JP6838873B2 - 冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法に関する。より詳細には、球状化焼鈍後の変形抵抗が低く、冷間加工性に優れた機械構造用鋼および該機械構造用鋼を製造するための方法に関する。
自動車用部品および建設機械用部品等の機械構造用部品に使用される鋼は、良好な冷間加工性、特に低い変形抵抗を有することが望まれる。鋼の変形抵抗が低いと加工が容易になり、冷間加工用の金型の寿命を向上し得る。
機械構造用部品の製造工程では、炭素鋼および合金鋼等の熱間圧延材を球状化焼鈍する。球状化焼鈍により、鋼中のパーライトに含まれるセメンタイトが球状化して、鋼の冷間加工性が向上する。球状化焼鈍した圧延材は、冷間鍛造、冷間圧造および冷間転造等などで冷間加工され、さらに切削加工などの機械加工で所定の形状に成形され、最後に、焼入れ焼戻し処理による最終的な強度調整をされて、機械構造用部品が得られる。
鋼の冷間加工性を向上させるために、球状化焼鈍の際にパーライト中のセメンタイトが球状化しやすい鋼が提案されている。
例えば特許文献1には、金属組織が、初析フェライト組織、パーライト組織及びベイナイト組織から構成された鋼線材が開示されている。パーライト組織の体積率は1.40×C(%)×100%以上、初析フェライトの体積率は(1−1.25×(C%))×50%以下(0%を含む)、およびベイナイト組織の体積率は20%以下(0%を含む)に規定されている。この鋼線材では球状化焼鈍の焼鈍温度を低温化することができる。さらに、パーライト組織の平均ブロックサイズが20μm以下にするのが好ましく、球状化焼鈍の処理時間を短縮できる、とされている。
また、特許文献1には、上記金属組織を得る方法として、熱間圧延後に巻取り、その後、400℃以上600℃以下の溶融塩槽に10秒以上浸漬した後、次いで500℃以上600℃以下の溶融塩槽に20秒以上150秒以下恒温保持した後冷却し、減面率が25%以上50%以下の伸線加工をすることが開示されている。
特許文献2には、金属組織が、パーライトと初析フェライトを有し、全組織に対するパーライトと初析フェライトの合計面積率が90面積%以上であると共に、初析フェライトの面積率Aが、所定の関係式で表されるAe値より大きい冷間加工用機械構造用鋼が開示されている。この機械構造用鋼では、初析フェライトの面積率Aが大きいので、通常と同様の焼鈍温度および処理時間で球状化焼鈍したときに、通常の鋼よりも軟質化できる、とされている。
また、特許文献2には、上記金属組織を得る方法として、1050℃以上、1200℃以下の温度で仕上げ圧延した後、10℃/秒以上の平均冷却速度で700℃以上、800℃未満の温度範囲まで冷却し、その後、0.2℃/秒以下の平均冷却速度で100秒以上冷却してから10℃/秒以上の平均冷却速度で580〜660℃の温度範囲まで冷却し、更に1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却または保持することが開示されている。
特許第5257082号公報 特許第5357994号公報
近年は省エネルギーの観点から、球状化焼鈍の処理時間を短縮することが要求されている。球状化焼鈍の処理時間を削減できれば、それに応じたエネルギー消費量の削減、すなわちCO2排出量の削減が期待できる。しかしながら、球状化焼鈍の処理時間を短縮すると、セメンタイトが適切に球状化されず、冷間加工性が劣化する。そのため、十分な冷間加工性を維持しつつ、球状化焼鈍の処理時間を大幅に短縮(具体的には、20〜30%短縮)することは容易ではなかった。
特許文献1に記載の鋼線材では、パーライト組織の平均ブロックサイズが20μm以下にすることにより、球状化焼鈍の処理時間を短縮できる。しかしながら、処理時間を大幅に短縮してしまうと、球状セメンタイトが十分に成長せず、適切な冷間加工性が得られない。
特許文献2に記載の機械構造用鋼は、処理時間を大幅に短縮して球状化焼鈍すると、セメンタイトが適切に球状化されずにパーライトが残存し、または球状化焼鈍後にパーライトが再析出する。つまり、短時間で焼鈍するとパーライトが適切に球状化されず、鋼の冷間加工性が低下する。
本発明は、球状化焼鈍の処理時間を大幅に短縮しても優れた冷間加工性を発揮できる冷間加工用機械構造用鋼、及びこれを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明に係る冷間加工用機械構造用鋼は、C:0.3質量%〜0.6質量%、Si:0.05質量%〜0.5質量%、Mn:0.2質量%〜1.7質量%、P:0%質量%超、0.03質量%以下、S:0.001質量%〜0.05質量%、Al:0.01質量%〜0.1質量%及びN:0質量%〜0.015質量%を含有し、残部が鉄及び不可避不純物からなり、鋼の金属組織が、初析フェライト及びパーライトを有し、全組織に対する初析フェライト及びパーライトの合計面積率が90%以上であり、全組織に対する初析フェライトの面積率が(1−1.25×[C%])×80%以上であり、上記パーライトの平均ブロックサイズが25μm以下であることを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼である。
ただし、[C%]は質量%で示したCの含有量を示す。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼は、bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が15〜35μmであるのが好ましい。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼は、必要に応じて、Cr:0質量%超、0.5質量%以下、Cu:0質量%超、0.25質量%以下、Ni:0質量%超、0.25質量%以下、Mo:0質量%超、0.25質量%以下及びB:0質量%超、0.01質量%以下よりなる群から選択される1種以上を更に含有し、かつ下記式(1)を満足してもよい。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (1)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼は、Ti:0質量%超、0.1質量%以下を更に含有してもよい。
