JP6627343B2 - オーステナイト系ステンレス鋼、及び、高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器 - Google Patents

オーステナイト系ステンレス鋼、及び、高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器 Download PDF

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Description

本発明は、高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器等に使用されるオーステナイト系ステンレス鋼であり、溶加材を使用しないで溶接する場合に優れた溶接施工性と溶接金属強度を具備するオーステナイト系ステンレス鋼に関する。
近年、化石燃料に代えて、水素をエネルギーとして利用する輸送機器の実用化研究が活発に進められている。その実用化に際しては、水素を高圧で貯蔵、輸送できる使用環境の整備が併せて必要であり、そこに使用される引張強さで800MPaを上回るような高強度材料の開発、適用検討が平行して進められている。
このような背景のもと、使用される材料として、例えば、特許文献1〜4には、高Mn化することでNの溶解度を高め、かつ、VやNbを添加することにより、Nの固溶強化及び窒化物の析出強化、さらにはそのピニング効果による微細化を活用し、高強度化を試みたオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている。
ところで、これら多量のNを含有した高強度オーステナイト系ステンレス鋼を構造物として使用する場合、コスト面からは溶接による組み立てが可能であることが求められている。そのため、例えば、特許文献3、5及び6には、Al、Ti及びNbを積極活用し、溶接後熱処理を行うことにより、800MPaを超える引張強さが得られる溶接材料(溶接金属)が提案されている。また、特許文献7には、溶接材料(溶加材)のN量、溶接時のシールドガスや溶融池面積を管理し、溶接金属のN量を増大させることにより、溶接後熱処理を実施することなく、高強度化を達成する溶接継手が提案されている。さらに、特許文献8には、鋼材中のAl含有量に応じて酸素(O)含有量を調整したオーステナイト系ステンレス鋼が提案されている。
国際公開第2004/083476号 国際公開第2004/083477号 国際公開第2004/110695号 国際公開第2012/132992号 特開平5−192785号公報 特開2010−227949号公報 国際公開第2013/005570号 特開平9−137255号公報
実際の構造物では、薄肉部材など、その使用部位によっては溶加材の使用が困難であるため、溶加材を用いずに、ガスタングステンアーク溶接により突き合わせ溶接する必要がある。その際、溶け込み深さが充分でない場合には、未溶融の突き合わせ面が欠陥として残存し、必要な溶接継手強度が得られないという問題が生じる。その対策の一つとして、溶接入熱を増大させることが考えられるが、溶融部が大きくなり、アンダーカットや溶け落ちが生じ、却って、溶接継手の健全性が損なわれる場合がある。
上記の特許文献1〜7に記載の発明は、いずれもこのような課題を何ら考慮していない。一方で、このような課題に対し、特許文献8に記載の発明によれば、ビード幅の均一性と裏ビード形成能の改善を図ることができるとされているが、AlはNとの親和力が強いことから、Nを積極的に活用した高強度ステンレス鋼において、この方法がそのまま活用できるものではない。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、溶加材を用いずに溶接する場合にも、優れた溶接施工性、具体的には、深い溶け込み深さと優れた溶接金属の強度が得られる高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器等に使用可能なオーステナイト系ステンレス鋼を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記した課題を解決するために調査を重ねた結果、以下に述べる知見を得た。
すなわち、質量%で、C:0.005〜0.07%、Si:0.1〜1.2%、Cu:0.005〜3%、Ni:9.0〜14.0%、Cr:19.0〜24.0%、Mo:1〜4%、Nb:0.1〜0.4%、N:0.20〜0.45%、Al:0.0005〜0.03%を含有するオーステナイト系ステンレス鋼において、充分な溶け込み深さを得、かつ、溶接金属の優れた引張強さを満足させるためには、a)Al含有量に応じてMn含有量を適正な範囲に調整すること、具体的には、Al及びMnの含有量が下記(i)式を満足すること、b)Oを0.001〜0.012%の範囲で必ず含有させることが有効であることが判明した。
10Al+4.0≦Mn≦10 ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
その理由は、次のように考えられる。
Mnは、溶接中の溶融池においてNの溶解度を高めることで、溶接中のNの飛散を軽減するとともに、凝固後の溶接金属においてNの固溶度を高めて、その高強度化に寄与する。加えて、Mnは、アークの電流密度を高め、溶け込み深さを深くする効果をも併せて有する。
それに対して、Alは、溶接中にNの溶解度を低めるとともに、Nとの親和力が強いため、凝固後の溶接金属において窒化物を形成して、固溶N量を低減し、間接的に強度低下を招く。加えて、Alは、溶接中にOの溶解度を小さくし、表面活性元素であるOの効果を小さくすることから、間接的に溶け込み深さを浅くする元素である。
そのため、本発明者らは、Alによる悪影響を排除し、充分な溶け込み深さを得ると同時に、溶接金属の高強度をも確実に得るためには、Al含有量の増加に応じて、Mn含有量を高める必要があることを見出した。加えて、本発明者らは、Oによる溶け込み深さ増大の効果を確実に得るためには、本発明範囲のAl含有量では、0.001%以上のOを必ず含有させる必要があることも見出した。Oによる溶け込み深さを増大させることは、溶加材を用いずに溶接する場合に、重要な課題である。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(4)に示すオーステナイト系ステンレス鋼にある。
(1)質量%で、C:0.005〜0.07%、Si:0.1〜1.2%、Cu:0.005〜3%、Ni:9.0〜14.0%、Cr:19.0〜24.0%、Mo:1〜4%、Nb:0.1〜0.4%、N:0.20〜0.45%、Al:0.0005〜0.03%、O:0.001〜0.012%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、B:0〜0.01%、Ca:0〜0.05%、Mg:0〜0.05%、及び、REM:0〜0.5%を含み、Al及びMnの含有量が下記(i)式を満足するMnを含有し、かつ、残部がFe及び不純物からなり、不純物としてのP及びSがそれぞれP:0.03%以下及びS:0.01%以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
10Al+4.0≦Mn≦10 ・・・(i)
ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
(2)質量%で、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.5%、B:0.0001〜0.01%、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、及び、REM:0.001〜0.5%から選択される1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
(3)高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器に使用される、上記(1)又は上記(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
(4)溶加材を用いずに溶接することができる、上記(1)から上記(3)までのいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
(5)上記(1)又は上記(2)に記載のオーステナイト系ステンレス鋼からなる高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器。
本発明によれば、溶加材を用いずに溶接する場合に、優れた溶接施工性、具体的には、深い溶け込み深さと優れた溶接金属の強度が得られる高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器等に使用可能なオーステナイト系ステンレス鋼を提供することができる。
なお、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、強度など必要な性能を満足する溶接金属が得られれば、溶加材を使用しても高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器等に使用できることは言うまでもない。
実施例で用いた開先加工の形状と寸法を示す図である。
以下、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼に含まれる各成分元素の作用効果とその含有量の限定理由について、詳しく説明する。なお、以下の説明において、各成分元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
C:0.005〜0.07%
Cは、オーステナイト組織を安定化させるのに有効な元素である。この効果を得るためには、Cを0.005%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、溶接時の加熱により粒界に炭化物を形成し、溶接熱影響部の耐食性を劣化させる。そのため、C含有量を0.07%以下とする。望ましい範囲は0.01%以上、さらに望ましい範囲は0.02%以上である。また、望ましい範囲は0.06%以下、さらに望ましい範囲は0.05%以下である。
Si:0.1〜1.2%
Siは、脱酸剤として含有されるが、耐食性の向上に有効な元素である。その効果を充分に得るためには、0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、オーステナイト組織の安定性を低下させるとともに、延性の低下を招く。さらに、溶加材を用いない溶接では、溶接金属の凝固割れ感受性を高める。そのため、Si含有量を1.2%以下とする。望ましい範囲は0.15%以上、さらに望ましい範囲は0.2%以上である。また、望ましい範囲は1.1%以下、さらに望ましい範囲は1.0%以下である。
Cu:0.005〜3%
Cuは、安定なオーステナイト組織を得るのに有効な元素であり、0.005%以上含有させることにより、その効果が得られる。しかしながら、過剰に含有させると、溶加材を用いない溶接では、溶接金属の凝固割れ感受性を高める。そのため、Cu含有量を3%以下とする。望ましい範囲は0.008%以上、さらに望ましい範囲は0.01%以上である。また、望ましい範囲は2.5%以下、さらに望ましい範囲は2.0%以下である。
Ni:9.0〜14.0%
Niは、安定なオーステナイト組織を得るために必須の元素であり、積層欠陥エネルギーを高め、水素環境下での脆化感受性を低下させる。その効果を充分に得るためには、Niを9.0%以上含有させる必要がある。しかしながら、高価な元素であるため、多量の添加はコストの増大を招くとともに、母材製造時や溶接中において、溶融金属中のNの溶解度を小さくし、強度低下を招く。そのため、Ni含有量を14.0%以下とする。望ましい範囲は9.5%以上、さらに望ましい範囲は10.0%以上である。また、望ましい範囲は13.5%以下、さらに望ましい範囲は13.0%以下である。
Cr:19.0〜24.0%
Crは、使用環境下での耐食性を確保するために必須の元素である。さらには、母材製造時や溶接中において、溶融金属中のNの溶解度を大きくするとともに、炭化物を生成して強度を高めるのにも有効である。その効果を充分に得るためには、Crを19.0%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、オーステナイト組織を不安定にするとともに、炭化物の過剰な生成による脆化を招く。そのため、Cr含有量を24.0%以下とする。望ましい範囲は19.5%以上、さらに望ましい範囲は20.0%以上である。また、望ましい範囲は23.5%以下、さらに望ましい範囲は23.0%以下である。
Mo:1〜4%
Moは、使用環境下での耐食性の向上、及び、強度を高めるために有効な元素である。その効果を得るためには、Moを1%以上含有させる必要がある。しかしながら、Moは非常に高価な元素であるとともに、過剰に含有させると、オーステナイト組織を不安定にするため、Mo含有量を4%以下とする。望ましい範囲は1.2%以上、さらに望ましい範囲は1.5%以上である。また、望ましい範囲は3.8%以下、さらに望ましい範囲は3.5%以下である。
Nb:0.1〜0.4%
Nbは、基質に固溶又は炭窒化物として析出し、強度を向上させるのに有効な元素である。その効果を得るためには、Nbを0.1%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、溶加材を用いない溶接では、溶接金属の凝固割れ感受性を高めるとともに、延性の低下も招く。そのため、Nb含有量を0.4%以下とする。望ましい範囲は0.12%以上、さらに望ましい範囲は0.15%以上である。また、望ましい範囲は0.38%以下、さらに望ましい範囲は0.35%以下である。
N:0.20〜0.45%
Nは、マトリックスに固溶するとともに、微細な窒化物を形成し、高い強度を得るために必須の元素である。加えて、オーステナイト組織の安定化にも寄与する元素である。この効果を充分に得るためには、Nを0.20%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、母材においては、製造時の熱間加工性低下、溶接金属においては、溶接中のブローホールやピットの原因となる。そのため、N含有量を0.45%以下とする。望ましい範囲は0.22%以上、さらに望ましい範囲は0.25%以上である。また、望ましい範囲は0.43%以下、さらに望ましい範囲は0.40%以下である。
Al:0.0005〜0.03%
Alは、Siと同様に脱酸剤として含有され、その効果を充分に得るためには、0.0005%以上含有させる必要がある。しかしながら、Alは溶接中に、Nの溶解度を低めるとともに、凝固後の溶接金属において窒化物を形成して、固溶N量を低減し、強度低下を招く。加えて、溶接中のOの溶解度を小さくすることにより、表面活性元素であるOの効果を小さくし、溶け込み深さを浅くする元素である。そのため、Al含有量を0.03%以下にするとともに、後述するように、Al含有量に応じてMn含有量を管理する必要がある。望ましい範囲は0.0008%以上、さらに望ましい範囲は0.001%以上である。また、望ましい範囲は0.028%以下、さらに望ましい範囲は0.025%以下である。
O:0.001〜0.012%
Oは、不純物として存在するが、溶接時の溶融金属の表面張力を低下させ、溶け込み深さを増大させる効果を有する。その効果を得るためには、Oを0.001%以上含有させる必要がある。しかしながら、過剰に含有させると、清浄性が低下し、延性の低下を招く。そのため、O含有量を0.012%以下とする必要がある。望ましい範囲は0.0015%以上、さらに望ましい範囲は0.002%以上である。また、望ましい範囲は0.011%以下、さらに望ましい範囲は0.010%以下である。
Mn:10Al+4.0≦Mn≦10
Mnは、製造時の脱酸に寄与するとともに、オーステナイト組織を安定化させるのにも有効な元素である。さらには、母材製造時や溶接中において、溶融金属中のNの溶解度を大きくし、強度を高めるために有効である。加えて、Mnは、アークの電流密度を高め、溶け込み深さを深くする効果をも有する元素である。このMnの効果を充分に活用し、充分な溶け込み深さと溶接金属の高強度を得るためには、逆の効果を有するAl量に応じて、Mnの下限を調整する必要がある。具体的には、Mnを10Al+4.0(%)以上含有させる必要がある。一方、過剰に含有させると、延性の低下を招くため、Mn含有量を10%以下とする。望ましい上限は8%、さらに望ましい上限は6.5%である。
本発明に係るオーステナイト系ステンレス鋼は、上記の元素を含有し、残部はFe及び不純物からなる。「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、鉱石、スクラップ等の原料その他の要因により混入する成分を意味する。不純物のうち、P及びSについては、その含有量を厳密に制限する必要がある。
P:0.03%以下
不純物として含まれ、母材においては製造時の熱間加工性を阻害するとともに、溶加材を使用しない場合、溶接金属において凝固割れ感受性を増大させる。そのため、可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招くため、P含有量を0.03%以下とする。望ましくは0.025%以下、さらに望ましくは0.02%以下である。
S:0.01%以下
Pと同様、不純物として含まれ、母材においては製造時の熱間加工性を阻害するとともに、溶加材を使用しない場合、溶接金属において凝固割れ感受性を増大させる。そのため、Pと同様に可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製鋼コストの増大を招く。そのため、S含有量を0.01%以下とする。望ましくは0.008%以下、さらに望ましくは0.005%以下である。
なお、本発明のオーステナイト系ステンレス鋼は、V、Ti、B、Ca、Mg、及び、REMから選択される1種以上の元素を含有しても良い。以下、任意元素であるV、Ti、B、Ca、Mg、及び、REMの作用効果とその含有量の限定理由について説明する。
V:0〜0.5%
Vは、Nbと同様に、基質に固溶又は炭窒化物として析出し、強度を向上させるのに有効な元素であるため、含有させても良い。含有させる場合、0.001%以上とすることが望ましい。しかしながら、過剰に含有させると、炭窒化物が多量に析出し、延性の低下を招くため、0.5%以下とする。より望ましい範囲は0.005%以上、さらに望ましい範囲は0.01%以上である。また、望ましい範囲は0.45%以下、より望ましい範囲は0.40%以下である。
Ti:0〜0.5%
Tiは、V、Nbと同様に、基質に固溶又は炭窒化物として析出し、強度を向上させるのに有効な元素であるため、含有させても良い。含有させる場合、0.001%以上とすることが望ましい。しかしながら、過剰に含有させると、炭窒化物が多量に析出し、延性の低下を招くため、0.5%以下とする。より望ましい範囲は0.003%以上、さらに望ましい範囲は0.005%以上である。また、望ましい範囲は0.45%以下、より望ましい範囲は0.40%以下である。
B:0〜0.01%
Bは、粒界に偏析して粒界固着力を高め、強度向上に寄与するとともに、水素環境下での脆化を抑制する効果を有するため、含有させても良い。含有させる場合、0.0001%以上とすることが望ましい。しかしながら、過剰に含有させると、溶加材を使用しない場合、溶接金属において凝固割れ感受性を増大させるため、0.01%以下とする。より望ましい範囲は0.0002%以上、さらに望ましい範囲は0.0005%以上である。また、望ましい範囲は0.008%以下、より望ましい範囲は0.005%以下である。
Ca:0〜0.05%
Caは、熱間加工性を改善する作用を有するため、含有させても良い。含有させる場合、0.0005%以上とすることが望ましい。しかしながら、Caの含有量が過剰になると、Oと結合して清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、Ca含有量は0.05%以下とする。より望ましい範囲は0.001%以上、さらに望ましい範囲は0.0015%以上である。また、望ましい範囲は0.03%以下、より望ましい範囲は0.01%以下である。
Mg:0〜0.05%
Mgは、Caと同様、熱間加工性を改善する作用を有するため、含有させても良い。含有させる場合、0.0005%以上とすることが望ましい。しかしながら、Caの含有量が過剰になると、Oと結合して清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、Mg含有量は0.05%以下とする。より望ましい範囲は0.001%以上、さらに望ましい範囲は0.0015%以上である。また、望ましい範囲は0.03%以下、より望ましい範囲は0.01%以下である。
REM:0〜0.5%
REMは、Sとの親和力が強く、熱間加工性を改善する作用を有するため、含有させても良い。含有させる場合、0.001%以上とすることが望ましい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。そのため、REMの含有量は0.5%以下とする。より望ましい範囲は0.002%以上、さらに望ましい範囲は0.005%以上である。また、望ましい範囲は0.3%以下、より望ましい範囲は0.1%以下である。なお、「REM」とは、Sc、Y及びランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種又は2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては、一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させても良い。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す鋼種A〜Jの化学組成を有する材料を実験室溶解して鋳込んだインゴットから、熱間鍛造、熱間圧延、熱処理及び機械加工により、板厚2mm、幅50mm、長さ100mmの鋼板を作製し、試供材料とした。
