JP6642282B2 - オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法に関する。
近年、化石燃料に代わるエネルギーとして、水素をエネルギーとして利用する輸送機器の実用化研究が進められている。その実用化に際しては、水素を高圧で貯蔵、輸送できる使用環境(以下、水素設備ともいう。)の整備が併せて必要である。水素設備は例えば、高圧水素ガス用機器や液体水素用機器等である。水素設備に使用される材料には、耐水素脆化特性が要求される。
国際公開第2004/083476号、国際公開第2004/083477号、国際公開第2004/110695号には、高強度のオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。これらの文献では、高Mn化することでNの溶解度を高め、かつVを含有させることにより、あるいはVとNbとを複合して含有させることにより、Nによる固溶強化及び窒化物による析出強化を活用することが提案されている。
オーステナイト系ステンレス鋼を構造物として使用する場合、溶接による組み立てが必要であり、溶接部にも母材と同等の強度が要求される。特開平5−192785号公報、特開2010−227949号公報、及び前掲の国際公開第2004/110695号には、Al、Ti及びNbを積極的に活用することにより、800MPaを超える引張強さを有する溶接継手が開示されている。
これらの溶接継手は、高強度化のために溶接後熱処理を必要とする。しかし、大型の構造物では、長時間の溶接後熱処理は大きな制約になるとともに、製造コストの増大を招く場合がある。国際公開第2013/005570号には、溶接材料のN含有量等を管理することで、溶接金属のN含有量を増大させて、溶接後熱処理をしなくても高強度が得られるようにした溶接継手が開示されている。
特開平9−137255号公報には、溶接施工性が改善されたオーステナイト系ステンレス鋼が開示されている。
国際公開第2004/083476号 国際公開第2004/083477号 国際公開第2004/110695号 国際公開第2012/132992号 特開平5−192785号公報 特開2010−227949号公報 国際公開第2013/005570号 特開平9−137255号公報
実際の構造物では、すべての部位が上記のような高強度のオーステナイト系ステンレス鋼で構成されている必要はなく、使用部位によっては、異なるオーステナイト系ステンレス鋼が溶接される場合もある。この場合、溶接継手に対しては、高強度は要求されない。すなわち、異種溶接継手の場合、強度の低い方の母材と同等の強度があればよい。しかし、水素環境下の脆化特性には優れることが要求される。
薄肉部材(例えば、厚さが3mm以下の部材)を溶接する場合等、溶接材料の使用が困難な場合がある。この場合、溶接材料を用いずに、鋼材同士を突き合わせてガスタングステンアーク溶接によって溶接する。溶接材料を用いずに溶接すると、突き合わせ面に未溶融部分が欠陥として残存し、必要な強度が得られない場合がある。
国際公開第2004/083476号、国際公開第2004/083477号、国際公開第2004/110695号、国際公開第2012/132992号、特開平5−192785号公報、特開2010−227949号公報、及び国際公開第2013/005570号では、溶接施工性に関する検討はされていない。
特開平9−137255号公報には、Al含有量に応じてO含有量を調整することによって、溶接施工性を改善できると記載されている。しかし、AlはNとの親和力が強いため、Nを積極的に含有させたオーステナイト系ステンレス鋼にこの技術を適用しても、十分な効果が得られない場合がある。
本発明の目的は、溶接材料を用いることなく、必要な強度及び耐水素脆化特性が得られるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法を提供することである。
本発明の一実施形態による溶接継手の製造方法は、化学組成が、質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.2〜1.2%、Mn:2.5〜6.5%、Ni:8〜15%、Cr:19〜25%、Mo:0.01〜4.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、Al:0.05%未満、N:0.15〜0.45%、Ti:0〜0.5%、Cu:0〜3.0%、B:0〜0.01%、残部:Fe及び不純物であり、前記不純物としてのO、P、Sがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.05%以下、及びS:0.04%以下である第1部材を準備する工程と、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びNを含むオーステナイト系ステンレス鋼であって、式(1)で規定されるNieqが27%以上である第2部材を準備する工程と、Arガス、Nガス、ArとNとの混合ガス、ArとHとの混合ガス、及びArとNとHとの混合ガスのいずれかをシールドガスとして、溶接材料を用いずにガスタングステンアーク溶接によって前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程とを備え、
前記ガスタングステンアーク溶接の入熱Qが7kJ/cm以下であり、かつ、下記の式(2)を満たす。
Nieq=Ni+Mo+Mn+0.6Cr+0.3Si+12(C+N)・・・(1)
