JP4171398B2 - 高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法 - Google Patents

高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP4171398B2
JP4171398B2 JP2003370738A JP2003370738A JP4171398B2 JP 4171398 B2 JP4171398 B2 JP 4171398B2 JP 2003370738 A JP2003370738 A JP 2003370738A JP 2003370738 A JP2003370738 A JP 2003370738A JP 4171398 B2 JP4171398 B2 JP 4171398B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strength
toughness
ferrite
less
steel bar
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003370738A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2005133155A (ja
Inventor
俊夫 村上
茂信 難波
雅雄 外山
義晃 福岡
雅実 染川
正一 池田
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kobe Steel Ltd
Original Assignee
Kobe Steel Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kobe Steel Ltd filed Critical Kobe Steel Ltd
Priority to JP2003370738A priority Critical patent/JP4171398B2/ja
Publication of JP2005133155A publication Critical patent/JP2005133155A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4171398B2 publication Critical patent/JP4171398B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Description

本発明は、強度と靱性をともに高くし、強度と靱性とのバランスに優れた高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法に関するものである。
自動車を初めとする構造材料の鋼材(構造用鋼)として、フェライト−パーライト複相組織からなる棒鋼などが用いられている。これら棒鋼は、冷・温間鍛造された後に、主として高周波焼入れされ、各種CVJ部品やIQ歯車類として製造されている。
これらの棒鋼には、軽量化のために、一層の高強度化が求められている。しかし、一般的に、鋼を高強度化すると靱性の方が低下する。このため、フェライト−パーライト複相組織からなる棒鋼でも、高強度化して前記構造材料として適用するためには、少なくとも、従来使用していた鋼材と同等の製品靱性(冷・温間鍛造後の製品靱性)を確保する必要がある。
従来から、鋼材の強化方法としては、固溶強化や、マルテンサイト等との複合組織化による第2相による強化、析出強化、結晶粒の微細化などが良く知られている。
これらの強化方法の中でも、強度と靱性をともに高くし、強度−靱性バランスを良好にする方法としては、結晶粒の微細化が最も優れた方法である。この方法では、焼き入れ性を高めるNi,Cr等の高価な元素の添加を必要としないために、低コストで高強度鋼材の製造が可能とされている。
このため、フェライト−パーライト複相組織からなる棒鋼でも、従来から、例えば、仕上げ圧延温度を850〜950℃に制御することで、パーライトコロニーサイズを6番以上に微細化させ、強度−靱性バランスを向上させることが提案されている (特許文献1参照) 。
また、旧γ粒径を5番以上に微細化させ、強度−靱性バランスを向上させることも提案されている (特許文献2、3参照) 。
更に、鋼片を1050℃以上に加熱後、仕上げ圧延温度を650〜800℃に制御することで、フェライト分率をC含有量から定まる所定値以上で、フェライト粒度を10番以上に微細化させ、強度−靱性バランスを向上させることも提案されている (特許文献4参照) 。