上述した本発明の冷間加工用機械構造用鋼を製造する方法は、950℃〜1100℃の仕上げ圧延温度で仕上げ圧延する工程と、前記仕上げ圧延温度から800℃まで、7℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する工程と、800℃から710℃まで、1℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する工程と、710℃から600℃まで、4〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却する工程と、を含むことを特徴とする。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼は、化学成分組成を適切に調整し、全組織に対する初析フェライトおよびパーライトの合計面積率、初析フェライトの面積率、初析フェライト面積率、ならびにパーライトブロックのサイズを、それぞれ適切な範囲としている。これにより、球状化焼鈍の処理時間を短縮しても、良好な球状化組織となり、かつ十分に軟質化することができ、結果として良好な冷間加工性が得られる。また、本発明の製造方法は、上述するような特徴を有する冷間加工用機械構造用鋼を製造することができる。
本願発明者らは、処理時間を通常より大幅に短縮した球状化焼鈍(以下、「短時間球状化焼鈍」と称する)によって、従来と同等以上の球状化度を得られ、且つ、十分に軟質化できるような冷間加工用機械構造用鋼を実現するために、様々な角度から検討した。
その結果、球状化焼鈍前の金属組織(以下、「前組織」と呼ぶ。)として、全組織に対する初析フェライト及びパーライトの合計面積率が90%以上と高く、かつ全組織に対する初析フェライトの面積率が(1−1.25×[C%])×80%以上と高いと、球状化焼鈍の際に、球状セメンタイトの成長が促進されることが分かった。さらに、前組織の初析フェライト面積率が高いと、球状化焼鈍後の金属組織において、球状セメンタイトの粒子間距離が長くなり、且つ、粒内に球状セメンタイトを含有しないフェライト結晶粒(つまり、軟質なフェライト結晶粒)の割合が大きくなることが分かった。すなわち、初析フェライト及びパーライトの合計面積率が高く、かつ初析フェライト面積率の高い前組織を有する鋼は、短時間焼鈍によって、十分に硬さを低減できる(つまり、十分な軟質化)ことを見いだした。
また、前組織のパーライトブロックが、平均ブロックサイズが25μm以下と微細であると、球状化焼鈍の際にセメンタイトの球状化が促進され、短時間焼鈍後の球状化度が向上することを見出した。
これらの知見から、球状化焼鈍の処理時間を短縮しつつ、鋼の軟質化とセメンタイトの球状化とを共に達成できる鋼を得るためには、焼鈍前の金属組織において、初析フェライト面積率を高くしつつ、パーライトブロックを微細化することが重要との着想を得て、本発明を完成するに至った。
なお、本発明において「球状化度」とは、JIS G3539:1991の付図に示された球状化組織の写真No.1〜No.4に基づいて決定される数値のことである。対象となる鋼の金属組織の写真を、球状化組織の写真No.1〜No.4と比較して、最も近いと思われる球状化組織の写真No.を「球状化度」とした。
球状化組織の写真No.1は最も良好な球状化組織であり、写真No.4は球状化が進行しておらず、パーライトが多く存在している。
よって、球状化度が小さいほど(つまり、球状化度が1に近いほど)良好な球状化組織であり、冷間加工性が良好である。
以下に本発明が規定する各要件の詳細を示す。
なお、本明細書において、「線材」とは、圧延線材の意味で用い、熱間圧延後、室温まで冷却した線状の鋼材を指す。また「鋼線」とは、圧延線材に球状化焼鈍等の調質処理が施された線状の鋼材を指す。
1.金属組織
本発明の冷間加工用機械構造用鋼(以下、単に「鋼」と呼ぶことがある)は、金属組織として、初析フェライトとパーライトを含有する。
本発明の鋼の金属組織は、初析フェライトとパーライトを含有する。これらの組織は、球状化焼鈍後の鋼の変形抵抗を低減させて(つまり軟質化させて)冷間加工性の向上に寄与する金属組織である。しかしながら、鋼が、単に初析フェライトとパーライトを含有する金属組織を有するだけでは、その鋼を球状化焼鈍した後に所望の軟質化を図ることができない。所望の軟質化を達成するためには、初析フェライトとパーライトの合計面積率、初析フェライトの面積率およびパーライトブロックのサイズ等を適切に制御する必要がある。
初析フェライトおよびパーライトの合計面積率:90%以上
鋼の前組織にベイナイトおよびマルテンサイト等の微細組織が多いと、球状化焼鈍後の金属組織においても、それらの微細組織の存在により、組織(特に、フェライト)が局所的に微細化される。組織の微細化により鋼の強度が高まると、球状化焼鈍しても、鋼が十分に軟質化されなくなる。球状化焼鈍による軟質化を促進するために、前組織中の微細組織の量を低減する必要がある。具体的には、全組織に対する初析フェライトとパーライトの合計面積率は90%以上とする。当該合計面積率は、好ましくは95%以上、より好ましくは97%以上、最も好ましくは100%である。
なお、鋼に含まれる、初析フェライトとパーライト以外の金属組織(主に微細組織)としては、マルテンサイト、ベイナイトおよび残留オーステナイトが挙げられる。上述した通り、微細組織の含有量が多くなると、球状化焼鈍後の鋼の強度が高くなる。よって、鋼は、微細組織を全く含まなくても良い。
鋼は、他の組織因子として、セメンタイト以外の炭化物や、窒化物、酸化物、硫化物等を含有してもよい。
初析フェライトの面積率:(1−1.25×[C%])×80%以上
