JPH1025521A - 線材の球状化焼鈍方法 - Google Patents

線材の球状化焼鈍方法

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JPH1025521A
JPH1025521A JP8178798A JP17879896A JPH1025521A JP H1025521 A JPH1025521 A JP H1025521A JP 8178798 A JP8178798 A JP 8178798A JP 17879896 A JP17879896 A JP 17879896A JP H1025521 A JPH1025521 A JP H1025521A
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temperature
wire
cementite
rate
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Application number
JP8178798A
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English (en)
Inventor
Yoshihiro Ofuji
善弘 大藤
Kenji Aihara
賢治 相原
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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  • Heat Treatment Of Steel (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】短時間でセメンタイトの球状化率を75%以上
となして軟化させることが可能な、炭素鋼や低合金鋼を
母材とする熱間圧延ままの線材の球状化焼鈍方法を提供
する。 【解決手段】母材が、C :0.15〜0.6 %、Mn+Cr:0.8
〜3.0 %を含有する鋼で、熱間圧延後の組織が式及び
を満たすストランド状態の線材を、100 ℃/秒以上の
加熱速度で温度T1 に昇温した後、直ちに温度T2 まで
C1 ℃/秒の冷却速度で冷却し、次いで、温度T3 の炉
中に装入して 3〜30分保持する。ここで、Ae1点+20℃
≦T1 ≦Ae1点+150 ℃、Ae1点−50℃≦T2 ≦Ae1
+20℃、Ae1点−80℃≦T3 ≦Ae1点−20℃、{(T1
−Ae1点)/30}≦C1 ≦{(T1 −Ae1点)/1.5
}、である。又、{(ベイナイト分率)/(1−フ
ェライト分率)}≧0.2 、フェライト分率≧0.1 。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、線材の球状化焼鈍
方法に関し、より詳しくは、炭素鋼や低合金鋼を母材と
する熱間圧延ままの線材の急速球状化焼鈍方法に関す
る。なお、本発明の対象とする線材には、所謂「バーイ
ンコイル」も含む。
【0002】
【従来の技術】JIS S45Cなどの炭素鋼やJIS SCM
435などの低合金鋼を母材とし、ボルトや自動車部品
などの素材に用いられる線材は、通常の方法で熱間圧延
されたままでは、フェライトとパーライトの混合組織
(以下、「フェライト+パーライト組織」という)、フ
ェライト、パーライト及びベイナイトの混合組織(以
下、「フェライト+パーライト+ベイナイト組織」とい
う)、又は、フェライトとベイナイトの混合組織(以
下、「フェライト+ベイナイト組織」という)を有する
ため、強度が高く、靭性は低い。このため、熱間圧延ま
まの線材を、後工程である切断や冷間鍛造、更には切削
などの冷間加工にそのまま供した場合には、成形品や線
材に割れを生じたり、冷間加工のための工具の寿命が大
幅に縮まってしまう。したがって、熱間圧延ままの線材
には、下記(イ)、(ロ)に示すような方法で冷間加工
性を高める処理が施されてきた。
【0003】(イ)熱間圧延した線材を熱処理炉に装入
し、10〜25時間かけて球状化焼鈍を施す。
【0004】(ロ)熱間圧延仕上げ温度を低くし、圧延
