再度、鋼中に固溶してしまうために優れた高靭性、耐磨耗性、耐ピッチング性が得られない。
なお、本願発明では浸炭後に続いて焼入れを行わずに、浸炭後にいったん冷却してから再加熱して焼入れする方法を採る。これは、浸炭後に続けて焼入れし、さらに再加熱して焼入れを行うと、結晶粒が過度に微細化するために再加熱保持中に混粒や粗大粒が発生して、かえって部品強度を低下させたり、また、過度の結晶粒微細化によって焼入性が低下することで十分な芯部硬さが得られない場合があるためである。このようになることを回避することを目的として、本発明は浸炭後の焼入れを行うことなく、再加熱した後に焼入れする。また、浸炭直後に焼入れを行わないならば、浸炭後油焼入れした場合に必要となる再加熱後の焼入れ前の脱脂工程が不要になるというメリットも得られる。
また、浸炭直後に焼入れすることなく、再加熱して焼入れする方法としては、熱処理炉で再加熱後に焼入れする、いわゆる「ズブ焼入れ」によって十分な結晶粒微細化効果が得られる。また、高周波加熱装置を用いて比較的短時間での再加熱後に焼入れする方法を利用しても良い。焼入れする方法としては、芯部まで焼きが入る方法であれば良く、油焼入れ、水焼入れ、スプレー冷却、加圧ガス冷却などの方法を利用するものとする。
本願発明の機械構造用鋼製部品の製造における手段は、請求項3の手段または請求項4の手段の製造方法で製造される高強度、高靱性の機械構造用鋼製部品において、浸炭に先立つ部品の加工方法としては、熱間鍛造、亜熱間鍛造、冷間鍛造、切削もしくはそれらの中から複数の方法を組み合わせた方法を利用する。
本発明の部品素材は浸炭後に再加熱して焼入焼戻しした状態で使用しても十分に優れた特性を有している。しかしながら、焼入れおよび焼戻し処理を完了した部品素材に対して、切削、研削、ショットピーニング、ハードショットピーニング、微粒子ショットピーニングのいずれか1種又は2種以上からなる複数の表面改質処理には、耐ピッチング性をさらに向上させる効果があり、また部品素材に対してガス浸炭を行った場合には、浸炭雰囲気中の酸素が部品素材の表面から侵入し、オーステナイト粒界近傍のSi、Mn、Crと結びつくことにより、粒界に沿って形成される粒界酸化層を、除去あるいは見かけ上浅くする効果があり、その効果により靭性や曲げ疲労強度をさらに向上させることから、必要に応じてこれらの表面改質処理を実施しても良い。
本発明の実施の形態を以下に説明する。表1に示す、本願の実施例である発明鋼1〜11およびその比較鋼12〜23に示す各化学成分およびその残部のFeからなる鋼を、各100kg真空溶解炉で溶製し、インゴットを得た。続いて、これらのインゴットを1250℃に加熱して5時間保持した後、径32mmの棒鋼に鍛造した。続いて、この径32mmの棒鋼を900℃に加熱し、1時間保持した後、空冷する焼ならしを行った。次に、これらの鋼からなる、10mm角で長さ30mmの角材の最表面〜0.2mmの範囲における結晶粒径および炭化物の観察用試験片と、10mm角でノッチ部が10R−Cノッチとなるシャルピー衝撃試験片と、13mm角で開口角60°で深さ3mmのV字状ノッチを有し、そのノッチ先端が1.5mmRとなる4点曲げ疲労試験片と、図1に示すローラーピッチング試験片1と、さらに25mm幅、50mm長さ、7mm厚さからなる磨耗特性評価用試験片とをそれぞれ作製し、これらの発明鋼1〜11と比較鋼12〜23を、表2で示す各条件において、ガス浸炭し、浸炭後に200℃以下まで冷却し、再加熱して焼入れを行い、その後180℃で1.5時間保持した後に空冷する焼戻しを実施した。
次いで、上記の各条件における処理を施したこれらの試験片について、最表面〜0.2mmの範囲における結晶粒径を調査し、さらに、炭化物の平均円相当換算直径および炭化物の面積率を観察し、靭性評価のための0℃でのシャルピー衝撃試験を行ない、また、さらに曲げ疲労強度評価のための4点曲げ疲労試験を実施し、耐ピッチング性評価のための面圧340kgf/mm2で相対すべり率40%でのローラーピッチング試験を行ない、磨耗特性評価用試験片側を固定して相手側となるSUJ2焼入焼戻し材製ディスクにより0.51m/sで擦過することによる耐磨耗性評価試験をそれぞれ実施した。
