JP6043079B2 - 熱間鍛造性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼、および歯車とその製造方法 - Google Patents

熱間鍛造性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼、および歯車とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、熱間鍛造性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼および歯車に関するものであり、熱間鍛造性と歯切加工性に優れた歯車用鋼と、この歯車用鋼を用い、浸炭の代わりに高周波熱処理を適用して製造される歯車に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、CO2の大幅低減が可能な高周波熱処理が着目されている。歯車の製造においても、現状では長時間の加熱が必要な浸炭が表面硬化のために行われているが、この浸炭に代えて高周波熱処理(高周波焼入れ)を適用することが検討されている。高周波熱処理は、短時間加熱・急冷が可能であるため、上記浸炭の代わりに高周波熱処理を適用できれば、上記CO2の大幅な低減だけでなく、熱処理時間の大幅低減も実現でき、更には、熱処理ひずみが低減されて、仕上げ加工の低減や廃止も可能となることから、大幅なコストダウンを期待できる。
しかしながら、高周波熱処理を歯車の製造に適用する場合、以下の問題がある。即ち、従来の浸炭工程では、浸炭により高い表層硬さを確保できるため、低炭素鋼を熱処理用材料として用いることができるのに対し、高周波焼入れで浸炭部品(浸炭歯車)並みの表層硬さを確保するには、熱処理用材料として中炭素鋼を用いる必要がある。しかしこの中炭素鋼は、低炭素鋼よりも硬いため、高周波焼入れ前に行う歯切加工(歯車へ加工するための切削)が困難であるといった問題がある。
これまでに、高周波熱処理が行われ、かつ切削性を考慮する必要がある鋼部品として、等速ジョイント用のアウターレースやシャフトなどが挙げられる。例えば特許文献1や特許文献2には、切削性を高めるために、快削成分(低融点元素のS、Pb、Te、Se、Biなど)を添加することが示されている。この方法では、良好な切削性を確保することはできるが、形成される介在物の異方性に起因して曲げ疲労特性が劣化する場合があるため、歯車へ適用することは難しい。
また、歯車製造工程における熱間鍛造は、軸付き歯車など大きな加工が必要な場合があり、更には近年、鋼材歩留まりの観点からニアネット成形化が進んでおり、熱間加工で要求される加工形状や加工率が厳しくなっている状況にある。上記快削成分を含む鋼材に対し、加工度の高い熱間鍛造を施すと、上記快削成分を含む介在物が軟質であるため、熱間鍛造時に該介在物界面から割れが生じうる、といった問題がある。
一方、上記快削成分を加えることなく、鋼材自体の軟化により切削性を向上させるべく、中炭素鋼の範囲内においてC量を極力低減させると、高周波焼入れ後の表層硬さ及び内部硬さが低下することから、一般の浸炭歯車並みの強度すら得られない場合がある。Cと同様の効果を有するMnやCrを低減させた場合も同様の問題が生じる。例えば、特許文献3〜5では、機械構造用鋼の切削性や熱間加工性を高めた技術が示されているが、いずれもMn量やCr量が適切でないため、高周波焼入れを行っても歯車として機能する十分な硬さを確保できない。
従って、浸炭の代わりに高周波焼入れを行って、浸炭歯車並みの強度を確保すべく中炭素鋼を用いることを前提に、歯車製造工程において、良好に熱間鍛造および歯切加工を行うことのできる歯車用鋼と、該歯車用鋼を用いて高周波焼入れ後に歯車として機能する十分な硬さが得られる歯車が求められている。
特許第3579879号公報 特開平11−269601号公報 特開2011−256447号公報 特開2011−80100号公報 特開2010−280973号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、浸炭の代わりに高周波焼入れを行って得られる、浸炭歯車並みの強度を有する歯車と、該歯車の製造工程において、優れた熱間鍛造性と歯切加工性を発揮する歯車用鋼を実現することにある。
上記課題を解決し得た本発明の熱間鍛造性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼は、
C:0.40〜0.60%(質量%を示す。化学成分について以下同じ)、
Si:0.01〜0.35%、
Mn:1.20〜2.0%、
P:0.03%以下(0%を含まない)、
S:0.03%以下(0%を含まない)、
Cr:0.01〜0.50%、
Al:0.15〜0.50%、
B:0.0020〜0.0100%、および
N:0.0100%以下(0%を含まない)
を満たし、残部が鉄および不可避不純物であるところに特徴を有する。