特許1278456 公報(1〜3 頁) 特許161327号公報(1〜3 頁) 特許1845976 号公報(1〜3 頁) 特公平4 −25343 号公報(1〜3 頁)
また、一方で、強度と延性とのバランスを向上させるために、結晶方位差 (粒界の方位差角) が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径を例えば5μm以下に微細化させた、700MPa前後の引張強度の低炭素フェライト−パーライト複相組織鋼なども提案されている (特許文献5、6、7など参照) 。
特開平11-92855公報(1〜4 頁) 特開平11-315342 公報(1〜6 頁) 特開2000-309822 公報(1〜4 頁)
しかし、これらの方法でも、C含有量が0.35〜0.50%の中炭素のフェライト−パーライト複相組織鋼として、例えば、最低でも引張強度で950MPa、靱性( uE20)で100J以上の、強度と靱性とのバランスに優れた高強度高靱性非調質鋼は得られていない。
本発明はこのような課題を解決するためになされたものであって、強度と靱性をともに高くし、強度と靱性とのバランスに優れた高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法を提供することである。
この目的を達成するために、本発明の高強度高靱性非調質棒鋼の要旨は、質量%で、C:0.35〜0.50%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.5〜1.5%、Al:0.005〜0.02%、V:0.05〜0.50%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼組織における、フェライト分率が20〜40%、パーライトの平均ラメラ間隔が0.05〜0.20μm、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径が2〜10μmであるフェライト−パーライト複相組織からなることとする。
また、この目的を達成するために、本発明の高強度高靱性非調質棒鋼の製造方法の要旨は、質量%で、C:0.35〜0.50%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.5〜1.5%、Al:0.005〜0.02%、V:0.05〜0.50%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼を、750〜900℃の開始温度で仕上げ圧延し、仕上げ圧延終了後10秒以内に平均冷却速度が10℃/秒以上で急冷を開始して500〜700℃の温度まで冷却し、その後、200℃まで平均冷却速度が0.1〜5℃/秒で冷却し、フェライト分率が20〜40%、パーライトの平均ラメラ間隔が0.05〜0.20μm、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径が2〜10μmであるフェライト−パーライト複相組織からなる棒鋼とすることである。
本発明者らは、析出強化元素や固溶強化元素を含有させるとともに、引張強度で950MPa以上に高強度化させたフェライト−パーライト複相組織からなる中炭素鋼において、 uE20で100J以上に高靱性化させるためには、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライト(以下、有効フェライトとも言う)の平均粒径を制御することが重要であることを知見した。
即ち、この有効フェライトは、フェライト−パーライト複相組織からなる高強度化させた中炭素鋼において、靱性を向上させる支配因子である。したがって、有効フェライトの平均粒径を2〜10μmの範囲に制御および微細化させることで、上記高強度化した場合に、同時に、高靱性化することができ、強度−靱性バランスを向上させることができる。
因みに、この有効フェライトの平均粒径制御による高靱性化は、前記した700MPa前後の低強度の低炭素フェライト−パーライト複相組織鋼には顕著には見られない、950MPa以上に高強度化させた中炭素以上のフェライト−パーライト複相組織鋼に特有の現象である。
(鋼組織)
本発明の高強度高靱性非調質棒鋼の組織の要件について、以下に図1を用いて順次説明する。図1はフェライト−パーライト複相組織の模式図であり、1個の旧γ粒を模式的に示している。図中、略6角形の一点鎖線が旧γ粒径(粒界)であり、この一点鎖線で囲まれた領域が旧γ粒である。この旧γ粒径に沿って、パーライトを囲む形でフェライト粒群が順次配列して析出している。一方、一点鎖線で囲まれた領域内がパーライトである。パーライト組織は、鋼をオーステナイト状態から冷却した時、共析変態によって得られる、フェライトとセメンタイトとが互いに層状に並んだ組織(ラメラ組織)である。
