JP5204593B2 - 高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法 - Google Patents

高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車等の輸送機器、建設機械、その他の産業機械等の部品として使用される高強度の熱間鍛造部品に関するものであり、特に、熱間鍛造後に熱処理を行わない(非調質)鋼材に関する。
自動車や船舶等の輸送機器のエンジンおよび足回り等に使用されるコンロッド、クランクシャフト、ハブ等の機械構造用部品は、一般に、鋼材に鍛造等の熱間加工を施した後、焼入れ−焼戻し等の熱処理(調質)が施されて必要な機械特性が確保される。近年、部品の軽量化のために、部品の降伏強度の向上が求められている。また、部品を最終形状に仕上げるために熱間鍛造後の鋼材に切削加工が施されるので、鋼材には切削性も求められる。この切削性は引張強度に依存することが知られている。したがって、切削性の劣化を抑えつつ強度を向上させるためには降伏比の向上が有効である。さらに、低コスト化や製造効率などの観点から、熱間鍛造を施した状態(非調質)でも、所望の機械的特性、特に、強度と疲労限度比に優れた機械部品の提供が切望されている。
そこで、例えば、特許文献1は、低炭素鋼にVを添加し、熱間鍛造後に200〜700℃の時効処理を施して微細V炭化物を析出させることにより、降伏強度を向上させたフェライト−ベイナイトの二相組織を有する熱間鍛造鋼を製造する方法を開示している。また、特許文献2は、低炭素鋼にTi,Zrを添加して、所定温度に加熱して熱間加工(鍛造)した後、所定の冷却速度で冷却してマルテンサイト−ベイナイト組織とし、Ti炭硫化物、Zr炭硫化物により強度および靭性を向上させた熱間鍛造用非調質鋼を製造する方法を開示している。また、特許文献3は、中炭素鋼にV,Caを添加して、Ca硫化物により旋削加工性を向上させ、微細V炭窒化物により強度を向上させたフェライト−パーライト組織を有する熱間鍛造用非調質鋼を開示している。また、特許文献4は、高Siの中炭素鋼にV,Tiを添加して、所定温度に加熱して熱間鍛造した後、所定の冷却速度で冷却してフェライト−パーライト組織とし、TiによりNをTiNとして固定することでVを窒化物とせずV炭化物として、Siによる固溶体強化と共に強度を向上させた熱間鍛造用非調質鋼を製造する方法を開示している。
特許第3300500号公報 特許第3644275公報 特開平11−350065号公報 特許第3327635号公報
しかしながら、特許文献1に開示された製造方法では、時効処理すなわち調質を行う必要がある。また、特許文献2に開示された製造方法による鋼材は、降伏比が不十分で、疲労強度の低下が懸念される。また、特許文献3に開示された鋼材は、熱間鍛造後の冷却が空冷によるもので制御されていないため、強度が不十分である。特許文献4に開示された製造方法は、フェライトが形成される温度域における冷却速度が遅いため、V炭化物の析出強化の少ないフェライトが局所的に形成されて降伏強度が低下する虞がある。
本発明は、前記問題点に鑑みてなされたものであり、切削性を保持し、非調質でも強度を十分に向上させた熱間鍛造鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、非調質で十分な降伏強度と切削性とを両立させた熱間鍛造鋼とするために、微細なV炭化物を析出させたフェライトおよびパーライトを主要組織とすることにした。実験の結果、Vを0.4質量%以上添加した中炭素鋼でフェライト−パーライト組織を呈すると、降伏比が0.80を超えて良好な強度−切削性バランスを確保でき、かつ、降伏強度は硬さの2.38倍になることを見出し、さらにVの添加量を検証した。そして、Vを多く添加したことに伴ってフェライト変態点が上昇することで、高温域でV炭化物が析出して粗大化することを防止するため、急速冷却とし、一方、V炭化物が十分に微細に析出する低温域ではV炭化物の析出およびフェライト変態が促進されるように、冷却速度を低速に切り換えることでフェライト−パーライト組織を形成する方法に想到した。
すなわち、本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法は、C:0.2〜0.8質量%、Si:0.5質量%以下、Mn:0.4〜1.0質量%、V:0.2〜0.8質量%、S:0.05質量%以下、P:0.05質量%以下、N:0.01質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、(Tvc+50)℃以上の加熱温度に加熱し、前記加熱温度以下850℃以上で熱間鍛造し、前記熱間鍛造の終了温度から720℃以下550℃以上まで1.5℃/s以上の急速冷却速度で冷却し、720℃以下550℃以上から400℃まで0.1℃/s以上1.5℃/s未満の冷却速度で冷却することを特徴とする。ただし、Tvc=−9500/(log([C]×[V])−6.72)−273([C]、[V]:前記C,Vの各含有量(質量%))。
