JP5313599B2 - 鋼線材の熱処理方法 - Google Patents

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本発明は、炭素(C)を0.4〜1.1質量%含有する鋼線材をストランド方式で連続的にパーライト変態させる鋼線材の熱処理方法に関する。特に、線径の異なる鋼線材に適用しても、異常組織の生成を抑制し、鋼線材の表面から中心に亘ってパーライトの均質な組織にすることができる鋼線材の熱処理方法に関する。
PC(プレストレスコンクリート)用鋼線、ばね用鋼線、タイヤコード用鋼線などの鋼線は、鋼線材を伸線加工して得られるが、伸線加工性の問題から、鋼線材を熱処理(パテンティング)し、鋼線材をパーライト組織に制御することで、伸線加工性を改善することが行われている。
従来、この熱処理には、溶融鉛が利用されている。溶融鉛は、熱容量が十分に大きく冷却能が高いため、鋼線材を加熱してオーステナイト化した後、パーライト変態温度に保持した溶融鉛に浸漬することで、パーライト変態温度に鋼線材を急冷・保持することができる。しかし、鉛は、人体への有害性から、その使用が規制されつつある。そのため、溶融鉛の代替手段として、流動層の利用が拡大している(例えば、特許文献1〜4参照)。
流動層には、冷却媒体として砂が一般的に用いられているが、冷却媒体の熱容量が小さく、鋼線材を急冷することができないという問題点があるため、流動層パテンティングでは、オーステナイト化温度まで加熱した鋼線材を導入する前段部分において流動層温度をパーライト変態温度よりも低く設定して、冷却速度を稼ぐ必要がある。このように鋼線材の進行方向に対して流動層の温度分布を制御し、前段部分の冷却速度を上げることで、鋼線材のパーライト組織中に初析フェライトが出現することを防止している。
また、流動層パテンティングは、流動層の熱容量が小さいため、細径(線径3mm以下)の鋼線材に適用される例が多い。
特開平6‐100934号公報 特開平5‐255748号公報 特開平6‐306481号公報 特開平5‐78754号公報
従来の流動層パテンティングでは、オーステナイト化した鋼線材の持つ熱と流動層温度とがバランスして鋼線材の温度がパーライト変態温度を計算上、下回らないように流動層温度を設定しているが、流動層温度をパーライト変態温度よりも低く設定した場合、鋼線材の極表面では、パーライト変態温度を下回り、変態温度の低いベイナイトが出現する虞がある。鋼線材のパーライト組織中に初析フェライトやベイナイトなどの異常組織が混入すると、鋼線材の靭性が劣化して伸線加工性が低下したり、鋼線の均一性が低下するなどの問題を引き起こす。
また、従来の流動層パテンティングでは、線径が一定の範囲内の鋼線材に対する最適なパテンティング条件を求めており、線径が範囲外の鋼線材にそのまま同じ条件を適用することができない。つまり、鋼線の線径毎に流動層の設定を変更する必要がある。そのため最近では、線径の異なる鋼線材に適用しても、均質なパーライト組織に制御することができる熱処理方法が強く求められている。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的の一つは、線径の異なる鋼線材に適用しても、異常組織の生成を抑制し、鋼線材の表面から中心に亘ってパーライトの均質な組織にすることができる鋼線材の熱処理方法を提供することにある。
本発明の鋼線材の熱処理方法は、質量%で、C:0.4〜1.1%を含有する鋼線材をストランド方式で連続的にパーライト変態させる鋼線材の熱処理方法であり、以下の工程を備えることを特徴とする。
(1)鋼線材を850℃以上1050℃以下の温度に加熱してオーステナイト化するオーステナイト化工程
(2)オーステナイト化した鋼線材をA3点以上A3点+70℃以下、或いは、Acm点以上Acm点+70℃以下の温度に冷却し、その温度域で中間保持する中間保持工程
(3)中間保持後の鋼線材を540℃以上700℃以下の恒温変態温度に冷却・保持し、パーライト変態させるパーライト化工程
本発明の熱処理方法の概念を図1,2を用いて説明する。図1は、本発明の熱処理方法における恒温変態線図(TTT線図)及び冷却線を概略的に示す図である。図2は、本発明の熱処理方法における熱処理パターンを示す図である。
