JP3721723B2 - 被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、産業機械や自動車等の機械部品に用いられて好適な機械構造用鋼材に関し、特に被削性、冷間鍛造性および焼入れ性を兼ね備えた機械構造用鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】
産業機械や自動車等に用いられる機械部品は、鋼材を切削または冷間鍛造あるいはそれらの併用により所定の形状に加工され、その後、焼入れ焼戻し処理によって、機械部品としての要求特性を確保するという方法により製造される。
このような機械部品に用いられる鋼材は、まず、被削性および冷間鍛造性が優れていることが要求される。機械構造用鋼の被削性を改善する手段としては、鋼中にPb、S、Bi、P等の快削性元素を単独または複合添加する方法が一般的である。特にPbは被削性を改善する作用が極めて強いために多用されている。しかし一方では、Pbは人体に有害な元素でもあり、鋼材の製造工程や機械部品の加工工程で大がかりな排気設備を必要とし、また鋼材のリサイクルの点からも問題がある。一方、鋼材の冷間鍛造性の改善のためには、Pb、S、Te、Bi、P等の快削性元素は延性、靱性を劣化させるため、逆に減少させることが望ましい。
【0003】
このようなことから、機械構造用鋼の被削性と冷間鍛造性を同時に向上させるために、鋼の組織をフェライト+黒鉛の2相組織とすることが考えられている。例えば特開昭51−57621 号公報には、Siを 1.9〜3.0 %と高め、微細黒鉛を0.20〜0.44%含有させた冷間鍛造性に優れた快削鋼が提示されている。また、特開平3−140411号公報には、調質後の冷間加工性を向上させる方法が開示されている。この方法は、0.32〜0.54%Cで、Mn、Si、Al含有量を調整した熱延または冷延した鋼材に、最終冷間加工、焼入れ焼戻しを行う前に 620〜680 ℃で15hr以上の焼鈍を施し、ほぼ完全に黒鉛化するというものである。
【0004】
しかしながら、フェライト+黒鉛の2相の組織からなる鋼は、極めて軟質の2相の組み合わせであるため、冷間鍛造時の変形抵抗が低いなどの優れた特性を持つ反面、切削時には軟質であるが故に表面にむしれを生じやすく、切削後の表面状況は必ずしも優れているとは言えなかった。
また、黒鉛はセメンタイトよりも極めて安定な析出物であり、黒鉛となったCの鋼中への固溶はオーステナイト域まで加熱されても非常に困難となる。そのため、焼入れに際し、組織がフェライト+黒鉛の場合には、フェライト+パーライト組織、あるいはフェライト+球状セメンタイト組織の場合にくらべ、充分な強度が得られない場合があった。特に急熱、短時間保持となる高周波焼入れの場合に、フェライト+黒鉛組織で、焼入れ後の強度不足が顕著であった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記した問題を有利に解決し、従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性を有し、切削後の表面粗度も小さく、しかも冷間鍛造性ならびに焼入れ性にも優れた機械構造用鋼材を提供することを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の検討を行った結果、黒鉛化を迅進する成分組成とし、さらに組織をフェライトと添加C量の10〜80%の黒鉛と残りのC量をセメンタイトとするフェライト+黒鉛+セメンタイト組織とすることにより、機械構造用鋼材の冷間鍛造性、被削性、切削後の表面粗度および焼入れ性が向上するという知見を得た。
【0007】
鋼中にパーライト等の層状のセメンタイトやMnS のような介在物が存在すると、冷間加工時にこれらの介在物と母相との界面からボイドが発生し、歪み量の増加にともなってこれらが連結拡大して早期に破壊に至る。しかし、鋼中に黒鉛が存在すれば、冷間鍛造時に黒鉛が母相の変形に追従し、黒鉛−母相界面からのボイドの発生が抑制されて、破壊に至るまでの歪み量が大きくなり、冷間鍛造性が向上する。また、鋼中に黒鉛が存在すれば、その黒鉛が切削時に潤滑剤として作用し、工具の温度上昇を抑制するため、被削性が向上する。
【0008】
しかし、黒鉛となったCの鋼中への固溶は困難となるため、黒鉛のみでは焼入れ性、とくに高周波焼入れ性が劣る。そこで本発明では、組織中に黒鉛に加えてセメンタイトを残留させる。セメンタイトを鋼中に残留させることで、同一C量で比較した場合の鋼中の黒鉛粒径は微細となり、その結果黒鉛粒自体のマトリックス中への固溶も容易となり、この点からも焼入れ性は向上する。
【0009】
また、鋼中に一部セメンタイトを残留させることで、全体の硬さを上昇させ、切削後の表面粗度も改善される。
本発明は上記した考えをもとに構成されたものである。
すなわち本発明は、第1発明として、mass%で、C:0.1 〜1.5 %、Si:0.5 〜2.0 %、Mn:0.1 〜2.0 %、Al:0.005 〜0.1 %( 0.05 %以上を除く)、N:0.0015〜0.0150%、B:0.0003〜0.0150%、P:0.020 %以下、S:0.035 %以下、O:0.0030%以下を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、含有するCが主として黒鉛とセメンタイトとなり、かつ、{(黒鉛量)/(含有するCがすべて黒鉛化したときの黒鉛量)}×100 (%)で定義される黒鉛化率が10〜80%であることを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材である。
【0010】
また第2発明は、第1発明に加えて、mass%で、Ni:0.1 〜3.0 %、Cu:0.1 〜3.0 %、Co:0.1 〜3.0 %のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材である。
また第3発明は、第1発明または第2発明に加えて、mass%で、V:0.05 〜0.5 %、Nb:0.005 〜0.05%のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材である。
【0011】
また第4発明は、第1発明または第2発明または第3発明に加えて、mass%で、Mo:0.1 〜1.0 %を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材である。
【0012】
また、第5の発明として、上記第1〜第4発明のいずれかに記載された鋼材を、所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ焼戻しを施し所定の強度を付与することを特徴とする機械構造部品の製造方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、本発明における、鋼材の成分組成の限定理由について説明する。
C:0.1 〜1.5 %
Cは、黒鉛相を形成するために必須の成分である。 0.1%未満では被削性を確保する上で必要な黒鉛相を確保することが困難である。また、 1.5%を超えて添加すると熱間圧延時の変形抵抗が上昇し、変形能が低下するため、熱間圧延材に割れ、きずの発生が増大する。このため、Cは 0.1〜1.5 %の範囲とした。
【0014】
Si:0.5 〜2.0 %
Siは、セメンタイト中に固溶せず、セメンタイトを不安定化することにより黒鉛化を促進する元素であるため、積極的に添加するが、 0.5%未満ではその効果が認められない。しかし、 2.0%を超えると、強度が高くなりすぎ延性が劣化する。このため、Siは0.5 〜2.0 %の範囲とした。さらに好ましい範囲は、黒鉛化促進の観点から 0.7〜1.8 %である。
【0015】
Mn:0.1 〜2.0 %
Mnは鋼の脱酸剤として有効であるばかりでなく、焼入れ性にも有用な元素であるので積極的に添加するが、一方で、セメンタイト中に固溶し黒鉛化を阻害する。 0.1%未満の添加では脱酸に効果がなく、また、 2.0%を超えて添加すると黒鉛化を阻害する。このため、Mnは0.1 〜2.0 %の範囲とした。なお好ましい範囲は、黒鉛化促進の観点から 0.1〜1.5 %である。
【0016】
N:0.0015〜0.0150%
Nは、Al、Bと化合してAlN 、BNを形成し、黒鉛の結晶化の核となる。AlN 、BNの微細分散により、黒鉛化を促進するとともに黒鉛粒を微細化する。しかし0.0015%未満の添加では、AlN 、BNが十分に形成されず、一方、0.0150%を超えて添加すると連続鋳造時に鋳片の割れを促進するので、Nは0.0015〜0.0150%の範囲とした。
【0017】
B:0.0003〜0.0150%
