JPH11106863A - 冷間加工性に優れた機械構造用鋼材及びその製造方法 - Google Patents

冷間加工性に優れた機械構造用鋼材及びその製造方法

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JPH11106863A
JPH11106863A JP27443497A JP27443497A JPH11106863A JP H11106863 A JPH11106863 A JP H11106863A JP 27443497 A JP27443497 A JP 27443497A JP 27443497 A JP27443497 A JP 27443497A JP H11106863 A JPH11106863 A JP H11106863A
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steel
graphite
cold
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JP27443497A
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Inventor
Kenichi Kawazoe
健一 河添
Yasuo Kurokawa
八寿男 黒川
Yoshihiko Kamata
芳彦 鎌田
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】低炭素鋼と同等の冷間加工性を有し、且つ、熱
処理により、中・高炭素鋼レベルの特性を有する機械構
造用鋼材及びその製造方法を提供する。 【解決手段】C:0.3〜0.8%、Si:0.15超〜0.50%未
満、Mn:0.05〜0.6%、W:0.01〜0.5%、B:0.0005〜0.
015%、Al:0.005〜0.10%、N:0.001〜 0.02%、Cu:0
〜0.5%、Ni:0〜0.5%、Cr:0〜0.2%、Mo:0〜0.3
%、Nb:0〜0.05%、V:0〜0.2%、Ti:0〜0.2%、Zr:
0〜0.2%、Pb:0〜0.5%、Bi: 0〜0.5%、Te:0〜0.1
%、Se:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、P≦0.03%、S≦0.0
5%、残部 Fe及び不純物の組成で、組織が、結晶粒度で
JIS 粒度番号 5〜10のフェライト及び最大直径が20μm
以下の黒鉛、並びにセメンタイトからなり、硬度がHv12
0 以下である冷間加工性に優れた機械構造用鋼材。その
製造方法は、熱間で加工した後、減面率で5〜50%の冷
間加工を行い、更に、650〜720℃で5〜20時間焼鈍す
る。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、冷間加工性に優れ
た機械構造用鋼材及びその製造方法に関し、詳しくは、
引き抜き、鍛造や転造などの冷間加工により各種の機械
構造用部品に成形後、熱処理をして使用する冷間加工性
に優れた機械構造用鋼材及びその製造方法に関する。更
に詳しくは、JISの機械構造用炭素鋼鋼材のうちS2
0Cの球状化焼鈍材レベルの冷間加工性を有し、且つ、
焼入れ焼戻しの所謂「調質処理」後や、表面硬化処理と
しての高周波焼入れ後には、S35CからS58Cとい
った中・高炭素鋼鋼材レベルの特性(強度、靭性や耐摩
耗性など)を有する機械構造用鋼材及びその製造方法に
関する。
【0002】
【従来の技術】機械構造用部品は、熱間鍛造後に機械加
工を行って成形した後、焼入れ焼戻しなどの熱処理を施
して製造されることが多かった。
【0003】一方、冷間で鍛造や転造などを行う鋼材の
加工方法は、切削加工に比較して生産効率や材料歩留ま
りが高く、且つ寸法精度も優れている。このため、コス
ト合理化や生産性向上の観点から、近年では冷間鍛造な
どの冷間成形加工による部品製造の要求が高まってい
る。
【0004】ところが、「冷間成形加工」は極めて激し
い加工方法である。このため、工具や潤滑の高性能化が
厳しく要求されるようになっている。更に、被加工材の
加工性に関しても、変形抵抗が小さく変形能が大きいこ
とが必要であるため、冷間加工性に優れた素材鋼の開発
が要求されている。
【0005】一般に、鋼はC(炭素)含有量が増すと変
形抵抗は増加し変形能も劣化する。したがって、従来冷
間加工の多くはC含有量の比較的低い、Cが0.25重
量%以下の鋼材に適用されてきた。なお、C含有量が
0.20重量%程度の鋼の場合にも、冷間加工性を確保
する目的で加工前に球状化焼鈍を行うことがある。
【0006】加工後に焼入れ、焼戻しなどの熱処理を施
して高強度を得ようとする素材鋼には、通常0.3重量
%以上のCが含有されている。この場合、冷間加工性を
確保する目的で加工前に球状化焼鈍を行う必要がある
が、それでも用いられる鋼材のC含有量は高々0.53
重量%程度で、それ以上のC含有量の鋼に対しては、冷
間での鍛造などによる成形加工の適用は困難であった。
【0007】歯車など耐摩耗性が要求される部品には硬
度、特に表面硬度の高いことが必要である。そのため、
低C鋼材を素材として冷間での鍛造や転造をその成形手
段として適用した場合には、加工した後で浸炭処理し、
接触部分となる表面部のC量を高めて耐摩耗性や耐疲労
