JP4920144B2 - 等速ジョイントアウター用鋼材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車の構造部材用鋼材に係り、とくに構造部材で重要な等速ジョイントアウター用として好適な冷間鍛造性に優れた鋼材に関する。
【0002】
【従来の技術】
冷間鍛造は、材料を加熱することなく加工を行うため、設備が簡易である、仕上げ寸法精度が優れている、材料歩留りが高い、金型(工具)寿命が長い、さらには成形後の切削加工量が少ない等の利点があり、等速ジョイントアウターをはじめとする自動車部品の製造に適用されている。
【0003】
しかしながら、冷間鍛造の温度域では、使用する鋼材の変形抵抗は高く、変形能は低い。冷間鍛造を工業的に実施するためには、使用する材料(鋼材)の硬さを抑え低変形抵抗を実現することが肝要となるが、低変形抵抗実現のために、焼入れ性向上元素の含有量を低減すると高周波焼入れ性が低下するという問題があった。自動車部品等の製造では、冷間鍛造で所定の寸法形状に加工したのち高周波焼入れのような処理で表面硬化させることが多く、焼入れ性の低下は問題となる。そのため、冷間鍛造性と高周波焼入れ性がともに優れた鋼材が要望されていた。
【0004】
このような要望に対し、例えば、特開平2-129341号公報には、C:0.40〜0.60%、Si:0.05%以下、Mn:0.20〜0.65%、Al:0.01〜0.05%、Cr:0.30%以下として、さらにTi、Bを含有し、不純物としてのS、O、Nを所定量以下に低減した冷間鍛造性、高周波焼入れ性に優れた機械構造用炭素鋼が提案されている。
また、特開平2-145745号公報には、C:0.25〜0.65%、Si:0.15%以下、Mn:0.60%以下、B:0.0005〜0.0050%、Ti:0.005 〜0.05%とし、さらにMo、V、を含有し、かつSを0.015 %以下に低減した冷間鍛造用鋼が提案されている。
【0005】
また、特開平9-268344号公報には、C:0.45〜0.60%、Si:0.01〜0.15%、Mn:0.10〜1.00%、Cr:0.3 %以下、Al:0.015 〜0.050 %、として、さらにTi、Bを含有し、平均粒径5μm 以下の炭化物を平均粒子間隔で20μm 以下に分散させた冷間鍛造性に優れた高周波焼入用鋼が提案されている。
また、特開平10-96047号公報には、C:0.25〜0.65%、Si:0.15%以下、Mn:0.60%以下、B:0.0005〜0.0050%、Ti:0.005 〜0.05%とし、さらにMo、V、、Crを含有し、あるいはさらにNb、Ta、Zrを含み、かつSを0.015 %以下に低減した冷間鍛造用鋼が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平2-129341号公報、特開平2-145745号公報、特開平9-268344号公報、特開平10-96047号公報等に記載された鋼材を使用しても、図1に代表的な例を示す、等速ジョイントアウターのような加工度が高く、複雑な形状の部品においては、鋼材の割れ発生や、成形荷重の上昇を防ぐ目的で、冷間鍛造を複数工程にし、しかも各鍛造工程間で中間焼鈍を施し鋼材の変形能を回復したのち、冷間鍛造成形を行っていた。
【0007】
とくに、自動車の等速ジョイントアウターの製造において、各段の冷間鍛造工程間で中間焼鈍を実施することは、熱処理そのものに要する費用とともに、プロセスの複雑化に伴い中間在庫を発生させることによる費用増加をもたらし、等速ジョイントアウターの製造コストを上昇させるという問題があった。このようなことから、加工度が高く、複雑な形状の製品を中間焼鈍なしで製造できる等速ジョイントアウター用鋼材が熱望されていた。
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題を有利に解決し、冷間鍛造性に優れた自動車の等速ジョイントアウター用鋼材を提案することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、まず自動車用等速ジョイントアウターの冷間鍛造工程における中間焼鈍の省略を可能にする要因について、種々研究した。まず、本発明者らは、中間焼鈍を実施することなく、複雑な形状の部品を冷間鍛造により成形可能とするためには、鋼材の変形能向上が必須であるという考えのもとに、冷間鍛造時の割れ発生について種々の実験・検討を行った。
【0010】
