JP2018044235A - 機械構造部品用鋼線 - Google Patents
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Abstract
【課題】冷間加工時における変形抵抗の低減と共に、耐割れ性の向上を図り、優れた冷間加工性を発揮できる機械構造部品用鋼線を提供する。【解決手段】本発明の機械構造部品用鋼線は、質量%で、C:0.3〜0.6%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.7%、P:0%超、0.03%以下、S:0.001〜0.05%、Al:0.005〜0.1%、N:0%超、0.015%以下、B:0%超、0.01%以下およびTi:0%超、0.1%を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、鋼の金属組織が、フェライトおよびセメンタイトより構成され、フェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合が、全セメンタイト数に対して40%以上である。【選択図】なし
Description
本発明は、機械構造部品の素材として用いられる鋼線に関する。より詳細には、調質圧延により製造した線材に球状化焼鈍を施した後に冷間加工する際、冷間加工時の変形抵抗が低く、耐割れ性が良好であり、冷間加工性に優れた特性を発揮する機械構造部品用鋼線に関する。尚、本明細書において、「線材」とは、圧延線材の意味で用い、熱間圧延後、室温まで冷却した線状の鋼材を指す。また「鋼線」とは、圧延線材に球状化焼鈍等の調質処理が施された線状の鋼材を指す。
自動車用部品および建設機械用部品等の各種機械構造用部品を製造するにあたっては、通常、炭素鋼および合金鋼等の熱間圧延線材に、冷間加工性を付与する目的で球状化焼鈍が施される。そして、球状化焼鈍後の圧延線材、即ち鋼線に対して冷間加工を行い、その後切削加工などの機械加工を施すことによって所定の形状に成形し、焼入れ焼戻し処理を行って最終的な強度調整が行われて、機械構造用部品とされる。
冷間加工において、鋼線の変形抵抗を下げることで、金型寿命の向上を期待することができる。また鋼線の耐割れ性を向上させることで、各種部品の歩留り向上を期待することができる。
これまでにも、鋼線の冷間加工性を向上させる技術として、様々な方法が提案されている。こうした技術として、例えば特許文献1には、「金属組織が実質的にフェライト粒と球状炭化物から構成され、前記フェライト粒は、平均粒径が15μm以上であり、前記球状炭化物は平均粒径が0.8μm以下で、且つ最大粒径を4.0μm以下で、且つ1mm2当たりの個数が0.5×106×C%〜5.0×106×C%個であり、前記球状炭化物のうち、粒径が0.1μm以上の球状炭化物間の最大距離が10μm以下である鋼線」の技術が開示されている。
また特許文献2には、「鋼の金属組織が、セメンタイトとフェライトを有し、全組織に対するセメンタイトとフェライトの合計面積率は95面積%以上であると共に、前記セメンタイトの90%以上のアスペクト比が3以下であって、且つ前記セメンタイトの平均重心距離が1.5μm以上であり、更に前記フェライトの平均結晶粒径が5〜20μmである鋼線」の技術が開示されている。
この特許文献2には、上記金属組織を得る手段として、A1点〜A1点+50℃の温度域に昇温して、昇温後に前記A1点〜A1点+50℃の温度域で0〜1hr保持してから、前記A1点〜A1点+50℃の温度域からA1点−100℃〜A1点−30℃までの温度域を10〜200℃/hrの平均冷却速度で冷却する焼鈍処理を2回以上行った後、A1点〜A1点+30℃の温度域に昇温して前記A1点〜A1点+30℃の温度域で保持してから冷却する条件を次のように制御することを開示している。即ち、昇温の際にA1点に達してからA1点〜A1点+30℃の温度域に保持した後に冷却する際に、A1点に達するまでの前記A1点〜A1点+30℃の温度域滞在時間を10分〜2時間とし、前記A1点〜A1点+30℃の温度域からのA1点−100℃〜A1点−20℃までの冷却温度域を10〜100℃/hrの平均冷却速度で冷却した後、当該冷却温度域で10分〜5時間保持してから更に冷却する手法が開示されている。
一方、特許文献3には、「セメンタイト間距離の標準偏差を前記セメンタイト間距離の平均値で除した値を0.50以下となる組織を有する鋼線」の技術が開示されている。この方法では、セメンタイトがほぼ均一な間隔で分布することになり、フェライト粒内にもセメンタイトが多く存在することになる。
これまで提案されている技術は、冷間鍛造等の冷間加工性を向上させた鋼線の技術としては有用であるが、冷間加工性を更に向上させた鋼線の技術の開発が望まれている。
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、冷間加工時における変形抵抗の低減と共に、耐割れ性の向上を図り、優れた冷間加工性を発揮できる機械構造部品用鋼線を提供することにある。
上記課題を達成した本発明の機械構造部品用鋼線は、質量%で、C:0.3〜0.6%、Si:0.05〜0.5%、Mn:0.2〜1.7%、P:0%超、0.03%以下、S:0.001〜0.05%、Al:0.005〜0.1%、N:0%超、0.015%以下、B:0%超、0.01%以下およびTi:0%超、0.1%を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、鋼の金属組織が、フェライトおよびセメンタイトより構成され、フェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合が、全セメンタイト数に対して40%以上であることを特徴とする。
本発明の機械構造部品用鋼線は、必要に応じて、質量%で、Cr:0%超、0.5%以下、Cu:0%超、0.25%以下、Ni:0%超、0.25%以下およびMo:0%超、0.25%以下よりなる群から選択される1種以上を含有し、かつ下記式(X)を満足することが好ましい。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (X)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (X)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
本発明の機械構造部品用鋼線においては、前記金属組織におけるbcc(body−centerd cubic:体心立方格子)−Fe結晶粒の平均円相当直径が30μm以下であることが好ましい。
本発明の機械構造部品用鋼線によれば、化学成分組成を適切に調整すると共に、鋼の金属組織が、フェライトおよびセメンタイトより構成され、全セメンタイト数に対するフェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合が規定値を満足することによって、変形抵抗の低減と共に耐割れ性の向上を実現した鋼線を提供することができる。本発明の機械構造部品用鋼線は、変形抵抗が低減されているため、金型などの塑性加工用冶工具の磨耗および破壊を抑制でき、また耐割れ性が向上されているため、圧造加工時の割れ発生も抑制でき、冷間加工性に優れた特性を発揮する。
本発明者らは、冷間加工時の変形抵抗の低減と共に耐割れ性の向上を兼備した鋼線を実現すべく、様々な角度から検討した。その結果、冷間加工時において、フェライト粒内のセメンタイトが変形抵抗を増加させること、および割れの原因となるボイドはフェライト粒内のセメンタイトが起点となっていることを見出した。
