JP4859240B2 - 中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法 - Google Patents

中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、自動車の走行安定性を保持する中空スタビライザを製造するにあたり、スタビライザの形状への曲げ加工を行った後に焼入れ焼戻し処理を必要とせずに生産性良く製造することを可能にした電縫鋼管の製造方法に関する。
自動車部品であるスタビライザは、コーナリング時に車体のローリングを緩和したり、高速走行時に車体の走行安定性を確保するための部品である。その素材には棒鋼(中実材)が適用されているが、最近は、軽量化の観点から鋼管が多用されている。
また、スタビライザは自動車に取り付けられた状態で長時間使用されるため、疲労耐久性に優れていることが要求され、そのため、スタビライザ部材の引張強さが1000N/mm2以上であることが要求されている。
ところで、通常、中空スタビライザは、適宜の組成とサイズ(直径、板厚等)を有する鋼管を素材とし、管端部の加工を行った後、常温で所要形状に曲げ加工され、その後に焼入れ焼戻しの処理を施して製造される。焼入れ焼戻しに先立って曲げ加工を行うのは、焼入れ焼戻しにより高強度となった鋼管は一般に加工性が乏しく、曲げ角度が90度に及ぶ強加工を行うことが難しいため、まず曲げ加工を行って所定の形状とし、その後に焼入れ焼戻しにより所定形状のまま高強度化するためである。さらにその後、必要に応じて、疲労特性を向上させるためのショットピーニングや塗装が施される。
所望の強度を得るために焼入れ効果を発揮させるべく、素材鋼には0.20%C程度の炭素鋼が用いられる。また、スタビライザの形状としては、コの字形状が多く、数箇所に曲げ加工が施されることが多い。そして、曲げ加工を受ける鋼管には、曲げ角度90度という厳しい曲げ加工性が要求される。
焼入れ焼戻しの処理は、スタビライザとしての疲労耐久性を確保すべく高強度化のために施す処理である。そして、特許文献1には焼入れ焼戻し効果を十分に発揮させるため、素材炭素鋼にBを添加したものを用いることが提案されている。
また、特許文献2には、焼入れを行った後の焼戻し工程中に温間で曲げ加工を施すことが提案されている。
特開昭58−197218号公報 特開昭58−188518号公報
上記のように、従来の技術では、高強度化のためにエネルギー消費量の大きい焼入れ焼戻し工程が必須となっており、高コスト化をもたらしている。
特許文献1で提案された技術も、高強度化を図り疲労耐久性を高める上では有効であるが、焼入れ焼戻し処理を行うため、工程数が多く、エネルギー消費も多くなっている。特許文献2で提案された技術も、曲げ加工を焼戻し工程中の温間で行うため素材の変形抵抗が小さくなっており加工しやすく、また時間短縮を図れる点では有意義な技術であるが、エネルギー消費に関しては上記と同様である。
本発明は、このような問題を解消すべく案出されたものであり、鋼管の段階で高強度と加工性を有するものとし、スタビライザ形状に曲げ加工した後に施す焼入れ焼戻しの処理を省略できるため、工程数を減らせるとともに消費エネルギーを低減して低コストで所要の強度を確保したスタビライザ用電縫鋼管の製造方法を提供することを目的とする。
本発明の中空スタビライザ用鋼管の製造方法は、その目的を達成するため、C:0.15〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:1.0〜2.5質量%,P:0.03質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:0.5〜1.5質量%,Mo:0.1〜0.5質量%,B:0.0005〜0.010質量%,Ti:0.01〜0.1質量%,N:0.01質量%以下及びAl:0.02〜0.08質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成をもつ鋼を、800〜950℃の温度域で仕上げ熱延した後、400〜600℃の温度域で巻き取ることによってベイナイト主体の金属組織を呈する熱延コイルとし、さらに酸洗した後に該熱延コイルを電縫鋼管とする際に、電縫溶接部をMs点以下の温度に冷却した後に連続して電縫溶接部を(Ac1変態点)〜(Ac1変態点−100℃)の温度域で焼きなまして製造した電縫鋼管を素管とし、続いて下記式(1)〜(3)の条件を満たす焼鈍を行った後に冷却することを特徴とする中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法である。
(T+273)/33+log(t) ≧23 ・・・(1)
ここで、T:到達温度(℃)、t:到達温度での保持時間(秒)であり、さらに
到達温度T:380〜710℃ ・・・(2)
到達温度での保持時間:0.1秒以上 ・・・(3)
