JP2005187909A - 疲労特性に優れる自動車用ハブおよびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】生産性が高くかつ優れた疲労強度を有する自動車用ハブおよびその製造方法を提供する。
【解決手投】自動車用のハブを、C:0.7〜1.1mass%、Si:1.0〜1.7mass%、Mn:0.5mass%以下、B:0.0005〜0.015mass%およびN:0.0015〜0.015mass%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼組織がフェライト、セメンタイトおよび黒鉛からなり、該黒鉛は平均粒径が5μm以下で、しかも粒径が10μm以下の黒鉛粒として析出したC量が全C量の1mass%以上である、炭素鋼からなるものとする。
【選択図】図2
【解決手投】自動車用のハブを、C:0.7〜1.1mass%、Si:1.0〜1.7mass%、Mn:0.5mass%以下、B:0.0005〜0.015mass%およびN:0.0015〜0.015mass%を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼組織がフェライト、セメンタイトおよび黒鉛からなり、該黒鉛は平均粒径が5μm以下で、しかも粒径が10μm以下の黒鉛粒として析出したC量が全C量の1mass%以上である、炭素鋼からなるものとする。
【選択図】図2
Description
本発明は、疲労特性に優れた自動車用ハブおよびその製造方法に関し、特に回転曲げ疲労強度の有利な向上を図ろうとするものである。
最近の自動車の車輪に用いるハブユニットは、図1に代表例を示すように、ハブ内輪1とハブ外輪4との組み合わせになり、該ハブ内輪1は、軸受けの内輪を兼ねる軸部2および車輪を取り付けるためのフランジ部7を有し、軸部2の外周面においてハブ外輪4との間に挿入したボール5を介して軸受けを構成している。なお、図1中、3はハブ内輪1の軸部2と外輪4との間にボール5を保持するためのスペーサである。
図1に示したハブ内輪1において、フランジ部7と軸部2との境界付近は、曲げ力が負荷されつつ回転力が付与されるため、このハブの素材となる鋼材は良好な疲労強度を示す必要がある。
特に、近年の環境問題から、自動車用部材に対する軽量化への要求に代表されるように、ハブの軽量化および長寿命化への要求が強く、この観点からこの種部品の疲労強度の一層の向上が要求されている。
特に、近年の環境問題から、自動車用部材に対する軽量化への要求に代表されるように、ハブの軽量化および長寿命化への要求が強く、この観点からこの種部品の疲労強度の一層の向上が要求されている。
一方、ハブは、熱間鍛造や切削加工等の工程を経て所望の形状に成形されるため、ハブの素材となる鋼材には被削性が良好であることも望まれている。
鋼材の疲労強度を向上するためには、鋼材の合金化と冷間加工条件の規制が有効であるが、合金添加は加工性および被削性の低下を招くため、工業生産の効率化および低コスト化の観点からは問題を残すものである。また、冷間加工において大きな加工率を付与するためには、冷間加工中に焼鈍工程を適宜挟まなければならず、この場合も、生産性と製造コストに問題を残すものである。
上記の問題の解決策として、特許文献1には、鋼中のCを黒鉛化することによって、冷間鍛造性を維持しつつ被削性を向上させる技術が開示されている。しかし、当技術では、Si量が1.9 〜3.0 mass%と高いために冷間加工時における変形抵抗が大きく、また形成される黒鉛も大きく変形能が低いことから、この技術を工業的に利用することは難しい。
また、特許文献2には、同じく鋼中のCを黒鉛化することによって被削性を改善する技術が開示されているが、この方法では黒鉛化処理前の焼入れ処理が不可欠であることから、製造コストおよび製造能率に問題がある。
さらに、特許文献3には、黒鉛を析出させて冷間加工性を向上させる技術が開示されているが、やはり黒鉛化に長時間を要するため、工業的に利用するには問題が残るものである。
一方、特許文献4には、C、Si、Mn、B、Al、NおよびCrの含有量を規定した鋼材を熱間加工するに当たり、熱間加工後の冷却速度を特定することによって、黒鉛を微細析出させて被削性を向上させる技術が開示されている。
特開昭51−57621 号公報
特開昭49−103817号公報
特開平3−140411号公報
特開2002−180185号公報
ここに、特許文献4に記載された技術によって、強度の劣化を招くことなしに被削性の向上をはかることが可能になったが、上述したように、近年の環境問題から疲労強度の一層の向上が求められる中、より高い疲労強度を得るためにCの固溶を抑制した際に、一方で黒鉛の析出も抑制されて被削性が大きく変動してしまい、この被削性と疲労強度とが高次にバランスした鋼材を安定して得ることが難しいところに改善の余地を残していた。
