JP2016037664A - オーステナイト系耐熱合金部材 - Google Patents

オーステナイト系耐熱合金部材 Download PDF

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Abstract

【課題】熱間での塑性加工後においてもクリープ特性に優れるオーステナイト系耐熱合金部材の提供
【解決手段】化学組成が、質量%で、C:0.01〜0.15%、Si:1.0%以下、Mn:2.0%以下、P:0.03%以下、S:0.01%以下、Ni:30.0〜70.0%、Cr:19.0〜35.0%、W:3.0〜10.0%、Ti:0.01〜3.0%、Al: 3.0%以下、B:0.0001〜0.01%、N:0.02%以下、O:0.01%以下、Ca:0〜0.05%、REM:0〜0.1%、Co:0〜25.0%、Cu:0〜1.0%、Mo:0〜10.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜3.0%、Zr:0〜0.5%、残部:Feおよび不純物であり、金属組織が、厚さ中央部がASTM粒度番号4.0番以下の結晶粒からなり、亀裂の内面に、Cr2O3主体の酸化スケールを形成したオーステナイト系耐熱合金部材。
【選択図】図1

Description

本発明は、オーステナイト系耐熱合金部材に関する。
近年、環境負荷軽減の観点から発電用ボイラ等では運転条件の高温・高圧化が世界的規模で進められており、過熱器管や再熱器管の材料として使用されるオーステナイト系耐熱合金には、より優れた高温強度および耐食性を有することが求められている。また、従来フェライト系耐熱鋼が使用されていた、主蒸気管、再熱蒸気管等の大径かつ厚肉の部材においても、オーステナイト系耐熱合金の適用が検討されている。
このような技術的背景のもと、種々のオーステナイト系耐熱合金に関する技術が提案されている。
例えば、特許文献1には、Ni基合金製品が提案されている。このNi基合金製品は、Wを活用して高温強度を高めるとともに、有効B量を管理することにより、熱間加工性を改善するとともに溶接割れを防止した、特に大型製品として好適なオーステナイト系耐熱合金製品である。
特許文献2には、Cr、TiおよびZrの活用によりα−Cr相を強化相としてクリープ強度を高めた、オーステナイト系耐熱合金、その合金からなる耐熱耐圧部材およびその製造方法が提案されている。
特許文献3には、多量のWを含有させるとともにAlおよびTiを活用して、固溶強化とγ′相の析出強化によって強度を高めた、Ni基耐熱合金が提案されている。
これらのオーステナイト系耐熱合金部材を構造物として使用するために、冷間または熱間での塑性加工が施される。
しかしながら、本発明者らが詳細な調査を実施したところ、特許文献1〜3で開示されたオーステナイト系耐熱合金を用いても、部材を塑性加工した際に、その外表面および表面近傍の内部に、これまでに確認されていなかった微細な割れが発生する場合があること、および、この微細な割れは、特に厚肉の部材を熱間で加工した際に生じやすいことが明らかとなった。
本発明者らは、このような問題を解決するべく、特許文献4において、部材の平均結晶粒径d(μm)と、部材の外表面から5mm深さまでの領域における最高硬さHV0.1(max)との関係を規定したオーステナイト系耐熱合金部材を提案している。
特開2011−63838号公報 国際公開第2009/154161号 国際公開第2010/038826号 特開2014−34725号公報
しかし、本発明者らがさらに検討したところ、特許文献4に記載の要件を満たす部材であっても、その後の塑性加工によって部材の表面に微細な割れが発生し、この微細な割れによって部材のクリープ特性を低下させる可能性があることがわかった。そのため、塑性加工時に部材の表面に微細な割れ(以下「微小亀裂」または単に「亀裂」ともいう。)が発生しても、クリープ特性の低下を抑制することができるようにすることが、新たな課題となっている。
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、厚肉材に対する熱間での曲げ加工や鍛造等の塑性加工後のクリープ特性に優れ、発電用ボイラの主蒸気管や再熱蒸気管等の厚肉、大径の高温部材に熱間加工して用いるのに好適な、オーステナイト系耐熱合金部材を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記の課題を解決するため、鋭意研究を行った結果、以下の(a)〜(c)の知見を得た。
(a)細粒の金属組織を有するオーステナイト系耐熱合金部材ではクリープ特性が低下する。したがって、部材の厚さ中央部の金属組織は、平均結晶粒度でASTM粒度番号4.0番以下の粗粒組織とする必要がある。
(b)しかし、粗粒の金属組織を有するオーステナイト系耐熱合金部材では、熱間での塑性加工時にその表面に微小な亀裂が発生することがある。これは、粗粒の金属組織を有する部材では、塑性加工時に変形しにくく、粒界が弱化するからである。特に、厚さが20mm以上の厚肉材を用いた部材は、薄肉材と比べて管の製造時や熱処理時の熱履歴において、加熱温度が高く、加熱時間が長くなり、また、冷却速度が遅くなるため、必然的に金属組織が粗粒となりやすく、その表面に微小な亀裂が発生しやすくなる。
(c)上記の亀裂の中にはクリープ特性に悪影響を及ぼすものもあれば、悪影響を及ぼさないものもある。そこで、本発明者らは、クリープ特性に悪影響を及ぼす亀裂の形状について詳細に検討した結果、深さが40μm以上であり、かつ、下記式を満たすような亀裂の場合には、亀裂先端に応力が集中して、クリープ強度およびクリープ破断強度を低下させ、早期に部材の破断に至ればクリープ破断時間も短くなることが判明した。