フェライト粒界に存在するセメンタイトは、粒内に存在するセメンタイトに比べ、冷間加工時に受けるひずみ量が小さくなるため、変形抵抗を低減させると共に、ボイドの起点となることを抑制することができる。即ち、変形抵抗低減と耐割れ性向上の両立を図るためには、全セメンタイト数に対するフェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合を大きく、即ち、全セメンタイト数に対するフェライト粒内に存在するセメンタイトの数割合を低減させることが重要であるとの着想が得られた。
これまで提案された技術においては、変形抵抗および耐割れ性を向上させる方法として、フェライト粒径を制御する方法は知られているが、粒界に集積するセメンタイトに着目したものはない。
以下、本発明で規定する各要件について説明する。
本発明の機械構造部品用鋼線(以下、単に「鋼線」と呼ぶことがある)の金属組織は、いわゆる球状化組織であり、フェライトおよびセメンタイトより構成される。上記球状化組織は、鋼の変形抵抗を低減させて冷間加工性向上に寄与する金属組織である。本発明の金属組織の中には、パーライト組織が一部含まれていてもよい。また、冷間加工性に及ぼす悪影響が小さければ、AlN等の析出物を面積率で3%未満許容することができる。
しかしながら、単にフェライトおよびセメンタイトより構成される金属組織とするだけでは、冷間加工性の向上を図ることができない。こうしたことから、以下で詳述する様に、この金属組織における全セメンタイト数に対するフェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合を適切に制御する必要がある。
なお、本明細書においては、全セメンタイト数に対するフェライト粒界に存在するセメンタイト(粒界セメンタイト)の数割合を「粒界セメンタイト割合」と称することがある。また、全セメンタイト数に対するフェライト粒内に存在するセメンタイト(粒内セメンタイト)の数割合を「粒内セメンタイト割合」と称することがある。「粒界セメンタイト割合」および「粒内セメンタイト割合」は、以下のように定義される。
金属組織の顕微鏡観察において、所定視野内において所定の方法で粒界セメンタイトと粒内セメンタイトの数をそれぞれ計測する。
粒界セメンタイトの数を”Na”、粒内セメンタイトの数を”Nb”および全セメンタイト数(粒界セメンタイト数と粒内セメンタイト数の合計)を”Na+Nb”としたとき、粒界セメンタイト割合および粒内セメンタイト割合は以下のように求めることができる。
粒界セメンタイト割合(%)=Na/(Na+Nb)×100
粒内セメンタイト割合(%)=Nb/(Na+Nb)×100
金属組織の顕微鏡観察において、所定視野内において所定の方法で粒界セメンタイトと粒内セメンタイトの数をそれぞれ計測する。
粒界セメンタイトの数を”Na”、粒内セメンタイトの数を”Nb”および全セメンタイト数(粒界セメンタイト数と粒内セメンタイト数の合計)を”Na+Nb”としたとき、粒界セメンタイト割合および粒内セメンタイト割合は以下のように求めることができる。
粒界セメンタイト割合(%)=Na/(Na+Nb)×100
粒内セメンタイト割合(%)=Nb/(Na+Nb)×100
セメンタイト数の計測は、1視野で行っても、複数視野で行ってもよい。複数視野で計測を行う場合には、各視野で計測された粒界セメンタイト数と粒内セメンタイト数とをそれぞれ合計した数値を用いて、粒界セメンタイト割合および粒内セメンタイト割合を算出する。
計測方法の詳細については後述する。
計測方法の詳細については後述する。
粒界セメンタイト割合が低減し、粒内セメンタイト割合が増加すると、冷間加工中にフェライト粒に導入された転位は、粒内セメンタイトにトラップされ、転位増加を引き起こし、加工硬化を示す。その結果、変形抵抗が増加し、冷間加工性が低下する。また粒内のセメンタイトは、粒界セメンタイトに比べ、冷間加工中にセメンタイト周囲にひずみが堆積しやすい。その結果、粒内セメンタイトは、割れの起点になりやすい。このことからも、セメンタイトをフェライト粒界上に析出させることは、冷間加工性を向上させることに対して極めて有効である。
こうした観点から、フェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合(すなわち、粒界セメンタイト割合)は、全セメンタイト数に対して40%以上とする必要がある。粒界セメンタイト割合を40%以上とすることで、変形抵抗を低減させ、セメンタイト起点の割れ発生を抑制することができる。
粒界セメンタイト数および粒内セメンタイト数の測定対象となるセメンタイトの形態は特に限定されない。例えば、球状のセメンタイトの他、アスペクト比の大きい棒状のセメンタイトおよびパーライト組織を形成する層状のセメンタイト等を含み、セメンタイトの形状に制限はない。尚、測定対象となるセメンタイトの大きさは限定されないが、測定方法によって大きさの基準が決まる。後述する粒界セメンタイト割合の測定方法では、倍率1000倍の光学顕微鏡によって判別できるセメンタイトのサイズが最小サイズとなる。具体的には、円相当直径が0.3μm以上のサイズのセメンタイトが測定対象である。
粒界セメンタイト割合の好ましい下限は45%であり、より好ましくは50%である。粒界セメンタイト割合が高いほど変形抵抗低減、割れ抑制に有効であり、100%にするのが最も好ましい。但し、後述するように粒界セメンタイト割合の増加は製造面で容易でなく、現状の技術では、熱間圧延温度の低下および/または球状化焼鈍時間の長時間化等のデメリットがあり得る。現行技術においては製造性の観点から、粒界セメンタイト割合は概ね80%以下が好ましく、より好ましくは70%以下である。
本発明の鋼線においては、前記金属組織におけるbcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が30μm以下であることが好ましい。bcc−Fe結晶粒の平均円相当直径(以下、単に「bcc−Fe結晶粒径」と呼ぶことがある)を30μm以下とすることで、延性を向上させ、冷間加工時の割れ発生を更に抑制することができる。bcc−Fe結晶粒径の好ましい上限は25μmであり、より好ましくは20μmである。尚、測定対象となるbcc−Fe結晶粒の大きさ限定されないが、前記セメンタイトと同様に、測定方法によって大きさの基準が決まる。後述する測定方法では、EBPS解析装置およびFE−SEMによって判別できるサイズが最小サイズとなる。具体的には、円相当直径が1μm以上のサイズのbcc−Fe結晶粒が測定対象である。
前記したbcc−Fe結晶粒径の制御の対象となる組織は、方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたbcc−Fe結晶粒である。これは前記方位差が15°以下の小角粒界では、冷間加工性に及ぼす影響が小さいからである。尚、前記した「結晶方位差」は、「ずれ角」若しくは「傾角」とも呼ばれており、方位差の測定には、EBSP法(Electron Backscattering Pattern法)を採用すれば良い。また、平均粒径を測定する大角粒界で囲まれたbcc−Feには、初析フェライトの他、パーライト組織中に含まれるフェライトも含まれる。
本発明では、機械構造部品の素材に用いる鋼線を対象とするものであり、機械構造部品用鋼線として通常の化学成分組成を有していれば良いが、C、Si、Mn、P、S、AlおよびNについては、適切な範囲に調整するのが良い。こうした観点から、これらの化学成分の適切な範囲およびその限定理由は下記の通りである。尚、本明細書では、化学成分組成について「%」とは、質量%を意味する。
