JP5217403B2 - 被削性および疲労特性に優れた機械構造用鋼材 - Google Patents

被削性および疲労特性に優れた機械構造用鋼材 Download PDF

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Description

本発明は、産業機械や自動車等の機械部品に好適な機械構造用鋼材、特に被削性および疲労特性を兼ね備えた機械構造用鋼材に関する。
産業機械や自動車等の機械部品に用いられる機械部品は、鋼材を切削若しくは塑性加工またはそれらの併用により、所定の形状に加工し、その後、焼入れ焼戻し処理によって機械部品としての要求特性を確保する、という方法により製造される。従って、このような機械部品に用いられる鋼材は、まず、被削性および冷間鍛造性に優れていることが要求される。
ここに、機械構造用鋼材の被削性を改善する手段としては、鋼中にPb、S、BiおよびP等の快削性元素を単独または複合添加することが一般的である。特に、Pbは被削性を改善する作用が極めて強いために、多用されている。
しかし、Pbは、人体に有害な元素でもあり、鋼材の製造工程や機械部品の加工工程において大掛かりな排気設備を必要とし、また鋼材のリサイクルの点からも多大な問題がある。さらに、Pb、S、Te、BiおよびP等の快削性元素は、延性および靭性を劣化させるため、鋼材の疲労特性を改善する観点からは、逆に減少させる事が望ましい。
従来、上記の相矛盾する要求の下での合金設計を可能にするために、鋼中Cを黒鉛化する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、かように黒鉛を析出させた鋼においては、機械構造用鋼材として要求される耐摩耗性および疲労強度等の確保に有効である、焼入れ処理の適用が難しいところに問題を残していた。すなわち、焼入れ処理は、鋼材の硬さを増加させ、耐摩耗性及び疲労強度等を向上させるために、機械部品等の分野において多用されている。そして、被削性の向上を所期して黒鉛を析出させた鋼に対して焼入れ処理を適用した場合、焼入れ加熱時に黒鉛粒子が固溶し、その存在痕跡としての空孔が残存し、あるいは焼入れ加熱条件によっては黒鉛粒子の固溶が十分に進行せずに、処理後の表面近傍に黒鉛粒子が残存し、これらが、転動疲労における応力集中源として作用して、鋼材の転動疲労特性が劣化するという問題を来すことになる。
従って、焼入れ処理を前提とした機械構造用鋼材の製造プロセスにおいて、黒鉛析出技術を用いて被削性および疲労強度を高度に両立させるには限界があった。
特開昭51−57621号公報
本発明の目的は、Pb等の快削成分を必ずしも用いることなく、従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性を確保し、しかも焼入れ後の疲労特性にも優れた機械構造用鋼材を提供することにある。
さて、発明者らは、上記した従来技術の問題を解決すべく、被削性および焼入れ後の転動疲労特性に優れる鋼材を工業的に安定して製造するための方途について、鋭意検討した結果、以下の知見を得るに到った。
すなわち、焼入れ処理後のミクロ組織において、マルテンサイトの母相中に分散して存在する黒鉛相もしくは黒鉛起因の空孔の周囲に、母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を存在させると、黒鉛相への応力集中が低減することを疲労試験において見出し、本発明を完成するに到った。
すなわち、本発明の要旨は、次のとおりである。
C:0.1mass%以上1.5mass%以下、Si:0.15 mass%超2.0mass%以下、Mn:0.05 mass%以上2.0mass%以下、Al:0.005 mass%以上0.1mass%以下、B:0.0003 mass%以上0.0150mass%以下およびN:0.0015 mass%以上0.0150mass%以下P:0.06mass%以下、S:0.06mass%以下およびO:0.0030mass%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成であり、黒鉛相を有しかつ{(測定黒鉛面積率)/(添加Cが全て黒鉛化した際の黒鉛面積率)}×100 (%)で定義される黒鉛化率が5%超90%未満である鋼材に、焼入れ焼戻し処理を施して成る機械構造用鋼材であって、該焼入れ焼戻し処理後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔から3μm以上30μm以下までの領域が、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度が10%以上高くなるC濃度の高いマルテンサイト相であり、かつ前記焼入れ焼戻し後のマルテンサイト母相のビッカース硬さMと、前記C濃度の高いマルテンサイト相のビッカース硬さHとが、下記式(A)を満足することを特徴とする被削性および疲労特性に優れた機械構造用鋼材。

H−0.24M≧Hc ‥‥(A)
ただし、C:0.7mass%以下の場合 Hc=350[%C]+310
C:0.7mass%超の場合 Hc=550
ここで、[%C]:添加C量
)前記成分組成として、さらにNi:0.1 mass%以上3.Omass%以下、Cu:0.1 mass%以上3.Omass%以下およびCo:0.1 mass%以上3.Omass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする前記()に記載の機械構造用鋼材。
)前記成分組成として、さらにV:0.05 mass%以上0.5mass%以下およびNb:0.005 mass%以上0.05mass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする前記()または()に記載の機械構造用鋼材。
)前記成分組成として、さらにMo:0.1 mass%以上1.Omass%以下を含むことを特徴とする前記()、()または()に記載の機械構造用鋼材。
)前記成分組成として、さらにTi:0.005 mass%以上0.05mass%以下、Zr:0.005 mass%以上0.2mass%以下およびREM:0.0005 mass%以上0.2mass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする前記()ないし()のいずれかに記載の機械構造用鋼材。
本発明によれば、Pb等の快削成分を必ずしも用いることなく、従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性を確保し、しかも焼入れ後の疲労特性にも優れた機械構造用鋼材を提供することができる。
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明の機械構造用鋼材は、黒鉛相を有する鋼材に焼入れ焼戻し処理を施して成り、とりわけ焼入れ焼戻し処理後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔の周囲に、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を有することが肝要である。
すなわち、黒鉛相を有する鋼材に焼入れ焼戻し処理を施すと、該焼入れ焼戻し処理後のミクロ組織は、マルテンサイトの母相中に、黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方が分散して存在するものとなる。かようなミクロ組織において、黒鉛相もしくは黒鉛起因の空孔の周囲に、母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相を存在させることによって、疲労破壊の起点となる黒鉛相への応力集中が緩和されて、黒鉛相からの亀裂の発生が抑制される結果、鋼材の疲労特性は格段に向上する。
ここで、黒鉛相もしくは黒鉛起因の空孔の周囲に、母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相が存在するとは、焼入れ後の黒鉛相あるいは黒鉛起因の空孔の周囲組織がマルテンサイト相であり、かつ、例えば図1に示すようなEPMA(電子線プローブマイクロアナライザー)によるC分析において、母相に比べC濃度の高い領域が黒鉛相あるいは黒鉛相起因の空孔の周囲に存在していることを言う。
