JP6753136B2 - オーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手 - Google Patents

オーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手 Download PDF

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本発明は、オーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から発電用ボイラ等では運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められている。過熱器管および再熱器管に使用される材料には、より優れた高温強度、耐食性等の特性を有することが求められている。
このような要求を満たす材料として、従来、多量の窒素及び多量のニッケルを含有させた種々のオーステナイト系耐熱鋼(以下、多量の窒素及びニッケルを含有させたオーステナイト系耐熱鋼を「高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼」とも称する)が開発されてきた。
例えば、特許文献1には、Nを0.02%〜0.3%、Niを17%〜50%、およびCrを18%〜25%とするとともに、Nbを0.05%〜0.6%、Tiを0.03%〜0.3%、およびMoを0.3%〜5%含有する高温強度に優れたオーステナイト系耐熱鋼が提案されている。
また、特許文献2には、Nを0.1%〜0.30%、Niを22.5%〜32%、およびCrを20%〜27%に加え、強化元素としてWを0.4%〜4%、Nbを0.20%〜0.60%含む高温強度に優れるオーステナイト系耐熱鋼が提案されている。
さらに、特許文献3には、Nを0.05%超〜0.3%、Niを15%超〜55%およびCrを20%超〜28%未満含むとともに、Nbを0.1%〜0.8%、Vを0.02%〜1.5%、およびWを0.05%〜10%含有する、クリープ特性と熱間加工性に優れるオーステナイト系耐熱鋼が提案されている。
これらオーステナイト系耐熱鋼は、一般には、溶接金属を有する溶接構造物として使用される。そのため、溶接構造物として、これらオーステナイト系耐熱鋼の性能を活用し得る溶接金属についても種々提案されてきた。
例えば、特許文献4には、Nbを0.3%〜3.5%、Nを0.1%〜0.35%、およびMoを0.2%〜1.8%含有させるとともに、Niを35%〜45%含有させたオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、高温強度、耐食性、及び溶接時の耐溶接割れ性を具備することが開示されている。
特許文献5には、Nbを0.5%〜4%、Nを0.1%〜0.35%、及びMoを0.2%〜1.8%含有させるとともに、Niを30%〜50%含有し、さらに、Nb量に応じてC量を適正範囲に調整したオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、溶接時の耐溶接割れ性の改善が図れ、かつ、高温強度と耐食性を両立することが開示されている。
特許文献6には、Nbを0.1%〜1.5%、Wを0.5%〜3%、Nを0.1%〜0.35%、及びNiを15%〜25%含むオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、高温強度に優れることが開示されている。
特開昭59−173249号公報 特表2002−537486号公報 特許第3838216号公報 特許第3329262号公報 特許第3918670号公報 特許第3329261号公報
ところで、これら特許文献4〜6に開示されているオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、析出強化元素としてNbを主に活用しているため、確かに優れた高強度、耐食性等の特性を満足する。しかしながら、特許文献4〜6に開示されているオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、強化能が非常に大きいため、高温での使用開始初期に、靭性の著しい低下が生じる場合がある。したがって、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼の性能を十分に活用し得る溶接金属、及びそれを有する溶接継手の開発が待望されていた。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼を溶接構造物として使用する場合に、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼の性能を十分に活用し得る、靭性の低下が抑制されるとともに、クリープ強度に優れるオーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手を提供することを目的とする。
本発明者らは、Nbを含有させた高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼溶接金属における使用中の課題有無を検討した結果、以下に述べる事項が判明した。
(a) 高温での使用初期に溶接金属の靭性が低下する。溶接金属中のNb量の増加、及びS、Sn、Pb、並びにZnのいずれか1種以上の不純物量の増加とともに、その傾向が顕著となる。
(b) 衝撃試験後の溶接金属の破面は柱状晶境界である。
(c) 溶接金属中には微細な炭窒化物が多量に析出している。