特性を向上させている。ところが、浸炭は高温で長時間
を要する熱処理であるため生産性が低い。加えて、浸炭
後の焼入れによる歪を生じ易い。
【0008】「浸炭」と同様な耐摩耗性向上のための表
面硬化処理としては、「高周波焼入れ」や「炎焼入れ」
が知られており、短時間で効率よく処理が可能である。
しかし、部品に対して耐摩耗性だけではなく、耐疲労特
性、強度や靭性などの所望の機械的性質を共に付与する
ためには、母材(素材鋼)にある程度のCを含有させる
ことが必要である。
【0009】このような状況の下、より高いC含有量で
も冷間加工性に優れている鋼として所謂「黒鉛化鋼」が
注目されている。この鋼は、同じC含有量であっても鋼
中のCを黒鉛化させておくと、球状化焼鈍を施してセメ
ンタイトを球状化させた場合よりも硬度(強度)が低下
して冷間加工性が向上するというものである。
【0010】上記の黒鉛化鋼に関しては、例えば、特開
平7−3390号公報、特開平7−138697号公報
や特開平7−150293号公報が開示されている。
【0011】このうち特開平7−3390号公報には、
「被削性及び冷間鍛造性に優れた機械構造用鋼」が提案
されている。しかし、この公報に記載された鋼は、重量
%で0.5〜2.0%のSiを含むものである。このた
め、前記の鋼を素材鋼として用いて黒鉛を析出させ、所
望の部品形状に冷間成形した後、部品に所望の特性を付
与するために焼入れ、焼戻しの熱処理(所謂「調質処
理」)を施しても、靭性の面では必ずしも満足できるも
のではなかった。
【0012】特開平7−150293号公報で提案され
た「黒鉛複合快削鋼」にも、重量%で0.5〜2.0%
のSiが含有されている。このため、やはり前記の鋼を
素材鋼として用いて黒鉛を析出させ、所望の部品形状に
冷間成形した後、部品に所望の特性を付与するために調
質処理を施しても、靭性の面では必ずしも満足できるも
のではなかった。
【0013】特開平7−138697号公報には、「疲
労強度、冷間加工性の優れた亜共析黒鉛析出鋼」が提案
されているが、この鋼には、黒鉛化のための焼鈍を行う
前に焼入れ処理を行うことが必要である。しかし、0.
35〜0.65重量%ものCを含む鋼に通常の焼入れを
施すと、焼割れを生じてしまう場合がある。
【0014】更に、当該鋼中のCはそのほぼ全量が黒鉛
化し、C含有量にほぼ等しい量の黒鉛が析出している。
このため、所望の部品形状に冷間成形した後、部品に所
望の特性を付与するために調質処理や、高周波焼入れを
行うに際し、オーステナイト中への黒鉛の固溶を充分に
行わせるには、長時間加熱が必要になってしまう。
【0015】すなわち、セメンタイトを黒鉛化すること
により、C含有量の高い鋼の冷間加工性は確かに向上す
る。しかし、冷間で所望の形状に成形加工した後に焼入
れし、所要の焼入れ硬度を得るには、オーステナイト領
域に加熱した際、オーステナイト中にCを充分再固溶さ
せねばならない。鋼中にCがFeとの化合物であるセメ
ンタイトの形で存在する従来の場合には、Cは容易に再
固溶する。これに対し、含有Cのほぼ全量が黒鉛にまで
なっていると、再固溶させるには長時間の加熱が必要で
ありコストが嵩む。逆に、焼入れのための加熱が高周波
焼入れのような短時間の加熱では、充分な焼入れ硬度が
得られず、部品には所望の特性が付与できない。
【0016】又、前記した鋼の冷間鍛造における限界の
圧縮率は、その実施例からも明らかなように高々66%
であり、これを超えるような高い圧縮率が必要とされる
部品、例えばフランジ付きの部品などに対しては、これ
を素材鋼として用いるには難がある。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】従来、低炭素鋼鋼材に
多用されてきた冷間鍛造などの加工法が、主として切削
加工法で成形されている中・高炭素鋼鋼材に適用できれ
ば、大幅な歩留まり向上が可能である。あるいは又、低
炭素鋼鋼材を冷間加工した後に表面硬化のため浸炭する
製造方法を、中・高炭素鋼鋼材を冷間加工して高周波焼
入れ又はバッチ炉焼入れする方法に替えるという合理化
も考えられる。例えば、自動車の歯車のような部品は、
通常歯切り加工した後で浸炭されるが、同じ性能の製品
を得るのに、成形加工を切削から冷間鍛造に改め、表面
硬化処理を浸炭焼入れから高周波焼入れ、又はバッチ炉
焼入れに切り替えることができる。
【0018】本発明の課題は、冷間鍛造や転造などの冷
間加工性に優れると共に、熱処理性、なかでも高周波焼
入れのような短時間加熱の場合の熱処理性も良好な機械
構造用鋼材とその製造方法を提供することにある。より
具体的な本発明の課題は、成形加工時の冷間加工性は球
状化焼鈍したS20Cクラスの低炭素鋼鋼材と同等であ
って、調質処理後や、表面硬化処理としての高周波焼入
れ後には、S35CからS58Cといった中・高炭素鋼
鋼材レベルの特性(強度、靭性や耐摩耗性など)を有す
る機械構造用鋼材及びその製造方法を提供することにあ
る。
【0019】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)の冷間加工性に優れた機械構造用鋼材及び(2)
の冷間加工性に優れた機械構造用鋼材の製造方法にあ
る。
【0020】(1)重量%で、C:0.3〜0.8%、
Si:0.15%を超えて0.50%未満、Mn:0.