ここで、母相に比べてC濃度の高いマルテンサイト相の存在する領域は、黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔から3μm以上30μm以下までの領域であることが好ましい。3μm以上の領域が確保できない場合には黒鉛起因相への応力伝播を十分に抑制することが困難である。一方、領域が30μmを越える場合には、C濃度の高いマルテンサイト相の互いの近接度が高まり、母相マルテンサイトの面積率が低下してしまい、黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔への応力集中を緩和するという効果が減ずるため、十分な疲労特性を発揮できなくなる。なお、C濃度が高いマルテンサイト相の領域(黒鉛相あるいは黒鉛起因の空孔から所定距離)は、詳細は後述するが、EPMAライン分析の結果から、図3に示すように母相のC濃度よりも10%以上C濃度が高くなる位置から、黒鉛相あるいは黒鉛起因の空孔までの距離を測定することで求めることとする。
また、上記のミクロ組織を得るには、まず焼入れ処理に供する鋼材は黒鉛相を有する必要があり、この焼入れ前の鋼材における黒鉛化率は好ましくは5%超とする。なぜなら、黒鉛析出により、硬質なセメンタイト量を減少させ、また黒鉛が切削時に潤滑剤として作用し被削性を向上するためである。一方、上限は、黒鉛化率が90%以上となると、切削時に鋼材表面にむしれが生じ易くなるため、90%未満とすることが好ましい。なお、黒鉛化率は、
{(測定黒鉛面積率)/(添加Cが全て黒鉛化した際の黒鉛面積率)}×100 (%)
で定義される。
次に、機械構造用鋼材に上記した組織を与えるために好適な成分組成について、成分毎に限定理由を説明する。
C:0.1 mass%以上1.5mass%以下
Cは、黒鉛相を形成するために必要な成分であり、含有量が0.1mass%未満では被削性を確保する上で必要な黒鉛相を形成することが困難である。一方、1.5mass%を超えて添加すると、熱間圧延時の変形抵抗が上昇するとともに、変形能が低下し、熱間圧延材の割れや疵の発生が増大する。従って、Cは0.1mass%以上1.5mass%以下の範囲とした。
Si:0.15 mass%超2.0mass%以下
Siは、フェライト中に固溶し強度を増加させる元素であり、また、セメンタイト中に固溶せず、セメンタイトを不安定化することにより黒鉛化を促進する元素であるため、積極的に添加するが、0.15mass%以下では強度の増加も少なく、また黒鉛化促進の効果が認められない。しかし、2.0mass%を超えると、強度が高くなりすぎて延性が劣化する。このため、Siは0.15 mass%超2.0mass%以下の範囲とした。さらに好ましい範囲は、黒鉛化促進と強度増加のバランスの観点から0.5 mass%以上1.4 mass%以下である。
Mn:0.05 mass%以上2.0mass%以下
Mnは、鋼の脱酸剤として有効であるばかりでなく、焼入れ性にも有用な元素であるので積極的に添加するが、一方でセメンタイト中に固溶し、黒鉛化を阻害する。すなわち、0.05mass%未満の添加では、脱酸に効果がなく、また2.0mass%を超えて添加すると、黒鉛化を阻害する。このため、Mnは0.05 mass%以上2.0mass%以下の範囲とした。より好ましい範囲は、黒鉛化促進の観点から0.1 mass%以上1.5mass%以下である。
Al:0.005 mass%以上0.1mass%以下
Alは、鋼中のNと反応してAINを形成し、これが黒鉛の核形成サイトとして作用することにより、黒鉛化を促進するので積極的に添加する。0.005mass%未満の添加では、その作用が小さいが、0.1mass%を超えて添加すると、鋳造工程において、Al系酸化物が多数形成される。このAl系酸化物は、単独でも疲労破壊の起点となるばかりでなく、硬質なため、切削時に工具を摩耗させることにより被削性を低下させる。このようなことから、Alの含有量は0.005mass%以上0.1mass%以下の範囲とした。
N:0.0015 mass%以上0.0150mass%以下
Nは、AlまたはBと化合してAINまたはBNを形成し、黒鉛の結晶化の核となる。AINおよび/またはBNの微細分散により、黒鉛化を促進するとともに黒鉛粒を微細化する。しかし、0.0015mass%未満の添加では、AIN、BNが十分に形成されず、一方0.0150mass%を超えて添加すると、連続鋳造時に鋳片の割れを促進することから、Nは0.0015 mass%以上0.0150mass%以下の範囲とする。特に、黒鉛の微細化の観点からは、0.0015 mass%以上0.0100 mass%以下の範囲が好ましい。