上記(a)〜(c)の判明事項から、本発明者らは、次の結論に至った。即ち、高温での使用により、溶接金属中には炭素および窒素とNbが結合し、使用の初期からNb(C,N)、及びNbCrN等の炭窒化物として粒内に多量に析出し、粒内の変形抵抗が増大する。さらに、この過程では不純物として含有されるS、Sn、Pb、及びZnが柱状晶境界に偏析する。そして、外部からの衝撃を受けた場合、その変形が不純物の偏析により脆化した粒界に集中する結果、溶接金属の靭性が低下すると考えられた。
そこで、本発明者らは、溶接金属の靭性低下の防止策について検討した。その結果、溶接金属中のNbと、Nbに比べて炭素および窒素との親和力が弱く、化合物(炭窒化物)の生成傾向の小さいVとを置換することで、高温での使用初期のNb炭窒化物の析出量を減ずることが明らかとなった。それとともに、長時間側で徐々にVの炭化物を析出させることにより、使用初期の急激な靭性低下を軽減し、かつ、長時間使用中のクリープ強度を確保し得ることが明らかとなった。加えて、溶接金属中のS、Sn、Pb、及びZnの不純物含有量を厳密に管理することが、溶接金属の靭性低下の軽減には必要であることを併せて明らかにした。具体的には、これら、S、Sn、Pb、及びZn量を、所定の関係式(式(1) [%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]}≦0.0030%)を満足するように管理することで、上記の溶接金属の靭性低下の防止が可能であることが明らかとなった。
本発明は、以上の検討を重ねることにより完成するに至ったものである。
すなわち、本発明の要旨は、以下のとおりである。
<1> 質量%で、
C:0.06%〜0.14%、
Si:0.1%〜0.8%、
Mn:0.1%〜1.8%、
P:0.025%以下、
Ni:25%〜35%、
Cr:20%〜24%、
W:2%〜4.5%、
Nb:0.05%〜0.4%、
V:0.05%〜0.4%、
N:0.1%〜0.35%、
Al:0.08%以下、
O:0.08%以下
を含み、残部がFeおよび意図的に含有させたものではない成分である不純物からなり、
かつ、前記不純物としてのS、Sn、PbおよびZnが下記式(1)を満足するオーステナイト系耐熱鋼溶接金属。
式(1) [%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]}≦0.0030%
(式(1)中、[%S]、[%Sn]、[%Pb]、及び[%Zn]は、前記不純物としてのS、Sn、Pb、及びZnの含有量(質量%)を表す。)
<2> 合金成分としてのFeに代えて、質量%で、下記の1種または2種以上の元素を含有する<1>に記載のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属。
Ti:0%〜0.25%、
Cu:0%〜4%、
Co:0%〜2%、
Mo:0%〜2%、
B:0%〜0.005%、
Ca:0%〜0.02%、
Mg:0%〜0.02%、
REM:0%〜0.06%
<3> <1>または<2>に記載のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属とオーステナイト系耐熱鋼の母材とからなる溶接継手。
<4> 前記母材が、質量%で、
C:0.04%〜0.14%、
Si:0.05%〜1%、
Mn:0.5%〜2.5%、
P:0.03%以下、
S:0.002%以下、
Ni:23%〜32%、
Cr:20%〜25%、
W:1%〜5%、
Nb:0.1%〜0.6%、
V:0.1%〜0.6%、
N:0.1%〜0.3%、
B:0%〜0.01%、
REM:0%〜0.06%
Al:0.03%以下、
O:0.02%以下、
を含み、残部がFeおよび意図的に含有させたものではない成分である不純物からなる<3>に記載の溶接継手。
本発明によれば、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼を溶接構造物として使用する場合に、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼の性能を十分に活用し得る、靭性の低下を抑制するとともに、クリープ強度に優れるオーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手が提供される。
以下、本発明のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手の一実施形態について、説明する。
なお、本明細書中において、「〜」を用いて表される数値範囲は、特に断りの無い限り、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。ただし、「超」および「未満」等の断りがある場合は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の少なくとも一方として含まないことを意味する。
<溶接金属>
本発明のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、質量%で、C:0.06%〜0.14%、Si:0.1%〜0.8%、Mn:0.1%〜1.8%、P:0.025%以下、Ni:25%〜35%、Cr:20%〜24%、W:2%〜4.5%、Nb:0.05%〜0.4%、V:0.05%〜0.4%、N:0.1%〜0.35%、Al:0.08%以下、O:0.08%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる。
そして、不純物としてのS、Sn、PbおよびZnが下記式(1)を満足する。