上記歯車用鋼は、更に他の元素として、
(a)Mo:0.80%以下(0%を含まない)や、
(b)Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)、
(c)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)
を含んでいてもよい。
本発明には、上記高周波熱処理用歯車用鋼を用い、高周波焼入れを行って得られるところに特徴を有する歯車(特には、表層硬さがHV700以上であり、かつ内部硬さがHV250以上である歯車)も含まれる。
本発明によれば、鋼材の成分組成を適切に調整しているので、該鋼材を歯車の製造に用いれば、優れた熱間鍛造性と歯切加工性を発揮し、かつ高周波焼入れ後に歯車として機能する十分な硬さを示す歯車が得られる。
詳細には、一般の浸炭歯車と同等の耐ピッチング特性と曲げ疲労特性を示す硬さ(表層硬さがHV700以上、かつ内部硬さがHV250以上)を確保でき、更に、従来の浸炭歯車製造に用いられる低炭素鋼よりも硬さの高い中炭素鋼を用いているが、歯切加工性(切削性)が高く(歯切加工時の工具磨耗量を1/2に低減でき)、更には、切削性確保のために快削成分(Bi、Teなど)を添加した従来の中炭素鋼よりも、優れた熱間鍛造性(後述する実施例における熱間引張試験で絞りが約1.4倍以上)を示す。
また歯車製造工程において、浸炭の代わりに高周波焼入れを行うので、従来の浸炭歯車の製造方法よりも、CO2の排出を大幅に低減でき、かつ熱処理時間を大幅に低減でき、更には、熱処理ひずみが低減されて仕上げ加工の廃止も可能となるため、大幅なコストダウンを期待できる。
図1は、実施例で用いた熱間引張試験片の形状を示す概略説明図である。 図2は、実施例で行った熱間引張試験の条件を示した概略説明図である。
本発明者らは、前記課題を解決するため、以下の検討を行った。まず、一般の浸炭歯車と同等の耐ピッチング特性、曲げ疲労特性などを確保するには、表層硬さを一定以上とする必要があり、そのためには、Cを中炭素鋼レベルとする必要がある。また、一般の浸炭歯車と同等の耐衝撃疲労性を確保するには、内部硬さを一定以上とする必要があり、そのためには鋼材の焼入れ性を高める必要があり、Mn、Crを後述する通り所定量含有させる必要がある。
このように表層硬さと内部硬さを確保すべく、焼入れ性確保のためのMnやCrを所定量含む中炭素鋼を用いることを前提に、歯車製造時に必要な、優れた歯切加工性(高い工具寿命)と熱間鍛造性(熱間延性)を得るべく鋭意研究を行った。
その結果、特に、Alを積極的に用い、かつTiとZrは用いずにBを一定量以上含むようにすればよいことを見出し、本発明に想到した。
以下、これらの元素を規定した理由について詳述する。
まず、Alを積極的に含有させることによって、固溶したAlが歯切加工時に工具へ付着し、付着したAlが酸化保護膜となり、工具の酸化磨耗を抑制するため、歯切加工性を大幅に向上することができる。この様に本発明では、Alを多く含有させて歯切加工性を大幅に改善させる観点から、Al量を0.15%以上とする。好ましくは0.17%以上であり、より好ましくは0.20%以上である。
しかしながら、Alを上記の通り比較的多く含む場合、AlNが粒界に析出しやすく、またAlNは粒界強度を低下させるため、熱間鍛造性(熱間延性)の低下を招き、歯車加工工程における熱間鍛造時に割れが生じる場合がある。
このAlNの粒界析出を防止するには、Nを極力低減することが有効であるが、Nを0%にすることは不可能である。そのため、AlよりもNと結合しやすい元素を添加し窒化物を形成させ、AlNの析出を防止することが有効である。
上記AlよりもNと結合しやすい元素として、Ti、Zr、B等が挙げられるが、TiやZrを用いた場合、窒化物を形成する一方でO(酸素)とも結合し、硬質の酸化物系介在物が形成され、この介在物が歯切加工性(切削性)低下の原因となる。これに対しBは、歯切加工性に有害な硬質の介在物を形成しない(即ち、歯切加工性を低下させない元素である)。また、一般的に知られている通り(例えば特許第4500709号公報を参照)、形成されるBNは、切削性(歯切加工性)を高める効果も有する。
更に、Bを含有させBNを形成させることによって、熱間鍛造時、Alはほぼ固溶する状態となるため、上記AlNによる熱間鍛造性の劣化を防止できる。更には、熱間鍛造後の放冷、風冷等の冷却過程においても、固溶状態のAlは、化合物として析出せずに固溶状態が保たれる。
Bは、一般的に、焼入性の大幅向上を目的に用いられることの多い元素であるが、本発明では上述の通り、AlよりもNとの結合力が高いことを利用し、BNを形成することで、AlNの生成防止を図っている。そしてこの効果を得るには、B量を0.0020%以上とする必要がある。好ましくは0.0025%以上、より好ましくは0.0030%以上である。尚、Bが過剰に含まれると、AlN生成防止に作用しきれなかった余剰のBが焼入れ性を必要以上に高め、熱間鍛造後の放冷時に硬質のベイナイトが生成し、歯切加工性が低下する。また、上記ベイナイトが生成すると高周波焼入れ後の内部硬さのバラつき等も招く。