C:0.3〜0.6%
Cは、鋼の強度、即ち最終製品の強度を確保する上で有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、C含有量は0.3%以上とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.32%以上であり、より好ましくは0.34%以上である。しかしながら、Cが過剰に含有されると強度が高くなって冷間加工性が低下するので、0.6%以下とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.55%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Cは、鋼の強度、即ち最終製品の強度を確保する上で有用な元素である。こうした効果を有効に発揮させるためには、C含有量は0.3%以上とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.32%以上であり、より好ましくは0.34%以上である。しかしながら、Cが過剰に含有されると強度が高くなって冷間加工性が低下するので、0.6%以下とする必要がある。C含有量は、好ましくは0.55%以下であり、より好ましくは0.50%以下である。
Si:0.05〜0.5%
Siは、脱酸元素として、および固溶体硬化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させる。このような効果を有効に発揮させるため、Si含有量を0.05%以上と定めた。Si含有量は、好ましくは0.07%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。一方、Siが過剰に含有されると硬度が過度に上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでSi含有量を0.5%以下と定めた。Si含有量は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
Siは、脱酸元素として、および固溶体硬化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させる。このような効果を有効に発揮させるため、Si含有量を0.05%以上と定めた。Si含有量は、好ましくは0.07%以上であり、より好ましくは0.10%以上である。一方、Siが過剰に含有されると硬度が過度に上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでSi含有量を0.5%以下と定めた。Si含有量は、好ましくは0.45%以下であり、より好ましくは0.40%以下である。
Mn:0.2〜1.7%
Mnは、焼入れ性の向上を通じて、最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mn含有量を0.2%以上と定めた。Mn含有量は、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.4%以上である。一方、Mnが過剰に含有されると、硬度が上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでMn含有量を1.7%以下と定めた。Mn含有量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
Mnは、焼入れ性の向上を通じて、最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、Mn含有量を0.2%以上と定めた。Mn含有量は、好ましくは0.3%以上であり、より好ましくは0.4%以上である。一方、Mnが過剰に含有されると、硬度が上昇して冷間加工性を劣化させる。そこでMn含有量を1.7%以下と定めた。Mn含有量は、好ましくは1.5%以下であり、より好ましくは1.3%以下である。
P:0%超、0.03%以下
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中で粒界偏析を起こし、延性の劣化の原因となる。そこで、P含有量は0.03%以下と定めた。P含有量は、好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.017%以下、特に好ましくは0.01%以下である。P含有量は少なければ少ない程好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中で粒界偏析を起こし、延性の劣化の原因となる。そこで、P含有量は0.03%以下と定めた。P含有量は、好ましくは0.02%以下であり、より好ましくは0.017%以下、特に好ましくは0.01%以下である。P含有量は少なければ少ない程好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
S:0.001〜0.05%
Sは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中でMnSとして存在し延性を劣化させるので、冷間加工性には有害な元素である。そこでS含有量を0.05%以下と定めた。S含有量は、好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。但し、Sは被削性を向上させる作用を有するので、0.001%以上含有させる。S含有量は、好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。
Sは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中でMnSとして存在し延性を劣化させるので、冷間加工性には有害な元素である。そこでS含有量を0.05%以下と定めた。S含有量は、好ましくは0.04%以下であり、より好ましくは0.03%以下である。但し、Sは被削性を向上させる作用を有するので、0.001%以上含有させる。S含有量は、好ましくは0.002%以上であり、より好ましくは0.003%以上である。
Al:0.005〜0.1%
Alは、脱酸元素として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定するのに有用である。こうした効果を有効に発揮させるため、Al含有量を0.005%以上と定めた。Al含有量は、好ましくは0.008%以上であり、より好ましくは0.010%以上である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、Al2O3が過剰に生成し、冷間加工性を劣化させる。そこでAl含有量を0.1%以下と定めた。Al含有量は、好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.080%以下である。
Alは、脱酸元素として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定するのに有用である。こうした効果を有効に発揮させるため、Al含有量を0.005%以上と定めた。Al含有量は、好ましくは0.008%以上であり、より好ましくは0.010%以上である。しかしながら、Al含有量が過剰になると、Al2O3が過剰に生成し、冷間加工性を劣化させる。そこでAl含有量を0.1%以下と定めた。Al含有量は、好ましくは0.090%以下であり、より好ましくは0.080%以下である。