このパーライト領域内において、種々の方向性を有する平行な斜線は、上記したセメンタイトとフェライトとが層状に並ぶラメラを示す。ここで、この平行な斜線間の間隔がパーライトのラメラ間隔であり、これら個々のラメラ間隔を平均化したものが平均ラメラ間隔である。更に、このラメラの向きが揃った領域(同じ方向性を有する平行な斜線で示す領域)がコロニーであり、点線で囲んだ領域が、フェライトの方位が揃った1個乃至複数のコロニーからなるノジュールである。図1では、1個〜4個のコロニーからなる合計4個のノジュールを示している。
(有効フェライト)
このノジュールが本発明で言う、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライト(有効フェライト)である。更に、前記した、旧γ粒径に沿って配列して析出しているフェライトの内、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトが、本発明で言う有効フェライトである。本発明では、これらの有効フェライトの平均粒径を2〜10μmとする。
本発明では、これらの有効フェライトを上記範囲に微細化させることで、延性−脆性遷移温度が低下し、室温靱性・低温靱性が向上する。有効フェライトの平均粒径が2μm未満では、有効フェライトが微細化されすぎ、遷移温度が低下して、低温靱性は向上するが、室温靱性が低下し、高靱性化させることが困難となる。有効フェライトの平均粒径が10μmを越えた場合、例えば950MPa以上に高強度化した場合に、室温靱性・低温靱性の改善効果がともに不足し、例えば uE20で100J以上に高靱性化させることが困難となる。
結晶方位差が15°以上の大角粒界の方位は、棒鋼の代表的な部位あるいは複数の部位における、0.1×0.1mmの数視野を1万倍のTEM(透過型電子顕微鏡)で観察し、1視野につき数百個のフェライト粒を電子線後方散乱回折(EBSD)法で測定することができる。この際、結晶方位差(フェライトの粒界の方位差角)は15°以上であるときを大角粒界とする。また、大角粒界が全粒界の70%以上を占めるとき、組織は大角粒界からなっているとする。大角粒界の割合が70%未満の時は、有効フェライトの微細化による強度上昇効果が十分ではない。
なお、有効フェライトの平均粒径は、5000倍のSEM(走査型電子顕微鏡:JEOL社製 JSM-5410 )に、TSL 社製OIM TMを用いて、隣接した結晶粒と15度以上の方位差がある粒界を測定し、例えば、図1に一点鎖線で示す粒界を横断する一定長さ(例えば100μm)の直線lを引き、この直線lによって切断される前記粒界数で直線lの前記長さを除す、所謂切片法あるいは直線切断法により計測する。
この他、本発明非調質棒鋼の組織は、フェライト分率が20〜40%であるフェライト−パーライト複相組織からなる。フェライト単相の場合、あるいはフェライト分率が40%を超えた場合、例えば950MPa以上に高強度化することが困難となる。一方、パーライト分率の上昇にともなって、強度が向上するが、フェライト分率が20%未満では、言い換えるとパーライトの分率が80%を超えると、変形能の大きいフェライトの量が不足するため、例えば uE20で100J以上に高靱性化させることが困難となる。
本発明のフェライト分率は、5000倍のSEM(走査型電子顕微鏡:JEOL社製 JSM-5410 )を用いて3視野測定した。これを画像解析ソフト(MEDIA CYBERNETICS TM社製Image-Pro Prus)で、前記SEMで観察した視野における(前記図1で言う)旧γ粒径に沿って順次配列して析出している前記フェライト粒群の合計測定面積と、パーライト測定面積との合計面積に対する、前記フェライト粒群の合計面積の分率で表される。
また、本発明複相組織において、前記したパーライトの平均ラメラ間隔は0.05〜0.20μmとする。平均ラメラ間隔を微細化するほど強度は増すが、変態組織として得られる平均ラメラ間隔は0.05μm程度が限界であり、これを下限とする。一方、平均ラメラ間隔は0.20μmを超えた場合、例えば950MPa以上に高強度化することが困難となる。この平均ラメラ間隔も、前記SEMで観察した視野における個々のラメラ間隔を測定した上で平均化して測定される。
(鋼の化学成分組成)
以下に、上記本発明組織として、引張強度で950MPa以上に高強度化させた上で、 uE20で100J以上に高靱性化させ、構造用鋼としての特性を具備するために必要な、あるいは好ましい、非調質棒鋼の化学成分組成と、各元素の限定理由を説明する。