このように、含有する元素およびその量を限定することにより、強度等の特性の良好な高強度非調質熱間鍛造鋼を製造することができる。特に、中炭素鋼にVを添加することにより、V炭化物を析出させて降伏強度を向上させることができる。また、熱間鍛造後の冷却において、高温域では急速冷却することにより、粗大V炭化物の析出を防止して、析出強化されていないフェライト相が形成されることを抑制できる。そして、V炭化物が十分に微細に析出する低温域まで冷却した後は、冷却速度を低速に切り換えることによりフェライト変態が促進され、かつベイナイトやマルテンサイトへの変態を抑制されて、フェライト中に微細なV炭化物が析出されたフェライト−パーライト組織の高強度非調質熱間鍛造鋼を製造することができる。
本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法によれば、非調質でも十分な強度と切削性とを両立させた熱間鍛造鋼を製造することができる。
以下、本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法を実施するための最良の形態について説明する。
本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法は、C:0.2〜0.8質量%、Si:0.5質量%以下、Mn:0.4〜1.0質量%、V:0.2〜0.8質量%、S:0.05質量%以下、P:0.05質量%以下、N:0.01質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、熱間鍛造するものである。したがって、本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法で製造された高強度非調質熱間鍛造鋼、すなわち本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼は、前記成分の鋼で構成される。
そして、本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法(以下、適宜、単に製造方法という)は、前記成分の鋼を、(Tvc+50)℃以上の加熱温度に加熱し、前記加熱温度以下850℃以上で熱間鍛造し、前記熱間鍛造の終了温度から720℃以下550℃以上まで1.5℃/s以上の急速冷却速度で冷却し、720℃以下550℃以上から400℃まで0.1℃/s以上1.5℃/s未満の冷却速度で冷却することによって製造される。ただし、Tvc=−9500/(log([C]×[V])−6.72)−273([C]、[V]:鋼中のC,Vの各含有量(質量%))。なお、前記成分の鋼は、常法で溶製、鋳造することで得られる。また、本発明に係る製造方法の熱間鍛造の前に、鋳塊に熱間圧延、熱間鍛造等の公知の熱間加工を施してもよい。
はじめに、本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼(以下、適宜熱間鍛造鋼という)を構成する各成分の含有量の数値範囲およびその数値範囲の限定理由について説明する。
(C:0.2〜0.8質量%)
Cは、Fe炭化物(セメンタイト:Fe3C)を形成することで熱間鍛造鋼にパーライトを形成させて、熱間鍛造鋼の引張強度を向上させる。また、Cは、Vと炭化物、炭窒化物(VC,V(C,N))を形成してフェライト中に微細に析出することでフェライトおよびパーライトを析出強化する作用を有し、熱間鍛造鋼の硬さ(降伏強度)を向上させる。C含有量が0.2質量%未満では、この効果が十分に得られない。一方、C含有量が0.8質量%を超えると、熱間鍛造後の冷却時に、フェライト変態やパーライト変態が抑制されてベイナイトが形成されるようになり、降伏強度が低下し、降伏比が低下する。したがって、C含有量は、0.2〜0.8質量%とし、好ましくは0.3〜0.6質量%、さらに好ましくは0.4〜0.5質量%である。
(Si:0.5質量%以下)
Siは、固溶強化によりフェライトおよびパーライトの降伏強度を向上させ、また脱酸効果を有し、熱間鍛造鋼の内部品質を向上させる。一方、Si含有量が0.5質量%を超えると、ベイナイトが形成されるようになり、降伏比が低下する。したがって、Si含有量は0.5質量%以下とする。