図1において、Ps線はパーライト変態開始曲線、Pf線はパーライト変態終了曲線、Fs線は初析フェライト変態開始曲線を示す。また、図1中、冷却線Aは本発明の熱処理方法における冷却線、冷却線Bは鉛パテンティングにおける冷却線、冷却線Cは流動層パテンティングにおける冷却線である。ここで、冷却線Aの両側の点線は冷却線Aの変動範囲、冷却線Cの両側の点線は冷却線Cの変動範囲を示す。図2中、パターンAは本発明の熱処理方法での熱処理パターン、パターンBは鉛パテンティングでの熱処理パターン、パターンCは流動層パテンティングでの熱処理パターンである。
鉛パテンティングは、オーステナイト化温度TA(例、TA=950℃)まで鋼線材を加熱した後、即パーライト変態温度TP(例、TP=600℃)まで鋼線材を冷却する熱処理パターンである(図2、パターンB参照)。鉛パテンティングでは、熱容量が大きいという鉛の特性を活かして、鋼線材の中心まで短時間で冷却することができ、つまり冷却速度が速い。更に、鉛パテンティングでは、冷却速度が速いため冷却線Bの傾きが大きく、冷却線BがFs線と交差しない(図1、冷却線B参照)。したがって、鉛パテンティングでは、パーライト組織中に初析フェライトが出現することがなく、鋼線材の表面から中心に亘って均質なパーライト組織にすることができる。また、鉛パテンティングでは、一般的な線径の鋼線材であれば、線径に関係なく、同様の効果が得られる。ここでいう一般的な線径とは、1mm〜14mmのことをいう。
流動層パテンティングも、鉛パテンティングと同様、オーステナイト化温度TAまで鋼線材を加熱した後、即パーライト変態温度TPまで鋼線材を冷却する熱処理パターンである(図2、パターンC参照)。しかしながら、流動層温度TfをTPと同じに設定した流動層パテンティング(例、Tf=600℃)では、鋼線材の中心まで短時間で冷却することが難しく、つまり冷却速度が遅い。そして、流動層パテンティングでは、冷却速度が遅いため冷却線Cの傾きが小さく、冷却線CがFs線と交差する(図1、冷却線C参照)。したがって、流動層パテンティングでは、パーライト組織中に初析フェライトが出現して、鋼線材を均質なパーライト組織にすることができない。そのため、鋼線材の靭性が劣化して伸線加工性が低下したり、鋼線の均一性が低下するなどの問題がある。一方、従来のように冷却速度を上げるためにTfをTPよりも低く設定した流動層パテンティング(例、Tf=300℃)では、鋼線材の表面にベイナイトが出現する虞がある。また、流動層パテンティングでは、鋼線材の線径の違いによる冷却速度の変動が大きく、線径の異なる複数の鋼線材を一度に熱処理する場合、すべての線径のものについて均質なパーライト組織を得ることが難しい。
これに対し、本発明の熱処理方法は、オーステナイト化温度TAまで鋼線材を加熱した後、中間保持工程で中間保持温度T1(例、T1=775℃)に冷却し中間保持し、その後パーライト変態温度TPまで鋼線材を冷却する熱処理パターンである(図2、パターンA参照)。T1からTPまで冷却するとき、冷却速度が流動層パテンティングの冷却速度と同等であっても、TAから冷却を開始する場合と比較してTPまでの温度幅が小さくなるので、鋼線材の中心まで短時間で冷却することができる。そして、本発明の熱処理方法では、T1から冷却を開始するので、冷却線Aの傾きが小さくても、冷却線AがFs線と交差しない(図1、冷却線A参照)。したがって、本発明の熱処理方法では、鉛を用いずに鉛パテンティングと同等の効果を達成することができ、鋼線材を均質なパーライト組織にすることができる。また、本発明の熱処理方法では、鋼線材の線径に応じて冷却速度が変動しても、冷却線AがFs線と交差することが少なく、一般的な線径であれば線径の異なる複数の鋼線材を一度に熱処理しても異常組織の出現を抑制することができる。
本発明における鋼線材はCを0.4〜1.1質量%含有する。Cの含有量が0.4質量%未満の場合、良好な伸線加工性を有するから、パーライト組織にする必要がない。Cの含有量が1.1質量%超の場合、パーライト組織にしても伸線加工が困難であり、伸線加工性の改善効果が小さい。鋼線材の具体例としては、JIS G 3502:2004に規定されるピアノ線材、JIS G 4801:2005に規定されるばね鋼鋼材、及びこれら規格に相当する鋼線材が挙げられる。