本発明非調質棒鋼の基本的な化学成分組成は、構造用鋼としての特性を具備するために、質量%で、C:0.35〜0.50%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.5〜1.5%、Al:0.005〜0.02%、V:0.05〜0.50%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなることが必要である。そして、必要により、この基本成分組成に、更に、Cr:0.60%以下、Mo:0.5%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.10%以下、の1種または2種以上を含有させる。
(C:0.35〜0.50%)
Cは、経済的かつ有効な強化元素であり、フェライト分率を低下させ、強度を上昇させる効果がある。また、高周波焼入れ性を向上させる効果もある。この効果を十分に発揮させるにはCの含有量の下限が0.35%以上の中炭素鋼とする必要がある。しかし、Cの含有量が上限の0.50%を超えて高すぎると、フェライト分率が低くなり過ぎ、強度は上昇するが、靱性は低下する。したがって、C含有量は0.35〜0.50%の範囲とする。
(Si:0.1〜0.6%)
Siは製鋼時の鋼の脱酸のために必要な元素である。また、固溶強化により強度を上昇させる効果もある。その含有量が0.1%未満と、下限の0.1%よりも少ない場合には、脱酸効果や強度向上効果が不十分となる。一方、上限の0.6%を超えて、含有量が多過ぎると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、C含有量は0.1〜0.6%の範囲とする。
(Mn:0.5〜1.5%)
MnはSiと同様、脱酸剤として有用な元素であり、固溶強化により強度を上昇させる効果もある。また、変態温度が低下して、組織を微細化させる効果もある。その含有量が0.5%未満と、下限の0.5%より少ない場合には、これらの効果が無い。一方、Mnの上限の1.5%を超える過剰の含有は、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。また、空冷程度の冷却速度でも、ベイナイトが形成されるようになるため、靱性が低下する。したがって、Mn含有量は0.5〜1.5%の範囲とする。
(Al:0.005〜0.02%)
Alは製鋼時の鋼の脱酸のために必要な元素である。また、固溶強化により強度を上昇させる効果もあり、AlNとして析出して、圧延時の組織の粗大化を抑制する効果もある。その含有量が0.005%未満と、下限の0.005%よりも少ない場合には、これらの効果が不十分となる。一方、上限の0.02%を超えて、含有量が多過ぎると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、Al含有量は0.005〜0.02%の範囲とする。
(V:0.05〜0.50%)
Vは、VNとして析出して、析出強化により強度を上昇させる効果や、圧延時の組織の粗大化を抑制する効果がある。その含有量が0.05%未満と、下限の0.05%よりも少ない場合には、これらの効果が不十分となる。一方、上限の0.50%を超えて、含有量が多過ぎると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となる。したがって、V含有量は0.05〜0.50%の範囲とする。
(Cr:0.6%以下、Mo:0.5%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.10%以下、の1種または2種以上)
Cr、Mo、Ni、Cu、Ti、Nbは、固溶強化あるいは析出強化によって強度を向上させ、組織を微細化させる効果を有する点で同効元素である。したがって、これらの効果を発揮させるためには、これらの元素を1種または2種以上選択的に含有させる。
(Cr:0.60%以下)
Crは、固溶強化と、パーライトのラメラ間隔を微細化により、強度上昇効果がある。この様な作用を効果的に発揮させるためには、0.05%以上選択的に含有させる。一方、Cr量が多過ぎると、未溶解セメンタイトが生成しやすくなったり、変態終了時間が長くなり、マルテンサイトやベイナイトなどの過冷組織が生じるおそれがあるので、その上限を0.60%とする。
(Mo:0.5%以下)
Moは、固溶強化により、強度上昇効果がある。この様な作用を効果的に発揮させるためには、0.05%以上選択的に含有させる。一方、Mo量が多過ぎると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となるので、その上限を0.5%とする。
(Ni:1%)