0<w/d≦0.5
ただし、d:亀裂の最大深さ(μm)、w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)である。
本発明者らは、上記のようにして、クリープ特性に悪影響を及ぼす亀裂を特定した上で、そのような亀裂によるクリープ特性の低下を抑制する方法について更なる研究を重ねた。そして、オーステナイト系耐熱合金部材を熱間で塑性加工した際に表面に微小な亀裂が発生しても、亀裂の内部に所定のCr主体の酸化スケールを形成させることにより、クリープ特性の低下を抑制できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明は、上記の知見を基礎としてなされたものであり、下記のオーステナイト系耐熱合金部材を要旨とする。
(1)表面に亀裂を有するオーステナイト系耐熱合金部材であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.15%、
Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Ni:30.0〜70.0%、
Cr:19.0〜35.0%、
W:3.0〜10.0%、
Ti:0.01〜3.0%、
Al:3.0%以下、
B:0.0001〜0.01%、
N:0.02%以下、
O:0.01%以下、
Ca:0〜0.05%、
REM:0〜0.1%、
Co:0〜25.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜10.0%、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜3.0%、
Zr:0〜0.5%、
残部:Feおよび不純物であり、
金属組織が、厚さ中央部がASTM粒度番号4.0番以下の結晶粒からなり、
上記亀裂のうち、下記(1)式および(2)式を満たす亀裂の内面に、下記(3)式および(4)式を満たすCr主体の酸化スケールを形成した、
オーステナイト系耐熱合金部材。
40≦d≦500 ・・・(1)
0<w/d≦0.5 ・・・(2)
a/d≧0.5 ・・・(3)
a=s×{(2d/w)+1}1/2 ・・・(4)
ただし、上記式中の各記号の意味は下記の通りである。
d:亀裂の最大深さ(μm)
w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)
a:最大深さdの位置における酸化スケールの深さ(μm)
s:部材表面の酸化スケールの厚さ(μm)
(2)表面に亀裂を有するオーステナイト系耐熱合金部材であって、
化学組成が、質量%で、
C:0.01〜0.15%、
Si:1.0%以下、
Mn:2.0%以下、
P:0.03%以下、
S:0.01%以下、
Ni:40.0〜55.0%、
Cr:20.0〜35.0%、
W:3.0〜10.0%、
Ti:0.01〜1.2%、
Al:0.3%以下、
B:0.0001〜0.01%、
N:0.02%以下、
O:0.01%以下、
Ca:0〜0.05%、
REM:0〜0.1%、
Co:0〜1.0%、
Cu:0〜1.0%、
Mo:0〜1.0%、
V:0〜0.5%、
Nb:0〜0.5%、
Zr:0〜0.5%、
残部:Feおよび不純物であり、
金属組織が、厚さ中央部がASTM粒度番号4.0番以下の結晶粒からなり、
表面に生成し下記(1)式および(2)式を満たす亀裂の内面に、下記(3)式および(4)式を満たすCr主体の酸化スケールを形成した、
オーステナイト系耐熱合金部材。
40≦d≦500 ・・・(1)
0<w/d≦0.5 ・・・(2)
a/d≧0.5 ・・・(3)
a=s×{(2d/w)+1}1/2 ・・・(4)
ただし、上記式中の各記号の意味は下記の通りである。
d:亀裂の最大深さ(μm)
w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)
a:最大深さdの位置における酸化スケールの深さ(μm)
s:部材表面の酸化スケールの厚さ(μm)
(3)化学組成が、質量%で、下記(A)および(B)に示す元素から選択される1種以上を含有する、上記(2)に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
(A)Ca:0.0001〜0.05%およびREM:0.001〜0.1%
(B)Co:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%およびZr:0.01〜0.5%
本発明によれば、熱間での塑性加工時に微小な亀裂が生成しても、優れたクリープ特性を維持することができる。したがって、本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、発電用ボイラの主蒸気管、再熱蒸気管等の厚肉、大径の高温部材として用いるのに好適である。
酸化スケールが形成されたオーステナイト系耐熱合金部材表面の亀裂近傍の拡大図 クリープ破断試験用試験片の平行部の横断面図
1.化学組成
C:0.01〜0.15%
Cは、オーステナイトを安定にするとともに粒界に微細な炭化物を形成し、高温でのクリープ強度を向上させる。この効果を十分に得るためには、0.01%以上のC含有量が必要である。しかしながら、Cが過剰に含有された場合には、炭化物が粗大となり、かつ多量に析出するので、粒界の延性が低下し、さらに、靱性およびクリープ強度の低下も生じる。したがって、上限を設け、Cの含有量を0.01〜0.15%とする。C含有量の望ましい下限は0.03%、より望ましい下限は0.04%、さらに望ましい下限は0.05%である。また、C含有量の望ましい上限は0.12%、より望ましい上限は0.10%である。
Si:1.0%以下
Siは、脱酸作用を有するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上に有効な元素である。しかしながら、Siが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、靱性およびクリープ強度の低下を招く。そのため、Siの含有量に上限を設けて1.0%以下とする。Siの含有量は望ましくは0.8%以下、より望ましくは0.6%以下である。
なお、Siの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性が劣化するとともに、高温での耐食性および耐酸化性の向上効果が得難くなり、製造コストも大きく上昇する。そのため、Si含有量の望ましい下限は0.02%、より望ましい下限は0.05%である。
Mn:2.0%以下
Mnは、Siと同様、脱酸作用を有する。Mnは、オーステナイトの安定化にも寄与する。しかしながら、Mnの含有量が過剰になると脆化を招き、さらに、靱性およびクリープ延性の低下も生じる。そのため、Mnの含有量に上限を設けて2.0%以下とする。Mnの含有量は望ましくは1.8%以下、より望ましくは1.5%以下である。
なお、Mnの含有量についても特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性を劣化させるとともに、オーステナイト安定化効果が得難くなり、さらに製造コストも大きく上昇する。そのため、Mn含有量の望ましい下限は0.02%、より望ましい下限は0.05%である。
P:0.03%以下
Pは、不純物として合金中に含まれ、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Pの含有量に上限を設けて0.03%以下とする。Pの含有量は、望ましくは0.025%以下、より望ましくは0.02%以下である。
なお、Pの含有量は可能な限り低減することが好ましいが、極度の低減は製造コストの増大を招く。そのため、P含有量の望ましい下限は0.0005%、より望ましい下限は0.0008%である。
S:0.01%以下
Sは、Pと同様に不純物として合金中に含まれ、多量に含まれる場合には、熱間加工性および溶接性を著しく低下させ、さらに、長時間使用後のクリープ延性も低下させる。そのため、Sの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Sの含有量は、望ましくは0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。なお、Sの含有量は可能な限り低減することが好ましい。
Ni: 30.0〜70.0%
Niは、オーステナイトを得るために有効な元素であり、長時間使用時の組織安定性を確保するために必須の元素である。後述の20.0〜35.0%という本発明のCr含有量の範囲で、上記したNiの効果を十分に得るためには、30.0%以上のNi含有量が必要である。しかしながら、Niは高価な元素であり、多量に含有させるとコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Niの含有量を30.0〜70.0%とする。Ni含有量の望ましい下限は40.0%、さらに望ましい下限は41.0%、より望ましい下限は42.0%である。また、Ni含有量の望ましい上限は55.0%、さらに望ましい上限は54.0%、より望ましい上限は53.0%である。
Cr:19.0〜35.0%
Crは、高温での耐酸化性および耐食性の確保のために必須の元素である。上記30.0〜70.0%という本発明のNi含有量の範囲で、上記したCrの効果を得るためには、19.0%以上のCr含有量が必要である。しかしながら、Crの含有量が35.0%を超えると、高温でのオーステナイトの安定性が劣化してクリープ強度の低下を招く。したがって、Crの含有量を19.0〜35.0%とする。Cr含有量の望ましい下限は20.0%、さらに望ましい下限は20.5%、より望ましい下限は21.0%である。また、Cr含有量の望ましい上限は34.5%、より望ましい上限は34.0%である。
W:3.0〜10.0%
Wは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度の向上に大きく寄与する元素である。その効果を十分に発揮させるためには少なくとも3.0%以上のW含有量が必要である。しかしながら、Wを過剰に含有させても効果は飽和し、却ってクリープ強度を低下させる場合もある。さらに、Wは高価な元素であるため、過剰に含有させるとコストの増大を招く。そのため、上限を設けて、Wの含有量を3.0〜10.0%とする。W含有量の望ましい下限は3.5%、より望ましい下限は4.0%である。また、W含有量の望ましい上限は9.5%、より望ましい上限は9.0%である。
Ti:0.01〜3.0%
Tiは、微細な炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度に寄与する。その効果を得るためには0.01%以上のTi含有量が必要である。しかしながら、Tiの含有量が過剰になると炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。このため、上限を設けて、Tiの含有量を0.01〜3.0%とする。Ti含有量の望ましい下限は0.03%、より望ましい下限は0.05%である。また、Ti含有量の望ましい上限は1.2%、さらに望ましい上限は1.0%、より望ましい上限は0.8%である。
Al:3.0%以下
Alは、脱酸作用を有する元素である。しかしながら、Alの含有量が過剰になると合金の清浄性が著しく劣化して、熱間加工性および延性が低下する。そのため、Alの含有量に上限を設けて3.0%以下とする。Alの含有量は望ましくは0.3%以下、より望ましくは0.2%以下、さらに望ましくは0.1%以下である。
なお、Alの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は脱酸効果が十分に得られず合金の清浄性を逆に劣化させるとともに、製造コストの上昇を招く。そのため、Al含有量の望ましい下限は0.0005%である。Alの脱酸効果を安定して得、合金に良好な清浄性を確保させるためには、Al含有量の下限は0.001%とすることがより望ましい。
B:0.0001〜0.01%
Bは、高温での使用中に粒界に偏析して粒界を強化するとともに粒界炭化物を微細分散させることにより、クリープ強度を向上させるのに必要な元素である。この効果を得るためには、B含有量を0.0001%以上とする必要がある。しかしながら、Bの含有量が過剰になると、溶接性が劣化することに加えて、熱間加工性が劣化する。そのため、上限を設けて、Bの含有量を0.0001〜0.01%とする。B含有量の望ましい下限は0.0005%、より望ましい下限は0.001%である。また、B含有量の望ましい上限は0.008%、より望ましい上限は0.006%である。
N:0.02%以下
Nは、オーステナイトを安定にするのに有効な元素であるものの、過剰に含有されると、高温での使用中に多量の微細窒化物が粒内に析出してクリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nの含有量に上限を設けて0.02%以下とする。Nの含有量は望ましくは0.018%以下、より望ましくは0.015%以下である。
なお、Nの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端に低減するとオーステナイトを安定にする効果が得難くなり、製造コストも大きく上昇する。そのため、N含有量の望ましい下限は0.0005%、より望ましい下限は0.0008%である。
O:0.01%以下
O(酸素)は、不純物として合金中に含まれ、その含有量が過剰になると熱間加工性が低下し、さらに靱性および延性の劣化を招く。このため、Oの含有量に上限を設けて0.01%以下とする。Oの含有量は望ましくは0.008%以下、より望ましくは0.005%以下である。
なお、Oの含有量について特に下限を設ける必要はないが、極端な低減は製造コストの上昇を招く。そのため、O含有量の望ましい下限は0.0005%、より望ましい下限は0.0008%である。
Ca:0〜0.05%
Caは、熱間加工性を改善する作用を有する。具体的には、Caは、CaSを生成しSの粒界偏析を抑制することで、熱間加工性を改善する効果を有する元素である。このため、Caを含有させてもよい。しかしながら、Caの含有量が過剰になるとOと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、Caを含有させる場合には、その含有量を0.05%以下とする。Ca含有量の上限は、望ましくは0.04%である。上記の効果は、Caの含有量が0.0001%以上の場合に顕著となる。
REM:0〜0.1%
REMは、熱間加工性を改善する作用を有する。すなわち、REMは、Sとの親和力が強く、熱間加工性の向上に寄与する。このため、REMを含有させてもよい。しかしながら、REMの含有量が過剰になると、Oと結合して、清浄性を著しく低下させ、却って熱間加工性を劣化させる。このため、REMを含有させる場合には、その含有量を0.1%以下とする。REM含有量の上限は、望ましくは0.08%である。上記の効果は、REMの含有量が0.001%以上の場合に顕著となる。
なお、「REM」とは、Sc、Yおよびランタノイドの合計17元素の総称であり、REMの含有量はREMのうちの1種または2種以上の元素の合計含有量を指す。また、REMについては一般的にミッシュメタルに含有される。このため、例えば、ミッシュメタルの形で添加して、REMの量が上記の範囲となるように含有させてもよい。
上記のCaおよびREMは、そのうちのいずれか1種のみ、または2種の複合で含有させることができる。これらの元素を複合して含有させる場合の合計量は0.15%であってもよい。
Co:0〜25.0%
Coは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Coは、Niと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Coを含有させてもよい。しかしながら、Coは極めて高価な元素であるため、Coの過剰の含有は大幅なコスト増を招く。このため、Coを含有させる場合には、その含有量を25.0%以下とする。Co含有量の上限は、望ましくは1.0%、より望ましくは0.8%である。上記の効果は、Coの含有量が0.001%以上の場合に顕著となる。
Cu:0〜1.0%