なお、結晶粒径の調査については、焼戻しまで完了した試験片を切断し、表層から内部にかけての断面が観察できるように埋め込みを行ってから被検部位の鏡面研磨を行い、粒界腐食を行ってから、光学顕微鏡により最表面〜0.2mmの範囲にかけての平均的な視野を4視野撮影し、表層における平均結晶粒径(直径)を求めた。また、炭化物の観察については、同様の埋め込み、鏡面研磨の後ナイタールで腐食して、走査型電子顕微鏡により最表面〜0.2mmの範囲にかけての平均的な視野を5視野程度撮影し、識別した炭化物について画像解析により炭化物の平均円相当換算直径ならびに炭化物面積率を求めた。
なお、焼戻し後に切削、研削、研磨、ショットブラスト、ショットピーニング、ハードショットピーニング、微粒子ショットピーニングのいずれか1種またはこの中の複数の表面処理を行う場合には、その処理面を表層として上記と同様の観察を行うものとする。
上記の試験の結果を、表1の比較鋼13(JIS SCr420に相当)を基準とし、これらの機械構造用鋼製の部品素材の、加熱温度、浸炭表層C濃度、浸炭後冷却速度、再加熱温度、炭化物の平均円相当換算直径、炭化物面積率、平均結晶粒径と、さらに得られた機械構造用鋼製部品の、靱性、曲げ疲労強度、耐ピッチング性、耐磨耗性を表2に示す。ここで衝撃特性である靱性は比較鋼13の0℃試験における衝撃値(試験数n=2本)を1.0としたときの衝撃値比で示した。このとき、衝撃値比が1.5以上であれば靱性が良好であるとした。また、曲げ疲労特性は、比較鋼13が10,000サイクルで寿命に到達するときの負荷応力(これはいくつかの応力段階での疲労試験結果から内挿により求める)を基準として1.0とし、それに対する各鋼が10,000サイクルで寿命に到達するときの負荷応力(同様の内挿法による)の比で示した。このとき、その比が1.4以上であれば曲げ疲労特性が良好であるとした。また耐ピッチング特性は上記の条件で比較鋼13のローラーピッチング試験(試験数n=3回)を実施したときのピッチング発生までの平均サイクル数を1とした場合の各鋼のピッチング発生までの平均サイクル数(n=3回)の比を示した。このとき、その比が2.0以上であれば耐ピッチング性が良好であるとした。また耐磨耗性は上記条件で比較鋼13の耐磨耗性評価試験(n=2回)を行った際の比磨耗量を1.0とし、それに対する各鋼の比磨耗量の比を示した。このとき、その比が0.5以下であれば耐磨耗性が良好であるとした。
本願の実施例である発明鋼1〜11は、表2に見られるように、本願請求項の範囲を満足するものであった。これに対して比較鋼の試験結果について、表1および表2に基づいて以下に説明する。
比較鋼12は、表1に示すように、Cは本発明の下限値0.14%以下、Mnは本発明の上限値の0.60%以上のため、平均結晶粒直径が20.0μmで本発明の8μmより粗大であるので、靭性の比がベース鋼である比較鋼2の基準値の1.0よりも低い0.7であり、また、結晶粒が粗大でかつ芯部強度不足であるので、曲げ疲労強度もベース鋼の基準値の1.0よりも低い0.7であり、靱性および曲げ疲労強度が発明鋼に比して劣っている。
比較鋼13は、発明鋼および比較鋼の比較用のベース鋼であるが、再加熱後の焼入れによる結晶粒微細化の効果がなく、炭化物の平均円相当換算直径が0.08μmで本発明の0.1μmより微細で、炭化物面積率が0.01%と本発明の最小値の2.50%より小さくかつ炭化物の分布も少なく、さらに平均結晶粒直径が15.0μmで本発明の8μmより粗大であるため、靭性、曲げ疲労強度が基準値の1.0で、発明鋼に比して低く、劣っている。また、炭化物が微細かつ炭化物面積率が低いため、耐ピッチング性の1.0および耐摩耗性の1.0はベース鋼としての基準値であるが、これらは発明鋼に比して劣っている。