よって本発明では、B量は、基本的には固溶Nを固着できるだけの量となるよう調整する。この観点から、B量の上限を0.0100%とする。好ましくは0.0070%以下、より好ましくは0.0060%以下である。
尚、Al量が過剰であると、適量のBを含有させてAlNの析出を防止できたとしても、Al単独の粒界偏析により粒界が脆化し、熱間鍛造性が劣化して割れが生じる。よってAl量は0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.25%以下である。
本発明は、上述の通り、歯車の特に表層硬さを高周波熱処理で得るべく中炭素鋼を用いることとし、更に内部硬さ確保のためにCrとMnを一定以上含み、かつ、歯切加工性確保のためにAlを積極的に含有させると共に、熱間鍛造性劣化の原因であるAlNの形成を抑える元素として、TiやZrを用いずにBを一定量以上含むものであるが、これらの作用効果を十分発揮させるには、上記Al、B以外の成分を下記範囲内とする必要がある。以下、各成分範囲について説明する。
[C:0.40〜0.60%]
Cは、部品として必要な表層硬さや内部硬さを確保する上で重要な元素であり、0.40%未満では上記硬さが不足し、部品としての強度が不足する。よって本発明では、C量を0.40%以上とする。好ましくは0.45%以上、より好ましくは0.48%以上である。しかしC量が多すぎても、硬さ向上の効果は飽和する。またC量が多すぎると、フェライトを十分に確保できないため、歯切加工性が低下する。よってC量は、0.60%以下に抑える必要がある。好ましくは0.58%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
[Si:0.01〜0.35%]
Siは、脱酸元素として作用し、鋼の内部品質を向上させるのに必要な元素である。Siが少なすぎると、脱酸が不十分となり、溶製時にガス欠陥が発生しやすくなる。よってSi量は0.01%以上とする。好ましくは0.15%以上、より好ましくは0.25%以上である。一方、Siが多すぎると、Siの固溶強化により鋼材が硬くなり歯切加工性が低下する。よって、Si量は0.35%以下とする。好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.25%以下である。
[Mn:1.20〜2.0%]
Mnは、焼入性を著しく向上させることから、内部硬さの向上に寄与する元素である。よってMn量は1.20%以上とする。好ましくは1.22%以上、より好ましくは1.25%以上である。しかし、Mnは焼入れ性向上元素であるため、過剰に含まれると硬質のベイナイトが生成されて内部硬さの増加を招き、歯切加工を良好に行うことができない。また、ベイナイトが生成すると内部硬さがバラつき易くなる。更に、MnはMs点を低下させる元素であるため、過剰に含まれると、表層組織における残留γ量が過剰になり、高周波焼入れ後の表層硬さを確保することができない場合がある。よって、Mn量は2.0%以下とする。好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.45%以下である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、結晶粒界に偏析して部品(歯車)の衝撃特性を低下させる元素であるため、極力低減する方が好ましい。そのため上限を0.03%とした。P量は、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下である。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sも、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、Mnと結合してMnS(介在物)を生成し、部品(歯車)の疲労強度、衝撃強度を低下させるため、極力低減する方が好ましい。そのため上限を0.03%とした。S量は、好ましくは0.025%以下である。
[Cr:0.01〜0.50%]
Crは、熱間鍛造後に生成するパーライト組織中のセメンタイトを、母相へ固溶させ難くする元素である。このCrが多く含まれると、高周波焼入れ時にセメンタイトの溶け残りが生じ易い。セメンタイトの溶け残りがあると、所望の硬さが得られないだけでなく、このセメンタイトを起点とする破壊を招く。またCr量が過剰であると、熱間鍛造後の組織(内部組織)としてベイナイトが生じやすくなり歯切加工性が低下する。これらの観点から、Cr量の上限を0.50%とした。Cr量は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.20%以下である。しかしながらCrは、鋼材の焼入れ性を高める元素であり、内部硬さを確保するには、Cr量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