05〜0.6%、W:0.01〜0.5%、B:0.0
005〜0.015%、Al:0.005〜0.10
%、N:0.001〜0.02%、Cu:0〜0.5
%、Ni:0〜0.5%、Cr:0〜0.2%、Mo:
0〜0.3%、Nb:0〜0.05%、V:0〜0.2
%、Ti:0〜0.2%、Zr:0〜0.2%、Pb:
0〜0.5%、Bi:0〜0.5%、Te:0〜0.1
%、Se:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、P:
0.03%以下、S:0.05%以下、残部はFe及び
不可避不純物からなる化学組成であって、組織が、結晶
粒度でJIS粒度番号5〜10のフェライト及び最大直
径が20μm以下の黒鉛、並びにセメンタイトからな
り、硬度がHv120以下である冷間加工性に優れた機
械構造用鋼材。
【0021】(2)上記(1)に記載の化学組成を有す
る鋼を熱間加工した後、減面率で5〜50%の冷間加工
を行い、次いで、650〜720℃の温度域で5〜20
時間の焼鈍を行って、結晶粒度でJIS粒度番号5〜1
0のフェライト及び最大直径が20μm以下の黒鉛、並
びにセメンタイトからなる組織で、且つ、Hv120以
下の硬度とすることを特徴とする冷間加工性に優れた機
械構造用鋼材の製造方法。
【0022】ここで、各々の黒鉛粒子における最も長い
長軸の長さが、その黒鉛の「最大直径」である。
【0023】
【発明の実施の形態】本発明者らは、前記した課題を解
決するために、中・高炭素鋼鋼材でも充分な冷間加工性
が得られる可能性がある鋼中Cの黒鉛化に関して種々の
検討を行った。その結果下記の知見を得た。
【0024】黒鉛化の進行に伴って硬度は低下して行
く。しかし、黒鉛化が過度に進行すると変形能が劣化し
てくる。
【0025】析出した黒鉛粒子が大きすぎると、変形
時の割れ発生の起点となる。
【0026】析出した黒鉛粒子を起点とした割れを生
じさせないためには、黒鉛粒子の最大直径を20μm以
下に抑えて、これを微細に分布させる必要がある。な
お、既に述べたように、各々の黒鉛粒子における最も長
い長軸の長さを、その黒鉛の「最大直径」という。
【0027】中・高炭素鋼の冷間加工性を高め、更
に、調質処理のための焼入れ及び高周波焼入れのような
短時間加熱焼入れにおける熱処理性を高めるには、鋼中
のCを部分的に黒鉛化すれば良い。すなわち、最大直径
が20μm以下の黒鉛を粒界及び/又は粒内に均一且つ
微細に分散させて、組織をフェライト、セメンタイト及
び黒鉛からなるものとすれば良い。
【0028】鋼に適正量のB、N及びAlを添加し
て、BN及びAlNを微細に分散させれば、このBN及
びAlNを核として黒鉛が微細分散する。
【0029】黒鉛の析出は、フェライト粒界を核とし
ても生ずる。そして、フェライト結晶粒を適正なサイズ
に制御すれば、析出する黒鉛粒子を微細に分散させるこ
とができ、又、鋼の変形抵抗を抑えることができる。
【0030】熱間加工後に適正な減面率の冷間加工を
行えば、層状セメンタイトの分断と黒鉛の析出核となる
歪転位の導入がなされるため、その後の焼鈍処理で黒鉛
が均一微細に、且つ迅速に析出する。
【0031】鋼材の硬度をHv120以下に制御すれ
ば、冷間加工性が著しく向上して金型寿命を飛躍的に改
善できる。
【0032】本発明は上記の知見に基づいて完成された
ものである。
【0033】以下、本発明の各要件について詳しく説明
する。なお、成分含有量の「%」は「重量%」を意味す
る。
【0034】(A)鋼材の化学組成 C:Cは、鋼の焼入れ性の向上及び調質処理後や高周波
焼入れ後の強度や硬度の向上に有効な元素である。しか
し、Cの含有量が0.3%未満では焼入れ後に低温で焼
戻しを行っても所望の特性(S35CからS58Cレベ
ルの強度や靭性など)が得られない。一方、0.8%を
超えると靭性の劣化や焼き割れの発生を招くと共に、焼
鈍処理で最大直径が20μmを超える黒鉛が析出して、
冷間加工時にその黒鉛を起点とした割れを生じる場合が
ある。したがって、C含有量を0.3〜0.8%とし
た。
【0035】Si:Siは、脱酸及び黒鉛化を促進する
のに有効な元素である。しかし、その含有量が0.15
%以下では添加効果に乏しい。一方、Siを0.50%
以上含有すると素地が硬くなって変形抵抗が高くなり、
冷間加工性が大きく劣化してしまう。したがって、Si
の含有量を0.15%を超えて0.50%未満とした。
【0036】Mn:Mnは、焼入れ性と強度の向上に有
効な元素である。しかし、その含有量が0.05%未満
では、上記の作用が期待できない。一方、0.6%を超
えると黒鉛化を阻害する。したがって、Mnの含有量を
0.05〜0.6%とした。
【0037】W:Wは、鋼の焼入れ性と強度を高める作
用がある。しかし、その含有量が0.01%未満では添
加効果に乏しい。一方、その含有量が0.5%を超える
と、炭化物を安定化し黒鉛化の進行を極めて遅くする。
したがって、Wの含有量を0.01〜0.5%とした。
【0038】B:Bは、Nと結合してBNを形成し、黒
鉛化を促進する効果を有する。更に、焼入れ性を高める
作用も有する。しかし、その含有量が0.0005%未
満では添加効果に乏しい。一方、0.015%を超える
と熱間加工性の劣化をもたらす。このため、Bの含有量
を0.0005〜0.015%とした。
【0039】Al:AlはNと結合してAlNを形成
し、これが黒鉛の析出核となるので、黒鉛化を促進する
作用を有する。更に、Alは脱酸の安定化に有効な元素
である。しかし、その含有量が0.005%未満では添
加効果に乏しい。一方、0.10%を超えると前記効果
が飽和するばかりか、靭性の低下をもたらす。したがっ
て、Al含有量を0.005〜0.10%とした。
【0040】N:Nは、上記のBやAlと結合してBN
やAlNを形成し、黒鉛化を促進するのに有効な元素で
ある。しかし、その含有量が0.001%未満では上記
の作用が期待できない。一方、0.02%を超えて含有
すると、鋼の加工性、なかでも冷間加工性が阻害され、
加えて靭性の劣化をきたす。したがって、N含有量を
0. Cu:Cuは添加しなくても良い。添加すれば黒鉛化を
促進する作用を有する。更に、鋼の焼入れ性を高めると
ともに、調質処理後の強度を高める作用もある。こうし
た効果を確実に得るには、Cuは0.01%以上の含有
量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.5
%を超えると熱間加工性及び冷間加工性の低下や靭性の
劣化を招く。したがって、Cuの含有量を0〜0.5%
とした。なお、Cuは0.05%以上含有させることが
好ましい。より好ましいCu含有量の下限値は0.10
%である。Cu含有量は0.15%以上とすれば一層好
ましい。一方、スクラップを溶解原料として用いた鋼
(例えば工業的規模の電気炉で溶解した鋼)の場合に
は、0.1%程度のCuを不純物として含む場合がある
が、この不純物としてのCuも上記の作用を有する。
【0041】Ni:Niは添加しなくても良い。添加す
れば黒鉛化を促進するし、鋼の焼入れ性を向上させ、
又、調質処理後の強度を高める作用がある。こうした効
果を確実に得るには、Niは0.05%以上の含有量と
することが好ましい。しかし、0.5%を超えて含有さ
せても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりであ
る。したがって、Ni含有量を0〜0.5%とした。な
お、Niは0.10%以上含有させることが好ましい。
より好ましいNi含有量の下限値は0.15%である。
一方、スクラップを溶解原料として用いた鋼(例えば工
業的規模の電気炉で溶解した鋼)の場合には、0.1%
程度のNiを不純物として含む場合があるが、この不純
物としてのNiも上記の作用を有する。
【0042】Cr:Crは添加しなくても良い。添加す
れば鋼の焼入れ性と強度を高める作用がある。この効果
を確実に得るには、Crは0.01%以上の含有量とす
ることが好ましい。しかし、その含有量が0.2%を超
えると、炭化物を安定化して黒鉛の析出を極めて遅くし
てしまう。したがって、Cr含有量を0〜0.2%とし
た。
【0043】Mo:Moは添加しなくても良い。添加す
れば鋼の焼入れ性と強度を高める作用がある。この効果
を確実に得るには、Moは0.01%以上の含有量とす
ることが好ましい。しかし、その含有量が0.3%を超
えると、炭化物を安定化し黒鉛化の進行を極めて遅くす
る。したがって、Moの含有量を0〜0.3%とした。
【0044】Nb:Nbも添加しなくても良い。添加す
れば微細な炭窒化物を形成し、冷間加工後の高周波焼入
れあるいはバッチ炉焼入れのための加熱時のオーステナ
イト粒の成長を抑制するので、焼入れ歪の低減と靭性確
保に有効な元素である。この効果を確実に得るには、N
bは0.003%以上の含有量とすることが好ましい。
しかし、その含有量が0.05%を超えると、オーステ
ナイト粒成長抑制の効果が飽和してコストが嵩むばかり
か、析出強化により冷間加工性の大きな低下を招く。し
たがって、Nbの含有量を0〜0.05%とした。
【0045】V:Vは添加しなくても良い。添加すれば
微細な炭窒化物を形成し、これが黒鉛の析出核となるの
で、黒鉛化を促進する作用を有する。更に、調質処理後
の強度を高める作用がある。上記の効果を確実に得るに
は、Vは0.01%以上の含有量とすることが好まし
い。しかし、その含有量が0.2%を超えると、靭性の
低下を招く。したがって、Vの含有量を0〜0.2%と
した。
【0046】Ti:Tiは添加しなくても良い。添加す
れば微細な炭窒化物を形成し、これが黒鉛の析出核とな
るので、黒鉛化を促進する作用を有する。更に、調質処
理後の強度を高める作用がある。上記の効果を確実に得
るには、Tiは0.01%以上の含有量とすることが好
ましい。しかし、その含有量が0.2%を超えると、靭
性の低下を招く。したがって、Tiの含有量を0〜0.
2%とした。
【0047】Zr:Zrは添加しなくても良い。添加す
れば微細な炭窒化物を形成し、これが黒鉛の析出核とな
るので、黒鉛化を促進する作用を有する。更に、調質処
理後の強度を高める作用がある。上記の効果を確実に得
るには、Zrは0.01%以上の含有量とすることが好
ましい。しかし、その含有量が0.2%を超えると、靭
性の低下を招く。したがって、Zrの含有量を0〜0.
2%とした。
【0048】Pb:Pbは添加しなくても良い。添加す
れば液体潤滑効果によって被削性を高める作用がある。
この効果を確実に得るには、Pbは0.1%以上の含有
量とすることが好ましい。一方、Pbは黒鉛化を阻害
し、特にその含有量が0.5%を超えると黒鉛析出の著
しい遅延を招く。更に、熱間加工性や靭性の低下が生ず
る。したがって、Pbの含有量を0〜0.5%とした。
【0049】Bi:Biは添加しなくても良い。添加す
れば液体潤滑効果によって被削性を高める作用がある。
この効果を確実に得るには、Biは0.1%以上の含有
量とすることが好ましい。一方、Biは黒鉛化を阻害
し、特にその含有量が0.5%を超えると黒鉛析出の著
しい遅延を招く。更に、熱間加工性や靭性の低下をきた
す。したがって、Biの含有量を0〜0.5%とした。
【0050】Te:Teは添加しなくても良い。添加す
ればMnとともにMnTeを形成し、これが切削時のチ
ップブレーカーとして作用するので、被削性を高める作
用がある。この効果を確実に得るには、Teは0.05
%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Teの多
量添加は熱間加工性の低下を招き、更に靭性の低下もき
たす。特にその含有量が0.1%を超えると熱間加工性
と靭性の著しい低下が生ずる。したがって、Teの含有
量を0〜0.1%とした。
【0051】Se:Seは添加しなくても良い。添加す
ればMnとともにMnSeを形成し、これが切削時のチ
ップブレーカーとして作用するので、被削性を高める作
用がある。この効果を確実に得るには、Seは0.05
%以上の含有量とすることが好ましい。一方、Seの多
量添加は熱間加工性の低下を招き、更に靭性の低下が生
ずる。特にその含有量が0.1%を超えると熱間加工性
と靭性が著しく低下する。したがって、Seの含有量を
0〜0.1%とした。
【0052】Ca:Caは添加しなくても良い。添加す
れば被削性を高める作用がある。又、鋼中では酸化物の
形態で分散して黒鉛の析出核となるので、黒鉛化を促進
する作用を有する。こうした効果を確実に得るには、C
aは0.002%以上の含有量とすることが好ましい。
一方、その含有量が0.01%を超えると粗大介在物が
生じて靭性や疲労強度の低下をきたす。したがって、C
aの含有量を0〜0.01%とした。
【0053】P:Pは粒界に偏析して冷間加工性の著し
い劣化をきたすと共に、C元素の移動を抑制して黒鉛の
析出を阻害してしまう。特に、その含有量が0.03%
を超えると、冷間加工性の大きな劣化と黒鉛析出の著し
い遅延を招く。したがって、P含有量の上限を0.03
%とした。なお、P含有量の上限は0.025%とする
ことが好ましい。一方、P含有量の極端な低減には製鋼
コストが嵩むので、素材鋼のコストが高くなってしま
う。したがって、P含有量の下限は0.005%程度と
することが望ましい。
【0054】S:SはPと同じように黒鉛化を阻害す
る。更に、靭性を劣化させると共に、介在物を形成して
冷間加工性の劣化をもたらす。特に、その含有量が0.
05%を超えると、黒鉛析出の著しい遅延及び靭性と冷
間加工性の大きな劣化を招く。したがって、S含有量の
上限を0.05%とした。なお、S含有量の上限は0.
025%とすることが好ましい。一方、S含有量の極端
な低減には製鋼コストが嵩むので、素材鋼のコストが高
くなってしまう。したがって、S含有量の下限は0.0
03%程度とすることが望ましい。
【0055】(B)鋼材の組織と硬度 後の実施例でも詳しく述べるが、鋼材が所定の化学組成
を有し、その組織が結晶粒度でJIS粒度番号5〜10
のフェライト及び最大直径が20μm以下の黒鉛、並び
にセメンタイトからなり、硬度がHv120以下である
場合に、鋼材は中・高炭素鋼鋼材であっても優れた冷間
加工性を発現できる。更に、調質処理のための焼入れ及
び高周波焼入れのような短時間加熱焼入れにおける熱処
理性も良好となる。
【0056】上記の場合には、中・高炭素鋼鋼材であっ
ても、常温(室温)での両端拘束据え込み試験における
限界据え込み率(限界圧縮率)が85%以上で、且つ、
前記据え込み試験での据え込み率(圧縮率)50%にお
ける変形抵抗が600MPa以下という、S20Cクラ
スの低炭素鋼鋼材と同等の冷間加工性(変形能と変形抵
抗)を示すようになる。
【0057】すなわち、組織に関しては、フェライトが
結晶粒度でJIS粒度番号10番を超えると鋼材の変形
抵抗が極めて大きくなり、又JIS粒度番号で5番を下
回ると黒鉛析出のための「核」が少なくなって、析出す
る黒鉛のサイズが大きくなるために冷間加工性の著しい
劣化をきたす。
【0058】黒鉛に関しては、最大直径で20μmを超
えるものが存在すれば、鋼材の限界据え込み率が小さく
なって変形能が低下してしまう。この黒鉛の最大直径の
下限は特に定める必要はない。なお、倍率500倍の光
学顕微鏡による観察でセメンタイトと容易に識別できる
黒鉛は、最大直径が0.5μm以上のものである。
【0059】鋼材の組織がセメンタイトを含まないもの
になるほどの長時間の焼鈍を行うと、黒鉛が粗大化して
最大直径で20μmを超えるものが存在するようにな
る。このため、鋼材の限界据え込み率が小さくなって変
形能が低下してしまう。更に、こうした長時間の焼鈍は
エネルギーのロスにもなるし、生産効率を低くしてしま
う。したがって、鋼材の組織中にはセメンタイトが含ま
れている必要がある。換言すれば、鋼中のCは部分的に
黒鉛化させる必要がある。
【0060】上記の鋼中Cの部分的な黒鉛化とは、ミク
ロ組織中のセメンタイトと黒鉛が占める面積の和を10
0%(以下、セメンタイト(%)+黒鉛(%)=100
%と記載する)とした時、黒鉛の占める面積の割合が5
〜90%となることをいう。黒鉛の占める面積の割合が
5%未満の場合には、黒鉛化が充分でないために鋼材の
変形抵抗が高くなり、冷間加工性は低い。一方、黒鉛の
占める面積の割合が90%を超える場合には、鋼材の限
界据え込み率が小さくなって変形能が低下してしまう。
更に、高周波焼入れのような短時間加熱では、所要量の
固溶Cが確保できないため、充分な焼入れ硬度が得られ
ない。
【0061】ところで、ミクロ組織中の、セメンタイト
(%)+黒鉛(%)=100%とした時の黒鉛の占める
面積の割合は、例えば、倍率500倍の光学顕微鏡での
ランダムな10視野観察を行い、黒鉛とセメンタイトの
識別ができる最大直径0.5μm以上のものについて画
像解析して求めれば良い。なお、セメンタイトの存在形
態は特に規定されるものではない。
【0062】黒鉛化処理後の硬度がHvで120を超え
ると、冷間加工性の劣化が大きくなる。そのため金型の
寿命が大きく低下してしまい、冷間成形加工法によって
も製造コストが嵩んでしまう。したがって、硬度をHv
で120以下とした。なお、硬度の下限値については特
に制限する必要はない。
【0063】上記した理由から本発明においては、鋼材
の組織と硬度を前記のように規定する。
【0064】(C)冷間加工 冷間加工は、熱間で加工された鋼材の組織を焼鈍処理に
よって所望のものとするために行う。
【0065】黒鉛化のための焼鈍の前に行う冷間加工の
減面率が5%未満の場合には、加工による層状セメンタ
イトの分断及び黒鉛の析出核となる歪転位の導入が充分
になされない。このため、黒鉛化促進、黒鉛粒子及び結
晶粒の微細化を生じ難い。一方、減面率で50%を超え
る冷間加工を行っても、黒鉛粒子及び結晶粒の微細化の
効果が飽和することに加えて、加工のために馬力の大き
な設備が必要になって設備費が嵩んでしまう。したがっ
て、熱間加工後に行う冷間加工の減面率を5〜50%と
規定した。
【0066】なお、熱間加工は圧延や鍛造など通常の方
法で行えば良い。熱間加工後に行う冷間加工も、冷間引
き抜きなど通常の方法で行えば良い。
【0067】(D)焼鈍 焼鈍は、前記(A)に記載の化学組成を有する鋼材を所
望の組織となすための必須の処理である。すなわち、上
記(C)の冷間加工後に、650〜720℃の温度域で
5〜20時間の焼鈍を行うことで始めて、鋼材組織を結
晶粒度でJIS粒度番号5〜10のフェライト及び最大
直径が20μm以下の黒鉛、並びにセメンタイトからな
る所望の組織、それもセメンタイト(%)+黒鉛(%)
=100%とした時、黒鉛の占める面積割合が5〜90
%の組織にすることができる。
【0068】焼鈍温度が650℃未満の場合には、黒鉛
が容易に析出せず黒鉛化の処理時間が極めて長時間に及
んでしまい、コストが嵩む。一方、焼鈍温度が720℃
を超えると、黒鉛析出よりもオーステナイトへの逆変態
が先行してしまい、所望の組織が得られない。したがっ
て、黒鉛化のための焼鈍は650〜720℃の温度域で
行う必要がある。
【0069】上記の温度域であっても、焼鈍時間が5時
間未満であると、黒鉛化が充分でないために冷間加工性
が劣る。一方、焼鈍時間が20時間を超えると、黒鉛が
粗大化して最大直径で20μmを超えるものが存在する
ようになったり、前記のセメンタイト(%)+黒鉛
(%)=100%とした時の黒鉛の占める面積割合が9
0%を超えるために、鋼材の限界据え込み率が小さくな
って変形能が低下してしまう。又、エネルギーのロスに
もなる。加えて、黒鉛の占める面積割合が90%を超え
る場合には、高周波焼入れのような短時間加熱では、所
要量の固溶Cが確保できないため、充分な焼入れ硬度が
得られないことにもなる。このため、前記の温度域にお
ける焼鈍時間を5〜20時間と規定した。なお、焼鈍時
間の上限は経済性の面から10時間程度とすることが好
ましい。
【0070】これまでに述べた製造条件によって、本発
明の「冷間加工性に優れた機械構造用鋼材」が得られ
る。この鋼材は、次に述べる冷間加工および熱処理が施
されて、機械部品などの最終製品となる。
【0071】(E)冷間加工 焼鈍によって所望の組織を付与された鋼材は、冷間鍛造
などの冷間加工を受けて所定の機械構造用部品に成形さ
れる。この冷間での成形方法は特に規定されるものでは
なく、通常の方法で行えば良い。
【0072】(F)熱処理 調質処理(焼入れ焼戻し)や高周波焼入れなどの熱処理
は、冷間成形された機械構造用部品に対して、製品とし
て必要な特性を付与するための必要不可欠な処理であ
る。しかし、この処理方法は特に規定されるものではな
く、通常の方法で行えば良い。
【0073】以下実施例により、本発明を説明する。
【0074】
【実施例】
(実施例1)表1、表2に示す化学組成を有する鋼を、
通常の方法によって3t試験炉溶製した。表1における
鋼A〜Jは本発明の対象鋼(以下、「本発明鋼」とい
う)、表2における鋼K〜Qは成分のいずれかが本発明
で規定する含有量の範囲から外れた比較鋼である。な
お、比較鋼における鋼Pと鋼QはそれぞれJISのS4
5CとS53Cに相当するものである。
【0075】
【表1】
【0076】
【表2】
【0077】次いで、これらの鋼を通常の方法によって
分塊圧延して180mm角のビレットとし、その後、通
常の方法で熱間圧延して直径40mmの棒鋼とした。な
お、熱間圧延後は空冷した。
【0078】圧延後の棒鋼は、通常の方法で酸洗と潤滑
処理を行い、冷間(室温)で直径33.5mm(減面率
29.9%)までドローベンチを用いて引き抜き加工し
てから、表3及び表4に示す条件で焼鈍を行った。
【0079】こうして得られた焼鈍後の直径33.5m
mの丸棒から、直径10mm×長さ15mmの円筒状の
試験片を切り出し、500t高速プレス機を用いて通常
の方法で両端拘束据え込み試験を行い、常温(室温)に
おける変形抵抗と変形能を測定した。なお、各条件ごと
に3回の据え込み試験を行った。
【0080】変形抵抗は、前記の据え込み試験での据え
込み率(圧縮率)が50%の場合における3つの変形抵
抗の平均値で表した。変形能は、上記の据え込み試験で
3個の試験片のすべてに割れが発生しない最大加工率
(減面率)を限界据え込み率とし、これで評価した。
【0081】又、焼鈍後の直径33.5mmの丸棒から
は、直径33.5mm×厚さ20mmの試験片を切り出
し、光学顕微鏡(倍率は500倍)でランダムに10視
野観察して組織調査(相の判定、フェライト結晶粒度及
び黒鉛サイズの測定、セメンタイト(%)+黒鉛(%)
=100%とした時の黒鉛の占める面積割合の測定)を
行った。又、上記の試験片を用いて、マイクロビッカー
ス硬度計により中央部の硬度測定を行った。
【0082】表3、表4に調査結果を併せて示す。これ
らの表によれば、本発明で規定する化学組成を有し、且
つ、熱間圧延後に本発明で規定する条件で「冷間引き抜
き−焼鈍」の処理を施された鋼材(表3の試験番号 1〜
30)にあっては、規定の組織を有するのでS20Cと同
等の冷間加工性(常温での両端拘束据え込み試験におけ
る限界圧縮率が85%以上、且つ、据え込み率50%に
おける変形抵抗が600MPa以下)が得られることが
