JP5218200B2 - 溶接金属および溶接材料 - Google Patents

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Description

本発明は、溶接金属および溶接材料に関する。詳しくは、エネルギー輸送機器における高圧ガス配管など各種部材の素材として適用される鋼やオーステナイト系材料などの溶接、特に高強度鋼やオーステナイト系材料の溶接に使用され、高強度および溶接性としての「耐溶接割れ性」に優れた溶接金属を得ることができる溶接材料および上記溶接された部材の溶接金属に関する。
近年、水素や天然ガスなどをエネルギーとして利用する輸送機器の実用化研究が活発に進められている。その実用化に際しては、これらのガスを高圧で貯蔵、輸送できる使用環境の整備が併せて必要であり、使用される材料には、高強度を有することが求められるため、高強度化の取り組みがなされている。
例えば、母材については、高Mn化することでNの溶解度を高め、Vを添加したうえで必要に応じて適切な熱処理を施すことにより高強度化を試みたオーステナイト系材料の提案がなされている。具体的には、特許文献1および特許文献2に、ガスの高圧での貯蔵および輸送用部材の素材として使用可能な引張強さで1GPa以上の高強度材料が開示されている。
なお、一般に、構造物として使用する場合には上述した高強度オーステナイト系材料は溶接により組み立てられる。そして、溶接の際の溶接材料としては、母材をそのまま使用することが考えられる。
しかしながら、オーステナイト系材料の溶接金属は一般的に溶接時の高温割れ感受性が高い。このため、溶接金属には高温割れの防止が求められることになる。加えて、母材の場合、溶製後の圧延・熱処理による組織の調整を受けて高温強度の確保が図られるのに対し、溶接金属はほとんどの場合、凝固ままの組織で使用される。
したがって、母材をそのまま溶接材料として使用する場合には、耐高温割れ性が十分でないばかりか、母材と同等の高い強度を得ることは極めて困難になる。このため、溶接後に「後熱処理」を実施することによって微細な粒子を析出させ、少なくとも母材と同じかそれ以上に、溶接金属を強化する必要が生じる。
なお、1GPa以上の引張強さを有する溶接材料としては、例えば、AWS A5.14−2005のERNiFeCr−2が既に実用化されている。また、特許文献3および特許文献4には、Al、TiおよびNbを積極活用することによって、800MPaを超える引張強さを有する溶接材料(溶接金属)が提案されている。上記特許文献4には、Tiおよび/またはAlを適正量含有させることで凝固割れを防止できることも併せて示されている。
しかしながら、これらの溶接材料についても、高強度化を果たすためには、溶接後に少なくとも120min以上の「後熱処理」を行うことが必要である。したがって、実際の大型構造物を考えた場合、上記のような長時間の溶接後熱処理の実施は、その適用に大きな制約を受けるとともに、製造コストも極度に増大する。
WO2004/083476号公報 WO2004/083477号公報 特開平5−192785号公報 WO2004/110695号公報
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、短時間の溶接後熱処理で高強度が得られ、かつ、優れた耐溶接割れ性をも具備する溶接金属とそのような溶接金属を形成するための溶接材料とを提供することを目的とするものであり、特に、近年開発が進みつつある引張強さが1GPa以上の高強度鋼や高強度オーステナイト系材料を母材とする溶接構造物をも構成できる溶接金属と前記高強度母材の溶接にも適用できる溶接材料を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々の検討を実施した。その結果、下記(a)の知見を得た。
(a)溶接金属において、高強度を達成するためには、Niの含有量を特定の範囲に規制するとともにTiおよびAlを含有させ、溶接後熱処理を施すことによって、Ni3TiあるいはNi3(Al、Ti)による析出強化を活用することが有効である。しかしながら、これらの元素を多量に含有させた場合においても高強度化を果たすためには、長時間の溶接後熱処理が必要となる。
そこで、本発明者らは、短時間、特に、120min以下の短時間での溶接後熱処理での高強度化および溶接性としての「耐溶接割れ性」を両立させるために、先ず、Tiの含有量を種々に変化させて調査、検討を行った。なお、この際の溶接金属については質量%で18〜38%のNiを含むとともに、質量%で、0.1〜0.6%のVを含むものとした。
その結果、下記(b)および(c)の事項が明らかになった。
