JP5618917B2 - 冷間加工用機械構造用鋼およびその製造方法、並びに機械構造用部品 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用部品、建設機械用部品等の各種機械構造用部品の製造に用いられる冷間加工用機械構造用鋼に関し、特に球状化焼鈍後の変形抵抗が低く冷間加工性に優れた特性を有する鋼材、およびそのような冷間加工用機械構造用鋼を製造するための有用な方法に関するものである。具体的には、冷間鍛造、冷間圧造、冷間転造等の冷間加工によって製造される自動車用部品、建設機械用部品などの各種部品、例えば、ボルト、ねじ、ナット、ソケット、ボールジョイント、インナーチューブ、トーションバー、クラッチケース、ケージ、ハウジング、ハブ、カバー、ケース、受座金、タペット、サドル、バルグ、インナーケース、クラッチ、スリーブ、アウターレース、スプロケット、コアー、ステータ、アンビル、スパイダー、ロッカーアーム、ボディー、フランジ、ドラム、継手、コネクター、プーリー、金具、ヨーク、口金、バルブリフター、スパークプラグ、ピニオンギヤ、ステアリングシャフト、コモンレール等の機械部品、伝送部品等に用いられる機械構造用線材および棒鋼を対象とし、上記の各種機械構造用部品を製造するときの室温および加工発熱領域における変形抵抗が低く、且つ金型や素材の割れが抑制されることで優れた冷間加工性を発揮することができる。
自動車用部品、建設機械用部品等の各種部品を製造するにあたっては、炭素鋼、合金鋼などの熱間圧延材に冷間加工性を付与する目的で球状化焼鈍処理を施してから、冷間加工を行い、その後切削加工などを施すことによって所定の形状に成形した後、焼入れ焼戻し処理を行って最終的な強度調整が行われている。
近年は、部品形状が複雑化・大型化する傾向にあり、それに伴って冷間加工工程では、鋼材を更に軟質化し、鋼材の割れの防止や金型寿命を向上させるという要求がある。鋼材を更に軟質化させるためには、より長時間の球状化焼鈍処理(例えば、200時間の球状化焼鈍処理)を施すことによって軟質化は可能である。しかしながら、球状化焼鈍処理を長時間化することは、鋼材の生産性を著しく阻害し、コストを増加させるだけではなく、近年の地球環境保護のための省エネルギーの観点からも、その実施は困難である。
これまでにも、球状化焼鈍時間を短縮、或は球状化焼鈍処理を省略しても、通常の球状化焼鈍処理材と同等の軟質化を得る方法がいくつか提案されている。こうした技術として、例えば特許文献1には、初析フェライトとパーライト組織を規定し、その平均粒径を6〜15μmとし、且つフェライト体積率を規定することによって、球状化焼鈍処理を迅速に行なえること、通常の球状化焼鈍処理材と同等の球状化度と耐割れ性が得られることが開示されている。しかしながら、この技術で規定される組織は、従来の球状化焼鈍処理材よりも微細であるため、通常の球状化熱処理(10〜30時間程度の熱処理)を行った場合よりも変形抵抗(室温および加工発熱領域における変形抵抗)が高くなってしまう懸念がある。また、組織が微細である分、球状化焼鈍処理中に部分的に組織サイズが変化し、硬さの変動が起こりやすくなるという問題も生じやすい。硬さの変動は、部分的な変形抵抗の増加(即ち、硬さのばらつき)を招き、冷間加工時の金型寿命を低下させる原因となる。
一方、特許文献2には、初析フェライトと、その他のパーライト組織やベイナイト組織の体積分率を夫々規定することによって、球状化焼鈍処理時間の短縮を可能とする技術が開示されている。この技術では、迅速球浄化は達成されるものの、軟質化に関しては依然と不十分でると共に、ベイナイトやパーライトの混合組織としている結果、球状化焼鈍処理後の硬度ばらつき(長手方向におけるばらつき)が生じることが懸念される。
以上のように、従来の技術はいずれも球状化焼鈍処理時間を短縮化するか、或は球状化焼鈍処理を省略するという観点からなされたものであり、これまでの球状化焼鈍材よりも更に軟質化を図るという技術ではない。また、球状化焼鈍処理後の硬度ばらつき(長手方向におけるばらつき)を低減することについては、何ら考慮されていないのが実情である。
特開2000−119809号公報 特開2000−275252号公報
本発明はこうした状況の下になされたものであって、その目的は、比較的簡便な球状化焼鈍を施した場合であっても、これまで以上の軟質化を図ることができ、硬さのばらつきの小さくなるような冷間加工用機械構造用鋼、およびこのような冷間加工用機械構造用鋼を製造するための有用な方法、並びにこのような冷間加工用機械構造用鋼から得られる機械構造用部品を提供することにある。
上記目的を達成し得た本発明の冷間加工用機械構造用鋼とは、C:0.05〜0.3%未満(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、Si:0.005〜0.5%、Mn:0.2〜1.1%、P:0.03%以下(0%を含まない)、S:0.001〜0.03%、Al:0.01〜0.1%、およびN:0.015%以下(0%を含まない)を夫々含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、鋼の金属組織が、パーライトとフェライトを有し、全組織に対するパーライトとフェライトの合計面積率が95面積%以上であると共に、フェライトの面積率Aが、下記(1)式で表されるAe値との関係でA>Aeを満足し、且つ隣り合う2つの結晶粒の方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたbcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が5μm以上、15μm未満である点に要旨を有するものである。尚、前記「平均円相当直径」とは、方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたフェライト結晶粒を、同一面積の円に換算したときの直径(円相当直径)の平均値である。