(Mn:0.4〜1.0質量%)
Mnは、固溶強化によりフェライトおよびパーライトの降伏強度を向上させる。Mn含有量が0.4質量%未満では、この効果が十分に得られない。一方、Mn含有量が1.0質量%を超えると、ベイナイトが形成されるようになり、降伏比が低下する。したがって、Mn含有量は0.4〜1.0質量%とする。
(V:0.2〜0.8質量%)
Vは、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライトに微細なV炭化物、V炭窒化物として析出することでフェライトおよびパーライトを強化し、降伏強度向上に寄与する。V含有量が0.2質量%未満では、この効果が十分に得られないため0.2質量%以上とし、好ましくは0.35質量%以上、さらに好ましくは0.45質量%以上である。一方、V含有量が0.8質量%を超えると、熱間鍛造後の冷却時に、フェライト変態やパーライト変態が抑制されてベイナイトが形成されるようになり、降伏強度が低下し、降伏比が低下する。あるいは、さらにフェライト変態点、パーライト変態点が上昇するのでフェライト中のV炭化物の相界面析出が起こり難くなり、逆に降伏強度の低下を招く。したがって、V含有量は0.8質量%以下とする。
(S:0.05質量%以下)
Sは、鋼に不可避的に含まれ、Mnと反応してMnS介在物を形成して被削性を向上させる効果を有するが、一方で、延性および靭性を低下させる。したがって、S含有量は0.05質量%以下とする。
(P:0.05質量%以下)
Pは、鋼に不可避的に含まれるが、鋼を脆化させるので可能な限り低減されることが好ましく、P含有量は0.05質量%以下とする。
(N:0.01質量%以下)
N(窒素)は鋼の溶融工程で不可避的に混入する元素である。Nは、Vと結合してV炭窒化物を形成し、析出強化に寄与する。一方、N含有量が0.01質量%を超えると、加熱時に鋼に溶解しないNが生じ、粗大なV窒化物を形成する。このV窒化物の近傍領域でVが不足して、V炭化物、V炭窒化物の析出強化が低下し、降伏強度が低下する。
本発明に係る熱間鍛造鋼は、さらに、Alを0.1質量%以下含有していてもよい。
次に、本発明に係る製造方法における条件の数値範囲およびその数値範囲の限定理由について説明する。
(加熱温度:(Tvc+50)℃以上、Tvc:前記成分の鋼におけるV炭化物の完全固溶温度)
熱間鍛造前の加熱では、鋼(オーステナイト)に、Mn等の添加元素やV炭化物を完全に固溶する必要がある。特に本発明における鋼はV含有量が多く、V炭化物が完全固溶する温度(VC完全固溶温度)Tvcが高いため、この温度を鋼のC,V各含有量(質量%)[C] ,[V]から算出して、それに応じて加熱温度を設定する。VC完全固溶温度Tvc(℃)は、『日本鉄鋼協会,鉄鋼便覧第3版,第I巻基礎,1981年,p.412』の図7・43に表されたC,Vの溶解度積とVC完全固溶温度Tvcとの相関より導出した下式(1’ )を、式変形した下式(1)を用いて算出することができる。さらに、加熱時間(保持時間)によらずすべてのV炭化物を確実に固溶させるため、VC完全固溶温度Tvcに50℃を加算して加熱温度の下限とする。加熱温度の上限は特に規定されないが、鋼の溶融温度未満とするため、また設備の能力等から、1300℃程度とすることが好ましい。このような加熱時間であれば保持時間は特に規定されないが、10時間以下保持してもよい。
log([C]×[V])=−9500/(Tvc+273)+6.72 ・・・式(1’)
Tvc=−9500/(log([C]×[V])−6.72)−273 ・・・式(1)
(熱間鍛造温度:加熱温度以下850℃以上)
熱間鍛造において温度が低下すると組織が微細化するが、850℃未満まで低下するとV炭化物がオーステナイト中に析出する。V炭化物がオーステナイト中に析出すると、その後のフェライト変態時にフェライト中に微細に相界面析出するV炭化物が減少するため、降伏強度を確保できなくなる。したがって、熱間鍛造温度は850℃以上とする。また、本発明に係る鋼はV含有量が多いため、熱間鍛造における歪量を10%以上とすることが、フェライト変態が促進されるために好ましく、20%以上がさらに好ましい。一方、歪量を95%を超えて大きくすると熱間変形抵抗が過剰になるため、95%以下が好ましく、90%以下がさらに好ましい。
(熱間鍛造終了温度から720〜550℃までの急速冷却速度:1.5℃/s以上、720〜550℃から400℃までの冷却速度:0.1℃/s以上1.5℃/s未満)
