JP7710367B2 - 機械構造部品用鋼線およびその製造方法 - Google Patents
機械構造部品用鋼線およびその製造方法Info
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Description
C :0.05質量%~0.60質量%、
Si:0.005質量%~0.50質量%、
Mn:0.30質量%~1.20質量%、
P :0質量%超、0.050質量%以下、
S :0質量%超、0.050質量%以下、
Al:0.001質量%~0.10質量%、
Cr:0質量%超、1.5質量%以下、および
N :0質量%超、0.02質量%以下
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの面積の割合が、全セメンタイトの面積に対して32%以上であり、且つ
全セメンタイトの平均円相当直径が、鋼中のC量(質量%)を[C]で表したときに、(1.668-2.13[C])μm以上、(1.863-2.13[C])μm以下である、機械構造部品用鋼線である。
更に、
Cu:0質量%超、0.25質量%以下、
Ni:0質量%超、0.25質量%以下、
Mo:0質量%超、0.50質量%以下および
B :0質量%超、0.01質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する、態様1に記載の機械構造部品用鋼線である。
更に、
Ti:0質量%超、0.2質量%以下、
Nb:0質量%超、0.2質量%以下、および
V :0質量%超、0.5質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する、態様1または2に記載の機械構造部品用鋼線である。
更に、
Mg:0質量%超、0.02質量%以下、
Ca:0質量%超、0.05質量%以下、
Li:0質量%超、0.02質量%以下、および
REM:0質量%超、0.05質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する、態様1~3のいずれか1つに記載の機械構造部品用鋼線である。
フェライト結晶粒径の平均値が30μm以下である、態様1~4のいずれか1つに記載の機械構造部品用鋼線である。
態様1~4のいずれか1つに記載の化学成分組成を満たす条鋼に、
下記(1)~(3)の工程を含む球状化焼鈍を施す工程を含む、態様1~5のいずれか1つに記載の機械構造部品用鋼線の製造方法である。
(1)(A1+8℃)以上の温度T1に加熱した後に、該温度T1で1時間超、6時間以下加熱保持し、
(2)10℃/時間~30℃/時間の平均冷却速度R1で、650℃超、(A1-17℃)以下の温度T2まで冷却し、次いで、温度T2よりも高く(A1+60℃)以下の加熱温度まで加熱する、冷却-加熱工程を、合計2~6回実施し、
(3)冷却-加熱工程の最終回の加熱温度から冷却する。
ここで、A1は、下記式(1)で算出される。
A1(℃)=723+29.1×[Si]-10.7×[Mn]+16.9×[Cr]-16.9×[Ni]・・・(1)
ただし、[元素]は、各元素の含有量(質量%)を表し、含まれない元素の含有量はゼロとする。
前記条鋼が、線材に、5%超の減面率で伸線加工を施して得られた鋼線である、態様6に記載の機械構造部品用鋼線の製造方法である。
[全セメンタイトの面積に対する、フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの面積割合:32%以上]
フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの割合が低減して、フェライト結晶粒内のセメンタイトの割合が相対的に増加すると、このフェライト結晶粒内のセメンタイトによって、冷間加工中にフェライト結晶粒に導入された転位の移動が妨げられる。その結果、転位増加を引き起こして加工硬化を示し、冷間加工性に劣る。本実施形態では、フェライト結晶粒内のセメンタイトの割合を低減させて、機械構造部品用鋼線の硬さを抑えることを目的に、フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの面積割合を、全セメンタイトの面積に対して32%以上とする。「フェライト結晶粒界に存在するセメンタイト」には、フェライト結晶粒界に接するセメンタイトと、フェライト結晶粒界上に存在するセメンタイトの両方が含まれる。以下、「フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの面積割合」を「粒界セメンタイト率」ということがある。粒界セメンタイト率は、好ましくは35%以上、より好ましくは40%以上であり、更に好ましくは45%以上である。一方、粒界セメンタイト率は、高いほど好ましいことから特に上限は設けられず、100%であってもよい。
鋼中のセメンタイト量が一定の場合、セメンタイトのサイズが大きくなるほど、セメンタイトの数密度は減少して、セメンタイト間の距離が長くなる。鋼中のセメンタイト間の距離が長いほど析出強化し難くなり、その結果、硬さを低減できる。これらの観点から、本発明では全セメンタイトの平均円相当直径を、鋼中のC量(質量%)を[C]で表したときに、(1.668-2.13[C])μm以上とした。全セメンタイトの平均円相当直径は、好ましくは(1.669-2.13[C])μm以上である。一方、セメンタイトが粗大化しすぎると、冷間加工後の焼入れ処理工程で高温保持時に、セメンタイトが十分溶解せず、焼入れで十分高い硬さを得ることができない。よって本発明では、全セメンタイトの平均円相当直径を(1.863-2.13[C])μm以下とした。好ましくは、(1.858-2.13[C])μm以下である。
また、「フェライト結晶粒径」の測定対象である「フェライト結晶粒」とは、球状化が不十分で球状化焼鈍中に生成される棒状セメンタイトを含む結晶粒も評価対象であるが、球状化焼鈍前から残存し得る棒状セメンタイトを含む結晶粒(パーライト結晶粒)は対象外である。具体的には、ナイタール(硝酸2体積%、エタノール98体積%)を用いてエッチング後に、光学顕微鏡を用いて1000倍で観察したときに確認できる、「セメンタイトが粒内に存在しない結晶粒」と「セメンタイトが粒内に存在し、セメンタイトの形状が観察できる(すなわち、セメンタイトとフェライトの境界が明瞭に観察できる)結晶粒」をいう。上記光学顕微鏡を用いて1000倍ではセメンタイトの形状を観察できない(すなわち、セメンタイトとフェライトの境界が明瞭に観察できない)結晶粒は、本実施形態では判断対象外であり、「フェライト結晶粒」には含めない。
本実施形態に係る機械構造部品用鋼線は、前記金属組織におけるフェライト結晶粒径の平均値が30μm以下であることが好ましい。フェライト結晶粒径の平均値が30μm以下であれば、機械構造部品用鋼線の延性を向上でき、冷間加工時の割れ発生を更に抑制することができる。フェライト結晶粒径の平均値は、より好ましくは25μm以下であり、更に好ましくは20μm以下である。フェライト結晶粒径の平均値は、小さければ小さいほど好ましいが、可能な製造条件等を考慮すれば、下限はおおよそ2μmとなりうる。
下記の化学成分組成を満たし、かつ上述した金属組織を有する本実施形態に係る機械構造部品用鋼線は、冷間加工を良好に実施できる低硬度と、焼入れ処理後の高硬度とを両立できる。本実施形態では、鋼中のC量(質量%)、Cr量(質量%)、Mo量(質量%)を各々[C]、[Cr]、[Mo]で表したときに(含まれない元素はゼロ質量%とする)、硬さ、後述する実施例では球状化焼鈍後の硬さが、下記式(2)を満たすと共に、焼入れ処理後の硬さが下記式(3)を満たす場合に、硬さが十分低く冷間加工性に優れると共に、焼入れ処理後の高硬度を達成、すなわち焼入れ性に優れると判定した。
(球状化焼鈍後の)硬さ(HV)<91([C]+[Cr]/9+[Mo]/2)+91 ・・・(2)
焼入れ処理後の硬さ(HV)>380ln([C])+1010 ・・・(3)
本実施形態に係る機械構造部品用鋼線の化学成分組成について説明する。
Cは、鋼材の強度を支配する元素であり、含有量を増加させるほど焼入れ焼戻し後の強度が高くなる。上記の効果を有効に発揮させるため、C量の下限は、0.05質量%とした。C量は、好ましくは0.10質量%以上であり、より好ましくは0.15質量%以上、更に好ましくは0.20質量%以上である。しかし、C量が過剰であると、球状化焼鈍後の組織において球状セメンタイトの数が過剰となり、硬さが増加するため冷間加工性が低下する。そこで、C量の上限は、0.60質量%と定めた。C量は、好ましくは0.55質量%以下であり、より好ましくは0.50質量%以下である。
Siは、溶製時に脱酸材として用いられる他、強度の向上に寄与する。該効果を有効に発揮させるため、Si量の下限は0.005質量%とした。Si量は、好ましくは0.010質量%以上であり、より好ましくは0.050質量%以上である。しかし、Siは、フェライトの固溶強化に寄与し、球状化焼鈍後の強度をかなり高める作用を有する。Si含有量が過剰であると、上記作用により冷間加工性が劣化するため、Si量の上限は0.50質量%とした。Si量は、好ましくは0.40質量%以下であり、より好ましくは0.35質量%以下である。
Mnは、脱酸材として有効に作用すると共に、焼入れ性の向上に寄与する元素である。該効果を十分に発揮させるため、Mn量の下限は、0.30質量%とした。Mn量は、好ましくは0.35質量%以上であり、より好ましくは0.40質量%以上である。しかし、Mn量が過剰であると、偏析が起こり易くなり、靱性が低下する。そのため、Mn量の上限は、1.20質量%とした。Mn量は、好ましくは1.10質量%以下であり、より好ましくは1.00質量%以下である。
P(リン)は、不可避不純物であり、鋼中で粒界偏析を起こして鍛造性および靱性に悪影響を及ぼす有害元素である。よって、P量は、0.050質量%以下とした。P量は、好ましくは0.030質量%以下であり、より好ましくは0.020質量%以下である。P量は、少なければ少ないほど好ましいが、通常0.001質量%以上含まれる。
S(硫黄)は、不可避不純物であり、鋼中でMnSを形成し、延性を劣化させるので、冷間加工性には有害な元素である。そこで、S量は、0.050質量%以下とした。S量は、好ましくは0.030質量%以下であり、より好ましくは0.020質量%以下である。S量は、少なければ少ないほど好ましいが、通常0.001質量%以上含まれる。
Alは脱酸材として含まれる元素であり、脱酸に伴って不純物を低減する効果がある。この効果を発揮させるため、Al量の下限は、0.001質量%とした。Al量は、好ましくは0.005質量%以上であり、より好ましくは0.010質量%以上である。しかし、Al量が過剰であると、非金属介在物が増加し、靱性が低下する。そのため、Al量の上限は、0.10質量%と定めた。Al量は、好ましくは0.08質量%以下であり、より好ましくは0.05質量%以下である。
Crは、鋼の焼入れ性を向上させ強度を高める効果を有するとともに、セメンタイトの球状化を促進する効果を有する元素である。具体的には、Crは、セメンタイトに固溶して球状化焼鈍の加熱時にセメンタイトの溶解を遅延させる。加熱時にセメンタイトが溶解せずに一部残存することで、冷却時に、アスペクト比の大きい棒状セメンタイトが生成しにくくなり、球状化組織が得やすくなる。そのため、Cr量は、0質量%超とし、0.01質量%以上とすることが好ましい。更に0.05質量%以上としてもよく、より更には0.10質量%以上としてもよい。セメンタイトの球状化をより促進させる観点からは、更に0.30質量%超とすることができ、更に0.50質量%超とすることもできる。Cr量が過剰であると、炭素を含む元素の拡散が遅延し、セメンタイトの溶解を必要以上に遅延させて、球状化組織が得られにくくなる。その結果、本発明による硬さ低減の効果が低下し得る。そのため、Cr量は、1.50質量%以下、好ましくは1.40質量%以下、より好ましくは1.25質量%以下である。Cr量は、元素の拡散をより早める観点からは、更に1.00質量%以下、更に0.80質量%以下、更に0.30質量%以下にすることができる。
Nは、鋼に不可避的に含まれる不純物であるが、鋼中に固溶Nが多く含まれていると、ひずみ時効による硬度上昇、延性低下を招き、冷間加工性が劣化する。したがって、N量は、0.02質量%以下であり、好ましくは0.015質量%以下、より好ましくは0.010質量%以下である。
残部は、鉄および不可避不純物である。不可避不純物としては、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる微量元素(例えば、As、Sb、Snなど)の混入が許容される。なお、例えば、PおよびSのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
Cu、Ni、MoおよびBは、いずれも鋼材の焼入れ性を向上させることによって最終製品の強度を増加させるのに有効な元素であり、必要によって単独または2種以上が含有される。これらの元素による効果はその含有量が増加するにつれて大きくなる。上記効果を有効に発揮させるための好ましい下限は、Cu、Ni、Moの各々では0質量%超、より好ましくは0.02質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上であり、Bでは0質量%超、より好ましくは0.0003質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上である。
Ti,NbおよびVは、Nと化合物を形成し、固溶Nを低減することで、変形抵抗低減の効果を発揮するため、必要によって単独でまたは2種以上を含有させることができる。これらの元素による効果はその含有量が増加するにつれて大きくなる。いずれの元素についても上記効果を有効に発揮させるための好ましい下限は0質量%超、より好ましくは0.03質量%以上、更に好ましくは0.05質量%以上である。しかしながら、これらの元素の含有量が過剰になると、形成される化合物が変形抵抗の上昇を招き、却って冷間加工性が低下し得るので、TiおよびNbの各々の含有量は0.2質量%以下、Vの含有量は0.5質量%以下とすることが好ましい。TiおよびNbの各々の含有量は、より好ましくは0.18質量%以下、更に好ましくは0.15質量%以下であり、V含有量は、より好ましくは0.45質量%以下、更に好ましくは0.40質量%以下である。
Mg、Ca、LiおよびREMは、MnS等の硫化化合物系介在物を球状化させ、鋼の変形能を向上させるのに有効な元素である。こうした作用はその含有量が増加するにつれて増大する。上記効果を有効に発揮させるには、Mg、Ca、LiおよびREMの含有量は夫々、好ましくは0質量%超、より好ましくは0.0001質量%以上、更に好ましくは0.0005質量%以上である。しかし過剰に含有させてもその効果は飽和し、含有量に見合う効果が期待できないので、MgおよびLiの含有量は夫々、好ましくは0.02質量%以下、より好ましくは0.018質量%以下、更に好ましくは0.015質量%以下であり、CaとREMの含有量は夫々、好ましくは0.05質量%以下、より好ましくは0.045質量%以下、更に好ましくは0.040質量%以下である。なお、Mg、Ca、LiおよびREMは、夫々、単独で含有させてもよいし、2種以上を含有させてもよく、また2種以上を含有させる場合の含有量は夫々上記範囲で任意の含有量でよい。前記REMとは、ランタノイド元素(LaからLuまでの15元素)、Sc(スカンジウム)およびY(イットリウム)を含む意味である。
本発明形態に係る機械構造部品用鋼線の金属組織を得るには、該機械構造部品用鋼線を製造するにあたり、球状化焼鈍条件を以下に説明の通り適切に制御することが好ましい。球状化焼鈍に供する線材又は棒鋼を製造するための、熱間圧延工程に関しては特に限定されず、定法に従えば良い。後述の通り、球状化焼鈍前に伸線加工を付与してもよい。球状化焼鈍に供する条鋼である線材、鋼線、棒鋼の直径は特に限定されず、線材と鋼線の場合は、例えば5.5mm~60mm、棒鋼の場合は、例えば18mm~105mmである。
(1)(A1+8℃)以上の温度T1に加熱した後に、該温度T1で1時間超、6時間以下加熱保持し、
(2)10℃/時間~30℃/時間の平均冷却速度R1で、650℃超、(A1-17℃)以下の温度T2まで冷却し、次いで、温度T2よりも高く(A1+60℃)以下の加熱温度まで加熱する、冷却-加熱工程を、合計2~6回実施し、