Bは、鋼中のNと化合してBNを形成し、これが黒鉛の結晶化の核として作用し、黒鉛化を促進するとともに黒鉛粒を微細化するため、本発明において重要な成分である。また、Bは鋼の焼入れ性を高め、焼入れ後の強度を確保する上でも有用な元素である。0.0003%未満の添加では、黒鉛化および焼入れ性向上への効果が小さい。しかし、0.0150%を超えて添加するとBがセメンタイト中に固溶してセメンタイトを安定化し、逆に黒鉛化を阻害することになる。このため、Bは0.0003〜0.0150%の範囲とした。なお、黒鉛化と焼入れ性の観点からBの好適範囲は0.0005〜0.0100%である。
【0018】
Al:0.005 〜0.1 %( 0.05 %以上を除く)
Alは鋼中のNと反応してAIN を形成し、これが黒鉛の核形成サイトとして作用することにより黒鉛化を促進するので積極的に添加する。しかし0.005 %未満の添加ではその作用が小さく、また、0.1 %を超えて添加すると、鋳造工程においてAl系酸化物が多数形成される。Al系酸化物は、単独でも疲労破壊の起点となるばかりでなく、硬質なため、切削時に工具を摩耗させることにより被削性を低下させる。このようなことから、Alの含有量は0.005 〜0.1 %の範囲( 0.05 %以上を除く)とした。
【0019】
P:0.020 %以下
Pは黒鉛化を阻害するとともに、フェライト相を脆化させ、冷間鍛造性を劣化させる元素である。また、焼入れ焼戻し時に粒界に偏析し粒界強度を低下させて、疲労亀裂伝播に対する抵抗を減少させ、疲労強度を低下させるなど、材質に対し悪影響を及ぼす。したがって極力低減すべきであるが、 0.020%まで許容される。
【0020】
S:0.035 %以下
Sは鋼中でMnS を形成し、これが冷間鍛造時の割れ発生の起点となり、冷間鍛造性、疲労特性を劣化させるので極力低減すべきであるが、 0.035%まで許容される。また、MnS は黒鉛の結晶化の核として作用し黒鉛化を促進し、黒鉛化の観点からはSは多い方が良いが、多すぎると粗大化し粗大な黒鉛を形成する。このようなことから、Sは好ましくは 0.001〜0.025 %である。
【0021】
O:0.0030%以下
Oは酸化物系非金属介在物を形成し、冷間鍛造性、被削性および疲労強度をともに低下させるので極力低減すべきであるが、0.0030%まで許容される。
以上本発明における必須の成分系について説明したが、本発明においては以下の各元素を必要に応じて用いることができる。以下にそれらの限定理由を述べる。
【0022】
Ni:0.1 〜3.0 %、Cu:0.1 〜3.0 %以下、Co:0.1 〜3.0 %のうちから選ばれた1種以上
Ni、Cu、Coはいずれも黒鉛化を促進する元素であり、また、焼入れ性を向上させる作用もあわせ持つので、黒鉛化を促進し焼入れ性を向上させることが可能となる。しかし、その添加量が0.1 %未満ではその効果は小さく、 3.0%を超えて添加してもその効果は飽和するので、Ni、Cu、Coはいずれも 0.1〜3.0 %の範囲とした。
【0023】
Mo:0.1 〜1.0 %
Moは、焼入れ性を高めると同時にMn、Crといった合金元素に比較してセメンタイトへの分配が小さい。このために、黒鉛化を著しく阻害せずに、鋼材の焼入れ性を高めることができる。また、Moを添加した鋼材は焼戻し軟化抵抗が大きいために、同一焼戻し温度では硬さを向上させることが可能となり、この結果、疲労強度を向上させることができる。また、鋼材の焼入れ性を増加させる作用が大きく、Moを添加した鋼材では熱間圧延のままの状態においてベイナイト組織とすることが容易である。ベイナイト組織は微細な黒鉛の生成に有利であり、その結果、焼入れ時の黒鉛の溶解も短時間で完了させることができる。Moの添加は、疲労強度を一層向上させる必要がある場合に用いるが、 0.1%未満の添加ではその効果が小さく、 1.0%を超えて添加すると黒鉛化を阻害し、冷間鍛造性および被削性を低下させる。このようなことから、Moは 0.1 〜1.0 %の範囲とした。また冷間鍛造性、被削性の観点からは 0.1〜0.8 %が好ましい。
【0024】
V:0.05 〜0.5 %、Nb:0.005 〜0.05%のうちから選ばれた1種以上
V、Nbはともに炭化物形成元素で炭窒化物を形成し強度を上昇させる。しかし、セメンタイト中にはほとんど固溶しないので、黒鉛化をさほど阻害しない。V、Nbともに焼入れ性を向上させる元素でもあるので、疲労強度を向上させる必要のある場合に用いてもよい。Vの場合には、0.05%未満の添加ではこれらの効果は小さく、他方、 0.5%を超えて添加しても効果が飽和するので、Vの添加は 0.05〜0.5 %の範囲とする。一方、Nbの場合には、 0.005%未満の添加では上記の効果が小さく、また、0.05%を超えて添加しても効果が飽和するので、Nbの添加は 0.005 〜0.05%の範囲とする。