鋼の前組織における初析フェライトの面積率を高くしておくと、以下の理由により、短時間球状化焼鈍により十分な軟質化を達成できる。
初析フェライトの面積率が増加すると、球状化焼鈍中のセメンタイトの析出サイトが制限される。その結果、セメンタイトの数密度が減少して、セメンタイトの成長および粗大化が促進される。これにより、球状化焼鈍後の鋼においては、球状セメンタイトの粒子間距離が長くなり、結果として十分に軟質化された金属組織(軟質組織)となる。
初析フェライトの面積率は、鋼の製造方法中の熱処理条件によって変化するだけでなく、鋼の炭素量によっても変化する。一般的、に炭素量が増加すると初析フェライトの面積率は減少し、反対に、炭素量が減少すると初析フェライトの面積率は増加する。そのため、その鋼に含まれる炭素量に依存して、初析フェライトの面積率の最大値は異なる。本発明では、初析フェライトの最適な面積率は、その鋼における初析フェライトの最大値に対して決定することができる。よって、初析フェライトの最適な面積率は、鋼の種類、特に鋼の炭素量によって異なり得る。
数多くの実験結果により、前組織における全組織に対する初析フェライトの面積率は、(1−1.25×[C%])×80%以上を満足することによって、軟質化を図ることができることを見出した。この式の技術的意義は、以下のように説明することができる。
亜共析鋼において、フェライトおよびオーステナイトの二相域における、各組織の重量は以下の式(2)で表される。
W=Wα+Wγ (2)
ここで、
W:材料全体の質量
Wα:フェライトの質量
Wγ:オーステナイトの質量
また、各組織の重量と各組織の炭素含有量の関係から、以下の式(3)が成立する。
([C%]/100)W=([Cα%]/100)Wα+([Cγ%]/100)Wγ (3)
ここで、
[C%]:材料全体の炭素含有量(質量%)
[Cα%]:フェライトの炭素含有量(質量%)
[Cγ%]:オーステナイトの炭素含有量(質量%)
ここで、初析フェライトの体積率が最大となるA1変態点直上の場合、[Cα%]=0.0質量%、[Cγ%]=0.8質量%と見なすことができる。これらの値と、式(2)および式(3)から、以下の式(4)が得られる。
Wγ/W=[C%]/0.8 (4)
式(4)は、初析フェライトの体積率が最大のときの、オーステナイトの質量比である。A1変態点以下の温度になると、オーステナイトはパーライトへ変態し、オーステナイトの質量は、そのままパーライトの質量となる。よって、オーステナイトの質量比(Wγ/W)は、パーライトの質量比であると見なすことができる。さらに、フェライトとパーライトの比重はほぼ同じであるから、パーライトの質量比Wγ/Wは、室温におけるパーライトの体積率Vp/Vと等しい。すなわち、
Vp/V=Wγ/W=[C%]/0.8 (5)
ここで、
V:材料全体の体積
Vp:パーライトの体積
そして、初析フェライトの最大体積率(Vα/V)は、式(5)を用いることにより、以下の式(6)で表すことができる。
Vα/V=(V−Vp)/V=1−[C%]/0.8=1−1.25[C%] (6)
ここで、
Vα:初析フェライトの体積
初析フェライトの体積率は、実質的に初析フェライトの面積率とみなすことができる。よって、鋼に含まれる初析フェライトの最大面積率は、1−1.25[C%]となる。
発明者らは、数多くの実験結果を検討した結果、鋼の前組織における初析フェライトの面積率が、その鋼における初析フェライトの最大面積率の80%以上とすると、短時間球状化焼鈍であっても鋼を十分に軟質化できることを見いだした。つまり、本発明では、鋼の前組織における初析フェライトの面積率は、(1−1.25[C%])×80%以上と定めた。
初析フェライトの面積率は、初析フェライトの最大面積率の85%以上であるが好ましく、90%以上であるのがより好ましい。
なお、特許文献1では、初析フェライトの面積率が低いため、球状化焼鈍の際に球状セメンタイトの成長が起こりにくい。そのため、球状化焼鈍後の鋼において、球状セメンタイトの粒子間距離が短くなり、結果として十分に軟質化することができない。つまり、特許文献1の鋼線は、短時間の球状化焼鈍では、硬さを十分に低減することができない。
パーライトブロックのサイズ:25μm以下
前組織におけるパーライトブロックのサイズが小さいほど、球状化が促進され、かつパーライトの再析出が抑制される。パーライトブロックを微細化すると、パーライトブロックの界面が増加する。パーライトブロックの界面は、セメンタイトの析出サイトとなるため、セメンタイトは、球状化焼鈍中に当該界面に析出する。球状化焼鈍後の冷却中には、球状化セメンタイトが成長する。よって、セメンタイトは、パーライトとして析出されにくくなる。
パーライトブロックのサイズ(より正確には、パーライトブロックの平均ブロックサイズ)が25μm以下であると、短時間球状化焼鈍後の金属組織において、良好な球状化組織を得ることができる。パーライトブロックの平均ブロックサイズが25μmを超えると、球状化焼鈍の冷却時においてパーライトが多く析出し、良好な球状化組織が得られない。パーライトブロックの平均ブロックサイズは、好ましくは23μm以下であり、より好ましくは20μm以下である。
なお、特許文献2では、鋼の製造工程において、パーライトブロックのサイズを微細化するために必要な熱処理を行っていない。例えば、特許文献2では、仕上げ圧延後の急冷の停止温度は700〜800℃で、その後に徐冷している。停止温度がPs点(およそ710℃)より高い場合には、その停止温度からPs点まで徐冷することとなり、パーライトブロックのサイズが大きくなってしまう。よって、特許文献2の鋼を短時間だけ球状化焼鈍すると、パーライト中のセメンタイトが適切に球状化されず、結果としてパーライトが残存または再析出する。よって、特許文献2の鋼は、短時間の球状化焼鈍では、球状化を十分に進行させることができない(つまり、球状化度を小さくできない)。
bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径:15〜35μm