式(1) [%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]}≦0.0030%
(式(1)中、[%S]、[%Sn]、[%Pb]、及び[%Zn]は、不純物としてのS、Sn、Pb、及びZnの含有量(質量%)を表す。)
なお、本明細書中において、「不純物」とはオーステナイト系耐熱合金を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップまたは製造環境などから混入する成分であり、意図的に含有させたものではない成分を指す。
本発明において、オーステナイト系耐熱鋼溶接金属の化学組成を限定する理由は次のとおりである。
なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(C:0.06%〜0.14%)
C(炭素)は、オーステナイト組織を安定にするとともに、微細な炭化物を形成し、高温使用中のクリープ強度を向上させる。これらの効果を十分に得るために、Cは0.06%以上含有する必要がある。しかしながら、C含有量が過剰である場合、溶接金属中に炭化物が多量に存在するため、延性および靭性が低下する。そのため、C含有量の上限は0.14%以下とする。C含有量の望ましい範囲は0.07%〜0.13%、さらに望ましい範囲は0.08%〜0.12%である。
(Si:0.1%〜0.8%)
Si(ケイ素)は、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。その効果を得るために、Siは0.1%以上含有する必要がある。しかしながら、Siが過剰に含有された場合には、組織の安定性が低下して、靭性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Si含有量の上限は0.8%以下とする。Si含有量の望ましい範囲は0.12%〜0.78%、さらに望ましい範囲は0.15%〜0.75%である。
(Mn:0.1%〜1.8%)
Mn(マンガン)は、Siと同様、脱酸作用を有する。また、Mnは、オーステナイト組織を安定にし、クリープ強度の向上に寄与する。これらの効果を得るために、Mnは0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、Mn含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、クリープ延性の低下も生じる。そのため、Mn含有量の上限は1.8%以下とする。Mn含有量の望ましい範囲は0.15%〜1.6%、さらに望ましい範囲は0.2%〜1.4%である。
(P:0.025%以下)
P(リン)は、不純物として溶接金属に含まれ、クリープ延性を低下させる元素である。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.025%以下とする。P含有量の上限は、望ましくは0.023%以下、さらに望ましくは0.020%以下である。なお、P含有量は可能な限り低減することが望ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.0008%以上である。
(Ni:25%〜35%)
Ni(ニッケル)は、長時間使用時のオーステナイト組織の安定性を高め、クリープ強度の向上に寄与する。その効果を十分に得るために、Niは25%以上含有させる必要がある。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、Ni含有量は、上限を設けて35%以下とする。Ni含有量の望ましい範囲は25.5%〜34.5%、さらに望ましい範囲は26%〜34%である。
(Cr:20%〜24%)
Cr(クロム)は、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。また、微細な炭化物を形成してクリープ強度の確保にも寄与する。十分にその効果を得るために、Crは20%以上の含有が必要である。しかしながら、Cr含有量が24%を超えると、高温でのオーステナイト組織の安定性が劣化して著しいクリープ強度の低下を招く。したがって、Cr含有量は20%〜24%とする。Cr含有量の望ましい範囲は20.5%〜23.5%、さらに望ましい範囲は21%〜23%である。
(W:2%〜4.5%)
W(タングステン)は、マトリックスに固溶して、高温でのクリープ強度および引張強さの向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるために、Wは少なくとも2%以上の含有が必要である。しかしながら、Wは高価な元素であるため、Wの過剰の含有はコストの増大を招く。また、Wを過剰に含有しても効果が飽和する。そのため、W含有量の上限は4.5%以下とする。W含有量の望ましい範囲は2.2%〜4.3%であり、さらに望ましい範囲は2.5%〜4%である。
(Nb:0.05%〜0.4%)
Nb(ニオブ)は、炭素および窒素との親和力が強く、微細な炭窒化物として粒内に析出し、溶接金属の高温でのクリープ強度および引張強さの向上に寄与する。その効果を十分に得るために、Nbは0.05%以上の含有が必要である。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると、高温での使用初期の析出量が増加し、靭性の低下を招く。そのため、Nb含有量の上限は0.4%以下とする必要がある。Nb含有量の望ましい範囲は0.08%〜0.38%であり、さらに望ましい範囲は0.1%〜0.35%である。
(V:0.05%〜0.4%以下)
