JP6347151B2 - 鋼材およびその製造方法 - Google Patents

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本発明は、鋼材およびその製造方法に関する。
鉄鋼材料では、自動車等輸送機器の軽量化・安全性、建築物や道路・鉄道等の高架物の安全性等から高強度、高寿命化が図られている。一般に、鉄鋼材料が高強度化すると延性や靭性が低下することから、そのトレードオフバランスを改善するための材料設計、組織制御が行われている。
鉄鋼材料の性質は、ミクロ組織の状態により大きく変化するため、化学組成およびプロセス条件を適切に選択し、最適な組織設計を行うことが重要である。鉄鋼材料のミクロ組織を引張強度レベルで分類すると、フェライト組織で0.3〜0.8GPa、パーライト組織で0.8〜1.2GPa、ベイナイト組織で0.5〜1.6GPa、マルテンサイト組織で0.6〜4.4GPaである。さらに、延性の向上させるため、これらの組織を複合化させた複相組織鋼が種々提案されている。良好な延性を示す鋼として、たとえば、フェライトとマルテンサイトの二相組織を持つDP鋼、フェライト、ベイナイトおよび残留オーステナイトからなるTRIP鋼が知られている。しかしながら、DP鋼およびTRIP鋼には、引張強度が1.2GPaを超えるものは少ない。
近年、Q&P(Quench &Partitioning)プロセス(非特許文献1参照)、Q−P−T(Q&P+tempering)プロセス等、強度と延性を両立させる組織制御が提案されている。また、化学組成の最適化も行い、2GPa級の鋼も提案されている(非特許文献2)。しかしながら、これらの鋼の伸びは10%以下にとどまっている。、さらに、これらの文献の方法では、オーステナイト化熱処理後の冷却において、マルテンサイト変態の開始温度(Ms点)と終了温度(Mf点)の間に焼き入れ、そのまま再昇温して所定の温度で保持するなど、熱処理プロセスが複雑である。
一方、析出強化鋼として、たとえば、特許文献1には、Vを多量に含む曲げ加工性に優れた1.8GPa級鋼が提案されている。また、特許文献2には、TSが1.8GPa以上の部材を比較的容易に製造可能にする、焼入れ部材用鋼板が提案されている。
特開2012−172237号公報 特開2007−302937号公報
J.G.Speer, D.V.Edmonds, F.C.Riggo, D.K.Matlock, Curr Opin Solid State Mater Sci 8, p.219, 2004 H.Y.Li, X.W.Lu, W.J.Li, X.J.Jin, Metall Mater Trans 41A, p.1284, 2010
特許文献1および2に記載の析出強化鋼は、高い強度を有するものの、均一延性と局部延性の両立をすることが難しいという問題がある。
本発明は、従来技術の問題を解決するためになされたものであって、引張強度が1.6GPa超級の高強度でありながら、均一延性および靭性を両立した鋼材を提供することを目的としている。
引張強度が1.6GPa超級の高強度を実現するためには、マルテンサイト組織を主相とする必要がある。そして、マルテンサイト組織を主相として均一延性を向上させるためには、最適な第2相を含有させた複相組織とする必要がある。そこで、本発明者らは、第2相の種類、形状を変化させ、引張特性との関係を種々検討した結果、下記の知見を得た。
(A)マルテンサイトを主相とする組織中に、粒状のオーステナイトを高密度に分散させると、良好な均一延性と靭性が得られる。また、炭化物の生成を防止し、オーステナイトの含有量を最適な範囲に制御することによって、均一延性と局部延性の両立が可能となる。
さらに、本発明鋼材の適用範囲を薄板、厚板、鋼管、等に拡大させるためには、比較的単純で汎用性の高い熱処理条件を選択する必要がある。そこで、適切な鋼の化学組成と製造方法を検討した結果、加工熱処理(オースフォーミング)によりオースフォームドマルテンサイトを主相とする組織とした後、所定の温度で焼戻すことによって粒状のオーステナイトを第2相とする組織を得ることができる。