B:0.0003 mass%以上0.0150mass%以下
Bは、鋼中のNと化合してBNを形成し、これが黒鉛の結晶化の核として作用し、黒鉛化を促進するとともに、黒鉛粒を微細化するため、本発明において重要な成分である。また、Bは鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の強度を確保する上でも有用な元素である。0.0003mass%未満の添加では、黒鉛化および焼入れ性向上の効果が小さい。しかし、0.0150mass%を超えて添加すると、Bがセメンタイト中に固溶してセメンタイトを安定化することにより、逆に黒鉛化を阻害することになる。このため、Bは0.0003 mass%以上0.0150mass%以下の範囲とした。なお、黒鉛化と焼入れ性の観点から、Bの好適範囲は0.0005 mass%以上0.0100%mass%以下である。
P:0.06mass%以下
Pは、黒鉛化を阻害する元素である。また、焼入れ焼もどし時に粒界に偏析し、粒界強度を低下させ、疲労亀裂の伝播に対する抵抗を低下させて、疲労強度を低下させる。従って、極力低減すべきであるが、0.06mass%まで許容される。より好ましくは、0.020mass%以下である。
S:0.06mass%以下
Sは、鋼中でMnSを形成し、これが疲労試験時には割れ発生の起点となり疲労特性を劣化させる。また、MnSは黒鉛の結晶化の核としても作用するが、多すぎると粗大化し、粗大な黒鉛を形成する。従って、Sの含有量は0.06mass%以下とした。より好ましくは、0.035mass%以下である。
O:0.0030mass%以下
Oは、酸化物系非金属介在物を形成し、被削性および疲労強度をともに低下させるので極力低減すべきであるが、0.0030mass%までは許容される。
以上、基本成分について説明したが、本発明においては以下の各元素を必要に応じて用いることができる。以下にそれらの限定理由を述べる。
Ni:0.1 mass%以上3.Omass%以下、Cu:0.1 mass%以上3.Omass%以下およびCo:0.1mass%以上3.Omass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種
Ni、CuおよびCoは、いずれも黒鉛化を促進する元素であり、また焼入れ性を向上させる作用も併せ持つため、黒鉛化を促進し、かつ焼入れ性を向上させることが可能となる。添加量としては、各成分ともに、0.1mass%未満では上記の効果は小さく、一方3.0mass%を超えて添加してもその効果は飽和するので、Ni、CuおよびCoは、いずれも0.1 mass%以上3.Omass%以下の範囲とした。
Mo:0.1 mass%以上1.Omass%以下
Moは、焼入れ性を高めると同時に、MnおよびCrといった合金元素に比較してセメンタイトへの分配が小さく、セメンタイト安定化能が小さい。このために、黒鉛化を著しく阻害せずに鋼材の焼入れ性を高めることができる。また、Moを添加した鋼材は焼戻し軟化抵抗が大きいために、同一焼戻し温度で比較した場合に硬さを向上させることが可能であり、この結果、疲労強度を向上させることができる。また、焼入れ性が高いために熱間圧延ままの状態においてベイナイト組織とすることが容易である。ベイナイト組織は、微細な黒鉛の生成に有利であり、このことから、焼入れ時の黒鉛の溶解を短時間で完了させることができる。Moの添加は、とりわけ疲労強度を一層向上させる必要がある場合に用いるが、0.1mass%未満の添加では、その効果が小さく、1.0mass%を超えて添加すると黒鉛化を阻害し、被削性を低下させる。このようなことから、0.1 mass%以上1.Omass%以下の範囲とした。特に、被削性の観点からは、0.8mass%以下とすることが好ましい。
V:0.05 mass%以上0.5mass%以下およびNb:0.005 mass%以上0.05mass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種