V(バナジウム)は、Nbと同様、微細な炭窒化物を形成するが、Nbに比べて、炭素および窒素との親和力が弱い。そのため、Vは使用初期の靭性にNbほど影響を与えることなく、溶接金属のクリープ強度の向上に寄与する。この効果を得るために、Vは0.05%以上の含有が必要である。しかしながら、Vを過剰に含有すると多量に析出するとともに、析出物の粗大化が著しくなり、クリープ強度および延性の低下を招く。そのため、V含有量の上限は0.4%以下とする必要がある。V含有量の望ましい範囲は、0.08%〜0.38%、さらに望ましい範囲は0.1%〜0.35%である。
(N:0.1%〜0.35%)
N(窒素)は、オーステナイト組織を安定にするとともに、固溶または窒化物として析出し、高温強度の向上に寄与する。その効果を少なからず得るために、Nは0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、Nが0.35%を超えて含有されると、多量の窒化物が析出して、靭性の低下を招く。そのため、Nの含有量は0.1%〜0.35%とする。N含有量の望ましい範囲は0.12%〜0.32%であり、さらに望ましい範囲は0.15%〜0.3%である。
(Al:0.08%以下)
Al(アルミニウム)は、母材の製造時に脱酸剤として含有され、溶接材料の製造時にも脱酸剤として含有される。その結果、溶接金属にAlが含有される。しかしながら、多量のAlを含有すると延性が低下する。このため、Al含有量の上限は0.08%以下とする必要がある。Al含有量の上限は、望ましくは0.06%以下、さらに望ましくは0.04%以下である。なお、Al含有量の下限は特に設ける必要はないが、Al含有量の極端な低減は、製造コストの増大を招く。そのため、Al含有量の望ましい下限は0.0005%以上であり、さらには望ましい下限は0.001%以上である。
(O:0.08%以下)
O(酸素)は、不純物として溶接金属中に含有される。しかしながら、O(酸素)の含有量が過剰になると、靭性および延性の劣化を招く。このため、O(酸素)含有量の上限は0.08%以下とする必要がある。O(酸素)含有量の上限は、望ましくは0.06%以下、さらに望ましくは0.04%以下である。なお、O(酸素)の含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、O(酸素)含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.0008%以上である。
(S、Sn、Pb、及びZn:[%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]}≦0.0030%)
これら元素は、不純物として溶接金属中に含まれ、高温での使用初期に柱状晶境界に偏析して靭性を低下させる。本発明らは、種々実験を重ねた結果、Sは偏析エネルギーが大きいため、粒界偏析しやすく、Sの延性低下割れを起こす影響度が、Sn、Pb、及びZnに比べて、2倍もあることを知見した。
そこで、溶接金属の靭性低下を安定して軽減するためには、式(1)([%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]})で求められる値を0.0030%以下とする必要があることを知見した。式(1)の値の上限は、望ましくは0.0025%以下、さらに望ましくは0.0020%以下である。なお、これらの不純物(S、Sn、Pb、及びZn)は可能な限り低減することが望ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、式(1)で求められる値の望ましい下限は、0.0001%以上、さらに望ましい下限は0.0002%以上である。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は上述の各元素を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成のものである。
本発明のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属は、合金成分としてのFeに代えて、質量%で、Ti:0%〜0.25%、Cu:0%〜4%、Co:0%〜2%、Mo:0%〜2%、B:0%〜0.005%、Ca:0%〜0.02%、Mg:0%〜0.02%、REM:0%〜0.06%の1種または2種以上の元素を含有してもよい。下記に、各成分について説明する。
(Ti:0%〜0.25%)
Ti(チタン)は、NbおよびVと同様、微細な炭窒化物を形成して、高温でのクリープ強度および引張強さの向上に寄与する。そのため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、Ti含有量が過剰になると、Nbと同様に使用初期に多量に析出し、靭性の低下を招く。そのため、Tiを含有する場合、Ti含有量の上限は、0.25%以下とする。Ti含有量の上限は、望ましくは0.23%以下、さらに望ましくは、0.2%以下である。なお、Tiを含有する場合、Ti含有量の望ましい下限は0.01%以上、さらに望ましい下限は0.03%以上である。
(Cu:0%〜4%)
Cu(銅)は、オーステナイト組織の安定性を高めるとともに、使用中に微細に析出して、クリープ強度の向上に寄与する。しかしながら、Cuを過剰に含有すると、延性の低下を招く。そのため、Cuを含有する場合、Cu含有量の上限は4%以下とする。Cu含有量の上限は、望ましくは、3.8%以下、さらに望ましくは、3.5%以下である。なお、Cuを含有する場合、Cu含有量の望ましい下限は0.01%以上、さらに望ましい下限は0.03%以上である。
(Co:0%〜2%)