なお、素管となる鋼管としては、板厚1.5〜6.0mm,外径10〜40mmの寸法範囲としたものが好ましい。
また、素板が上記の厳格な条件下で製造されたベイナイト主体の熱延コイルではなく、上記と同じ成分組成を有する電縫鋼管を、800〜950℃の温度域に保持してオーステナイト化した後、冷却速度10℃/秒以上で400〜600℃の温度域まで冷却し、当該温度域で保持して恒温変態させることによってベイナイト主体の金属組織を呈する電縫鋼管とした後、当該鋼管を素管として、上記式(1)〜(3)の条件を満たす焼鈍を行った後に冷却して中空スタビライザ用電縫鋼管とし、その後に室温で曲げ加工を行って中空スタビライザを製造してもよい。
本発明で提供される中空スタビライザ用電縫鋼管は、スタビライザの形状に加工する前の鋼管の段階で高い強度を有するように成分調整され、かつ熱延条件,造管条件及び造管後の焼鈍条件が調整されており、焼鈍後に室温で曲げ加工が可能になっている。このため、焼入れ焼戻し処理が省略でき、中空スタビライザ用電縫鋼管の製造にかかる工程数及び消費エネルギーが低減される。特に、曲げ加工を施す前に焼鈍を施しているので加工が容易である。また、スタビライザの形状に加工した後に熱処理する必要がないので、スタビライザを加工する工場では熱処理設備を備える必要がなく、従来品と同等の強度を有する高強度な中空スタビライザを低コストで製造することができる。
本発明者等は、まず、要求特性を満足する中空スタビライザ用材料を開発するため、素管となる電縫鋼管を構成する鋼の合金元素,機械的性質に及ぼす熱延条件の影響について、数多くの実験を行った。その結果、本発明で規定した成分を有する鋼を800〜950℃の仕上げ温度で熱延した後、400〜600℃の温度で巻き取った熱延コイルを素材として電縫鋼管を製造することが有効であることを見出した。
鋼管の電縫溶接部は溶融状態から急冷されるため、いわゆる焼入れされた状態になっている。このために溶接部は母材部に比べて硬くて伸びが小さい状態となっている。したがって、母材部に比べて曲げ加工性が悪く、加工割れを起こしやすい。
このような溶接部の加工性を改善するために、溶接部を対象に焼きなまして硬さを母材と同程度まで軟化させ伸びを回復させると、全体として1000N/mm2以上の強度と良好な加工性を発揮させることができたものである。なお、この焼きなましでは、母材全体が焼鈍されるような加熱は避けるべきである。
ところで、中空スタビライザを製造するに当っては、素材鋼管に曲げ角度が90度になるまでの曲げ加工を施す必要がある。一般的に高強度の鋼管に対し、室温で曲げ角度90度に至る程の多大なひずみが付与される曲げ加工をすることは困難である。
そこで、本発明では、溶接部だけでなく鋼管全体に焼鈍を施すことにより鋼管全体の伸びを改善した後に曲げ加工を行うとするものである。なお、一般的に焼鈍を施すと伸びは改善するが、強度は低下する傾向がある。このため、本発明では、Cr,Mo,Tiといった軟化抵抗を高くする元素を適切に添加して、加熱しても強度低下が抑制されるように調整している。なお、焼鈍は鋼管全体に対して行ってもよいし、曲げ加工を行う部位やその近傍だけを部分的に加熱して焼鈍してもよい。
以下にその詳細を説明する。
まず、本発明で規定した合金成分,熱処理条件等を説明する。
C:0.15〜0.30質量%
中空スタビライザとして要求される強度を得るために必要な合金元素であり、C含有量が0.15質量%未満では必要な1000N/mm2以上の強度が得られない。しかし、0.30質量%を超えるC含有量では、曲げ加工性や靭性が低下する。
Si:0.5質量%以下
Siが多量に含まれると溶接性が劣化し、スケール疵も発生し易くなる。また、熱延板の表面品質を低下させ、靭性を阻害する悪影響もみられる。したがって、本発明では、Si含有量の上限を0.5質量%に規制した。
Mn:1.0〜2.5質量%
鋼板の焼入れ性を高め、強靭化を図る上で重要な合金元素である。Mnは、熱延における冷却中にフェライト変態を抑制し、極めて遅い冷却速度でもベイナイト主体の金属組織にする作用を呈する。その作用を発揮させるためには少なくとも1.0質量%を必要とする。逆に、2.5質量%を超える多量のMnが含まれると、強度上昇効果や焼入れ性が飽和し、却って溶接性や靭性が劣化する。
P:0.03質量%以下
曲げ加工性や靭性を劣化させる元素であり、P含有量が0.03質量%を超えるとそれらの特性が著しく劣化する。
S:0.01質量%以下
Mnと結合しやすい元素であり、鋼中介在物であるMnSを形成して曲げ加工性の劣化をもたらす。そのため、本発明では、S含有量を0.01質量%以下に規制した。
Cr:0.5〜1.5質量%
焼鈍時の軟化抵抗(焼戻し軟化抵抗)を高くする元素である。その効果を得るためには少なくとも0.5質量%を必要とする。しかし、1.5質量%を超えるほどに多量のCrが含まれると、曲げ加工性の低下をもたらす。
Mo:0.1〜0.5質量%
