JP6043080B2 - 耐剥離性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼、および歯車とその製造方法 - Google Patents

耐剥離性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼、および歯車とその製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、耐剥離性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼および歯車に関するものであり、歯切加工性に優れた歯車用鋼と、この歯車用鋼を用い、浸炭の代わりに高周波熱処理を適用して製造される耐剥離性に優れた歯車に関するものである。
近年、地球環境保全の観点から、CO2の大幅低減が可能な高周波熱処理が着目されている。歯車の製造においても、現状では長時間の加熱が必要な浸炭が表面硬化のために行われているが、この浸炭に代えて高周波熱処理(高周波焼入れ)を適用することが検討されている。高周波熱処理は、短時間加熱・急冷が可能であるため、上記浸炭の代わりに高周波熱処理を適用できれば、上記CO2の大幅な低減だけでなく、熱処理時間の大幅低減も実現でき、更には、熱処理ひずみが低減されて、仕上げ加工の低減や廃止も可能となることから、大幅なコストダウンを期待できる。
しかしながら、高周波熱処理を歯車の製造に適用する場合、以下の問題がある。即ち、従来の浸炭工程では、浸炭により高い表層硬さを確保できるため、低炭素鋼を熱処理用材料として用いることができるのに対し、高周波焼入れで浸炭部品(浸炭歯車)並みの表層硬さを確保するには、熱処理用材料として中炭素鋼を用いる必要がある。しかしこの中炭素鋼は、低炭素鋼よりも硬いため、高周波焼入れ前に行う歯切加工(歯車へ加工するための切削)が困難であるといった問題がある。
これまでに、高周波熱処理が行われ、かつ切削性を考慮する必要がある鋼部品として、等速ジョイント用のアウターレースやシャフトなどが挙げられる。例えば特許文献1や特許文献2には、切削性を高めるために、快削成分(低融点元素のS、Pb、Te、Se、Biなど)を添加することが示されている。この方法では、良好な切削性を確保することはできるが、形成される介在物の異方性に起因して曲げ疲労特性が劣化する場合があるため、自動車変速機などの負荷環境の厳しい歯車への適用は困難な状況にある。
一方、上記快削成分を加えることなく、鋼材自体の軟化により切削性を向上させるべく、中炭素鋼の範囲内においてC量を極力低減させると、高周波焼入れ後の表層硬さ及び内部硬さが低下することから、一般の浸炭歯車並みの強度すら得られない場合がある。Cと同様の効果を有するMnやCrを低減させた場合も同様の問題が生じる。例えば、特許文献3〜5では、機械構造用鋼の切削性や熱間加工性を高めた技術が示されているが、いずれもMn量やCr量が適切でないため、高周波焼入れを行っても歯車として機能する十分な硬さを確保できない。
ところで、地球環境保全の観点から自動車の燃費向上を目的に、歯車の小型化も指向されている。歯車が小型化されると、歯の噛み合い面積が減少するため、歯車への負荷が増加し、歯車使用時に歯面が300℃程度にまで発熱して表層硬さが低下し、その結果、歯面の剥離寿命が低下するといった問題がある。よって、歯車には耐剥離性に優れていることが要求される。
歯面の耐剥離性を向上させるには、歯面の300℃程度(歯車摺動時の発熱温度)での表層硬さ低下を防止する必要があり、その手段として、例えば表層に炭化物を多量に生成させるべく高濃度浸炭を行うこと(例えば特許文献6)や、窒化物を活用した浸炭窒化を行うこと(例えば特許文献7)、また、Siを多く添加する技術(例えば特許文献8)が提案されている。
しかしながら、浸炭や浸炭窒化では製造時のCO削減を図ることができず、また高周波処理を適用できる鋼種であってSiを高めたものは、Siによる固溶硬化により、歯切加工性を確保することが困難である。
従って、浸炭の代わりに高周波焼入れを行って製造すべく中炭素鋼を用いることを前提に、歯車製造工程において、良好に歯切加工を行うことができる歯車用鋼であって、高周波焼入れ後に優れた耐剥離性を示し、歯面への負荷が厳しい環境でも使用できる歯車(例えば自動車変速機に使用される歯車)を実現するための歯車用鋼が求められている。
特許第3579879号公報 特開平11−269601号公報 特開2011−256447号公報 特開2011−80100号公報 特開2010−280973号公報 特開2004−285384号公報 特開2010−070831号公報 特開平6−158266号公報
