JP6796472B2 - 中空部材及びその製造方法 - Google Patents
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Description
外面側のビードカット部は、ショットピーニングすることで疲労寿命への影響を小さくすることができる。一方、内面側の腐食ピットは、軽量化を重視する中空部材においては、素材の高強度化に伴う薄肉化によって内面応力が従来よりも増大しているため、腐食ピットは疲労寿命に対して致命的な欠陥となる。また、その使用環境での内面腐食についても問題となる。
また、内面応力を緩和するために、鋼管肉厚tと鋼管外径Dとの比(t/D)を大きくするという、厚肉化によって鋼管の内面にかかる応力を低減させる方法がある(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、この方法では、中空部材の軽量化の目的とは逆行してしまう。
さらに、鋼管の表面を窒化させる方法や内面を研削する方法も知られている(例えば、特許文献3及び4参照)。しかしながら、これらの方法は、疲労特性の向上には有効である一方、工程の増加を伴い、現状の鋼管製造プロセスにそのまま適用できるものではない。
C:0.20%〜0.40%、
Si:0.50%〜1.5%、
Mn:0.3%〜1.5%、
Cr:0.1%〜1.6%、
P:0.020%以下
S:0.010%以下
Cu:0.1%〜0.5%、
Ni:0.1%〜0.5%、
Nb:0.02%〜0.5%、
Ca:0.005%以下
B:0.0005%〜0.0050%、
Al:0.005%〜0.1%、
N:0.010%以下、
Ti:0.02%〜0.1%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、硬さが450Hv以上であることを特徴とする中空部材である。
C:0.20%〜0.40%、
Si:0.50%〜1.5%、
Mn:0.3%〜1.5%、
Cr:0.1%〜1.6%、
P:0.020%以下
S:0.010%以下
Cu:0.1%〜0.5%、
Ni:0.1%〜0.5%、
Nb:0.02%〜0.5%、
Ca:0.005%以下
B:0.0005%〜0.0050%、
Al:0.005%〜0.1%、
N:0.010%以下、
Ti:0.02%〜0.1%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するスラブを1230℃以上に加熱した後、仕上圧延して巻取温度500℃〜650℃で巻取ることによって熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板を造管して電縫鋼管を得る造管工程と、
前記電縫鋼管を600℃以上Ac1点以下の温度で無酸化焼鈍する無酸化焼鈍工程と、
前記無酸化焼鈍を行った電縫鋼管を冷間引抜きして引抜鋼管を得る冷間引抜工程と、
前記引抜鋼管に、Ac3+50℃以上1150℃以下で10秒以上保持した後、急冷する焼入れ処理と、500℃以下で10分以上保持する焼戻し処理とを施す焼入れ焼戻し工程と
を含むことを特徴とする中空部材の製造方法である。
Cは、炭素鋼において最も基本となる成分であり、その含有量によって焼入れ硬さ及び炭化物量が大きく変動する。C含有量が0.20%未満の鋼管では、十分な焼入れ硬さが得られない。また、溶接凝固時に固相と液相との間で元素の分配が起こった場合でもビード中心のC含有量を0.15%以上に確保するため、0.20%以上のCが必要である。一方、C含有量が0.40%を超えると、鋼管の加工性が低下して成形することができないことや焼割れも懸念される。より良好な焼入れ硬さ及び加工性を兼ね備えた鋼管を得る観点から、C含有量は0.20%〜0.30%であることが好ましい。