(b)質量%で、Tiを2.0〜6.0%含有させた場合、溶接後熱処理を実施すると、Ni3Tiがマトリックスに微細に析出して強度が増大する。
(c)Tiを単独で含有させただけの場合には、上記したNi3Tiによる析出強化効果を得るには、長時間の熱処理が必要である。しかも、溶接金属に「凝固割れ」および「延性低下割れ」が発生しやすい。
そこでさらに、質量%で、Tiを2.0〜6.0%含有させた場合における各種元素の影響について種々の調査、検討を行った。その結果、下記(d)の重要な知見を得た。
(d)質量%で、18〜38%のNiを含む溶接金属について、短時間の溶接後熱処理での高強度化および溶接性としての「耐溶接割れ性」を両立させるためには、質量%で、Tiを2.0〜6.0%含有させたうえで、C、CrおよびAlの含有量をそれぞれ、質量%で、C:0.16〜0.35%、Cr:9〜22%およびAl:0.05〜0.65%とする必要がある。
なお、上記(d)の理由は次の<1>〜<6>のように考えられる。
<1>質量%で、0.05%以上のAlを含有させることによって、遷移相としてのNi3(Al、Ti)が短時間で析出し、その後、最終安定相であるNi3Tiとなるため、より短時間の熱処理で強度が向上する。
<2>しかし、上記した量のAlとTiだけを含有させた場合には、特に、Tiは溶接金属の凝固時に凝固偏析しやすい元素であることから、凝固割れ感受性が大きく増大する。
<3>CとCrを含有させることによって、溶接金属の凝固過程でTiを固溶するM236とオーステナイトの共晶凝固を生じさせ、凝固末期の液相の消失を促進させるとともに、液相中に凝固偏析して融点を降下させる有害なTiの量を軽減することになるので、凝固割れを防止することができる。
<4>凝固中に晶出したM236は、凝固後にはデンドライト境界にオーステナイトと層状組織を形成して存在する。このため、最終凝固界面積を増大させて、不純物元素の偏析を軽減する。加えて、特定面への応力集中も軽減することになるため、不純物元素が偏析して弱化した粒界に応力が作用して生じる延性低下割れの防止にも効果を有する。
<5>しかしながら、M236中に多量のTiが固溶すると、Ni3TiまたはNi3(Al、Ti)の析出駆動力が小さくなって、長時間の熱処理が必要となる。さらに、M236を晶出させることにより、凝固割れおよび延性低下割れの防止は可能となるものの、M236は、マトリックスであるオーステナイト相に比べて延性に乏しいため、溶接金属における延性低下が生じる。
<6>上述した観点から、CおよびCrの含有量を特定の範囲、つまり、質量%で、C:0.16〜0.35%およびCr:9〜22%の範囲に調整する必要がある。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)に示す溶接金属および(2)に示す溶接材料にある。
(1)質量%で、C:0.16〜0.35%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:18〜38%、Cr:9〜22%、Ti:2.0〜6.0%、Al:0.05〜0.65%、V:0.1〜0.6%およびN:0.15%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下であることを特徴とする溶接金属。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、金属材料を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等の原料、その他種々の要因によって混入するものを指す。
上記の溶接金属は、残部としての「Feおよび不純物」におけるFeの一部に代えて、質量%で、Nb:5%以下を含むことができる。
また、この溶接金属は、ビッカース硬さ(以下、「HV硬さ」という。)が320以上であることが望ましい。
なお、「溶接金属」とは、溶接中に母材の一部と溶接材料が溶融混合し、凝固した部分を指す。
(2)質量%で、C:0.16〜0.35%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:18〜38%、Cr:9〜22%、Ti:2.0〜6.0%、Al:0.05〜0.65%、V:0.1〜0.6%およびN:0.15%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下であることを特徴とする溶接材料。
上述のとおり、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、金属材料を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等の原料、その他種々の要因によって混入するものを指す。