以上説明したように、従来開発されている黒鉛鋼を用いて冷間鍛造によりハブを成形しようとすると、生産性や製造コストおよび品質管理の面で不利となる。特に、黒鉛鋼をハブ等の機械構造部品に適用する場合には、黒鉛の析出量及び析出状態によって部品の疲労強度と被削性との両立が難しいことが常に問題となる。
そこで、本発明では、熱間鍛造によりハブ形状に粗加工を行い、粗加工後の部品を切削加工する際に被削性が非常に良好であり、かつ最終製品では優れた疲労特性を有する自動車用ハブおよびその製造方法について、提供することを目的とする。
上記目的を達成するために、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)C:0.7〜1.1mass%、
Si:1.0〜1.7mass%、
Mn:0.5mass%以下、
B:0.0005〜0.015mass%および
N:0.0015〜0.015mass%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼組織がフェライト、セメンタイトおよび黒鉛からなり、該黒鉛は平均粒径が5μm以下で、しかも粒径が10μm以下の黒鉛粒として析出したC量が全C量の1mass%以上である、炭素鋼からなることを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。
(1)C:0.7〜1.1mass%、
Si:1.0〜1.7mass%、
Mn:0.5mass%以下、
B:0.0005〜0.015mass%および
N:0.0015〜0.015mass%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼組織がフェライト、セメンタイトおよび黒鉛からなり、該黒鉛は平均粒径が5μm以下で、しかも粒径が10μm以下の黒鉛粒として析出したC量が全C量の1mass%以上である、炭素鋼からなることを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。
(2)上記(1)において、炭素鋼は、さらに
Cr:0.1mass%以下、
Cu:0.3mass%以下、
Ni:0.3mass%以下、
Mo:0.6mass%以下、
Ti:0.005mass%以下および
Nb:0.07mass%以下
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。
Cr:0.1mass%以下、
Cu:0.3mass%以下、
Ni:0.3mass%以下、
Mo:0.6mass%以下、
Ti:0.005mass%以下および
Nb:0.07mass%以下
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。
(3)上記(1)または(2)において、さらに軸受けの転動周面に高周波焼入れによる表面硬化層を有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。
(4)C:0.7〜1.1mass%、
Si:1.0〜1.7mass%、
Mn:0.5mass%以下、
B:0.0005〜0.015mass%および
N:0.0015〜0.015mass%
を含有し、残郡Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する炭素鋼を素材とし、該素材に、950〜1200℃の温度域での加工率が70%以上である熱間鍛造を施して自動車用ハブの粗形状に加工し、次いで切削加工を施して自動車用ハブ製品として仕上げることを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。
Si:1.0〜1.7mass%、
Mn:0.5mass%以下、
B:0.0005〜0.015mass%および
N:0.0015〜0.015mass%
を含有し、残郡Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する炭素鋼を素材とし、該素材に、950〜1200℃の温度域での加工率が70%以上である熱間鍛造を施して自動車用ハブの粗形状に加工し、次いで切削加工を施して自動車用ハブ製品として仕上げることを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。
(5)上記(4)において、炭素鋼は、さらに
Cr:0.1mass%以下、
Cu:0.3mass%以下、
Ni:0.3mass% 以下、
Mo:0.6mass% 以下、
Ti:0.05mass% 以下および
Nb:0.07mass% 以下
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。
Cr:0.1mass%以下、
Cu:0.3mass%以下、
Ni:0.3mass% 以下、
Mo:0.6mass% 以下、
Ti:0.05mass% 以下および