後の冷却速度を遅くすることで、線材の熱間圧延ままの
組織を粗大なフェライト+パーライト組織とする。 しかしながら、(イ)の方法は、繰り返しの球状化焼鈍
を要することが多く、工程が複雑になり処理時間も長く
なることから、コスト面で不利である。加えて、長時間
の熱処理(焼鈍処理)のために、線材の表面には脱炭や
厚いスケールが生成するという問題もある。
【0005】又、(ロ)の方法で熱間圧延した線材は、
通常の方法で熱間圧延したままの線材に比べれば冷間加
工性は高いものの、熱間圧延ままの組織がフェライト+
パーライト組織であるため、球状化焼鈍した線材に比べ
ると冷間加工性は低い。更に、仕上げ温度を下げて熱間
圧延することは、圧延機への負担が大きくなるばかり
か、生産効率を低下させることにもなる。加えて、冷却
速度を遅くするためには、製造設備の改造を要するので
多額の設備投資が必要であるし、冷却速度が遅い分生産
効率が低下してしまう。
【0006】このような問題に対して、例えば特公昭6
1−15930号公報には、「棒鋼線材をストランド状
態においてAc1点+30℃〜Ac1点+150℃の加熱温
度まで平均加熱速度50℃/分以上で加熱し、5分以内
保持した後、Ar1変態点まで10分以内に冷却し、つい
でAr1点−40℃までの温度域を0.5〜5℃/分の平
均冷却速度で冷却する」棒鋼線材の球状化処理方法が提
案されている。
【0007】上記の公報に記載の技術は、熱間圧延まま
の棒鋼線材の組織における相の中で、特にパーライトに
着目したもので、棒鋼線材をAc1点以上の温度に加熱す
ることでパーライトを構成する層状セメンタイトの一部
を基地に溶け込ませ、未固溶のセメンタイトを核として
球状化させようとするものである。このため、対象とす
る棒鋼線材について、その母材の成分系に応じて加熱温
度、加熱時間などを正確に制御する必要がある。
【0008】すなわち、前記の公報にも記載されている
ように、目標加熱温度の好ましい温度範囲は、例えば、
機械構造用炭素鋼などの炭素鋼においては、Ac1点+3
0〜Ac1点+50℃、クロム鋼などの合金鋼において
は、Ac1点+40〜Ac1点+80℃であるため、加熱温
度を±10〜20℃の狭い範囲に制御する必要がある。
【0009】線材をストランド状態にして加熱する場
合、その走行速度は100m/分以上にもなる場合があ
り、このような高速走行時に線材の加熱温度を±(10
〜20)℃に制御することは極めて難しい。特に、目標
とする加熱温度がAc1点近傍の温度域であり、変態によ
る吸熱がおこることとも相俟って厳密な温度制御は難し
い。
【0010】更に、対象とする棒鋼線材の組織が、低合
金鋼を母材とする通常の熱間圧延線材の場合のようにベ
イナイトを含む組織である場合には、前記公報に記載の
技術では安定した球状化組織が得られないこともある。
【0011】特開昭60−9832号公報には、鋼線及
び棒鋼の素材を特定条件で熱処理してベイナイト組織に
することによって、迅速球状化が可能な鋼線及び棒鋼の
製造方法が開示されている。しかしながら、線材の製造
においてベイナイトだけの組織とするためには、正確な
制御冷却を行うための設備や、恒温変態に必要な溶融ソ
ルトバスなどの設備が必要なため、経済的な面から問題
がある。更に、球状化焼鈍時間の短縮効果もそれほど大
きくない。すなわち、例えば上記公報中に実施例として
記載されているように、760℃に1時間保持後、60
0℃までを10℃/時間で徐冷した後空冷している。そ
のため、球状化焼鈍処理に11時間以上要している。
【0012】更に、組織が全てベイナイトからなる線材
の靭性は低い。このため、通常コイル状に巻いて圧延さ
れた線材を巻き戻してストランド状態に矯正することは
極めて困難である。したがって、ベイナイト組織の線材
を、ストランド状態で熱処理することは難しい。
【0013】ところで、前記した特公昭61−1593
0号公報や、特開昭60−9832号公報に記載の技術
を用いれば、球状化焼鈍時間の短縮は一応は可能であ
る。しかしながら、これらの技術には、製造コスト、生
産効率、球状化焼鈍時間などに依然として問題がある。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記現状に
鑑みなされたもので、炭素鋼や低合金鋼を母材とする熱
間圧延ままの線材に対して、短時間でセメンタイトの球
状化率を75%以上となして軟化させることが可能な、
線材の球状化焼鈍方法を提供することを目的とする。
【0015】ここで、上記の「球状化率」とは、顕微鏡
観察した時、「その視野におけるセメンタイトに対して
の(短径)/(長径)の比が0.5以上であるセメンタ
イトの割合(%)」を意味する。
【0016】なお、本発明が対象とする線材とは、JI
Sの用語の「棒状に熱間圧延された鋼で、コイル状に巻
かれた鋼材」のことをいい、既に述べたように、「バー
インコイル」を含むものである。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、実験・研
究を重ねた結果、熱間圧延ままの線材に短時間焼鈍処理
を施して、セメンタイトの球状化率を75%以上にする
ためには、下記の(a)から(f)を満たさねばならな
いことを見いだした。
【0018】(a)Ae1点より高い温度域でのセメンタ
イトの溶解速度(固溶速度)を遅くするためには、上記
線材の組織中にベイナイトが含まれ、更に、上記線材の
母材中にCr及び/又はMnが適正量含有されている必
要がある。
【0019】(b)Ae1点より高い温度域でセメンタイ
トの形状が速やかに球状に変化する相は、ベイナイトで
ある。そして、一定割合以上のベイナイトを含む場合に
はセメンタイトの球状化が速やかに起こる。
【0020】(c)コイル状に熱間圧延された線材をス
トランド状態に巻き戻して矯正するためには、線材の組
織中に適正量のフェライトが含まれている必要がある。
【0021】(d)セメンタイト中に濃化しているCr
及びMnをセメンタイト溶解時になるべく拡散させない
ために、Ae1点より高い温度域に線材を長時間保持して
はいけない。
【0022】(e)セメンタイトを適量残存させるため
には、加熱速度及び加熱温度に応じた冷却速度で冷却す
れば良い。
【0023】(f)未溶解のセメンタイトを充分に成長
させるためには、線材をAe1点直下近傍の温度域で徐冷
するか、前記温度域で保持すれば良い。
【0024】上記知見に基づく本発明は、下記に示す線
材の球状化焼鈍方法を要旨とする。
【0025】「母材が、重量%でC:0.15〜0.6
%、Mn+Cr:0.8〜3.0%を含有する鋼で、熱
間圧延後の組織が式及びを満たすストランド状態の
線材を、温度T1 に100℃/秒以上の加熱速度で昇温
した後、直ちに温度T2 までC1 ℃/秒の冷却速度で冷
却し、次いで、温度T3 の炉中に装入して3〜30分保
持することを特徴とする線材の球状化焼鈍方法。
【0026】 {(ベイナイト分率)/(1−フェライト分率)}≧0.2・・・ フェライト分率≧0.1・・・ ここで、Ae1点+20℃≦T1 ≦Ae1点+150℃、 Ae1点−50℃≦T2 ≦Ae1点+20℃、 Ae1点−80℃≦T3 ≦Ae1点−20℃、 {(1 −Ae1点)/30}≦C1 ≦{(T1 −Ae1点)
/1.5}、である。」
【0027】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳しく説明
する。なお成分元素量における「%」は「重量%」を意
味する。
【0028】(A)化学組成 本発明が対象とする線材は、所定の形状に加工された
後、最終工程で焼入れ焼戻しなどの熱処理を施されて、
所望の特性(強度、靭性、耐食性など)を付与される。
この最終製品における特性の付与と、短時間でセメンタ
イトの球状化率が75%以上である球状化焼鈍組織を得
る意味合いから、線材の化学成分としてC量、Mn+C
r量のみを下記の範囲に限定する。
【0029】C:0.15〜0.6% Cは、強度を確保するのに有効な元素である。しかし、
その含有量が0.15%未満では充分な強度が得られな
い。一方、0.6%を超えて含有させても強度上昇効果
は飽和し、加えて焼き入れ時に割れ(焼き割れ)を生じ
やすくなる。したがって、Cの含有量を0.15〜0.