Ae=(1.0−Ceq1)×96.75 …(1)
但し、Ceq1=[C]+0.1×[Si]+0.06×[Mn]であり、[C],[Si]および[Mn]は、夫々C,SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼の基本的な化学成分組成は、上記の通りであるが、必要によって更に、(a)Cr:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)、およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、(b)Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)、およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、等を含有させることも有用であり、含有される成分に応じてその鋼材の特性が更に改善される。
一方、上記のような本発明の冷間加工用機械構造用鋼を製造するに当っては、750〜950℃の温度で仕上げ加工した後、5℃/秒以上の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却し、その後1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却するようにすれば良い。
また、750〜950℃の温度で仕上げ加工した後、20℃/秒以上の平均冷却速度で660〜750℃の温度範囲まで冷却し、その後、0.1〜0.5℃/秒の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却し、更に1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却するようにしても、本発明の冷間加工用機械構造用鋼を製造することができる。
上記のような冷間加工用機械構造用鋼を用いて、線材または棒鋼を経て得られる機械構造用部品では、硬さのばらつきも小さなものとなって、長手方向における硬さばらつき(最大値と最小値の差)が5Hv以下のものとなる。
本発明では、化学成分組成と共に、全組織に対するパーライトとフェライトの合計面積率を規定し、フェライトの面積率Aを所定の関係式で表されるAe値との関係でA>Aeを満足し、且つフェライト結晶粒の平均円相当直径を適切に規定することによって、通常の球状化焼鈍を実施した場合であっても硬さを十分低くすることができる冷間加工用機械構造用鋼が実現でき、こうした冷間加工用機械構造用鋼は球状化焼鈍後の冷間加工性に優れたものとなる。
本発明者らは、通常の球状化焼鈍を施した場合であっても、球状化焼鈍による軟質化を図ることができるような冷間加工用機械構造用鋼を実現するべく、様々な角度から検討した。その結果、球状化焼鈍後における鋼の軟質化を図るためには、球状化焼鈍後のフェライト結晶粒の粒径を比較的大きくし、且つ球状セメンタイトによる分散強化を低減するために、セメンタイトの粒子間距離をできるだけ大きくすることが重要であるとの着想が得られた。そして、球状化焼鈍後に上記の様な組織を実現するためには、球状化焼鈍前の金属組織(以下、「前組織」と呼ぶことがある)を、パーライトとフェライトを主相とした上で、組織中のフェライトの面積率をできるだけ高め、且つ大角粒界で囲まれたフェライト結晶粒の平均円相当直径を所定の範囲に制御すれば、球状化焼鈍後の硬さを最大限に低下できることを見出した。また、線材や棒鋼に加工したときに、長手方向における硬さのばらつきを低減するためには、C含有量を比較的低くすると共に、フェライト結晶粒の平均円相当直径を所定の範囲に制御することが有効であることを見出し、本発明を完成した。
本発明で規定する各要件について説明する。
[金属組織:パーライトとフェライトを有すること]
パーライトとフェライトは鋼の変形抵抗を低減させて冷間加工性向上に寄与する金属組織である。しかしながら、単に球状化したセメンタイトとフェライトを含む金属組織とするだけでは、所望の軟質化を図ることができないことから、以下で詳述する様に、この金属組織の面積率、フェライト面積率A、bcc−Fe結晶粒の平均粒径等も適切に制御する必要がある。
[パーライトとフェライトの合計面積率:全組織に対して95面積%以上]
組織(前組織)にベイナイトやマルテンサイト等の微細な組織を含む場合には、一般的な球状化焼鈍を行っても、球状化焼鈍後はベイナイトやマルテンサイトの影響によって組織が微細となり、軟質化が不十分となる。こうした観点から、全組織に対するパーライトとフェライトの合計面積率は95面積%以上とする必要がある。フェライトは軟質相であるため、組織の軟質化に重要である。パーライトは硬質であるセメンタイトがラメラ状に配置された組織であり、球状化焼鈍処理中にセメンタイトが分解し、わずかに残存したセメンタイトを核として、球状セメンタイトとして粗大化する。パーライトのように、ある程度の大きさのセメンタイト同士が初期から近接することで球状セメンタイトを形成しやすくする。