bcc−Fe結晶粒が比較的大きい粒子であると、結晶粒微細化による強化が起こりにくい。よって、球状化焼鈍前および後の鋼の強度を下げることができる。これにより、短時間の球状化焼鈍であっても、強度の低い(つまり、軟質な)鋼を得やすくなる。なお、本明細書において「bcc−Fe」には、初析フェライト、およびパーライト組織中に含まれるフェライトが含まれる。
鋼の強度を低下させる効果を発揮するためには、bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径(以下、「bcc−Fe平均粒径」と呼ぶ。)は、15〜35μmであるのが好ましい。なお、本明細書において「結晶粒の円相当直径」とは、組織断面に現れる各結晶粒の面積と同一の面積を有する円を規定したときの、当該円の直径のことを意味する。「bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径」とは、複数のbcc−Fe結晶粒の円相当直径の平均値である。
鋼の強度低下の観点からは、bcc−Fe平均粒径は35μmを超えてもよい。しかしながら、bcc−Fe平均粒径が35μmを超えると、パーライトブロックのサイズを微細化するのが困難となる。よってbcc−Fe平均粒径、好ましくは35μm以下とする。bcc−Fe平均粒径は、より好ましくは17〜33μmであり、特に好ましくは20〜30μmである。
bcc−Fe平均粒径の制御の対象となる組織は、隣り合う2つの結晶粒の方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたbcc−Fe結晶粒である。球状化焼鈍前の前組織には方位差が15°以下の小角粒界も含まれる。しかしながら、小角粒界は、球状化焼鈍後の球状化組織に及ぼす影響が小さい。球状化焼鈍後に所望の球状化組織を得るためには、前組織に含まれる大角粒界を適切に制御するのが望ましい。前記大角粒界で囲まれたbcc−Fe平均粒径を15〜35μmとすることによって、短時間の球状化焼鈍であっても、鋼を十分に軟質化でき、さらに、鋼を良好な球状化組織にすることができる。
「方位差」は、「ずれ角」もしくは「斜角」とも呼ばれている。方位差の測定には、EBSP法(Electron BackScattering Pattern法)を採用することができる。
2.化学組成
本発明は、冷間加工に適した冷間加工用機械構造用鋼である。その鋼種は、冷間加工用機械構造用鋼として通常の化学成分組成を有するものであり、特に、C、Si、Mn、P、S、Al、Nについては、以下の適切な範囲に調整する。これらの化学成分の適切な範囲およびその限定理由を以下に説明する。なお、本明細書において、化学成分組成を表すのに用いる「%」は、質量%を意味する。
C:0.3〜0.6%
Cは、鋼の強度、即ち最終製品の強度を確保する上で有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、C含有量は0.3%以上とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.32%以上であり、より好ましくは0.35%以上である。しかしながら、Cが過剰に含有されると強度が高くなり過ぎて冷間加工性が低下するので、0.6%以下とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.55%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸元素として、および固溶強化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させる。このような効果を有効に発揮させるため、Si含有量を0.05%以上と定めた。Si含有量は、好ましくは0.07%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。一方、Siが過剰に含有されると硬度が過度に上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでSi含有量を0.5%以下と定めた。Si含有量は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.2〜1.7%
Mnは、焼入れ性の向上を通じて、最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mn含有量を0.2%以上と定めた。Mn含有量は、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.4%以上である。一方、Mnが過剰に含有されると、硬度が上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでMn含有量を1.7%以下と定めた。Mn含有量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
P:0%超、0.03%以下
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中で粒界偏析を起こし、延性の劣化の原因となる。そこで、P含有量は0.03%以下と定めた。P含有量は、好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.017%以下、特に好ましくは0.01%以下である。P含有量は少なければ少ない程好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
S:0.001〜0.05%
Sは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中でMnSとして存在して延性を劣化させるので、冷間加工性には有害な元素である。そこでS含有量を0.05%以下と定めた。S含有量は、好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。但し、Sは被削性を向上させる作用を有するので、0.001%以上含有させる。S含有量は、好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。
