JP4859618B2 - 耐遅れ破壊性に優れた中空スタビライザの製造方法 - Google Patents

耐遅れ破壊性に優れた中空スタビライザの製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車に装着され、優れた耐遅れ破壊性を呈する中空スタビライザを製造する方法に関する。
スタビライザは、自動車のコーナリング時に車体のローリングを緩和し、高速走行時に車体の走行安定性を確保する上で必要な部品であるが、自動車に装着された状態で長時間使用されるため優れた疲労耐久性が要求される。必要な疲労耐久性を満足させるためには900N/mm2以上の強度を有する素材が要求されるが、軽量化を重視してスタビライザの素材に中空鋼管が多用されている。
中空スタビライザは、管端加工した電縫鋼管をスタビライザ形状に曲げ加工した後、強度向上のため焼入れ・焼戻しされている。更に、スタビライザ表面の疲労特性を向上させるため、ショットピーニング,塗装等が施されることもある。このような製造工程を経る中空スタビライザに必要強度を付与するため、焼入れ効果の高いC:0.20質量%程度の炭素鋼が素材に使用されている。
スタビライザの形状にはコ字状が多く、コ字形状のスタビライザは電縫鋼管の複数箇所を曲げ加工することにより製造される。曲げ加工では、曲げ角度:90度の厳しい曲げ加工性が要求され、しかも常温下での曲げ加工である。加工時に導入された応力・歪みは、スタビライザの機能を損なわせる遅れ破壊の原因になる。
しかるに、スタビライザに使用する電縫鋼管が高強度になるほど遅れ破壊感受性が増大する。たとえば、900N/mm2以上の強度は、疲労耐久性を満足させる上で必要であるが、耐遅れ破壊性にとっては問題である。なかでも、焼入れ・焼戻しで金属組織を焼戻しマルテンサイトとし900N/mm2以上の強度を付与した焼戻しマルテンサイト鋼では、遅れ破壊感受性が急増する傾向にある。
遅れ破壊の起点は旧オーステナイト粒界にあると考えられている。焼戻しマルテンサイト鋼では、旧オーステナイト粒界に析出した炭化物が遅れ破壊クラックの発生を助長するため、結果として遅れ破壊感受性が急増する。そこで、スタビライザに使用される電縫鋼管の耐遅れ破壊性を改善する種々の方法が提案されている。
たとえば、特許文献1では、Ar3以上の温度域で仕上げ圧延した後、急冷し、巻き取ることにより、900N/mm2以上の強度を有し、耐遅れ破壊性に優れた熱延鋼帯を製造しているものの、耐遅れ破壊性を改善した電縫鋼管の製造を教示・示唆していない。特許文献2では、焼入れせずに造管後に時効処理及び必要に応じて冷間伸管加工、焼鈍を施すことにより超高張力電縫鋼管を製造しているが、熱延鋼帯を250℃以下で巻き取っているので、遅れ破壊の起点となる析出炭化物が多いマルテンサイトになることが欠点である。
特開平7-197184号公報 特開平5-9579号公報
焼入れ・焼戻しは高強度化のために有効な熱処理であるが、耐遅れ破壊性にとっては好ましくない焼戻しマルテンサイトの生成が欠点である。そこで、本発明者等は、強度的には焼入れ・焼戻しと変わらず、耐遅れ破壊性に有効な金属組織を得るための熱処理を種々検討した。その結果、ベイナイト主体の金属組織を有する電縫鋼管を焼きなました後、スタビライザ形状に曲げ加工すると、焼入れ・焼戻しを省略でき、耐遅れ破壊性に優れたスタビライザが得られることを解明した。
本発明は、このような知見に基づき、焼きなましても強度が実質的に低下しないベイナイト主体の金属組織を有する電縫鋼管を素材とし、スタビライザ形状に曲げ加工した後に施されていた焼入れ・焼戻し熱処理を省略でき、優れた耐遅れ破壊性を呈する中空スタビライザを低コストで製造することを目的とする。