(3)冷却-加熱工程の最終回の加熱温度から冷却する。
ここで、A1は、下記式(1)で算出される。
A1(℃)=723+29.1×[Si]-10.7×[Mn]+16.9×[Cr]-16.9×[Ni]・・・(1)
ただし、[元素]は、各元素の含有量(質量%)を表し、含まれない元素の含有量はゼロとする。
(A1+8℃)以上の温度T1に加熱することによって、圧延の段階で生成したアスペクト比の大きい棒状セメンタイトの溶解を促進させる。温度T1が低過ぎると、加熱保持時に棒状セメンタイトが溶解されず、フェライト中に残存しつづけ、硬さが増加する。十分に軟質化された鋼線を得るには、温度T1を、(A1+8℃)以上にする必要がある。温度T1は、好ましくは(A1+15℃)以上であり、より好ましくは(A1+20℃)以上である。一方、結晶粒の過剰な粗大化を十分抑制し、次工程の冷却過程でフェライト結晶粒界に球状セメンタイトをより容易に析出させ、棒状セメンタイトの残存量を抑えて硬さをより容易に低下させるには、温度T1を(A1+57℃)以下とすることが好ましい。
A1(℃)=723+29.1×[Si]-10.7×[Mn]+16.9×[Cr]-16.9×[Ni]・・・(1)
ただし、[元素]は、各元素の含有量(質量%)を表し、含まれない元素の含有量はゼロとする。
フェライト結晶粒界上に球状セメンタイトを析出させるために冷却する。温度T1からの平均冷却速度R1が速すぎると、棒状セメンタイトが過剰に再析出して、冷間加工性が低下する。そのため、平均冷却速度R1は、30℃/時間以下とする。平均冷却速度R1は、好ましくは25℃/時間以下であり、より好ましくは20℃/時間以下である。一方、平均冷却速度R1が遅過ぎると、冷却時に生成したセメンタイトが過剰に粗大化し、その結果、焼入れ処理工程の高温保持中にセメンタイトが十分に溶解されず、焼入れ処理後の硬さが低下、すなわち焼入れ性の劣化を招く。更に焼鈍時間の長時間化につながり、生産性が低下する。従って、平均冷却速度R1は、10℃/時間以上とし、好ましくは11℃/時間以上、より好ましくは12℃/時間以上とする。
上記(2-i)の工程でフェライト結晶粒内に析出した棒状セメンタイトを再溶解させるために、上記冷却の到達温度T2から加熱する。図1の[6]に示す様な加熱の到達温度、すなわち加熱温度は、温度T2よりも高く(A1+60℃)以下の温度範囲における任意の温度であればよい。前記加熱温度は、上記(2-i)の工程で生成した棒状セメンタイトを十分に再溶解させる観点からは、A1℃以上であることが好ましい。また、フェライト結晶粒界上の球状セメンタイトの再溶解を抑制して、球状化焼鈍後の硬さ増加を抑制する観点からは、前記加熱温度は、(A1+57℃)以下であることが好ましい。
フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの割合を増加させるとともに、フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの粗大化を促進するためには、前記(1)で温度T1に加熱保持した後、前記(2-i)および前記(2-ii)の冷却-加熱工程を合計2回以上行う必要がある。この冷却-加熱工程を繰り返し行わない場合、フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの割合の不足、またはフェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの粗大化が不十分となり、球状化焼鈍後の硬さが増大する。よって、上記冷却-加熱工程を2回以上行う。好ましくは3回以上である。実施回数を多くする程硬さが低減されるが、実施回数が多過ぎてもその効果は飽和する。また、焼鈍時間の長時間化につながり、生産性を低下させる。従って、冷却-加熱工程の実施回数は6回以下とした。なお、図1の場合、上記(2-i)および上記(2-ii)の冷却-加熱工程の実施回数は、4回である。また、各回の冷却の到達温度T2、平均冷却速度R1は、それぞれ規定する範囲内で異なっていてもよい。また、平均冷却速度R1は、1回目の冷却-加熱工程では、温度T1から冷却の到達温度T2までの平均冷却速度をいい、2回目以降は、図1の[6]の加熱温度から冷却の到達温度T2までの平均冷却速度をいう。