本発明は、上記の新たな知見に基づいてなされたものであり、その要旨は以下のとおりである。
(1)質量%で、
C:0.2%以上0.35%未満、
Si:0.1〜0.5%、
Mn:0.5〜1.5%、
Cr:10〜14%、
Ti:0.005〜0.012%、
Al:0.025〜0.055%、
N:0.001〜0.005%、
Mo:0〜1%、
Nb:0〜0.05%、
残部:Feおよび不純物
である化学組成を有し、
金属組織が、オースフォームドマルテンサイトおよびオーステナイトで構成される複相組織であり、旧オーステナイト粒の短径が3μm以下であり、オーステナイトの含有量が面積比で3%以上7%未満である、引張強さが1600MPaを超え、全伸びが12%以上である、鋼材。
(2)前記の化学組成が、質量%で、
Mo:0.1〜1%
Nb:0.01〜0.05%
の一方または両方を含有する、上記(1)の鋼材。
(3)次のA)〜C)の工程を順に行う、上記(1)または(2)の鋼材の製造方法。
A)上記(1)または(2)の化学組成を有する素材を、1100〜1300℃の温度域で1回以上加熱した後に熱間加工を行うに際し、仕上加工を790〜870℃の温度、かつ20%以上の断面減少率で行う加工熱処理工程、
B)室温まで冷却する冷却工程、および
C)350℃以上450℃未満の温度域で下記(1)式から求められるLMPが12700〜13700となる範囲で熱処理を行う焼戻し工程。
LMP=(T+273)×(log(t/60)+20) (1)
ただし、(1)式中、Tは焼戻し温度(℃)、tは焼戻し時間(min.)をそれぞれ意味する。
本発明によれば、引張強度が1.6GPa超級の高強度でありながら、優れた均一延性および靭性を両立することができるので、自動車等の輸送機器のほか、建築部材、または、道路、鉄道等を支える構造材料としての特性と安全性を一層向上させることが可能になるので、産業上極めて有益である。
シャルピー衝撃試験用試験片を示す図 LMPに対して、引張強度(TS)とEL(全伸び)を乗じた値をプロットした図
以下、本発明について詳しく説明する。なお、以下の説明において、含有量についての「%」は「質量%」を意味する。
1.化学組成
C:0.2%以上0.35%未満
Cは、鉄鋼材料の強度を向上させる基本的な元素である。C量の増加により、低温変態相であるマルテンサイト相は著しく高強度化する。また、未変態オーステナイト相を安定化させるため、均一延性の向上に寄与する。よって、C含有量は0.2%以上とする。しかし、C含有量が0.35%以上となると、炭化物の生成が促進するとともに、オーステナイトの含有量が過剰となり靭性を低下させる。したがって、Cの含有量は0.2%以上0.35%未満とする。C含有量の下限は0.23%とするのが好ましい。また、C含有量の上限は0.30%とするのが好ましく、0.27%とするのがより好ましい。
Si:0.1〜0.5%
Siは、脱酸効果により鋼中の介在物を抑制し、熱間加工性などの製造性を向上させる。また、炭化物の生成を抑制し、未変態オーステナイトを安定化させる。よって、Siの含有量は0.1%以上とする。しかし、Siの含有量が0.5%を超えると焼戻し後の旧オーステナイト粒界が弱くなり、靭性を低下させる場合がある。したがって、Siの含有量は0.1〜0.5%とする。Si含有量の好ましい下限は0.2%であり、好ましい上限は0.4%である。
Mn:0.5〜1.5%
Mnは、焼き入れ性を向上させ、冷却時のフェライト変態を抑制する。よって、Mn含有量は0.5%以上とする。一方、Mn含有量が1.5%を超えると、硬質のマルテンサイト組織が生成し、靭性を低下させる。したがって、Mnの含有量は0.5〜1.5%とする。Mn含有量の下限は、0.7%とすることが好ましく、0.9%とすることがより好ましい。Mn含有量の上限は、1.3%とすることが好ましく、1.25%とすることがより好ましい。