パーライトとフェライト以外の金属組織としては、例えば製造過程で生成し得るマルテンサイトやベイナイト等が一部含まれることがあるが、これらの組織では、微細なセメンタイトが分散或はCが固溶している状態であり、また周りの組織も微細になっているため、一般的(通常の)球状化焼鈍処理を行っても、球状化焼鈍後はマルテンサイトやベイナイトの影響で球状化焼鈍後の組織が微細となるだけでなく、微細であるセメンタイトは凝集に長時間を要するため、軟質化が不十分となる。そのため、パーライトとフェライトの合計面積率は、全組織に対して95面積%以上とする必要があり、それ以外の組織は5面積%以下とする必要がある。パーライトとフェライトの合計面積率は、好ましくは97面積%以上、より好ましくは99面積%以上、最も好ましくは100面積%である。
[フェライトの面積率Aが、下記(1)式で表されるAe値との関係でA>Aeを満足する]
上記趣旨から明らかなように、前組織中のフェライトAの面積率をできるだけ多くする必要がある。フェライトはCを殆ど固溶しないため、パーライト部分にセメンタイトを凝集させると共に、セメンタイト同士の距離を近接させることができる。但し、鋼材中のC含有量によって、フェライト面積率は変化するため、C含有量に応じたフェライト面積率を計算する必要がある。
本発明者らは、初析フェライトを平衡量まで析出させるという観点から検討し、実験に基づき平衡フェライト析出量は、(1.0−Ceq1)×129で表されること、およびフェライト面積率Aは、平衡析出量の75%以上を確保できれば良いとの着想に基づき、最低限確保する必要があるフェライト量として下記(1)式で表されるAe値を定めた。尚、フェライトの面積率Aを測定するときのフェライトは、パーライト組織中に含まれるフェライトは含まない趣旨である(初析フェライトのみ測定)。
Ae=(1.0−Ceq1)×96.75 …(1)
但し、Ceq1=[C]+0.1×[Si]+0.06×[Mn]であり、[C],[Si]および[Mn]は、夫々C,SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
即ち、フェライトの面積率Aが、上記(1)式で表されるAe値との関係でA>Aeを満足したときに、フェライト面積率を大きくすることによる効果が発揮されるものとなる。これに対し、フェライトの面積率Aが、上記Ae値以下となる場合(即ち、A≦Ae)には、球状化焼鈍後に新たな微細フェライトが析出しやすくなって、軟質化が不十分となる。また、フェライト面積率Aが小さい状態で、フェライト結晶粒径を大きくすると(後述する)、再生パーライトが生成しやすくなり、十分な軟質化が困難となる。
[隣り合う2つの結晶粒の方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたbcc−Fe結晶粒の平均円相当直径:5μm以上、15μm未満]
迅速球状化する場合、球状化焼鈍処理後に再生パーライトや棒状セメンタイトが発生すると、球状化焼鈍後の軟質化、および硬さばらつきの低減を阻害する。こうした状態を防止するために、前組織におけるbcc(体心立方格子)−Fe結晶粒の平均円相当直径(以下、単に「フェライト平均粒径」と呼ぶことがある)を15μm未満に制御する。また、Cの拡散は結晶粒内よりも粒界ほど促進され、球状セメンタイトは結晶粒界が多いほど成長しやすいので、前組織を微細にすることは球状セメンタイトの成長による硬度低下に有効である。しかしながら、前組織を微細にし過ぎた場合には、球状化焼鈍処理後のフェライト平均粒径が微細になり、フェライト粒微細化によって硬度が上昇するため、前組織のフェライト平均粒径は5μm以上とする必要がある。フェライト平均粒径の好ましい下限は6μm以上であり、より好ましくは7μm以上である。フェライト平均粒径の好ましい上限は14μm以下であり、より好ましくは13μm以下である。
フェライト平均粒径を測定するときのフェライトは、隣り合う2つの結晶粒の方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたフェライト結晶粒(bcc−Fe結晶粒)を対象とするが、これは方位差が15°以下の小角粒界では、球状化焼鈍による影響が小さいからである。つまり、前記方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたフェライト結晶粒で、同一面積の円に換算したときの直径を上記のような範囲とすることによって、球状化焼鈍後に十分な軟質化が実現できるものとなる。尚、前記「方位差」は、「ずれ角」若しくは「斜角」とも呼ばれているものであり、方位差の測定にはEBSP法(Electron Backscattering Pattern法)を採用すればよい。また、平均粒径を測定するフェライトは、パーライト組織中に含まれるフェライトも含む趣旨である。
本発明では、冷間加工用機械構造用鋼を想定してなされたものであり、その鋼種については冷間加工用機械構造用鋼としての通常の化学成分組成のものであれば良いが、C、Si、Mn、P、S、AlおよびNについては、適切な範囲に調整するのが良い。こうした観点から、これらの化学成分の適切な範囲およびその範囲限定理由は下記の通りである。
[C:0.05〜0.3%未満]
Cは、鋼の強度(最終製品の強度)を確保する上で有用な元素である。また、C含有量を比較的少なくすることによって、軟質化促進による硬さのばらつき(線材または棒鋼としたときの長手方向の硬さのばらつき)を小さくすることができる。C含有量が0.3%以上となると、硬さのばらつきが大きくなりやすくなり、変形抵抗の増加、抵抗能の低下を招く。一方、C含有量が0.05%よりも少なくなると、鋼材の強度が低下し、部品特性を満足することが困難になる。C含有量の好ましい下限は0.08%以上(より好ましくは0.10%以上)であり、好ましい上限は0.28%以下(より好ましくは0.25%以下)である。
[Si:0.005〜0.5%]