Co(コバルト)は、NiおよびCuと同様、オーステナイト生成元素であり、オーステナイト組織の安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。しかしながら、Coは、極めて高価な元素であるため、Coの過剰の含有は大幅なコスト増を招く。そのため、Coを含有する場合、Co含有量の上限は2%以下とする。Co含有量の上限は、望ましくは、1.8%以下、さらに望ましくは、1.5%以下である。なお、Coを含有する場合、Co含有量の望ましい下限は0.01%以上、さらに望ましい下限は0.03%以上である。
(Mo:0%〜2%)
Mo(モリブデン)は、Wと同様、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度および引張強さの向上に寄与する元素である。しかしながら、Moは、過剰に含有すると組織安定性を低下させ、逆にクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、Moは高価な元素であるため、過剰の含有はコストの増大を招く。そのため、Moを含有する場合、Mo含有量の上限は2%以下とする。Mo含有量の上限は、望ましくは1.5%以下、さらに望ましくは1.2%以下である。なお、Moを含有する場合、Mo含有量の望ましい下限は0.01%以上、さらに望ましい下限は0.03%以上である。
(B:0%〜0.005%)
B(ホウ素)は、炭化物を微細に分散させることにより、溶接金属のクリープ強度を向上させるとともに、粒界を強化して靭性の向上にも寄与する元素である。しかしながら、Bは過剰に含有すると、溶接中の凝固割れ感受性を高める。そのため、Bを含有する場合、B含有量の上限は0.005%以下とする。B含有量の上限は、望ましくは、0.003%以下、さらに望ましくは、0.002%以下である。なお、Bを含有する場合、B含有量の望ましい下限は0.0003%以上、さらに望ましい下限は0.0005%以上である。
(Ca:0%〜0.02%)
Ca(カルシウム)は、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、Caの過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、Caを含有する場合、Ca含有量の上限は0.02%以下とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.015%以下、更に望ましくは0.01%以下である。なお、Caを含有する場合、Ca含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.001%以上である。
(Mg:0%〜0.02%)
Mg(マグネシウム)は、Caと同様、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、Mgの過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間変形能を劣化させる。そのため、Mgを含有する場合、Mg含有量の上限は0.02%以下とする。Mg含有量の上限は、望ましくは0.015%以下、更に望ましくは0.01%以下である。なお、Mgを含有する場合、Mg含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.001%以上である。
(REM:0%〜0.06%)
REM(希土類元素)は、CaおよびMgと同様、熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、REMの過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、REMを含有する場合、REM含有量の上限は、0.06%以下とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.04%以下、更に望ましくは0.03%以下である。なお、REMを含有する場合、REM含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.001%以上である。
なお、「REM」とはSc、Y、及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、REMは、REMの含有量が上記の範囲となるように、ミッシュメタルの形で含有させてもよい。
<溶接継手>
本発明の溶接金属と、オーステナイト系耐熱鋼の母材とにより、耐溶接高温割れ性に優れた溶接継手が得られる。溶接継手は、具体的には、継手部の溶接金属と、溶接金属を挟むオーステナイト系耐熱鋼からなる二つの母材とを有する。
なお、溶接継手の具体的形状、溶接継手を得るための溶接の具体的態様(溶接姿勢)は特に限定されず、例えば、鋼管に開先加工した後に突合せ溶接する場合、厚板に開先加工した後に突合せ溶接する場合などに適用すればよい。
以下、溶接継手を構成する母材について説明する。
<母材>
以上、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼溶接金属の化学組成について詳述したが、本発明に係るオーステナイト系耐熱鋼溶接金属を有する溶接継手を得る際に、その母材は下記の化学組成であることが望ましい。
母材の望ましい化学組成は、質量%で、C:0.04%〜0.14%、Si:0.05%〜1%、Mn:0.5%〜2.5%、P:0.03%以下、S:0.002%以下、Ni:23%〜32%、Cr:20%〜25%、W:1%〜5%、Nb:0.1%〜0.6%、V:0.1%〜0.6%、N:0.1%〜0.3%、B:0%〜0.01%、REM:0〜0.06%、Al:0.03%以下、O:0.02%以下を含有し、残部がFeおよび不純物からなる。