Cr:10〜14%
Crは、本発明に係る鋼材において重要な元素である。Crは、Ms点を低下させる効果がある。すなわち、C量とのバランスにより、Mf点(マルテンサイト変態終了温度)を室温以下に低下させることにより、マルテンサイト中に未変態オーステナイトを混在させることができる。よって、Cr含有量は10%以上とする。しかし、Cr含有量が14%を超えるとオーステナイトが安定になり、強度が大きく減少する。したがって、Cr含有量は10〜14%とする。Cr含有量の下限は12.5%とすることが好ましく、Cr含有量の上限は13.5%とすることが好ましい。
Ti:0.005〜0.012%
Tiは、TiC、TiNなどの炭・窒化物を生成し、ピンニング効果により結晶粒の粗大化を抑制して、延性を向上させる効果がある。よって、Ti含有量は0.005%以上とする。しかし、Ti含有量が0.012%を超えると粗大な析出物が析出し、延性低下の原因となる。したがって、Ti含有量は、0.005〜0.012%とする。Ti含有量の下限は0.007%とすることが好ましく、Ti含有量の上限は0.01%とすることが好ましい。
Al:0.025〜0.055%
Alは、脱酸効果により鋼中の介在物を抑制し、熱間加工性などの製造性を改善する。よって、Al含有量が0.025%以上とする。一方、Al含有量が0.055%を超えると、酸化物または窒化物を粗大化させ、かえって熱間加工性を悪化させる。したがって、Al含有量は0.025〜0.055%とする。Al含有量の下限は0.031%とすることが好ましく、Al含有量の上限は0.035%とすることが好ましい。
N:0.001〜0.005%、
Nは、窒化物を生成することにより、粒成長を抑制し、延性および熱間加工性を向上させるがある。よって、N含有量は0.001%以上とする。しかし、N含有量が0.005%を超えると窒化物が粗大化し、かえって延性を劣化させる。したがって、N含有量は0.001〜0.005%とする。N含有量の下限は0.002%とすることが好ましく、N含有量の上限は0.0035%とすることが好ましい。
Mo:0〜1%
Moは、再結晶または拡散変態の進行を遅らせる効果がある。また、セメンタイトの生成を抑制し、未変態オーステナイトへの炭素の濃化を阻害しない。したがって、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Mo含有量が1%を超えると、未変態オーステナイトへの炭素の拡散が遅くなり、延性を阻害する。したがって、Moを含有させる場合には、その含有量を1%以下とするのがよい。上記の効果は、その含有量が0.1%以上の場合に顕著となる。Mo含有量のより好ましい下限は0.3%であり、Mo含有量の好ましい上限は0.7%である。
Nb:0〜0.05%
Nbは、再結晶または拡散変態の進行を遅らせる効果がある。また、Tiと同様、ピンニング効果により結晶粒の粗大化を抑制して、延性を向上させる効果がある。したがって、必要に応じて含有させてもよい。しかしながら、Nb含有量が0.05%を超えると粗大な析出物が析出し、延性低下の原因となる。したがって、Nbを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とするのがよい。上記の効果は、その含有量が0.1%以上の場合に顕著となる
本発明の鋼材は、上記の元素をそれぞれ規定される範囲で含み、残部はFeおよび不純物からなるものである。不純物とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。不純物中、PおよびSは、それぞれ下記の範囲とすることが好ましい。
P:0.02%以下
Pは、粒界を脆弱にし、熱間加工性の悪化を招く。P含有量は、少なければ少ないほど望ましいが、現実的な製造工程と製造コストの範囲内で脱Pすることを前提にすれば、Pの上限は0.02%とする。望ましくは0.015%以下である。