冷却-加熱工程の最終回の加熱温度から冷却する。該冷却時の平均冷却速度と冷却到達温度は特に限定されない。棒状セメンタイトの再析出をより抑制する観点から、平均冷却速度を、例えば100℃/時間以下としてしてもよい。また、セメンタイトの過剰な粗大化をより抑制する観点から、平均冷却速度を5℃/時間以上としてもよい。また、冷却到達温度は、例えば(A1-30℃)以下とすることができる。例えば(A1-30℃)以下、(A1-100℃)以上の温度域まで、上記平均冷却速度で冷却し、その後、空冷することが挙げられる。または、例えば(A1-100℃)未満とすることで、棒状セメンタイトの再析出をより抑制し、冷間加工性をより高めてもよい。この場合、焼鈍時間を短縮化する観点から、冷却到達温度は(A1-250℃)以上、更には(A1-200℃)以上、更には(A1-150℃)以上としてもよい。
[フェライト結晶粒径の平均値]
まず、フェライト結晶粒度の測定を次の通り行った。球状化焼鈍後の鋼線の横断面、すなわち鋼線の軸方向と直交する断面のD/4位置(D:鋼線の直径)を観察できるように試験片を樹脂埋めし、腐食液として、ナイタール(硝酸2体積%、エタノール98体積%)を用いて上記試験片のエッチングを行い、組織を現出させた。そして、光学顕微鏡にて、上記組織を現出させた試験片の組織観察を倍率400倍で行い、評価面内で、鋼線全体の組織を代表する平均的なサイズのフェライト結晶粒を観察できる1視野を選定し、顕微鏡写真を得た。次いで、フェライト結晶粒度(G)の値を、撮影した顕微鏡写真からJIS G0551(2020)の比較法に基づいて算出した。そして、算出したフェライト結晶粒度(G)の値を用い、「入門講座 専門用語-鉄鋼材料編-3 結晶粒度番号と結晶粒径」,梅本 実, ふぇらむ Vol.2(1997)No.10,p29~34の、p32の表1に記載の結晶粒度と粒径に関する諸量間の関係において、フェライト結晶粒度G(orN)とフェライト結晶粒径の平均値dnの関係として示された、下記式(4)から、フェライト結晶粒径の平均値dnを求めた。その結果を表3に示す。なお、本実施例において、表3のサンプルNo.1~13はいずれも、フェライトの面積率が90%以上であった。
dn=0.254/(2(G-1)/2) ・・・(4)
球状化焼鈍後の鋼線の全セメンタイトの平均サイズと粒界セメンタイト率の測定は、横断面が観察できるように試験片を樹脂埋めし、エメリー紙、ダイヤモンドバフによって切断面を鏡面研磨した。次いで、切断面に対し、腐食液として、ナイタール(硝酸2体積%、エタノール98体積%)を用いて30秒間~1分間のエッチングを行い、D/4位置(D:鋼線の直径)のフェライト結晶粒界およびセメンタイトを現出させた。そして、FE-SEM(Field-Emission Scanning Electron Microscope、電解放出型走査電子顕微鏡)を用いて、上記セメンタイト等を現出させた試験片の組織観察を行い、倍率2500倍にて、3視野を撮影した。
[球状化焼鈍後の硬さの測定]
冷間加工性を評価するため、球状化焼鈍後の各サンプルの硬さを、次の通り測定した。試験片の横断面、すなわち圧延方向に対して垂直な断面のD/4位置(D:鋼線の直径)で、JIS Z2244(2009)に準拠してビッカース硬さ試験を実施した。3点以上の平均を算出して得られるビッカース硬さを、球状化焼鈍後の硬さとした。その測定結果を表3に示す。表3では球状化焼鈍後の硬さを「球状化硬さ」と示す。本実施例では、球状化焼鈍後の硬さが、鋼中のC量(質量%)、Cr量(質量%)、Mo量(質量%)を各々[C]、[Cr]、[Mo]で表したときに(含まれない元素はゼロ質量%とする)、下記式(2)を満たす場合を、冷間加工性に優れるとして「OK」と評価し、下記式(2)を満たさない場合を、冷間加工性に劣るとして「NG」と評価した。
球状化焼鈍後の硬さ(HV)<91([C]+[Cr]/9+[Mo]/2)+91 ・・・(2)
焼入れ性を評価するため、焼入れ処理後の各サンプルの硬さを、次の通り測定した。まず、焼入れ処理用試料として、球状化焼鈍後の各サンプルを、焼入れ処理で焼きが十分に入るように、圧延方向の長さである厚み(t)が5mmとなるように加工した試料を用意した。該試料に対し、焼入れ処理として、A3+(30~50℃)で5分間の高温保持を行い、該高温保持後に水冷した。前記A3は、下記式(5)から導出される値である。また、ここでの高温保持の時間は、炉温が設定温度に達してからの時間とした。
A3(℃)=910-203×√([C])-14.2×[Ni]+44.7×[Si]+104×[V]+31.5×[Mo]+13.1×[W]-30×[Mn]-11×[Cr]-20×[Cu]+700×[P]+400×[Al]+120×[As]+400×[Ti]・・・(5)
ただし、[元素]は、各元素の含有量(質量%)を表し、含まれない元素は、0%として計算する。
焼入れ処理後の硬さ(HV)>380ln([C])+1010 ・・・(3)
Claims (6)
- C :0.05質量%~0.60質量%、
Si:0.005質量%~0.50質量%、
Mn:0.30質量%~1.20質量%、
P :0質量%超、0.050質量%以下、
S :0質量%超、0.050質量%以下、
Al:0.001質量%~0.10質量%、
Cr:0質量%超、1.5質量%以下、および
N :0質量%超、0.02質量%以下
を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなり、
フェライト結晶粒界に存在するセメンタイトの面積の割合が、全セメンタイトの面積に対して32%以上であり、且つ
測定するセメンタイトの最小サイズ(円相当直径)を0.3μmとしたときの、全セメンタイトの平均円相当直径が、鋼中のC量(質量%)を[C]で表したときに、(1.668-2.13[C])μm以上、(1.863-2.13[C])μm以下であり、
フェライト結晶粒径の平均値が30μm以下である、機械構造部品用鋼線。 - 更に、
Cu:0質量%超、0.25質量%以下、
Ni:0質量%超、0.25質量%以下、
Mo:0質量%超、0.50質量%以下および
B :0質量%超、0.01質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1に記載の機械構造部品用鋼線。 - 更に、
Ti:0質量%超、0.2質量%以下、
Nb:0質量%超、0.2質量%以下、および
V :0質量%超、0.5質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1または2に記載の機械構造部品用鋼線。 - 更に、
Mg:0質量%超、0.02質量%以下、
Ca:0質量%超、0.05質量%以下、
Li:0質量%超、0.02質量%以下、および
REM:0質量%超、0.05質量%以下よりなる群から選択される1種以上を含有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の機械構造部品用鋼線。 - 請求項1~4のいずれか1項に記載の化学成分組成を満たす条鋼に、
下記(1)~(3)の工程を含む球状化焼鈍を施す工程を含む、請求項1~4のいずれか1項に記載の機械構造部品用鋼線の製造方法。
(1)(A1+8℃)以上の温度T1に加熱した後に、該温度T1で1時間超、6時間以下加熱保持し、
(2)10℃/時間~30℃/時間の平均冷却速度R1で、650℃超、(A1-17℃)以下の温度T2まで冷却し、次いで、温度T2よりも高く(A1+60℃)以下の加熱温度まで加熱する、冷却-加熱工程を、合計2~6回実施し、
(3)冷却-加熱工程の最終回の加熱温度から冷却する。
ここで、A1は、下記式(1)で算出される。
A1(℃)=723+29.1×[Si]-10.7×[Mn]+16.9×[Cr]-16.9×[Ni]・・・(1)
ただし、[元素]は、各元素の含有量(質量%)を表し、含まれない元素の含有量はゼロとする。 - 前記条鋼は、線材に、5%超の減面率で伸線加工を施して得られた鋼線である、請求項5に記載の機械構造部品用鋼線の製造方法。
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