[N:0.0100%以下(0%を含まない)]
Nは、鋼材に不可避的に含まれる元素であり、Alと結合した場合、AlNとなり結晶粒界に析出する。上述した通り、AlNが粒界に多く析出すると、熱間での粒界強度が著しく低下し、熱間鍛造性を低下させる。よってN量は、極力低減する必要があり、0.0100%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。
本発明鋼材の成分は上記の通りであり、残部は鉄および(上記P、SおよびNを含む)不可避不純物からなるものである。上記不可避不純物として鋼材に含まれるTiとZrは、上述した通り、Nとの結合力がAlよりも高いことから、AlNの生成を防止できる一方、Oとも結合し易い元素である。Oと結合した場合には硬質な介在物を形成するため、歯切加工性を低下させる。よって、本発明ではTiとZrをそれぞれ0.004%以下に抑える。好ましくはそれぞれ0.002%未満であり、より好ましくはそれぞれ0.001%未満である。
上記元素に加えて更に、下記に示す元素を適量含有させることにより、更なる特性の向上を図ることができる。以下、これらの元素について詳述する。
[Mo:0.80%以下(0%を含まない)]
Moは、焼入性を著しく向上させる効果を有すると共に、靭性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、0.1%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.15%以上である。しかし、Mo量が過剰になっても効果は飽和し、コストアップを招くだけである。またMoが過剰に含まれていると、熱間鍛造後の組織(内部組織)としてベイナイトが生じやすくなり歯切加工性が低下する。よってMo量は0.80%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.6%以下であり、更に好ましくは0.3%以下である。
[Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)]
Cu、Niも、焼入性を著しく向上させる効果を有すると共に、靭性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、Cuを0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましく、Niを0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましい。
しかしこれらの元素を過剰に含有させても効果は飽和し、コストアップを招く。また、これらの元素が過剰に含まれていると、熱間鍛造後の組織(内部組織)としてベイナイトが生じ易くなり歯切加工性が低下する。よって、CuとNiは、それぞれ0.80%以下とすることが好ましい。より好ましくはそれぞれ0.6%以下であり、更に好ましくはそれぞれ0.3%以下である。
[Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)]
CaとMgは、酸化物系介在物を形成して歯切加工性を向上させる元素であり、必要に応じて鋼に含有させても良い。上記効果を得るには、Ca、Mgいずれの場合も、好ましくは0.0001%以上、更に好ましくは0.001%以上である。しかしこれらの元素が過剰に含まれると、大型の介在物が形成されて歯車強度が低下するため、それぞれ0.005%以下とすることが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.003%以下である。
本発明の歯車用鋼は、一般的に行われている方法で溶製、鋳造、分塊した後、熱間圧延して、例えば線状、棒状の圧延材として得ることができる。
また、本発明の歯車用鋼を用いて、一般的に行われている方法で熱間鍛造、機械加工(歯切加工)、高周波熱処理し、その後、必要に応じて研削等を行って歯車を得ることができる。このとき、熱間鍛造後の冷却(放冷)の平均冷却速度を、例えば30〜90℃/分とすることが挙げられる。
上記高周波熱処理の条件は、得られる歯車の表層硬さをHV700以上、かつ内部硬さをHV250以上にできる条件であればよく、例えば、狙い硬化層深さ1.5mmとすることが挙げられる。
上記熱間鍛造後に放冷して得られる組織は、フェライトとパーライトからなる組織であり、ベイナイトを含まない。上記放冷時の冷却速度が速い場合や合金成分が多い場合には、ベイナイトが生成しやすいが、このベイナイトが存在すると、歯切加工性が大きく低下するため好ましくない。更に、内部硬さのバラつきの原因にもなるため好ましくない。
また、全組織に占めるフェライトの分率は10面積%以下であることが好ましい。フェライトが10面積%を超えると、内部硬さの低下を招くからである。フェライト分率は、より好ましくは8面積%以下である。