Niは、固溶強化により靱性を向上させる効果がある。この様な作用を効果的に発揮させるためには、0.05%以上選択的に含有させる。しかし、この効果は1%を超えて飽和し、かつNiは高価であるので、上限を1%とする。
(Cu:1%以下)
Cuは、固溶強化により靱性を向上させる効果がある。この様な作用を効果的に発揮させるためには、0.05%以上選択的に含有させる。しかし、一方、Cu量が多過ぎると、微細析出により、強度が高くなり過ぎ、却って靱性を低下させる結果となるので、その上限を1%とする。
(Ti:0.2%以下)
Tiは、析出強化により、強度上昇効果がある。この様な作用を効果的に発揮させるためには、0.05%以上選択的に含有させる。一方、Ti量が多過ぎると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となるので、その上限を0.2%とする。
(Nb:0.10%以下)
NbもTiと同様、析出強化により強度上昇効果がある。この様な作用を効果的に発揮させるためには、0.05%以上選択的に含有させる。一方、Nb量が多過ぎると、強度が高くなり過ぎ、靱性を低下させる結果となるので、その上限を0.10%とする。
(製造方法)
次に、本発明の高強度高靱性非調質棒鋼の好ましい製造条件について以下に説明する。本発明では、上記化学組成成分からなる鋼を溶製して鋳片となし、鋳片を加熱後、棒鋼への仕上げ圧延を行い、仕上げ圧延終了後急冷および徐冷して棒鋼を製造する。なお、棒鋼への仕上げ熱間圧延までの、製鋼、鋳造時の鋳片のサイズ、凝固時の冷却速度、あるいは分塊圧延条件については、特に限定するものではなく、本発明の要件を満足すれば、常法によるいずれの方法や条件でもよい。
(加熱温度)
仕上げ圧延に先立つ加熱温度は800〜1250℃の温度範囲、より好ましくは850〜1200℃の温度範囲とする。加熱温度が800℃未満、より厳しくは850℃未満では、仕上げ圧延開始温度が低くなり、圧延荷重が大きくなり過ぎる。また、加熱温度が1250℃を超えた場合、より厳しくは1200℃を超えた場合、製造コストが高くなるとともに、バ−ニングの危険性が増す。
(仕上げ圧延)
仕上げ圧延の開始温度は750〜900℃の温度範囲、より好ましくは800〜850℃の温度範囲とする。開始温度が750℃未満、より厳しくは800℃未満では、仕上げ圧延開始温度が低くなり、圧延荷重が大きくなり過ぎる。また、仕上げ圧延開始温度が900℃を超えた場合、より厳しくは850℃を超えた場合、仕上げ圧延後のオーステナイト粒が十分細かくならない。
この仕上げ圧延終了後に10秒以内に急冷を開始する。仕上げ圧延終了から短時間で急冷を開始することで、オーステナイト粒の粗大化を防止する。急冷開始が仕上げ圧延終了後から10秒を超えた場合、オーステナイト粒が粗大化してしまう。
仕上げ圧延終了後の平均冷却速度は10℃/秒以上の急冷とする。このような急冷とすることで、オーステナイト粒の粗大化を抑制し、変態温度を低下させる。変態温度が低い方がパーライトやフェライトの核生成頻度が上昇し、有効フェライトの粒径が前記規定した範囲に微細化する。またラメラ間隔が微細化することで強度が向上する。
この急冷の終了温度は500〜700℃の温度範囲、より好ましくは550〜650℃の温度範囲とする。急冷の終了温度が低い方がラメラ間隔が微細化することで強度が向上する。しかし、急冷の終了温度が500℃未満、より厳密には550℃未満の低温側となった場合、ベイナイトやマルテンサイトなどの過冷組織が形成されて靱性が低下する。一方、急冷の終了温度が700℃を超えた場合、より厳密には650℃を超えた場合、ラメラ間隔微細化の急冷効果が無くなる。
この急冷の終了後、200℃の温度まで、平均冷却速度が0.1〜5℃/秒で徐冷して棒鋼を製造する。上記急冷の終了後は、冷却速度は遅い方が良く、この徐冷によって、過冷組織の形成による靱性低下を防止する。平均冷却速度が0.1℃/秒未満では生産性が悪くなる。一方、平均冷却速度が5℃/秒を超えた場合、過冷組織の形成による靱性低下が生じる。また、過冷組織の形成は200℃の温度までであり、徐冷の温度は200℃までで良い。したがって、200℃以下の棒鋼の温度制御は自由である。
以下に本発明の実施例を説明する。上記した鋼の化学成分組成や、加熱、仕上げ圧延の条件を種々変えて棒鋼を得、この棒鋼の組織調査と、強度−靱性のバランスの評価を行なった。
具体的には、表1に示す種々の化学成分組成からなる鋼を転炉にて溶製して鋳片となし、この鋳片を分塊圧延後に、155mm角のビレットに仕上げた。このビレットを加熱後、棒鋼への仕上げ圧延を行い、Φ30mmの棒鋼を製造した。これらの加熱、仕上げ圧延の条件を表2に示す。