明らかである。一方、表4における試験番号45〜50のよ
うに本発明鋼であっても、焼鈍の条件が本発明で規定す
る条件から外れるため、組織が本発明で規定するものか
ら外れたり(試験番号45、48及び49)、黒鉛化が充分で
なく硬度が高い場合(試験番号46、47及び50)には、冷
間加工性が劣っている。
【0083】
【表3】
【0084】
【表4】
【0085】(実施例2)本発明鋼である鋼Dの、前記
表3及び表4に記載した試験番号11と48の直径33.5
mmの焼鈍後の丸棒から、直径25mm×長さ70mm
の熱処理素材を切り出し、下記(イ)と(ロ)の熱処理
を施した。
【0086】(イ)バッチ式の電気炉を用いて、900
℃に加熱後30分保持し水冷する焼入れ処理。(ロ)出
力20kW、周波数100kHzの高周波焼入れ装置を
用いて、900℃で10秒間保持し水冷する高周波焼入
れ処理。
【0087】次いで、焼入れした丸棒から、加熱を避け
るため冷却液を吹き付けながらマイクロカッターを用い
て切断して、直径25mm×厚さ20mmの硬度試験片
を作製した。
【0088】この後、ビッカース硬度計を用いて、前記
硬度試験片の外表面から2mmの位置における硬度を測
定した。
【0089】表5に試験結果を示す。この表5から、本
発明鋼であっても、その組織が本発明の規定を外れたも
のでは、熱処理特性が劣ったものとなってしまうことが
明らかである。
【0090】すなわち、試験番号11の丸棒から切り出
し、焼鈍後の組織が本発明で規定するものからなる熱処
理素材を用いた場合(試験番号51と52)にあっては、前
記(イ)及び(ロ)の焼入れで、Hv600を超える硬
度が得られている。これに対して、焼鈍後の組織が本発
明で規定するものから外れ、セメンタイトを含まずに1
00%黒鉛化した、焼鈍の試験番号が48の丸棒から切り
出した熱処理素材を用いた場合(試験番号53と54)で
は、前記(イ)及び(ロ)の焼入れ処理による硬度はH
v500を下回り、熱処理性に問題があることが明らか
である。
【0091】
【表5】
【0092】
【発明の効果】本発明による機械構造用鋼材は、引抜
き、鍛造、転造などの冷間加工性に優れ、且つ調質処理
や高周波焼入れなどの熱処理で容易に中・高炭素鋼鋼材
レベルの特性(強度、靭性や耐摩耗性など)が得られ
る。このため、各種機械や自動車の部品など特に形状の
複雑な部品の素材としてこの機械構造用鋼材を適用すれ
ば、製造工程の合理化や、製造歩留まりを向上させるこ
とが可能となる。この機械構造用鋼材は本発明方法によ
って、比較的容易に製造することができる。

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.3〜0.8%、Si:
    0.15%を超えて0.50%未満、Mn:0.05〜
    0.6%、W:0.01〜0.5%、B:0.0005
    〜0.015%、Al:0.005〜0.10%、N:
    0.001〜0.02%、Cu:0〜0.5%、Ni:
    0〜0.5%、Cr:0〜0.2%、Mo:0〜0.3
    %、Nb:0〜0.05%、V:0〜0.2%、Ti:
    0〜0.2%、Zr:0〜0.2%、Pb:0〜0.5
    %、Bi:0〜0.5%、Te:0〜0.1%、Se:
    0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、P:0.03%
    以下、S:0.05%以下、残部はFe及び不可避不純
    物からなる化学組成であって、組織が、結晶粒度でJI
    S粒度番号5〜10のフェライト及び最大直径が20μ
    m以下の黒鉛、並びにセメンタイトからなり、硬度がH
    v120以下である冷間加工性に優れた機械構造用鋼
    材。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の化学組成を有する鋼を熱
    間加工した後、減面率で5〜50%の冷間加工を行い、
    次いで、650〜720℃の温度域で5〜20時間の焼
    鈍を行って、結晶粒度でJIS粒度番号5〜10のフェ
    ライト及び最大直径が20μm以下の黒鉛、並びにセメ
    ンタイトからなる組織で、且つ、Hv120以下の硬度
    とすることを特徴とする冷間加工性に優れた機械構造用
    鋼材の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2007046687A (ja) * 2005-08-09 2007-02-22 Ntn Corp 一方向クラッチの内方部材及びその製造方法とその内方部材を備えたクラッチ内蔵プーリ
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