【0027】
黒鉛化率:10〜80%
黒鉛化率は、黒鉛化率={(黒鉛量)/(含有するCがすべて黒鉛化したときの黒鉛量)}×100 (%)で定義する。
黒鉛化率が10%未満の場合には、冷間鍛造時の変形抵抗が上昇し、また切削時の工具寿命も著しく低下する。黒鉛化率が80%を超える場合には、切削後の高周波焼入れ性が劣化する。そのため黒鉛化率は10〜80%の範囲とした。
【0028】
本発明では、含有するCすべてが黒鉛化する必要はなく、一部をセメンタイトとしてあるいはさらに固溶のままとして存在させる。セメンタイトを残留させることで、黒鉛粒は微細となる。
本発明では、鋼中に一部セメンタイトを残留させることで全体の硬さを上昇させ、切削後の表面粗度を向上させる。
【0029】
また本発明では、黒鉛に加えてセメンタイトを残留させることで、焼入れ後とくに高周波焼入れ後の表面硬さおよび焼入れ深さの向上が可能となる。
本発明鋼の製造方法は通常の方法でよく、特に限定しない。通常、転炉、電気炉で溶製され、必要に応じてRH脱ガス等、脱ガスや炉外精錬を行ってもよい。溶鋼は、連続鋳造法あるいは造塊法により凝固される。分塊および/または熱間圧延により所定の寸法の鋼板、棒鋼、線材等に圧延される。圧延後、黒鉛化処理を施し製品とする。黒鉛化処理条件は、 600℃〜Ac1点の温度範囲でN2 雰囲気中またはH2 等を少量含有した弱還元性雰囲気中で行うのが好適である。
【0030】
【実施例】
表1に示す化学組成の鋼を、転炉溶製、連続鋳造によりブルームとし、棒鋼圧延により52mmφ棒鋼とした。
【0031】
【表1】
【0032】
鋼A〜Rは化学組成が本発明の範囲内の鋼であり、鋼SはB、鋼TはP、鋼UはAl、鋼VはSiが本発明範囲外の鋼である。また、鋼Wは従来より機械構造用として用いられているJIS規格のS30C相当鋼、鋼XはS45C相当鋼に快削性向上元素であるS、CaおよびPbを添加した快削鋼の例である。なお、S30C相当の鋼Wは、冷間鍛造性に優れるために冷間鍛造用鋼として、また、S45C+S−Ca−Pb快削鋼の鋼Xは、被削性に優れるために高い被削性の要求される用途に用いられているものである。
【0033】
これらの棒鋼に、 700℃で 100hrまでの黒鉛化焼鈍処理を施し製品とした。製品について、▲1▼黒鉛量および黒鉛粒径の測定、▲2▼被削性試験、▲3▼冷間鍛造試験、▲4▼高周波焼入れ性試験を実施し、性能を確認した。また、硬さをビッカース硬さ(10kg荷重)で測定した。試験方法を下記に示す。
▲1▼黒鉛量、黒鉛粒径の測定
直棒の1/4 d部から採取した光学顕微鏡用試片につき、研磨後腐食せず画像解析装置により、断面5箇所、各箇所につき視野数10として、×400 倍の倍率で黒鉛面積率を測定しそれらの平均値を黒鉛量とした。黒鉛粒径は1000〜2000個の黒鉛粒子につき直径を測定しそれらの平均値を用いた。
【0034】
▲2▼被削性試験
被削性試験は、高速度工具鋼SKH4を用い、52mmφの試片を切削速度80m/min 、無潤滑の条件により外周旋削を行い工具が切削不能となるまでの時間を工具寿命として評価した。
▲3▼冷間鍛造試験
冷間鍛造性は、焼鈍後の素材より15mmφ×22.5mml の円柱状試験片を作成し、 300tプレスを用いて圧縮試験を行い、試験時の荷重より変形抵抗を算出した。ここでは、高さ減少率(圧縮率):60%時の変形抵抗を示した。また、繰返し数10個とし、試験片側面の割れ発生の有無を確認し、試験後の試験片の半数に割れの発生する圧縮率を限界圧縮率として変形能の指標とした。
【0035】
▲4▼焼入れ焼戻し材の引張試験
素材から15mmφ×100mmlの試験片を採取し、900 ℃×30min 加熱したのち水溶性焼入れ液中に焼入れし、その後500 ℃×1hr加熱保持後水冷する焼入れ焼戻し処理を行った。処理後の試験片から平行部8mmφ×36mm lの引張試験片を作製し、引張試験を実施し、降伏強さ(YS)、引張強さ(TS)、伸び(EL)絞り(RA)を測定した。
【0036】
▲5▼高周波焼入れ性試験
高周波焼入れ性試験は、素材より30mmφ×100mmlの試験片を作成し、周波数15kHz 、出力114kW 、試験片移動速度10mm/sの移動焼入れの条件で高周波焼入れした後、 150℃×1hr の焼戻しをして、表面硬さ(HRC )および有効硬化深さを測定した。