Cuは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Cuは、NiおよびCoと同様オ−ステナイト生成元素であり、相安定性を高めてクリープ強度の向上に寄与する。したがって、Cuを含有させてもよい。しかしながら、Cuが過剰に含有された場合には熱間加工性の低下を招く。このため、Cuを含有させる場合には、その含有量を1.0%以下とする。Cu含有量の上限は、望ましくは0.8%である。一方、上記の効果は、Cuの含有量が0.01%以上の場合に顕著となる。
Mo:0〜10.0%
Moは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Moは、マトリックスに固溶して高温でのクリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Moを含有させてもよい。しかしながら、Moが過剰に含有された場合にはオーステナイトの安定性が低下して、却ってクリープ強度の低下を招く。そのため、Moを含有させる場合には、その含有量を10.0%以下とする。Mo含有量の上限は、望ましくは1.0%、より望ましくは0.8%である。一方、上記の効果は、Moの含有量が0.01%以上の場合に顕著となる。
V:0〜0.5%
Vは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Vは、CまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物を形成し、クリープ強度を向上させる作用を有する。したがって、Vを含有させてもよい。しかしながら、Vが過剰に含有された場合、炭化物または炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性の低下を招く。そのため、Vを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。V含有量の上限は、望ましくは0.4%である。一方、上記の効果は、Vの含有量が0.01%以上の場合に顕著となる。
Nb:0〜3.0%
Nbは、Vと同様にCまたはNと結合して微細な炭化物または炭窒化物として粒内に析出し、高温でのクリープ強度向上に寄与する。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、Nbの含有量が過剰になると炭化物や炭窒化物として多量に析出し、クリープ延性および靱性の低下を招く。そのため、Nbを含有させる場合には、その含有量を3.0以下とする。Nb含有量の上限は、望ましくは0.5%、より望ましくは0.4%である。一方、上記の効果は、Nbの含有量が0.01%以上の場合に顕著となる。
Zr:0〜0.5%
Zrは、クリープ強度を向上させる作用を有する。すなわち、Zrは、粒界強化元素であり、高温でのクリープ強度向上に寄与し、さらに、クリープ延性の向上にも寄与する。したがって、Zrを含有させてもよい。しかしながら、Zrの含有量が0.5%を超えると熱間加工性が低下する場合がある。そのため、Zrを含有させる場合には、その含有量を0.5%以下とする。Zr含有量の上限は、望ましくは0.4%である。一方、上記の効果は、Zrの含有量が0.01%以上の場合に顕著となる。
上記のCo、Cu、Mo、V、NbおよびZrは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種以上の複合で含有させることができる。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、上述の各元素を含み、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有するものである。
なお、「不純物」とは、オーステナイト系耐熱合金部材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップまたは製造環境などから混入するものを指す。
2.部材の厚さ中央部の結晶粒度
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、厚さ中央部が平均結晶粒度でASTM粒度番号4.0番以下の結晶粒からなる金属組織を有する。部材の厚さ中央部の金属組織を、平均結晶粒度でASTM粒度番号4.0番以下の粗粒組織とすることにより、優れたクリープ特性を得ることができる。本発明において、「部材の厚さ中央部」とは、部材厚さの25%となる各表面側を除外した領域をいう。
より優れたクリープ特性を得るには、部材の厚さ中央部の平均結晶粒度は、ASTM粒度番号3.0番以下であることが好ましく、2.0番以下であることがより好ましい。一方、部材の厚さ中央部の金属組織が過度に粗粒であると、クリープ延性の劣化および衝撃値の低下を招くことがあるため、部材の厚さ中央部の平均結晶粒度は、ASTM粒度番号−2.0番以上であることが好ましく、−1.0番以上であることがより好ましい。
部材の厚さ中央部の平均結晶粒度は、下記の手順で求めることができる。部材の横断面が被検面となるように試験片を切り出す。切り出した試験片の被検面を鏡面研磨した後、王水で腐食して、倍率100倍で部材の厚さ中央部の任意の3視野について光学顕微鏡で観察し、切断法により平均粒切片長さを測定する。測定した平均切片長さからASTM法により結晶粒度に換算し、平均結晶粒度とする。
なお、部材の厚さ中央部の平均結晶粒度は、部材の溶体化熱処理時の温度および時間を管理することにより調整することが可能である。溶体化熱処理の条件としては、1000〜1280℃の温度域において、0.1〜5h保持するのが好ましい。熱処理の温度域は1100〜1250℃がより好ましく、保持時間は0.2〜1.5hがより好ましい。