これら製造した棒鋼の組織として、フェライト分率(%)、パーライトの平均ラメラ間隔(μm)、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径(μm)を各々測定した。これらの測定は各々前記した方法と要領で行なった。
また、これら製造した棒鋼の引張強度と靱性を測定した。引張強度(MPa)は、JIS4A号試験片を用いて引張試験を行なった。また、靱性(J)は、JIS3号試験片(2mmのUノッチ)を用いて、シャルピー衝撃試験を行なった。これらの結果を表2と図2とに示す。図2は表2の各発明例と比較例の引張強度と靱性を、縦軸:靱性、横軸:引張強度でプロットし、整理し直したものである。
表1、2および図2から明らかな通り、発明例1、12、13、14、17、18の各発明例は、各々本発明の範囲内の化学成分組成A、E、F、G、J、Kからなり、かつ、製造方法も、仕上げ圧延開始温度、仕上げ圧延終了後の急冷開始時間、急冷の際の平均冷却速度、急冷終了温度、その後の200℃まで平均冷却速度が各々好ましい範囲内である。
この結果、棒鋼組織が過冷組織を有さない、フェライト−パーライト複相組織からなり、かつ、フェライト分率が20〜40%、パーライトの平均ラメラ間隔が0.05〜0.20μm、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径が2〜10μmである。したがって、棒鋼の性能としても、950MPa以上の高強度であるとともに、100J以上の高靱性を有しており、強度−靱性のバランスに優れている。
これに対して、比較例2〜8は、各々本発明の範囲内の化学成分組成であるAの発明鋼を用いているものの、製造方法が各々好ましい範囲から外れている。この結果、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
例えば、比較例2は、仕上げ圧延開始温度が950℃と高過ぎる。このため、フェライト分率が13%と小さくなり、有効フェライトの平均粒径が26μmと大きい。この結果、高強度の割に、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例3は、仕上げ圧延終了後の急冷開始時間が30秒と長過ぎる。このため、フェライト分率が18%と小さくなり、有効フェライトの平均粒径が20.2μmと大きい。この結果、高強度の割に、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例4は、急冷の際の平均冷却速度が1℃/秒と遅過ぎる。このため、有効フェライトの平均粒径が25.4μmと大きく、パーライトの平均ラメラ間隔も0.231μmと大きい。この結果、強度も靱性もともに、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例5は、急冷の際の平均冷却速度が7℃/秒と遅過ぎる。このため、パーライトの平均ラメラ間隔も0.215μmと大きい。この結果、高靱性の割に、強度が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例6は、急冷終了温度が420℃と低過ぎる。このためベイナイトの過冷組織が形成されている。この結果、高強度の割に、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例7は、急冷終了温度が730℃と高過ぎる。このため、有効フェライトの平均粒径が14.5μmと大きく、パーライトの平均ラメラ間隔も0.226μmと大きい。この結果、高靱性の割に、強度が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例8は、200℃までの徐冷速度が20℃/秒と早過ぎる。このためベイナイトの過冷組織が形成されている。この結果、高強度の割に、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
また、比較例9〜11、15、16は、各々本発明の範囲外の化学成分組成である各々B、C、D、H、Iの比較鋼を用いている。このため、製造方法は各々本発明の好ましい範囲を満たし、フェライト分率、パーライトの平均ラメラ間隔、有効フェライトの平均粒径など、組織的にも本発明要件を各々満たすものの、この結果、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