その結果、冷間鍛造時の割れは、主として、鋼材のフェライト母相とMnS との界面の剥離、あるいは棒状炭化物(セメンタイト)の断裂により生じた微細クラックを起点に生じていることを見いだした。このことから、本発明者らは、炭化物(セメンタイト)の球状化を促進し、さらに球状化炭化物(セメンタイト)を微細化することが、冷間鍛造時の割れ発生防止に有効であることを知見した。そして、炭化物(セメンタイト)の球状化促進と、球状化炭化物(セメンタイト)の微細化は、Cr含有量の適正化により達成できることを知見した。
【0011】
またさらに、S含有量を 0.004mass%以下と格段に低減することにより、鋼中のMnS 量が著しく減少し、またそのサイズが微細化して、フェライト母相とMnS との界面の剥離により生じる微細クラックの発生を抑制することができることを見いだした。また、MnS サイズの微細化に伴って、鋼材変形能の異方性が大幅に軽減されることも見いだした。
【0012】
本発明者らは、これらの手法を合わせ用いた鋼材とすることにより、従来不可能とされていた、高加工度でかつ複雑な形状の自動車用等速ジョイントアウターを冷間鍛造により、中間焼鈍を必要とすることなく成形できることを見いだした。
本発明は、上記した知見に基づき、さらに検討を加え完成されたものである。
【0013】
すなわち、本発明は、質量%で、C: 0.4〜0.6 %、Si:0.05%以下、Mn:0.10〜0.4 %、Cr:0.10%超0.45%以下、Ti: 0.005〜0.05%、B:0.0003〜0.0030%、Al:0.005 〜0.05%を含有し、あるいはさらにMo:0.05〜0.2 %を含有し、不純物としてのS、O、N、Pを、S: 0.004%以下、O:0.0020%以下、N: 0.007%以下、P: 0.010%以下に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、次(1)式
セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数)/(全セメンタイト粒子数)×100 ………(1)
で定義するセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織とを有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた自動車の等速ジョイントアウター用鋼材である。
【0014】
【発明の実施の形態】
まず、本発明鋼材の組成限定理由を詳細に説明する。以下、質量%は単に%と記す。
C: 0.4〜0.6 %
Cは、高周波焼入れ時の表面硬さおよび有効硬化深さを確保するうえで有効な元素であり、積極的に活用する。しかし、Cが0.4 %未満では機械部品として必要な強度を確保することが困難となり、一方、 0.6%を超えて含有すると変形能の低下および変形抵抗の上昇を招き、冷間鍛造性が劣化する。このため、Cは 0.4〜0.6 %の範囲に限定した。
【0015】
Si:0.05%以下
Siは、球状化焼鈍時にフェライト基地中に固溶し冷間鍛造後の変形抵抗を上昇させるため、極力低減することが好ましいが、0.05%までは許容できる。
Mn:0.10〜0.4 %
Mnは、焼入れ性を確保する上で有効な元素であるが、同時に冷間鍛造時の変形抵抗を上昇させる元素でもあり、本発明では0.10〜0.4 %とする。Mnが0.10%未満では、高周波焼入れ性が不足し、一方、0.4 %を超えて含有すると、変形抵抗が上昇し、冷間鍛造性が劣化する。
【0016】
Cr:0.10%超0.45%以下
Crは、焼鈍時に炭化物に固溶し、炭化物の球状化、微細分散を促進する有用な元素であり、炭化物球状化組織の改善を通じて冷間鍛造時の変形能向上に寄与する。このような効果は、0.10%超の含有により顕著となる。より加工度が高く、複雑な形状の製品の場合には、Cr含有量を高くするのが好ましい。しかし、0.45%を超える含有は、変形抵抗の増加が著しくなり冷間鍛造性が低下するとともに、炭化物を難溶解性として高周波焼入れ性を劣化させる。このため、本発明では、Crは0.10%超0.45%以下に限定した。
【0017】
Ti: 0.005〜0.05%
Tiは、CおよびNと親和力が強く、炭化物、窒化物あるいは炭窒化物等の析出物を形成してフェライト中の固溶CおよびNを低減する作用を有している。これにより、歪時効が抑制され、冷間鍛造時の変形抵抗が低下する。また、Tiは、Bの焼入れ性向上効果を有効に発揮させるためにも有用な元素であるが、0.005 %未満では、これらの効果は十分に認められない。一方、0.05%を超える含有は、粗大な窒化物を形成し、冷間鍛造時の変形能を低下させるとともに転動疲労寿命を著しく低下させる。このため、Tiは0.005 〜0.05%との範囲に限定した。
【0018】
B:0.0003〜0.0030%