VおよびNbは、ともに炭化物形成元素で炭窒化物を形成し強度を上昇させる。しかも、セメンタイト中にはほとんど固溶しないため、黒鉛化をさほど阻害しない成分である。また、VおよびNbはともに、焼入れ性を向上させる元素でもあるため、疲労強度を向上させる必要のある場合に用いてもよい。これらの効果は、Vの場合、0.05mass%未満の添加では小さく、一方0.5mass%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.05 mass%以上0.5mass%以下の範囲とする。同様に、Nbの場合は0.005mass%未満の添加では、上記の効果が小さく、一方0.05mass%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.005 mass%以上0.05mass%以下の範囲で添加とする。
Ti:0.005 mass%以上0.05mass%以下、Zr:0.005 mass%以上0.2mass%以下およびREM:0.0005 mass%以上0.2mass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種
まず、TiおよびZrはともに、炭窒化物を形成し、これらが黒鉛の結晶化の核として作用することにより黒鉛化を促進する。これら炭窒化物を微細分散化して黒鉛粒を微細化することから、黒鉛粒をさらに微細化する必要のある場合に用いてもよい。また、TiおよびZrは、炭窒化物を形成することにより焼入れ時の有効Bを増加させ焼入れ性を向上させる。この様な効果を発揮させるためには、TiおよびZrともに、0.005mass%以上で添加することが好ましい。他方、Tiを0.05mass%およびZrを0.2mass%を超えて添加するとBNを形成するためのNが不足し、その結果、黒鉛粒が粗大化するとともに黒鉛化時間が極めて長くなることから、V:0.05 mass%以上0.5mass%以下およびNb:0.005 mass%以上0.05mass%以下の範囲とする。
次に、LaおよびCe等のREM(希土類金属)は、Sと結合して(REM)Sを形成する。これが黒鉛化の核となり、黒鉛化を促進するとともに黒鉛粒を微細化するため、黒鉛粒の微細化および黒鉛化の促進が必要な場合に用いてもよい。しかし、0.0005mass%未満ではその効果に乏しく、一方0.2mass%を超えて添加しても効果が飽和するため、0.0005 mass%以上0.2mass%以下の範囲で添加する。
以上の基本成分または、さらに添加成分を添加した成分を有する鋼材は、例えば棒鋼圧延または熱間鍛造後、所定の長さに切断し、ついで切削加工を施して機械構造用部品の各種形状に仕上げたのち、高周波焼入れ−焼戻し処理を施して、製品とするのが一般的である。
この焼入れ−焼戻し処理において、焼入れ焼戻し後の鋼材に上述のミクロ組織を与えるための条件としては、例えば、高周波焼入装置を用いた焼入れにおいて、加熱温度を850℃以上1050℃未満(好ましくは900℃以上)、加熱保持時間6s以下、とりわけ950℃以上の加熱温度では1.5s以下、好ましくは1.Os以下にて処理を行うことが有効である。
ただし、例えば850℃で1s保持する処理など、極端な低温短時間保持の場合には、加熱保持中のオーステナイト化が十分に進行せず、焼入れ後の組織中にフェライトが残存し、目標とするミクロ組織が得られなくなる。このため、加熱温度850℃〜1050℃未満、加熱保持時間6s以下の条件の下、加熱保持中にはオーステナイト化させる必要がある。なお、焼戻しは通常の条件に従えばよい。
また、上述のミクロ組織を得るためには、焼入れ前の鋼材の黒鉛化率を5%以上とすることが好ましく、そのための黒鉛化条件としては、例えば700℃で1h以上の熱処理を行えば良い。
発明者は、さらに詳細な検討を行った結果、焼入れ後のマルテンサイト母相のビッカース硬さMと、前記C濃度の高いマルテンサイト相のビッカース硬さHとが、下記式(A)を満足することが好ましい。

H−0.24M≧Hc ‥‥(A)
ただし、C:0.7mass%以下の場合 Hc=350[%C]+310
C:0.7mass%超の場合 Hc=550
ここで、[%C]:添加C量
すなわち、マルテンサイト母相が添加C量に応じた十分な硬さを有し、さらに硬質相がそれに加えて高い硬度を有する場合には、さらに優れた疲労特性を得られるとの知見を得たのである。