3.Cr主体の酸化スケールを形成する亀裂
40≦d≦500
部材表面に生成する亀裂の最大深さdが40μm未満の場合、亀裂が小さく、クリープ特性の低下には影響を及ぼさない。一方、亀裂の最大深さdが500μmを超える場合、亀裂を熱処理により生じた酸化スケールで埋めるには、熱処理温度が高く、熱処理時間が長くなり、その結果、母材の性能を劣化させることとなる。さらに、亀裂の最大深さdが500μmを超えると、後述するように、亀裂の内部を酸化スケールで充填しても、クリープ特性が低下する。
0<w/d≦0.5
亀裂の最大深さdと最大深さdの位置における亀裂の幅wの比(w/d)が0.5を超える場合には、亀裂先端の角度が大きく、亀裂が切り欠き状ではないため、亀裂先端における応力集中が小さく、亀裂がクリープ特性の低下に大きな影響を及ぼさない。しかし、比(w/d)が0.5以下の場合には、部材のクリープ特性を悪化させる。
したがって、本発明では、下記の(1)および(2)式を満たす亀裂の内面に、Cr主体の酸化スケールを形成することとした。
40≦d≦500 ・・・(1)
0<w/d≦0.5 ・・・(2)
ただし、上記式中の各記号の意味は下記の通りである。
d:亀裂の最大深さ(μm)
w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)
4.部材表面の亀裂内部に形成されるCr主体の酸化スケールの条件
母材とCr主体の酸化スケールとの間の密着力をF1、亀裂を進展させる力をF2、および、Cr主体の酸化スケール同士の密着力をF3とすると、F1>F2≧F3という関係が成り立つ、すなわち、母材とCr主体の酸化スケールとの間の密着力は他の2つの力と比べて大きい。そして、Cr主体の酸化スケールを母材の亀裂の内部に充填または被覆すると、母材とCrとの界面近傍では、母材とCr主体の酸化スケールとの間の高い密着力が亀裂を進展させる抗力として作用し、母材における亀裂の進展を抑制できる。さらに、母材とCr主体の酸化スケールとの間の密着力は、母材とFe酸化物との間の密着力よりも高いため、Cr主体の酸化スケールは、母材から剥離しにくい。これらのことから、亀裂の内部にCr主体の酸化スケールを形成させることにより、クリープ特性の低下を抑制できる。
さらに、NiおよびCrの含有率が高いオーステナイト系耐熱合金は、低合金またはフェライト系耐熱鋼と比較して、母材との密着性が良好なCr主体の酸化スケールが生成しやすい。ここで、「Cr主体の酸化スケール」とは、酸化スケール中のCrの含有量が50質量%以上の酸化スケールをいう。
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材では、亀裂の内部に充填されるCr主体の酸化スケールは、下記(3)式および(4)式を満たすものとする。
a/d≧0.5 ・・・(3)
a=s×{(2d/w)+1}1/2 ・・・(4)
ただし、上記式中の各記号の意味は下記の通りである。
d:亀裂の最大深さ(μm)
w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)
a:最大深さdの位置における酸化スケールの深さ(μm)
s:部材表面の酸化スケールの厚さ(μm)
上記(3)式は、亀裂の内部を、亀裂の最大深さの半分以上の深さまでCr主体の酸化スケールで充填することを意味する。この範囲であれば、亀裂を進展させる力よりも大きな母材とCr主体の酸化スケールとの間の密着力を得ることができ、亀裂の進展を抑制し、クリープ特性の低下を抑制することが可能である。(a/d)は、0.75以上とするのが好ましい。(a/d)は大きいほどよいが、母材中のCr濃度の低下からクリープ特性の低下が懸念されるため、1.5以下とするのが好ましい。ただし、亀裂の最大深さdが500μmを超えると、亀裂の内部を酸化スケールで完全に充填しても、亀裂を進展させる力の方が、母材−Cr間の密着力よりも大きくなり、亀裂の進展を止めることができず、クリープ特性が低下する。
ここで、図1を参照して、亀裂の形状は、左右対称であり、部材表面の酸化スケールの厚さsが一定であるものとして、亀裂内部に形成するCr主体の酸化スケールの条件を説明する。図1に示すように、三角形ABCと三角形ADEがいずれも直角三角形で相似であることから、s:b=d:w/2であり、b=(2d/w)×sが成立する。また、三角形ABCが直角三角形であることから、b+s=aであり、a=(b+s1/2である。これに、b=(2d/w)×sを代入すると、上記(4)式が得られる。
図1において、酸化スケールは、亀裂の両側の斜面(内面)に形成されていく。このとき、亀裂の最大深さdの位置における亀裂の幅wの半分(例えば、図1の辺DE)以上の長さがある斜面(例えば、図1の辺AE)の全体に酸化スケールが形成されていく。そのため、亀裂の内部を酸化スケールで完全に充填するためには、最大深さdの位置における亀裂の幅Wの中心位置(図1の点D)まで酸化スケールを形成させればよい。
5.亀裂内部に所望の深さの酸化スケールを形成する方法
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材において、部材表面の亀裂の内部に酸化スケールを、上記(3)式を満たす所望の深さaとなるように形成するには、次に規定する範囲内で熱処理を施すことが好ましい。ここで、酸素含有量が最大(20体積%)の雰囲気としては、大気を用いてもよい。
雰囲気圧力:大気圧(1atm(0.1013MPa))