本発明は、次の工程を経て中空スタビライザ用電縫鋼管を製造する。
C:0.10〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.25〜2.50質量%,P:0.03質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:0.5〜1.5質量%,Mo:0.1〜0.5質量%,B:0.0005〜0.0100質量%,Ti:0.01〜0.10質量%,N:0.01質量%以下,Al:0.02〜0.08質量%を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有する鋼材を熱間圧延する。鋼材は、必要に応じNi:0.1〜1.0質量%,V:0.5質量%以下,Nb:0.01〜0.10質量%の一種又は二種以上を含むことができる。
熱間圧延工程では、フェライト:20面積%以下,パーライト:20面積%以下,残留オーステナイト:5面積%以下,残部がベイナイトの金属組織が得られるように、仕上げ温度:800〜950℃,巻取り温度:400〜600℃の範囲で選定する。
熱間圧延後、鋼帯を酸洗して造管ラインに送り、電縫鋼管とする。好ましくは、肉厚:2.0〜4.5mm,外径:15〜40mmのサイズをもった電縫鋼管を作製する。
電縫溶接部と母材部との間の最大硬さ差を50HV以下にするため、Ms点以下の温度に冷却した後、連続して(Ac1変態点)〜(Ac1変態点−100℃)の温度域に焼き戻す熱処理を電縫溶接部に施しても良い。
電縫鋼管から中空スタビライザを製造する際には、450〜710℃の温度域で1時間以下焼きなました後、室温まで冷却し、焼きなまされた電縫鋼管を目標とするスタビライザ形状に曲げ加工する。
発明の効果及び実施の形態
本発明では、ベイナイト主体の金属組織を有する電縫鋼管をスタビライザの素材とし、且つ焼きなまし条件(熱処理条件)を規制することにより、曲げ加工前の電縫鋼管(素管)に高強度,加工性を付与し、スタビライザ形状に曲げ加工した後の熱処理を不要にしている。この点、従来法では曲げ加工後の焼入れ・焼戻しで強度を付与しているが、焼入れ・焼戻しの際に焼戻しマルテンサイトが生成すると遅れ破壊感受性が増大することは前述の通りである。すなわち、本発明と従来法とでは、曲げ加工と熱処理との順序が次のように異なっている。
Figure 0004859618
このように、鋼管段階で高強度を発現する成分設計,製造条件を採用することにより、焼入れ・焼戻し工程を省略でき、焼きなましによっても強度低下しがたい成分設計であるので、焼きなましにより延性を改善できる。焼きなましは、曲げ加工の前であれば管端加工の前後何れでも良い。
焼きなましで強度低下を起こすことなく延性が改善されるため、電縫鋼管を冷間で曲げ加工でき、スタビライザに要求される強度レベルが確保される。しかも、耐遅れ破壊性にとって不利な焼戻しマルテンサイトではなくベイナイト主体の金属組織であるため、耐遅れ破壊性,疲労耐久性共に優れた中空スタビライザが得られる。
以下、本発明で規定した合金成分,含有量,製造条件等を説明する。
〔成分設計〕
800〜950℃で仕上げ圧延し、400〜600℃で巻き取った熱延鋼帯がベイナイト主体の金属組織を有し、焼入れ・焼戻しを必要とせずに900N/mm2以上の強度が得られるように、各合金成分を次のように定めている。
C:0.10〜0.30質量%
中空スタビライザとして要求される強度を得るために必要な合金元素であり、0.10質量%未満では900N/mm2以上の強度が得られない。しかし、0.30質量%を超えるC含有量では、曲げ加工性,靭性,耐遅れ破壊性が低下する。