この溶接材料は、残部としての「Feおよび不純物」におけるFeの一部に代えて、質量%で、Nb:5%以下を含むことができる。
ここで、上記(2)の「溶接材料」を使用して溶接が施される部材(換言すれば、「溶接構造物」の母材)、または、「溶接構造物」の母材に溶接が施されて上記(1)の「溶接金属」が形成される際のその母材として、特に、1GPa以上の引張強さを有する高強度オーステナイト系材料や高強度鋼を用いた場合に、本発明の有効性が顕著に認められ、板状、棒状や管状など溶接接合に供することができさえすれば、その母材はどのような形状でも構わない。
本発明の溶接金属は、短時間の溶接後熱処理で高強度が確保でき、かつ、優れた耐溶接割れ性も具備するものであるので、本発明の溶接金属を有する溶接構造物は、エネルギー輸送機器における高圧ガス配管など各種の溶接部材として好適に用いることができる。なお、本発明の溶接金属は、本発明の溶接材料を使用して溶接することによって得ることができる。
実施例で用いた溶接母材用鋼板の長手方向に施した開先形状を説明する図である。
以下、本発明の溶接金属および溶接材料に含まれる各成分元素の作用効果とその含有量の限定理由について、溶接金属と溶接材料とを区別せずに説明する。なお、以下の説明において、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
C:0.16〜0.35%
Cは、Ti、AlおよびCrとともに本発明の根幹に係る元素で、凝固割れおよび延性低下割れを防止する作用を有する。すなわち、Cは、Cr、Ti等と結合し、溶接金属が凝固する際に共晶炭化物を生成して、液相の消失を早めるとともに、最終凝固部の組織をM236とオーステナイトの層状組織とする。その結果、液相の残存形態が面状から点状に変化するとともに、特定面への応力集中が抑制され、また、不純物の偏析サイトとなる最終凝固界面積が増大するので、凝固割れおよび延性低下割れを防止することができる。上記のCの効果を十分に得るためには、0.16%以上のC含有量が必要である。一方、Cの含有量が過剰になり、特に、0.35%を超えると、凝固の際に炭化物とならないCが増加し、却って液相の融点が低下して凝固割れ感受性が増大する。さらには、多量の炭化物を形成するため、溶接金属の延性が低下するし、炭化物として存在するTi量が増えるので、強化に寄与するNi3TiあるいはNi3(Al、Ti)の析出駆動力の低下が生じる。そのため、Cの含有量は0.16〜0.35%とする。なお、C含有量の望ましい下限は0.18%であり、望ましい上限は0.32%である。
Si:0.5%以下
Siは、脱酸剤として添加される。しかしながら、Siの含有量が多くなって0.5%を超えると、溶接金属の凝固時に柱状晶粒界に偏析し、液相の融点を下げ、凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Siの含有量を0.5%以下とする。Si含有量は、望ましくは、0.4%以下で、さらに望ましくは、0.3%以下である。なお、Siの含有量について特に下限を設ける必要はないが、過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、Si含有量の望ましい下限は0.01%である。少なくともSiを0.01%含んでおれば、脱酸効果を得ることができる。
Mn:2.0%以下
Mnは、Siと同様、脱酸剤として添加される。しかしながら、Mnの含有量が多くなって2.0%を超えると、延性および靱性の低下を招く。そのため、Mnの含有量を2.0%以下とする。Mn含有量は、望ましくは、1.8%以下で、さらに望ましくは、1.6%以下である。なお、Mnの含有量について特に下限を設ける必要はないが、過度の低減は、脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性が低下するとともに、製造コストの増大を招く。そのため、Mn含有量の望ましい下限は0.01%である。少なくともMnを0.01%含んでおれば、脱酸効果を得ることができる。
Ni:18〜38%
Niは、安定なオーステナイト組織を得るばかりでなく、Ni3(Al、Ti)あるいはNi3Tiとして微細に分散し、溶接金属の強度を大きく向上させる作用を有する元素である。上記のNiの効果を得るためには、18%以上のNi含有量が必要である。一方、Niの含有量が多くなって38%を超えると、接ガス環境の種類によっては脆化を招く。したがって、Niの含有量は18〜38%とする。なお、Ni含有量の望ましい下限は20%であり、望ましい上限は35%である。
Cr:9〜22%