Nb:0.07mass% 以下
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。
(6)上記(4)または(5)において、切削加工の後に、成形されたハブ製品の軸受けの転動周面に高周波焼入れを施すことを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。
本発明の自動車用ハブによれば、粗成形後の切削加工の際に非常に良好な被削性を示すとともに、最終製品において優れた疲労特性を示す。
また、本発明の自動車用ハブの製造方法によれば、熱間鍛造により成形した後に優れた被削性を有するために、ハブ形状への成形工程において生産性向上および製造コストの削減が可能であるとともに、ハブ最終製品については優れた疲労強度を付与できるという効果を有する。
また、本発明の自動車用ハブの製造方法によれば、熱間鍛造により成形した後に優れた被削性を有するために、ハブ形状への成形工程において生産性向上および製造コストの削減が可能であるとともに、ハブ最終製品については優れた疲労強度を付与できるという効果を有する。
発明者らの検討によれば、素材鋼中のCを黒鉛化して析出させることが、機械部品の被削性を高めるのに有効であるのは、Cが黒鉛化されることによって鋼の母相の硬さ自体が低下し、しかも黒鉛が切削時に潤滑剤として作用することにより、工具の温度上昇を抑制する結果であることがわかった。また、被削性の向上のためには、黒鉛を微細に分散させることが不可欠であることについても知見した。この理由は、黒鉛の被削性向上効果が、黒鉛の潤滑効果とともに、切削時のせん断領域において材料が変形し黒鉛と母相との界面に亀裂が入り、その亀裂の連結によって切削が容易になるためである。即ち、黒鉛が微細に分散し黒鉛と黒鉛との平均距離が短いほど、亀裂の連結は容易となる。
一方、疲労強度を上昇させるためには、素材を高硬度とすること、鋼材に含有される非金属介在物を最小限とすることが重要である。特に、硬度上昇については、高C化のもたらす効果が著しい。発明者らは、硬度上昇をもたらす高C化は、また同時に、鋼のCの過飽和度を上昇させ、黒鉛が析出しやすい状態をもたらすことに着目し、併せて被削性向上を達成できる条件について検討を重ねた。
自動車用ハブに求められる使用性能は、高い曲げ疲労強度である。曲げ疲労強度については、前述のように、C添加による向上効果が著しく、素材のC含有量を増加することによって安価かつ簡便に改善することが可能である。しかしながら、高濃度で含有されたCが黒鉛として析出してくる場合、黒鉛化したCは被削性を向上させるものの、その析出量にもとづく被削性向上効果には飽和点があり、逆に黒鉛の析出に伴う疲労強度の低下には、C自体の強化寄与分、即ち固溶およびフェライトとセメンタイトとの層状混合組織であるパーライトもしくはセメンタイト単体として鋼の強化に寄与する割合自体の低下と、疲労亀裂伝搬に黒鉛が関係することの両面から、疲労強度が低下することを明らかにした。
黒鉛の析出に伴う疲労強度の低下要因のうち、疲労亀裂伝播への黒鉛析出の寄与については、黒鉛の析出部が疲労亀裂の発生・伝播サイトになりやすいことが原因であると推定し鋭意検討した結果、一定の析出寸法を下回って微細に析出した黒鉛は、析出量によらず実質的に疲労強度低下の要因とはならないことを明らかにした。逆に、鋼中C量の50mass%を超えて黒鉛を析出させると、黒鉛の粒成長が著しく助長され疲労強度の低下要因にならない微細黒鉛粒を維持することが困難になることも明らかにした。
一方、黒鉛析出による被削性の向上については、黒鉛として析出したC量が鋼中C量の1mass%未満では、被削性の向上に殆ど寄与しないことを明らかにした。
そして、さらに以上の知見を自動車のハブに適用して、ハブの成形工程における被削性の向上および、ハブ最終製品の疲労強度の向上を試みたところ、特定の成分組成を有する炭素鋼を素材とし、これを特定の温度、加工率で熱間鍛造してハブの粗形状に加工することで、鋼中全C量の1mass%以上を黒鉛として析出させることが可能となり、かつ析出した黒鉛粒は疲労強度に影響を及ぼさない程度に微細にできるという知見を得た。
本発明は、以上の知見に基づいてなされたものであり、即ち、被削性と疲労強度とのバランスの観点から、添加するCの黒鉛としての析出量を制御したこと、およびさらに黒鉛の析出状態を微細にしたことの2点が、本発明の主眼となるところである。
以下、本発明を具体的に説明する。
まず、本発明において、ハブの成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.7〜1.1mass%
Cは疲労強度の向上に直接作用する。C含有量が0.7mass%未満であると疲労強度向上の効果が十分でなく、一方1.1mass%を超えると組織制御を行っても黒鉛の析出の絶対量が多くなりすぎ、疲労強度が低下するため、C含有量は0.7〜1.1mass%とする。