Bは、焼入れ性を向上させる有効な元素であるが、0.0003%未満ではその効果が小さく、一方、0.0030%を超えて含有してもその効果は飽和し含有量に見合う効果が期待できないため経済的に不利となる。このため、Bは0.0003〜0.0030%の範囲に限定した。
【0019】
Al:0.005 〜0.05%
Alは、脱酸剤として作用し、また、Nと結合してAlN を形成することによりBの焼入れ性向上効果を有効に発揮させる作用を有する元素であるが、0.005 %未満ではその効果が不十分である。一方、0.05%を超えて含有してもその効果が飽和し含有量に見合う効果が期待できないため経済的に不利となる。このため、Alは 0.005〜0.05%の範囲に限定した。
【0020】
Mo:0.05〜0.2 %
本発明においては、焼入れ性の向上を目的として、必要に応じMoを含有することができる。
Moは、焼入れ性を向上させる元素であるが、0.05%未満では効果が少なく、一方、0.20%を超えて含有すると、加工硬化が大きくなり、冷間鍛造時の変形抵抗を増大させる。このため、Moは0.05〜0.2 %に限定するのが好ましい。
【0021】
また、本発明では、不純物としてのS、O、N、Pを所定値以下に低減する。
S: 0.004%以下
Sは、鋼中でMnS を形成し、被削性を向上させる元素であるが、MnS は冷間鍛造時の割れ発生の起点となり、冷間鍛造性を劣化させる。本発明における等速ジョイントアウターのような、鋼材(成形素材)に極めて高い変形能を有することが要求される場合には、Sを極力低減することが必要となる。Sを 0.004%以下に低減することにより、鋼中のMnS 量が著しく低減し、また、存在するMnS のサイズも小さくなる。このため、 0.004%以下までのS含有量低減により、冷間鍛造時の変形能が異方性を含め著しく向上し、従来、中間焼鈍なしでは冷間鍛造が困難とされた複雑な形状の等速ジョイントアウターを中間焼鈍なしの冷間鍛造で成形することが可能となる。
【0022】
O:0.0020%以下
Oは、鋼中のAl、Mn、Si等と酸化物系非金属介在物を形成し、冷間鍛造性および転動疲労特性をともに劣化させる。このため、Oは極力低減する必要があり、本発明では、0.0020%以下に限定した。
N: 0.007%以下
Nは、フェライト中に固溶して歪時効を生じ、変形抵抗を増大させるとともに、Bと結合しBNを形成して、有効B量を低減しBの焼入れ性向上効果を低減する。このことから、Nは極力低減することが必要となるが、0.007 %までは許容できる。
【0023】
P: 0.010%以下
Pは、被削性の向上に対しては有効に作用するが、一方でフェライト相を脆化させ冷間鍛造性を劣化させる。また、Pは、焼入焼戻し時に粒界に偏析し粒界強度を低下させ、疲労亀裂の伝播に対する抵抗を低下させて疲労強度を低下させる。このことから、Pは極力低減することが必要となるが、 0.010%まで許容される。
【0024】
上記した成分以外の残部はFeおよび不可避的不純物である。
本発明鋼材は、上記した組成に加え、次(1)式
セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数)/(全セメンタイト粒子数)×100 ………(1)
で定義されるセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織を有する。
【0025】
上記した組成と、さらにセメンタイトの球状化率が30%以上の組織とすることにより、冷間鍛造性、に優れた鋼材(成形素材)とすることができる。セメンタイト球状化率Aが30%未満では、その後の冷間鍛造工程で割れが発生したり、変形抵抗が増加し生産能率が低下する等の不具合が発生する。
つぎに、本発明鋼材の製造に好適な製造方法について説明する。
【0026】
まず、上記した組成の溶鋼を、転炉等通常公知の溶製方法により溶製し、ついで連続鋳造法等の通常公知の鋳造方法で所定の寸法形状の鋼素材とするのが好ましい。
ついで、これら鋼素材に、熱間圧延工程と、軟化焼鈍処理工程とを順次施し、所定の寸法形状の鋼材とする。本発明における熱間圧延工程では、所定の寸法形状の鋼材とすることができればよく、熱延条件はとくに限定しないが、鋼素材の加熱温度は1100℃以下とするのが熱延後の組織微細化の観点から好ましい。
【0027】
また、軟化焼鈍処理工程は、熱延により所定の寸法形状に圧延された鋼材に、好ましくは 700〜 760℃×3〜20hの加熱処理を施し、硬さの低下、および炭化物の球状化を行う。この軟化焼鈍処理工程により、次(1)式
セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数)/(全セメンタイト粒子数)×100 ………(1)
で定義されるセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織を有する鋼材とするのが好ましい。
【0028】
セメンタイトの球状化率を30%以上とすることにより、冷間鍛造性、に優れた鋼材(成形素材)とすることができる。セメンタイト球状化率Aが30%未満では、その後の冷間鍛造工程で割れが発生したり、変形抵抗が増加し生産能率が低下する等の不具合が発生する。
つぎに、本発明の鋼材を成形素材として、自動車用等速ジョイントアウターを製造する好ましい工程について説明する。
【0029】
本発明の鋼材を成形素材とし、通常、該成形素材を、冷間鍛造工程、切削加工工程により、所定寸法の部品とする。本発明の鋼材(成形素材)を使用すれば、中間焼鈍工程を経ずに製品を製造することができる。
冷間鍛造は、通常の冷間鍛造機で行ってよく、所定形状の金型を用いて、変形抵抗に応じ複数回の鍛造加工を施すのが好ましい。なお、本発明の鋼材を成形素材とする場合には、冷間鍛造工程では中間焼鈍を必要としない。また、冷間鍛造工程では、各鍛造加工間の時間を120s以上とするのが好ましい。
【0030】
冷間鍛造工程ののち、所定寸法の部品となるように、切削加工工程を施される。
ついで、これら所定寸法の部品に、その全体あるいは一部をAc3 変態点以上に加熱したのち焼入れし、ついで焼戻しする熱処理工程を施して製品(自動車用等速ジョイントアウター)とする。
【0031】
熱処理工程における焼入れ、焼戻し条件は、焼入れ温度をAc3 変態点以上とする以外は、目的とする性能に応じ、温度、時間を適宜選択することができることはいうまでもない。
【0032】
【実施例】
表1に示す組成の鋼素材を用い、該鋼素材を 850〜1100℃に加熱し圧延する熱間圧延工程により、断面:52mmφのサイズの直棒とした。ついで、原則として、これら直棒に 700〜 760℃×3〜7hの軟化焼鈍処理工程を施し、成形素材(鋼材)とした。なお、鋼素材のうち、No. A、No. BおよびNo. Cは、組成が本発明の範囲内にあるもの、No. D、No. Eは、S量が本発明外となる比較例、No. Fは JIS規格のS48Cに相当するものである。また、鋼材No.1、No.4は、軟化焼鈍条件が好適範囲を外れ、セメンタイト球状化率が本発明の範囲外となっている。
【0033】
まず、これら鋼材について、(1)MnS分布状態調査、(2) セメンタイト球状化率調査、(3) 冷間鍛造性試験、(4) 実体等速ジョイントアウター形状への冷間鍛造試験、(5) 高周波焼入れ性試験を実施した。
それぞれの試験方法を以下に示す。
(1)MnS 分布状態調査
鋼材中のMnS の分布を、ASTM E45法に基づいて調査した。測定面積は0.5mm2×320 視野(総視野面積160mm2)とし、その中の最悪視野の評価(ASTM−A法評価)およびThin 0.5点の視野の数(ASTM−D0.5T視野数)を測定した。
【0034】
(2)セメンタイト球状化率調査
鋼材(直棒)の1/4d部から試験片を採取し、研磨した後ピクラール液にて腐食して、走査型電子顕微鏡を用いて、断面5箇所、各箇所につき5000倍の倍率で10視野について撮像した。この像を基に、画像解析装置を用いて各セメンタイト粒子のアスペクト比を測定し、各成形素材におけるセメンタイト球状化率Aを次(1)
セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数)/(全セメンタイト粒子数)×100 ………(1)
を用いて算出した。
【0035】
(3)冷間鍛造性試験
軟化焼鈍処理済の各鋼材(成形素材)に総減面率60%の引抜き加工を加え20mmφとした材料から、15mmφ×22.5mmHの円柱型試験片を機械加工により採取した。この際に、試験片の採取方向を、引抜き加工方向に対して平行方向および垂直方向の2通りとした。
【0036】
これらの試験片を用いて、種々の圧縮率にて、各々10個の試験片を用いて、冷間圧縮試験を実施した。なお、試験時の圧縮荷重から材料の変形抵抗を算出した。試験後、各試験片側面の割れ発生の有無を確認し、各圧縮率における割れ発生率(割れ発生試験片個数/10個)を算出した。試験結果から、割れ発生率が50%となる圧縮率を限界圧縮率として求めた。さらに2種類の試験片採取方向における限界圧縮率の比を限界比として求めた。
【0037】
(4)実体等速ジョイントアウター形状への冷間鍛造試験
軟化焼鈍済鋼材(成形素材)に、3段の冷間鍛造からなる冷間鍛造工程を施し、図1に模式的に示す形状のサイズ: 100mmφ×150mmlの実体等速ジョイントアウター形状に成形した。各段の冷間鍛造では、前段の冷間鍛造ままの材料を次段の材料として用い、中間焼鈍を実施しなかった。なお、各鍛造段階における割れの発生をn=50個の試験片を用いて測定した。割れ発生率(%)は(割れの発生した試験片個数)/50×100 で算出した。
