JP6988230B2 - 高周波焼入れ部品用素材 - Google Patents
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fn1<1.48・・式(1)、0.76<fn2<0.90・・式(2)
但しfn1=[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.3[Cr]+0.45([Cu]+[Ni]+[Mo])
fn2=[C]+[Si]/13+[Mn]/6+3[P]/5+2[Cu]/5+[Ni]/5+[Cr]/6+[V]
(fn1,fn2の式中[ ]は、[ ]内元素の含有質量%を表す)
本発明はこのような知見に基づくものであり、素材の電気抵抗率に及ぼす合金成分の影響を定式化し、素材の電気抵抗率を表す指数fn1を設け、指数fn1の値が所定の値よりも低くなるように、各合金元素の含有量を規定したことを1つの特徴とするものである。
また温度上昇勾配を緩やかした本発明の高周波焼入れ部品用素材を用いることで、許容される加熱処理の範囲が拡大するため、高周波焼入れ工程における加熱制御が容易となり製造性を高めることが可能である。
C:0.35〜0.45%
Cは、高周波焼入れ性、硬さおよび強度を高めるのに有効な元素である。必要な高周波焼入れ性、硬さおよび強度を得るには0.35%以上の添加を必要とする。但し、過剰な添加は靭性の低下を引き起こす為、その含有量を0.35〜0.45%とする。
Siは、脱酸および焼入れ性を高めるのに有効な元素である。但し、0.30%より多く添加されると靭性が低下するため、その上限を0.30%とする。
Mnは、硬さおよび強度を高めるのに有効な元素である。0.80%より少ないと必要な硬さおよび強度が得られず、また1.30%より多いと靭性が低下するので、その含有量を0.80〜1.30%とする。
Pは、不純物であり少ないほうが好ましいが、0.030%以下であれば特性にそれ程の影響がなく、その上限を0.30%とする。
Sは、被削性を高めるのに有効な元素である。その効果を得るため0.010%以上添加する。但し、過剰な添加は粗大なMnSを生成し、高周波焼入れ時の焼割れの原因となることがあるため、その含有量を0.010〜0.070%とする。
Crは、高周波焼入れ性、硬さおよび強度を高めるために有効な元素である。但し0.30%を超えて含有させようとすれば、安価な屑鉄を使用することができなくなり原料価格が高くなるため、その上限を0.30%とする。
Ni:0.15%以下
Cu及びNiは、鍛造後の硬さ、強度および高周波焼入性を高めるために有効な元素である。Cu及びNiは電炉原料のスクラップに不可避的に含まれる元素であるが、Cuを0.20%,Niを0.15%を超えて含有しようとすると、原料にスクラップだけでなく高価な合金の添加が必要となり、配合コストがかさむため、その上限をCuで0.20%,Niで0.15%とする。
Moは、焼入れ性を高めるとともに、高周波焼入れ部の強度を向上させるのに有効な元素である。但し、多量に添加しようとすれば原料価格が高くなるため、その上限を0.10%とする。
Vは、鍛造後の硬さを向上させ、高周波焼入れを施さない部分の強度を確保するのに有効な元素である。但し、過剰に添加しても効果が飽和する上に、原料価格が高くなるため、その上限を0.30%とする。
Alは、脱酸および鍛造加熱時の結晶粒粗大化を抑制するのに有効な元素である。但し、過剰に添加すると粗大なAl2O3を生成し、被削性が悪化するため、その上限を0.03%とする。
Tiは、鍛造加熱時の結晶粒粗大化を抑制する効果を有する元素である。但し、過剰に添加すると粗大な窒化物や硫化物を生成し、被削性が悪化するので、その上限を0.050%とする。
Nbは、鍛造加熱時の結晶粒粗大化を抑制する効果を有する元素である。但し、過剰に添加してもその効果が飽和する上に、原料価格が高くなるため、上限を0.10%とする。
fn1は、高周波焼入れ部品用素材の電気抵抗率を表す指数である。C,Si,Mn,Cr,Cu,Ni,Moは、高周波焼入れ部品用素材の電気抵抗率を変動させる元素であり、C,Si,Mn,Cr,Cu,Ni,Moの係数は、それぞれ素材の電気抵抗率に対する寄与度を表している。fn1の値が小さいほど素材の電気抵抗率は低くなり、高周波加熱時の温度上昇は抑制される。このため特定の部位に渦電流が集中した場合(過加熱が生じた場合)の温度上昇を抑制することができる。
本発明では、本発明者らが定めた過加熱による溶融割れが発生し易い加熱条件(後述の実施例参照)の下、高周波加熱を行ったとき、素材に溶融割れの発生が無ければ、実際の高周波焼入れ工程でも過加熱を防止する効果が発揮できるとの知見の下、指数fn1の値を1.48未満と規定している。なお、fn1の式にて無添加の元素に対応する項は、ゼロとして計算する。