S:0.006%以下
不可避不純物としてのSは、粒界を脆弱にし、熱間加工性や延性の劣化を招く。S含有量は、少なければ少ないほど望ましいが、現実的な製造工程と製造コストの範囲内で脱Sすることを前提にすれば、Sの上限は0.006%である。
2.ミクロ組織
引張強度1.6GPa級を実現するためには、主相をオースフォームドマルテンサイト相とする必要がある。オースフォームドマルテンサイトは、オーステナイトを未再結晶域で加工する、加工熱処理により、高密度の転位を含んだ加工オーステナイトから直接マルテンサイト変態させた組織である。すなわち、マルテンサイト変態による転位強化と転位強化との相乗効果により高強度が実現する、無加工オーステナイトから得られるマルテンサイトの強度に比べ、オースフォームドマルテンサイトの強度は0.2GPa以上高くなる。さらに、オースフォームドマルテンサイトを主相とする場合、未変態オーステナイトは、粒状に、且つ、高密度に分布する。そのため、その後の焼戻し熱処理過程において、マルテンサイトから未変態オーステナイトへの炭素分配が炭化物生成より先行し、延性向上に寄与する。
オースフォームドマルテンサイトの形態は、以下のように規定する。オースフォームドマルテンサイトは、パンケーキ状のオーステナイトから変態した組織であり、SEM観察またはEBSD解析により旧オーステナイト粒径を判別することができる。旧オーステナイト粒界のうち、短径の間隔が3μmを超えた組織では、強度の低下または延性の低下を招く。したがって、旧オーステナイトの短径の間隔は3μm以下と規定する。短径の間隔は狭ければ狭い方が好ましいが、その下限は1.5μmとするのが現実的である。
なお、「主相」とは、任意の2次元断面において観測されるミクロ組織中、面積比で80%以上を占める相を意味する。オースフォームドマルテンサイトの含有量は、面積比で、85%以上とするのが好ましく、90%以上とするのがより好ましい。
第二相は、オーステナイトである。その実態は加工熱処理時に変態しなかったオーステナイト、すなわち、未変態オーステナイトである。この未変態オーステナイトには炭素が濃縮している。第二相としてのオーステナイトの含有量が面積比で3%未満の場合には十分な延性が得られない。一方で、その含有量が面積比で7%以上の場合には靭性が著しく低下する。よって、第二相としてのオーステナイトの含有量は、面積比で3%以上7%未満にする必要がある。
オーステナイトの面積比とは、任意の2次元断面において観測されるミクロ組織中、オーステナイトが占める割合である。オーステナイトの面積比は、EBSD解析により容易に求めることができる。
なお、オーステナイトは粒状であり、そのアスペクト比(短径/長径)が0.5以上であることが望ましい。アスペクト比が0.5未満の場合、延性や靭性の低下を招くおそれがある。また、オーステナイトの粒径は0.5μm以下であることが望ましい。一方、オーステナイトの粒径が0.5μmを超える場合、靭性の低下を招くおそれがある。
強度と伸びとのバランスは、TS×ELが20000以上であることが好ましい。
3.製造方法
オースフォームドマルテンサイトに未変態オーステナイトが分散した組織に制御し、所望の特性を発揮させるためには、前記の化学組成を有する鋼材を加熱し、熱間加工(具体的には、熱間鍛造または熱間圧延)する加工熱処理を施した後、焼入れし、焼戻しする必要がある。
前記の加熱は、1100〜1300℃の温度域で1回以上行う。熱間加工前にTiを完全固溶させるためには1100℃以上とする必要がある。一方、初期粒が粗大化すると、オースフォーミング後の旧オーステナイト粒の短径が3μmを超えて、延性および靭性の低下を招くため、1300℃以下とする必要がある。このときの加熱の回数は、問わない。複数回に分けて実施してもよい。