Siは、脱酸元素として、および固溶体硬化による最終製品の強度を増加させることを目的として含有させるが、0.005%未満ではこうした効果が有効に発揮されず、また0.5%を超えて過剰に含有されると変形抵抗の増加や変形能の低下を生じさせるため、冷間加工性を劣化させる。尚、Si含有量の好ましい下限は0.008%以上(より好ましくは0.01%以上)であり、好ましい上限は0.40%以下(より好ましくは0.30%以下)である。
[Mn:0.2〜1.1%]
Mnは、溶製中の鋼の脱酸、脱硫元素として有効であり、また鋼材への熱間加工時の加工性劣化を抑制する効果を発揮する。更に、Sと結合することで、鋼材の変形能を向上させるのにも有効な元素である。Mn含有量が、0.2%未満ではこれらの効果が発揮されず、1.1%を超えて過剰に含有されると、固溶強化による変形抵抗が増加して冷間加工性を劣化させるため、0.2〜1.1%とした。尚、Mn含有量の好ましい下限は0.3%以上(より好ましくは0.4%以上)であり、好ましい上限は1.0%以下(より好ましくは0.9%以下)である。
[P:0.03%以下(0%を含まない)]
Pは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、フェライト粒界に偏析し、変形能を劣化させる。またPは、フェライトを固溶強化させ、変形抵抗を増大させる。従って、変形抵抗や変形能の観点からは、Pは極力低減することが好ましいが、極端な低減は製鋼コストの増大を招き、0%とすることは製造上困難であるので、0.03%以下(0%を含まない)と定めた。P含有量の好ましい上限は0.028%以下(より好ましくは0.025%以下)である。
[S:0.001〜0.03%]
SもPと同様に鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、鋼中でFeと結合すると、FeSとして粒界上に膜状に析出するため、変形能を劣化させる。従って、Sは全量をMnと結合させ、MnSとして無害に析出させる必要がある。但し、このMnSの析出量が増加すると、変形能が低下するので、S含有量は0.03%以下とする必要がある。その一方で、Sは被削性を向上させる作用を発揮させるので、0.001%以上含有させることは有用である。S含有量の好ましい下限は0.003%以上(より好ましくは0.005%以上)であり、好ましい上限は0.028%以下(より好ましくは0.025%以下)である。
[Al:0.01〜0.1%]
Alは、脱酸元素として有用であると共に、鋼中に存在する固溶NをAlNとして固定し、変形抵抗の低下、変形能の向上に有用である。こうした効果を有効に発揮させるためには、Al含有量は0.01%以上とする必要がある。しかしながら、Al含有量が過剰になって0.1%を超えると、Al23が過剰に生成し、変形能を劣化させる。尚、Al含有量の好ましい下限は0.013%以上(より好ましくは0.015%以上)であり、好ましい上限は0.08%以下(より好ましくは0.06%以下)である。
[N:0.015%以下(0%を含まない)]
Nは、鋼中に不可避的に含まれる元素であるが、鋼中に固溶Nが含まれると、動的歪み時効による変形抵抗の増加や、変形の局在化を招くため、冷間加工性を劣化させやすい。従って、変形抵抗、変形能の観点から、Nは極力低減することが望ましいが、極端な低減は製鋼コストの増加を招き、0%とすることは製造上困難であるので、0.015%以下(0%を含まない)と定めた。N含有量の好ましい上限は0.013%以下であり、より好ましい上限は0.010%以下である。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼の基本的な化学成分は、上記の通りであり、残部は実質的に鉄である。尚、「実質的に鉄」とは、鉄以外にも本発明の鋼材の特性を阻害しない程度の微量成分(例えば、Sb,Zn等)も許容できる他、P,S,N以外の不可避不純物(例えば、O,H等)も含み得るものである。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼には、必要によって更に、(a)Cr:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)、およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、(b)Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上、等を含有させることも有用であり、含有される成分に応じてその鋼材の特性が更に改善される。これらの成分を含有させるときの成分範囲限定理由は下記の通りである。
[Cr:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)、およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Cr、Cu、Ni、MoおよびBは、いずれも鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素であり、必要によって単独でまたは2種以上で含有される。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、強度が高くなり過ぎ、冷間加工性を劣化させるので、上記のように夫々の好ましい上限を定めた。より好ましくはCrで0.45%以下(更に好ましくは0.40%以下)、Cu,NiおよびMoで0.22%以下(更に好ましくは0.20%以下)、およびBで0.007%以下(更に好ましくは0.005%以下)である。尚、これらの元素による効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、それらの効果を有効に発揮させるための好ましい下限は、Crで0.015%以上(より好ましくは0.020%以上)、Cu,NiおよびMoで0.02%以上(より好ましくは0.05%以上)、およびBで0.0003%以上(より好ましくは0.0005%以上)である。
[Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)、およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上]
Ti、NbおよびVは、Nと化合物を形成し、固溶Nを低減することで、変形抵抗低減の効果を発揮するため、必要によって単独でまたは2種以上を含有させることができる。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、形成される化合物が変形抵抗の上昇を招き、却って冷間加工性を低下させるので、TiおよびNbで0.2%以下、Vで0.5%以下とするのが良い。より好ましくはTiおよびNbで0.15%以下(更に好ましくは0.10%以下)、およびVで0.40%以下(更に好ましくは0.30%以下)である。尚、これらの元素による効果はその含有量が増加するにつれて大きくなるが、その効果を有効に発揮させるためには好ましい下限は、いずれも0.01%以上(より好ましくは0.03%以上)である。
本発明の冷間加工用機械構造用鋼を製造するに当たっては、上記のような成分組成を満足する鋼を、750〜950℃の温度で仕上げ加工した後、5℃/秒以上の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却し、その後、1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却すれば良い。他の方法として、上記のような成分組成を満足する鋼を、750〜950℃の温度で仕上げ加工した後、20℃/秒以上の平均冷却速度で660〜750℃の温度範囲まで一旦冷却し、その後、0.1〜0.5℃/秒の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却し、更に1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却するようにしても良い。これらの製造条件について説明する。
[仕上げ加工温度:750〜950℃]
大角粒界で囲まれた結晶粒の平均粒径(フェライト平均粒径)を5μm以上、15μm未満に制御するためには、仕上げ加工温度(熱間仕上げ加工温度)を750〜950℃に制御する必要がある。仕上げ加工温度が950℃を超えると、結晶粒が大きくなり過ぎ、フェライト平均粒径を15μm未満にすることが困難となる。また、仕上げ加工温度が750℃未満であると、逆に動的再結晶が促進されるため組織が微細になりやすく、フェライト平均粒径を5μm以上にすることが困難となる。
[仕上げ加工後に、5℃/秒以上の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却]
600〜660℃の温度範囲(冷却停止温度)までの冷却速度が遅くなると、上記の圧延条件で作り込んだ前組織の平均粒径を維持したまま、組織サイズが変化しにくいAr1変態点以下まで冷却することができる。このときの平均冷却速度が5℃/秒未満であると、特に前組織の平均粒径が15μm付近の場合、所定の組織とすることができなくなる。こうした観点から、平均冷却速度は5℃/秒以上とする必要がある。この平均冷却速度は、好ましくは7.5℃/秒以上であり、より好ましくは10℃/秒以上である。このときの平均冷却速度の上限については、特に限定されないが、現実的な範囲として200℃/秒以下である。尚、このときの冷却については、5℃/秒以上となる平均冷却速度の範囲内であれば、冷却速度を変えるような冷却形態であっても良い。
[仕上げ加工後に、20℃/秒以上の平均冷却速度で660〜750℃の温度範囲まで一旦冷却し、その後、0.1〜0.5℃/秒の平均冷却速度で600〜660℃温度範囲まで冷却]
フェライト平均粒径の粗大化と、フェライト面積率Aが少なくなることを防止するためには、上記のような冷却(即ち、5℃/秒以上の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却)の代わりに、20℃/秒以上の平均冷却速度で660〜750℃の温度範囲(第1冷却停止温度)まで一旦冷却し、その後、0.1〜0.5℃/秒の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲(第2冷却停止温度)まで冷却するようにしても良い。即ち、660〜750℃の温度範囲までを、平均冷却速度を20℃/秒以上の急冷とし、その温度範囲から600〜660℃の温度範囲までを、0.1〜0.5℃/秒の平均冷却速度で冷却するようにしても良い。
上記第1冷却時の平均冷却速度が20℃/秒未満の場合には、前組織のフェライト平均粒径が大きくなり過ぎることがある。この平均冷却速度は、好ましくは25℃/秒以上であり、より好ましくは30℃/秒以上である。尚、このときの平均冷却速度の上限については、特に限定されないが、上記と同様の観点から、200℃/秒以下である。
第1冷却停止温度が750℃を超える場合には、前組織のフェライト平均粒径が大きくなる過ぎることがある。また、第1冷却停止温度が660℃よりも低くなると、フェライト面積率Aが低下しやすくなる。第1冷却停止温度の好ましい下限は670℃以上(より好ましくは680℃以上)であり、好ましい上限は745℃以下(より好ましくは740℃以下)である。