Al:0.01〜0.1%
Alは、脱酸元素として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定するのに有用である。こうした効果を有効に発揮させるため、Al含有量を0.01%以上と定めた。Al含有量は、好ましくは0.013%以上であり、より好ましくは0.015%以上である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、Al2O3が過剰に生成し、冷間加工性を劣化させる。そこでAl含有量を0.1%以下と定めた。Al含有量は、好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.080%以下である。
N:0〜0.015%
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中に固溶Nが過剰に含まれると、歪み時効による硬度上昇、延性低下を招き、冷間加工性を劣化させる。そこでN含有量を0.015%以下と定めた。N含有量は、好ましくは0.013%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。N含有量は少なければ少ない程好ましく、0%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
本発明の鋼の基本成分は上記の通りであり、1つの実施形態として、残部は実質的に鉄である。なお、「実質的に鉄」とは、鉄以外にも本発明の特性を阻害しない程度の微量成分(例えばSb、Zn等)を許容し得ること、およびP、S、N以外の不可避不純物(例えばO、H等)も含み得ることを意味する。本発明では、必要に応じて、以下の任意の元素を含有していてもよい。含有される任意の成分に応じて、鋼の特性を更に改善できる。
なお、上述のように、P、SおよびNは、不可避的に含まれる元素(不可避不純物)であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している。このため、本明細書において、残部として含まれる「不可避不純物」は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた「不可避的に含まれる元素」を意味する。
本発明の鋼は、上述した化学組成(C、Si、Mn、P、S、AlおよびN)、鉄および不可避不純物以外にも、他の元素を選択的に含んでいてもよい。例えば、下記に例示するように、Cr、Cu、Ni、Mo、BおよびTi等を適宜含むことができる。
Cr:0%超、0.5%以下、Cu:0%超、0.25%以下、Ni:0%超、0.25%以下、Mo:0%超、0.25%以下およびB:0%超、0.01%以下よりなる群から選択される1種以上
Cr、Cu、Ni、MoおよびBは、いずれも鋼の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。必要に応じて、Cr、Cu、Ni、MoおよびBから選択される1種または2種以上を含有してよい。焼入れ性向上の効果は、これら元素の含有量が増加するに従って大きくなる。この効果を有効に発揮させるための好ましい含有量は、Cr量が0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。Cu量、Ni量およびMo量の好ましい含有量は、いずれも0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。B量の好ましい含有量は、0.0003%以上、より好ましくは0.0005%以上である。
しかしながら、Cr、Cu、NiおよびMoの含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて冷間加工性を劣化させる。そこで、Cr含有量は0.5%以下が好ましく、Cu、NiおよびMo含有量はいずれも0.25%以下が好ましい。Crのより好ましい含有量は0.45%以下、更に好ましくは0.40%以下である。Cu、NiおよびMoのより好ましい含有量は、いずれも0.22%以下、更に好ましくは0.20%以下である。
また、Bの含有量が過剰になると、靭性を劣化させるおそれがある。そこで、B含有量は0.01%以下が好ましい。B量のより好ましい含有量は0.007%以下であり、更に好ましくは0.005%以下である。
まとめると、Cr、Cu、Ni、MoおよびBのいずれか1つ以上を添加する場合、各元素の含有量は、以下のように規定することができる。
・Cr:0%超、0.5%以下、好ましいくは0.015〜0.45%、より好ましい:0.020〜0.40%
・Cu:0%超、0.25%以下、好ましくは0.02〜0.22%、より好ましくは0.05〜0.20%
・Ni:0%超、0.25%以下、好ましくは0.02〜0.22%、より好ましくは0.05〜0.20%
・Mo:0%超、0.25%以下、好ましくは0.02〜0.22%、より好ましくは0.05〜0.20%
・B:0%超、0.01%以下、好ましくは0.0003〜0.007%、より好ましくは0.0005〜0.005%
また、Cr、Cu、NiおよびMoの含有量は、下記の式(1)を満足することが好ましく、より適正な強度を得ることができる。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (1)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
なお、上述のようにCr、Cu、NiおよびMoは選択的に添加可能な元素であり、こられの元素のうち、添加されていない元素の式(1)における含有量はゼロとなる。
Ti:0%超、0.1%以下
Tiは、Nと化合物を形成し、固溶Nを低減することで、軟質化の効果を発揮する。必要に応じて、Tiを含有してもよい。この効果を有効に発揮させるため、Ti含有量は、好ましくは0.01%以上であり、より好ましくは0.02%以上である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、形成される化合物が硬さ増加を招く。そこで、Tiの含有量は、0.1%以下と定めた。Ti含有量は、好ましくは0.09%以下であり、より好ましくは0.08%である。
3.製造方法
本発明の冷間加工用機械構造用鋼を製造するためには、上記した成分組成を満足する鋼を、熱間圧延する際の仕上げ圧延温度を調整し、その後の冷却を3段階に分けて、それぞれの冷却速度を適切に調整するのが好ましい。
具体的には、(a)950℃〜1100℃で仕上げ圧延した後、(b)仕上げ圧延温度から800℃までの温度域を7℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する第1冷却、(c)800℃から710℃までの温度域を1℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する第2冷却、および(d)710℃から600℃までの温度域を4〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却する第3冷却をこの順で行うのが好ましい。
仕上げ圧延温度および第1〜3冷却について、以下に詳しく説明する。なお、本明細書で規定した「温度」は、材料の温度のことである。
(a)仕上げ圧延温度:950℃〜1100℃
仕上げ圧延温度を950℃〜1100℃に制御することにより、パーライトブロックのサイズを25μm以下に制御することができる。仕上げ圧延温度が1100℃を超えると、パーライトブロックのサイズを25μm以下にすることが困難となる。また、仕上げ圧延温度が950℃未満になると、bcc−Fe平均粒径が微細化し、鋼の強度が上昇する。
仕上げ圧延温度の上限は、好ましくは1180℃であり、より好ましくは1150℃である。仕上げ圧延温度の下限は、好ましくは970℃であり、より好ましくは1000℃である。
(b)第1冷却
第1冷却では、仕上げ圧延温度である950〜1200℃から、800℃までの冷却を行う。第1冷却での冷却速度が遅いと、パーライトブロックのサイズが25μmを超える可能性がある。そこで、第1冷却の平均冷却速度を7℃/秒以上とすることが好ましい。第1冷却の平均冷却速度は、より好ましくは10℃/秒以上であり、さらに好ましくは15℃/秒以上である。第1冷却の平均冷却速度の上限は特に限定されないが、現実的な範囲として200℃/秒以下である。なお、第1冷却では、平均冷却速度が7℃/秒以上であればよく、第1冷却の途中で冷却速度を変化させてもよい。第1冷却のこのような冷却速度は、コンベア上で圧延材に適切な風冷却を施すことで達成することができる。
(c)第2冷却
第2冷却では、800℃から710℃までの冷却を行う。第2冷却での冷却速度が速いと、初析フェライト面積率が(1−1.25×[C%])×80%未満となる可能性がある。そこで、第2冷却の平均冷却速度を1℃/秒以下とすることが好ましい。第2冷却の平均冷却速度は、より好ましくは0.9℃/秒以下であり、さらに好ましくは0.8℃/秒以下である。第2冷却の平均冷却速度の下限は特に限定されないが、現実的な範囲として0.01℃/秒以上である。なお、第2冷却では、平均冷却速度が1℃/秒以下であればよく、第2冷却の途中で冷却速度を変化させてもよい。第2冷却のこのような冷却速度は、圧延材からの放熱を抑制するためのカバーをコンベア上に設置することにより達成することができる。
(d)第3冷却
第3冷却では、710℃から600℃までの冷却を行う。第3冷却での冷却速度が遅いと、パーライトブロックのサイズが25μmを超える可能性がある。そこで、第3冷却の平均冷却速度を4℃/秒以上とすることが好ましい。第3冷却の平均冷却速度は、より好ましくは6℃/秒以上であり、さらに好ましくは8℃/秒以上である。第3冷却での冷却速度が速過ぎると、過冷組織が生成する可能性がある。そこで、第3冷却の平均冷却速度を20℃/秒以下とすることが好ましい。第3冷却の平均冷却速度は、より好ましくは18℃/秒以下であり、さらに好ましくは16℃/秒以下である。なお、第3冷却では、平均冷却速度が4〜20℃/秒であればよく、第3冷却の途中で冷却速度を変化させてもよい。
第3冷却の後の冷却、つまり600℃から室温までの冷却は、制御冷却する必要はなく、例えば放冷等でよい。通常は、放冷による平均冷却速度は、第3冷却の平均冷却速度より遅くなる。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼は、短時間の球状化焼鈍、例えばAc1〜Ac1+30℃程度の温度範囲で1〜3時間程度の短時間の均熱処理を行うだけで、良好な球状化組織(目標球状化度以下の球状化度を有する組織)が得られ、かつ十分に軟質化すること(目標硬さ以下の硬さにすること)ができる。
なお、Ac1は以下の式(7)から算出される値である。式(7)中、[%元素名]は各元素の質量%での含有量を意味する。
Ac1(℃)=723−10.7[%Mn]−16.9[%Ni]+29.1[%Si]+16.9[%Cr] (7)
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
表1に示す化学成分組成の鋼を用いて、圧延によりφ16.0mmの線材を作成し、さらに機械加工により円柱状(φ8.0mm×12.0mm)の加工フォーマスタ用の試験片を作成した。鋼種Pは化学成分組成が本発明の範囲から外れている比較例である。表1で、アスタリスク(*)を付した数値は、本発明の範囲外であることを示す。鋼種Pは、Crの量が0.5質量%を超えており、本願発明の範囲外である。また、鋼種A〜Oでは、[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]が0.75質量%以下であり、上述の式(1)を満たしている。鋼種Pでは、[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]が0.75質量%を超えており、式(1)を満たさない。