【0038】
(5)高周波焼入れ性試験
高周波焼入れ性試験は、鋼材(成形素材)から30mmφ×100mmlの試験片を採取し、これら試験片に、周波数15kHz 、出力114kW 、試験片移動速度10mm/sの移動焼入れ条件で高周波焼入れした後、 150℃×1hの焼戻しを行った。熱処理後の試験片について表面硬さ(HRC )およびHv:400 以上となる硬化深さ(有効硬化深さ)を測定した。
【0039】
これらの結果を表2に示す。
【0040】
【表1】
【0041】
【表2】
【0042】
本発明例では、いずれもMnS が微細化し、またMnS の量も顕著に低減している。これにくらべ、S含有量が本発明範囲から外れる鋼材No.8〜No.10 では、MnS の微細化、量の低減は実現されていない。
また、本発明例は、いずれも引抜き方向と平行方向で69%以上の高い限界圧縮率を示している。また、引抜き方向と平行方向の限界圧縮率と引抜き方向と垂直方向の限界圧縮率の比である限界比は、0.85以上の高い値を示している。これらの効果は、S量の低減に伴うMnS 量の減少および微細化によるものと考えられる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例(鋼材No.8〜No.10 )では、引抜き方向と平行方向の限界圧縮率が52〜65%、また限界比は0.58以下と低く、冷間鍛造性が低いうえ異方性もある。また、Cr含有量が本発明の範囲を低く外れる比較例(鋼材No.6)では、限界比は本発明例と同等の値を示すが、限界圧縮率の絶対値は本発明例に比較して低下している。これは、セメンタイト球状化率に加えてセメンタイトの平均粒径も冷間鍛造性に影響しているものと考えられる。
【0043】
本発明例では、最終の3段目の冷間鍛造まで割れを発生するものはなく、いずれも冷間鍛造工程で中間焼鈍を行わなくても、複雑形状の実体等速ジョイントアウターへ成形することができる。これに対し、本発明の範囲を外れる比較例では、多くが最終の3段目の冷間鍛造までに割れを発生していた。Cr含有量が本発明の範囲を外れる比較例(鋼材No.6)、セメンタイト球状化率が本発明の範囲を低く外れる比較例(鋼材No.1、No.4)では、割れ発生個数は減少しているが、最終の3段目の冷間鍛造で割れが発生した。
【0044】
また、本発明例は、いずれも十分高い高周波焼入れ性を有していることがわかる。高周波焼入れ焼もどし後の有効硬化深さは、ほぼ同一C量の比較例と同等以上の値を示した。Mo含有鋼を用いた鋼材No.1ではMoを含有しない鋼材No.3よりも高い高周波焼入れ性を示している。また、Cr含有量が本発明の範囲を高く外れる比較例(鋼材No.7)では、変形抵抗が高く、高周波焼入れ後の表面硬さが低くなっている。
【0045】
【発明の効果】
以上の結果から、本発明によれば、加工度が高く複雑な形状の等速ジョイントアウターを、中間焼鈍を施すことなく冷間鍛造により成形することが可能となり、熱間鍛造等の他の成形方法と比較して優れた寸法精度の等速ジョイントアウターを低コストで得ることができ産業上格段の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】等速ジョイントアウターの形状の一例を模式的に示す説明図である。
【符号の説明】
1 ジョイントアウター
2 インナー
3 玉鋼
Claims (2)
- 質量%で、
C: 0.4〜0.6 %、 Si:0.05%以下、
Mn:0.10〜0.4 %、 Cr:0.10%超0.45%以下、
Ti: 0.005〜0.05%、 B:0.0003〜0.0030%、
Al:0.005 〜0.05%
を含有し、不純物としてのS、O、N、Pを
S: 0.004%以下、 O:0.0020%以下、
N: 0.007%以下、 P: 0.010%以下
に制限し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成と、下記(1)式で定義されるセメンタイト球状化率Aが30%以上の組織を有することを特徴とする冷間鍛造性に優れた自動車の等速ジョイントアウター用鋼材。
記
セメンタイト球状化率A=(アスペクト比が2未満のセメンタイト粒子数)/(全セメンタイト粒子数)×100 ………(1) - 前記組成に加えて、さらに質量%で、Mo:0.05〜0.2 %を含有することを特徴とする請求項1に記載の等速ジョイントアウター用鋼材。
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