Q≧−0.18[H]+4.8・・・(2)
ただし、式(1)中の各元素記号には、前記第2部材の各元素の含有量が質量%で代入される。式(2)において、Qの単位はkJ/cmであり、[H]には前記シールドガス中のHの混合率が体積%で代入される。
本発明によれば、溶接材料を用いることなく、必要な強度及び耐水素脆化特性が得られるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法が得られる。
図1は、溶接母材用鋼板の開先加工を示す模式図である。
本発明者らは、上記の課題を解決するために、詳細な検討を行った。その結果、まず、以下の事項について確認できた。
厚さの薄い部分を、溶接材料を使用せずにガスタングステンアーク溶接によって溶接して溶接する場合、溶接能率の観点から、「溶接線」と称される仮定線を形成する部位(以下、被溶接線という。)を1回溶接して完了するのが一般的である。
質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.2〜1.2%、Mn:2.5〜6.5%、Ni:8〜15%、Cr:19〜25%、Mo:0.01〜4.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、Al:0.05%未満、N:0.15〜0.45%等を含有するオーステナイト系ステンレス鋼(第1部材)と、別のオーステナイト系ステンレス鋼(第2部材)とを、溶接材料を用いずにガスタングステンアーク溶接によって溶接すると、溶接金属の強度が第2部材を下回ってしまう場合がある。すなわち、オーバマッチ継手にすることができない場合がある。これは、溶接中に溶融池からNが飛散し、溶接金属のN含有量が減少するためと考えられる。
なお、本明細書において、「溶接材料」とは、溶加材、すなわち溶接中に付加する材料(溶接棒や溶接ワイヤ等)を意味し、「溶接金属」とは、溶接部の一部で、溶接中に溶融凝固した金属を意味する。
本発明者らは、この問題を解決するため、溶接継手の製造方法の適正化についての詳細な検討を行った。その結果、下記(a)〜(c)の知見を得た。
(a)上述のように、溶接金属の強度の低下は、溶接中に溶融池からNが飛散することが原因と考えられる。これを抑制するためには、溶接時の入熱を小さくすればよい。入熱を小さくすれば、溶融池の面積が小さくなり、Nの飛散を抑制することができる。
一方、溶接材料を用いない溶接において入熱を小さくすると、溶け込み不足が起こる場合がある。溶け込み不足が起こると、突き合わせ面である被溶接線上に未溶融部が生じ、溶接継手の強度が低下する。
したがって、上記化学組成のオーステナイト鋼を、溶接材料を用いないで溶接するためには、入熱を適切に管理する必要がある。具体的には、溶接時の入熱を4.8〜7kJ/cmの範囲に管理すれば、溶け込み不足及びNの飛散を抑制することができる。
(b)シールドガスにHを混合させると、溶け込み深さが大きくなり、より小さい入熱で溶接が可能になる。具体的には、入熱Qが7kJ/cm以下であり、かつ、下記を満たすようにすれば、溶け込み不足を抑制することができる。
Q≧−0.18[H]+4.8…(1)
ただし、Qの単位はkJ/cmであり、[H]にはシールドガス中のHの混合率が体積%で代入される。
(c)シールドガスにNを混合させると、溶融池からのNの飛散を抑制できるとともに、溶接金属中へNを補填することができる。そのため、溶接金属のN含有量をより高くすることができ、より高強度の溶接金属を得ることができる。
以上の知見に基づいて、本発明は完成された。以下、本発明の一実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法について詳述する。
本発明の一実施形態によるオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法は、第1部材及び第2部材を準備する工程と、第1部材と第2部材とをガスタングステンアーク溶接によって溶接する工程とを備える。
[第1部材及び第2部材を準備する工程]
以下の説明において、元素の含有量の「%」は、質量%を意味する。また、以下の説明において、第1部材と第2部材とを区別せずに「母材」と呼ぶ場合がある。
[第1部材]
第1部材は、以下に説明する化学組成を有する。
C:0.005〜0.1%
炭素(C)は、オーステナイトを安定化するのに有効な元素である。この効果を十分に得るためには、C含有量を0.005%以上にする必要がある。しかしながら、C含有量が高すぎると、溶接時の加熱により粒界に炭化物が形成され、鋼の耐食性及び靱性が低下する。そのため、C含有量は0.005〜0.1%である。C含有量の下限は、好ましくは0.008%である。C含有量の上限は、好ましくは0.08%である。
Si:0.2〜1.2%
シリコン(Si)は、脱酸剤として有効な元素であるとともに、耐食性の向上に有効な元素である。Siはさらに、母材製造時にNの溶解度を大きくして、鋼の強度を高めるのに間接的に寄与する。Si含有量が0.2%未満だと、この効果が十分に得られない。しかしながら、Si含有量が高すぎると、Ni、Cr等と金属間化合物を形成し、熱間加工性を著しく低下させる場合がある。また、溶接金属においては凝固時に柱状晶境界に偏析して液層の融点を下げ、凝固割れ感受性を高める場合がある。そのため、Si含有量は0.2〜1.2%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.25%である。Si含有量の上限は、好ましくは1.0%である。
Mn:2.5〜6.5%
マンガン(Mn)は、脱酸剤として有効な元素であるとともに、オーステナイトを安定化するのにも有効な元素である。Mnはさらに、母材製造時にNの溶解度を大きくして、強度を高めるのに間接的に寄与する。この効果を十分に得るためには、Mn含有量を2.5%以上にする必要がある。一方、Mn含有量が高すぎると、靱性が低下する。そのため、Mn含有量は2.5〜6.5%である。Mn含有量の下限は、好ましくは2.7%である。Mn含有量の上限は、好ましくは6%である。
Ni:8〜15%
ニッケル(Ni)は、安定なオーステナイトを得るために必須の元素である。この効果を十分に得るためには、Ni含有量を8%以上にする必要がある。しかしながら、Niは高価な元素であるため、多量の含有はコストの増大を招く。また、Ni含有量が高すぎると、母材製造時のNの溶解度が小さくなる。そのため、Ni含有量は8〜15%である。Ni含有量の下限は、好ましくは9%である。N含有量の上限は、好ましくは14.5%である。
Cr:19〜25%
クロム(Cr)は、使用環境下での耐食性を確保するために必須の元素である。Crはさらに、母材製造時にNの溶解度を大きくして、強度を高めるのに間接的に寄与する。この効果を十分に得るためには、Cr含有量を19%以上にする必要がある。一方、Cr含有量が高すぎると、オーステナイトが不安定になり、接ガス環境の種類によっては鋼が脆化する。そのため、Cr含有量は19〜25%である。Cr含有量の下限は、好ましくは19.2%である。Cr含有量の上限は、好ましくは24.5%である。
Mo:0.01〜4.5%
モリブデン(Mo)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。Moはまた、使用環境下での耐食性の向上に有効な元素である。この効果を十分に得るためには、Mo含有量を0.01%以上にする必要がある。しかしながら、Moは高価な元素であるため、多量の含有はコストの増大を招く。また、Mo含有量が高すぎるとオーステナイトが不安定になる。そのため、Mo含有量は0.01〜4.5%である。Mo含有量の下限は、好ましくは1%である。Mo含有量の上限は、好ましくは4%である。
V:0.01〜0.5%
バナジウム(V)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。この効果を得るためには、V含有量を0.01%以上にする必要がある。しかしながら、V含有量が高すぎると、炭窒化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、V含有量は0.01〜0.5%である。V含有量の下限は、好ましくは0.05%である。V含有量の上限は、好ましくは0.4%である。
Nb:0.01〜0.5%
ニオブ(Nb)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。この効果を得るためには、Nb含有量を0.01%以上にする必要がある。しかしながら、Nb含有量が高すぎると、炭窒化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、Nb含有量は0.01〜0.5%である。Nb含有量の下限は、好ましくは0.05%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.4%である。
Al:0.05%未満
アルミニウム(Al)は、Si及びMnと同様、脱酸剤として含有される。しかしながら、Al含有量が高すぎると、多量の窒化物が形成され、鋼の延性が低下する。そのため、Al含有量は0.05%未満である。Al含有量の下限は、好ましくは0.0003%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.04%である。
N:0.15〜0.45%
窒素(N)は、マトリックスに固溶するとともに微細な窒化物を形成し、鋼の強度を高める。この効果を十分に得るためには、N含有量を0.15%以上にする必要がある。しかしながら、N含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下する。また、溶接の際にブローホール等の溶接欠陥を生じる場合がある。そのため、N含有量は0.15〜0.45%である。N含有量の下限は、好ましくは0.16%である。N含有量の上限は、好ましくは0.42%である。
第1部材の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物とは、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入する元素、あるいは製造過程の環境等から混入する元素をいう。
不純物のうち、O、P、及びSの含有量はそれぞれ、次に述べる範囲に制限する。
O:0.02%以下
酸素(O)は、鋼中に不純物として含まれる。O含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下するとともに、溶接金属の靱性及び延性が低下する。そのため、O含有量は、0.02%以下である。O含有量は、好ましくは0.01%以下である。
P:0.05%以下
リン(P)は、鋼中に不純物として含まれる。P含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下する。P含有量は低いほど好ましいが、極端な低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量0.05%以下である。P含有量は、好ましくは0.03%以下である。
S:0.04%以下
硫黄(S)は、鋼中に不純物として含まれる。S含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下する。S含有量は低いほど好ましいが、極端な低減は製造コストの増大を招く。そのため、S含有量は0.04%以下である。S含有量は、好ましくは0.03%以下である。
第1部材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、以下に説明する元素を含有してもよい。以下に説明する元素(Ti、Cu、B)は、すべて選択元素である。すなわち、第1部材の化学組成は、これらの元素の一部又は全部を含有していなくてもよい。
Ti:0〜0.5%
チタン(Ti)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。しかしながら、Ti含有量が高すぎると、炭窒化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、Ti含有量は0〜0.5%である。Ti含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.45%である。
Cu:0〜3.0%
銅(Cu)は、安定なオーステナイト組織を得るのに有効な元素である。しかしながら、Cu含有量が高すぎると、その効果が飽和するとともに、靱性の低下を招く。そのため、Cu含有量は0〜3.0%である。Cu含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.01%である。Cu含有量の上限は、好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2%である。
B:0〜0.01%
ボロン(B)は、粒界に偏析して粒界固着力を高め、強度向上に寄与する。Bはまた、水素環境下での脆化を抑制する効果も有する。しかしながら、B含有量が高すぎると、溶接材料を使用しない場合、溶接時の割れ感受性を増大させる。したがって、B含有量は0〜0.01%である。B含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%である。B含有量の上限は、好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.005%である。
第1部材は、好ましくは、下記の式で規定されるNieqが30%以上である。
Nieq=Ni+Mo+Mn+0.6Cr+0.3Si+12(C+N)
上記の式の各元素記号には、第1部材の各元素の含有量が質量%で代入される。
Nieqの値が高いほど、オーステナイト組織の安定性が高まり、耐水素脆化特性が高まる。第1部材のNieqは、さらに好ましくは、32%以上である。
[第2部材]
第2部材は、C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びNを含むオーステナイト系ステンレス鋼であり、下記の式で規定されるNieqが27%以上である。
Nieq=Ni+Mo+Mn+0.6Cr+0.3Si+12(C+N)
上記の式の各元素記号には、第2部材の各元素の含有量が質量%で代入される。
母材の耐水素脆化特性を高めるためには、オーステナイト組織の安定性を高め、フェライト組織やマルテンサイト組織の生成を抑制する必要がある。また、積層欠陥エネルギーを高め、転位の局在化を抑制する必要がある。十分な耐水素脆化特性を得るためには、第2部材のNieqを27%以上にする必要がある。第2部材のNieqは、好ましくは27.5%以上であり、さらに好ましくは28%以上である。
第2部材は、好ましくは、以下に説明する化学組成を有する。
C:0.001〜0.06%
炭素(C)は、オーステナイトを安定化するのに有効な元素である。この効果を十分に得るためには、C含有量を0.001%以上にする必要がある。しかしながら、C含有量が高すぎると、溶接時の加熱により粒界に炭化物が形成され、鋼の耐食性及び靱性が低下する。そのため、C含有量は0.001〜0.06%である。C含有量の下限は、好ましくは0.005%である。C含有量の上限は、好ましくは0.05%である。
Si:0.01〜1.0%
シリコン(Si)は、脱酸剤として有効な元素であるとともに、耐食性の向上に有効な元素である。Si含有量が0.01%未満だと、この効果が十分に得られない。しかしながら、Si含有量が高すぎると、Ni、Cr等と金属間化合物を形成し、熱間加工性を著しく低下させる場合がある。また、溶接金属においては凝固時に柱状晶境界に偏析して液層の融点を下げ、凝固割れ感受性を高める場合がある。そのため、Si含有量は0.01〜1.0%である。Si含有量の下限は、好ましくは0.03%である。Si含有量の上限は、好ましくは0.9%である。
Mn:0.01〜6.0%
マンガン(Mn)は、脱酸剤として有効な元素であるとともに、オーステナイトを安定化するのにも有効な元素である。この効果を十分に得るためには、Mn含有量を0.01%以上にする必要がある。一方、Mn含有量が高すぎると、靱性が低下する。そのため、Mn含有量は0.01〜6.0%である。Mn含有量の上限は、好ましくは5.5%である。なお、Mnは、Nの溶解度を大きくする効果も有する。Nを積極的に活用する場合、Mn含有量を2.0%以上にすることが好ましい。一方、Nを積極に活用しないのであれば、Mn含有量は、2.0%以下であってもよい。
Ni:8〜15%
ニッケル(Ni)は、安定なオーステナイトを得るために必須の元素である。この効果を十分に得るためには、Ni含有量を8%以上にする必要がある。しかしながら、Niは高価な元素であるため、多量の含有はコストの増大を招く。また、Ni含有量が高すぎると、母材製造時のNの溶解度が小さくなる。そのため、Ni含有量は8〜15%である。Ni含有量の下限は、好ましくは9%である。N含有量の上限は、好ましくは14.5%である。
Cr:15〜25%
クロム(Cr)は、使用環境下での耐食性を確保するために必須の元素である。この効果を十分に得るためには、Cr含有量を15%以上にする必要がある。一方、Cr含有量が高すぎると、オーステナイトが不安定になり、接ガス環境の種類によっては鋼が脆化する。そのため、Cr含有量は15〜25%である。Cr含有量の下限は、好ましくは16%である。Cr含有量の上限は、好ましくは24.5%である。
Mo:0.01〜4.0%
モリブデン(Mo)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。Moはまた、使用環境下での耐食性の向上に有効な元素である。この効果を十分に得るためには、Mo含有量を0.01%以上にする必要がある。しかしながら、Moは高価な元素であるため、多量の含有はコストの増大を招く。また、Mo含有量が高すぎるとオーステナイトが不安定になる。そのため、Mo含有量は0.01〜4.0%である。Mo含有量の下限は、好ましくは1%である。Mo含有量の上限は、好ましくは3.5%である。
Al:0.05%未満
アルミニウム(Al)は、Si及びMnと同様、脱酸剤として含有される。しかしながら、Al含有量が高すぎると、多量の窒化物が形成され、鋼の延性が低下する。そのため、Al含有量は0.05%未満である。Al含有量の下限は、好ましくは0.0003%である。Al含有量の上限は、好ましくは0.04%である。
N:0.001%以上0.2%未満
窒素(N)は、マトリックスに固溶するとともに微細な窒化物を形成し、鋼の強度を高める。一方、N含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下する。また、溶接の際にブローホール等の溶接欠陥を生じる場合がある。そのため、N含有量は0.001%以上0.2%未満である。N含有量の下限は、好ましくは0.003%である。N含有量の上限は、好ましくは0.18%である。
第2部材の化学組成の残部は、Fe及び不純物である。ここでいう不純物とは、鋼の原料として利用される鉱石やスクラップから混入する元素、あるいは製造過程の環境等から混入する元素をいう。
不純物のうち、O、P、及びSの含有量はそれぞれ、次に述べる範囲に制限する。
O:0.02%以下
酸素(O)は、鋼中に不純物として含まれる。O含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下するとともに、溶接金属の靱性及び延性が低下する。そのため、O含有量は、0.02%以下である。O含有量は、好ましくは0.01%以下である。
P:0.05%以下
リン(P)は、鋼中に不純物として含まれる。P含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下する。P含有量は低いほど好ましいが、極端な低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量0.05%以下である。P含有量は、好ましくは0.03%以下である。
S:0.04%以下
硫黄(S)は、鋼中に不純物として含まれる。S含有量が高すぎると、製造時の熱間加工性が低下する。S含有量は低いほど好ましいが、極端な低減は製造コストの増大を招く。そのため、S含有量は0.04%以下である。S含有量は、好ましくは0.03%以下である。
第2部材の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、以下に説明する元素を含有してもよい。以下に説明する元素(V、Nb、Ti、Cu、B、Ca、Mg、及びREM)は、すべて選択元素である。すなわち、第2部材の化学組成は、これらの元素の一部又は全部を含有していなくてもよい。なお、Ti、Cu、B、Ca、Mg、及びREMのうち2種以上の元素を含有させる場合は、その合計含有量を4.6%以下にすることが好ましい。
V:0〜0.5%
バナジウム(V)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。しかしながら、V含有量が高すぎると、炭窒化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、V含有量は0〜0.5%である。V含有量の下限は、好ましくは0.01%である。V含有量の上限は、好ましくは0.4%である。上述のとおり、第2部材は必ずしも高強度でなくてもよいので、V含有量は0.01%以下であってもよい。
Nb:0〜0.5%
ニオブ(Nb)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。しかしながら、Nb含有量が高すぎると、炭窒化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、Nb含有量は0〜0.5%である。Nb含有量の下限は、好ましくは0.01%である。Nb含有量の上限は、好ましくは0.4%である。上述のとおり、第2部材は必ずしも高強度でなくてもよいので、Nb含有量は0.01%以下であってもよい。
Ti:0〜0.5%
チタン(Ti)は、マトリックスに固溶し又は炭窒化物として析出し、鋼の強度を高める。しかしながら、Ti含有量が高すぎると、炭窒化物が多量に析出して延性が低下する。そのため、Ti含有量は0〜0.5%である。Ti含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.002%である。Ti含有量の上限は、好ましくは0.45%である。
Cu:0〜3.0%
銅(Cu)は、安定なオーステナイト組織を得るのに有効な元素である。しかしながら、Cu含有量が高すぎると、その効果が飽和するとともに、靱性の低下を招く。そのため、Cu含有量は0〜3.0%である。Cu含有量の下限は、好ましくは0.005%であり、さらに好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.01%である。Cu含有量の上限は、好ましくは2.5%であり、さらに好ましくは2%である。
B:0〜0.01%
ボロン(B)は、粒界に偏析して粒界固着力を高め、強度向上に寄与する。Bはまた、水素環境下での脆化を抑制する効果も有する。しかしながら、B含有量が高すぎると、溶接材料を使用しない場合、溶接時の割れ感受性を増大させる。したがって、B含有量は0〜0.01%である。B含有量の下限は、好ましくは0.0001%であり、さらに好ましくは0.0002%であり、さらに好ましくは0.0005%である。B含有量の上限は、好ましくは0.008%であり、さらに好ましくは0.005%である。
Ca:0〜0.05%
カルシウム(Ca)は、鋼の熱間加工性を改善する。しかしながら、Ca含有量が高すぎると、Oと結合して清浄性を劣化させ、却って熱間加工性が劣化する。そのため、Ca含有量は0〜0.05%である。Ca含有量の下限は、好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.0015%である。Ca含有量の上限は、好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.01%である。
Mg:0〜0.05%
マグネシウム(Mg)は、鋼の熱間加工性を改善する。しかしながら、Mg含有量が高すぎると、Oと結合して清浄性を劣化させ、却って熱間加工性が劣化する。そのため、Mg含有量は0〜0.05%である。Mg含有量の下限は、好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.0015%である。Mg含有量の上限は、好ましくは0.03%であり、さらに好ましくは0.01%である。
REM:0〜0.5%
希土類元素(REM)は、Sとの親和力が強く、鋼の熱間加工性を改善する。しかしながら、REM含有量が高すぎると、Oと結合して清浄性を劣化させ、却って熱間加工性が劣化する。そのため、REM含有量は0〜0.05%である。REM含有量の下限は、好ましくは0.001%であり、さらに好ましくは0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。REM含有量の上限は、好ましくは0.45%であり、さらに好ましくは0.4%である。
なお、「REM」とは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうち1種又は2種以上の元素の合計含有量を示す。また、REMについては、一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で含有させて、REM含有量が上記の範囲となるようにしてもよい。
[ガスタングステンアーク溶接]
溶接材料を用いずに、第1部材と第2部材とをガスタングテンアーク溶接によって溶接する。ガスタングステンアーク溶接は、以下の条件で実施する。
[シールドガス]
本実施形態におけるガスタングステンアーク溶接では、Arガス、Nガス、ArとNとの混合ガス、ArとHとの混合ガス、及びArとNとHとの混合ガスのいずれかをシールドガスとして用いる。
シールドガスにHを混合させると、溶け込み深さが大きくなり、より小さい入熱で溶接が可能になる。小さい入熱で溶接することで、溶融池からのNの飛散を抑制し、溶接継手の強度を向上させることができる。Hの混合率が高いほど、溶け込み深さを大きくできる。そのため、シールドガスは、Hを含むことが好ましい。Hの混合率は、好ましくは0.1〜20体積%である。Hの混合率の下限は、さらに好ましくは1体積%である。
シールドガスにNを混合させると、溶融池からのNの飛散を抑制できるとともに、溶接金属中へNを補填することができる。そのため、溶接金属のN含有量をより高くすることができ、より高強度の溶接金属を得ることができる。そのため、シールドガスは、Nを含むことが好ましい。Nの混合率は、好ましくは0.1〜50体積%である。Nの混合率の下限は、さらに好ましくは0.5体積%である。Nの混合率の上限は、好ましくは40体積%であり、さらに好ましくは30体積%である。
本実施形態におけるガスタングステンアーク溶接では、バックシールドガスを用いてもよい。バックシールドガスの成分は特に限定されないが、例えばAr、N、及びこれらの混合ガスである。特に、Nを用いることが好ましい。バックシールドガスにNを用いることで、溶接金属の強度を安定的に向上させることができる。
[入熱]
本実施形態におけるガスタングステンアーク溶接では、入熱Qが7kJ/cm以下であり、かつ、下記の式を満たす。
Q≧−0.18[H]+4.8
ただし、上式において、Qの単位はkJ/cmであり、[H]にはシールドガス中のHの混合率が体積%で代入される。なお、シールドガスが、Arガス、Nガス、又はArとNとの混合ガスの場合、[H]には0が代入される。
上述のように、シールドガスにHを混合させると、溶け込み深さが大きくなり、より小さい入熱で溶接が可能になる。入熱Qが−0.18[H]+4.8よりも小さければ、溶け込み深さが不足し、被溶接線上に未溶融部が生じる場合がある。一方、入熱Qが7kJ/cmを超えると、溶融部分が大きくなりすぎ、アンダーカットや溶け落ちが生じる等、溶接継手の健全性が低下する場合がある。
入熱Qが小さいほど、溶融池の面積が小さくなり、Nの飛散を抑制することができる。これによって、溶接金属のN含有量を高くでき、溶接継手の強度を向上させることができる。したがって、入熱Qは、−0.18[H]+4.8よりも大きい範囲において、小さい方が好ましい。入熱Qは、好ましくは6.5kJ/cm以下であり、さらに好ましくは6.2kJ/cm以下である。
以上の製造方法によって、溶接継手が製造される。本実施形態によって製造される溶接継手は、母材と、溶接中に母材が溶融凝固して形成される溶接金属とを備えている。
本実施形態の製造方法によれば、溶接時の溶け込み不足を抑制することができる。そのため、本実施形態の製造方法によって製造された溶接継手は、1回溶接で製造された場合であっても、必要な強度を有する。
一般に、溶接金属は急冷凝固組織であるため、固溶化熱処理等を実施して製造される母材とは異なり、凝固過程において、高温で生成したフェライトが室温まで残存する場合がある。フェライトは、水素環境下では、脆化して破壊の起点となる。特に、面積率で20%を超えるフェライトが連続的に存在する場合、連結、伝播して溶接金属の耐水素脆化特性を低下させる。
本実施形態の製造方法によれば、溶接金属のフェライトの量を安定して20%以下にすることができる。そのため、本実施形態の製造方法によって製造された溶接継手は、優れた耐水素脆化特性を有する。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明する。本発明はこれらの実施例に限定されない。
表1に示す化学組成を有する符号1A〜1Eの材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、及び熱処理により、板厚2.5mm、幅60mm、長さ100mmの溶接母材用鋼板(第1部材)を作製した。なお、表1の「−」は、当該元素の含有量が不純物レベルであることを示す。
Figure 0006642282
さらに、表2に示す化学組成を有する符号2A〜2Dの材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、及び熱処理により、板厚2.5mm、幅60mm、長さ100mmの溶接母材用鋼板(第2部材)を作製した。なお、表2の「−」は、当該元素の含有量が不純物レベルであることを示す。
Figure 0006642282
各溶接母材用鋼板の長手方向と平行な端面に、図1に示す開先加工を実施した。図1中の数値は、寸法である。その後、表3に示す条件で、2つの溶接母材用鋼板の開先加工を施した端面同士を突き合わせて、ガスタングステンアーク溶接により、溶接材料を用いずに、1回溶接を実施した。
Figure 0006642282
[引張試験]
各溶接継手から、溶接金属を平行部の中央に有する板状引張試験片を作製した。試験片に対して、常温で引張試験を実施した。引張試験において、溶接金属で破断したものを不合格とし、母材破断したもの(第2部材で破断したもの)を合格と評価した。
[低歪速度引張試験]
引張試験で合格と評価した溶接継手に対して、高圧水素環境下における耐水素脆化特性を評価するために、低歪速度引張試験を実施した。引張試験で合格と評価した溶接継手から、溶接金属を平行部の中央に有する板状低歪速度引張試験片を作製した。この試験片を用いて、大気中、及び85MPaの高圧水素環境中で低歪速度引張試験を実施した。歪速度は3×10−5/秒とした。高圧水素環境中での破断絞りの値が大気中での破断絞りの値の80%以上となる場合を合格と評価し、特に90%以上であった場合、優れた耐水素脆化特性を有すると評価した。一方、80%未満となるものを不合格と評価した。
表4に、引張試験及び低歪速度引張試験の結果を示す。「引張試験」の欄において、「○」は合格を、「×」は不合格を示す。「低歪速度引張試験」の欄において、「◎」は高圧水素環境中での破断絞りの値が大気中での破断絞りの値が90%以上であったことを、「○」は80%以上90%未満であったことを、「×」は80%未満であったことを示す。同欄において、「−」は、低歪速度引張試験を実施していないことを示す。
Figure 0006642282
試験符号J2〜4、6〜8、10〜19、22〜27、29〜31、39、及び40の溶接継手は、いずれも引張試験及び低歪速度引張試験の両方に合格した。このうち、試験符号J2、4、6、7、10〜19、24〜27、及び29〜31の溶接継手は、高圧水素環境中での破断絞りの値が大気中での破断絞りの値の90%以上であり、特に優れた耐水素脆化特性を示した。試験番号J3、8、22、23、39及び40の溶接継手は、高圧水素環境中での破断絞りの値が大気中での破断絞りの値の80%以上ではあるものの、90%未満であった。これは、溶接入熱が高かったため、溶接金属中のN含有量が低下し、溶接金属のNieqが部分的に低下したためと考えられる。
試験符号J1、5、及び9の溶接継手は、突き合わせ面に未溶融部分が残っていたため、引張試験に合格しなかった。これは、溶接入熱が低すぎ、溶け込み深さが不十分であったためと考えられる。
試験符号J20、21、28、及び32の溶接継手は、低歪速度引張試験に合格しなかった。これは、第2部材のNieqが低すぎたためと考えられる。
試験符号J33及び34の溶接継手は、引張試験に合格しなかった。これは、第1部材のN含有量が低すぎたためと考えられる。
試験符号J35及び36の溶接継手は、低歪速度引張試験に合格しなかった。これは、第1部材のCr含有量が高すぎたため、又はNi含有量が低すぎたためと考えられる。
試験符号J37及び38の溶接継手は、引張試験に合格しなかった。これは、溶接入熱が高かったために、溶接部が溶け落ち、健全な溶接部が形成されなかったためと考えられる。
以上、本発明の実施形態を説明したが、上述した実施形態は本発明を実施するための例示に過ぎない。よって、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、その趣旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態を適宜変形して実施することが可能である。
本発明によれば、高圧水素ガス機器及び液体水素機器といった水素設備に適した溶接継手を提供することができる。

Claims (5)

  1. 化学組成が、質量%で、C:0.005〜0.1%、Si:0.2〜1.2%、Mn:2.5〜6.5%、Ni:8〜15%、Cr:19〜25%、Mo:0.01〜4.5%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、Al:0.05%未満、N:0.15〜0.45%、Ti:0〜0.5%、Cu:0〜3.0%、B:0〜0.01%、残部:Fe及び不純物であり、前記不純物としてのO、P、Sがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.05%以下、及びS:0.04%以下である第1部材を準備する工程と、
    C、Si、Mn、Ni、Cr、Mo及びNを含むオーステナイト系ステンレス鋼であって、式(1)で規定されるNieqが27%以上である第2部材を準備する工程と、
    Arガス、Nガス、ArとNとの混合ガス、ArとHとの混合ガス、及びArとNとHとの混合ガスのいずれかをシールドガスとして、溶接材料を用いずにガスタングステンアーク溶接によって前記第1部材と前記第2部材とを溶接する工程とを備え、
    前記ガスタングステンアーク溶接の入熱Qが7kJ/cm以下であり、かつ、下記の式(2)を満たす、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
    Nieq=Ni+Mo+Mn+0.6Cr+0.3Si+12(C+N)・・・(1)
    Q≧−0.18[H]+4.8・・・(2)
    ただし、式(1)中の各元素記号には、前記第2部材の各元素の含有量が質量%で代入される。式(2)において、Qの単位はkJ/cmであり、[H]には前記シールドガス中のHの混合率が体積%で代入される。
  2. 請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
    前記第2部材の化学組成が、質量%で、C:0.001〜0.06%、Si:0.01〜1.0%、Mn:0.01〜6.0%、Ni:8〜15%、Cr:15〜25%、Mo:0.01〜4.0%、Al:0.05%未満、N:0.001%以上0.2%未満、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Cu:0〜3.0%、B:0〜0.01%、Ca:0〜0.05%、Mg:0〜0.05%、REM:0〜0.5%、残部:Fe及び不純物であり、前記不純物としてのO、P、Sがそれぞれ、O:0.02%以下、P:0.05%以下、及びS:0.04%以下である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
  3. 請求項1又は2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
    前記シールドガスは、体積%で、H:0.1〜20%を含む、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
    前記シールドガスは、体積%で、N:0.1〜50%を含む、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のオーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法であって、
    前記第1部材の化学組成は、式(3)で規定されるNieqが30%以上である、オーステナイト系ステンレス鋼溶接継手の製造方法。
    Nieq=Ni+Mo+Mn+0.6Cr+0.3Si+12(C+N)・・・(3)
    ただし、式(3)中の各元素記号には、前記第1部材の各元素の含有量が質量%で代入される。
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