尚、熱間鍛造、歯切加工後に高周波焼入れを施しても、内部組織(即ち、歯車の内部組織)は、上記熱間鍛造後に放冷して得られる組織と同じである。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1または表2に示す成分を有する鋼塊を溶解炉にて作製後、1100℃で圧延して形状がφ80mm×L3000mmの圧延材を得た。この圧延材を用い、下記の方法で熱間鍛造性の評価を行った。また、圧延材を用いて更に、1200℃で熱間鍛造し、その後放冷して、形状がφ30mm×L1000mmの鍛造品と、形状がW110mm×L155mm×T30mmの鍛造品を得た。上記熱間鍛造後の放冷は、1200℃から600℃までを、表3または表4に示す平均冷却速度で冷却した。表層硬さと内部硬さ、熱間鍛造後の鋼組織、および歯切加工性は、この鍛造品を用い、下記の方法で評価した。
尚、表1および表2中「−」は、該当元素を添加していないこと(無添加)を意味する。更に、表1および表2におけるTiとZrの値「<0.000」は、定量下限を下回っていることを表している。
Figure 0006043079
Figure 0006043079
[表層硬さと内部硬さの測定]
硬さ測定用試験片として、上記形状がφ30mm×L1000mmの鍛造品を、φ20mm×L100mmに加工したものを用いた。この試験片に対し、高周波焼入れ(温度950℃、水冷(ポリアルキレングリコール系を含む)、有効硬化層深さ1.4mm)を行い、表層から50μm位置のビッカース硬さ(表層硬さ)と表層から5mm位置のビッカース硬さ(内部硬さ)を測定した。そして、表層硬さは、一般浸炭品と同等レベル以上であるHV700以上を合格とした。また内部硬さは、一般浸炭品と同等レベル以上であるHV250以上を合格とした。
[熱間鍛造後の鋼組織の測定]
上記硬さ試験片(高周波焼入れ前)にて内部硬さの測定に用いた箇所をナイタルにて腐食し、100倍で光学顕微鏡にて観察して、組織を同定した(下記表3および表4において、Pはパーライト、αはフェライト、Bはベイナイトを示す)。また、3視野当たりのフェライト分率(面積%)を求めた。
[歯切加工性の評価]
歯切加工性評価用試験片として、上記形状がW110mm×L155mm×T30mmの鍛造品を、W100mm×L150mm×T20mmに加工したものを用いた。そして、以下の条件で切削試験を行い、刃先の工具磨耗量を測定した。工具磨耗量は、一般的な高周波用鋼として用いられるS53Cの場合で250μm程度であるため、その1/2以下である125μm以下を合格(歯切加工性に優れている)と評価した。
(切削試験条件)
工具:ハイス製のホブツール
切り込み量:1.0mm
1歯あたり送り速度:0.30mm/歯
切削速度:150m/min
切削雰囲気:乾式
磨耗の判定:歯切工具により1歯あたりに加工した長さが7500mmに到達した時の歯切工具の歯先の逃げ面磨耗量を測定
[熱間鍛造性の評価]
熱間鍛造性評価用試験片として、上記形状がφ30mm×L1000mmの鍛造品を、図1に示す形状に加工したものを用いた。そして、この試験片を用いて、熱間での引張試験を図2に示す条件で行った。そして熱間鍛造性は、熱間での引張試験における絞りを用いて評価した。具体的には、図2におけるTが800℃、900℃、1000℃、1100℃、および1200℃の各条件で得られた各々の絞りの平均値を求め、この平均値が70%以上の場合を熱間鍛造性に優れると評価した。
これらの結果を表3および表4に示す。
Figure 0006043079
Figure 0006043079
表1〜4から次の様に考察できる。No.1、2、4〜8、10〜13および15〜26は、本発明で規定する要件を全て満たしているため、浸炭歯車並みの強度(硬さ)を有し、かつ歯切加工性と熱間鍛造性に優れている。
尚、No.1、2、4〜8、10〜13および15〜26では、熱間鍛造後であって高周波焼入れ前の内部組織が、フェライトとパーライトからなるものであって、フェライト分率が10面積%以下に抑えられているが、この内部組織は高周波焼入れの影響を受けないので、歯車の内部組織も、フェライトとパーライトからなるものであって、フェライト分率が10面積%以下を満たすものと考えられる。
これに対し、上記No.以外の例は、本発明で規定する少なくともいずれかの要件を満たしておらず、上記特性の少なくともいずれかが劣っている。
即ち、No.27は、Al量が不足しているため、工具の酸化防護膜の形成が不十分となり、工具磨耗量が多く十分な歯切加工性を示さなかった。
No.28は、Al量が過剰であるため、Bの添加によりAlNの析出を防止しても、Alが単独で粒界に過剰に偏析し、その結果、粒界強度が低下して、熱間鍛造性に劣る結果となった。
No.29は、C量が不足しているため、表層硬さと内部硬さがともに低く、歯車として機能する十分な硬さが得られていない。