表1に示す成分組成になる鋼素材を、転炉により溶製し、連続鋳造により鋳片とした。鋳片サイズは 300×400mm であった。この鋳片を、ブレークダウン工程を経て150 mm角ビレットに圧延したのち、52mmφの棒鋼に圧延した。圧延の仕上温度は900 ℃超とした。表1において、鋼UはJIS規格のS53C相当鋼であり、鋼VはS53C相当鋼に快削性向上元素であるS、CaおよびPbを添加した快削鋼の例である。鋼TはJIS S25C相当鋼である。その後、黒鉛化焼鈍を加熱温度700℃で行い、加熱時間を変化させて種々の黒鉛化率を有する棒鋼を得た。
黒鉛化率は上記黒鉛化焼鈍後の素材から光学顕微鏡観察用試片を採取し、研磨後は腐食することなく、画像解析装置により、表面から1/4厚み断面における5ヶ所について、400倍の倍率の顕微鏡像10視野にわたって黒鉛の面積率を測定した。
かくして求めた黒鉛面積率を、添加Cが全て黒鉛化した際の値との比として、以下のように黒鉛化率を定義した。
(測定黒鉛面槙率)/(添加Cが全て黒鉛化した際の黒鉛面積率)×100(%)
次いで、上記棒鋼から機械加工により、平行部26.3mmΦ、つかみ部24 mmΦ、全長130mmの試験片を採取し、これに周波数4kHzの高周波焼入装置を用いて、表2に示す条件下で焼入れを施し、170℃×30minの焼戻しを施した後、平行部を研磨し26.0mmΦとした。
かくして得られた試験片の平行部表面から3mmの深さまでの表層を、ミクロ組織観察、硬さ測定及びEPMAライン分析を行って、主要ミクロ組織の種類、高Cマルテンサイト領域(以下、単に高C相という)の有無、高C相領域半径、および母相と高C相それぞれの硬さを測定した。光学顕微鏡により黒鉛起因相およびその周囲の高C相を観察し、図2に観察結果の模式図を示すように高C相と母相との境界から黒鉛起因相までの距離が最短となる方向について、EPMAライン分析を行い、高C相および母相のC濃度分布を測定した。そして、図3に示すEPMAライン分析結果の模式図に示すように、母相のC濃度C0(測定強度C0)よりも黒鉛起因相の周囲のC濃度が10%以上高い場合を、高C相有りと判定した。また、母相のC濃度C0よりもC濃度が10%高くなる位置(C濃度=1.1×C0となる位置)から黒鉛起因相までの距離Lを、高C相の半径として評価した。
図1には、光学顕微鏡による観察結果およびEPMAライン分析結果の実例を併せて示した。高C相は、黒鉛相や母相領域に比べて白っぽく見える領域であり、光学顕微鏡により明確に判断できる。
例えば、EPMAによるライン分析結果を電子顕微鏡による組織写真と併せて図1に示すように、CのX線強度のピーク域である黒鉛相に向かってX線強度が漸増する領域が、高Cマルテンサイト相である。
また、同様の試験片を、ローラーピッチング疲労試験に供し、転動疲労寿命を求めた。試験条件は、すべり率40%、負荷応力3677MPaおよび回転数1900rpmとした。そして、得られた試験結果がワイブル分布に従うものとして、確率紙上にプロットし、BlO寿命(累積破損確率10%での剥離発生までの総負荷回数)を求めた。求めたBlO寿命は、鋼No.U(JIS S53C鋼相当)の同寿命を1とした場合の指数として、各鋼の指数を指標として特性の良否を評価した。その評価結果を、表2に併記する。
さらに、被削性についても評価した。この被削性は、高速度工具鋼SKH4を用い、52mmφの棒鋼を切削速度80m/min、無潤滑の条件により外周旋削を行い、工具が切削不能となるまでの時間を工具寿命として評価した。この評価結果についても、表2に併記する。
本発明の鋼材は何れも黒鉛化焼鈍後にPb添加快削鋼と同等以上の優れた被削性を示すとともに、同等のC量を有する、従来の機械構造用鋼よりも著しく優れた滑り転動疲労寿命を示した。
これに対して、化学組成が本発明の条件を満たしていない場合(鋼材No.32〜35)は、長時間の焼鈍を施しても十分な黒鉛化率が得られず、被削性は本発明の鋼材よりも劣っていた。
また、化学組成が本発明の範囲内であっても、焼鈍後に十分な黒鉛化率が得られない場合(鋼材No.1,5)も工具寿命は本発明の鋼材と比較して劣っており、逆に黒鉛化率を高くしすぎた場合には、工具寿命は長くなるものの、表面粗さが著しく大きくなっていた。