以下、その望ましい理由について述べる。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
(C:0.04%〜0.14%)
Cは、オーステナイト組織を安定にするとともに微細な炭化物を形成し、高温使用中のクリープ強度を向上させる。C含有量が0.04%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Cが過剰に含有された場合、炭化物が多量に析出し、クリープ延性および靭性が低下する。そのため、C含有量の上限は0.14%以下とすることがよい。C含有量の望ましい範囲は0.05%〜0.13%、さらに望ましい範囲は0.06%〜0.12%である。
(Si:0.05%〜1%)
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。Si含有量が0.05%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Siが過剰に含有された場合には、組織の安定性が低下して、靭性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、C含有量の上限は1%以下とすることがよい。Si含有量の望ましい範囲は0.08%〜0.8%、さらに望ましい範囲は0.1%〜0.5%である。
(Mn:0.5%〜2.5%)
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。また、Mnは、オーステナイト組織の安定化に寄与する。Mn含有量が0.5%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Mn含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、クリープ延性の低下も生じる。そのため、Mn含有量の上限は2.5%以下とすることがよい。Mn含有量の望ましい範囲は0.6%〜2%、さらに望ましい範囲は0.8%〜1.5%である。
(P:0.03%以下)
Pは、不純物として合金中に含まれ、溶接中に溶接熱影響部の結晶粒界に偏析して、液化割れ感受性を高める元素である。さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、P含有量の上限は0.03%以下とすることがよい。P含有量の上限は、望ましくは0.028%以下、さらに望ましくは0.025%以下である。なお、Pの含有量は可能な限り低減することが望ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.0008%以上である。
(S:0.002%以下)
Sは、Pと同様に不純物として合金中に含まれ、溶接中に溶接熱影響部の結晶粒界に偏析して液化割れ感受性を高める元素である。そのため、S含有量は、上限を0.002%以下とすると、これらを防止し得る。S含有量の上限は、望ましくは0.0018%以下、さらに望ましくは0.0015%以下である。なお、S含有量は可能な限り低減することが望ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、S含有量の望ましい下限は0.0001%以上、さらに望ましい下限は0.0002%以上である。
(Ni:23%〜32%)
Niは、長時間使用時のオーステナイト組織の安定性を確保し、クリープ強度を確保するための元素である。Ni含有量が23%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量の含有はコストの増大を招く。そのため、Ni含有量の上限は32%以下とすることがよい。Ni含有量の望ましい範囲は24%〜31.5%、さらに望ましい範囲は25%〜31%である。
(Cr:20%〜25%)
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のための元素である。また、微細な炭化物を形成してクリープ強度の確保にも寄与する。Cr含有量が20%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Cr含有量が25%を超えると、高温でのオーステナイト組織の安定性が劣化して、クリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量は20%〜25%とすることがよい。Cr含有量の望ましい範囲は20.5%〜24.5%、さらに望ましい範囲は21%〜24%である。
(W:1%〜5%)
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度および引張強さの向上に大きく寄与する元素である。W含有量が1%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Wを過剰に含有させても、その効果は飽和するか、場合によってはクリープ強度を低下させる。さらに、Wは高価な元素であるため、Wの過剰の含有はコストの増大を招く。そのため、W含有量の上限は5%以下とすることがよい。W含有量の望ましい範囲は1.2%〜4.8%であり、さらに望ましい範囲は1.5%〜4.5%である。
(Nb:0.1%〜0.6%)