雰囲気の組成範囲:酸素含有量0.1〜20体積%および残部不活性ガスの混合ガス
熱処理温度:1000〜1250℃
熱処理時間:0.5〜10時間
6.亀裂内部の酸化スケールの深さaの測定方法
亀裂内部の酸化スケールの深さaは、部材から採取した試料の断面を研磨して直接顕微鏡で観察することにより、測定することが可能である。また、部材の表面に生成した亀裂の最大深さdおよびそれに対応する亀裂の幅wがあらかじめ分かっている場合、亀裂の内部に酸化スケールを形成した後で亀裂部分を観察しなくても、部材の表面に生成した酸化スケールの厚さsを顕微鏡観察により測定すれば、上記(4)式にw、dおよびsの値を代入して、亀裂内部の酸化スケールの深さaを算出することも可能である。
さらに、部材表面の酸化スケールの厚さsとして下記(5)式から算出される値を用いることによっても、上記(4)式から亀裂内部の酸化スケールの深さaを算出することができる。
s=(PO2+0.8)×{6×(100.0008×T−21.2×t1/2}/(5×10−7) ・・・(5)
ここで、s:部材表面の酸化スケールの厚さ(μm)、T:熱処理温度(℃)、t:熱処理時間(h)、PO2:酸素分率(体積%、具体的には0.01体積%〜大気)である。ただし、PO2=0のときs=0である。
また、所望の厚さsの酸化スケールを得るには、上記(5)式を満たす条件で部材に熱処理を施せばよい。
7.好ましい部材の厚さ
本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、熱間での塑性加工や熱処理によって金属組織が粗粒となる厚肉材、特に厚さが20mm以上の厚肉材に適用することが好ましい。金属組織が粗粒であると、粒界が弱化し、微小亀裂が発生しやすいため、微小亀裂によるクリープ特性の低下を抑制する本発明の効果がより発揮されるからである。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学組成を有するオーステナイト系耐熱合金を実験室溶解してインゴットを作製した。上記インゴットを用いて、熱間での鍛造および圧延による成形ならびに表2に示す条件での溶体化熱処理を行い、厚さ25mm、幅100mm、長さ500mmの合金板を複数枚作製した。
Figure 2016037664
Figure 2016037664
上記のようにして得た各合金板から、横断面が被検面となるように平均結晶粒度を決定するための試験片を切り出して鏡面研磨した。その後、鏡面研磨した面を王水で腐食し、合金板の厚さ中央部の任意の3視野について倍率100倍で光学顕微鏡観察して、切断法により平均粒切片長さを測定し、その平均粒切片長さを1.128倍して平均結晶粒径を求めた。さらに、平均結晶粒径をASTM法により結晶粒度に換算し、平均結晶粒度を求めた。
次に、上記の各合金板について、引張試験に用いるための試験片を切り出した。引張試験用の試験片は、合金板の長手方向に平行な10mm角で長さが130mmの角棒状の試験片とし、各合金板から複数本ずつ機械加工により作製した。
上記の引張試験用の試験片を用いて、前述の加工温度が1100℃、ひずみ速度が0.0001s−1の低ひずみ速度での引張試験を行った。そして、伸び(ひずみ量)が10%、15%または20%になった時点で引張試験を中断し、引張試験中断後の試験片の横断面を研磨し、試験片表面部の亀裂の有無およびその形状(深さおよび幅)を調査した。表2には、亀裂の最大深さdおよびそれに対応する亀裂の幅wを示した。
なお、試験片表面には、付与されたひずみ量に応じてV字状の亀裂が生じた。亀裂の最大深さdの位置における亀裂の幅wは、ひずみ量10%、15%および20%に対して、それぞれ30μm、40μmおよび50μmであった。
また、上記の引張試験用の試験片を用いて、酸化スケール生成試験を行った。試験片に上記条件の伸び(ひずみ量)を加えて微小な亀裂を発生させた。各試験片には、上述の引張試験中断後に横断面を研磨した試験片で観察されたものと同程度の亀裂が発生したと推定した。
加工により亀裂を発生させた試験片には、熱処理を施し、表面および亀裂内部に種々の厚さの酸化スケールを有する試験片を得た。加工後熱処理の条件(酸素分圧、温度および時間)は、表2に示す条件とした。各試験片について、上記(5)式を用いて、熱処理条件から部材表面の酸化スケールの厚さsを算出し、上述の横断面観察で求めた亀裂の最大深さdおよび亀裂の最大深さdの位置における亀裂の幅wとともに上記(4)式に代入して亀裂内部の酸化スケールの深さaを算出した。算出した酸化スケールの厚さsおよび深さaも表2に示した。
加工後熱処理を施した試験片は、平行部の直径6mm、標点距離30mmの丸棒状のクリープ破断試験用の試験片に機械加工した。ただし、試験片の平行部には、図2に示すように、機械加工前に表面であり、亀裂が存在する平面が、幅3mm、長さ30mmで残存する形状とした。
上記のクリープ破断試験用の試験片を用いて、750℃、120MPaの条件でクリープ破断試験を行った。表2には、クリープ破断試験の結果としてクリープ破断時間を示した。クリープ破断試験結果の評価は、クリープ破断時間が1000h以上を合格とし、1000h未満を不合格とした。
表2に示すように、平均結晶粒度番号、亀裂の幅wおよび深さd、ならびに亀裂内部の酸化スケールの深さaが本発明の規定を満たす試験番号1〜4、8〜11、15〜18および22〜25は、いずれもクリープ破断時間が1570h以上であり、良好なクリープ特性を有していた。