比較鋼14は、浸炭後の冷却速度が2.5℃/sと本発明の下限値の1.5℃/sよりも速いので、マルテンサイトが混在しており、結果、再加熱後の焼入れ時の炭化物の平均円相当換算直径が0.04μmで、本発明の下限値の0.1μmよりも微細で、かつ炭化物の面積率は0.07%で本発明の最小値の2.50%より小さくかつ炭化物の分布も少ないことから、靭性、曲げ疲労強度、耐ピッチング性、耐摩耗性の値は基準値の1.0と略同じであり、発明鋼に比して劣っており、発明鋼ほど向上していない。
比較鋼15は、表1に示すように、Siが0.90%で本発明の上限値の0.80%よりも多く、粒界酸化が深く発達しており、靭性、曲げ疲労強度、耐ピッチング性の値が基準値の1.0より低く、いずれも発明鋼に比して劣っており、さらに耐摩耗性も発明鋼では0.5以下であるのに対して劣っている。
比較鋼16は、表1に示すように、Cは0.55%で本発明の上限値の0.50%より多く、芯部硬度が硬くなりすぎるため、靭性の比の値が基準値の1.0より小さく0.4で、また、曲げ疲労強度の比の値が基準値の1.0より小さく0.5で、これらはいずれも発明鋼に比して劣っている。
比較鋼17は、浸炭時の加熱温度が1050℃と本発明の上限値の1030℃よりも高く、浸炭中に炭化物が析出しにくいため、再加熱後の焼入れ時の炭化物が微細でその面積率も1.22%と本発明の下限値の2.50%よりも低く、したがって炭化物の分布が少ないため、靭性、曲げ疲労強度、耐ピッチング性、耐摩耗性の値は基準値とさほど変わらず、これらはいずれも発明鋼に比して劣っている。
比較鋼18は、浸炭時の温度が860℃で本発明の下限値の880℃よりも低く、浸炭中に炭化物が過剰に析出するため、再加熱後の焼入れ後も炭化物の平均円相当換算直径が0.41μmと本発明の最大値の0.3μmよりも粗大で、一方の炭化物面積率は1.98%と本発明の下限値の2.50%よりも少なく、分布も少ないので、靭性、曲げ疲労強度の値が基準値より低く、また耐ピッチング性、耐摩耗性の向上もみられず、発明鋼に比して劣る。
比較鋼19は、浸炭表層のC濃度が0.66%で本発明の下限値の0.70%より低く、再加熱後の焼入れ時の炭化物の平均円相当換算直径が0.03μmで本発明の0.1μmよりも微細で、炭化物面積率は0.05%で本発明の下限値の2.50%より低く、すなわち炭化物は少量しか析出しないため、靭性、曲げ疲労、耐ピッチング性、耐摩耗性の値は基準値と略同じで、いずれも発明鋼に比して劣り、これらはほとんど向上していない。
比較鋼20は、再加熱後の焼入れ時の加熱温度が830℃で本発明の下限値の850℃より低いため、再加熱後の焼入れ後も芯部に軟質のフェライトが残存し、靭性の値は1.5で基準値に比して高い値で良好であるが、一方で曲げ疲労強度の値が0.6で基準値に比して小さく、発明鋼に劣っている。
比較鋼21は、浸炭表層のC濃度が0.62%で、本発明の下限値の0.70%より低く、一方、再加熱温度が920℃と本発明の上限値の900℃より高いため、炭化物の平均円相当換算直径が0.03μmで本発明の0.1μmよりもが小さく、炭化物面積率も0.01%と本発明の下限値の2.50%に比して極めて少なく、さらには平均結晶粒も18.0μmで本発明の上限値の8.0μmよりも粗大であるため、靭性、曲げ疲労強度、耐ピッチング性、耐摩耗性の値は基準値と略変わらず、いずれも発明鋼に比して向上していない。
比較鋼22は、浸炭表層のC濃度が0.95%で本発明の上限値の0.90%より高く、炭化物が粒界上に析出するため、また、炭化物の平均円相当換算直径が0.33μmで本発明0.3μmより大きいため、さらには平均結晶粒径も18.0μmで本発明の上限値の8.0μmよりも粗大であるため、靭性、曲げ疲労強度の値は基準値より小さく、いずれも発明鋼に比して劣っている。
比較鋼23は、再加熱温度が950℃で本発明の上限値の900℃より高く、平均結晶粒径が25.0μmで本発明の上限値の8.0μmより粗大であるため、靭性、曲げ疲労強度の値は基準値より小さく、いずれも発明鋼に比して劣っている。
