JP5679440B2 - 冷間鍛造性に優れ、高周波焼入れ後におけるねじり強度に優れた高周波焼入れ用鋼、およびその製造方法 - Google Patents
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(a)Mo:1%以下(0%を含まない)、
(b)Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)、およびV:0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素、
(c)Cu:3%以下(0%を含まない)、および/またはNi:3%以下(0%を含まない)、
(d)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、Mg:0.005%以下(0%を含まない)、Li:0.001%以下(0%を含まない)、およびREM:0.001%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素、
等を含有してもよい。
Cは、ねじり強度を確保するために必要な元素であり、0.4%以上含有させることによって、鋼部品として必要なねじり強度(即ち、高周波焼入れ後におけるねじり強度)を確保できる。C量は、好ましくは0.43%以上、より好ましく0.45%以上である。しかしC量が過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて冷間鍛造性が劣化する。従ってC量は0.65%以下、好ましくは0.62%以下、より好ましくは0.60%以下とする。
Siは、固溶強化により高周波焼入れして得られる鋼部品のねじり強度を高める元素である。また、Siは、固溶Cがセメンタイトとして析出するのを抑制し、冷間鍛造性を改善するのに作用する元素である。また、Siは脱酸元素としても作用する。こうした作用を発揮させるには、Si量は0.01%以上、好ましくは0.03%以上、より好ましくは0.05%以上とする。しかしSi量が過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて冷間鍛造時に割れが発生し、冷間鍛造性が劣化する。従ってSi量は、0.5%以下、好ましくは0.45%以下、より好ましくは0.40%以下とする。
Mnは、焼入れ性を向上させる元素であり、高周波焼入れ後の鋼部品のねじり強度を向上させるのに必要な元素である。従ってMn量は0.65%超、好ましくは0.80%以上、より好ましくは0.95%以上とする。しかしMn量が過剰になると、焼入れ性が向上し過ぎて鋼が硬くなり、冷間鍛造性が劣化する。従ってMn量は2%以下、好ましくは1.8%以下、より好ましくは1.6%以下とする。
Pは、鋼に不可避的に含まれる不純物元素であり、P量が過剰になると加工時に割れが発生するのを助長するので、できるだけ低減する必要がある。従ってP量は0.03%以下、好ましくは0.02%以下、より好ましくは0.015%以下とする。なお、P量を0%とすることは工業的に困難である。
Sは、鋼に不可避的に含まれる不純物元素であるが、鋼中のMnと結合してMnS系介在物を形成し、鋼の被削性を向上させるのに有効に作用する元素である。こうした作用を発揮させるには、S量は0.002%以上、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.008%以上とする。しかしS量が過剰になると、MnS系介在物量が増大し、冷間鍛造時の耐割れ性を低下させる。また、この介在物が加工時(例えば、熱間圧延や熱間鍛造など)に加工方向に伸展するため、加工方向に直角な方向の靭性(横目靭性)が劣化する原因となる。従ってS量は0.1%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下とする。
Crは、球状化焼鈍時に炭化物の生成を促進し、これを球状化させて球状化組織の生成に有効に作用し、鋼を部品形状に成形するときの冷間鍛造性を劣化させることなく、高周波焼入れ後の鋼部品のねじり強度を高めるのに作用する元素である。こうした作用を発揮させるには、Cr量は0.30%以上、好ましくは0.4%以上、より好ましくは0.5%以上とする。しかしCr量が過剰になると粗大な炭化物が生成し、冷間鍛造性を劣化させる。従ってCr量は3.0%以下、好ましく2.7%以下、より好ましくは2.5%以下とする。
Alは、鋼中に固溶状態で存在することによって球状化焼鈍時に炭化物が成長するのを抑制するのに作用する元素であり、Alを固溶させることによって、粗大な炭化物が生成するのを抑制できる。粗大な炭化物の生成が抑制されることによって、高周波焼入れ後におけるねじり強度を高めることができる。またAlは、Nと結合してAlNを析出し、冷間鍛造時に変形抵抗を増大させるNを無害化するのに有効に作用する元素である。またAlは、脱酸剤としても作用する。こうした作用を発揮させるには、Al量は0.06%以上、好ましくは0.07%以上、より好ましくは0.08%以上とする。しかしAl量が過剰になると、AlNが多量に析出して冷間鍛造性を却って低下させる。従ってAl量は0.50%以下、好ましくは0.4%以下、より好ましくは0.3%以下とする。