加熱された鋼材には、熱間加工を実施して、加工熱処理(オースフォーミング)を行う。加工熱処理は、鋼材のミクロ組織がオーステナイトの状態で所定の外力を加える処理である。この処理を施した鋼材は、その後の焼入れによって微細なオースフォームドマルテンサイトを主相とする組織となり、強度が高められ、後続の焼戻しによって靭性が改善される。
加工熱処理は、上記の加熱温度で熱間加工を開始し、引き続いて、790〜870℃の温度域で断面減少率20%以上の仕上加工を行う。仕上加工温度は、790℃未満では変形抵抗が高くなり、加工量が不十分であったり、加工中に割れが生じたりするなどの欠陥が生じやすくなる。また、870℃を超えると、結晶粒が粗大化し旧オーステナイト粒の短径が3μmを超えて、延性および靭性の低下を招く。よって、いずれの場合にも、所望のオースフォームドマルテンサイト組織が得られない。仕上加工は、800℃以上の温度で行うことが好ましく、また、830℃以下の温度で行うことが好ましい。
なお、仕上加工における断面減少率は、なるべく大きい方がよく、20%以上とする。この理由は、断面減少率が20%以上であれば、旧オーステナイト粒の短径が短くなるからである。
加工熱処理においては、特に仕上加工条件が重要であるため、仕上加工の温度および断面減少率を上記の範囲に制限すれば、所望のミクロ組織が得られるので、その総断面減少率、パス数などには特に制約がない。ただし、総断面減少率は、70〜95%とすることが好ましい。70%未満では蓄積歪量が少なく、強度が低下し、95%を超えると異方性が大きくなり、延性や靭性の低下を招くからである。
また、パス数は4〜10回の範囲とすることが好ましい。これは、4回未満では、結晶粒が粗大になり、延性および靭性の劣化の招くおそれがあり、10回を超えると、抜熱の影響が大きくなり温度管理が困難になることがあるからである。
上記の仕上加工の後は、室温まで冷却し、マルテンサイトと未変態オーステナイトの2相組織に制御する必要がある。本発明の化学組成を有する鋼材においては、室温がMs点(マルテンサイト変態開始温度)〜Mf点(マルテンサイト変態終了温度)の間にあり、冷却を室温で停止させれば、Ms点〜Mf点の温度域で冷却を停止することになる。なお、本発明に係る鋼材は、10〜14%のCrを含有し、焼入れ性が良いため、室温までの冷却は、空冷または水冷のいずれでもいずれでもよい。このとき、鋼材の肉厚中心位置における冷却速度が10℃/sec以上とするのがよい。
上記の冷却の後は、焼戻しにより、マルテンサイトから未変態オーステナイトに炭素を分配させ、オーステナイトをより安定化させる必要がある。この時、炭化物が析出すると、オーステナイト中に炭素が十分に濃化せず、延性が大きく低下する。安定な未変態オーステナイトを得るためには、焼戻し温度を350℃以上450℃未満の温度域に設定する必要がある。焼戻し温度が350℃未満では未変態オーステナイトに炭素が十分濃化しない。一方、450℃以上では炭化物が析出し、延性が大きく低下する。焼戻し温度の好ましい下限は380℃であり、好ましい上限は420℃である。
焼戻し時間は、下記(1)式から求められるLMPが12700〜13700になるように、焼戻し温度(℃)Tに対応した焼戻し時間(min.)tを設定する必要がある。
LMP=(T+273)×(log(t/60)+20) (1)
ただし、(1)式中、をそれぞれ意味する。
LMPが12700未満の場合、未変態オーステナイト中に炭素が十分に濃化しない。一方、LMPが13800を超えると炭化物(例えばセメンタイト等)が析出し、延性が大きく低下する。LMPの好ましい下限は13000であり、好ましい上限は13500である。
表1に示す化学組成を有する鋼を、150Kgの溶鋼を真空溶製して鋳造した後、炉内温度1250℃で加熱し、950℃以上の温度で熱間鍛造を行い、厚さ16mmの試験サンプルを得た。
Figure 0006347151
各サンプルに対して、加熱、熱間加工、冷却および焼戻しを行い、得られた鋼材について各種の評価を行った。各製造条件および評価を表2に示す。