熱間鍛造後、1.5℃/s未満の冷却速度で緩やかに冷却すると、720℃を超える高温でフェライト変態が開始する。フェライト形成と並行してV炭化物がフェライト中に析出するが、このような高温下ではV炭化物が粗大になって析出強化に寄与せず、また、冷却が進行して温度が低下したときの相界面析出および微細に析出するV炭化物が減少し、あるいは相界面析出自体が起こらなくなって、局所的に析出強化の不十分なフェライトが形成される。その結果、熱間鍛造鋼の降伏強度を十分に向上させることができない。したがって、熱間鍛造終了温度から720℃以下までの急速冷却速度は1.5℃/s以上とし、好ましくは3.0℃/s以上、さらに好ましくは5.0℃/s以上である。
本発明に係る熱間鍛造鋼は、Vを含有することでフェライトやパーライトの核生成が強く抑制されており、冷却速度が速いと、550℃に到達した時点でフェライト変態、パーライト変態が完了していない場合がある。このような場合に、さらに1.5℃/s以上の冷却速度で急速な冷却を継続すると、550℃以下でベイナイトやマルテンサイトへの変態が生じる。したがって、550℃以下での冷却速度はベイナイトやマルテンサイトが形成されない1.5℃/s未満として、変態を生じなくなる400℃以下まで冷却する。一方、冷却速度0.1℃/s未満の緩やかな冷却は、熱間鍛造鋼中の析出物が粗大化するので、冷却速度は0.1℃/s以上とする。好ましくは0.3℃/s以上、さらに好ましくは0.4℃/s以上である。また、極度に緩やかな冷却は設備能力や生産性の観点からも好ましくない。
これらのことから、本発明に係る製造方法において、熱間鍛造後、その終了温度から720℃以下に到達するまでは急速冷却速度1.5℃/s以上で急速冷却し、さらに550℃に到達するまでに冷却速度を0.1℃/s以上1.5℃/s未満に切り換えて(減速して)、400℃以下に到達するまで冷却する。好ましくは680℃以下に到達するまで、さらに好ましくは660℃以下に到達するまで急速冷却し、また、好ましくは570℃に到達するまでに、さらに好ましくは590℃に到達するまでに冷却速度を減速する。このような条件で冷却することで、微細なV炭化物を析出させたフェライトおよびパーライトを主要組織とする熱間鍛造鋼が形成される。
以上の製造方法により製造された高強度非調質熱間鍛造鋼、すなわち本発明に係る高強度非調質熱間鍛造鋼は、フェライト−パーライト組織が主体となる。そして、Vを十分に含有することで、このフェライトおよびパーライト中のラメラフェライトには微細なV炭化物が多量に析出しているため、フェライトおよびパーライトは析出強化されて、熱間鍛造鋼の降伏強度を大きく向上させることができる。一方、ベイナイトやマルテンサイトは、引張強度には優れるが、V炭化物を析出することができないため、これらの組織が熱間鍛造鋼に混在すると、降伏強度が低下して降伏比が確保できなくなる。また、ベイナイトが熱間鍛造鋼に混在すると、切削性が低下する。具体的には、本発明に係る熱間鍛造鋼は、フェライト+パーライトの組織分率が90%以上であることが好ましく、より好ましくは95%以上、さらに好ましくは98%以上である。
このように、本発明に係る熱間鍛造鋼は、V炭化物で析出強化されたフェライトおよびパーライトを主体とすることで、降伏強度を向上させ、かつ切削性とのバランスが良好な特性を確保できた。具体的には、降伏強度が900MPa以上、降伏比が0.8超の強度となり、ビッカース硬さで370HV以上に相当する。望ましくは、降伏強度が1000MPa以上、ビッカース硬さで420HV以上相当となる。
以上、本発明を実施するための最良の形態について述べてきたが、以下に、本発明の効果を確認した実施例を、本発明の要件を満たさない比較例と対比して具体的に説明する。なお、本発明はこの実施例によって制限を受けるものではなく、請求項に示した範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
〔供試材作製〕
真空溶製された表1に示す化学成分組成の鋼を1250℃で30分間加熱した後、φ50mmの丸棒材に熱間鍛造して空冷した。この丸棒材を1250℃で30分間加熱した後、900℃以上の温度域でφ25mmの丸棒材に熱間鍛造して空冷した。この丸棒材のD/4部を中心に、φ8mm×長さ12mmの円筒形の供試材を切り出した。
この供試材に、熱間加工再現試験装置THERMECMASTOR−Z(富士電波工機株式会社製)で熱間鍛造工程を再現した。熱間鍛造工程模擬のプロセスは、10℃/sで1100℃に加熱後、10分間保持し、表1に示す条件(温度、歪量、歪速度)で熱間鍛造を行い、その後、400℃以下となるまで表1に示す冷却速度で冷却した。なお、冷却において、比較例No.1〜9は、熱間鍛造後、一定の冷却速度とし、それ以外は、表1に示す急速冷却(急冷)停止温度までは急速冷却速度10℃/sで冷却し、以降は表1に示す冷却速度に切り換えて冷却した。