得られた加工フォーマスタ用の試験片を用いて、表2に記載の条件にて加工フォーマスタ試験機により、加工熱処理試験を実施した。加工条件は、実機における圧延条件をシミュレートしている。表2の「加工温度」は仕上げ圧延温度に相当する。表2の「第1冷却」は加工温度から800℃までの冷却である。表2の「第2冷却」は800℃から710℃までの冷却である。表2の「第3冷却」は710℃から600℃までの冷却である。なお、第3冷却後の冷却は放冷とした。
加工熱処理後の加工フォーマスタ試験片を、中心軸と直交する面で切断して4等分した。4つの切断した試験片(切断試験片)のうち、1つは金属組織を観察するためのサンプルとし、別の1つは、球状化焼鈍用のサンプルとした。
全ての鋼種A〜Oについて、上述の好ましい圧延条件で熱処理した(試験No.1〜32)。さらに、鋼種E、G、H、Mについては、好ましい圧延条件から外れた条件で熱処理した試験も行った(試験No.33〜40)。
Figure 0006838873
Figure 0006838873
加工熱処理試験後の切断試験片について、(1)初析フェライト+パーライトの面積率、(2)初析フェライトの面積率、(3)パーライトブロックの平均ブロックサイズ、(4)球状化焼鈍後の球状化度、および(5)球状化焼鈍後の硬さの測定を、下記の方法によって測定した。
なお、(1)〜(5)の測定に当たっては、加工熱処理後の切断試験片を中心軸に沿って切断し(縦断面、または軸中心断面)、その縦断面が観察できるように樹脂埋めした。縦断面を鏡面研磨する場合には、エメリー紙、ダイヤモンドバフによって鏡面研磨した。切断試験片の直径をDとしたとき、切断試験片の側面から中心軸に向かってD/4の位置を測定した。
(1)初析フェライト+パーライトの面積率の測定
切断試験片の縦断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングによって組織を現出させた。縦断面のD/4の位置を、光学顕微鏡にて倍率400倍で、220μm×165μmの領域を5視野撮影した。撮影した写真に対し、等間隔の10本の縦線と、等間隔の10本の横線を、格子状になるように引いた。これにより、縦線と横線の交点を100個形成した。100個の交点のうち、初析フェライト上に位置する交点の数(初析フェライトの点数)と、パーライト上に位置する交点の数(パーライトの点数)を計測した。初析フェライトの点数とパーライトの点数の合計を、交点の総数(100個)で除することにより、初析フェライト+パーライトの合計面積率(%)を求めた。5視野の写真のそれぞれにおいて同様の作業を行い、合計面積率(%)の平均値を求めた。
(2)初析フェライトの面積率の測定
切断試験片の縦断面を鏡面研磨した後、ナイタールエッチングによって組織を現出させた。縦断面のD/4の位置を、光学顕微鏡にて倍率400倍で、220μm×165μmの領域を5視野撮影した。撮影した写真に対し、等間隔の10本の縦線と、等間隔の10本の横線を、格子状になるように引いた。これにより、縦線と横線の交点を100個形成した。100個の交点のうち、初析フェライト上に位置する交点の数(初析フェライトの点数)を計測した。初析フェライトの点数、交点の総数(100個)で除することにより、初析フェライトの面積率(%)を求めた。5視野の写真のそれぞれにおいて同様の作業を行い、面積率(%)の平均値を求めた。
(3)パーライトの平均ブロックサイズの測定
パーライトブロックのサイズの測定には、EBSP解析装置およびFE−SEM(Field−Emission Scanning Electron Microscope、電解放出型走査電子顕微鏡)を用いた。
切断試験片の縦断面のD/4の位置をEBSP解析装置により測定した。EBSPの解析データから、結晶方位差(斜角)が15°を超える境界(大角粒界)を結晶粒界として「bcc−Fe結晶粒」を定義し、bcc−Fe平均粒径を決定した。このとき、測定領域は200μm×400μm、測定ステップは1.0μm間隔として測定した。測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解析対象から削除した。
その後、切断試験片の縦断面を鏡面研磨し、ナイタールエッチングによって組織を現出させた。EBSPの測定を行った視野と同一視野でFE−SEMにより組織観察を行った。EBSPの解析データから、パーライトブロックに対応する結晶粒をランダムに20個以上選択し、それぞれの結晶粒サイズを測定した。結晶粒サイズの平均値をパーライトブロックの平均サイズ(平均ブロックサイズ)とした。
(4)球状化焼鈍後の球状化度の測定
球状化度の測定のために、切断試験片を短時間球状化焼鈍した。短時間球状化焼鈍は、切断試験片を容器に真空封入し、大気炉にて、750℃で2時間均熱保持し、平均冷却速度10℃/時で680℃まで冷却し、その後放冷することにより行った。短時間球状化焼鈍における処理時間は約9時間であり、一般的な球状化焼鈍の処理時間(約13時間)に比べて、約30%の短縮となる。
後の球状化度の測定は、鏡面研磨した縦断面サンプルをピクラールエッチングによって組織を現出させ、D/4位置にて光学顕微鏡を用いて倍率400倍で5視野観察することによって行い、各視野の球状化度をJIS G3539:1991の付図によってNo.1〜No.4で評価し、5視野の平均値を算出した。球状化度が小さいほど、良好な球状化組織であることを意味する。
(5)球状化焼鈍後の硬さの測定
球状化焼鈍後の硬さの測定は、鏡面研磨した縦断面サンプルに対し、ビッカース硬度計を用いて、D/4位置にて荷重1kgfで5点測定し、その平均値(HV)を求めた。
上記(1)〜(5)の要領で評価した球状化焼鈍前の組織、および球状化焼鈍後の球状化度および硬さを表3に示す。なお、目標とする球状化度は、3.0とした。また、C、SiおよびMn含有量によって、鋼に要求される硬さが異なる。よって、目標とする硬さ(表3では「目標硬さ」と記載)は、C、SiおよびMnの含有量に基づいて式(8)のように規定した。