一方、試験番号6、13、20および27は、平均結晶粒度番号が4.0番よりも大きく、結晶粒が細かすぎた。そのため、クリープ破断時間が937h以下と短く、クリープ特性に劣る結果となった。
試験番号7、14、21および28は、a/dが0.5よりも小さく、亀裂内部の酸化スケールの深さaが小さく、亀裂を進展させる力よりも大きな母材−Cr間の密着力を得ることができず、亀裂の進展を抑制することがでなかった。そのため、クリープ破断時間が890h以下と短く、クリープ特性に劣る結果となった。
参考例として挙げた、試験番号5、12、19および26は、w/dが0.5を超え、亀裂先端の切り欠き効果が小さかった。そのため、a/dの大きさに関係なくクリープ特性の低下は認められなかった。
本発明によれば、厚さが20mm以上の厚肉の合金部材を用いた場合を含め、熱間での塑性加工時に微小な亀裂が生成しても、優れたクリープ特性を維持することができる。したがって、本発明のオーステナイト系耐熱合金部材は、発電用ボイラの主蒸気管、再熱蒸気管等の厚肉、大径の高温部材として用いるのに好適である。
a.亀裂の最大深さ位置における酸化スケールの深さ
d.亀裂の最大深さ
s.部材表面の酸化スケールの厚さ
w.亀裂の最大深さ位置における亀裂の幅w

Claims (3)

  1. 表面に亀裂を有するオーステナイト系耐熱合金部材であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.15%、
    Si:1.0%以下、
    Mn:2.0%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    Ni:30.0〜70.0%、
    Cr:19.0〜35.0%、
    W:3.0〜10.0%、
    Ti:0.01〜3.0%、
    Al:3.0%以下、
    B:0.0001〜0.01%、
    N:0.02%以下、
    O:0.01%以下、
    Ca:0〜0.05%、
    REM:0〜0.1%、
    Co:0〜25.0%、
    Cu:0〜1.0%、
    Mo:0〜10.0%、
    V:0〜0.5%、
    Nb:0〜3.0%、
    Zr:0〜0.5%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    金属組織が、厚さ中央部がASTM粒度番号4.0番以下の結晶粒からなり、
    表面に生成し下記(1)式および(2)式を満たす亀裂の内面に、下記(3)式および(4)式を満たすCr主体の酸化スケールを形成した、
    オーステナイト系耐熱合金部材。
    40≦d≦500 ・・・(1)
    0<w/d≦0.5 ・・・(2)
    a/d≧0.5 ・・・(3)
    a=s×{(2d/w)+1}1/2 ・・・(4)
    ただし、上記式中の各記号の意味は下記の通りである。
    d:亀裂の最大深さ(μm)
    w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)
    a:最大深さdの位置における酸化スケールの深さ(μm)
    s:部材表面の酸化スケールの厚さ(μm)
  2. 表面に亀裂を有するオーステナイト系耐熱合金部材であって、
    化学組成が、質量%で、
    C:0.01〜0.15%、
    Si:1.0%以下、
    Mn:2.0%以下、
    P:0.03%以下、
    S:0.01%以下、
    Ni:40.0〜55.0%、
    Cr:20.0〜35.0%、
    W:3.0〜10.0%、
    Ti:0.01〜1.2%、
    Al:0.3%以下、
    B:0.0001〜0.01%、
    N:0.02%以下、
    O:0.01%以下、
    Ca:0〜0.05%、
    REM:0〜0.1%、
    Co:0〜1.0%、
    Cu:0〜1.0%、
    Mo:0〜1.0%、
    V:0〜0.5%、
    Nb:0〜0.5%、
    Zr:0〜0.5%、
    残部:Feおよび不純物であり、
    金属組織が、厚さ中央部がASTM粒度番号4.0番以下の結晶粒からなり、
    表面に生成し下記(1)式および(2)式を満たす亀裂の内面に、下記(3)式および(4)式を満たすCr主体の酸化スケールを形成した、
    オーステナイト系耐熱合金部材。
    40≦d≦500 ・・・(1)
    0<w/d≦0.5 ・・・(2)
    a/d≧0.5 ・・・(3)
    a=s×{(2d/w)+1}1/2 ・・・(4)
    ただし、上記式中の各記号の意味は下記の通りである。
    d:亀裂の最大深さ(μm)
    w:最大深さdの位置における亀裂の幅(μm)
    a:最大深さdの位置における酸化スケールの深さ(μm)
    s:部材表面の酸化スケールの厚さ(μm)
  3. 化学組成が、質量%で、下記(A)および(B)に示す元素から選択される1種以上を含有する、請求項2に記載のオーステナイト系耐熱合金部材。
    (A)Ca:0.0001〜0.05%およびREM:0.001〜0.1%
    (B)Co:0.01〜1.0%、Cu:0.01〜1.0%、Mo:0.01〜1.0%、V:0.01〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%およびZr:0.01〜0.5%
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