6%とした。
【0030】Mn+Cr:0.8〜3.0% MnとCrは、いずれもセメンタイト中に固溶してセメ
ンタイトを安定化し、加熱時にセメンタイトの溶解速度
を遅くして、セメンタイトを適正量残存させる効果を有
する。更に、Mn及びCrには焼き入れ性を高めて、強
度及び靭性を向上させる作用がある。前記した作用はM
nとCrが単独で含有されるか、複合して含有されるか
を問わず発揮される。すなわち、MnとCrのうちのい
ずれかが0(ゼロ)であっても良い。しかし、MnとC
rの含有量の和が0.8%未満では所望の効果が得られ
ない。一方、MnとCrの含有量の和で3.0%を超え
てを含有させると、球状セメンタイトの成長が著しく遅
くなり、短時間で球状化できなくなる。したがって、M
n+Crの含有量を、0.8〜3.0%とした。
【0031】本発明が対象とする線材のC及びMn+C
r以外の他の化学成分の組成に関しては、特別な限定を
加える必要はない。最終製品において要求される特性の
付与が可能であり、且つ球状化焼鈍が短時間で完了する
ような成分範囲でありさえすれば良い。
【0032】具体的には、例えば、CとMn+Cr以外
の元素としてSi:0〜2.0%、Cu:0〜2.0
%、Ni:0〜4.0%、Mo:0〜0.5%、V:0
〜0.4%、Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.1
0%、Al:0〜0.10%、N:0〜0.03%、
B:0〜0.005%、S:0〜0.10%、Pb:0
〜0.30%、希土類元素:0〜0.10%、Ca:0
〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部が
Feと不可避不純物からなり、不純物としてのPが0.
05%以下のものであれば良い。
【0033】なお、線材又は最終製品における特性向上
などを目的に、CとMn+Cr以外の上記した元素を追
加含有させる場合には、Si:0.05〜2.0%、C
u:0.05〜2.0%、Ni:0.3〜4.0%、M
o:0.05〜0.5%、V:0.05〜0.4%、N
b:0.002〜0.05%、Ti:0.005〜0.
10%、Al:0.001〜0.10%、N:0.00
1〜0.03%、B:0.0003〜0.005%、
S:0.005〜0.10%、Pb:0.02〜0.3
0%、希土類元素:0.002〜0.10%、Ca:
0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.
01%の含有量とすることが好ましい。更に、不純物と
してのPは0.05%以下とすることが好ましい。
【0034】(B)熱間圧延後の組織 母材が上記(A)の化学組成からなる鋼で、通常の方法
で熱間圧延された線材の組織は、フェライト+パーライ
ト組織、フェライト+パーライト+ベイナイト組織、又
はフェライト+ベイナイト組織のいずれかである。
【0035】熱間圧延ままの組織を有する線材がAe1
以上の温度に加熱された時、ベイナイト中のセメンタイ
トは、パーライト中のセメンタイトに比べて溶解速度が
遅く、しかも速やかに球状になりやすい。このため、加
熱後の冷却時にセメンタイト析出の核として有効に働く
ので、球状化焼鈍の短縮に有効である。したがって、熱
間圧延した後の(球状化焼鈍前の)線材の組織を、ベイ
ナイトを含んだものに限定する。すなわち、熱間圧延後
の線材の組織を、フェライト+パーライト+ベイナイト
組織、又はフェライト+ベイナイト組織のいずれかに規
定する。
【0036】上記したベイナイトの効果を充分活用する
ためには、後の実施例でも詳しく示すように、下記の式
を満たすことが重要である。
【0037】 {(ベイナイト分率)/(1−フェライト分率)}≧0.2・・・ すなわち、(ベイナイト分率)/(1−フェライト分
率)が0.2を下回ると、加熱時のセメンタイトの基地
への溶解量が多くなり過ぎて、所望の75%以上のセメ
ンタイトの球状化率が得られない。なお、(ベイナイト
分率)/(1−フェライト分率)の上限は1(すなわ
ち、熱間圧延後の線材の組織がフェライト+ベイナイト
組織)であっても構わない。
【0038】ここで、「ベイナイト分率」、「フェライ
ト分率」はそれぞれ、倍率500倍の顕微鏡で5視野観
察した時の、「ベイナイトの面積割合」、「フェライト
の面積割合」を指す。
【0039】又、コイル状に熱間圧延された線材をスト
ランド状態に巻き戻して矯正するためには、線材の組織
中にフェライトが少なくとも10%含まれている必要が
ある。したがって、下記の式を満たすように規定し
た。
【0040】フェライト分率≧0.1・・・ 球状化焼鈍の短縮のためにはベイナイト分率を高める必
要があるので、フェライト分率の上限は0.7程度とす
ることが好ましい。
【0041】なお、熱間圧延後の線材に上記した組織を
付与するには、例えば、通常の方法で熱間圧延した後、
適正な冷却条件で冷却すれば良い。この冷却条件は、例
えば、線材の直径と母材の化学組成毎に組織を調査し、
この調査データを基にして決定すれば良い。
【0042】(C)加熱 球状化焼鈍を短縮するためには、Ae1点より高い温度域
での保持時間を短くして、セメンタイト中に濃化してい
るCr及びMnをなるべく拡散させないようにすること
で、セメンタイトの再析出時に球状化を促進しなければ
ならない。このためには、急速加熱処理によって昇温さ
せる必要がある。
【0043】ところで、一般に線材を加熱する方法とし
ては、以下に示す2方法が知られている。
【0044】(i)所定温度の炉に、コイル状の線材を
装入して、所定の時間保持する。
【0045】(ii)線材をストランド状態にして走行
させながら、通電加熱法や高周波加熱法で加熱する。
【0046】しかし、(i)の方法ではコイル状の線材
を均一な温度に加熱するのに数時間要してしまう。この
ため、特に、Cr及びMnが基地であるオーステナイト
中へ拡散してしまうので、セメンタイトの球状化が阻害
されてしまう。したがって、セメンタイトを迅速に球状
化して焼鈍時間を短縮するためには、(ii)の方法で
加熱する必要がある。
【0047】ストランド状態で線材を走行させながら加
熱する際、加熱速度が遅いと生産効率が低くなって、製
造コスト増加の要因となる。そこで、加熱速度の下限を
生産性向上の観点から100℃/秒と規定した。ところ
で、上記の「加熱速度」は、常温(室温)から下記に示
す温度T1 までの平均加熱速度を指す。なお、加熱速度
の上限は特に規定する必要はない。設備的な面からの上
限加熱速度とすれば良く、例えば、通電加熱装置を用い
た10000℃/秒程度の超急速加熱速度であっても良
い。
【0048】上記の100℃/秒以上の加熱速度で線材
を急速加熱処理する場合、Ae1点+20℃からAe1点+
150℃の間の温度であるT1 まで加熱昇温させなけれ
ばならない。これは、後の実施例で示すように、加熱温
度T1 がAe1点+20℃未満であれば、加熱後の冷却に
おいて冷却速度を遅くしてもベイナイト中及びパーライ
ト中のセメンタイトが充分には溶解しないため、球状化
焼鈍後にセメンタイトの球状化率を75%以上とするこ
とができないからである。一方、Ae1点+150℃を超
える温度に加熱すれば、加熱後の冷却において冷却速度
を速くしてもセメンタイトがほとんど全て溶解してしま
うため、やはり、球状化焼鈍後の球状化率が低くなる。
【0049】なお、Ae1点(℃)は下記によるものとす
る。
【0050】Ae1点=723 −10.7×Mn(%)+29.1×
Si(%)+16.9×Cr(%)。
【0051】(D)冷却 熱間圧延ままの線材は、上記(C)項で述べたような極
めて速い加熱速度で温度T1 まで加熱される。このた
め、この加熱中にベイナイト中及びパーライト中のセメ
ンタイトはほとんど溶解せず、セメンタイトの形状も変
化しない。
【0052】熱間圧延後に前記(B)項に示した組織を
有する線材を球状化させるためには、上記(C)項で示
した条件で加熱した後、直ちにAe1点−50℃からAe1
点+20℃の間の温度であるT2 まで冷却し、その冷却
中にベイナイト中及びパーライト中のセメンタイトの適
正量を溶解させ、残存したセメンタイトを球状に変化さ
せる必要がある。そして、この場合の冷却速度は、前記
した加熱温度T1 に応じた下記の冷却速度C1 とする必
要がある。
【0053】{(T1 −Ae1点)/30}≦C1 ≦
{(T1 −Ae1点)/1.5} 後の実施例で示すように、冷却温度T2 がAe1点+20
℃を超える場合には、セメンタイトがほとんど全て溶解
してしまうため、球状化焼鈍後の球状化率が低くなる。
一方、冷却温度T2 がAe1点−50℃未満であると、一
旦溶解していたセメンタイトが、パーライトとして析出
するため、球状化焼鈍後の球状化率が低くなる。したが
って、冷却温度T2 はAe1点−50℃からAe1点+20
℃の間の温度とした。
【0054】図1は、後の実施例における結果を、縦軸
を冷却速度C1 (℃/秒)、横軸をT1 −Ae1点(℃)
として整理したもので、「○」はセメンタイトの球状化
率が75%以上、「×」はセメンタイトの球状化率が7
5%未満であることを示す。この図1から、冷却速度C
1 が{(T1 −Ae1点)/30}℃/秒から{(T1−
Ae1点)/1.5}℃/秒である時に、セメンタイトの
球状化率が75%以上の所望の球状化組織が得られるこ
とが分かる。
【0055】冷却速度C1 が{(T1 −Ae1点)/3
0}℃/秒より遅い場合には、たとえ加熱温度T1 がA
e1点+20℃からAe1点+150℃の間の温度であって
も、ベイナイト中及びパーライト中のセメンタイトがほ
とんど全て溶解してしまうため、球状化率が低くなる。
一方、冷却速度C1 が{(T1 −Ae1点)/1.5}℃
/秒より速い場合には、たとえ加熱温度T1 がAe1点+
20℃とAe1点+150℃の間の温度であっても、セメ
ンタイトが充分には溶解しないため、球状化率は低くな
る。
【0056】(E)炉への装入 熱間圧延後に前記(B)項に示した組織を有する線材を
球状化するには、上記の温度T2 まで冷却速度C1 で冷
却した後、残存したセメンタイトを核として、球状セメ
ンタイトを充分に成長させるために、下記温度T3 の炉
中に装入して3〜30分保持することが必要である。
【0057】Ae1点−80℃≦T3 ≦Ae1点−20℃。
【0058】なお、温度T3 が上記の条件を満たしてお
れば、T2<T3であっても良いし、T2≧T3であっても
良い。
【0059】上記の温度T3 がAe1点−20℃を超える
場合には、セメンタイトの析出が完了するまで長時間炉
中に保持することが必要になって、コストが嵩んでしま
う。一方、温度T3 がAe1点−80℃を下回る場合に
は、オーステナイトからフェライトへの変態が低温で速
やかにおこるため、パーライトが生成しやすくなって、
焼鈍後の球状化率が低くなる。したがって、線材を装入
する炉の温度T3 はAe1点−80℃からAe1点−20℃
の間の温度とした。
【0060】前記温度の炉中に装入した後の保持時間が
3分を下回る場合は、球状セメンタイトが充分成長する
前に炉外で速やかに冷却されてしまうため、パーライト
が生成して、球状化率が低くなる。一方、保持時間が3
0分を超えると焼鈍時間が長くなってしまうので処理コ
ストが嵩む。したがって、前記温度の炉中保持時間を3
〜30分とした。
【0061】ところで、「温度T3 の炉中に装入して3
〜30分保持する」というのは、「Ae1点−80℃から
Ae1点−20℃の間にある任意の一定温度T3 に保った
炉中に装入して3〜30分保持」しても良く、「温度T
3 の炉中に装入し、その後、例えば連続的にあるいはス
テップ状に炉温T3 をAe1点−80℃からAe1点−20
℃の間で変化させて、炉中に保持している時間が合計で
3〜30分」であっても良いことを意味する。
【0062】上記の温度域での3〜30分の保持によっ
て、対象とする線材は、セメンタイトの球状化率が75
%以上の所望の組織となる。このため、前記温度域にお
ける保持後の冷却速度は任意に選んで良い。但し、短時
間化処理のためにはできるだけ速い冷却速度で冷却する
ことが望ましい。
【0063】
【実施例】表1に示す化学組成を有する鋼を通常の方法
により150kg真空炉を用いて溶製した。表1におけ
る鋼B〜D、G、J、K及びMは本発明方法の対象鋼で
ある。鋼A、E、H及びLは成分のいずれかが本発明で
規定する範囲から外れた比較鋼である。又、鋼F及びN
は後述の熱間圧延後の組織が本発明で規定する範囲から
外れた比較鋼であり、鋼IはCr+Mnの含有量及び後
述の熱間圧延後の組織ともに本発明で規定する範囲から
外れた比較鋼である。
【0064】次いで、これらの鋼を通常の方法によって
直径10mmの線材に熱間圧延した後、コンベア上にコ
イル状に巻き落として風冷の強弱によって冷却速度を変
えて400℃まで冷却し、その後は放冷した。
【0065】上記のようにして得られた熱間圧延線材の
ミクロ組織を、倍率500倍の光学顕微鏡で5視野ずつ
観察してフェライト分率とベイナイト分率を測定した。
表1にこのようにして測定した{(ベイナイト分率)/
(1−フェライト分率)}とフェライト分率を併せて示
す。
【0066】
【表1】
【0067】次に、上記のようにして得られた、熱間圧
延線材を供試材として、表2及び表3に示す種々の条件
で熱処理を行い、熱処理後のセメンタイトの球状化率を
測定した。表2及び表3にセメンタイトの球状化率を併
せて示す。
【0068】なお、表2及び表3に記載の熱処理時の加
熱は、コイル状の線材を矯正してストランド状態にして
走行させながら通電加熱して行った。通電加熱によって
所定の温度T1 に加熱した後は、直ちに冷却速度C1 で
温度T2 まで連続的に冷却し、その後、所定温度に加熱
された炉中に装入してコイル状に巻き取り、所定の時間
経過後に炉から取り出して、常温(室温)まで空冷又は
水冷した。上記の炉には、温度がゾーン毎に変えられる
ものを用いた。
【0069】なお、鋼Nを母材とする線材は、熱間圧延
後の組織におけるフェライトの分率が0.04と小さい
ため靭性が低く、ストランド状態に矯正したときに、割
れが発生したため熱処理ができなかった。このため、表
2及び表3には鋼Nを用いた場合の試験結果は記載して
いない。
【0070】表2及び表3から、本発明の方法によれ
ば、熱処理(焼鈍処理)後にセメンタイトの球状化率が
75%以上の線材が、極めて短時間で得られることが明
らかである。
【0071】これに対して、供試線材の母材の化学成
分、熱間圧延後の組織(焼鈍処理の前組織)又は、熱処
理条件のいずれかが本発明で規定する条件から外れた比
較法の場合には、セメンタイトの球状化率において劣っ
ている。
【0072】すなわち、試験番号19は加熱温度T1 が
Ae1点+180℃を上回るため、試験番号14は冷却速
度C1 が{(T1 −Ae1点)/30}℃/秒を下回るた
め、試験番号23は冷却終了温度T2 がAe1点+20℃
を上回るため、それぞれセメンタイトが多く溶解してし
まい、熱処理後の球状化率が低い。
【0073】試験番号8は加熱温度T1 がAe1点+20
℃を下回るため、試験番号17は冷却速度C1 が{(T
1−Ae1点)/1.5}℃/秒を上回るため、それぞれ