Nbは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度および引張強さの向上に寄与する。Nb含有量が0.1%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靭性の低下を招く。このため、Nb含有量の上限は0.6%以下とすることがよい。Nb含有量の望ましい範囲は0.12%〜0.55%であり、さらに望ましい範囲は0.15%〜0.5%である。
(V:0.1%〜0.6%)
Vは、Nbと同様、微細な炭窒化物を形成して高温でのクリープ強度および引張強さの向上に寄与する。V含有量が0.1%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Vの含有量が過剰になると多量に析出して、クリープ延性および靭性の低下を招く。このため、V含有量の上限は0.6%以下とすることがよい。V含有量の望ましい範囲は、0.12%〜0.55%、さらに望ましい範囲は0.15%〜0.5%である。
(N:0.1%〜0.3%)
Nは、オーステナイト組織を安定にするとともに、固溶または窒化物として析出し、高温強度の向上に寄与する。N含有量が0.1%以上であれば、上記効果が有効に得られる。しかしながら、Nが過剰に含有されると、長時間使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出して、クリープ延性および靭性の低下も招く。そのため、Nの含有量の上限は0.3%以下とすることがよい。N含有量の望ましい範囲は0.12%〜0.28%であり、さらに望ましい範囲は0.15%〜0.25%である。
(B:0%〜0.01%)
Bは、粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ強度を向上させるとともに、粒界に偏析して粒界を強化するのに有効な元素であるため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、B含有量が過剰になると、溶接中の熱影響部の液化割れ感受性を高める。そのため、B含有量の上限は0.01%以下とすることがよい。B含有量の上限は、望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは、0.006%以下である。Bを含有する場合、B含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.001%以上である。
(REM:0%〜0.06%)
REMは、製造時の熱間変形能を改善する効果を有するため、必要に応じて含有してもよい。しかしながら、REMの過剰の含有は酸素と結合し、清浄性を著しく低下させて、逆に熱間変形能を害する。そのため、REM含有量の上限は0.06%以下とすることがよい。REM含有量の上限は、望ましくは0.04%以下、更に望ましくは0.03%以下である。なお、REMを含有する場合、REM含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.001%以上である。
(Al:0.03%以下)
Alは、母材の製造時に脱酸剤として含有される。しかしながら、多量のAlを含有すると鋼の清浄性が劣化し、熱間加工性が低下する。そのため、Al含有量の上限は0.03%以下とすることがよい。Al含有量の上限は、望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.02%以下である。なお、Al含有量の下限は特に設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの増大を招く。そのため、Al含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.001%以上である。
(O:0.02%以下)
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、過剰に含有すると熱間加工性が低下するとともに、靭性および延性の劣化を招く。このため、O(酸素)含有量は0.02%以下とすることがよい。O(酸素)含有量の上限は、望ましくは0.018%以下、さらに望ましくは0.015%以下である。なお、O含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、O(酸素)含有量の望ましい下限は0.0005%以上、さらに望ましい下限は0.0008%以上である。
以上、母材の主要元素について説明したが、母材には、さらに、必要に応じて、Ti:0.01%〜0.5%、Co:0.01%〜2%、Cu:0.01%〜4%、Mo:0.01%〜4%、Ca:0.0005%〜0.02%、Mg:0.0005%〜0.02%を含んでいてもよい。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
表1に示す化学組成(残部はFeおよび不純物である)を有する材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、冷間圧延、熱処理および機械加工により、板厚12mm、幅50mm、長さ120mmの板材(板材(1))を作製した。板材(1)は溶接用母材とした。
さらに、表2に示す化学組成を有する材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、熱処理および機械加工により、板厚4mm、幅200mm、長さ500mmの板材(板材(2))を作製した。板材(2)から、機械加工により、2mm角、500mm長さのカットフィラーを作製した。
[シャルピー衝撃試験]