N:0%超、0.015%以下
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中に固溶Nが含まれると、歪み時効による硬度上昇、延性低下を招き、冷間加工性を劣化させる。そこでN含有量を0.015%以下と定めた。N含有量は、好ましくは0.013%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。N含有量は少なければ少ない程好ましく、0%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であり、鋼中に固溶Nが含まれると、歪み時効による硬度上昇、延性低下を招き、冷間加工性を劣化させる。そこでN含有量を0.015%以下と定めた。N含有量は、好ましくは0.013%以下であり、より好ましくは0.010%以下である。N含有量は少なければ少ない程好ましく、0%であることが最も好ましいが、製造工程上の制約などにより0.001%程度残存する場合もある。
B:0%超、0.01%以下
鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、B含有量を0%超とし、好ましくは0.0003%以上、より好ましく0.0005%以上とする。この効果は、B含有量が増加するに従って大きくなる。しかしながら、B含有量が過剰になると、靭性を劣化させるおそれがある。そこでB含有量を0.01%以下と定めた。B含有量は、好ましくは0.007%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。
鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。このような効果を有効に発揮させるため、B含有量を0%超とし、好ましくは0.0003%以上、より好ましく0.0005%以上とする。この効果は、B含有量が増加するに従って大きくなる。しかしながら、B含有量が過剰になると、靭性を劣化させるおそれがある。そこでB含有量を0.01%以下と定めた。B含有量は、好ましくは0.007%以下であり、より好ましくは0.005%以下である。
Ti:0%超、0.1%以下
Tiは、Nと化合物を形成し、固溶Nを低減することで、軟質化の効果を発揮する。こうした効果を有効に発揮させるためには、Ti含有量は0%超とし、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上とする。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、形成される化合物により硬さが過剰に増加するおそれがある。そこでTi含有量を0.1%以下と定めた。Ti含有量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
Tiは、Nと化合物を形成し、固溶Nを低減することで、軟質化の効果を発揮する。こうした効果を有効に発揮させるためには、Ti含有量は0%超とし、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.02%以上とする。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると、形成される化合物により硬さが過剰に増加するおそれがある。そこでTi含有量を0.1%以下と定めた。Ti含有量は、好ましくは0.08%以下であり、より好ましくは0.05%以下である。
本発明の鋼線の基本成分は上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。尚、「実質的に鉄」とは、鉄以外にも本発明の特性を阻害しない程度の微量成分(例えばSbおよびZn等)が許容できる他、P、SおよびN以外の不可避不純物(例えばOおよびH等)も含み得ることを意味する。更に本発明では、必要に応じて以下の任意元素を含有していても良く、含有される成分に応じて鋼線の特性が更に改善される。
Cr:0%超、0.5%以下、Cu:0%超、0.25%以下、Ni:0%超、0.25%以下およびMo:0%超、0.25%以下よりなる群から選択される1種以上
Cr、Cu、NiおよびMoは、いずれも鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。必要によって、それらの元素を単独で又は2種以上で含有してもよい。このような効果は、これら元素の含有量が増加するに従って大きくなる。前記した効果を有効に発揮させるための好ましい含有量は、Crが0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。Cu、NiおよびMoの好ましい含有量は、いずれも0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。
Cr、Cu、NiおよびMoは、いずれも鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素である。必要によって、それらの元素を単独で又は2種以上で含有してもよい。このような効果は、これら元素の含有量が増加するに従って大きくなる。前記した効果を有効に発揮させるための好ましい含有量は、Crが0.015%以上、より好ましくは0.020%以上である。Cu、NiおよびMoの好ましい含有量は、いずれも0.02%以上、より好ましくは0.05%以上である。
しかしながら、Cr、Cu、NiおよびMoの含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎて冷間加工性を劣化させるおそれがある。そこで、Cr含有量は0.5%以下が好ましく、Cu、NiおよびMo含有量はいずれも0.25%以下が好ましい。Crのより好ましい含有量は0.45%以下、更に好ましくは0.40%以下である。Cu、NiおよびMoのより好ましい含有量は、いずれも0.22%以下、更に好ましくは0.20%以下である。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75
本発明の実施形態に係る鋼線は、Cr、Cu、Niおよび、MoおよびBの1種以上を上述した範囲で含有する場合、下記式(X)を満足することが好ましい。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 ・・・(X)
但し、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]、および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
Cr、Cu、Ni、およびMoの含有量が上記式(X)を満たすことにより、鋼の強度が高くなり過ぎることを抑制して、冷間加工性を向上できる。
本発明の実施形態に係る鋼線は、Cr、Cu、Niおよび、MoおよびBの1種以上を上述した範囲で含有する場合、下記式(X)を満足することが好ましい。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 ・・・(X)
但し、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]、および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。