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、高周波熱処理を適用するため中炭素鋼を用いることを前提に、優れた歯切加工性を確保できる歯車用鋼、および該歯車用鋼を用いて得られる歯車であって、耐剥離性に優れ、歯面への負荷が厳しい環境(例えば自動車変速機車)にも用いることのできる歯車を実現することにある。
上記課題を解決し得た本発明の耐剥離性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼は、
C:0.40〜0.60%(質量%を示す。化学成分について以下同じ)、
Si:0.35超〜0.70%、
Mn:1.20〜2.0%、
P:0.03%以下(0%を含まない)、
S:0.03%以下(0%を含まない)、
Cr:0.01〜0.50%、
Al:0.15〜0.50%、
B:0.0020〜0.0100%、および
N:0.010%以下(0%を含まない)
を満たし、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ、
パーライトとフェライトからなる組織であって、
全組織に占めるフェライトが3〜15面積%であり、かつ
パーライト粒の周囲長に対する、該パーライト粒を取り巻くフェライト長さの割合が60%以上であるところに特徴を有する。
上記高周波熱処理用歯車用鋼は、更に他の元素として、
(a)Mo:0.80%以下(0%を含まない)や、
(b)Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)、
(c)Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)
を含んでいてもよい。
本発明には、上記高周波熱処理用歯車用鋼を用い、高周波焼入れを行って得られるところに特徴を有する耐剥離性に優れた歯車も含まれる。
本発明によれば、鋼材の成分組成と組織を適切に調整しているので、該鋼材を歯車の製造に用いれば、製造時に優れた歯切加工性を発揮し、かつ高硬度であって表層の300℃焼戻し硬さが高く優れた耐剥離性を示す歯車が得られる。
詳細には、一般の浸炭歯車以上の耐ピッチング特性と曲げ疲労特性を示す硬さ(表層硬さがHV730以上、かつ内部硬さがHV250以上)を確保でき、更に、従来の浸炭歯車製造に用いられる低炭素鋼よりも硬さの高い中炭素鋼を用いているにもかかわらず、歯切加工性(切削性)が高く(歯切加工時の工具磨耗量を、中炭素鋼であるS53Cの1/2以下に低減でき)、更には、耐剥離性が高く、歯車使用時の発熱を想定した300℃焼戻し後の表層硬さが、一般的な浸炭歯車に用いられる浸炭用鋼(SCr420H)よりも高く、かつ該焼戻しによる表層硬さの低減量をHV30以上小さくすることができた。
よって本発明の歯車は、歯面への負荷が厳しい環境で使用される歯車(例えば自動車変速機に使用される歯車)にも適用できる。
また歯車製造工程において、浸炭の代わりに高周波熱処理を行うので、従来の浸炭歯車の製造方法よりも、CO2の排出を大幅に低減でき、かつ熱処理時間を大幅に低減でき、更には、熱処理ひずみが低減されて仕上げ加工の廃止も可能となるため、大幅なコストダウンを期待できる。
図1は、本発明で規定する組織の測定方法を示す概略説明図である。
上述した通り高周波焼入れで歯車の表層硬さを確保するには、Cを中炭素鋼レベルとする必要があり、また歯車の内部硬さ確保のためにはCrとMnを後述する通り一定以上含有させるのがよいこと、更には、耐剥離性向上を目的に、歯車使用時(摺動時)の発熱による軟化を抑制するには、熱によるマルテンサイトの回復を遅延できるSiの添加が有効であり、Siを0.35%超含有させるのがよいことを見出した。
しかしながら、Siはフェライトの固溶強化元素であり、鋼材を硬化させるため、歯切加工性の低下を招く。そこで、高い表層硬さおよび内部硬さと優れた耐剥離性を確保すべく、Cr、Mn、Siをそれぞれ一定以上含む中炭素鋼を用い、更に、歯切加工性を高めるべく鋭意研究を行った。
その結果、鋼組織において、パーライト粒の周囲を軟質であるフェライトで囲む形態とし、かつ成分組成において、Alを積極的に用い、かつTiとZrは用いずにBを一定量以上含むようにすることが大変有効であることが分かった。
まず、上記鋼組織の制御について説明する。
上記Cr等を含む中炭素鋼において歯切加工性を向上させるには、軟質組織であるフェライト量を増加させることが有効であるが、このフェライトの生成形態を制御すれば、歯切加工性をより効率よく向上させることができると考え、フェライトの生成形態に着目して鋭意研究を行った。具体的には、フェライトがパーライト粒を取り巻くように生成すれば、切削時に、この取り巻いた軟質であるフェライトが緩衝材のような役割を果たすため、工具寿命が向上し、歯切加工性を向上できると考え、この観点から、パーライト粒の周囲を取り巻くフェライトの割合と、歯切加工性との関係について調べた。