Siは、焼入れ性及び焼戻し軟化抵抗を高め、焼戻し後の強度を確保する上で有効な元素である。また、Siは、焼戻しの際にフィルム状の炭化物の生成を抑制し、平均粒径0.5μm以下の微細な炭化物を析出させることで粒界強度の低下を抑える作用を有する。また、上述したように、Siは、焼戻し後の強度及び高疲労寿命化に不可欠な元素であるとともに、Cu、Ni及びCrと組み合わせた際に鋼の耐食性に有効に作用する。このような効果を得るためには、0.50%以上のSiが必要である。ただし、Si含有量が1.5%を超えると、靭性や溶接性が劣化し、疲労寿命の低下を招く要因となる。そのため、Si含有量は0.5%〜1.5%とする必要がある。また、好ましいSi含有量は0.52%〜1.3%である。
Mnは、鋼管の焼入れ性を高め、強靭化するのに有効な成分である。十分な焼入れ性を得るためには、Mnの含有量を0.3%以上とすることが必要である。しかし、Mnの含有量が1.5%を超えると、溶接ビード部に欠陥が生じ易くなる。また、熱延における金属組織がフェライト/パーライトのバンド状組織が著しく多くなり、鋼管の焼入れ性及び加工性が低下する場合がある。また、好ましいMn含有量は0.8%〜1.2%である。
Crは、高強度化及び耐食性の改善に寄与する成分である。すなわち、Crは、Mnと同じように焼入れ性を高め、また、耐食性を向上させるのに有効な成分である。このような効果を得るためには、0.1%以上のCrを配合することが必要である。しかし、1.6%を超える多量のCrを配合すると、焼入れ前の加工性が低下する。そのため、Cr含有量は0.1%〜1.6%とする必要がある。また、好ましいCr含有量は0.2%〜1.58%である。
Pは、延性や靭性を低下させる成分である。0.020%を超えるPを含有させると、焼入れ後に旧オーステナイト粒界の靭性が低下し、所望の疲労特性が得られない。そのため、P含有量の上限は0.020%とする必要がある。不純物としてPはできるだけ少ない方がよいが、工業的安定製造や製造コスト面からは0.020%以下で問題はない。また、好ましいP含有量は0.005%以下である。
Sは、MnS系介在物を形成する成分であり、腐食ピットの原因となる。MnSは、量が多くなるほど曲げ加工での亀裂の起点となって延性が低下する。また、調質後の疲労亀裂の起点にもなる。そのため、S含有量の上限は、0.010%とする必要がある。さらに、熱延鋼板及び電縫鋼管の加工性と、中空部材の疲労強度とをより一層高める観点から、S含有量は0.003%以下であることが好ましい。
Cuは、Niと共に耐食性の改善に寄与する成分である。また、Cuの添加によってCuSを生成させ、MnSの生成を抑制する重要な成分である。Cu含有量が0.1%未満ではその効果が認められず、0.5%を超えて添加してもその効果が飽和するばかりか、製造コストが高くなる。また、好ましいCu含有量は0.15%〜0.48%である。
Niは、Cuと共に添加される成分であり、Cuによる熱間脆性の防止に有効に作用し、さらに高強度化及び耐食性の改善にも有効な成分である。Ni含有量が0.1%未満ではそれらの効果が認められず、0.5%を超える多量のNiが含まれると、表面にNiの濃淡が発生し、スケールと地鉄との界面での凹凸が著しくなって耐久性を劣化させる場合がある。さらに、Ni含有量が多くなると、製造コストの上昇を招く。そのため、Ni含有量は0.1%〜0.5%とする必要がある。また、好ましいNi含有量は0.15%〜0.45%である。
Nbは、炭窒化物を形成し、焼入れ時に結晶粒の粗大化を防止する成分である。この効果を安定して得るためには、0.02%以上を含有させる必要がある。また、0.5%を超えて含有させてもその効果は飽和するばかりでなく、経済的にも不利であることから、0.02%〜0.5%の範囲とした。また、好ましいNb含有量は0.03%〜0.4%である。
CaはMnS等の非金属介在物の形態を制御し、鋼の延性(加工性)、靭性を確保する成分である。Ca含有量が0.005%を超えると、Ca酸化物が大きくなり、疲労起点となる。そのため、Ca含有量は0.005%以下とする必要がある。また、Caによる上記効果を安定して得るためには、Ca含有量は0.001%〜0.005%であることが好ましい。