600〜660℃の温度範囲までを2段階の冷却を行うことによって、1段階で冷却するときに比べてフェライト面積率Aを大きくすることができると共に、上記フェライト平均粒径を15μm未満に制御し易くなる。2段階目の冷却は、フェライト面積率Aを大きくするために0.1℃/秒以上の平均冷却速度で行う必要がある。また平均冷却速度が0.1℃/秒未満であると、フェライト平均粒径を15μm未満に制御しにくくなるばかりか、鋼材の脱炭が助長され、生産面で時間がかかり過ぎることになる。しかしながら、このときの平均冷却速度が0.5℃/秒を超えても、上記の効果が得られにくくなる。尚、2段階目の冷却時の平均冷却速度は、好ましくは0.15℃/秒以上であり(より好ましくは0.2℃/秒以上)であり、好ましい上限は0.45℃/秒以下(より好ましくは0.40℃/秒以下)である。
上記の冷却では、いずれの冷却方式(1段階の冷却または2段階の冷却)を採用するにしても、冷却停止温度(2段階冷却では第2冷却停止温度)は、600〜660℃温度範囲とする必要がある。この温度が660℃よりも高くなると、フェライト平均粒径が15μm以上となりやすく、球状化焼鈍処理で硬さが下がりにくくなるばかりか、硬さのばらつきが助長される。一方、冷却停止温度が600℃未満となると組織が微細化しやすくなり、フェライト平均粒径が5μm未満となりやすくなる。この冷却停止温度の好ましい下限は610℃以上(より好ましくは620℃以上)であり、好ましい上限は655℃以下(より好ましくは650℃以下)である。
[600〜660℃の温度範囲まで冷却した後、1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却]
600〜660℃の温度範囲から1℃/秒以下の平均冷却速度で徐冷することによって、上記フェライト平均粒径を5μm以上、15μm未満に制御しつつ(制御した状態で)、フェライト面積率Aを大きくすることができる。このときの平均冷却速度は遅ければ遅いほどフェライト面積率Aが増加しやすいため有効であるが、製造性を考慮すれば0.01℃/秒以上とすることが好ましい。また平均冷却速度が1℃/秒を超えると、ベイナイトやマルテンサイト等の硬質組織が生じやすくなり、フェライトとパーライトの合計面積率を所定以上にすることができなくなる。この平均冷却速度の好ましい上限は0.8℃/秒以下であり、より好ましくは0.5℃/秒以下である。
上記の効果を発揮させるためには、冷却時間(徐冷時間:パーライト変態完了時間に相当)は少なくとも20秒以上とする必要があり、これより短くなるとベイナイトやマルテンサイト等の硬質組織が生成しやすくなって、フェライトとパーライトの合計面積率が所定以上とすることができなくなる。この冷却時間は、好ましくは30秒以上、より好ましくは60秒以上、更に好ましくは120秒以上である。生産性や設備上の制約という観点から、冷却時間の好ましい上限は500秒以下(より好ましくは400秒以下)である。尚、このような徐冷を終えた後は、通常の冷却(放冷)を行って、室温までの温度とすれば良い。
上記のような冷間加工用機械構造用鋼を用いて、線材または棒鋼としたものでは良好な冷間加工性を示し、こうした線材または棒鋼を経て得られる機械構造用部品では、長手方向における硬さのばらつき(最大値と最小値の差)が5Hv以下と小さいものとなる。
以下本発明を実施例によって更に詳細に説明するが、下記実施例は本発明を限定する性質のものではなく、前・後記の趣旨に徴して設計変更することはいずれも本発明の技術的範囲に含まれるものである。
下記表1に示した化学成分組成の鋼種を用い、熱間加工条件(仕上げ加工温度、平均冷却速度、冷却停止温度、冷却時間:後記表2参照)を変化させて、φ18mmの棒線材を製造(熱間圧延)した。
Figure 0005618917
得られた各棒線材の組織因子(組織およびフェライト平均粒径)、および球状化焼鈍後の硬さの測定に当たって、各棒線材に対して400mm間隔で、約15mmのサンプルを、前組織観察用と球状化焼鈍用に夫々8個ずつ(合計16個)サンプリングした。その後、サンプルの横断面が観察できるように樹脂埋めし、線材の半径Dに対し、D/4の位置を測定した。
(前組織のフェライト平均粒径の測定)
前組織粒径の測定は、EBSP解析装置およびFE−SEM(電解放出型走査電子顕微鏡)を用いて測定した。結晶方位差(斜角)が15°を超える境界(大角粒界)を結晶粒界として「結晶粒」を定義し、フェライトにおける結晶粒の平均粒径(8個のサンプルの平均値)を決定した。このときの測定領域は400μm×400μm、測定ステップは0.7μm間隔とし、測定方位の信頼性を示すコンフィデンス・インデックス(Confidence Index)が0.1以下の測定点は解析対象から削除した。
(組織の観察)
パーライト+フェライトの合計面積率(P+Fの割合)、フェライト面積率A(F面積率A)の測定においては、ナイタールエッチングによって組織を現出させ、光学顕微鏡にて組織観察を行い、倍率400倍にて5視野を撮影した。それらの写真を元に、画像解析によって、パーライト+フェライトの割合(合計面積率)、フェライト部の面積率Aを測定し、平均値(8個のサンプルの平均値)を算出した。
(球状化焼鈍後の硬さの測定)
球状化焼鈍後の硬さの測定は、ビッカース硬度計を用いて、荷重1kgfで測定し、8個のサンプルの夫々で、5点ずつ測定し(合計40点)、その平均値(Hv)を求めた。また、各サンプルの5点の平均値を1つのサンプルの硬さの値として、8個のサンプルのうちの硬さの最大値Hv(max)と最小値Hv(min)を決定した。硬さの基準は、平均値で下記(2)式を満足し、且つ硬さの最大値Hv(max)と最小値Hv(min)の差△Hv[Hv(max)−Hv(min)]が5Hv以下のものを硬さのばらつき(長さ方向のばらつき)が抑制されていると判断した。