1 ローラーピッチング試験片
2 表層部に分散状態の炭化物を示すミクロ写真

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.14〜0.50%、Si:0.15〜0.80%、Mn:0.10〜0.60%、P:0.025%以下、S:0.025%以下、Cr:1.60〜3.00%、Al:0.015〜0.060%、N:0.030%以下を含有し、残部Feおよび不可避不純物からなり、最表面〜表面下0.2mmまでの範囲の領域において円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.5%〜5.0%析出しており、なおかつ最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域における平均結晶粒径が8.0μm以下であって、靭性は衝撃値比で1.5以上、曲げ疲労強度は負荷応力比で1.4以上、耐ピッチング性はピッチング発生までの平均サイクル数の比で2.0以上、および耐磨耗性は比磨耗量で0.5以下であることを特徴とする耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品。
  2. 請求項1に記載の鋼成分に加えて、質量%でNi:0.2〜2.0%、Mo:0.06〜0.50%、B:0.0010〜0.0050%、Ti:0.020〜0.200%、Nb:0.02〜0.20%から選択した1種または2種以上を含有し残部Feおよび不可避不純物からなり、最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域において円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.50%〜5.00%析出しており、なおかつ最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域における平均結晶粒径が8.0μm以下であって、靭性は衝撃値比で1.5以上、曲げ疲労強度は負荷応力比で1.4以上、耐ピッチング性はピッチング発生までの平均サイクル数の比で2.0以上、および耐磨耗比は比磨耗量で0.5以下であることを特徴とする耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品。
    ただし、上記の選択成分のうち、Tiおよび/またはBを含有する場合は、請求項1の鋼成分におけるNの値は、N:0.010%未満とする。
  3. 上記の請求項1または請求項2に記載の鋼成分からなる機械構造用鋼製部品素材の浸炭の加熱温度を880〜1030℃とし、浸炭表層のC濃度を0.70〜0.90%とする浸炭後に、焼入れを行わずに浸炭温度から浸炭表層におけるAr3点に対して50℃以上低い温度である冷却終了温度までの温度範囲を平均1.5℃/s以下の冷却速度で冷却し、再び850〜900℃に加熱してから焼入れし、次いで焼戻し処理を施す工程からなり、最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域において円相当換算直径が平均で0.1〜0.3μmの炭化物が面積率で2.50%〜5.00%析出しており、なおかつ最表面から表面下0.2mmまでの範囲の領域における平均結晶粒径が8.0μm以下であることを特徴とする耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品の製造方法。
  4. 焼入れを行なわずに浸炭温度から浸炭表層におけるAr3点に対して50℃以上低い温度である冷却終了温度を、200℃以下とすることを特徴とする請求項3に記載の耐ピッチング性および耐磨耗性に優れる高強度高靭性の機械構造用鋼製部品の製造方法。
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