Bは、ごく微量の添加で鋼管の焼入れ性を大幅に向上させる成分である。また、Bは、粒界を強化して靭性を改善する効果も有する。このような効果を安定して得るためには、0.0005%以上が必要である。しかし、0.0050%を超えても、その効果が飽和し、逆に靭性を劣化させる原因となる。また、上記の効果をより一層安定して得るためには、B含有量は0.0020%〜0.0040%であることが好ましい。
Alは、溶鋼の脱酸剤として使用される成分である。また、Alは、AlNを生成して熱処理時のオーステナイト粒の異常成長を抑制し、このN固着効果によりBNの生成を抑制してBによる焼入れ性の向上を促進させる効果がある。この効果を安定して得るためには、0.005%以上のAlを含有させる必要がある。一方、0.1%を超えるAlを含有させると、経済的に不利になるだけでなく、熱延鋼板及び鋼管の加工性が低下する。このため、Alの含有量は0.005%〜0.10%とする必要がある。また、上記の効果を安定して得るための好ましいAl含有量の上限は0.050%である。
Nは、鋼の硬さや引張強度を向上させる成分であり、AlNやTiNを形成することによってオーステナイト粒の微細化を図り、耐衝撃性や疲労特性を向上させる効果がある。しかし、N含有量が0.010%を超えると、成形加工時の材料強度の増大に繋がり、成形性を劣化させる。また、AlN、TiNによる固着能力を超えてNが残留すると、BNが生成して焼入れ性の向上効果を阻害するため、N含有量の上限は0.010%である必要がある。上記の効果を安定して得るためには、N含有量は0.001%〜0.005%であることが好ましい。
Tiは、Nを固定して焼入れ性を改善する有効B量を高めることができる。さらに、Tiは、炭窒化物を形成し、焼入れ時に結晶粒の粗大化を防止する。これらの効果を安定して得るためには、少なくとも0.02%以上のTiを含有させる必要がある。また、TiはSを固定し、加工性、耐食性を改善するのに有効な成分であり、有効Bを確保するためには、SとNの固定のため、0.02%以上のTiが必要となる。しかし、0.1%を超える多量のTiを含有させると、延性を劣化させるばかりでなく、経済的に不利となる。上記の効果を得るためには、Ti含有量を0.02%〜0.1%とする必要がある。また、好ましいTi含有量は0.02%〜0.08%である。
Vは、炭窒化物を形成し、焼入れ時に結晶粒を微細化するとともに靭性の向上に有効であり、疲労寿命に対して一層効果的に作用する。Vは、必要に応じて添加できるが0.5%以上含有させてもその効果は飽和するばかりでなく、経済的にも好ましくないため、0.5%以下とした。また、好ましいV含有量は0.1%〜0.4%である。
Moは、焼入れ性と焼戻し軟化抵抗とを向上させ、靭性が改善することで疲労寿命に対してなお一層効果的に作用する。また、MoはCuと組み合わせると、より耐食性を向上させ、特に孔食を抑制する。Moを添加する場合は、経済性の観点から、0.5%以下とする。また、好ましいMo含有量は0.1%〜0.4%である。
熱間圧延工程では、スラブを加熱した後、仕上圧延して巻取ることによって熱延鋼板を得る。この熱間圧延工程では、スラブの加熱温度及び巻取温度が、熱延鋼板、及びそれを用いて形成される電縫鋼管や引抜鋼管の特性に多大な影響を及ぼす。したがって、本発明の効果を得るためには、上記の組成を有するスラブを1230℃以上に加熱する必要がある。スラブの加熱温度が1230℃未満であると、所望の特性を有する電縫鋼管や引抜鋼管が得られない。
加熱したスラブは、次に、仕上圧延される。仕上温度は、特に限定されないが、好ましくは800℃〜900℃である。仕上温度が800℃未満であると、熱間変形抵抗が増大し、圧延機にかかる負荷が増大すると共に生産性が低下する傾向にある。また、金属組織の微細化や加工歪の蓄積によって熱延鋼板の強度が高くなり、造管が困難となることがある。一方、仕上温度が900℃を超えると、表層のフェライト脱炭が進行し、焼入れ後に所望の表面硬さを有する中空部材が得られないことがある。また、鋼管の内外表面にフェライトが存在してしまう結果、焼入れ不良が生じるために中空部材の疲労寿命も低下することがある。