Crは、耐食性を改善する作用のある元素であるとともに、C、TiおよびAlとともに本発明の根幹に係る元素で、凝固割れおよび延性低下割れを防止する作用を有する。すなわち、Crは、溶接金属の凝固過程でTiを固溶するM236とオーステナイトの共晶凝固を生じさせ、凝固末期の液相の消失を促進させるとともに、液相中に凝固偏析して融点を降下させる有害なTiの量を軽減することで凝固割れを防止する作用を有する。加えて、上記のM236は、凝固後にはデンドライト境界にオーステナイトと層状組織を形成して存在するため、不純物元素の偏析の軽減および特定面への応力集中の軽減がなされて、延性低下割れが防止できる。これらの効果を十分に確保するとともに、M236中へのTiの固溶量を適正にし、短時間の溶接後熱処理で強化に寄与するNi3TiおよびNi3(Al、Ti)を析出させるためには、本発明の上記18〜38%というNi含有量の範囲ではCrの含有量を9%以上とする必要がある。しかしながら、Crの含有量が過剰になって22%を超えると、M236が多量に生成して溶接金属延性の低下を招く。したがって、Crの含有量は9〜22%とする。なお、Cr含有量の望ましい下限は11%であり、望ましい上限は20%である。
Ti:2.0〜6.0%
Tiは、C、Al等とともに本発明の根幹に係る元素である。すなわち、Tiは、Ni3TiあるいはNi3(Al、Ti)として微細に析出し、溶接金属の強度を増大させる作用を有する。さらに、Tiが微細な炭窒化物として粒内に析出することによっても、溶接金属を少なからず強化することができる。上記のTiの効果を得るためには、2.0%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になって6.0%を超えると、上記の強化効果は飽和するし、Ni3TiあるいはNi3(Al、Ti)が粗大化して、溶接金属延性の低下を招く。そのため、Tiの含有量は2.0〜6.0%とする。なお、Ti含有量の望ましい下限は2.5%であり、望ましい上限は5.5%である。
Al:0.05〜0.65%
Alは、Ti等とともに本発明の根幹に係る元素の一つである。すなわち、Alを含有させることにより、最終安定相であるNi3Tiに至る遷移相としてのNi3(Al、Ti)を生成し、結果として短時間の溶接後熱処理で溶接金属の強度向上を可能にする。この効果を得るためには、0.05%以上のAl含有量が必要である。しかしながら、Alの含有量が過剰になって0.65%を超えると、溶接中に酸化スラグとして浮上してしまうため、その効果は飽和するばかりか、溶接ビードの美観や溶接作業性を損なうことになる。そのため、Alの含有量は0.05〜0.65%とする。なお、Al含有量の望ましい下限は0.10%であり、望ましい上限は0.60%である。
V:0.1〜0.6%
Vは、微細な炭窒化物として粒内に析出することによって溶接金属を強化する作用を有する元素である。この効果を得るためには、0.1%以上のV含有量が必要である。しかしながら、Vの含有量が過剰になって0.6%を超えると前記の効果が飽和してコストが嵩むばかりであるし、炭窒化物の粗大化が生じて却って強化効果が損なわれることもある。したがって、Vの含有量は0.1〜0.6%とする。なお、V含有量の望ましい下限は0.15%であり、望ましい上限は0.55%である。
N:0.15%以下
Nは、マトリックスに固溶するとともに微細な窒化物を形成して溶接金属の強度を高める作用を有する元素である。しかしながら、Nの含有量が過剰になって0.15%を超えると、TiNやAlNとして析出し、高強度化に必要なNi3(Al、Ti)やNi3Tiの析出を抑制してしまう。そのため、Nの含有量を0.15%以下とする。なお、Nの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製鋼コストの著しい増大を招く。そのため、N含有量の望ましい下限は0.001%である。少なくともNを0.001%含んでおれば、強度向上効果を得ることができる。
本発明の溶接金属の1つは、以上に述べた元素のほか、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するものである。また、本発明の溶接材料の1つも、以上に述べた元素のほか、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するものである。
既に述べたように、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、金属材料を工業的に製造する際に、鉱石あるいはスクラップ等の原料、その他種々の要因によって混入するものを指す。なお、不純物中の特定元素の含有量規制については後述する。
本発明の溶接金属および溶接材料の他の一つは、いずれも、上記残部としての「Feおよび不純物」におけるFeの一部に代えて、5%以下のNbを含有する化学組成を有するものである。