Bは、鋼中のNと結合してBNとして析出し、鋼中の固溶N量を低減する元素である。固溶N量が低減されることによって、冷間鍛造時の鋼の変形抵抗が低下するため、冷間鍛造性を改善できる。また、BNが析出することによってAlNの析出が抑制されるため、鋼中の固溶Al量を確保でき、高周波焼入れ後における鋼部品のねじり強度を高めることができる。こうした作用を発揮させるには、Bは0.0005%以上、好ましくは0.0010%以上、より好ましくは0.0015%以上とする。しかしBが過剰になると、鋼が硬くなり過ぎて冷間鍛造性が却って劣化する。従ってBは0.010%以下、好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下とする。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる不純物元素であり、N量が過剰になり、固溶N量が増加すると冷間鍛造時の鋼の変形抵抗が増大し、また冷間鍛造時に割れが発生することが助長されるため、できるだけ低減する必要がある。従ってN量は0.02%以下、好ましくは0.018%以下、より好ましくは0.016%以下とする。なお、N量を0%とすることは工業的に困難であり、通常、0.002%程度含有している。
Moは、鋼の焼入れ性を高め、焼入れされていない組織が生成するのを抑制して高周波焼入れ後の鋼部品の強度を高めるのに作用する元素である。こうした作用は、その含有量が増加するにつれて増大するが、好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.1%以上、更に好ましくは0.15%以上である。しかしMoを過剰に含有すると、焼きならし後でも過冷組織(例えば、マルテンサイトなど)が生成して被削性が低下するため、1%以下とすることが好ましい。Mo量は、より好ましくは0.8%以下であり、更に好ましくは0.5%以下である。
Ti、Nb、Vは、熱間加工時に結晶粒が異常成長するのを防止し、鋼の靭性や疲労特性が低下するのを防止する作用を有する元素であり、少なくとも任意の1種以上含有することによってこうした作用が発揮される。こうした作用は、その含有量が増加するにつれて増大するが、Ti、Nb、V量は夫々好ましくは0.005%以上、より好ましく0.010%以上含有することが望ましい。しかしこれらの元素を過剰に含有すると、硬質の炭化物が多量に生成して鋼の被削性が低下するので、Ti、Nb、V量は夫々、0.2%以下、好ましくは0.15%以下、より好ましく0.10%以下とする。なお、Ti、Nb、およびVは、単独で含有させてもよいし、任意に選ばれる2種以上を含有させてもよい。
CuとNiは、焼入れ性を向上させて高周波焼入れ後の鋼部品のねじり強度を高めるのに有効に作用する元素である。こうした作用は、これらの元素の含有量が増加するにつれて増大するが、CuとNi量は夫々好ましくは0.05%以上、より好ましく0.1%以上である。しかし過剰に含有させると過冷組織(例えば、マルテンサイトなど)が生成し、延性や靭性が低下するので、CuとNi量は夫々3%以下とすることが好ましい。Cu、Ni量は、より好ましくは2%以下、更に好ましくは1%以下である。なお、CuおよびNiは、夫々、単独で含有させてもよいし、両方を含有させてもよい。また両方を含有させる場合の含有量は夫々上記範囲で任意の含有量でよい。
Ca、Mg、Li、およびREMは、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、被削性を向上させるのに有効な元素である。こうした作用はその含有量が増加するにつれて増大するが、CaとMg量は夫々好ましくは0.0005%以上、より好ましくは0.0010%以上、LiとREM量は夫々好ましくは0.0001%以上、より好ましくは0.0003%以上である。しかし過剰に含有させてもその効果は飽和し、含有量に見合う効果が期待できないので、CaとMg量は夫々好ましくは0.005%以下、より好ましくは0.0040%以下、更に好ましくは0.0030%以下、LiとREM量は夫々好ましくは0.001%以下、より好ましくは0.0008%以下、更に好ましくは0.0005%以下である。なお、Ca、Mg、Li、およびREMは、単独で含有させてもよいし、任意に選ばれる2種以上を含有させてもよい。
上記成分組成を満足する鋼は、720〜760℃の温度域に加熱する。この温度域に加熱することによって、セメンタイトをオーステナイトに固溶させることができるため、層状セメンタイトの生成を抑制でき、球状化組織を有する鋼にできる。