本発明において、オーステナイト化工程でのオーステナイト化温度を850℃以上1050℃以下とする。鋼線材をオーステナイト化するためにはA3点或いはAcm点以上の温度で保持すればよい。しかし、850℃未満では、効率良くオーステナイト化が進行しないため、工業的生産性の点からオーステナイト化温度を850℃以上とする。一方、1050℃超の場合、オーステナイト粒が粗大化し、後工程のパーライト化工程においてパーライト変態に要する時間が増大したり、鋼線材の靭性低下が懸念される。
本発明において、中間保持工程での中間保持温度をA3点以上A3点+70℃以下、或いは、Acm点以上Acm点+70℃以下とする。中間保持温度は、少なくともオーステナイト状態を維持できる温度以上であることが絶対条件であるため、下限はA3点或いはAcm点とする。また、中間保持温度をパーライト変態温度にできるだけ近づける方が、パーライト変態温度までの温度幅が小さくなり、冷却速度が遅くても、パーライト変態温度までの冷却時間を短縮することができる。それ故、中間保持温度の上限は、A3点の+70℃或いはAcm点の+70℃とする。例えば、中間保持温度がA3点或いはAcm点を下回る、又は、A3点の+70℃或いはAcm点の+70℃を上回る場合、初析フェライトが出現する虞がある。また、中間保持工程では、伸線加工や圧延加工といった塑性加工を行わない。
本発明において、パーライト化工程での恒温変態温度を540℃以上700℃以下とする。Cを0.4〜1.1質量%含有する鋼線材のTTT線図におけるパーライト変態のノーズ温度は通常540〜700℃である。恒温変態温度が540℃未満では、ベイナイトなどの異常組織が生成したり、パーライト変態に要する時間が増大する。また、700℃超の場合であっても、パーライト変態に要する時間が増大する。なお、パーライト化工程では、恒温変態温度を厳密に一定に保持する必要がなく、パーライト変態温度域である540〜700℃の範囲内であれば変動してもよい。また、パーライト化工程では、初析フェライトの出現を抑制するため、冷却速度を5℃/秒以上とすることが好ましい。
本発明において、中間保持工程及びパーライト化工程での冷却媒体としては、鉛以外の砂、ソルト、エア、ミスト、水溶性焼入液、水と水に可溶な物質とを混合したもの(例、石けん水)などを使用することが好ましい。このように鉛を使用しないことで、環境負荷を低減できる。
本発明において、中間保持工程における中間保持時間t1(秒)と鋼線材の線径D(mm)との関係が「5×D≦t1≦30×D」を満たすことが好ましい。
中間保持工程は、オーステナイト化した鋼線材を中間保持温度に冷却し保持する工程であり、鋼線材全体が中間保持温度になるように制御することが望まれる。そこで、鋼線材の線径D(mm)に応じて中間保持時間t1(秒)を調節する(図2参照)。ここで、中間保持時間t1が5×Dよりも短い場合、鋼線材の中心まで中間保持温度に達しない虞があり、30×Dを超えると、工業的生産性の点から好ましくない。
本発明において、鋼線材は、化学成分として、C以外にSi、Mnを含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることが好ましい。以下、Si、Mnの好ましい含有量とその限定理由を説明する。
(Si:3.0質量%以下)
Siは、鋼に固溶することで、耐熱性を高める効果がある。また、Siは、鋼の溶解・精錬時に脱酸剤として機能すると共に、固溶強化による耐熱性の向上効果が得られる。しかし、Siの含有量が3.0質量%超の場合、パーライト変態挙動が変化するため、本発明の熱処理方法ではパーライト組織に制御することが難しい。また、Siの含有量が0.05質量%未満では、耐熱性の向上効果が十分に得られないため、0.05質量%以上が好ましい。
(Mn:1.0質量%以下)
Mnは、鋼の溶解・精錬時の脱酸剤として機能する。また、Mnは、オーステナイト相の相安定化に有効である。しかし、Mnの含有量が1.0質量%超の場合、パーライト変態挙動が変化するため、本発明の熱処理方法ではパーライト組織に制御することが難しい。また、Mnの含有量が0.1質量%未満では、脱酸効果が十分に得られないため、0.1質量%以上が好ましい。
本発明において、鋼線材は、化学成分として、更に、Cr又はVの少なくとも一方を含有してもよい。以下、Cr、Vの好ましい含有量とその限定理由を説明する。
(Cr:2.0質量%以下)
Crは、耐熱性、耐食性、耐酸化性の向上に有効である。しかし、Crの含有量が2.0質量%超の場合、パーライト変態挙動が変化するため、本発明の熱処理方法ではパーライト組織に制御することが難しい。また、Crの含有量が0.05質量%未満では、耐熱性などの向上効果が十分に得られないため、0.05質量%以上が好ましい。
(V:0.5質量%以下)
Vは、耐熱性の向上及びオーステナイト粒の微細化に有効である。しかし、Vの含有量が0.5質量%超の場合、パーライト変態挙動が変化するため、本発明の熱処理方法ではパーライト組織に制御することが難しい。また、Vの含有量が0.05質量%未満では、耐熱性などの向上効果が十分に得られないため、0.05質量%以上が好ましい。
本発明の鋼線材の熱処理方法において、線径の異なる複数の鋼線材を一度に熱処理してもよい。
本発明の鋼線材の熱処理方法は、例えば線径3mm以下の細径のものから線径6mm以上の太径のものまで線径の異なる鋼線材に適用しても、線径に関係なく鋼線材を均質なパーライト組織にすることができる。そのため、従来技術では不可能とされていた線径の異なる複数の鋼線材を一度に熱処理することも可能であり、作業効率を大幅に改善することができる。
なお、線径の異なる複数の鋼線材を一度に熱処理する場合、中間保持工程における中間保持時間は、例えば線径に応じて鋼線材の線速を変えるなどして、鋼線材毎に調節することが挙げられる。
本発明の鋼線材の熱処理方法は、鋼線材に異常組織が生成されることを抑制し、鋼線材の表面から中心に亘ってパーライトの均質な組織にすることができる。特に、線径の異なる鋼線材に適用しても、均質なパーライト組織を得ることができる。また、鉛を使用しないことで、環境負荷の低減に貢献することもできる。
(実施例1)
表1に示す化学成分の鋼種を真空溶解炉で溶製し、鋳造した鋳塊を熱間圧延した熱間圧延線材を準備した。各鋼種の熱間圧延線材断面の金属組織を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察したところ、いずれもほぼパーライト組織であった。各鋼種の熱間圧延線材を直径7mmになるまで伸線加工した後、直径7mmの鋼線材を表2に示す熱処理条件で熱処理した。そして、熱処理後の鋼線材断面の金属組織を走査型電子顕微鏡(SEM)にて観察し、各熱処理条件の組織制御性を評価した。その結果を表3に示す。なお、評価は、鋼線材の断面全体が均質なパーライト組織の場合を○、鋼線材断面の金属組織中に初析フェライト、ベイナイト、マルテンサイトなどの異常組織が観察された場合を×とした。また、オーステナイト化工程では電気炉を、中間保持工程及びパーライト化工程ではそれぞれ流動層(冷却媒体:砂)又は電気炉を用いた。
Figure 0005313599
鋼種A〜DにおけるA3点或いはAcm点は、次のとおりである。
鋼種A:A3点=約765℃
鋼種B:A3点=約775℃
鋼種C:A3点=約760℃
鋼種D:Acm点=約770℃
Figure 0005313599
オーステナイト化工程では、電気炉の設定温度をオーステナイト化温度とし、中間保持工程及びパーライト化工程では、流動層温度又は電気炉設定温度をそれぞれ中間保持温度及び恒温変態温度に設定した。また、表2中、熱処理条件5では、中間保持工程を実行せず、オーステナイト化工程から即パーライト化工程に移行した。
Figure 0005313599
表3に示すように、熱処理条件1〜4は、いずれの鋼種においても、鋼線材全体を均質なパーライト組織にすることができる。
これに対し、中間保持工程を実行しない熱処理条件5、及び中間保持温度を本発明の範囲外とした熱処理条件6,7では、鋼種A、Cにおいて、初析フェライトが出現し、均質なパーライト組織が得られなかった。
オーステナイト化温度を高くした熱処理条件8では、鋼種Cにおいて、マルテンサイトが出現し、均質なパーライト組織が得られなかった。金属学的には恒温変態保持時間を長くすることで鋼線材全体をパーライト組織にすることが可能であると考えられるが、この熱処理条件8において恒温変態保持時間を10分としてもマルテンサイトが観察され、恒温変態保持時間を10分以上とすることは工業的生産性の点から好ましくない。また、恒温変態保持時間を10分以上とした場合、鋼線材の靭性が低下するなどの悪影響が予想される。