詳細には、一定鋼種(実施例1の鋼種)を用い、表1に示す通り、製造条件[熱間鍛造時の加熱温度と、熱間鍛造後の冷却速度(変態が始まり潜熱が生ずる温度までの平均冷却速度)]を変化させて、パーライト粒の周囲を取り巻くフェライトの割合(具体的には、パーライト粒の周囲長に対する、該パーライト粒を取り巻くフェライト長さの割合。以下「フェライト長さの割合」ということがある)が種々の鋼材No.a〜r(熱処理条件A〜R)を製造し、各鋼材の工具磨耗量を測定した。その結果を表1に併記する。尚、上記割合は、後述する実施例に示す方法で測定されるものである。また、上記以外の製造条件や工具磨耗量の測定方法も、後述する実施例と同じである。
この表1から、フェライト長さの割合を60%以上とすれば、工具磨耗量が、中炭素鋼であるS53Cの半分以下に抑えられ、優れた歯切加工性を発揮することを見出した。上記フェライト長さの割合は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上であり、最も好ましくは100%である。
本発明の鋼材の組織は、上記形態を有するフェライトとパーライトからなる組織であり、ベイナイトを含まない。熱間鍛造後の冷却時の冷却速度が速い場合、さらには鋼材の焼入れ性が高い場合には、ベイナイトが生成しやすいが、このベイナイトが存在すると、歯切加工性が大きく低下するため好ましくない。更に、内部硬さのバラつきの原因にもなるため好ましくない。
上記フェライトを利用した歯切加工性の向上のためには、全組織に占めるフェライトの分率を3面積%以上とする必要がある。好ましくは4面積%以上である。一方、歯車として機能しうる硬さを確保するため、全組織に占めるフェライトの分率を15面積%以下とする。フェライト分率は、好ましくは10面積%以下である。
尚、上記組織の歯車用鋼を用いて歯切加工後に高周波焼入れを施しても、内部組織(即ち、歯車の内部組織)は、上記歯車用鋼の組織と同じである。
本発明では、優れた歯切加工性確保のため、特にフェライトの生成形態を上述の通り制御すると共に、成分組成において、Alを積極的に用い、かつTiとZrを用いずにBを一定量以上含むようにする。
以下、これらの元素について詳述する。
まず本発明ではAlを積極的に含有させることによって、固溶したAlが歯切加工時に工具へ付着し、付着したAlが酸化保護膜となり、工具の酸化磨耗を抑制するため、歯切加工性を大幅に向上させることができる。この様に本発明では、Alを多く含有させて歯切加工性を大幅に改善させる観点から、Al量を0.15%以上とする。好ましくは0.17%以上であり、より好ましくは0.20%以上である。
しかしながら、Alを上記の通り比較的多く含む場合、AlNが粒界に生成しやすく、またAlNは粒界強度を低下させるため、熱間鍛造性(熱間延性)の低下を招き、歯車加工工程における熱間鍛造時に割れが生じる場合がある。
このAlNの粒界析出を防止するには、Nを極力低減することが有効であるが、Nを0%にすることは不可能である。そのため、AlよりもNと結合しやすい元素を添加し窒化物を形成させ、AlNの析出を防止することが有効である。
上記AlよりもNと結合しやすい元素として、Ti、Zr、B等が挙げられるが、TiやZrを用いた場合、窒化物を形成する一方でO(酸素)とも結合し、硬質の酸化物系介在物が形成され、この介在物が歯切加工性(切削性)低下の原因となる。これに対しBは、歯切加工性に有害な硬質の介在物を形成しない(即ち、歯切加工性を低下させない元素である)。また、一般的に知られている通り(例えば特許第4500709号公報を参照)、形成されるBNは、切削性(歯切加工性)を高める効果も有する。更に、BNは異方性による強度低下が生じにくいことも分かっている。
Bは、一般的に、焼入性の大幅向上を目的に用いられることの多い元素であるが、本発明では上述の通り、AlよりもNとの結合力が高いことを利用し、BNを形成することで、AlNの生成防止を図っている。そしてこの効果を得るには、B量を0.0020%以上とする必要がある。好ましくは0.0025%以上、より好ましくは0.0030%以上である。尚、Bが過剰に含まれると、AlN生成防止に作用しきれなかった余剰のBが焼入れ性を必要以上に高め、熱間鍛造後の放冷時に硬質のベイナイト相が生成し、歯切加工性が低下する。また、上記ベイナイトが生成すると高周波焼入れ後の内部硬さのバラつき等も招く。
よって本発明では、B量は、基本的には固溶Nを固着できるだけの量となるよう調整する。この観点から、B量の上限を0.0100%とする。好ましくは0.0070%以下、より好ましくは0.0060%以下である。
尚、Al量が過剰であると、適量のBを含有させてAlNの析出を防止できたとしても、Al単独の粒界偏析により粒界が脆化し、熱間鍛造性が劣化して割れが生じる。よってAl量は0.50%以下とする。好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.25%以下である。