以下、任意元素であるNbの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
Nb:5%以下
Nbは、Ni3Nbとして微細に析出し、溶接金属の強度を増大させる作用を有する。さらに、Nbが微細な炭窒化物として粒内に析出することによっても、溶接金属を少なからず強化することができる。したがって、強度増大のためにNbを含有してもよい。しかしながら、5%を超える量のNbを含有させても上記の効果が飽和してコストが嵩むばかりである。したがって、Nbを含有させる場合の含有量を5%以下とした。なお、Nbの含有量は4%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNbの強度向上効果を確実に得るためには、Nb含有量の下限を0.1%とすることが好ましく、0.5%とすればさらに好ましい。
次に、不純物元素の含有量規制について説明する。
本発明の溶接金属および溶接材料においては、不純物中のO、PおよびSの含有量をそれぞれ、下記のとおりに規制する。
O:0.02%以下
Oは、不純物として存在し、多量に含まれると、溶接材料の加工性や溶接金属の延性を劣化させる。そのため、Oの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、0.02%以下であれば、本発明の溶接金属や溶接材料の特性に顕著な劣化は認められない。したがって、Oの含有量を0.02%以下とする。
P:0.01%以下
Pは、不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させてしまう。さらに、結晶粒界に偏析して延性低下割れ感受性をも高めてしまう。そのため、Pの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、P含有量の極度の低減は製鋼コストの増大を招くし、0.01%以下であれば、本発明の溶接金属や溶接材料の特性に顕著な劣化は認められない。したがって、Pの含有量を0.01%以下とする。
S:0.01%以下
Sは、Pと同様に不純物として含まれ、溶接金属の凝固時に最終凝固部の融点を低下させ、凝固割れ感受性を著しく増大させてしまう。さらに、結晶粒界に偏析して延性低下割れ感受性をも高めてしまう。そのため、Sの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、Pの場合と同様に、S含有量の極度の低減は製鋼コストの増大を招くし、0.01%以下であれば、本発明の溶接金属や溶接材料の特性に顕著な劣化は認められない。したがって、Sの含有量を0.01%以下とする。
なお、溶接構造物としては、母材の一部と溶接材料が溶融混合した結果得られた「溶接金属」の化学組成が上述した要件を満たしておればよい。このため、「溶接材料」の化学組成については、用いる「母材」の化学組成に応じて選ぶ必要はあるが、「溶接金属の組成における母材組成の割合」として定義される「母材希釈率」は開先形状や溶接方法・溶接条件により異なるが、一般的には30〜60%程度である。したがって、前述の(2)に記載した溶接材料の化学組成範囲において、母材による希釈を考慮した上で、溶接材料の組成を選定することが望ましい。
なお、母材としては、1GPa以上の引張強さを有する高強度材料が好適であり、その形状は、板状、棒状や管状など溶接接合に供することができさえすればどのような形状でも構わないことは既に述べたとおりである。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有する材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、熱処理および機械加工により、板厚10mm、幅50mm、長さ100mmの鋼板を溶接母材用として作製した。
また、同じインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延および機械加工により、外径1.2mm、長さ1000mmの溶接ワイヤ(溶接材料)を作製した。
Figure 0005218200
上記の溶接母材用鋼板の長手方向に、図1に示す開先加工を施して、厚さ25mm、幅200mm、長さ200mmの市販のSM400A鋼板上に、JIS Z 3224(1999)に記載された「DNiCrFe−3」の被覆アーク溶接棒を用いて四周を拘束溶接した。
次いで、上記の溶接母材用鋼板に施した開先内に、この溶接母材用鋼板と同じ化学組成を有する前述の外径1.2mmの溶接ワイヤを用いて、TIG溶接により平均入熱を約10kJ/cmとして多層溶接を行った。なお、このTIG溶接の際には拘束されているために、溶接による熱応力が生じて割れが発生しやすくなる。