Hv≦88.4×Ceq2+86.0 …(2)
但し、Ceq2=[C]+0.2×[Si]+0.2×[Mn]であり、[C],[Si]および[Mn]は、夫々C,SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
[実施例1]
上記表1に示した化学成分組成の鋼種のうち、鋼種A(本発明で規定する成分組成を満足する鋼)を用い、仕上げ加工温度、平均冷却速度を下記表2のように変化させて、前組織の異なるサンプルを夫々作製した(試験No.1〜18)。尚、表2の製造条件において、「冷却1」は第1段階の冷却(600〜660℃の温度範囲までの冷却、または660〜750℃までの冷却)を示し、「冷却2」は「冷却1」で660〜750℃までの冷却を行った後、600〜660℃の温度範囲までの冷却を示し、「冷却3」は最終段階の冷却を示している。
球状化焼鈍は、サンプルを夫々真空封入し、大気炉にて、740℃×4時間保持(均熱)後、冷却速度30℃/時で650℃まで冷却し、放冷(7時間+昇温時間)する熱処理(迅速球状化処理)を行った。これらについて、前組織のフェライト平均粒径(前組織α平均粒径)、パーライト+フェライトの合計面積率(P+Fの割合)、フェライト面積率(F面積率A)、および球状化焼鈍処理後の硬さの測定結果を、(1)式の右辺の値[(1.0−Ceq1)×96.75:Ae]、(2)式の右辺の値[88.4×Ceq2+86.0]、(1)式の判定、(2)式の判定(平均硬さ<(2)式の値の場合を○、平均硬さ≧(2)式の値の場合を×)、硬さの差△Hv[Hv(max)−Hv(min)]、および△Hvの判定(△H≦5Hvの場合を○、△Hv>5Hvの場合を×)と共に、下記表3に示す。
Figure 0005618917
Figure 0005618917
この結果から次のように考察できる。試験No.2〜4、12〜18は、本発明で規定する要件の全てを満足する例であり、球状化焼鈍後の硬さを十分低くすることができ[(2)式の判定○]、且つ硬さのばらつき(Hvの判定○)も低減されていることが分かる。
これに対して、試験No.1、5〜11は、本発明で規定する製造条件を満足しない例であり、いずれかの特性が劣化していることが分かる。即ち、試験No.1のものは、仕上げ加工温度が低くなっている例であり、フェライト平均粒径が小さくなっており、球状化焼鈍後の硬さが高いままである。
試験No.5のものは、仕上げ加工温度が高くなっている例であり、フェライト平均粒径が大きくなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。試験No.6のものは、「冷却1」での平均冷却速度が遅い例であり、フェライト平均粒径が大きくなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。
試験No.7のものは、「冷却1」での冷却停止温度が高くなっている例であり、フェライト平均粒径が大きくなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。試験No.8のものは、「冷却1」での冷却停止温度が低くなっている例であり、フェライト面積率Aが低くなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。
試験No.9のものは、仕上げ加工温度が低く、且つ「冷却1」での冷却停止温度が低くなっている例であり、フェライト平均粒径が小さく、且つきくフェライト面積率Aが低くなっており、球状化焼鈍後の硬さが高いままである。試験No.10のものは、「冷却3」での平均冷却速度が速くなっている例であり、フェライト面積率Aが低くなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。
試験No.11のものは、「冷却3」での冷却時間が短くなっている例であり、パーライト+フェライトの合計面積率(P+Fの割合)が少なくなると共に(残部はベイナイトが観察された)、フェライト面積率Aが低くなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。
[実施例2]
上記表1に示した鋼種B〜Tを用い、仕上げ加工温度、平均冷却速度を下記表4のように変化させて、前組織の異なるサンプルを夫々作製し(試験No.19〜43)、実施例1と同様に評価した。尚、球状化焼鈍は、サンプルを夫々真空封入し、大気炉にて、740℃×6時間保持(均熱)後、冷却速度10℃/時で650℃まで冷却し、放冷(15時間+昇温時間)する熱処理(通常の球状化処理)を行った。
これらについて、前組織のフェライト平均粒径(前組織α平均粒径)、パーライト+フェライトの合計面積率(P+Fの割合)、フェライト面積率(F面積率A)、および球状化焼鈍処理後の硬さの測定結果を、(1)式の右辺の値[(1.0−Ceq1)×96.75:Ae]、(2)式の右辺の値[88.4×Ceq2+86.0]、(1)式の判定、(2)式の判定(平均硬さ<(2)式の値の場合を○、平均硬さ≧(2)式の値の場合を×)、硬さの差△Hv[Hv(max)−Hv(min)]、および△Hvの判定(△H≦5Hvの場合を○、△Hv>5Hvの場合を×)と共に、下記表5に示す。
Figure 0005618917
Figure 0005618917