No.30は、C量が過剰であり、歯切加工前の硬さが高いため、歯切加工で工具磨耗量が多くなり、歯切加工性に劣る結果となった。
No.31は、フェライトの固溶強化元素であるSi量が過剰であるため、工具磨耗量が多くなった。
No.32は、Mn量が不足しているため、内部硬さが低く、歯車として機能する十分な硬さが得られていない。
No.33は、Mn量が過剰であり、歯切加工前の硬さが高いため、歯切加工で工具磨耗量が多くなり、歯切加工性に劣る結果となった。
No.34は、表層硬さ、内部硬さ、歯切性、熱間鍛造性すべてを満足するが、S量が多いため、形成される介在物(MnS等)の異方性に起因して浸炭歯車並みの強度特性(曲げ疲労強度、衝撃疲労強度)が得られない。
No.35〜38は、焼入れ性向上元素であるNi、Cr、Moがいずれも過剰であるため、熱間加工後の硬さが必要以上に高まり、その結果、切削時の工具磨耗量が多くなった。尚、No.37は、Cr量が特に過剰であるため、高周波焼入れの加熱時にセメンタイトが十分固溶せずに溶け残り、その結果、焼入れ時の表層固溶C量が少なくなり、十分な表層硬さが得られなかった。
No.39〜41は、AlよりもNと結合しやすいTiやZrを含んでいるため、AlNの形成が抑制されて熱間鍛造性は向上するが、TiやZrが酸素(O)と結合して硬質の介在物を形成するため、工具磨耗量が多く、十分な歯切加工性を示さない。
No.42および43は、AlNを低減するためのBが不足しているため、AlNが粒界に析出し、その結果、粒界強度が低下して熱間引張試験での絞りが低く、熱間鍛造性に劣る結果となった。
No.44も、Bを含んでおらず、かつNが過剰であるため、AlNが粒界に多く析出し、粒界強度を低下させ、その結果、熱間引張の絞りが低く、十分な熱間鍛造性を示さなかった。
No.45は、所定量のBを含むがN量が過剰であるため、AlNが粒界に多く析出し、粒界強度を低下させ、その結果、熱間引張の絞りが低く、熱間鍛造性に劣る結果となった。
No.46および47は、快削成分として低融点元素のBi、Teが添加されているため、歯切加工性はよいが、熱間鍛造時に介在物界面から割れが生じて絞りが低くなり、十分な熱間鍛造性を示さなかった。更に、介在物の異方性に起因して浸炭歯車並みの強度特性(曲げ疲労強度、衝撃疲労強度)が得られない。
No.48は、一般高周波用鋼として用いられているS53Cであるが、本発明の様な成分組成でなく、かつ快削成分が添加されたものでもないため、工具磨耗量が非常に高くなった。

Claims (6)

  1. C:0.40〜0.60%(質量%を示す。化学成分について以下同じ)、
    Si:0.01〜0.35%、
    Mn:1.20〜2.0%、
    P:0.03%以下(0%を含まない)、
    S:0.03%以下(0%を含まない)、
    Cr:0.01〜0.50%、
    Al:0.15〜0.50%、
    B:0.0020〜0.0100%、および
    N:0.0100%以下(0%を含まない)
    を満たし、TiとZrがそれぞれ0.004%以下に抑えられ、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ
    内部組織がフェライトとパーライトからなる組織であると共に、全組織に占めるフェライトの分率が10面積%以下であることを特徴とする熱間鍛造性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼。
  2. 更に他の元素として、
    Mo:0.80%以下(0%を含まない)を含む請求項1に記載の高周波熱処理用歯車用鋼。
  3. 更に他の元素として、
    Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)を含む請求項1または2に記載の高周波熱処理用歯車用鋼。
  4. 更に他の元素として、
    Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高周波熱処理用歯車用鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成を有し、かつ内部組織がフェライトとパーライトからなる組織であると共に、全組織に占めるフェライトの分率が10面積%以下であり、更に、表層硬さがHV700以上であり、かつ内部硬さがHV250以上であることを特徴とする歯車。
  6. 請求項5に記載の歯車を製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれかに記載の高周波熱処理用歯車用鋼を用い、得られる歯車の表層硬さをHV700以上、かつ内部硬さをHV250以上にできる条件で高周波焼入れを行うことを特徴とする歯車の製造方法。
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