上記温度域に加熱した後は、この温度域で120〜300分間(2〜5時間)保持する。保持時間が120分未満では、鋼を充分に均熱化できず、鋼の一部が720℃未満となり、オーステナイトに固溶しないセメンタイトが増加し、層状セメンタイトを形成して冷間鍛造性が劣化する。従って保持時間は120分以上、好ましくは135分以上、より好ましく150分以上である。しかし保持時間が300分を超えると、セメンタイトが保持後の冷却時に成長する際に核となるセメンタイトも固溶と再析出を繰り返して成長するため、冷却時に粗大なセメンタイトが生成し易くなり、高周波焼入れ後における鋼部品のねじり強度を劣化させてしまう。従って保持時間は300分以下、好ましくは285分以下、より好ましくは270分以下とする。
上記温度域で保持した後は、該保持温度から600℃までの温度範囲を12〜20℃/時間の平均冷却速度で冷却する。平均冷却速度が12℃/時間未満では、冷却時にセメンタイトが成長し過ぎて粗大なセメンタイトが生成し、高周波焼入れ後における鋼部品のねじり強度を低下させてしまう。従って平均冷却速度は、12℃/時間以上、好ましくは13℃/時間以上、より好ましく14℃/時間以上とする。しかし平均冷却速度が20℃/時間を超えると、冷却時に層状セメンタイトが生成し、冷間鍛造性を劣化させてしまう。従って平均冷却速度は20℃/時間以下、好ましくは19℃/時間以下、より好ましくは18℃/時間以下とする。
上記インゴットを1200℃に加熱後、熱間鍛造してビレット(155mm角)を得てから冷却した。続いてビレットを1200℃に加熱した後、熱間鍛造してφ45mmの丸棒としてから空冷した。
上記試験片のD/4位置(Dは試験片の直径)を光学顕微鏡で観察倍率400倍で10視野観察し、画像解析して全金属組織に対する層状セメンタイトの合計面積率を測定した。観察視野1視野の大きさは、縦175μm×横225μm(面積は39375μm2)である。本実施例では、層状セメンタイトの合計面積率が、全金属組織に対して5%以下である場合を、球状化組織を有すると判定した。球状化組織を有するものを判定「○」、球状化組織を有さないものを判定「×」として判定結果を下記表2に示した。また、全金属組織に対する層状セメンタイトの合計面積率を下記表2に併せて示した。なお、母相組織は、いずれもフェライトであった。
(a)上記試験片を切削加工して直径:20mm×長さ:30mmの円柱状試験片を作製し、プレス機を用いてこの円柱状試験片を60%圧縮した。60%圧縮した後、円柱状試験片を目視で観察し、割れ発生の有無を調べた。結果を下記表2に示す。
上記試験片(丸棒)を切削加工して図2に示すねじり試験片を作製した。この試験片に周波数40kHzの高周波焼入れを施した後、ねじり試験を実施してねじり強度(静的ねじり強度)を測定した。測定結果を下記表2に示す。本実施例では、ねじり強度が1600MPa以上のものを合格とした。
Claims (6)
- C :0.4〜0.65%(質量%の意味。化学成分について以下同じ)、
Si:0.01〜0.5%、
Mn:0.65%超、2%以下、
P :0.03%以下(0%を含まない)、
S :0.002〜0.1%、
Cr:0.30〜3.0%、
Al:0.06〜0.50%、
B :0.0005〜0.010%、
N :0.02%以下(0%を含まない)を含有し、
残部は鉄および不可避不純物からなる鋼であり、
該鋼は、アスペクト比が3以上のセメンタイトが3つ以上隣接している層状セメンタイトの面積率が、金属組織全体に対して5%以下である球状化組織を有することを特徴とする冷間鍛造性に優れ、高周波焼入れ後におけるねじり強度に優れた高周波焼入れ用鋼。 - 更に他の元素として、
Mo:1%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1に記載の高周波焼入れ用鋼。 - 更に他の元素として、
Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
Nb:0.2%以下(0%を含まない)、および
V :0.2%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するものである請求項1または2に記載の高周波焼入れ用鋼。 - 更に他の元素として、
Cu:3%以下(0%を含まない)、および/または
Ni:3%以下(0%を含まない)を含有するものである請求項1〜3のいずれかに記載の高周波焼入れ用鋼。 - 更に他の元素として、
Ca :0.005%以下(0%を含まない)、
Mg :0.005%以下(0%を含まない)、
Li :0.001%以下(0%を含まない)、および
REM:0.001%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素を含有するものである請求項1〜4のいずれかに記載の高周波焼入れ用鋼。 - 請求項1〜5のいずれかに記載の成分組成を満足する鋼を、
720〜760℃の温度域に加熱し、この温度域で120〜300分間保持した後、
該保持温度から600℃までの温度範囲を12〜20℃/時間の平均冷却速度で冷却することを特徴とする冷間鍛造性に優れ、高周波焼入れ後におけるねじり強度に優れた高周波焼入れ用鋼の製造方法。
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