そして、このようにして製造された電縫鋼管は、必要に応じ、形状を修正して直管度を高め、所定の長さに切断される。
無酸化焼鈍時の雰囲気は、無酸化状態であれば特に限定されない。具体的には、DXガスやRXガス雰囲気とすればよい。通常、焼鈍は大気雰囲気下で行われるが、この場合、表面酸化が著しく、硫酸酸洗によってスケールを除去する必要がある。しかしながら、硫酸洗浄は、表面肌の凹凸が大きくなり疲労起点の一因となる。本発明では、無酸化雰囲気下で焼鈍を行うため、上記のような問題は生じない。実際、硫酸酸洗を行うと、図1に示すような腐食ピットが生じる。他方、本発明のように無酸化焼鈍を行うと、硫酸酸洗が必要でないため、図2に示すように腐食ピットは生じない。
無酸化焼鈍の時間は、鋼管の寸法により異なるが、鋼管の昇温時間や酸化を考慮すると、15分以内であることが好ましい。
なお、冷間引抜工程の後、必要に応じて無酸化焼鈍工程を含むことができる。無酸化焼鈍工程の条件は、冷間引抜工程の前の無酸化焼鈍工程の条件と同様にすればよい。
また、引抜鋼管は、必要に応じて、形状を修正して直管度を高め、所定の長さに切断される。
焼入れ処理における加熱方法は、特に限定されることはなく、通電加熱方法や高周波加熱方法等の公知の方法を用いることができる。
焼入れ処理は、Ac3+50℃以上1150℃以下で10秒以上保持した後に急冷することによって行われる。焼入れ温度が1150℃を超えると、長時間保持した場合にオーステナイト粒が異常成長し、疲労特性が著しく低下することがある。また、酸化抑制及び熱処理コスト低減の観点から、保持時間は1分以内とすることが好ましい。したがって、焼入れ処理は、好ましくはAc3+50℃〜1150℃とし、セメンタイトを固溶させて均一なオーステナイトを形成させるために10秒〜1分間保持することが好ましい。
なお、急冷時に引抜鋼管内に水分が浸入した場合、焼戻しまでの経過時間により錆が発生する場合がある。この錆びの発生は疲労寿命の低下に繋がるため、焼入れ処理後に引抜鋼管内の乾燥等を行ってもよい。
焼戻し処理は、500℃以下で10分以上保持することによって行われる。このような処理により、焼戻しマルテンサイトが得られ、強度を確保することが可能になる。焼戻し温度が500℃を超えると、強度が急激に低下するため、中空部材の内面側からの疲労特性の向上が図れない。焼戻し温度の下限は、特に限定されることはないが、300℃であることが好ましい。特に、中空部材の靭性を安定させる格子欠陥の回復を考慮すると、焼戻し温度は300℃〜400℃であることが好ましい。
(実施例1)
表1に示す組成を有するスラブを1250℃に加熱した後、仕上温度880℃で仕上圧延し、巻取温度550℃で巻取って板厚5.0mmの熱延鋼板を得た。次に、この熱延鋼板を酸洗した後、680℃で20時間の球状化焼鈍を行った。次に、得られた焼鈍鋼板をφ30.0mm×t5.0mmに造管して電縫鋼管を得た。そして、電縫鋼管の外面及び内面の溶接部においてビードカットを行った後、680℃でシームアニールを行った。ここで、得られた電縫鋼管の加工性を評価するために、2/3D(Dは鋼管の外径である。以下同じ)の条件でへん平試験を行った。この評価において、破壊が確認されなかったものを○、破壊が確認されたものを×と表す。
次に、上記で得られた長さ700mmの引抜鋼管をコの字型に曲げ加工し(曲げ角度80°)、通電加熱によって1100℃で1分間保持した後に急冷する焼入れ処理を行った。その後、500℃以下で10分保持して焼戻し処理を行うことにより、焼戻し処理後の鋼管の内面表層部50μm位置の硬さ(ビッカース硬さ)を450HVに調整し、ショットピーニングを施した。
耐久性は、中空部材の両端を固定し、曲げ部に最大応力650MPaを負荷し、周波数を2Hzとした疲労試験を行った。この評価において、中空部材が破断するまでの繰り返し回数が1×105回以上であれば、従来の中空部材(中空スタビライザー)と比較して疲労寿命が向上していると認められる。そのため、中空部材が破断するまでの繰り返し回数が1×105回以上のものを○、中空部材が破断するまでの繰り返し回数が1×105回未満のものを×と表す。