Cr、Cu、Ni、およびMoの含有量が上記式(X)を満たすことにより、鋼の強度が高くなり過ぎることを抑制して、冷間加工性を向上できる。
本発明の鋼線は、球状化焼鈍後の組織形態を規定したものであり、こうした組織形態とするためには、後述する球状化焼鈍条件を適切に制御することが好ましい。但し、上記のような組織形態を確保するためには、更に圧延線材を製造する段階での条件も適切に制御して、圧延線材における組織形態を球状化焼鈍時に粒界セメンタイトが析出しやすい状態とすることがより好ましい。
圧延線材製造段階では、上記した成分組成を満足する鋼を、熱間圧延する際の仕上げ圧延温度を調整すると共に、その後の冷却速度を3段階として冷却速度と温度範囲を適切に調整することが好ましい。こうした条件で圧延線材を製造することによって、球状化焼鈍前の組織を、パーライトおよびフェライトを主相とすると共に、bcc−Fe結晶粒径を所定の範囲とし、且つ初析フェライト結晶粒を等軸化し、パーライトの最狭部での間隔を所定以下とすることができる。このような組織に対し、後述する条件で球状化焼鈍を行うことによって、粒界セメンタイトが十分に析出した鋼線が得られやすくなる。このための圧延線材製造条件は、具体的には、800℃以上、1050℃以下で仕上げ圧延した後、平均冷却速度が7℃/秒以上の第1冷却と、平均冷却速度が1℃/秒以上、5℃/秒以下の第2冷却と、平均冷却速度が前記第2冷却よりも速くかつ5℃/秒以上である第3冷却とを、この順で行うのが好ましい。第1冷却は、仕上げ圧延温度から750℃までの温度域の冷却を指し、第2冷却は、750℃から650℃までの温度域の冷却を指し、第3冷却は、650℃から400℃までの温度域の冷却を指す。
(a)仕上げ圧延温度:800℃以上、1050℃以下
球状化焼鈍前の組織のbcc−Fe結晶粒径を小さく、例えば15μm以下にするためには、仕上げ圧延温度を適切に制御することが好ましい。仕上げ圧延温度が1050℃を超えると、bcc−Fe結晶粒径を小さくすることが困難となる。但し、仕上げ圧延温度が800℃未満となると、bcc−Fe結晶粒径が小さくなり過ぎ、例えば5μm未満となって軟質化が困難となるので、800℃以上とすることが好ましい。仕上げ圧延温度のより好ましい下限は850℃であり、更に好ましくは900℃以上である。仕上げ圧延温度のより好ましい上限は1000℃であり、更に好ましくは950℃である。
球状化焼鈍前の組織のbcc−Fe結晶粒径を小さく、例えば15μm以下にするためには、仕上げ圧延温度を適切に制御することが好ましい。仕上げ圧延温度が1050℃を超えると、bcc−Fe結晶粒径を小さくすることが困難となる。但し、仕上げ圧延温度が800℃未満となると、bcc−Fe結晶粒径が小さくなり過ぎ、例えば5μm未満となって軟質化が困難となるので、800℃以上とすることが好ましい。仕上げ圧延温度のより好ましい下限は850℃であり、更に好ましくは900℃以上である。仕上げ圧延温度のより好ましい上限は1000℃であり、更に好ましくは950℃である。
(b)第1冷却
第1冷却は、仕上げ圧延温度である800℃以上、1050℃以下から開始し、750℃で終了する。この第1冷却において、冷却速度が遅くなると球状化焼鈍前の組織のbcc−Fe結晶粒が粗大化してbcc−Fe結晶粒径が大きくなるおそれがある。そこで、第1冷却における平均冷却速度を7℃/秒以上とすることが好ましい。第1冷却の平均冷却速度はより好ましくは10℃/秒以上であり、更に好ましくは20℃/秒以上である。第1冷却の平均冷却速度の上限は特に限定されないが、現実的な範囲として200℃/秒以下であることが好ましい。尚、第1冷却における冷却では、平均冷却速度が7℃/秒以上である限り、冷却速度を変化させて冷却しても良い。
第1冷却は、仕上げ圧延温度である800℃以上、1050℃以下から開始し、750℃で終了する。この第1冷却において、冷却速度が遅くなると球状化焼鈍前の組織のbcc−Fe結晶粒が粗大化してbcc−Fe結晶粒径が大きくなるおそれがある。そこで、第1冷却における平均冷却速度を7℃/秒以上とすることが好ましい。第1冷却の平均冷却速度はより好ましくは10℃/秒以上であり、更に好ましくは20℃/秒以上である。第1冷却の平均冷却速度の上限は特に限定されないが、現実的な範囲として200℃/秒以下であることが好ましい。尚、第1冷却における冷却では、平均冷却速度が7℃/秒以上である限り、冷却速度を変化させて冷却しても良い。
(c)第2冷却
第2冷却は、750℃から開始し、650℃で終了する。初析フェライト結晶粒を等軸化、即ち初析フェライト結晶粒の平均アスペクト比を小さく、例えば3.0以下とするためには、第2冷却において、5℃/秒以下の平均冷却速度で徐冷することが好ましい。第2冷却の平均冷却速度のより好ましい上限は4℃/秒であり、更に好ましくは3.5℃/秒以下である。一方、第2冷却における平均冷却速度が遅すぎると、bcc−Fe結晶粒が粗大化して、bcc−Fe結晶粒径が大きくなり過ぎる可能性がある。そこで、第2冷却における平均冷却速度は1℃/秒以上とするのが好ましい。第2冷却の平均冷却速度のより好ましい下限は2℃/秒であり、更に好ましくは2.5℃/秒である。尚、第2冷却における冷却では、平均冷却速度が1℃/秒以上、5℃/秒以下である限り、冷却速度を変化させて冷却しても良い。
第2冷却は、750℃から開始し、650℃で終了する。初析フェライト結晶粒を等軸化、即ち初析フェライト結晶粒の平均アスペクト比を小さく、例えば3.0以下とするためには、第2冷却において、5℃/秒以下の平均冷却速度で徐冷することが好ましい。第2冷却の平均冷却速度のより好ましい上限は4℃/秒であり、更に好ましくは3.5℃/秒以下である。一方、第2冷却における平均冷却速度が遅すぎると、bcc−Fe結晶粒が粗大化して、bcc−Fe結晶粒径が大きくなり過ぎる可能性がある。そこで、第2冷却における平均冷却速度は1℃/秒以上とするのが好ましい。第2冷却の平均冷却速度のより好ましい下限は2℃/秒であり、更に好ましくは2.5℃/秒である。尚、第2冷却における冷却では、平均冷却速度が1℃/秒以上、5℃/秒以下である限り、冷却速度を変化させて冷却しても良い。
(d)第3冷却
第3冷却は、650℃から開始し、400℃以下で終了する。この第3冷却では、パーライトの平均ラメラー間隔をできるだけ狭くし、セメンタイトを溶解させやすくし、粒内に球状セメンタイトの核を残さないようにする。これによって、その後の適切な球状化焼鈍処理を行うことで、粒界セメンタイト割合を増加させる。パーライトの平均ラメラー間隔を狭く、例えば0.20μm以下とするためには、第3冷却において、第2冷却よりも速く、且つ5℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。5℃/秒より遅い冷却であるとパーライトの平均ラメラー間隔を狭くしにくくなる。第3冷却の平均冷却速度はより好ましくは10℃/秒以上であり、更に好ましくは20℃/秒以上である。
第3冷却は、650℃から開始し、400℃以下で終了する。この第3冷却では、パーライトの平均ラメラー間隔をできるだけ狭くし、セメンタイトを溶解させやすくし、粒内に球状セメンタイトの核を残さないようにする。これによって、その後の適切な球状化焼鈍処理を行うことで、粒界セメンタイト割合を増加させる。パーライトの平均ラメラー間隔を狭く、例えば0.20μm以下とするためには、第3冷却において、第2冷却よりも速く、且つ5℃/秒以上の平均冷却速度で冷却することが好ましい。5℃/秒より遅い冷却であるとパーライトの平均ラメラー間隔を狭くしにくくなる。第3冷却の平均冷却速度はより好ましくは10℃/秒以上であり、更に好ましくは20℃/秒以上である。