まず、本発明において、ハブの成分組成を上記の範囲に限定した理由について説明する。
C:0.7〜1.1mass%
Cは疲労強度の向上に直接作用する。C含有量が0.7mass%未満であると疲労強度向上の効果が十分でなく、一方1.1mass%を超えると組織制御を行っても黒鉛の析出の絶対量が多くなりすぎ、疲労強度が低下するため、C含有量は0.7〜1.1mass%とする。
Si:1.0〜1.7mass%
Siは、黒鉛の析出形態を制御する上で重要な元素である。Si含有量が1.Omass%未満であると、黒鉛の析出速度が遅くなり、後述する条件の熱間鍛造を行っても黒鉛を十分に析出させることができなくなり、被削性が悪くなる。反面、1.7mass%を超えて含有していると、疲労強度も低下する。また、黒鉛の寸法が大きくなって変形能が低下する傾向があるため、1.0〜1.7mass%の範囲に限定した。
Siは、黒鉛の析出形態を制御する上で重要な元素である。Si含有量が1.Omass%未満であると、黒鉛の析出速度が遅くなり、後述する条件の熱間鍛造を行っても黒鉛を十分に析出させることができなくなり、被削性が悪くなる。反面、1.7mass%を超えて含有していると、疲労強度も低下する。また、黒鉛の寸法が大きくなって変形能が低下する傾向があるため、1.0〜1.7mass%の範囲に限定した。
Mn:0.5mass%以下
Mnは、鋼の強度および疲労強度の向上に効果がある元素であり、好ましくは0.1mass%以上で含有させる。しかし、0.5mass%を超えて含有すると、強度の向上効果は飽和するばかりか、疲労強度はかえって低下する傾向に転じるため、0.5mass%以下の範囲に限定した。
Mnは、鋼の強度および疲労強度の向上に効果がある元素であり、好ましくは0.1mass%以上で含有させる。しかし、0.5mass%を超えて含有すると、強度の向上効果は飽和するばかりか、疲労強度はかえって低下する傾向に転じるため、0.5mass%以下の範囲に限定した。
B:0.0005〜0.015mass%
Bは、鋼中のNと結合してBNとして鋼中に存在することで黒鉛の析出サイトを増加させ、黒鉛の微細析出を促がす作用がある。B含有量が0.0005mass%未満ではその効果が十分でなく、微細な黒鉛粒を得ることができなくなる。一方、0.015mass%を超えると、粒界強度を弱め、疲労強度を低下させるため、その添加量は0.0005〜0.015mass%の範囲に限定した。
Bは、鋼中のNと結合してBNとして鋼中に存在することで黒鉛の析出サイトを増加させ、黒鉛の微細析出を促がす作用がある。B含有量が0.0005mass%未満ではその効果が十分でなく、微細な黒鉛粒を得ることができなくなる。一方、0.015mass%を超えると、粒界強度を弱め、疲労強度を低下させるため、その添加量は0.0005〜0.015mass%の範囲に限定した。
N:0.0015〜0.015mass%
前述のBNを形成するために、Nは0.0015mass%以上含有させる必要がある。一方、0.015mass%を超えて含有すると、やはり疲労強度が低下するため、0.0015〜0.015mass%の範囲に限定した。
前述のBNを形成するために、Nは0.0015mass%以上含有させる必要がある。一方、0.015mass%を超えて含有すると、やはり疲労強度が低下するため、0.0015〜0.015mass%の範囲に限定した。
以上、基本成分について説明したが、本発明ではその他にも、以下に述べる元素を適宜含有させることができる。
Cr:0.1mass%以下
Crは黒鉛の析出を抑制する作用を有するため、鋼に含有されることは好ましくないが、0.1mass%以下であれば許容できる。そのため、Crを含有する場合は0.1mass%を上限とする。
Crは黒鉛の析出を抑制する作用を有するため、鋼に含有されることは好ましくないが、0.1mass%以下であれば許容できる。そのため、Crを含有する場合は0.1mass%を上限とする。
Cu:0.3 mass%以下
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、Cuを添加することにより焼入れ性を調整することができる。しかしながら、Cu含有量が0.3 mass%を超えると、熱間加工時に割れが発生し易くなるため、その含有量は0.3 mass%を上限とする。
Cuは、焼入れ性の向上に有効であり、Cuを添加することにより焼入れ性を調整することができる。しかしながら、Cu含有量が0.3 mass%を超えると、熱間加工時に割れが発生し易くなるため、その含有量は0.3 mass%を上限とする。
Ni:0.3 mass%以下
Niは、Cuと同様に焼入れ性の向上に有効であるため含有させてもよいが、その含有量が0.3 mass%を超えても、それ以上の焼入れ性向上効果は期待できないから、0.3 mass%を上限とする。