耐食性は、15%濃度の硫酸水溶液に中空部材を60℃で20分間浸漬させた後、中空部材のビードカット部の内面について、腐食ピットの最大深さをレーザー顕微鏡(測定面積4mm2)によって測定した。この評価において、腐食ピットの最大深さが50μm以下のものを○、腐食ピットの最大深さが50μmを超えるものを×と表す。
上記の各評価結果を表2に示す。
これに対して、鋼種No.12及び13は、Si含有量が低すぎたため、腐食ピットが発生してしまい、所望の耐食性が得られなかった。
鋼種No.14は、Cu含有量が低すぎたため、腐食ピットが発生してしまい、所望の耐食性が得られなかった。
鋼種No.15は、C含有量が低すぎたため、耐久性が低下し、所望の疲労寿命が得られなかった。
鋼種No.16は、Si、Mn及びNiの含有量が低すぎたため、腐食ピットが発生すると共に疲労寿命も低下してしまった。
鋼種No.18は、Si含有量が少なく、Nbが配合されていなかったため、旧オーステナイト粒径が成長し、疲労寿命が低下した。
鋼種No.19は、C含有量が高すぎ、Bが配合されていなかったため、熱処理での表層硬さが不足し、疲労寿命を確保できなかった。
鋼種No.20は、Ni及びCrの含有量が低すぎたため、腐食ピットが発生してしまい、所望の耐食性が得られなかった。
鋼種No.21及び22は、Si又はMnの含有量が高すぎたため、造管後の加工性が低下した。
鋼種No.23は、Ca含有量が高すぎたため、介在物が大きくなり、疲労寿命が低下した。
鋼種No.24は、Ti含有量が高すぎたため、疲労寿命が低下すると共に、腐食ピットも発生した。
鋼種No.25は、Cr含有量が高すぎたため、造管後の加工性が低下した。
鋼種No.26は、P及びSの含有量が高すぎ、且つNbの含有量が低すぎたため、疲労寿命が低下し、腐食ピットも発生した。
実施例2では、適切な製造条件を把握するため、実施例1のNo.1〜10と同じ組成を有するスラブを用い、表3に示すように製造条件のいくつかを変動させて評価を行った。すなわち、スラブの加熱温度を1210℃〜1260℃に加熱した後、仕上温度830℃〜880℃で仕上圧延し、巻取温度460℃〜680℃で巻取って板厚5.0mm〜7.1mmの熱延鋼板を得た。次に、この熱延鋼板を酸洗した後、焼鈍温度600℃〜690℃で3時間〜20時間の球状化焼鈍を行った。なお、サンプルNo.5−2及び5−5については、球状化焼鈍は行わなかった。その後、サンプルNo.7−1〜7−3については、冷延率10%〜30%で冷間圧延した。次に、焼鈍鋼板又は冷延鋼板をφ30.0mm×t5.0mmに造管して電縫鋼管を得た。そして、電縫鋼管の外面及び内面の溶接部においてビードカットを行った後、680℃でシームアニールを行った。ここで、得られた電縫鋼管の加工性を評価するために、2/3Dの条件でへん平試験を行った。この評価において、破壊が確認されなかったものを○、破壊が確認されたものを×と表す。なお、この加工性の評価が悪かったサンプルNo.5−5については、以降の処理及び評価は行わなかった。
耐久性は、中空部材の両端を固定し、曲げ部に最大応力600MPaを負荷し、周波数を2Hzとした疲労試験を行った。この評価において、中空部材が破断するまでの繰り返し回数が1×106回以上であれば、従来の中空部材(中空スタビライザー)と比較して疲労寿命が向上していると認められる。そのため、中空部材が破断するまでの繰り返し回数が1×106回以上のものを○、中空部材が破断するまでの繰り返し回数が1×106回未満のものを×と表す。
耐食性の評価方法は、実施例1と同様である。
上記の各評価結果を表4に示す。
これに対して、サンプルNo.2−5は、無酸化焼鈍における焼鈍温度が低すぎたため、内面疵が発生し、引抜鋼管の加工性が十分に得られなかった。
サンプルNo.3−1は、焼鈍工程における焼鈍温度が低すぎたため、十分な球状化セメンタイトが得られず、耐久性が十分に得られなかった。
サンプルNo.4−2は、焼鈍工程における焼鈍時間が短すぎたため、十分な球状化セメンタイトが得られず、耐久性が十分に得られなかった。