尚、第3冷却の平均冷却速度の上限は特に限定されないが、現実的な範囲として200℃/秒以下であることが好ましい。また、第3冷却では、平均冷却速度が5℃/秒以上である限り、冷却速度を変化させて冷却してもよい。第3冷却の終了温度の下限は特に限定されないが、例えば200℃であることが好ましい。第3冷却を行った後は、放冷などの通常の冷却を行って室温まで冷却すれば良い。
室温まで冷却した後は、必要に応じて更に室温で伸線加工を行っても良く、その際の減面率は例えば30%以下とすれば良い。伸線すると、鋼中の炭化物が破壊され、その後の球状化焼鈍で炭化物の凝集を促進できるため、球状化焼鈍の均熱処理時間の短縮に有効である。但し、伸線加工の減面率が30%を超えると、焼鈍後の強度が高くなり冷間加工性を劣化させるおそれがあるので、伸線加工の減面率は30%以下が好ましい。尚、減面率の下限は特に限定されないが、好ましくは2%以上とすることで効果が得られる。
上記のような好ましい条件で製造された圧延線材では、その後の球状化焼鈍処理によって、組織中のパーライトがオーステナイトに変態し、その後フェライト+セメンタイトと変態する中で、元のパーライトサイズを小さくすること、即ち金属組織の粒成長を抑制することで、セメンタイトの粒内析出を低減して、粒界セメンタイトが析出しやすい状態となる。
こうした球状化焼鈍条件として、圧延線材に対し、例えば後記するSA1のように、大気炉にて、室温から730℃まで加熱する際に、少なくとも500℃から730℃までは平均加熱速度50℃/時以上で加熱し、その後平均加熱速度2〜5℃/時で740℃まで加熱し、740℃で1〜3時間保持した後、平均冷却速度20℃/時以上で720℃まで冷却し、平均冷却速度8〜12℃/時で640℃まで冷却し、その後放冷することが好ましい。
上記の球状化焼鈍条件において、室温から730℃まで加熱する際に、少なくとも500℃から730℃までの平均加熱速度を50℃/時以上とすることで、金属組織の粒成長を抑制する。このときの平均加熱速度は、より好ましくは60℃/時以上である。しかしながら、平均加熱速度が速すぎると圧延線材の温度追従が困難となるため、200℃/時以下とすることが好ましく、より好ましくは150℃/時以下である。
尚、室温から500℃まで加熱する際の平均加熱速度は、通常100℃/時以上であるが、この温度範囲での平均加熱速度は、金属組織の粒成長に与える影響は小さい。生産性を考慮すれば、このときの加熱速度は速い方が好ましく、例えば120℃/時以上であり、より好ましくは140℃/時以上である。このときの平均加熱速度の上限は、500℃から730℃までの平均加熱速度と同様に、200℃/時とすることが好ましく、より好ましくは150℃/時である。室温から500℃まで加熱する際の平均加熱速度は、少なくとも500℃から730℃までの平均加熱速度と、同じであっても良いし、異なっていても良い。要するに、元のパーライトサイズを小さくすることで、セメンタイトの粒内析出を低減して、粒界セメンタイトが析出しやすい状態とするためには、少なくとも500℃から730℃までの平均加熱速度が50℃/時以上に確保されていれば良い。
またA1点直上の730℃から740℃までの平均加熱速度を2〜5℃/時に制御することにより、金属組織の粒成長を極力抑えながら、パーライト組織中のセメンタイトの分解および固溶を十分に行うことができる。平均加熱速度が5℃/時よりも速い場合は、パーライト組織中のセメンタイトの分解および固溶に十分な時間の確保が難しく、平均加熱速度が2℃/時よりも遅い場合は、730℃から740℃までの加熱時間が長くなり、金属組織の粒成長を抑制することが困難となる。このときの平均加熱速度は、より好ましくは3℃/時以上、4℃/時以下である。
740℃では、1〜3時間保持することが好ましい。この保持温度が1時間よりも短くなると、パーライト組織中のセメンタイトの分解および固溶が不十分であり、3時間よりも長くなると、金属組織の粒成長を抑制することが困難となる。このときの保持時間は、より好ましくは1.5時間以上、2.5時間以下である。
上記のような保持を行なった後、720℃までの好ましい平均冷却速度を20℃/時以上とすることで、金属組織の粒成長を抑制できる。このときの平均冷却速度は、より好ましくは30℃/時以上であるが、平均冷却速度が速すぎると圧延線材の温度追従が困難となるため、100℃/時以下とすることが好ましい。
その後、720℃から640℃までの平均冷却速度を8〜12℃/時に制御することにより、フェライト粒界に優先的にセメンタイトを析出させ、パーライト組織のようなアスペクト比の大きなセメンタイトの析出を抑制することができる。平均冷却速度が8℃/時よりも遅い場合は、金属組織の粒成長の抑制が困難となり、平均冷却度が12℃/時よりも速い場合は、パーライト組織のようなアスペクト比の大きなセメンタイトが多く再析出する。このときの平均冷却速度は、より好ましくは9℃/時以上、11℃/時以下である。
上記のような球状化焼鈍は、複数回繰り返し行ってもよく、こうした繰り返しを行うことによって、セメンタイトの個々のアスペクト比が小さくなり、粒界セメンタイト割合が増加する。例えば、後記する実施例の試験No.7、12、14、19および27に示すように、圧延線材製造条件が適切に制御されていない鋼種C、E、F、HおよびKを用いた場合であっても、その後に所定の球状化焼鈍を繰り返し行うことによって、粒界セメンタイト割合が適切な範囲内となり、変形抵抗および割れ発生率の両方を低減できる。
球状化焼鈍の繰り返し回数については、少なくとも3回以上であることが好ましいが、過度に繰り返しても粒界セメンタイト割合があまり変化しなくなるので、10回以下であることが好ましい。尚、球状化焼鈍を複数回繰り返すに際して、上記の好ましい条件の範囲内で、同じ条件で繰り返しても良く、異なる条件で繰り返しても良い。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す化学成分組成の鋼を用い、下記表2に示す各種製造条件にて熱間圧延および冷却を行い、φ17.0mmの線材を作製した。表1で線(−)を記載したものは、その化学成分組成が検出されなかったことを意味する。
表2中、冷却1、冷却2および冷却3は、本発明で推奨する第1冷却、第2冷却および第3冷却に対応する。
また、表1および表2において、アスタリスク(*)を付した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。
表2中、冷却1、冷却2および冷却3は、本発明で推奨する第1冷却、第2冷却および第3冷却に対応する。
また、表1および表2において、アスタリスク(*)を付した数値は、本発明の範囲から外れていることを示している。
表1に示すように、鋼種Gは化学成分組成(Tiの含有量)が規定値から外れる比較例である。
試料No.6、8、11〜13、17および18は、本発明における適切な製造条件で圧延線材を製造しなかった例である。このうち試料No.6および11〜13は、仕上げ圧延温度が好適な範囲(800℃〜1050℃)よりも高くなっている。試料No.8は、第2冷却に対応する冷却2の冷却速度が好適な範囲(1℃/秒以上、5℃/秒以下)より早かった。また試料No.17および18、第3冷却に対応する冷却3での冷却速度が遅い条件、即ち、第2冷却での冷却速度を維持したまま冷却して圧延線材を製造した例である。