溶接施工後、溶接金属部を中央部に有するミクロ試験片、側曲げ試験片および時効硬さ試験片を採取し、それぞれの試験に供した。
ミクロ試験片は、バフ研磨にて鏡面仕上げした後、光学顕微鏡にて100〜500倍の倍率にて溶接金属部を全て観察し、「凝固割れ」および「延性低下割れ」の発生有無を観察した。なお、「凝固割れ」および「延性低下割れ」の双方ともが発生しないことを目標とした。
側曲げ試験片は、板厚の2倍の曲げ半径で180゜曲げを行い、溶接金属の割れ発生有無および延性を調べた。なお、割れ発生がないことを目標とした。
加えて、時効硬さ試験片を用いて溶接後熱処理を模擬した時効熱処理を行い、試験力を98Nとして、HV硬さ試験を行った。なお、時効熱処理は750℃での時間が1〜180minの範囲で行い、ASTM E140に記載の換算式から溶接金属の目標引張強さである1GPaに相当するHV硬さ320に到達するのに必要な時効時間を調査した。そして、時効時間が120min以下であることを目標とした。
表2に、ミクロ試験片における「凝固割れ」および「延性低下割れ」の発生有無の観察結果、側曲げ試験片における割れ発生有無の観察結果ならびに750℃で時効熱処理した場合のHV硬さ320に到達するのに必要な時間を示す。
Figure 0005218200
表2から、試験番号1〜5における化学組成が本発明で規定する範囲にある鋼の場合、凝固割れおよび延性低下割れのない健全な溶接継手が得られ、かつ、十分な曲げ延性も有することが明らかである。加えて、60min以下という短時間の時効熱処理によって溶接金属のHV硬さが320以上となり、短時間の溶接後熱処理で溶接金属の強化が可能であることがわかる。
これに対して、試験番号6におけるCおよびTiの含有量が本発明で規定する範囲から外れた鋼の場合、凝固割れおよび延性低下割れが発生し、しかも、側曲げ試験片に割れが生じて曲げ延性にも劣っていた。これは、M236の生成量が少なく、凝固過程での液相の消失促進の効果が得られず、かつ、偏析サイトの増大による不純物元素の分散が十分でないことに基づくものである。さらに、この試験番号6における鋼の場合、Tiの含有量が本発明で規定する範囲を下回っていたため、180minの時効熱処理を行っても溶接金属は目標とする硬さが得られなかった。
試験番号7におけるAlの含有量が本発明で規定する範囲から外れた鋼の場合、750℃での時効熱処理で溶接金属はHV320という目標硬さまで硬化したものの180minという長時間の時効熱処理が必要であった。
試験番号8におけるCの含有量が本発明で規定する上限から外れた鋼の場合、側曲げ試験片に割れが生じて曲げ延性に劣っていた。これは、過剰のM236が生成したことに基づく。
本発明の溶接金属は、短時間の溶接後熱処理で高強度が確保でき、かつ、優れた耐溶接割れ性も具備するものである。このため、本発明の溶接金属を有する溶接構造物は、エネルギー輸送機器における高圧ガス配管など各種の溶接部材として好適に用いることができる。なお、本発明の溶接金属は、本発明の溶接材料を使用して溶接することによって得ることができる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.16〜0.35%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:18〜38%、Cr:9〜22%、Ti:2.0〜6.0%、Al:0.05〜0.65%、V:0.1〜0.6%およびN:0.15%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下であることを特徴とする溶接金属。
  2. 残部としてのFeの一部に代えて、質量%で、Nb:5%以下を含むことを特徴とする請求項1に記載の溶接金属。
  3. ビッカース硬さが320以上であることを特徴とする請求項1または2に記載の溶接金属。
  4. 質量%で、C:0.16〜0.35%、Si:0.5%以下、Mn:2.0%以下、Ni:18〜38%、Cr:9〜22%、Ti:2.0〜6.0%、Al:0.05〜0.65%、V:0.1〜0.6%およびN:0.15%以下を含み、残部がFeおよび不純物からなり、かつ、不純物中のO、PおよびSがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.01%以下およびS:0.01%以下であることを特徴とする溶接材料。
  5. 残部としてのFeの一部に代えて、質量%で、Nb:5%以下を含むことを特徴とする請求項4に記載の溶接材料。
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