例えば、比較例9の比較鋼BはSiが1.32%と上限を超えている。このため、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例10の比較鋼Cは、Mnが2.31%と上限を超えている。このため、圧延後の冷却過程でベイナイトの過冷組織が形成されている。この結果、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例11の比較鋼Dは、Crが1.25%と選択的に含有する場合の上限を超えている。このため、靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例15の比較鋼Hは、Vが0.010%と少な過ぎ、下限を下回っている。このため、靱性の割に強度が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
比較例16の比較鋼Iは、Vが1.2%と多過ぎ、上限を超えている。このため、強度の割に靱性が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
更に、比較例19は、本発明の範囲内の化学成分組成であるLの発明鋼を用いているものの、仕上げ圧延の代わりに、熱処理として、焼入れ、焼戻しを行なったものである。この組織は焼戻しマルテンサイトとなっており、靱性の割に強度が低く、強度−靱性のバランスが発明例に比して著しく劣っている。
以上の結果から、本発明の、化学成分組成、組織、好ましい製造条件などの各要件の、強度−靱性のバランスに対する臨界的が意義が分かる。
以上説明したように、本発明によれば、強度と靱性をともに高くし、強度と靱性とのバランスに優れた高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法を提供することができる。この結果、自動車を初めとする構造用鋼用途を拡大するものである。
フェライト−パーライト複相組織の模式図である。 実施例表2の各発明例と比較例の引張強度と靱性との関係を示す説明図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.35〜0.50%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.5〜1.5%、Al:0.005〜0.02%、V:0.05〜0.50%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなり、鋼組織における、フェライト分率が20〜40%、パーライトの平均ラメラ間隔が0.05〜0.20μm、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径が2〜10μmであるフェライト−パーライト複相組織からなることを特徴とする高強度高靱性非調質棒鋼。
  2. 前記高強度高靱性非調質棒鋼が、質量%で、更に、Cr:0.60%以下、Mo:0.5%以下、Ni:1%以下、Cu:1%以下、Ti:0.2%以下、Nb:0.10%以下、の1種または2種以上を含有する請求項1記載の高強度高靱性非調質棒鋼。
  3. 質量%で、C:0.35〜0.50%、Si:0.1〜0.6%、Mn:0.5〜1.5%、Al:0.005〜0.02%、V:0.05〜0.50%を含み、残部鉄及び不可避的不純物からなる鋼を、750〜900℃の開始温度で仕上げ圧延し、仕上げ圧延終了後10秒以内に平均冷却速度が10℃/秒以上で急冷を開始して500〜700℃の温度まで冷却し、その後、200℃まで平均冷却速度が0.1〜5℃/秒で冷却し、フェライト分率が20〜40%、パーライトの平均ラメラ間隔が0.05〜0.20μm、結晶方位差が15°以上の大角粒界で囲まれたフェライトの平均粒径が2〜10μmであるフェライト−パーライト複相組織からなる棒鋼とすることを特徴とする高強度高靱性非調質棒鋼の製造方法。
JP2003370738A 2003-10-30 2003-10-30 高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法 Expired - Fee Related JP4171398B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003370738A JP4171398B2 (ja) 2003-10-30 2003-10-30 高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003370738A JP4171398B2 (ja) 2003-10-30 2003-10-30 高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2005133155A JP2005133155A (ja) 2005-05-26
JP4171398B2 true JP4171398B2 (ja) 2008-10-22