Niは、Cuと同様に焼入れ性の向上に有効であるため含有させてもよいが、その含有量が0.3 mass%を超えても、それ以上の焼入れ性向上効果は期待できないから、0.3 mass%を上限とする。
Mo:0.6 mass%以下
Moは、焼入れ性の向上に有用な元素であるため、Cuと同様に焼入れ性を調整するために添加してもよい。しかし、0.6 mass%を超えて含有させると、鋼材の硬さが著しく上昇し、加工性の低下を招く。よって、Moを添加する場合は0.6 mass%を上限とする。
Moは、焼入れ性の向上に有用な元素であるため、Cuと同様に焼入れ性を調整するために添加してもよい。しかし、0.6 mass%を超えて含有させると、鋼材の硬さが著しく上昇し、加工性の低下を招く。よって、Moを添加する場合は0.6 mass%を上限とする。
Ti:0.05mass%以下
Tiは、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる作用も有するので、添加してもよい。しかしながら、0.05mass%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.05mass%を上限とする。
Tiは、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼もどし軟化抵抗性を向上させる作用も有するので、添加してもよい。しかしながら、0.05mass%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.05mass%を上限とする。
Nb:0.07mass%
Nbは、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼戻し軟化抵抗性を向上させる作用も有するため添加してもよい。しかしながら、0.07mass%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.07mass%を上限とする。
Nbは、鋼中でCおよびNと結合し析出強化元素として作用する。また、焼戻し軟化抵抗性を向上させる作用も有するため添加してもよい。しかしながら、0.07mass%を超えて添加してもその効果は飽和するため、0.07mass%を上限とする。
上記した元素以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。不可避的不純物としては、P、S、OおよびAl等があげられる。
すなわち、Pは、粒界強度を低下させることにより疲労強度を低下させ、また焼割れを助長する弊害もあるが、0.05mass%までは許容できる。
Sは、鋼中でMnS を形成し、切削性を向上させる作用を有するが、0.02mass%を超えて含有されると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、0.02mass%までが許容できる。
Oは、酸化物系介在物として鋼中に存在するが、O含有量が多いと疲労寿命が低下する。この点を考慮すると、許容できる上限は0.02mass%である。
Alは、脱酸に有効な元素であるので、O量を低下させるために混入されてもよいが、0.05mass%を超えて含有されてもその効果は飽和するので、0.05mass%まで許容できる。
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定するだけでは不十分であり、鋼組織を調整することも重要である。
すなわち、Pは、粒界強度を低下させることにより疲労強度を低下させ、また焼割れを助長する弊害もあるが、0.05mass%までは許容できる。
Sは、鋼中でMnS を形成し、切削性を向上させる作用を有するが、0.02mass%を超えて含有されると粒界に偏析して粒界強度を低下させるため、0.02mass%までが許容できる。
Oは、酸化物系介在物として鋼中に存在するが、O含有量が多いと疲労寿命が低下する。この点を考慮すると、許容できる上限は0.02mass%である。
Alは、脱酸に有効な元素であるので、O量を低下させるために混入されてもよいが、0.05mass%を超えて含有されてもその効果は飽和するので、0.05mass%まで許容できる。
以上、好適成分組成範囲について説明したが、本発明では、成分組成を上記の範囲に限定するだけでは不十分であり、鋼組織を調整することも重要である。
すなわち、本発明においては、ハブの製品形状となった後の鋼組織が、フェライト、セメンタイトおよび黒鉛からなり、該黒鉛は平均粒径が5μm 以下であり、しかも粒径10μm 以下の黒鉛粒として析出したC量が全C量の1mass%以上である必要がある。
先ず、組織中に黒鉛が必要である理由は、粗形状に成形した後のハブに切削加工を加える際に黒鉛が析出していないと、被削性が劣るからである。黒鉛以外の残部をフェライトとセメンタイトとした理由は、上記した成分組成を有する鋼材で後述する量およびサイズの黒鉛粒を析出させると、鋼組織はフェライトとセメンタイト及び両者の混合組織であるパーライトとなるからである。なお、本発明では、パーライトはフェライトとセメンタイトの層状組織であるため、フェライトとセメンタイトからなる組織に含まれるものとした。
先ず、組織中に黒鉛が必要である理由は、粗形状に成形した後のハブに切削加工を加える際に黒鉛が析出していないと、被削性が劣るからである。黒鉛以外の残部をフェライトとセメンタイトとした理由は、上記した成分組成を有する鋼材で後述する量およびサイズの黒鉛粒を析出させると、鋼組織はフェライトとセメンタイト及び両者の混合組織であるパーライトとなるからである。なお、本発明では、パーライトはフェライトとセメンタイトの層状組織であるため、フェライトとセメンタイトからなる組織に含まれるものとした。
また、黒鉛は平均粒径が5μm 以下である必要がある。黒鉛粒の平均粒径が5μm を超えると、黒鉛粒が疲労亀裂の発生・伝播サイトとなり疲労強度が低下してしまう。さらに、黒鉛として析出したC量は鋼中全C量の1mass%以上である必要がある。鋼中Cの1mass%以上が黒鉛として析出していないと、ハブ形状に粗加工後に切削を施す際に、鋼の被削性が悪いので、切削工具の寿命が短くなり生産性の悪化、製造コストの上昇を招くこととなる。好ましくは、析出C量を鋼中全C量の5mass%以上とする。
一方、本発明において、疲労強度を上昇する上では、固溶Cあるいは炭化物(セメンタイト)による高強度化を図ることが好ましいため、黒鉛として析出するC量は、鋼中全C量に対して50mass%以下であることが好ましい。
一方、本発明において、疲労強度を上昇する上では、固溶Cあるいは炭化物(セメンタイト)による高強度化を図ることが好ましいため、黒鉛として析出するC量は、鋼中全C量に対して50mass%以下であることが好ましい。
ここで、鋼中全C量に対する黒鉛として析出したC量の比率は、走査型電子顕微鏡にて観察を行い、析出黒鉛の面積率を画像解析装置により測定し、これを析出黒鉛体積率として、黒鉛の比重と析出黒鉛体積率とから、黒鉛化したC量率を算出することにより求めることができる。本発明においては、微細に析出した黒鉛が全C量の1%以上であることを必要とするので、粒径10μm 以下の黒鉛粒について上記の面積率を測定して、C量率を算出するものとする。
次に、本発明の製造条件について説明する。
本発明では、図2に示すように、所定の成分組成に調整した鋼材を熱間圧延により棒状にした後切断した素材10を用い、熱間鍛造によりハブ形状に粗成形を行って粗成形品11とし、ついでこの粗成形品11に対して、例えばボルト穴12の穴明け加工等の切削加工を施して、仕上成形品13とする。
本発明では、図2に示すように、所定の成分組成に調整した鋼材を熱間圧延により棒状にした後切断した素材10を用い、熱間鍛造によりハブ形状に粗成形を行って粗成形品11とし、ついでこの粗成形品11に対して、例えばボルト穴12の穴明け加工等の切削加工を施して、仕上成形品13とする。
この際、素材10を粗成形品11に熱間鍛造する時の鍛造条件として、950℃〜1200℃の温度域で熱間鍛造し、その時の加工率を70%以上とする必要がある。この熱間鍛造時の温度を950℃以上とすることによって、鋼中のCを固溶させておき、さらに鍛造時の加工率を70%以上とすることにより組織を微細化する。そして、鍛造時の加工率70%以上という強加工による組織微細化および適量のB、N含有によるBN析出により、多量に黒鉛析出サイトを生成し、鍛造後の冷却過程において、鋼中Cの1mass%以上を微細黒鉛粒として析出させ、かつ黒鉛の平均粒径を5μm 以下の微細なものとする。
すなわち、鍛造温度が950℃未満であると、加工率を70%以上としたとしても後の冷却過程でのCの黒鉛化が不十分となるため、全C量に対する黒鉛となったC量の比率を1mass%以上とすることができなくなる。
また、加工率が70%未満であると、黒鉛粒が粗大化するため、黒鉛粒の平均粒径を5μm 以下とすることができなくなる。ここで、Cを黒鉛として上記の量、平均粒径で析出させるためには、熱間鍛造後600℃までの冷却速度を10℃/s以下とすることが好ましい。また、600℃まで低下した後は10℃/s以下とすることが好ましい。なお、本発明において、鍛造時の加工率とは、図2に示すハブ成形工程において、棒状の素材10の軸方向と直角方向の断面の面積Slと粗成形品11の軸方向と直角方向の最大断面積S2とから、(S2−Sl)/S2×100で求められる値(%)であり、フランジ部の最大加工率に対応するものである。
また、加工率が70%未満であると、黒鉛粒が粗大化するため、黒鉛粒の平均粒径を5μm 以下とすることができなくなる。ここで、Cを黒鉛として上記の量、平均粒径で析出させるためには、熱間鍛造後600℃までの冷却速度を10℃/s以下とすることが好ましい。また、600℃まで低下した後は10℃/s以下とすることが好ましい。なお、本発明において、鍛造時の加工率とは、図2に示すハブ成形工程において、棒状の素材10の軸方向と直角方向の断面の面積Slと粗成形品11の軸方向と直角方向の最大断面積S2とから、(S2−Sl)/S2×100で求められる値(%)であり、フランジ部の最大加工率に対応するものである。
なお、粗成形品に対して仕上加工を施し、仕上成形品にする際には、切削加工の他に転造加工等の通常ハブ軸受を成形する上で必要な加工を行っても良い。
特に、軸受けの転動周面14の部分には、高周波焼入れを施して硬化層を形成させることが、通常のハブ軸受においては行われていて、本発明においても当然、この周面14に高周波焼入れを施して硬化層を形成させることが好ましい。
特に、軸受けの転動周面14の部分には、高周波焼入れを施して硬化層を形成させることが、通常のハブ軸受においては行われていて、本発明においても当然、この周面14に高周波焼入れを施して硬化層を形成させることが好ましい。
表1に示す化学組成の鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造、熱間圧延工程を経て、丸棒状の素材を得た。この素材を適当な長さに切断した後、表2に示す条件にて熱間鍛造を行い、ハブの粗成形品を得た(図2参照)。ここで、ハブの粗成形品の寸法は、該粗成形品から後述する曲げ疲労試験片が採取できるよう、通常の乗用車に用いられるハブの約1.5倍程度の大きさのものとした。
得られたハブの粗成形品から、組織観察用のサンプルを採取し、光学顕微鏡により組織を同定するとともに、走査型電子顕微鏡を用いて観察を行い、鋼中全C量に対する粒径10μm 以下の黒鉛粒として析出したCの比率(mass%)を算出した。
また、得られたハブの粗成形品について被削性試験を実施した。被削性試験は、材質SKH4、4mmφのドリルを用い、1500rpmの切削速度で、粗成形品のフランジ部7(図1参照)に12mmの穿孔を連続して行い、切削不能になるまでの穿孔全長を計測することにより行った。
また、得られたハブの粗成形品について被削性試験を実施した。被削性試験は、材質SKH4、4mmφのドリルを用い、1500rpmの切削速度で、粗成形品のフランジ部7(図1参照)に12mmの穿孔を連続して行い、切削不能になるまでの穿孔全長を計測することにより行った。
さらに、ハブの疲労強度を評価するため、得られた粗成形品の軸部2から(図1参照)、ハブの回転軸方向を試験片の長さ方向にとって、JIS Z 2274に準拠した1号試験片(平行部径:8mmφ)を採取し、回転曲げ疲労試験に供した。そして、1.2×107回で破断しない限界応力を疲労限として求め、回転曲げ疲労強度を評価した。
表2には、組織の同定結果、鋼中C量に対する微細黒鉛粒として析出したC量、被削性試験結果、回転曲げ疲労試験結果について併記する。
表2には、組織の同定結果、鋼中C量に対する微細黒鉛粒として析出したC量、被削性試験結果、回転曲げ疲労試験結果について併記する。
表2から明らかなように、本発明の成分組成範囲を満たす炭素鋼を用い、かつ鍛造条件も本発明の範囲を満たす条件とした場合には、結果として、金属組織、黒鉛として析出したCの比率、黒鉛の平均粒子径も本発明の範囲を満足するものが得られている。そして、これらの発明例は、いずれも穿孔距離20mm以上、回転曲げ疲労強度450MPa以上を示しており、被削性および疲労特性に優れていることがわかる。
これに対して、試験No.12は、黒鉛として析出したCの比率および黒鉛の平均粒子径のいずれも本発明の範囲を満足するものの、黒鉛の絶対量が多すぎるため疲労強度が低い。逆に、試験No.17はC含有量が低いために疲労強度が低く、さらに黒鉛の析出も認められないために被削性も悪い。
また、試験No.13はSi含有量が、そして試験No.14はMn含有量が、それぞれ高いために疲労強度が低い。逆に、試験No.18は、Si含有量が低いために黒鉛が析出しておらず被削性が悪く、試験No.19はMn含有量が低いため疲労強度が低い。
試験No.15はB含有量が、そして試験No.16はN含有量が、それぞれ低いため、黒鉛の析出核となるBNの析出が不十分となり、結果として黒鉛が微細析出せず、いずれも疲労強度が劣っている。
試験No.20、No.27、No.28はいずれも、鍛造温度が低いため、鋼中Cの黒鉛としての析出量が少なく被削性に劣っている。
試験No.21〜26は、加工率が小さいため、黒鉛の平均粒子径が5μm を超えており、疲労強度および被削性が低い。
また、試験No.13はSi含有量が、そして試験No.14はMn含有量が、それぞれ高いために疲労強度が低い。逆に、試験No.18は、Si含有量が低いために黒鉛が析出しておらず被削性が悪く、試験No.19はMn含有量が低いため疲労強度が低い。
試験No.15はB含有量が、そして試験No.16はN含有量が、それぞれ低いため、黒鉛の析出核となるBNの析出が不十分となり、結果として黒鉛が微細析出せず、いずれも疲労強度が劣っている。
試験No.20、No.27、No.28はいずれも、鍛造温度が低いため、鋼中Cの黒鉛としての析出量が少なく被削性に劣っている。
試験No.21〜26は、加工率が小さいため、黒鉛の平均粒子径が5μm を超えており、疲労強度および被削性が低い。
1 ハブ内輪
2 軸部
3 スペーサ
4 外輪
5 軸受けボール
7 フランジ部
10 素材
11 粗成形品
12 ボルト穴
13 仕上成形品
14 軸受けポールが転動する周面
2 軸部
3 スペーサ
4 外輪
5 軸受けボール
7 フランジ部
10 素材
11 粗成形品
12 ボルト穴
13 仕上成形品
14 軸受けポールが転動する周面
Claims (6)
- C:0.7〜1.1mass%、
Si:1.0〜1.7mass%、
Mn:0.5mass%以下、
B:0.0005〜0.015mass%および
N:0.0015〜0.015mass%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼組織がフェライト、セメンタイトおよび黒鉛からなり、該黒鉛は平均粒径が5μm以下で、しかも粒径が10μm以下の黒鉛粒として析出したC量が全C量の1mass%以上である、炭素鋼からなることを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。 - 請求項1において、炭素鋼は、さらに
Cr:0.1mass%以下、
Cu:0.3mass%以下、
Ni:0.3mass%以下、
Mo:0.6mass%以下、
Ti:0.05mass%以下および
Nb:0.07mass%以下
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。 - 請求項1または2において、軸受けの転動周面に高周波焼入れによる表面硬化層を有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブ。
- C:0.7〜1.1mass%、
Si:1.0〜1.7mass%、
Mn:0.5mass%以下、
B:0.0005〜0.015mass%および
N:0.0015〜0.015mass%
を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有する炭素鋼を素材とし、該素材に、950〜1200℃の温度域での加工率が70%以上である熱間鍛造を施して自動車用ハブの粗形状に加工し、次いで切削加工を施して自動車用ハブ製品として仕上げることを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。 - 請求項4において、炭素鋼は、さらに
Cr:0.1mass%以下、
Cu:0.3mass%以下、
Ni:0.3mass%以下、
Mo:0.6mass%以下、
Ti:0.05mass%以下および
Nb:0.07mass%以下
から選ばれる1種または2種以上を含有することを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。 - 請求項4または5において、切削加工の後に、成形されたハブ製品の軸受けの転動周面に高周波焼入れを施すことを特徴とする疲労特性に優れた自動車用ハブの製造方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2003432821A JP2005187909A (ja) | 2003-12-26 | 2003-12-26 | 疲労特性に優れる自動車用ハブおよびその製造方法 |
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ID=34790411
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Cited By (2)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JP2007024260A (ja) * | 2005-07-20 | 2007-02-01 | Ntn Corp | 転動部品およびこれを用いた転がり軸受 |
JP2014001436A (ja) * | 2012-06-20 | 2014-01-09 | Nippon Steel & Sumitomo Metal | オーステナイト系耐熱鋼管 |
-
2003
- 2003-12-26 JP JP2003432821A patent/JP2005187909A/ja active Pending
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JP4608379B2 (ja) * | 2005-07-20 | 2011-01-12 | Ntn株式会社 | 転動部品およびこれを用いた転がり軸受 |
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