〔測定、評価〕
熱間鍛造後の供試材について、組織を観察した。供試材の円筒形の軸に沿って切断し、軸方向の中心かつ円周方向のD/8部を観察できるように切断面を調整し、3%ナイタールで腐食させた後、腐食面を光学顕微鏡で観察して構成組織を判別した。図1に、(a)実施例No.18および(b)比較例No.10の組織写真を示す。図1(a)において、白い領域がフェライト(F)であり、黒い部分(セメンタイト)に白い部分(ラメラフェライト)が分散して混在している暗いコントラストの領域がパーライト(P)である(それぞれの組織を矢印で示す)。そして、図1(b)において、暗いコントラストの領域のうち、白い部分が針状に混在している領域(図1(b)中に矢印で示す)がベイナイト(B)である。組織解析は400倍で10枚組織写真を撮影し、各写真に対してランダムに100点を選び、各点の組織を判別した。各組織(フェライト、パーライト、ベイナイト)が存在した点数を全点数100で割ることで組織分率を求め、表1に示す。また、強度の評価として、熱間鍛造後の供試材のビッカース硬さを、ビッカース硬さ試験機を用いて荷重10kgfで5点測定し、その平均値をビッカース硬さとして表1に示す。強度の合格基準は、降伏強度900MPa以上かつ降伏比0.8超に相当するビッカース硬さ370HV以上とした。また、式(1)より算出したVC完全固溶温度Tvcを表1に併記する。
(V含有量による評価)
表1に示すように、実施例No.13〜23は、V含有量が本発明の範囲であるので、V炭化物の析出強化により降伏強度が向上してビッカース硬さが高かった。特にV含有量が0.50質量%である実施例No.16〜23は、V炭化物の析出量が多いため、降伏強度が大きく向上した。これに対して、比較例No.1〜3,11,12は、V含有量が不足しているためV炭化物の析出強化が不十分で、降伏強度が得られず、ビッカース硬さが低下した。
(冷却条件による評価)
実施例No.13〜23は、熱間鍛造後の冷却条件が本発明の範囲であるので、組織がフェライトおよびパーライトとなり(図1(a)参照)、かつ微細なV炭化物が十分に析出したことにより降伏強度が向上してビッカース硬さが高かった。特にV含有量が0.50質量%であり、かつ急速冷却停止温度およびその後の冷却速度の好ましい実施例No.17〜19,21〜23は、フェライトおよびパーライト中のラメラフェライトにV炭化物が十分に析出したため、降伏強度が大きく向上した。
これに対して、比較例No.4,5,7,8は、熱間鍛造直後の冷却速度が遅いため720℃を超える高温でフェライト変態が開始して、フェライト中にV炭化物が粗大に析出した結果、V含有量が本発明の範囲であっても微細V炭化物の析出強化が不十分で、降伏強度が得られず、ビッカース硬さが低下した。また、比較例No.6,9,10は、ベイナイト変態が生じる550℃未満での冷却速度が速いため、ベイナイトが組織分率10%を超えて形成されて(図1(b)参照)、切削性が劣る熱間鍛造鋼となった。なお、同様に550℃未満での冷却速度が速い比較例No.3は、V含有量が不足しているため、550℃に到達するまでにフェライト変態、パーライト変態が完了したため、ベイナイトが形成されなかった。
実施例の組織を示す光学顕微鏡写真であり、(a)は実施例No.18の組織を示す図、(b)は比較例No.10の組織を示す図である。

Claims (1)

  1. C:0.2〜0.8質量%、Si:0.5質量%以下、Mn:0.4〜1.0質量%、V:0.2〜0.8質量%、S:0.05質量%以下、P:0.05質量%以下、N:0.01質量%以下を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼を、
    (Tvc+50)℃以上の加熱温度に加熱し、
    前記加熱温度以下850℃以上で熱間鍛造し、
    前記熱間鍛造の終了温度から720℃以下550℃以上まで1.5℃/s以上の急速冷却速度で冷却し、
    720℃以下550℃以上から400℃まで0.1℃/s以上1.5℃/s未満の冷却速度で冷却することを特徴とする高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法。
    ただし、Tvc=−9500/(log([C]×[V])−6.72)−273
    ([C]、[V]:前記C、前記Vの各含有量(質量%))
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