Family

ID=34647655

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003370738A Expired - Fee Related JP4171398B2 (ja) 2003-10-30 2003-10-30 高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP4171398B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20180072965A (ko) * 2016-12-22 2018-07-02 주식회사 포스코 인성이 우수한 선재, 강선 및 그 제조 방법

Families Citing this family (11)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP5064240B2 (ja) * 2006-07-28 2012-10-31 新日本製鐵株式会社 表層細粒鋼部品とその製造方法
JP5050515B2 (ja) * 2006-12-08 2012-10-17 住友金属工業株式会社 クランクシャフト用v含有非調質鋼
JP5204593B2 (ja) * 2008-08-29 2013-06-05 株式会社神戸製鋼所 高強度非調質熱間鍛造鋼の製造方法
JP5482003B2 (ja) * 2009-08-03 2014-04-23 愛知製鋼株式会社 熱間鍛造非調質鋼
JP5482342B2 (ja) * 2010-03-18 2014-05-07 新日鐵住金株式会社 直接切削用熱間圧延鋼材およびその製造方法
JP5612982B2 (ja) * 2010-09-24 2014-10-22 株式会社神戸製鋼所 高強度鉄筋およびその製造方法
JP5674620B2 (ja) * 2011-10-07 2015-02-25 株式会社神戸製鋼所 ボルト用鋼線及びボルト、並びにその製造方法
CN103898408B (zh) * 2014-01-24 2016-01-20 江苏省沙钢钢铁研究院有限公司 一种700MPa级螺纹钢筋及其生产方法
KR101674750B1 (ko) * 2014-12-04 2016-11-10 주식회사 포스코 표면 경화 열처리성이 우수한 중탄소강 비조질 선재 및 이의 제조방법
JP6988230B2 (ja) * 2017-07-26 2022-01-05 大同特殊鋼株式会社 高周波焼入れ部品用素材
CN114959420A (zh) * 2022-05-30 2022-08-30 江苏联峰能源装备有限公司 一种圆坯生产塑机料筒用非调质钢的制备方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR20180072965A (ko) * 2016-12-22 2018-07-02 주식회사 포스코 인성이 우수한 선재, 강선 및 그 제조 방법

Also Published As

Publication number Publication date
JP2005133155A (ja) 2005-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
US8168011B2 (en) High-strength steel wire excellent in ductility and method of manufacturing the same
KR101965520B1 (ko) 냉간 단조 부품용 압연 봉강 또는 압연 선재
JP4808828B2 (ja) 高周波焼入れ用鋼及び高周波焼入れ鋼部品の製造方法
US20060096671A1 (en) Non-heat treated steel for soft-nitriding
JP5363922B2 (ja) 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板
US10597748B2 (en) Steel wire rod for wire drawing
WO2016148037A1 (ja) 冷間加工性と浸炭熱処理後の靱性に優れる浸炭用鋼板
KR101965521B1 (ko) 냉간 단조 부품용 압연 봉강 또는 압연 선재
JP2005336526A (ja) 加工性に優れた高強度鋼板及びその製造方法
JP4171398B2 (ja) 高強度高靱性非調質棒鋼およびその製造方法
JP5302840B2 (ja) 伸びと伸びフランジ性のバランスに優れた高強度冷延鋼板
JP4983099B2 (ja) 衝撃特性と疲労特性に優れた鋼軸部品とその製造方法
JP5612982B2 (ja) 高強度鉄筋およびその製造方法
JPH11199977A (ja) 伸線加工性に優れた線材
JP3851147B2 (ja) 非調質高強度・高靭性鍛造品およびその製造方法
JP3738004B2 (ja) 冷間加工性と浸炭時の粗大粒防止特性に優れた肌焼用鋼材とその製造方法
JP3738003B2 (ja) 冷間加工性と浸炭時の粗大粒防止特性に優れた肌焼用鋼材およびその製造方法
JP3081116B2 (ja) パーライト金属組織を呈した高耐摩耗レール
JP6193842B2 (ja) 軸受用鋼線材
JP5189959B2 (ja) 伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板
JP2009127089A (ja) 等方性と伸びおよび伸びフランジ性に優れた高強度冷延鋼板
JP6919762B2 (ja) 鋼材
JP2022537538A (ja) 伸線加工性及び衝撃靭性に優れた非調質線材及びその製造方法
JP2009228051A (ja) 非調質鋼材の製造方法
JP3774697B2 (ja) 高強度高周波焼き入れ用鋼材及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060824

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20080512

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20080520

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20080709

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20080805

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20080808

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110815

Year of fee payment: 3

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 4171398

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110815

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120815

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120815

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130815

Year of fee payment: 5

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees