JP6838873B2 - 冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法 - Google Patents
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Description
機械構造用部品の製造工程では、炭素鋼および合金鋼等の熱間圧延材を球状化焼鈍する。球状化焼鈍により、鋼中のパーライトに含まれるセメンタイトが球状化して、鋼の冷間加工性が向上する。球状化焼鈍した圧延材は、冷間鍛造、冷間圧造および冷間転造等などで冷間加工され、さらに切削加工などの機械加工で所定の形状に成形され、最後に、焼入れ焼戻し処理による最終的な強度調整をされて、機械構造用部品が得られる。
例えば特許文献1には、金属組織が、初析フェライト組織、パーライト組織及びベイナイト組織から構成された鋼線材が開示されている。パーライト組織の体積率は1.40×C(%)×100%以上、初析フェライトの体積率は(1−1.25×(C%))×50%以下(0%を含む)、およびベイナイト組織の体積率は20%以下(0%を含む)に規定されている。この鋼線材では球状化焼鈍の焼鈍温度を低温化することができる。さらに、パーライト組織の平均ブロックサイズが20μm以下にするのが好ましく、球状化焼鈍の処理時間を短縮できる、とされている。
ただし、[C%]は質量%で示したCの含有量を示す。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (1)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
また、前組織のパーライトブロックが、平均ブロックサイズが25μm以下と微細であると、球状化焼鈍の際にセメンタイトの球状化が促進され、短時間焼鈍後の球状化度が向上することを見出した。
球状化組織の写真No.1は最も良好な球状化組織であり、写真No.4は球状化が進行しておらず、パーライトが多く存在している。
よって、球状化度が小さいほど(つまり、球状化度が1に近いほど)良好な球状化組織であり、冷間加工性が良好である。
なお、本明細書において、「線材」とは、圧延線材の意味で用い、熱間圧延後、室温まで冷却した線状の鋼材を指す。また「鋼線」とは、圧延線材に球状化焼鈍等の調質処理が施された線状の鋼材を指す。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼(以下、単に「鋼」と呼ぶことがある)は、金属組織として、初析フェライトとパーライトを含有する。
本発明の鋼の金属組織は、初析フェライトとパーライトを含有する。これらの組織は、球状化焼鈍後の鋼の変形抵抗を低減させて(つまり軟質化させて)冷間加工性の向上に寄与する金属組織である。しかしながら、鋼が、単に初析フェライトとパーライトを含有する金属組織を有するだけでは、その鋼を球状化焼鈍した後に所望の軟質化を図ることができない。所望の軟質化を達成するためには、初析フェライトとパーライトの合計面積率、初析フェライトの面積率およびパーライトブロックのサイズ等を適切に制御する必要がある。
鋼の前組織にベイナイトおよびマルテンサイト等の微細組織が多いと、球状化焼鈍後の金属組織においても、それらの微細組織の存在により、組織(特に、フェライト)が局所的に微細化される。組織の微細化により鋼の強度が高まると、球状化焼鈍しても、鋼が十分に軟質化されなくなる。球状化焼鈍による軟質化を促進するために、前組織中の微細組織の量を低減する必要がある。具体的には、全組織に対する初析フェライトとパーライトの合計面積率は90%以上とする。当該合計面積率は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、最も好ましくは100%である。
鋼は、他の組織因子として、セメンタイト以外の炭化物や、窒化物、酸化物、硫化物等を含有してもよい。
鋼の前組織における初析フェライトの面積率を高くしておくと、以下の理由により、短時間球状化焼鈍により十分な軟質化を達成できる。
初析フェライトの面積率が増加すると、球状化焼鈍中のセメンタイトの析出サイトが制限される。その結果、セメンタイトの数密度が減少して、セメンタイトの成長および粗大化が促進される。これにより、球状化焼鈍後の鋼においては、球状セメンタイトの粒子間距離が長くなり、結果として十分に軟質化された金属組織(軟質組織)となる。
W=Wα+Wγ (2)
ここで、
W:材料全体の質量
Wα:フェライトの質量
Wγ:オーステナイトの質量
([C%]/100)W=([Cα%]/100)Wα+([Cγ%]/100)Wγ (3)
ここで、
[C%]:材料全体の炭素含有量(質量%)
[Cα%]:フェライトの炭素含有量(質量%)
[Cγ%]:オーステナイトの炭素含有量(質量%)
Wγ/W=[C%]/0.8 (4)
Vp/V=Wγ/W=[C%]/0.8 (5)
ここで、
V:材料全体の体積
Vp:パーライトの体積
Vα/V=(V−Vp)/V=1−[C%]/0.8=1−1.25[C%] (6)
ここで、
Vα:初析フェライトの体積
初析フェライトの面積率は、初析フェライトの最大面積率の85%以上であるが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。
前組織におけるパーライトブロックのサイズが小さいほど、球状化が促進され、かつパーライトの再析出が抑制される。パーライトブロックを微細化すると、パーライトブロックの界面が増加する。パーライトブロックの界面は、セメンタイトの析出サイトとなるため、セメンタイトは、球状化焼鈍中に当該界面に析出する。球状化焼鈍後の冷却中には、球状化セメンタイトが成長する。よって、セメンタイトは、パーライトとして析出されにくくなる。
パーライトブロックのサイズ(より正確には、パーライトブロックの平均ブロックサイズ)が25μm以下であると、短時間球状化焼鈍後の金属組織において、良好な球状化組織を得ることができる。パーライトブロックの平均ブロックサイズが25μmを超えると、球状化焼鈍の冷却時においてパーライトが多く析出し、良好な球状化組織が得られない。パーライトブロックの平均ブロックサイズは、好ましくは23μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
bcc−Fe結晶粒が比較的大きい粒子であると、結晶粒微細化による強化が起こりにくい。よって、球状化焼鈍前および後の鋼の強度を下げることができる。これにより、短時間の球状化焼鈍であっても、強度の低い(つまり、軟質な)鋼を得やすくなる。なお、本明細書において「bcc−Fe」には、初析フェライト、およびパーライト組織中に含まれるフェライトが含まれる。
鋼の強度低下の観点からは、bcc−Fe平均粒径は35μmを超えてもよい。しかしながら、bcc−Fe平均粒径が35μmを超えると、パーライトブロックのサイズを微細化するのが困難となる。よってbcc−Fe平均粒径、好ましくは35μm以下とする。bcc−Fe平均粒径は、より好ましくは17〜33μmであり、特に好ましくは20〜30μmである。
「方位差」は、「ずれ角」もしくは「斜角」とも呼ばれている。方位差の測定には、EBSP法(Electron BackScattering Pattern法)を採用することができる。
本発明は、冷間加工に適した冷間加工用機械構造用鋼である。その鋼種は、冷間加工用機械構造用鋼として通常の化学成分組成を有するものであり、特に、C、Si、Mn、P、S、Al、Nについては、以下の適切な範囲に調整する。これらの化学成分の適切な範囲およびその限定理由を以下に説明する。なお、本明細書において、化学成分組成を表すのに用いる「%」は、質量%を意味する。
Cは、鋼の強度、即ち最終製品の強度を確保する上で有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、C含有量は0.3%以上とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.32%以上であり、より好ましくは0.35%以上である。しかしながら、Cが過剰に含有されると強度が高くなり過ぎて冷間加工性が低下するので、0.6%以下とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.55%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Siは、脱酸元素として、および固溶強化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させる。このような効果を有効に発揮させるため、Si含有量を0.05%以上と定めた。Si含有量は、好ましくは0.07%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。一方、Siが過剰に含有されると硬度が過度に上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでSi含有量を0.5%以下と定めた。Si含有量は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
Mnは、焼入れ性の向上を通じて、最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mn含有量を0.2%以上と定めた。Mn含有量は、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.4%以上である。一方、Mnが過剰に含有されると、硬度が上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでMn含有量を1.7%以下と定めた。Mn含有量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中で粒界偏析を起こし、延性の劣化の原因となる。そこで、P含有量は0.03%以下と定めた。P含有量は、好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.017%以下、特に好ましくは0.01%以下である。P含有量は少なければ少ない程好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中でMnSとして存在して延性を劣化させるので、冷間加工性には有害な元素である。そこでS含有量を0.05%以下と定めた。S含有量は、好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。但し、Sは被削性を向上させる作用を有するので、0.001%以上含有させる。S含有量は、好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。
Alは、脱酸元素として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定するのに有用である。こうした効果を有効に発揮させるため、Al含有量を0.01%以上と定めた。Al含有量は、好ましくは0.013%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、Al2O3が過剰に生成し、冷間加工性を劣化させる。そこでAl含有量を0.1%以下と定めた。Al含有量は、好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.080%以下である。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中に固溶Nが過剰に含まれると、歪み時効による硬度上昇、延性低下を招き、冷間加工性を劣化させる。そこでN含有量を0.015%以下と定めた。N含有量は、好ましくは0.013%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。N含有量は少なければ少ない程好ましく、0%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
なお、上述のように、P、SおよびNは、不可避的に含まれる元素(不可避不純物)であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している。このため、本明細書において、残部として含まれる「不可避不純物」は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた「不可避的に含まれる元素」を意味する。
Cr、Cu、Ni、MoおよびBは、いずれも鋼の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。必要に応じて、Cr、Cu、Ni、MoおよびBから選択される1種または2種以上を含有してよい。焼入れ性向上の効果は、これら元素の含有量が増加するに従って大きくなる。この効果を有効に発揮させるための好ましい含有量は、Cr量が0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。Cu量、Ni量およびMo量の好ましい含有量は、いずれも0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。B量の好ましい含有量は、0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上である。
・Cr:0%超、0.5%以下、好ましいくは0.015〜0.45%、より好ましい:0.020〜0.40%
・Cu:0%超、0.25%以下、好ましくは0.02〜0.22%、より好ましくは0.05〜0.20%
・Ni:0%超、0.25%以下、好ましくは0.02〜0.22%、より好ましくは0.05〜0.20%
・Mo:0%超、0.25%以下、好ましくは0.02〜0.22%、より好ましくは0.05〜0.20%
・B:0%超、0.01%以下、好ましくは0.0003〜0.007%、より好ましくは0.0005〜0.005%
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (1)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
なお、上述のようにCr、Cu、NiおよびMoは選択的に添加可能な元素であり、こられの元素のうち、添加されていない元素の式(1)における含有量はゼロとなる。
Tiは、Nと化合物を形成し、固溶Nを低減することで、軟質化の効果を発揮する。必要に応じて、Tiを含有してもよい。この効果を有効に発揮させるため、Ti含有量は、好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、形成される化合物が硬さ増加を招く。そこで、Tiの含有量は、0.1%以下と定めた。Ti含有量は、好ましくは0.09%以下であり、より好ましくは0.08%である。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼を製造するためには、上記した成分組成を満足する鋼を、熱間圧延する際の仕上げ圧延温度を調整し、その後の冷却を3段階に分けて、それぞれの冷却速度を適切に調整するのが好ましい。
具体的には、(a)950℃〜1100℃で仕上げ圧延した後、(b)仕上げ圧延温度から800℃までの温度域を7℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する第1冷却、(c)800℃から710℃までの温度域を1℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する第2冷却、および(d)710℃から600℃までの温度域を4〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却する第3冷却をこの順で行うのが好ましい。
仕上げ圧延温度および第1〜3冷却について、以下に詳しく説明する。なお、本明細書で規定した「温度」は、材料の温度のことである。
仕上げ圧延温度を950℃〜1100℃に制御することにより、パーライトブロックのサイズを25μm以下に制御することができる。仕上げ圧延温度が1100℃を超えると、パーライトブロックのサイズを25μm以下にすることが困難となる。また、仕上げ圧延温度が950℃未満になると、bcc−Fe平均粒径が微細化し、鋼の強度が上昇する。
仕上げ圧延温度の上限は、好ましくは1180℃であり、より好ましくは1150℃である。仕上げ圧延温度の下限は、好ましくは970℃であり、より好ましくは1000℃である。
第1冷却では、仕上げ圧延温度である950〜1200℃から、800℃までの冷却を行う。第1冷却での冷却速度が遅いと、パーライトブロックのサイズが25μmを超える可能性がある。そこで、第1冷却の平均冷却速度を7℃/秒以上とすることが好ましい。第1冷却の平均冷却速度は、より好ましくは10℃/秒以上であり、さらに好ましくは15℃/秒以上である。第1冷却の平均冷却速度の上限は特に限定されないが、現実的な範囲として200℃/秒以下である。なお、第1冷却では、平均冷却速度が7℃/秒以上であればよく、第1冷却の途中で冷却速度を変化させてもよい。第1冷却のこのような冷却速度は、コンベア上で圧延材に適切な風冷却を施すことで達成することができる。
第2冷却では、800℃から710℃までの冷却を行う。第2冷却での冷却速度が速いと、初析フェライト面積率が(1−1.25×[C%])×80%未満となる可能性がある。そこで、第2冷却の平均冷却速度を1℃/秒以下とすることが好ましい。第2冷却の平均冷却速度は、より好ましくは0.9℃/秒以下であり、さらに好ましくは0.8℃/秒以下である。第2冷却の平均冷却速度の下限は特に限定されないが、現実的な範囲として0.01℃/秒以上である。なお、第2冷却では、平均冷却速度が1℃/秒以下であればよく、第2冷却の途中で冷却速度を変化させてもよい。第2冷却のこのような冷却速度は、圧延材からの放熱を抑制するためのカバーをコンベア上に設置することにより達成することができる。
第3冷却では、710℃から600℃までの冷却を行う。第3冷却での冷却速度が遅いと、パーライトブロックのサイズが25μmを超える可能性がある。そこで、第3冷却の平均冷却速度を4℃/秒以上とすることが好ましい。第3冷却の平均冷却速度は、より好ましくは6℃/秒以上であり、さらに好ましくは8℃/秒以上である。第3冷却での冷却速度が速過ぎると、過冷組織が生成する可能性がある。そこで、第3冷却の平均冷却速度を20℃/秒以下とすることが好ましい。第3冷却の平均冷却速度は、より好ましくは18℃/秒以下であり、さらに好ましくは16℃/秒以下である。なお、第3冷却では、平均冷却速度が4〜20℃/秒であればよく、第3冷却の途中で冷却速度を変化させてもよい。
なお、Ac1は以下の式(7)から算出される値である。式(7)中、[%元素名]は各元素の質量%での含有量を意味する。
Ac1(℃)=723−10.7[%Mn]−16.9[%Ni]+29.1[%Si]+16.9[%Cr] (7)
切断試験片の縦断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングによって組織を現出させた。縦断面のD/4の位置を、光学顕微鏡にて倍率400倍で、220μm×165μmの領域を5視野撮影した。撮影した写真に対し、等間隔の10本の縦線と、等間隔の10本の横線を、格子状になるように引いた。これにより、縦線と横線の交点を100個形成した。100個の交点のうち、初析フェライト上に位置する交点の数(初析フェライトの点数)と、パーライト上に位置する交点の数(パーライトの点数)を計測した。初析フェライトの点数とパーライトの点数の合計を、交点の総数(100個)で除することにより、初析フェライト+パーライトの合計面積率(%)を求めた。5視野の写真のそれぞれにおいて同様の作業を行い、合計面積率(%)の平均値を求めた。
切断試験片の縦断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングによって組織を現出させた。縦断面のD/4の位置を、光学顕微鏡にて倍率400倍で、220μm×165μmの領域を5視野撮影した。撮影した写真に対し、等間隔の10本の縦線と、等間隔の10本の横線を、格子状になるように引いた。これにより、縦線と横線の交点を100個形成した。100個の交点のうち、初析フェライト上に位置する交点の数(初析フェライトの点数)を計測した。初析フェライトの点数、交点の総数(100個)で除することにより、初析フェライトの面積率(%)を求めた。5視野の写真のそれぞれにおいて同様の作業を行い、面積率(%)の平均値を求めた。
パーライトブロックのサイズの測定には、EBSP解析装置およびFE−SEM(Field−Emission Scanning Electron Microscope、電解放出型走査電子顕微鏡)を用いた。
切断試験片の縦断面のD/4の位置をEBSP解析装置により測定した。EBSPの解析データから、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界(大角粒界)を結晶粒界として「bcc−Fe結晶粒」を定義し、bcc−Fe平均粒径を決定した。このとき、測定領域は200μm×400μm、測定ステップは1.0μm間隔として測定した。測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解析対象から削除した。
球状化度の測定のために、切断試験片を短時間球状化焼鈍した。短時間球状化焼鈍は、切断試験片を容器に真空封入し、大気炉にて、750℃で2時間均熱保持し、平均冷却速度10℃/時で680℃まで冷却し、その後放冷することにより行った。短時間球状化焼鈍における処理時間は約9時間であり、一般的な球状化焼鈍の処理時間(約13時間)に比べて、約30%の短縮となる。
後の球状化度の測定は、鏡面研磨した縦断面サンプルをピクラールエッチングによって組織を現出させ、D/4位置にて光学顕微鏡を用いて倍率400倍で5視野観察することによって行い、各視野の球状化度をJIS G3539:1991の付図によってNo.1〜No.4で評価し、5視野の平均値を算出した。球状化度が小さいほど、良好な球状化組織であることを意味する。
球状化焼鈍後の硬さの測定は、鏡面研磨した縦断面サンプルに対し、ビッカース硬度計を用いて、D/4位置にて荷重1kgfで5点測定し、その平均値(HV)を求めた。
目標硬さ=88.4×Ceq+88.0 (8)
ただし、Ceq=[C%]+0.2×[Si%]+0.2×[Mn%]であり、[C%]、[Si%]および[Mn%]は、それぞれ質量%で示したC、SiおよびMnの含有量を示す。
一方、表3のNo.31〜40は、本発明で規定する要件を満たしていない例であり、短時間球状化焼鈍後に、球状化度および/または硬さが目標に達しなかった。
前記部品には、例えば、電装部品等の自動車用部品、および各種機械部品等の建設機械用部品が含まれ、具体的には、ボルト、ねじ、ナット、ソケット、ボールジョイント、インナーチューブ、トーションバー、クラッチケース、ケージ、ハウジング、ハブ、カバー、ケース、受座金、タペット、サドル、バルグ、インナーケース、クラッチ、スリーブ、アウターレース、スプロケット、コア、ステータ、アンビル、スパイダー、ロッカーアーム、ボディー、フランジ、ドラム、継手、コネクタ、プーリ、金具、ヨーク、口金、バルブリフター、スパークプラグ、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、コモンレール等が含まれる。本発明の鋼は、上記の部品の素材として好適に用いられる機械構造用鋼として産業上有用であり、上記の各種部品を製造するときの室温における変形抵抗が低く、優れた冷間加工性を発揮することができる。
Claims (5)
- C :0.3質量%〜0.6質量%、
Si:0.05質量%〜0.5質量%、
Mn:0.2質量%〜1.7質量%、
P :0%質量%超、0.03質量%以下、
S :0.001質量%〜0.05質量%、
Al:0.01質量%〜0.1質量%及び
N :0質量%〜0.015質量%を含有し、
残部が鉄及び不可避不純物からなり、
鋼の金属組織が、初析フェライト及びパーライトを有し、
全組織に対する初析フェライト及びパーライトの合計面積率が90%以上であり、
全組織に対する初析フェライトの面積率が(1−1.25×[C%])×80%以上であり、
上記パーライトの平均ブロックサイズが25μm以下であることを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼。
ただし、[C%]は質量%で示したCの含有量を示す。 - bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が15〜35μmであることを特徴とする請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
- Cr:0質量%超、0.5質量%以下、
Cu:0質量%超、0.25質量%以下、
Ni:0質量%超、0.25質量%以下、
Mo:0質量%超、0.25質量%以下及び
B :0質量%超、0.01質量%以下よりなる群から選択される1種以上を更に含有し、かつ下記式(1)を満足する請求項1または2に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (1)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。 - Ti:0質量%超、0.1質量%以下を更に含有する請求項1〜3のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼。
- 請求項1〜4のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼の製造方法であって、
950℃〜1100℃の仕上げ圧延温度で仕上げ圧延する工程と、
前記仕上げ圧延温度から800℃まで、7℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する工程と、
800℃から710℃まで、1℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する工程と、
710℃から600℃まで、4〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却する工程と、を、この順で行うことを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
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