焼入れ時の加熱温度が高く、かつ保持時間が長すぎる場合(鋼材No.3,7,10,17,19)には、焼入れ後にC濃度の高いマルテンサイト相の存在が認められず、転動疲労寿命は従来鋼よりもむしろ劣る結果となった。逆に、850℃および1s保持のような、極端な低温短時間保持(鋼材No.11)には、加熱保持中のオーステナイト化が十分に進行せず、焼入れ後の組織中にフェライトが残存し、目標とするミクロ組織が得られなかった。そのため、母相の硬さが十分に得られずにH−0.24M<Hcとなったため、C濃度の高いマルテンサイト相が生成しているにも拘らず、転動疲労寿命はむしろ従来鋼よりも劣っていた。
電子顕微鏡組織写真に示した走査方向における、EPMAによるライン分析結果を示す図である。 黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔(黒鉛起因相)の周囲の高Cマルテンサイト相(高C相)の領域の有無、および、その大きさの測定法を説明する図であり、光学顕微鏡写真の模式図である。 黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔(黒鉛起因相)の周囲の高Cマルテンサイト相(高C相)の領域の有無、および、その大きさの測定法を説明する図であり、EPMAライン分析結果の模式図である。

Claims (5)

  1. C:0.1mass%以上1.5mass%以下、Si:0.15 mass%超2.0mass%以下、Mn:0.05 mass%以上2.0mass%以下、Al:0.005 mass%以上0.1mass%以下、B:0.0003 mass%以上0.0150mass%以下およびN:0.0015 mass%以上0.0150mass%以下P:0.06mass%以下、S:0.06mass%以下およびO:0.0030mass%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成であり、黒鉛相を有しかつ{(測定黒鉛面積率)/(添加Cが全て黒鉛化した際の黒鉛面積率)}×100 (%)で定義される黒鉛化率が5%超90%未満である鋼材に、焼入れ焼戻し処理を施して成る機械構造用鋼材であって、該焼入れ焼戻し処理後の組織が、マルテンサイト母相と黒鉛相および黒鉛起因の空孔のいずれか一方または両方との混合になり、前記の黒鉛相若しくは黒鉛起因の空孔から3μm以上30μm以下までの領域が、前記マルテンサイト母相に比べてC濃度が10%以上高くなるC濃度の高いマルテンサイト相であり、かつ前記焼入れ焼戻し後のマルテンサイト母相のビッカース硬さMと、前記C濃度の高いマルテンサイト相のビッカース硬さHとが、下記式(A)を満足することを特徴とする被削性および疲労特性に優れた機械構造用鋼材。

    H−0.24M≧Hc ‥‥(A)
    ただし、C:0.7mass%以下の場合 Hc=350[%C]+310
    C:0.7mass%超の場合 Hc=550
    ここで、[%C]:添加C量
  2. 前記成分組成として、さらにNi:0.1 mass%以上3.Omass%以下、Cu:0.1 mass%以上3.Omass%以下およびCo:0.1 mass%以上3.Omass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1に記載の機械構造用鋼材。
  3. 前記成分組成として、さらにV:0.05 mass%以上0.5mass%以下およびNb:0.005 mass%以上0.05mass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1または2に記載の機械構造用鋼材。
  4. 前記成分組成として、さらにMo:0.1 mass%以上1.Omass%以下を含むことを特徴とする請求項1、2または3に記載の機械構造用鋼材。
  5. 前記成分組成として、さらにTi:0.005 mass%以上0.05mass%以下、Zr:0.005 mass%以上0.2mass%以下およびREM:0.0005 mass%以上0.2mass%以下のうちから選ばれた少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の機械構造用鋼材。
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