【0037】
これらの結果を表2に示す。
なお、従来鋼は黒鉛化しなかった。鋼W(S30C相当鋼)については、 745℃×15hr保持後徐冷の球状化焼なまし処理を、また、鋼Xは被削性のみ圧延ままで評価し、その他の試験は 745℃×15h保持後徐冷の球状化焼なまし処理を、実施した後に行った。表2中の黒鉛化後硬さの欄には、No.39 (鋼W)については球状化焼なまし後の硬さを、No.40 (鋼X)については圧延ままの硬さをそれぞれ示した。
【0038】
【表2】
【0039】
【表3】
【0040】
表2から、本発明鋼と従来鋼とを比較すると、冷間鍛造時の変形抵抗および界面圧縮率は従来の冷間鍛造鋼である鋼W(S30C)よりも優れている。また、被削性についても従来の鋼X(S45C+S−Ca−Pb快削鋼)よりも優れている。
また、黒鉛化率が本発明の範囲よりも低い場合(No.1,No.4)は、冷間鍛造時の変形抵抗が高く、切削時の工具寿命も本発明鋼よりも低い。逆に黒鉛化率が本発明の範囲よりも高いもの(No.3,No.8)は、切削後の表面粗度が粗く、焼入れ後の特性および高周波焼入れ性が本発明例よりも劣化している。また、黒鉛化に要する時間も本発明の範囲よりも長い。しかし、冷間鍛造時の変形抵抗および切削時の工具寿命に関してはむしろ本発明例よりも優れており、切削後の表面粗度および焼入れ後の特性等が必要とされない用途においては、黒鉛化率の高い鋼の使用も可能である。
【0041】
Bが本発明の範囲外にある鋼S(No.35 )は、同程度のC量の鋼B(No.6)に比較して、同一の黒鉛化率に達するまでに要する黒鉛化処理時間は約10倍も長くかかっている。また、PおよびAlが本発明の範囲外である鋼T(No.36 )および鋼U(No.37 )の場合についても、鋼B(No.6)に比較して焼鈍時間は約3〜4倍長くかかっている。また、Siが本発明の範囲外である鋼V(No.38 )は、前述の条件にて黒鉛化処理を実施しても黒鉛は生じなかった。
【0042】
本発明ではCaは添加しないが、疲労強度が要求されない場合には、Caの添加は黒鉛化の促進および被削性の改善に対して有効である。
【0043】
【発明の効果】
本発明によれば、Pbを用いるまでもなく従来のPb快削鋼と同程度あるいはそれ以上の切削時の工具寿命および切削後の表面粗度を有し、かつ冷間鍛造性および焼入れ後の特性にも優れた鋼材を提供することが可能となり、機械部品の製造に資するところが大である。
Claims (5)
- mass%で、
C:0.1 〜1.5 %、 Si:0.5 〜2.0 %、
Mn:0.1 〜2.0 %、 Al:0.005 〜0.1 %( 0.05 %以上を除く)、
N:0.0015〜0.0150%、 B:0.0003〜0.0150%、
P:0.020 %以下、 S:0.035 %以下、
O:0.0030%以下
を含み、残部がFeおよび不可避的不純物からなり、含有するCが主として黒鉛とセメンタイトとなり、かつ下記に定義する黒鉛化率が10〜80%であることを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材。
記
黒鉛化率(%)={(黒鉛量)/(含有するCがすべて黒鉛化したときの黒鉛 量)}×100 - 請求項1に加えて、mass%で、
Ni:0.1 〜3.0 %、 Cu:0.1 〜3.0 %、
Co:0.1 〜3.0 %
のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材。 - 請求項1または2に加えて、mass%で、
V:0.05 〜0.5 %、 Nb:0.005 〜0.05%
のうちから選ばれた1種以上を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材。 - 請求項1、2または3に加えて、mass%で、
Mo:0.1 〜1.0 %
を含有することを特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼入れ性に優れた機械構造用鋼材。 - 請求項1ないし4のいずれかに記載の鋼材を所定の形状に加工したのち、高周波焼入れ焼戻しを施し所定の強度を付与することを特徴とする機械構造部品の製造方法。
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