これらの結果から、次のように考察できる。試験No.19〜34および試験No.38〜40のものは、本発明で規定する要件の全てを満足する例であり、球状化焼鈍後の硬さを十分低くすることができ、しかも硬さのばらつきも低減できることが分かる。
これに対して、試験No.35〜37および試験No.41〜43のものは、本発明で規定する要件のいずれかを欠くものであり、いずれかの特性が劣化している。即ち、試験No.35は、本発明で規定する製造条件は満足するが、N含有量が過剰な鋼種Rを用いているので、硬さが高くなっている。
試験No.36は、本発明で規定する製造条件は満足するが、Mn含有量が過剰な鋼種Sを用いており、また試験No.37は、本発明で規定する製造条件は満足するが、選択成分であるCr含有量が過剰な鋼種Tを用いているので、いずれも球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。
試験No.41のものは、化学成分組成は満足するが、仕上げ加工温度が高く、「冷却2」での冷却停止温度が高くなっている例であり、パーライト+フェライト(P+F)の割合が少なくなると共に(残部はベイナイトが観察された)、フェライト面積率Aが低くなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。試験No.42のものは、化学成分組成は満足するが、仕上げ加工温度が高く、「冷却1」での冷却停止温度が高くなっている例であり、フェライト平均粒径が大きくなると共に、フェライト面積率Aが低くなっており、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。試験No.43のものは、化学成分組成は満足するが、「冷却1」での冷却停止温度が高く、「冷却3」での冷却保持時間が短い例であり、球状化焼鈍後の硬さが高く、硬さのばらつきも大きくなっている。

Claims (6)

  1. C:0.05〜0.3%未満(質量%の意味。以下、化学成分組成について同じ。)、
    Si:0.005〜0.5%、
    Mn:0.2〜1.1%、
    P :0.03%以下(0%を含まない)、
    S :0.001〜0.03%、
    Al:0.01〜0.1%、および
    N :0.015%以下(0%を含まない)を夫々含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなり、
    鋼の金属組織が、パーライトとフェライトを有し、全組織に対するパーライトとフェライトの合計面積率が95面積%以上であると共に、フェライトの面積率Aが、下記(1)式で表されるAe値との関係でA>Aeを満足し、
    且つ隣り合う2つの結晶粒の方位差が15°よりも大きい大角粒界で囲まれたbcc−Fe結晶粒の平均円相当直径が5μm以上、15μm未満であることを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼。
    Ae=(1.0−Ceq1)×96.75 …(1)
    但し、Ceq1=[C]+0.1×[Si]+0.06×[Mn]であり、[C],[Si]および[Mn]は、夫々C,SiおよびMnの含有量(質量%)を示す。
  2. 更に他の元素として、
    Cr:0.5%以下(0%を含まない)、
    Cu:0.25%以下(0%を含まない)、
    Ni:0.25%以下(0%を含まない)、
    Mo:0.25%以下(0%を含まない)、および
    B :0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含有するものである請求項1に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
  3. 更に他の元素として、
    Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.2%以下(0%を含まない)、および
    V:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される1種以上を含有するものである請求項1または2に記載の冷間加工用機械構造用鋼。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼を製造するに当たり、750〜950℃の温度で仕上げ加工した後、5℃/秒以上の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却し、その後、1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却することを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
  5. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼を製造するに当たり、750〜950℃の温度で仕上げ加工した後、20℃/秒以上の平均冷却速度で660〜750℃の温度範囲まで冷却し、その後、0.1〜0.5℃/秒の平均冷却速度で600〜660℃の温度範囲まで冷却し、更に1℃/秒以下の平均冷却速度で20秒以上冷却することを特徴とする冷間加工用機械構造用鋼の製造方法。
  6. 請求項1〜3のいずれかに記載の冷間加工用機械構造用鋼を用いて、線材または棒鋼を経て得られる機械構造用部品であり、長手方向における硬さのばらつき(最大値と最小値の差)が5Hv以下であることを特徴とする冷間加工用機械構造用部品。
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