Si:0.5質量%以下
耐遅れ破壊性を劣化させることなく高強度化に寄与する合金成分であるが、過剰添加はスケール疵の多発,熱延鋼帯の品質劣化,靭性低下の原因となるので上限を0.5質量%とした。
Mn:0.25〜2.50質量%
熱延鋼帯の冷却過程でフェライトの生成を抑制する作用があり、遅い冷却速度でも強靭なベイナイト主体の組織にする作用を呈する。Mnの作用は0.25質量%以上でみられるが、過剰添加は粒界偏析を助長させ融解強度を低下させることになるので、2.50質量%を上限とした。
P:0.03質量%以下
延性,靭性,曲げ加工性に有害な元素であり、過剰添加は電縫溶接時に溶接部割れを誘発しやすい。また、粒界に偏析して遅れ破壊感受性を増加させるので、0.03質量%を上限とした。
S:0.01質量%以下
Mnと結合しやすい元素であり、鋼中介在物であるMnSを形成して曲げ加工性を劣化させる。MnSは、応力集中個所となって耐遅れ破壊性劣化の原因にもなる。そのため、S含有量の上限を0.01質量%とした。
Cr:0.5〜1.5質量%
温間での軟化抵抗,再加熱時の焼戻し軟化抵抗を高くする元素であり、高強度化にも寄与する。Crの効果は0.5質量%以上でみられるが、1.5質量%を超える過剰Crは曲げ加工性の低下をもたらす。
Mo:0.1〜0.5質量%
強度及び焼入れ性の向上に有効な合金成分であり、遅い冷却速度でも強靭なベイナイト主体の金属組織を生成させる作用がある。軟化抵抗の改善にも有効である。これらの作用は、0.1質量%以上のMoでみられるが、0.5質量%を超える過剰Moを含ませても、強度や焼入れ性の更なる向上が望めず、却って高価なMoを多量に消費することから経済的に不利となる。
B:0.0005〜0.0100質量%
強度,靭性の向上に有効な合金成分であり、冷却過程でフェライト変態を遅延させる作用も呈する。また、粒界の歪みエネルギーを低下させ、粒界を強化する作用を呈し、疲労耐久性の向上に寄与する。このような作用は、0.0005質量%以上でみられるが、0.0100質量%で飽和し、過剰添加は却って靭性の劣化を招く。
Ti:0.01〜0.10質量%
固溶Nを窒化物として固定し、粗粒化防止,強度・靭性の向上に寄与し、耐遅れ破壊性の改善にも有効な合金成分である。このような作用は、Ti:0.01質量%以上でみられるが、0.10質量%を超える過剰Tiは粗大な窒化物を生成させ、靭性劣化の原因となる。
N:0.01質量%以下
Tiと結合してTiNを生成し、鋼材を高強度化し、結晶粒を微細化させる作用を呈する。結晶粒の微細化は耐遅れ破壊性に有効であるが、0.01質量%を超える過剰Nは靭性を劣化させる。
Al:0.02〜0.08質量%
製鋼段階で脱酸剤として使用される元素であり、0.02質量%以上が必要である。しかし、0.08質量%を超える過剰添加は、鋼の清浄度を低下させ、表面疵の発生を助長する。
Ni:0.1〜1.0質量%
必要に応じて添加される合金成分であり、耐食性の向上,靭性の向上,水素侵入の抑制に有効である。Niの添加効果は0.1質量%以上でみられるが、1.0質量%で飽和し、それ以上添加しても鋼材コストの上昇を招く。
V:0.5質量%以下
必要に応じ添加される合金成分であり、高強度化,耐遅れ破壊性の改善に有効であるが、高価な元素であり過剰添加は鋼材コストの上昇を招くので0.5質量%を上限とした。
Nb:0.01〜0.10質量%
必要に応じ添加される合金成分であり、炭窒化物を形成して結晶粒の粗大化を抑制し、靭性を向上させる作用を呈する。これらの効果は、0.01質量%以上のNb添加でみられるが、過剰添加は靭性劣化を招くので0.10質量%を上限とした。
〔熱間圧延〕
熱間圧延では、ベイナイト主体の組織が作り込まれるように仕上げ温度を800〜950℃,巻取り温度を400〜600℃に調整する。
仕上げ温度が800℃を下回ると、変形抵抗が増大し、通板性に支障をきたす。更には、加工フェライトが生成しやすい二相域圧延となる。逆に950℃を超えると熱延組織が粗大化し、加工性の劣化、冷却歪みの増大により鋼帯形状が悪化し、熱延時に水ノリや冷却ムラが発生しやすくなり、機械的性質が損なわれる。
巻取り温度の管理は、ベイナイト主体の金属組織を得る上で重要であり、400〜600℃の範囲に調整される。低すぎる温度で巻き取ると、強度が大幅に上昇し、熱延条件の変動の影響を受けて機械的性質の安定性が損なわれる。熱延条件の変動の影響は、巻取り温度を450℃以上とすることにより抑制できる。逆に600℃を超える高温巻取りでは、熱延条件の変動如何で900N/mm2以上の強度が得られない場合があり、粒界酸化しやすく疲労特性に劣る。
〔熱延鋼帯の金属組織〕
引張強さ:900N/mm2以上の強度を有する焼戻しマルテンサイト鋼は、ベイナイト鋼に比較して旧オーステナイト粒界に炭化物が析出するため、遅れ破壊感受性が大きく、また遅れ破壊感受性が急増する傾向にある。他方、ベイナイト:55面積%以上の金属組織にすると、900N/mm2以上の引張強さが得られ、耐遅れ破壊性も改善される。
熱延鋼帯の金属組織は、合金設計に加え仕上げ温度,巻取り温度を適正に管理することによりフェライト:20面積%以下,パーライト:20面積%以下,残留オーステナイト:5面積%以下,残部がベイナイトの金属組織に調整する。面積率は、1000倍のSEM像の十視野で各組織を測定し平均値として算出される。ただし、少量の残留オーステナイトを含む金属組織では残留オーステナイトを面積率で定量することが難しいので、X線回折で定量した結果を面積率に換算して表示する。
フェライトは、延性に富み造管性に有利であるが高強度化には少ないほど好ましい。スタビライザ用鋼管に必要な引張強さ:900N/mm2以上を確保する上で、フェライトを20面積%以下に規制する。
パーライトは高強度化に寄与するが造管性に悪影響を及ぼすので、良好な曲げ加工性,靭性を確保するため20面積%以下に規制する。また、パーライトを20面積%以下にすると、曲げ加工時に発生する割れが大幅に減少する。
残留オーステナイトは水素固溶度が大きく、曲げ加工等の際に水素固溶度の低いマルテンサイトに加工誘起変態すると、残留オーステナイトに固溶していた水素が吐き出され、耐遅れ破壊性の引き金として働く水素の供給源になる。耐遅れ破壊性の劣化に及ぼす水素の影響を抑える上で、残留オーステナイトを5面積%以下とする。
熱延鋼帯は、常法に従って酸洗され、造管ラインに搬送される。造管ラインでは、熱延鋼帯を所定幅に裁断した切板をロールフォーミング,ロールレスフォーミング等でオープンパイプに成形し、電気抵抗溶接(高周波溶接),アーク溶接(TIG溶接等),レーザ溶接等の何れかの溶接法で鋼帯幅方向両端部を溶接することにより造管される。また、所定幅に裁断された鋼帯を長手方向に切断して切板とし、板巻き成形とアーク溶接(MIG溶接,TIG溶接等),レーザ溶接等の何れかの溶接法で幅方向両端部を溶接して所定長さの単管を製造しても良い。通常は高周波溶接で製造された溶接鋼管を電縫鋼管というが、本件明細書ではアーク溶接,レーザ溶接等を包含する意味で用語"電縫溶接"を使用している。
〔電縫溶接部の焼き戻し〕
次いで、必要に応じて電縫鋼管の内面ビード,外面ビードを除去し、焼き戻しにより電縫溶接部を調質する。一般に焼入れ状態になっている溶接部は母材部に比較して硬質で伸びが小さいので、電縫鋼管を曲げ加工する際に加工性の良否を支配する個所となる。そこで、焼入れ硬化されている電縫溶接部の硬さを母材部との最大硬さ差が50HV以下となるように焼き戻すと加工性の向上が図られる。
焼き戻しでは、電縫溶接部をMs点以下まで急冷した後,(Ac1変態点)〜(Ac1変態点−100℃)の温度域に焼き戻す。焼き戻しには、高周波誘導加熱で代表される局部加熱方式が採用される。焼戻し温度がAc1点を超えるとオーステナイト化し、その後の冷却で焼き入れられるので硬さ低下にならない。しかし、(Ac1変態点−100℃)に達しない加熱温度では、軟化に要する時間が長くなり生産性が低下する。焼戻し温度の下限は、好ましくは(Ac1変態点−70℃)とする。
〔曲げ加工前の焼きなまし〕
曲げ角度:90度の曲げ加工では被加工材に導入される歪み量が多く、電縫鋼管に限らず高強度材の加工に適していない。曲げ加工に先立つ焼きなましで歪みを低減し伸びを改善することが考えられるが、一般には焼きなましにより強度が低下しやすい。この点、本成分系では、軟化抵抗を高めるCr,Mo,Ti等を合金成分としているので、焼きなましによる強度低下が抑制される。
焼きなましでは、電縫鋼管(素管)を450〜710℃に1時間以内加熱し、室温まで冷却する。歪みの除去,伸びの改善には450℃以上の加熱温度が必要であるが、710℃を超える高温では軟化が進み過ぎ、目標強度:900N/mm2以上が得られない。450〜710℃の温度範囲であっても、長期にわたる均熱保持では軟化が進行し強度が低下するので、均熱保持時間を1時間までとする。
表1の組成を有する鋼材を溶製し、鋳造後、仕上げ温度:830℃,巻取り温度:350〜650℃で熱間圧延し、板厚:2.0〜4.5mmの熱延鋼帯を製造した。
Figure 0004859618
熱延鋼帯にスキンパス圧延,酸洗を施した後、ロール成形法で造管し、更に電縫溶接して外径:19.1〜38.1mmの電縫鋼管を製造した。電縫溶接部は,溶接直後にMs点以下の150℃に水冷し、高周波加熱で600〜700℃に焼き戻した。次いで、電縫鋼管を高周波誘導加熱し、350〜730℃で焼きなました。
本発明例では焼きなまし後の電縫鋼管を各種試験に供し、比較例では造管直後に焼入れ、水冷、焼戻しの工程を経た電縫鋼管を各種試験に供した。
〔金属組織〕
熱延鋼帯のL断面を鏡面研磨し、エッチングすることにより試験片を作製した。試験片を倍率:1000倍でSEM観察し、十視野について各相の面積を測定し、視野ごとの面積を平均化して各相の面積率を算出した。
〔曲げ試験〕
電縫鋼管を長さ1mの試験片に切断し、パイプベンダーに装着し、曲げ半径:鋼管直径の二倍,曲げ角度:90度,引き曲げ法で曲げ加工した。曲げ部外側で割れの発生状況を調査し、破断に至らないような亀裂でも割れ発生と評価した。
〔引張試験〕
電縫鋼管を切断して所定長さの引張片とし、内径とほぼ等しい棒状治具を管内に挿入した状態で試験片をチャッキングし、引張り試験した。
〔遅れ破壊試験〕
電縫溶接部に関し180度の位置から電縫鋼管の長手方向に短冊状の試験片を採取し、表面研削で長さ:100mm,幅:8.0mm,板厚:1.0mmの平板状に加工した。平板の長手方向中央位置で幅方向端縁にVノッチ(図1)を付けた試験片1を作製し、腐食液2を満たした腐食槽3(図2)に浸漬した。腐食液2には5%HCl水溶液を用い、重錘4で曲げ応力を試験片1に負荷し、変位計5で試験片1の変形を測定しながら破断に至るまでの時間を計測した。100時間経過した後でも試験片が破断しなかった最も高い曲げ応力を遅れ破壊限度とし、遅れ破壊限度:1300N/mm2以上を"耐遅れ破壊性良好"と評価した。