試料No.6、8、11〜13、17および18は、本発明における適切な製造条件で圧延線材を製造しなかった例である。このうち試料No.6および11〜13は、仕上げ圧延温度が好適な範囲(800℃〜1050℃)よりも高くなっている。試料No.8は、第2冷却に対応する冷却2の冷却速度が好適な範囲(1℃/秒以上、5℃/秒以下)より早かった。また試料No.17および18、第3冷却に対応する冷却3での冷却速度が遅い条件、即ち、第2冷却での冷却速度を維持したまま冷却して圧延線材を製造した例である。
次に、試料No.1〜22の圧延線材に対し、大気炉にて、以下のいずれかの焼鈍条件で焼鈍処理を行った。表3には、各試料の焼鈍条件を示す。
焼鈍条件(a)(この焼鈍条件を、以下「SA1」と略記する):室温から730℃まで加熱するに際し、室温から500℃までを平均加熱速度110℃/時で、500℃から730℃までを平均加熱速度80℃/時として加熱し、その後平均加熱温度3℃/時で740℃まで加熱し、740℃で3時間保持後、平均冷却速度30℃/時で720℃まで冷却し、平均冷却速度10℃/時で640℃まで冷却し、その後放冷する。
焼鈍条件(b)(この焼鈍条件を、以下「SA2」と略記する):SA1を5回繰り返す。
焼鈍条件(c)(この焼鈍条件を、以下「SA3」と略記する):室温から730℃まで加熱するに際し、室温から500℃までを平均加熱速度110℃/時で、500℃から730℃までを平均加熱速度80℃/時として加熱し、その後平均加熱速度3℃/時で740℃まで加熱し、740℃で3時間保持後、平均冷却速度30℃/時で640℃まで冷却し、その後放冷する。
上記焼鈍条件SA1およびSA2は、本発明での好ましい焼鈍条件であり、上記焼鈍条件SA3は、720℃から640℃までの平均冷却速度が適切に制御されていない例である。
焼鈍条件(a)(この焼鈍条件を、以下「SA1」と略記する):室温から730℃まで加熱するに際し、室温から500℃までを平均加熱速度110℃/時で、500℃から730℃までを平均加熱速度80℃/時として加熱し、その後平均加熱温度3℃/時で740℃まで加熱し、740℃で3時間保持後、平均冷却速度30℃/時で720℃まで冷却し、平均冷却速度10℃/時で640℃まで冷却し、その後放冷する。
焼鈍条件(b)(この焼鈍条件を、以下「SA2」と略記する):SA1を5回繰り返す。
焼鈍条件(c)(この焼鈍条件を、以下「SA3」と略記する):室温から730℃まで加熱するに際し、室温から500℃までを平均加熱速度110℃/時で、500℃から730℃までを平均加熱速度80℃/時として加熱し、その後平均加熱速度3℃/時で740℃まで加熱し、740℃で3時間保持後、平均冷却速度30℃/時で640℃まで冷却し、その後放冷する。
上記焼鈍条件SA1およびSA2は、本発明での好ましい焼鈍条件であり、上記焼鈍条件SA3は、720℃から640℃までの平均冷却速度が適切に制御されていない例である。
上記の球状化焼鈍を行った後の鋼線について、(1)金属組織のbcc−Fe結晶粒径、(2)粒界セメンタイト割合、(3)冷間加工時の変形抵抗および(4)冷間加工時の割れ発生率を、下記の方法によって測定した。
尚、球状化焼鈍後の鋼線のフェライト粒径および粒界セメンタイト割合の測定に当たっては、横断面が観察できるように樹脂埋めし、エメリー紙およびダイヤモンドバフによって切断面を鏡面研磨した。鋼線の直径Dに対し、鋼線の表面からD/4の位置を測定した。
(1)bcc−Fe結晶粒径の測定
bcc−Fe結晶粒径の測定は、EBSP解析装置およびFE−SEM(Field−Emission Scanning Electron Microscope、電解放出型走査電子顕微鏡)を用いて測定した。解析ツールには、株式会社TSLソリューションズのOIMソフトウェアを用いた。結晶方位差(これを「斜角」とも呼ぶ)が15°を超える境界、即ち大角粒界を結晶粒界として「結晶粒」を定義し、bcc−Fe結晶粒の面積を円に換算したときの直径の平均値、即ち平均円相当直径を算出した。このときの測定領域は200μm×400μm、測定ステップは1.0μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解析対象から削除した。
bcc−Fe結晶粒径の測定は、EBSP解析装置およびFE−SEM(Field−Emission Scanning Electron Microscope、電解放出型走査電子顕微鏡)を用いて測定した。解析ツールには、株式会社TSLソリューションズのOIMソフトウェアを用いた。結晶方位差(これを「斜角」とも呼ぶ)が15°を超える境界、即ち大角粒界を結晶粒界として「結晶粒」を定義し、bcc−Fe結晶粒の面積を円に換算したときの直径の平均値、即ち平均円相当直径を算出した。このときの測定領域は200μm×400μm、測定ステップは1.0μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解析対象から削除した。
(2)粒界セメンタイト割合の測定
粒界セメンタイト割合の測定においては、5分以上のピクラールエッチングによってフェライト粒界およびセメンタイトを出現させ、光学顕微鏡にて組織観察を行い、倍率1000倍にて3視野を撮影した。それらの写真上に、等間隔の10本の横線を引き、その線上に存在する粒界セメンタイト数および粒内セメンタイト数を測定する。3視野内に存在する粒界セメンタイト数を、同視野内に存在する全セメンタイト数で除すことにより、粒界セメンタイト割合を算出した。測定するセメンタイトの最小の円相当直径は0.3μmとした。ここで、フェライト粒界に接しており、且つセメンタイト粒子のアスペクト比が3.0以下のものを、粒界セメンタイトと定義した。よって、フェライト粒界に接していても、セメンタイト粒子のアスペクト比が3.0を超えているものは、粒内セメンタイトとした。
粒界セメンタイト割合の測定においては、5分以上のピクラールエッチングによってフェライト粒界およびセメンタイトを出現させ、光学顕微鏡にて組織観察を行い、倍率1000倍にて3視野を撮影した。それらの写真上に、等間隔の10本の横線を引き、その線上に存在する粒界セメンタイト数および粒内セメンタイト数を測定する。3視野内に存在する粒界セメンタイト数を、同視野内に存在する全セメンタイト数で除すことにより、粒界セメンタイト割合を算出した。測定するセメンタイトの最小の円相当直径は0.3μmとした。ここで、フェライト粒界に接しており、且つセメンタイト粒子のアスペクト比が3.0以下のものを、粒界セメンタイトと定義した。よって、フェライト粒界に接していても、セメンタイト粒子のアスペクト比が3.0を超えているものは、粒内セメンタイトとした。
(3)変形抵抗の測定
鋼線から、φ10.0mm×15.0mmの冷間鍛造試験用サンプルを作製し、鍛造プレスを用い、室温にて、ひずみ速度5/秒〜10/秒で、加工率60%の冷間鍛造試験を5回ずつ行った。変形抵抗の測定は、60%加工率の冷間鍛造試験から得られた加工率−変形抵抗のデータから、40%加工時の変形抵抗を5回測定し、5回の平均値を求めた。
尚、C、SiおよびMn含有量によって、求められる変形抵抗が異なるため、目標とする変形抵抗(表3に記載の「目標変形抵抗」)を式(Y)とした。
目標変形抵抗(MPa)=400×Ceq+415 ・・・(Y)
ただし、Ceq=[C%]+0.2×[Si%]+0.2×[Mn%]であり、[C%]、[Si%]および[Mn%]は、それぞれ質量%でC、SiおよびMnの含有量を示す。
目標変形抵抗より低い変形抵抗を示す試料を合格とした。
鋼線から、φ10.0mm×15.0mmの冷間鍛造試験用サンプルを作製し、鍛造プレスを用い、室温にて、ひずみ速度5/秒〜10/秒で、加工率60%の冷間鍛造試験を5回ずつ行った。変形抵抗の測定は、60%加工率の冷間鍛造試験から得られた加工率−変形抵抗のデータから、40%加工時の変形抵抗を5回測定し、5回の平均値を求めた。