セメンタイトがほとんど溶解しなくなり、熱処理後の球
状化率が低い。
【0074】更に、試験番号20は冷却終了温度T2 が
Ae1点−50℃を下回るため、試験番号27、28は炉
の温度T3 がAe1点−80℃を下回るため、試験番号2
9は炉中保持時間が3分を下回るため、パーライトが生
成して、熱処理後の球状化率が低い。
【0075】試験番号24は炉の温度T3 がAe1点−2
0℃を上回るため、炉中保持時間が30分ではセメンタ
イトが全て析出できないので、熱処理後の球状化率が低
い。
【0076】試験番号12は母材のCr+Mnの含有量
が0.8%を下回るため、セメンタイトが多く溶解して
しまい、熱処理後の球状化率が低い。
【0077】試験番号13は母材のCr+Mnの含有量
が0.8%を下回り、且つ熱間圧延後の組織の{(ベイ
ナイト分率)/(1−フェライト分率)}が0.2を下
回るため、 セメンタイトが多く溶解してしまい、熱処
理後の球状化率が低い。
【0078】試験番号10は熱間圧延後の組織の{(ベ
イナイト分率)/(1−フェライト分率)}が0.2を
下回るためセメンタイトが多く溶解し、更にセメンタイ
トの形状が速やかに球状にならないため、熱処理後の球
状化率が低い。
【0079】試験番号33、34は母材のCr+Mnの
含有量が3.0%を上回るため、セメンタイトがほとん
ど溶解せず、熱処理後の球状化率が低い。
【0080】試験番号32は炉中保持時間が30分を上
回るため、試験番号35は加熱速度が100℃/秒を下
回るため、セメンタイトの球状化率は所望の値が得られ
るものの、生産効率の点で劣る。
【0081】試験番号1及び5はセメンタイトの球状化
率は所望の値が得られたものの、これらの球状化焼鈍材
を焼入れした場合の特性が劣るものであった。すなわ
ち、試験番号1は、母材のC含有量が0.15%を下回
るため、焼き入れままの状態でビッカース硬度が400
に達せず、充分な強度を得ることができなかった。一
方、試験番号5は母材のC含有量が0.6%を超えるた
め、焼き入れ時に焼き割れを生じた。
【0082】
【表2】
【0083】
【表3】
【0084】
【発明の効果】本発明の方法によれば、炭素鋼や低合金
鋼を母材とする熱間圧延ままの線材に対して、短時間で
セメンタイトの球状化率を75%以上となして軟化させ
ることができるので、産業上の効果は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例における結果を、縦軸を冷却速度C1
(℃/秒)、横軸をT1 −Ae1点(℃)として、セメン
タイトの球状化の状況を整理した図である。「○」はセ
メンタイトの球状化率が75%以上、「×」はセメンタ
イトの球状化率が75%未満であることを示す。

Claims (1)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】母材が、重量%でC:0.15〜0.6
    %、Mn+Cr:0.8〜3.0%を含有する鋼で、熱
    間圧延後の組織が式及びを満たすストランド状態の
    線材を、100℃/秒以上の加熱速度で温度T1 に昇温
    した後、直ちに温度T2 までC1 ℃/秒の冷却速度で冷
    却し、次いで、温度T3 の炉中に装入して3〜30分保
    持することを特徴とする線材の球状化焼鈍方法。 {(ベイナイト分率)/(1−フェライト分率)}≧0.2・・・ フェライト分率≧0.1・・・ ここで、Ae1点+20℃≦T1 ≦Ae1点+150℃、 Ae1点−50℃≦T2 ≦Ae1点+20℃、 Ae1点−80℃≦T3 ≦Ae1点−20℃、 {(T1 −Ae1点)/30}≦C1 ≦{(T1 −Ae
    1点)/1.5}、である。
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