fn2は、高周波焼入れ部品用素材の内部硬さを表す指数である。C,Si,Mn,P,Cu,Ni,Cr,Vは、高周波焼入れ部品用素材の内部硬さを高める効果がある。fn2中のC,Si,Mn,P,Cu,Ni,Cr,Vの係数は、それぞれ内部硬さ上昇に対する寄与度を表している。内部硬さは強度や加工性(切削される場合は被削性)に影響を及ぼす因子であり、内部硬さが低すぎると目的の部品強度を得ることができず、逆に硬さが高すぎると加工性の劣化を招き好ましくない。このようなことが生じないようにするため適切な硬さ範囲に調整することが必要である。このため本発明では、fn2の範囲を0.76超〜0.90未満とした。なお、fn2の式にて無添加の元素に対応する項は、ゼロとして計算する。
Bは、焼入れ性を高めるとともに、高周波焼入れ部の強度を高める効果を有する元素である。十分な効果を得るためには0.0010%以上添加する必要がある。但し、Bを過剰に添加しても効果が飽和する上に、ホウ化物を形成して靭性を低下させるため、その上限を0.0100%とする。
Bi:0.300%以下
Pb及びBiは、高周波焼入れ部品用素材の被削性を向上させる効果を有する元素である。但し、0.300%より多く添加してもその効果が飽和する。本発明では、Pbを0.10〜0.23%の範囲で含有させる。またBを含有させる場合にはその上限を0.300%とする。
Caは、高周波焼入れ部品用素材の被削性を向上させる効果を有する元素である。その効果を得るためには0.0005%以上添加する必要がある。但し、過剰に添加してもその効果が飽和するため、上限を0.0050%とする。
[最高到達温度測定および溶融割れ評価]
先ず表1に示す化学成分の合金材料を高周波誘導炉にて溶製し、得られたインゴットを熱間鍛造加工しその後大気中で放冷して42mm角の棒鋼とした。そして、その中心部からΦ20mm×長さ50mmの丸棒の試験片を作製した。
例えば図2に示すように、粒界部分に数μmの幅で明瞭に腐食された組織が認められた場合、溶融割れありと判断し結果「×」とした。
一方、溶融割れの発生が認められなかった場合(例えば図3参照)、溶融割れ無しと判断し結果「○」とした。
また、上記高周波加熱用の試験片作製の際に得られた42mm角の棒鋼を用い、棒鋼の横断面での中心軸と外表面との間の径方向の中間位置(R/2位置)におけるロックウェル硬さを4点測定し、その平均値を内部硬さとした。尚、内部硬さの目標値は21〜27HRCとした。内部硬さが21HRC未満では十分な部品強度が確保できず、他方、27HRC超では加工性が確保できないからである。
これらの結果が表2に示してある。
また比較例3は、C量が本発明の上限値を上回っているのに加え、電気抵抗率を表す指数fn1の値が本発明の上限値を上回っている。この比較例3においても高周波加熱時の最高到達温度が1430℃を超えており、試験片の一部において溶融割れの発生が認められた。
これら比較例2,3の組成から成る高周波焼入れ部品用素材を用いた場合にも、形状に起因した過加熱による温度上昇が生じやすく、溶融割れ等の問題が懸念される。
このように各実施例は、良好な加工性及び部品強度を得るために必要な内部硬さを確保した上で、電気抵抗率の低減が図られているため、かかる実施例の組成から成る高周波焼入れ部品用素材を用いれば、仮に高周波焼入れ部品の形状が、過加熱を起こしやすい形状であったとしても、過加熱による温度上昇は抑制されるため、溶融割れを起こすことなく高周波焼入れによる高強度を得ることができる。
Claims (2)
- 質量%で
C:0.35〜0.45%
Si:0.30%以下
Mn:0.80〜1.30%
P:0.030%以下
S:0.010〜0.070%
Cr:0.30%以下
Pb:0.10〜0.23%
Cu:0.07〜0.20%
Ni:0.07〜0.15%
を含有し、更に
Mo:0.10%以下
V:0.30%以下
Al:0.03%以下
Ti:0.05%以下
Nb:0.10%以下
の何れか1種若しくは2種以上を含有し、
残部がFe及び不可避的不純物であり、且つ下記式(1),式(2)を満足する組成の鋼から成ることを特徴とする高周波焼入れ部品用素材。
fn1<1.48・・式(1)
0.76<fn2<0.90・・式(2)
但しfn1=[C]+1.2[Si]+0.5[Mn]+0.3[Cr]+0.45([Cu]+[Ni]+[Mo])
fn2=[C]+[Si]/13+[Mn]/6+3[P]/5+2[Cu]/5+[Ni]/5+[Cr]/6+[V]
(fn1,fn2の式中[ ]は、[ ]内元素の含有質量%を表す) - 請求項1において、質量%で
B:0.0010〜0.0100%
Bi:0.300%以下
Ca:0.0005〜0.0050%
の何れか1種若しくは2種以上を更に含有することを特徴とする高周波焼入れ部品用素材。
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JP2017144712A JP6988230B2 (ja) | 2017-07-26 | 2017-07-26 | 高周波焼入れ部品用素材 |
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JP2017144712A JP6988230B2 (ja) | 2017-07-26 | 2017-07-26 | 高周波焼入れ部品用素材 |
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