サンプルNo.5−1は、巻取温度が高すぎたため表層脱炭が進行し、また、焼入れ時間も短すぎたため、耐久性が十分に得られなかった。
サンプルNo.5−4は、焼戻し温度が高すぎたため、硬さが著しく低下し、耐久性が十分に得られなかった。
サンプルNo.5−5は、巻取温度が低すぎたため、一部にベイナイトやマルテンサイトが生成してしまい、電縫鋼管の加工性を確保することができなかった。
サンプルNo.8−1は、焼入れ温度が高すぎたため、オーステナイト結晶粒の成長と脱炭が進行するとともに表面スケールが著しくなり、耐久性が十分に得られなかった。
サンプルNo.8−2は、焼入れ時間が短すぎたために、炭化物の固溶が不足し、耐久性が十分に得られなかった。
サンプルNo.10−2は、無酸化焼鈍における焼鈍温度が高すぎたため、一部がオーステナイト化して不均一組織となり、また、高温で脱炭やスケールが生成し、耐久性及び耐食性が十分に得られなかった。
Claims (6)
- 質量%で、
C:0.20%〜0.40%、
Si:0.50%〜1.5%、
Mn:0.3%〜1.5%、
Cr:0.1%〜1.6%、
P:0.020%以下
S:0.010%以下
Cu:0.1%〜0.5%、
Ni:0.1%〜0.5%、
Nb:0.02%〜0.5%、
Ca:0.005%以下
B:0.0005%〜0.0050%、
Al:0.005%〜0.1%、
N:0.010%以下、
Ti:0.02%〜0.1%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有し、硬さが450Hv以上であることを特徴とする耐久性及び耐食性に優れる中空部材。 - 前記組成が、質量%で、V:0%超過0.5%以下、Mo:0.1%〜0.5%から選択される1種以上を更に含むことを特徴とする請求項1に記載の耐久性及び耐食性に優れる中空部材。
- 中空スタビライザーとして用いられることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐久性及び耐食性に優れる中空部材。
- 請求項1〜3のいずれか一項に記載の耐久性及び耐食性に優れる中空部材の製造方法であって、
質量%で、
C:0.20%〜0.40%、
Si:0.50%〜1.5%、
Mn:0.3%〜1.5%、
Cr:0.1%〜1.6%、
P:0.020%以下
S:0.010%以下
Cu:0.1%〜0.5%、
Ni:0.1%〜0.5%、
Nb:0.02%〜0.5%、
Ca:0.005%以下
B:0.0005%〜0.0050%、
Al:0.005%〜0.1%、
N:0.010%以下、
Ti:0.02%〜0.1%
を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる組成を有するスラブを1230℃以上に加熱した後、仕上圧延して巻取温度500℃〜650℃で巻取ることによって熱延鋼板を得る熱間圧延工程と、
前記熱延鋼板を造管して電縫鋼管を得る造管工程と、
前記電縫鋼管を600℃以上Ac1点以下の温度で無酸化焼鈍する無酸化焼鈍工程と、
前記無酸化焼鈍を行った電縫鋼管を冷間引抜きして引抜鋼管を得る冷間引抜工程と、
前記引抜鋼管に、Ac3+50℃以上1150℃以下で10秒以上保持した後、急冷する焼入れ処理と、500℃以下で10分以上保持する焼戻し処理とを施す焼入れ焼戻し工程と
を含むことを特徴とする耐久性及び耐食性に優れる中空部材の製造方法。 - 前記熱間圧延工程と前記造管工程との間に、前記熱延鋼板を650℃以上の温度に5時間以上保持する焼鈍を行って焼鈍鋼板を得る焼鈍工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の耐久性及び耐食性に優れる中空部材の製造方法。
- 前記焼鈍工程と造管工程との間に、前記焼鈍鋼板を冷間圧延する冷間圧延工程をさらに含むことを特徴とする請求項5に記載の耐久性及び耐食性に優れる中空部材の製造方法。
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