本発明は、上述の通り、高硬度と耐剥離性を確保すべくSi、CrおよびMnをそれぞれ一定以上含む中炭素鋼を用いることとし、かつ、歯切加工性確保のためにAlを積極的に含有させると共に、熱間鍛造性劣化の原因であるAlNの形成を抑える元素として、TiやZrを用いずにBを一定量以上含むものであるが、これらの作用効果を十分発揮させるには、上記Al、B以外の成分を下記範囲内とする必要がある。以下、各成分範囲について説明する。
[C:0.40〜0.60%]
Cは、部品として必要な表層硬さや内部硬さ(熱間鍛造後の硬さ)を確保する上で重要な元素であり、0.40%未満では上記硬さが不足し、部品としての強度が不足する。よって本発明では、C量を0.40%以上とする。好ましくは0.45%以上、より好ましくは0.48%以上である。しかしC量が多すぎても、硬さ向上の効果は飽和する。またC量が多すぎると、フェライトを十分に確保できないため、歯切加工性が低下する。よってC量は、0.60%以下に抑える必要がある。好ましくは0.58%以下であり、より好ましくは0.55%以下である。
[Si:0.35超〜0.70%]
Siは、上述の通り、マルテンサイトの焼戻しによる組織の回復を遅らせる効果を有することから、添加することで鋼材の焼戻し軟化抵抗を高め、耐剥離性を高めるために必要な元素である。これらの効果を発揮させるため、Si量は0.35%超とする。好ましくは0.40%以上、より好ましくは0.45%以上である。一方、Siが多すぎると、フェライトが固溶強化されて鋼材が硬くなり、フェライト長さを制御したとしても歯切加工性が低下する。このような観点から、Si量は0.70%以下とする。好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.55%以下である。
[Mn:1.20〜2.0%]
Mnは、焼入性を著しく向上させることから、内部硬さの向上に寄与する元素である。よってMn量は1.20%以上とする。好ましくは1.22%以上、より好ましくは1.25%以上である。しかし、Mnは焼入れ性向上元素であるため、過剰に含まれると硬質のベイナイトが生成されて内部硬さの増加を招き、歯切加工を良好に行うことができない。また、ベイナイトが生成すると内部硬さがバラつき易くなる。更に、MnはMs点を低下させる元素であるため、過剰に含まれると、表層組織における残留γ量が過剰になり、高周波焼入れ後の表層硬さを確保することができない場合がある。よって、Mn量は2.0%以下とする。好ましくは1.50%以下、より好ましくは1.45%以下である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、結晶粒界に偏析して部品(歯車)の衝撃特性を低下させる元素であるため、極力低減する方が好ましい。そのため上限を0.03%とした。P量は、好ましくは0.020%以下、より好ましくは0.015%以下である。
[S:0.03%以下(0%を含まない)]
Sも、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、Mnと結合してMnS(介在物)を生成し、部品(歯車)の疲労強度や衝撃強度を低下させるため、極力低減する方が好ましい。そのため上限を0.03%とした。S量は、好ましくは0.025%以下である。
[Cr:0.01〜0.50%]
Crは、熱間鍛造後に生成するパーライト組織中のセメンタイトを、母相へ固溶させ難くする元素である。このCrが多く含まれると、高周波焼入れ時にセメンタイトの溶け残りが生じ易い。セメンタイトの溶け残りがあると、所望の硬さが得られないだけでなく、このセメンタイトを起点とする破壊を招く。またCr量が過剰であると、熱間鍛造後の組織(内部組織)としてベイナイトが生じやすくなり歯切加工性が低下する。これらの観点から、Cr量の上限を0.50%とした。Cr量は、好ましくは0.30%以下、より好ましくは0.20%以下である。しかしながらCrは、鋼材の焼入れ性を高める元素であり、内部硬さを確保するには、Cr量を0.01%以上とする必要がある。好ましくは0.05%以上、より好ましくは0.10%以上である。
[N:0.010%以下(0%を含まない)]
Nは、鋼材に不可避的に含まれる元素であり、Alと結合した場合、AlNとなり結晶粒界に析出する。上述した通り、AlNが粒界に多く析出すると、熱間での粒界強度が著しく低下し、熱間鍛造性を低下させる。よってN量は、極力低減する必要があり、0.010%以下とする。好ましくは0.008%以下、より好ましくは0.006%以下である。
本発明鋼材の成分は上記の通りであり、残部は鉄および(上記P、SおよびNを含む)不可避不純物からなるものである。上記不可避不純物として鋼材に含まれるTiとZrは、上述した通り、Nとの結合力がAlよりも高いことから、AlNの生成を防止できる一方、Oとも結合し易い元素である。Oと結合した場合には硬質な介在物を形成するため、歯切加工性を低下させる。よって、本発明ではTiとZrをそれぞれ0.004%以下に抑える。好ましくはそれぞれ0.002%未満であり、より好ましくはそれぞれ0.001%未満である。
上記元素に加えて更に、下記に示す元素を適量含有させることにより、更なる特性の向上を図ることができる。以下、これらの元素について詳述する。
[Mo:0.80%以下(0%を含まない)]
Moは、焼入性を著しく向上させる効果を有すると共に、靭性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、0.1%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.15%以上である。しかし、Mo量が過剰になっても効果は飽和し、コストアップを招くだけである。またMoが過剰に含まれていると、熱間鍛造後の組織(内部組織)としてベイナイトが生じやすくなり歯切加工性が低下する。よってMo量は0.80%以下とすることが好ましい。より好ましくは0.65%以下である。
[Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)]
Cu、Niも、焼入性を著しく向上させる効果を有すると共に、靭性の向上に有効な元素である。これらの効果を発揮させるには、Cuを0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましく、Niを0.1%以上(より好ましくは0.15%以上)含有させることが好ましい。
しかしこれらの元素を過剰に含有させても効果は飽和し、コストアップを招く。また、これらの元素が過剰に含まれていると、熱間鍛造後の組織(内部組織)としてベイナイトが生じ易くなり歯切加工性が低下する。よって、CuとNiは、それぞれ0.80%以下とすることが好ましい。より好ましくはそれぞれ0.6%以下であり、更に好ましくはそれぞれ0.3%以下である。
[Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)]
CaとMgは、酸化物系介在物を形成して歯切加工性を向上させる元素であり、必要に応じて鋼に含有させても良い。上記効果を得るには、Ca、Mgいずれの場合も、好ましくは0.0001%以上、更に好ましくは0.001%以上含有させるのがよい。しかしこれらの元素が過剰に含まれると、大型の介在物が形成されて歯車強度が低下するため、それぞれ0.005%以下とすることが好ましい。より好ましくは、それぞれ0.003%以下である。
(製造条件について)
本発明の歯車用鋼は、一般的に行われている方法で溶製、鋳造、分塊した後、熱間圧延、更には熱間鍛造を行って、例えば線状や棒状の鍛造品として得ることができるが、鋼組織において、所定のパーライト粒を取り巻くフェライトの割合を実現させるには、製造工程において、熱間鍛造時の加熱温度および熱間鍛造後の冷却速度を制御することが有効である。詳細には下記の通りである。
フェライトの総面積は成分、加熱温度、冷却速度に依存して決定される。また、フェライトを、パーライト粒を取り巻くように生成させるには、フェライトの起点であるオーステナイトの粒界3重点の数を制御し、フェライトの成長を制御することが重要である。上記粒界3重点の制御は、熱間鍛造時の加熱温度(熱間鍛造温度)に依存し、またフェライトの成長は、熱間鍛造後の冷却速度に依存するため、これら熱間鍛造温度と冷却速度を制御することによって、フェライトの生成形態を制御できる。フェライトの生成形態と上記熱間鍛造温度、冷却速度との関係は次の通りである。
熱間鍛造時の加熱温度が低くなると、オーステナイト結晶粒が小さくなり易い。該結晶粒が小さくなりすぎると、フェライト生成の起点である粒界3重点の数が多くなり、結果として粒界3重点に小さなフェライトばかりが生成することとなる。その結果、熱間鍛造後の冷却速度を制御しても、パーライト粒をフェライトで十分に取り巻くことができない。一方、熱間鍛造時の加熱温度が高くなると、オーステナイト結晶粒が大きくなり易い。該結晶粒が大きくなりすぎると、単純に粒界3重点間の距離が長くなるので、熱間鍛造後の冷却速度を制御しても、パーライト粒をフェライトで十分に取り巻くことができない。
上記熱間鍛造時の加熱温度を制御することにより、フェライト生成の起点である粒界3重点の数や位置を適切に制御できたとしても、熱間鍛造後の冷却条件が適切でなければ、所望のフェライト長さの割合を実現することは難しい。
冷却速度が遅い場合、粒界3重点を起点として生成したフェライトがパーライト結晶粒界に沿って成長するが、冷却速度が速い場合は、粒界3重点を起点として生成したフェライトが上記粒界に沿って成長する時間がなく、結果として、フェライト面積の総量及びパーライト粒を取り巻くフェライト長さが小さくなる。
上記加熱温度と冷却速度の最適範囲は、成分組成によって多少前後する。例えば後述する実施例1の鋼種を使用した場合には、前述の表1に示す通り、熱間鍛造温度が1200℃の場合、冷却速度が15.0℃/sと速くても所望のフェライト生成形態を実現できるが、1200℃より高い温度(1250℃、1300℃)や少し低い温度(1150℃)では、冷却速度が15.0℃/sと速い場合は実現できず、冷却速度を小さくする必要がある。また1200℃よりもより低い温度(1100℃、1000℃)では、冷却速度を0.3℃/sと遅くしても実現できない、といった傾向がある。
成分組成と、上記熱間鍛造温度、冷却速度との関係について、次の様な傾向がある。基本的にCはフェライト分率に影響を及ぼし、C量が多ければフェライトは形成され難い。よってC量が多い場合、上記フェライト生成形態を実現するには、より高温での熱間鍛造や、低速での冷却が必要となる。一方、C量が少ない場合、フェライトを確保しやすく、低温で熱間鍛造を行っても上記フェライト生成形態を実現することができる。また、Mn、Cr、Mo、Niなどの焼入れ性向上元素の含有量が多くなるほどフェライトが減少し、ベイナイトなどの過冷組織が増加する。従って、上記焼入れ性向上元素が比較的多く含まれる場合、より高温での熱間鍛造や低速での冷却が必要となる。
成分組成、上記熱間鍛造温度および冷却速度と、フェライト生成形態との関係の傾向は、上記の通りであり、成分組成に応じて上記熱間鍛造温度と冷却速度を制御することによって、所望のフェライトの生成形態を実現することができる。
歯車の製造は、本発明の歯車用鋼(鍛造品)を用い、一般的に行われている方法で、機械加工(歯切加工)、高周波熱処理し、その後、必要に応じて研削等を行って歯車を得ることができる。
上記高周波熱処理の条件は、得られる歯車の表層硬さをHV730以上、かつ内部硬さをHV250以上にできる条件であればよい。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表2または表3に示す化学成分を有する鋼塊を溶解炉にて作製後、1100℃で圧延し、次いで、表4または表5に示す熱処理条件(各アルファベットは、表1の熱処理条件と対応しており、表1に示す熱間鍛造の加熱温度、熱間鍛造後の平均冷却速度を採用した)で熱間鍛造して、形状がφ30mm×L1000mmの鍛造品と、形状がW110mm×L155mm×T30mmの鍛造品を得た。
上記熱間鍛造の条件は、No.27と28を除き、フェライト長さの割合が最大となるように、熱間鍛造の加熱温度と熱間鍛造後の平均冷却速度(変態が始まり潜熱が生ずる温度までの平均冷却速度)を制御した。
得られた鍛造品を用いて、表層硬さと内部硬さの測定、耐剥離性の評価、鋼組織の測定、および歯切加工性の評価を行った。
尚、表2および表3中「−」は、該当元素を添加していないこと(無添加)を意味する。更に、表2および表3におけるTiとZrの値「<0.000」は、定量下限を下回っていることを表している。
[表層硬さと内部硬さの測定]
硬さ測定用試験片として、上記形状がφ30mm×L1000mmの鍛造品を、φ20mm×L100mmに加工したものを用いた。この試験片に対し、高周波焼入れ(温度1050℃、水冷(ポリアルキレングリコール系を含む)、有効硬化層深さ1.4mm)を行い、L/2位置で長さ方向に対して垂直に切断した後、切断面を観察できるように樹脂に埋め込み、表層から50μm位置のビッカース硬さ(表層硬さ)と表層から5mm位置のビッカース硬さ(内部硬さ)を測定した。そして、表層硬さ(初期硬さ)は、一般浸炭品と同等レベル以上であるHV730以上を合格とした。また内部硬さは、一般浸炭品と同等レベル以上であるHV250以上を合格とした。
[耐剥離性の評価]
上記硬さ測定用試験片を300℃で2時間焼き戻したものを用いて、表層から50μm位置のビッカース硬さ(表層300℃焼戻し硬さ)を測定した。
そして、この表層300℃焼戻し硬さが、一般浸炭品を上記条件で焼戻したときの表層300℃焼戻し硬さ(本実施例では、No.49のSCr420HのHV613)よりも高く、かつ焼戻しによる初期硬さからの硬さ減少量が、上記一般浸炭品の場合(HV168)よりもHV30以上少ない場合(即ち、上記硬さ減少量がHV138以下の場合)を、耐剥離性に優れていると評価した。ちなみに、RP試験(面圧3.0GPa、すべり速度:1.2m/s、油温90℃、油種オートマチック油)によると、上記硬さ減少量がHV30の場合、剥離寿命が約2倍になることがわかっている。
[鋼組織の測定]
上記硬さ試験片(高周波焼入れ前)にて内部硬さの測定に用いた箇所をナイタルにて腐食し、100倍で光学顕微鏡にて観察して、組織を同定した(下記表4および表5において、Pはパーライト、αはフェライト、Bはベイナイトを示す)。また、3視野当たりのフェライト分率(面積%)を求めた。
更に、規定のフェライト長さの割合(パーライト粒の周囲長に対する、該パーライト粒を取り巻くフェライト長さの割合)は次の様にして測定した。即ち、上記硬さ試験片(高周波焼入れ前)のL/2位置を長さ方向に対して垂直に切断した試験片を用い、ピクリン酸アルコールで腐食した試験片を用意した。そしてこの試験片の観察位置:D(直径)/4を、100倍で10箇所(10視野)を撮影した。この100倍で撮影した写真を縦横2倍に拡大し、1視野中における最大パーライト粒を選択した。そして図1に示すように、この最大パーライト粒を円相当とし、その中心から360°を18分割(10°ピッチ)した線を引き、フェライトと線が交差する数を求め、この交差する数を36で除してから100を掛けてフェライト長さの割合(%)を求めた。ちなみに開始点の0°は必ずフェライトと交差させることにした。尚、算術上、交点が22点以上あれば、フェライト長さの割合は60%となる(22/36=61%、小数点以下は四捨五入)。
また、フェライト長さの連続性も重要となるため、交点を数える際は必ず、2点以上連続していることを条件とした。即ち、フェライトと交差する点であっても、両隣の点がフェライトと交差していない場合、上記フェライトと交差する点は、交点としてカウントしないこととした。
この測定を10視野で行い、その平均値を求めた。
[歯切加工性の評価]
歯切加工性評価用試験片として、上記形状がW110mm×L155mm×T30mmの鍛造品を、W100mm×L150mm×T20mmに加工したものを用いた。そして、以下の条件で切削試験を行い、刃先の工具磨耗量を測定した。工具磨耗量は、一般的な高周波用鋼として用いられるS53Cの場合で250μm程度であるため、その1/2以下である125μm以下を合格(歯切加工性に優れている)と評価した。
(切削試験条件)
工具:ハイス製のホブツール
切り込み量:1.0mm
1歯あたり送り速度:0.30mm/歯
切削速度:150m/min
切削雰囲気:乾式
磨耗の判定:歯切工具により1歯あたりに加工した長さが7500mmに到達した時の、歯切工具の歯先の逃げ面磨耗量を測定
これらの結果を表4および表5に示す。
表2〜5から次の様に考察できる。No.1〜26は、本発明で規定する要件を全て満たしているため、強度(硬さ)、耐剥離性、および歯切加工性の全ての特性に優れている。尚、No.1〜26では、熱間鍛造後であって高周波焼入れ前の内部組織が、フェライトとパーライトからなるものであって、フェライト分率が15面積%以下に抑えられているが、この内部組織は高周波焼入れの影響を受けないので、歯車の内部組織も、フェライトとパーライトからなるものであって、フェライト分率が15面積%以下を満たすものと考えられる。
上記No.以外の例は、本発明で規定する少なくともいずれかの要件を満たしておらず、上記特性の少なくともいずれかが劣っている。
即ち、No.27と28は、いずれもNo.1の鋼種を用いており、成分組成は規定範囲内にあるが、製造時における熱間鍛造条件を上述した傾向の通りとせず、その結果、フェライト長さの割合が規定を満たさず、切削時のフェライトの緩衝材のような性能が十分発揮されないため、十分な歯切加工性を示さなかった。
No.29は、C量が不足しているため、表層硬さと内部硬さがともに低く、十分な強度特性が得られていない。
No.30は、C量が過剰であるため内部硬さが高く、Alにより歯切加工性を高めたとしても工具磨耗量が多くなり、十分な歯切加工性を示さない。
No.31は、耐剥離性を高めるSiが不足しているため、300℃焼戻しによる表層硬さの減少量が大きくなり、耐剥離性に劣っている。
No.32は、Si量が過剰であり、耐剥離性には優れているが、内部硬さが高くなりすぎて、歯切加工性を高めるAlを所定量含んでいるが、十分な歯切加工性を示さない。
No.33は、Mn量が不足しているため、内部硬さが低く、十分な強度特性を示さない。
No.34は、Mn量が過剰であるため、歯切加工前の内部硬さが高く、歯切加工性を高めるAlを所定量含んでいるが、十分な歯切加工性を示さない。
No.35は、S量が過剰の例であるが、Sはフェライト長さ割合に直接影響を及ぼさないことから硬さ(表層硬さ、内部硬さ)、耐剥離性、歯切加工性のすべてを満足する。しかしS量が多いため、形成される介在物(MnS等)の異方性に起因して浸炭歯車並みの強度特性(曲げ疲労強度、衝撃疲労強度)が得られない。
No.36〜39は、焼入れ性向上元素であるNi、Cr、Moがいずれも過剰であるため、焼入れ性が高くなり、ベイナイトを生成させ、内部硬さを高めることから、歯切加工性を高めるAlを所定量含んでいるが、工具磨耗量が多くなり、十分な歯切加工性を示さない。尚、No.38はCr量が特に過剰であるため、高周波焼入れの加熱時にセメンタイトが十分固溶せずに溶け残り、その結果、焼入れ時の表層固溶C量が少なくなり、十分な表層硬さが得られなかった。
No.40は、Al量が不足しているため、工具の酸化防護膜形成が不十分となり、工具磨耗量が多く歯切加工性に劣る結果となった。
No.41は、Alが多すぎるため、Alが粒界に過剰に偏析し、粒界強度を低下させることから、熱間鍛造時に割れが生じた。
No.42〜44は、AlよりもNと結合しやすいTiやZrを含んでいるため、AlNの形成が抑制されて熱間鍛造性は向上するが、TiやZrが酸素(O)と結合して硬質の介在物を形成するため、工具磨耗量が多く、十分な歯切加工性を示さない。
No.45および46は、AlNを低減するためのBが不足しているため、AlNが粒界に析出し、その結果、粒界強度が低下して熱間鍛造時に割れが生じた。
No.47は、Nが過剰であるため、AlNが粒界に多く析出し、粒界強度を低下させ、その結果、熱間鍛造時に割れが生じた。
No.48は、一般高周波用鋼として用いられているS53Cであるが、本発明の様な成分組成でなく、かつ快削成分が添加されたものでもないため、工具磨耗量が、参考例として示すNo.49(一般歯車用鋼SCr420H)の約5倍と非常に高くなっている。また、Siが十分ではないため、300℃焼戻し硬さも低い。

Claims (6)

  1. C:0.40〜0.60%(質量%を示す。化学成分について以下同じ)、
    Si:0.35超〜0.70%、
    Mn:1.20〜2.0%、
    P:0.03%以下(0%を含まない)、
    S:0.03%以下(0%を含まない)、
    Cr:0.01〜0.50%、
    Al:0.15〜0.50%、
    B:0.0020〜0.0100%、および
    N:0.010%以下(0%を含まない)
    を満たし、TiとZrがそれぞれ0.004%以下に抑えられ、残部が鉄および不可避不純物であり、かつ、
    パーライトとフェライトからなる組織であって、
    全組織に占めるフェライトが3〜15面積%であり、かつ
    下記(1)〜(4)の順に行う方法により求められる、パーライト粒の周囲長に対する、該パーライト粒を取り巻くフェライト長さの割合が60%以上であることを特徴とする耐剥離性と歯切加工性に優れた高周波熱処理用歯車用鋼。
    (1)ピクリン酸アルコールで腐食した試験片の観察位置:D(直径)/4において、100倍で10箇所(10視野)を撮影する。
    (2)上記100倍で撮影した写真を縦横2倍に拡大し、1視野中における最大パーライト粒を選択する。
    (3)上記最大パーライト粒を円相当とし、その中心から360°を18分割(10°ピッチ)した線を引き、フェライトと線が交差する数を求め、この交差する数を36で除してから100を掛けてフェライト長さの割合(%)を求める。但し、測定にあたっては、下記(i)および(ii)を満たすようにする。
    (i)開始点の0°は必ずフェライトと交差させる。
    (ii)交点を数える際は必ず、2点以上連続していることを条件とする。即ち、フェライトと交差する点であっても、両隣の点がフェライトと交差していない場合、上記フェライトと交差する点は、交点としてカウントしない。
    (4)上記10視野において、上記フェライト長さの割合(%)を測定し、その平均値を求める。
  2. 更に他の元素として、
    Mo:0.80%以下(0%を含まない)を含む請求項1に記載の高周波熱処理用歯車用鋼。
  3. 更に他の元素として、
    Cu:0.80%以下(0%を含まない)、および/または、Ni:0.80%以下(0%を含まない)を含む請求項1または2に記載の高周波熱処理用歯車用鋼。
  4. 更に他の元素として、
    Ca:0.005%以下(0%を含まない)、および/または、Mg:0.005%以下(0%を含まない)を含む請求項1〜3のいずれかに記載の高周波熱処理用歯車用鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の成分組成および組織を有し、かつ表層硬さがHV730以上であると共に、内部硬さがHV250以上であることを特徴とする耐剥離性に優れた歯車。
  6. 請求項5に記載の歯車を製造する方法であって、
    請求項1〜4のいずれかに記載の高周波熱処理用歯車用鋼を用い、得られる歯車の表層硬さをHV730以上、かつ内部硬さをHV250以上にできる条件で高周波焼入れを行うことを特徴とする耐剥離性に優れた歯車の製造方法。
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