中間保持時間を短くした熱処理条件9では、鋼種Aにおいて、初析フェライトが出現し、均質なパーライト組織が得られなかった。これは、中間保持時間t1(秒)と鋼線材の線径D(mm)との関係がt1≧5×Dを満たさず、鋼線材全体を中間保持温度まで冷却できなかったことが原因と考えられる。
中間保持工程の流動層温度を300℃に設定し、中間保持温度をパーライト変態温度よりも低くした熱処理条件10は、鋼種Aにおいて、鋼線材の表面にベイナイトが観察され、均質なパーライト組織が得られなかった。この熱処理条件10は、従来の流動層パテンティングに相当する。
(実施例2)
各鋼種の熱間圧延線材を直径4mmになるまで伸線加工した以外は、実施例1と同様にして、直径4mmの鋼線材を表2に示すいくつかの熱処理条件で熱処理した。そして、熱処理後の鋼線材断面の金属組織を観察し、各熱処理条件の組織制御性を評価した。その結果を表4に示す。
Figure 0005313599
表4に示すように、熱処理条件1〜3は、いずれの鋼種においても、鋼線材全体を均質なパーライト組織にすることができる。
これに対し、熱処理条件5〜8では、表3に示す線径が7mmの鋼線材の結果と同様、鋼種A又は鋼種Cにおいて、均質なパーライト組織が得られなかった。
一方、熱処理条件9では、表3に示す線径が7mmの鋼線材の結果と異なり、鋼種A、Cにおいて、均質なパーライト組織が得られた。これは、中間保持時間t1(秒)と鋼線材の線径D(mm)との関係がt1≧5×Dを満たすことで、鋼線材全体を中間保持温度まで冷却できたためと考えられる。
以上の結果から、本発明の鋼線材の熱処理方法は、線径の異なる鋼線材に適用しても、異常組織の生成を抑制し、鋼線材を均質なパーライトの組織にすることができることが分かる。そのため、例えば線径の異なる複数の鋼線材のそれぞれをストランド方式で一度に熱処理しても、各鋼線材において均質なパーライト組織が得られるものと推測される。また、鉛を使用する必要がなく、環境負荷の低減に貢献できる。
なお、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、化学成分や線径の異なる鋼線材に適用したり、中間保持温度や中間保持時間を適宜変更してもよい。
本発明の鋼線材の熱処理方法は、鋼線材の熱処理、例えばPC用鋼線、ばね用鋼線、タイヤコード用鋼線などの製造分野に好適に利用可能である。
本発明の熱処理方法における恒温変態線図(TTT線図)及び冷却線を概略的に示す図である。 本発明の熱処理方法における熱処理パターンを示す図である。

Claims (5)

  1. 質量%で、C:0.4〜1.1%を含有する鋼線材をストランド方式で連続的にパーライト変態させる鋼線材の熱処理方法であって、
    前記鋼線材を850℃以上1050℃以下の温度に加熱してオーステナイト化するオーステナイト化工程と、
    オーステナイト化した鋼線材をA3点以上A3点+70℃以下、或いは、Acm点以上Acm点+70℃以下の温度に冷却し、その温度域で中間保持する中間保持工程と、
    中間保持後の鋼線材を540℃以上700℃以下の恒温変態温度に冷却・保持し、パーライト変態させるパーライト化工程とを備え
    前記中間保持工程における中間保持時間t1(秒)と前記鋼線材の線径D(mm)との関係が5×D≦t1を満たすことを特徴とする鋼線材の熱処理方法。
  2. 更に、前記中間保持工程における中間保持時間t1(秒)と前記鋼線材の線径D(mm)との関係がt1≦30×Dを満たすことを特徴とする請求項1に記載の鋼線材の熱処理方法。
  3. 前記鋼線材が、質量%で、Si:3.0%以下、Mn:1.0%以下を含有し、残部がFe及び不可避的不純物からなることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋼線材の熱処理方法。
  4. 前記鋼線材が、質量%で、Cr:2.0%以下、V:0.5%以下の少なくとも一方を含有することを特徴とする請求項3に記載の鋼線材の熱処理方法。
  5. 線径が異なる複数の鋼線材を一度に熱処理することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の鋼線材の熱処理方法。
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