表2の調査結果にみられるように、本発明に従った条件で電縫溶接部を焼き戻した例では、電縫溶接部の最大硬さと鋼管母材部の硬さの差が50HV以下に収まっていた。
試験No.1,5,11,15,17,18,20は、引張強さが900N/mm2以上であったが、金属組織の20面積%を超える分率がマルテンサイト,焼戻しマルテンサイト,パーライトで占められていたため、曲げ試験で曲げ部外周に割れが発生した。また、旧オーステナイト粒界に炭化物が析出しており、クラックが頻発し遅れ破壊限度に劣っていた。
焼きなまし温度が低い試験No.3では曲げ部外周に割れが発生し、逆に焼きなまし温度が高すぎる試験No.8では引張強さが不足していた。
試験No.14,16は、20面積%以上のフェライトのため軟質であり、曲げ部外周に割れが検出されなかったが、900N/mm2以上の引張強さを得られなかった。試験No.7は曲げ加工性,引張強さを満足するものの、残留オーステナイトがマルテンサイトに加工誘起変態したため耐遅れ破壊性が劣化した。
これに対し、鋼成分,巻取り温度,金属組織の面積率,曲げ加工前の焼きなまし条件が本発明規定の条件を満足する試験No.2,4,6,9,10,12,13は、何れも900N/mm2以上の引張強さを示し、しかも割れなく90度曲げ加工でき、耐遅れ破壊性にも優れていた。
Figure 0004859618
以上に説明したように、特定された成分設計,熱延条件を組み合わせることにより、熱延鋼帯をベイナイト主体の金属組織とし、スタビライザ形状に曲げ加工した後の焼入れ・焼戻しが不要な電縫鋼管を製造している。そのため、焼戻しマルテンサイト鋼のように遅れ破壊感受性を高める炭化物等の析出がなく、引張強さ:900N/mm2以上で耐遅れ破壊性に優れた中空スタビライザが安定して得られる。
遅れ破壊試験に使用した試験片のサイズを示す図 遅れ破壊試験に使用した試験装置を示す図
符号の説明
1:試験片 2:腐食液 3:腐食槽 4:重錘 5:変位計

Claims (3)

  1. C:0.10〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:0.25〜2.50質量%,P:0.03質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:0.5〜1.5質量%,Mo:0.1〜0.5質量%,B:0.0005〜0.0100質量%,Ti:0.01〜0.10質量%,N:0.01質量%以下,Al:0.02〜0.08質量%を含み、残部がFe及び不純物からなる組成を有する鋼材を熱延工程に送り、
    フェライト:20面積%以下,パーライト:20面積%以下,残留オーステナイト:5面積%以下,残部がベイナイトの金属組織が得られるように、仕上げ温度:800〜950℃,巻取り温度:400〜600℃の範囲で選定した条件下で前記鋼材を熱間圧延し、
    酸洗を経て電縫鋼管とした後、
    450〜710℃の温度域に1時間以下焼きなまし、室温まで冷却し、目標形状に曲げ加工することを特徴とする耐遅れ破壊性に優れた中空スタビライザの製造方法。
  2. 更にNi:0.1〜1.0質量%,V:0.5質量%以下,Nb:0.01〜0.10質量%の一種又は二種以上を含む鋼材を使用する請求項1記載の製造方法。
  3. s点以下の温度に冷却した後、連続して(Ac1変態点)〜(Ac1変態点−100℃)の温度域に焼き戻す熱処理を電縫溶接部に施し、電縫溶接部と母材部との間の最大硬さ差を50HV以下にする請求項1又は2記載の製造方法。
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