表2において、試験番号19および20は、加工熱処理を行わなかった例である。これらの例では、試験サンプルを予め機械加工により2mm厚さとし、その後に、焼入れ、焼戻しを行った。
<組織解析>
EBSD解析により旧オーステナイト粒界を判別し、旧オーステナイト粒径の平均短径を求めた。さらに、EBSDによりbcc(マルテンサイト相)とfcc(未変態オーステナイト相)の相比を求め、未変態オーステナイトの面積比を算出した。
<引張特性>
JISZ2241:2011に従い、JIS5号引張試験片を採取して引張試験を行った。引張強さ(TS)は1600MPaを超えることを目標とし、全伸び(破断伸び)は12%以上であることを目標とする。
<靭性>
靭性は、シャルピー衝撃試験で評価した。シャルピー衝撃試験は、2mmの試験サンプルを5枚積層し、断面が10mm角になるよう加工した。図1に示すように、圧延方向に垂直に亀裂が入るよう、2mmVノッチ加工を施した。衝撃特性は、温度0℃における衝撃値で評価した。衝撃値は20J/cm以上であることを目標とする。
上記の結果を表2に示す。また、図2には、LMP〔=(T+273)×(log(t/60)+20)〕に対して、引張強度(TS)とEL(全伸び)を乗じた値をプロットした図を示す。
Figure 0006347151
表2に示すように、本発明例は、いずれも引張強度、均一伸びおよび衝撃値が目標値を満たしていた。これに対して、比較例は、化学組成および金属組織の一方または両方が本発明で規定される範囲を外れており、引張強度、均一伸びおよび衝撃値のいずれか一種以上の性能が劣化していた。図2に示すように、本発明例では、TS×ELの値が比較例よりも格段に高いことが分かる。
本発明によれば、引張強度が1.6GPa超級の高強度でありながら、優れた均一延性および靭性を両立することができるので、自動車等の輸送機器のほか、建築部材、または、道路、鉄道等を支える構造材料としての特性と安全性を一層向上させることが可能になるので、産業上極めて有益である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C:0.2%以上0.35%未満、
    Si:0.1〜0.5%、
    Mn:0.5〜1.5%、
    Cr:10〜14%、
    Ti:0.005〜0.012%、
    Al:0.025〜0.055%、
    N:0.001〜0.005%、
    Mo:0〜1%、
    Nb:0〜0.05%、
    残部:Feおよび不純物
    である化学組成を有し、
    金属組織が、オースフォームドマルテンサイトおよびオーステナイトで構成される複相組織であり、旧オーステナイト粒の短径が3μm以下であり、オーステナイトの含有量が面積比で3%以上7%未満である、引張強さが1600MPaを超え、全伸びが12%以上である、鋼材。
  2. 前記の化学組成が、質量%で、
    Mo:0.1〜1%
    Nb:0.01〜0.05%
    の一方または両方を含有する、請求項1に記載の鋼材。
  3. 次のA)〜C)の工程を順に行う、請求項1または2に記載の鋼材の製造方法。
    A)請求項1または2に記載の化学組成を有する素材を、1100〜1300℃の温度域で1回以上加熱した後に熱間加工を行うに際し、仕上加工を790〜870℃の温度、かつ20%以上の断面減少率で行う加工熱処理工程、
    B)室温まで冷却する冷却工程、および
    C)350℃以上450℃未満の温度域で下記(1)式から求められるLMPが12700〜13700となる範囲で熱処理を行う焼戻し工程。
    LMP=(T+273)×(log(t/60)+20) (1)
    ただし、(1)式中、Tは焼戻し温度(℃)、tは焼戻し時間(min.)をそれぞれ意味する。
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