尚、C、SiおよびMn含有量によって、求められる変形抵抗が異なるため、目標とする変形抵抗(表3に記載の「目標変形抵抗」)を式(Y)とした。
目標変形抵抗(MPa)=400×Ceq+415 ・・・(Y)
ただし、Ceq=[C%]+0.2×[Si%]+0.2×[Mn%]であり、[C%]、[Si%]および[Mn%]は、それぞれ質量%でC、SiおよびMnの含有量を示す。
目標変形抵抗より低い変形抵抗を示す試料を合格とした。
(4)割れ発生率の測定
鋼線から、φ10.0mm×15.0mmの冷間鍛造試験用サンプルを作製し、鍛造プレスを用い、室温にて、ひずみ速度5/秒〜10/秒で、加工率60%の冷間鍛造試験を5回ずつ行った。割れ発生率の測定は、60%加工率の冷間鍛造試験後、夫々実体顕微鏡にて表面観察を5回行い、倍率20倍にて表面割れの有無を測定し、「表面割れを有するサンプル数」を5で除すことにより、その平均を求めた。全ての鋼種における割れ発生率の合格基準は、20%以下である。
鋼線から、φ10.0mm×15.0mmの冷間鍛造試験用サンプルを作製し、鍛造プレスを用い、室温にて、ひずみ速度5/秒〜10/秒で、加工率60%の冷間鍛造試験を5回ずつ行った。割れ発生率の測定は、60%加工率の冷間鍛造試験後、夫々実体顕微鏡にて表面観察を5回行い、倍率20倍にて表面割れの有無を測定し、「表面割れを有するサンプル数」を5で除すことにより、その平均を求めた。全ての鋼種における割れ発生率の合格基準は、20%以下である。
これらの結果を、球状化焼鈍条件と共に下記表3に示す。尚、表3の総合評価では、変形抵抗の低減および耐割れ性向上のいずれも良好である例、すなわち、変形抵抗が目標変形抵抗より低く、かつ割れ発生率が20%以下の試料を「O.K」と表示した。変形抵抗の低減および耐割れ性向上の少なくともいずれかが劣化している例、すなわち、変形抵抗が目標変形抵抗より高く、および/または割れ発生率が20%を超える試料は「N.G」と表示した。
表3の結果より、次のように考察できる。試験No.1、2、4、5、7、9、10、12、14、15および18〜20は、本発明で規定する要件の全てを満足する実施例であり、変形抵抗の低減および耐割れ性向上が共に達成されていることが分かる。
このうち試験No.12および18は、好ましい圧延線材条件で製造されていない試料である。しかしながら、その後の繰り返し行なうSA2の焼鈍によって粒界セメンタイトが十分に析出したため、変形抵抗および割れ発生率のいずれも合格基準に達している。このうち、試験No.12は、好ましい要件であるbcc−Fe結晶粒径は若干大きくなっているものの、変形抵抗および割れ発生率のいずれも合格基準に達している。
ここで、SA1およびSA2の焼鈍条件の両方を行った試験No.1および2(鋼種A)、試験No.9および10(鋼種D)、試験No.14および15(鋼種E)、ならびに試験No.19および20(鋼種F)に着目すると、いずれの場合もSA1の焼鈍を行った試料と比べて、SA1を5回繰り返すSA2の焼鈍を行った試料では、変形抵抗がより低減していることが分かる。試料No.9および10(鋼種D)では、変形抵抗のみならず、割れ発生率も低減している。
これに対し、試験No.3、6、8、11、13、16、17、21および22は、本発明で規定する要件のいずれかを欠く比較例であり、変形抵抗および割れ発生率のいずれか、または両方が合格基準に達していないことが分かる。
即ち、試験No.3、13、16および21は、条件が適切でないSA3で球状化焼鈍を行った例であり、粒界セメンタイト割合が不足し、変形抵抗および割れ発生率のいずれか、または両方が合格基準に達していない。
試験No.22は、Tiを含まない鋼種Gを用いた例であり、冷間加工時の変形抵抗が目標変形抵抗より高かった。
試験No.6、8、11および17は、圧延線材製造時の好ましい条件で製造されていない試料である。その後のSA1の球状化焼鈍によっては粒界セメンタイトが十分に析出せず、変形抵抗および割れ発生率のいずれも合格基準に達していない。しかしながら、これらの試料に対し、その後にSA1を5回繰り返すSA2の球状化焼鈍を施すと、粒界セメンタイトが適切に析出した状態となり、変形抵抗および割れ発生率のいずれも合格基準に達し得る(例えば、試験No.12および18)。
本発明の機械構造部品用鋼線は、冷間鍛造、冷間圧造および冷間転造等の冷間加工によって製造される自動車用部品および建設機械用部品等の各種機械構造部品の素材に好適に用いられる。こうした機械構造部品としては、具体的には、機械部品および電装部品等、より具体的にはボルト、ねじ、ナット、ソケット、ボールジョイント、インナーチューブ、トーションバー、クラッチケース、ケージ、ハウジング、ハブ、カバー、ケース、受座金、タペット、サドル、バルグ、インナーケース、クラッチ、スリーブ、アウターレース、スプロケット、コア、ステータ、アンビル、スパイダー、ロッカーアーム、ボディー、フランジ、ドラム、継手、コネクタ、プーリ、金具、ヨーク、口金、バルブリフター、スパークプラグ、ピニオンギヤ、ステアリングシャフトおよびコモンレール等が挙げられる。本発明の鋼線は、上記の機械構造部品の素材として好適に用いられる高強度機械構造部品用鋼線として産業上有用であり、上記の各種機械構造用部品を製造するときの室温における変形抵抗が低く、且つ素材の割れが抑制されることで優れた冷間加工性を発揮することができる。
Claims (3)
- 質量%で、
C :0.3〜0.6%、
Si:0.05〜0.5%、
Mn:0.2〜1.7%、
P :0%超、0.03%以下、
S :0.001〜0.05%、
Al:0.005〜0.1%、
N :0%超、0.015%以下、
B:0%超、0.01%以下および
Ti:0%超、0.1%を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
鋼の金属組織が、フェライトおよびセメンタイトより構成され、フェライト粒界に存在するセメンタイトの数割合が、全セメンタイト数に対して40%以上である機械構造部品用鋼線。 - 更に、質量%で、
Cr:0%超、0.5%以下、
Cu:0%超、0.25%以下、
Ni:0%超、0.25%以下および
Mo:0%超、0.25%以下
よりなる群から選択される1種以上を含有し、かつ下記式(X)を満足する請求項1に記載の機械構造部品用鋼線。
[Cr%]+[Cu%]+[Ni%]+[Mo%]≦0.75 (X)
ただし、[Cr%]、[Cu%]、[Ni%]および[Mo%]は、それぞれ、質量%で示したCr、Cu、NiおよびMoの含有量を示す。 - 前記金属組織におけるbcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が30μm以下である請求項1または2に記載の機械構造部品用鋼線。
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP2016182235A JP2018044235A (ja) | 2016-09-16 | 2016-09-16 | 機械構造部品用鋼線 |
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- 2016-09-16 JP JP2016182235A patent/JP2018044235A/ja active Pending
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