上記の板材(1)の長手方向に、角度30°、ルート面(ルートフェイス)1mmのV開先を加工した後、市販の鋼板(JIS G 3160(2008)に規定のSM400B、厚さ25mm、幅150mm、長さ200mm)上に、被覆アーク溶接棒(JIS Z3224(1999)に規定の「DNiCrFe−3」)を用いて、四周を拘束溶接した。
その後、作製したカットフィラーを用いて、シールドガスをArとした手動ティグ溶接により開先内に積層溶接を行って溶接継手を作製した。なお、溶接に際しては、入熱を9kJ/cm〜15kJ/cmとした。
得られた溶接継手の溶接金属から切粉を採取し、化学分析を行った。表3にその結果を示す。
さらに、残った溶接継手から長手方向に50mm長さに切断し、700℃で300時間の時効熱処理を行った。その後、溶接金属にノッチを加工した2mmVノッチ フルサイズシャルピー衝撃試験片を3本採取し、20℃で衝撃試験を実施した。
そして、3本の試験片の吸収エネルギーの個値がすべて27J以上のものを「合格」、3本のうち1本でも吸収エネルギーが27J未満であったものを「不合格」とした。
[クリープ破断試験]
上記のシャルピー衝撃試験の結果が「合格」であった溶接継手については、残りの溶接したままの溶接継手から、溶接金属を平行部中央とした丸棒クリープ破断試験片を採取した。そして、700℃、177MPaの条件でクリープ破断試験を行い、その破断時間が母材の目標破断時間のおよそ80%である500時間を超えるものを「合格」とし、500時間以下であるものを「不合格」とした。
表4に、上記各試験の結果を併せて示す。
表4から、化学組成が本発明で規定する範囲にある符号A1〜A3、及びB1〜B3の溶接金属を有する溶接継手は、高温での時効熱処理後も必要な靭性を有し、かつクリープ破断時間が母材の目標破断時間の80%以上を満足することが明らかである。
これに対して、符号A4、A6、B4およびB6の溶接金属を有する溶接継手では、溶接金属の[%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]}が0.0030%を超えたため、時効熱処理後の溶接金属の靭性が必要な性能を満足しなかった。また、符号A5およびB5の溶接金属を有する溶接継手では、溶接金属のNb含有量が、本発明の範囲の上限である0.4%を超えたため、時効熱処理後の溶接金属の靭性が不芳であった。
このように、本発明の要件を満足する溶接金属は、時効熱処理後の靭性に優れるとともに、溶接構造物として必要なクリープ強度をも満足しているため、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼の性能を十分活用し得ることが分かる。
本発明を活用すれば、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼を溶接構造物として使用する際に、その性能を十分活用し得る、靭性の低下を抑制するとともに、クリープ強度に優れるオーステナイト系耐熱鋼溶接金属およびそれを有する溶接継手を提供できる。そのため、本発明の溶接金属とそれを有する溶接継手は、高窒素高ニッケル含有オーステナイト系耐熱鋼を、発電用ボイラ等、高温で使用される機器に適用される溶接構造物を構成する溶接金属とそれを有する溶接継手として有用である。

Claims (4)

  1. 質量%で、
    C:0.06%〜0.14%、
    Si:0.1%〜0.8%、
    Mn:0.1%〜1.8%、
    P:0.025%以下、
    Ni:25%〜35%、
    Cr:20%〜24%、
    W:2%〜4.5%、
    Nb:0.05%〜0.4%、
    V:0.05%〜0.4%、
    N:0.1%〜0.35%、
    Al:0.08%以下、
    O:0.08%以下
    を含み、残部がFeおよび意図的に含有させたものではない成分である不純物からなり、
    かつ、前記不純物としてのS、Sn、PbおよびZnが下記式(1)を満足するオーステナイト系耐熱鋼溶接金属。
    式(1) [%S]+0.5×{[%Sn]+[%Pb]+[%Zn]}≦0.0030%
    (式(1)中、[%S]、[%Sn]、[%Pb]、及び[%Zn]は、前記不純物としてのS、Sn、Pb、及びZnの含有量(質量%)を表す。)
  2. 合金成分としてのFeに代えて、質量%で、下記の1種または2種以上の元素を含有する請求項1に記載のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属。
    Ti:0%〜0.25%、
    Cu:0%〜4%、
    Co:0%〜2%、
    Mo:0%〜2%、
    B:0%〜0.005%、
    Ca:0%〜0.02%、
    Mg:0%〜0.02%、
    REM:0%〜0.06%
  3. 請求項1または2に記載のオーステナイト系耐熱鋼溶接金属とオーステナイト系耐熱鋼の母材とからなる溶接継手。
  4. 前記母材が、質量%で、
    C:0.04%〜0.14%、
    Si:0.05%〜1%、
    Mn:0.5%〜2.5%、
    P:0.03%以下、
    S:0.002%以下、
    Ni:23%〜32%、
    Cr:20%〜25%、
    W:1%〜5%、
    Nb:0.1%〜0.6%、
    V:0.1%〜0.6%、
    N:0.1%〜0.3%、
    B:0%〜0.01%、
    REM:0%〜0.06%
    Al:0.03%以下、
    O:0.02%以下、
    を含み、残部がFeおよび意図的に含有させたものではない成分である不純物からなる請求項3に記載の溶接継手。
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