目標硬さ=88.4×Ceq+88.0 (8)
ただし、Ceq=[C%]+0.2×[Si%]+0.2×[Mn%]であり、[C%]、[Si%]および[Mn%]は、それぞれ質量%で示したC、SiおよびMnの含有量を示す。
Figure 0006838873
表3の結果より、次のように考察できる。表3のNo.1〜30はいずれも本発明で規定する要件の全てを満足する例であり、短時間球状化焼鈍後に、球状化度および硬さが、いずれも目標を達成していた。
一方、表3のNo.31〜40は、本発明で規定する要件を満たしていない例であり、短時間球状化焼鈍後に、球状化度および/または硬さが目標に達しなかった。
No.31および32は、Cr含有量が多く、かつ式(1)を満たさない鋼種P(表1)を用いたため、球状化焼鈍後の硬さが目標硬さより硬かった。
No.33および36は、加工温度が1100℃より高かったため、前組織のパーライトの平均ブロックサイズが25μmより大きくなった。そのため、球状化焼鈍後の球状化度が3.0を超えていた。
No.34および39は、第3冷却の冷却速度が4℃/秒より遅かったため、前組織のパーライトの平均ブロックサイズが25μmより大きくなった。そのため、球状化焼鈍後の球状化度が3.0を超えていた。
No.35、37および40は、第2冷却の冷却速度が1℃/秒より速かったため、前組織の初析フェライトの面積率が目標より低くなった。そのため、球状化焼鈍後の硬さが目標硬さより硬かった。
No.38は、第1冷却の冷却速度が7℃/秒より遅かったため、前組織のパーライトの平均ブロックサイズが25μmより大きくなった。そのため、球状化焼鈍後の球状化度が3.0を超えていた。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼は、冷間鍛造、冷間圧造又は冷間転造等の冷間加工によって製造される各種部品の素材に好適である。鋼の形態は特に限定されないが、例えば線材または棒鋼等の圧延材とすることができる。
前記部品には、例えば、電装部品等の自動車用部品、および各種機械部品等の建設機械用部品が含まれ、具体的には、ボルト、ねじ、ナット、ソケット、ボールジョイント、インナーチューブ、トーションバー、クラッチケース、ケージ、ハウジング、ハブ、カバー、ケース、受座金、タペット、サドル、バルグ、インナーケース、クラッチ、スリーブ、アウターレース、スプロケット、コア、ステータ、アンビル、スパイダー、ロッカーアーム、ボディー、フランジ、ドラム、継手、コネクタ、プーリ、金具、ヨーク、口金、バルブリフター、スパークプラグ、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、コモンレール等が含まれる。本発明の鋼は、上記の部品の素材として好適に用いられる機械構造用鋼として産業上有用であり、上記の各種部品を製造するときの室温における変形抵抗が低く、優れた冷間加工性を発揮することができる。

Claims (5)

  1. C :0.3質量%〜0.6質量%、
    Si:0.05質量%〜0.5質量%、
    Mn:0.2質量%〜1.7質量%、
    P :0%質量%超、0.03質量%以下、
    S :0.001質量%〜0.05質量%、
    Al:0.01質量%〜0.1質量%及び
    N :0質量%〜0.015質量%を含有し、
    残部が鉄及び不可避不純物からなり、
    鋼の金属組織が、初析フェライト及びパーライトを有し、
    全組織に対する初析フェライト及びパーライトの合計面積率が90%以上であり、
    全組織に対する初析フェライトの面積率が(1−1.25×[C%])×80%以上であり、
    上記パーライトの平均ブロックサイズが25μm以下であることを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼。
    ただし、[C%]は質量%で示したCの含有量を示す。
  2. bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が15〜35μmであることを特徴とする請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
  3. Cr:0質量%超、0.5質量%以下、
    Cu:0質量%超、0.25質量%以下、
    Ni:0質量%超、0.25質量%以下、
    Mo:0質量%超、0.25質量%以下及び
    B :0質量%超、0.01質量%以下よりなる群から選択される1種以上を更に含有し、かつ下記式(1)を満足する請求項1または2に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
    [Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (1)
    ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
  4. Ti:0質量%超、0.1質量%以下を更に含有する請求項1〜3のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼の製造方法であって、
    950℃〜1100℃の仕上げ圧延温度で仕上げ圧延する工程と、
    前記仕上げ圧延温度から800℃まで、7℃/秒以上の平均冷却速度で冷却する工程と、
    800℃から710℃まで、1℃/秒以下の平均冷却速度で冷却する工程と、
    710℃から600℃まで、4〜20℃/秒の平均冷却速度で冷却する工程と、を、この順で行うことを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
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