上記試供材料の長手方向に、図1に示すI型の開先加工を施した後、ガスタングステンアーク溶接方法により、溶加材を用いず、入熱5kJ/cmとして、突き合わせ溶接を行った。以上により、表2に示す試験番号1〜10の溶接継手を得た。
<溶接施工性>
得られた溶接継手のうち、裏ビードが形成されなかったものを「不可」、裏ビードが形成されたものの、裏ビード幅が1mm未満のものを「可」、裏ビート幅が1mm以上のものを「良」と判定した。結果を表2に示す。
<引張試験>
溶接施工性が「可」もしくは「良」であった溶接継手については、溶接金属を平行部中央にもつ板状引張試験片を採取し、常温での引張試験に供した。そして、母材の目標強度である800MPa以上のものを「合格」、800MPa未満のものを「不合格」と判定した。結果を表2に示す。
<低歪速度引張試験>
引張試験に合格した溶接継手については、溶接金属を平行部とする段付板状低歪速度引張試験片を採取し、大気中及び85MPaの高圧水素環境下における低歪速度引張試験に供した。なお、歪速度は3×10−5/sとし、低歪速度引張試験において、高圧水素環境下での破断絞りと大気中での破断絞りの比が90%以上となるものを「合格」、90%未満となるものを「不合格」とした。結果を表2に示す。
Figure 0006627343
Figure 0006627343
表2より明らかなように、本発明の要件を満たす溶接継手1〜7は、充分な溶け込み深さが得られる優れた溶接施工性を有するとともに、少なくとも母材の最低必要強度を上回る溶接継手強度が得られることが明らかとなった。加えて、良好な耐水素脆化感受性をも有することが明らかとなった。
一方、溶接継手8は、Mn含有量が4.09%であり、Alとの関係からなる(i)式の必要量4.15%を僅かに下回ったため、溶け込み深さが充分でなく、裏ビード幅が狭く、溶接施工性に劣った。加えて、溶接金属中のNの固溶量が充分に得られなくなったため、溶接継手の強度が母材の目標強度を下回った。溶接継手9は、Mn含有量が3.54%であり、Alとの関係からなる(i)式の必要量4.10%を大きく下回ったため、溶け込み深さが充分でなく、裏ビードが形成されず、溶接施工性が不芳であった。また、溶接継手10は、溶接施工性及び溶接継手の強度は必要性能を満足したものの、Ni含有量が8.87%であり、必要含有量の9.0%を下回ったため、耐水素脆化性が不芳であった。
以上のように、本発明の必要要件を満たすオーステナイト系ステンレス鋼のみが、溶加材を用いずに溶接した場合、良好な溶接施工性を有するとともに、溶接金属の強度に優れるため、必要な強度と耐水素脆化感受性を有する溶接継手が得られることが分かった。
本発明によれば、溶加材を用いずに溶接する場合に、優れた溶接施工性、具体的には、深い溶け込み深さと優れた溶接金属の強度が得られる高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器等に使用可能なオーステナイト系ステンレス鋼を得ることができる。したがって、本発明は、高圧水素ガス機器又は液体水素用機器等の種々の鋼材に好適に利用できる。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.005〜0.07%、Si:0.1〜1.2%、Cu:0.005〜2.5%、Ni:9.0〜14.0%、Cr:19.0〜24.0%、Mo:1〜4%、Nb:0.1〜0.4%、N:0.20〜0.45%、Al:0.0005〜0.03%、O:0.001〜0.012%、V:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、B:0〜0.01%、Ca:0〜0.05%、Mg:0〜0.05%、及び、REM:0〜0.5%を含み、Al及びMnの含有量が下記(i)式を満足するMnを含有し、かつ、残部がFe及び不純物からなり、不純物としてのP及びSがそれぞれP:0.03%以下及びS:0.01%以下であることを特徴とするオーステナイト系ステンレス鋼。
    10Al+4.0≦Mn≦10 ・・・(i)
    ただし、(i)式中の各元素記号は、それぞれの元素の含有量(質量%)を表す。
  2. 質量%で、V:0.001〜0.5%、Ti:0.001〜0.5%、B:0.0001〜0.01%、Ca:0.0005〜0.05%、Mg:0.0005〜0.05%、及び、REM:0.001〜0.5%から選択される1種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  3. 高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器に使用される、請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  4. 溶加材を用いずにガスタングステンアーク溶接することができる、請求項1から請求項3までのいずれかに記載のオーステナイト系ステンレス鋼。
  5. 請求項1又は請求項2に記載のオーステナイト系ステンレス鋼からなる高圧水素ガス用機器又は液体水素用機器。
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