強度及び焼入れ性の向上に有効な合金元素であり、遅い冷却速度でも強靭なベイナイト主体の金属組織を生成する作用を発揮する。また焼鈍時の軟化抵抗(焼戻し軟化抵抗)を高くする作用も呈する。これらの作用を発揮させるためには少なくとも0.1質量%を必要とする。しかしながら、0.5質量%を超える多量のMoを含ませても、特性の更なる向上が望めず、却って高価なMoを多量に消費することから経済的に不利となる。
B:0.0005〜0.010質量%
ごく微量の添加で鋼材の焼入れ性を大幅に向上させると共に、粒界の歪みエネルギーを低下させ、粒界を強化する作用を呈し、靭性の低下防止に有効な合金元素である。このような作用は、0.0005質量%以上のB含有で顕著になる。しかし、B含有量が0.010質量%を超えても、B添加による効果が飽和し、逆に靭性が劣化する。
Ti:0.01〜0.1質量%
鋼材に固溶しているNを窒化物として固定する上でも重要な合金成分である。すなわち、Nの固定に消費されるB量が抑えられ、Bによる焼入れ改善作用が効率よく発揮される。また焼鈍時の軟化抵抗(焼戻し軟化抵抗)を高くする作用を呈する。このような作用は、0.01質量%以上のTi含有で顕著になる。しかし、0.05質量%を超える多量のTiが含まれると、粗大な窒化物が形成され、靭性の劣化をもたらす。
N:0.010質量%以下
Tiと結合してTiNを生成し、鋼材を高強度化し、結晶粒を微細化させる作用を呈する。しかし、0.010質量%を超える多量のNが含まれると、過剰のNがBと結合してBの焼入れ性向上作用を低減させる。
Al:0.020〜0.080質量%
溶鋼の脱酸剤として添加される元素であり、0.020質量%以上が必要である。しかし、Al含有量が0.080質量%を超えると、鋼の清浄度が損なわれ、表面疵が発生し易くなる。
熱間圧延の仕上げ温度:800〜950℃
熱間圧延では、仕上げ温度800〜950℃の温度域で仕上げ熱延する。仕上げ温度が800℃に満たないと、変形抵抗が増大し、鋼板の絞り込み等,通板性に支障を来す。また、低い仕上げ温度では2相域圧延となり、加工フェライトが生成し易くなる。他方、仕上げ温度が950℃を超えると、熱延組織が粗大化し、加工性が劣化すると共に熱延における冷却歪みが増大して鋼板の形状が劣化し、熱延における水乗りや冷却ムラが発生し易くなる。その結果、機械的性質の安定性が損なわれる。
巻取り温度:400〜600℃
熱延後の鋼帯は、金属組織をベイナイト主体のものとして高強度コイルを得るため、400〜600℃の温度域で巻き取られる。巻取り温度が400℃未満では、強度上昇が著しくなり、熱延条件の変動によって機械的性質の安定性が損なわれる。なお、実操業における熱延条件の変動の影響を少なくするためには450℃以上とすることが好ましい。また、低過ぎる巻取り温度は、冷却歪みを発生させ、鋼板に形状不良を引き起こす原因となる。逆に600℃を超える巻取り温度では、熱延条件の変動によって1000N/mm2以上の強度が得られない場合があるとともに、粒界酸化を起こし易く、疲労特性の低下をもたらすおそれがある。
電縫溶接部の焼きなまし
一般的に中空スタビライザでは、トーション部からアーム部に至って曲げ加工が施される。その程度は、中立線上で曲げ半径30mm以上,曲げ角度90度以下である。また、一般的に電縫鋼管を曲げる場合には、焼きなましを十分に施していない溶接部は母材部に比べて硬くて延性に乏しいため、可能であれば溶接部を曲げの中立線近くにするなどして、溶接部に極力ひずみが付与されないような対策が採られている。しかしながら、スタビライザの場合は、形状が複雑で、複数箇所に曲げ部が形成される場合が多く、必ずしもこのような前記のような対策は採れないことが多い。そのため、電縫溶接部を軟化させ伸びを付与することが必要になる。
本発明の電縫鋼管の製造方法は、上記熱延コイルを酸洗し、常法により溶接して電縫鋼管を得る。通常、電縫溶接部は溶融状態から急冷されていわゆる焼入れ状態になるために、母材部に比べて硬くて伸びが小さい状態となる。そこで、本発明では、電縫溶接部をMs点以下まで積極的に急冷した後、引続いてその溶接部のみに焼きなまし処理を施す。焼きなまし処理には、高周波加熱等により溶接部のみを局部的に加熱する方法が適用できる。この焼きなまし処理は、溶接部のみに対して行うものである。
本発明者等の実験によれば、溶接部を(Ac1変態点)〜(Ac1変態点−100℃)の温度域で焼きなませば、溶接部は母材部と同等或いはそれ以下に軟化されることがわかった。焼きなまし温度がAc1変態点を超えた場合にはオーステナイト化するため、その後の冷却により焼入れされた状態となり、軟化させる目的が達成できない。また、Ac1変態点−100℃を下回る温度では十分に軟化しない。焼きなまし温度が低いと、軟化に要する時間が長くなり生産性が低下するので、下限値は(Ac1変態点−70℃)とすることが好ましい。
焼鈍
前述したように、高強度の鋼管に対し、室温で曲げ角度90度に至る程の多大なひずみを付与する曲げ加工をすることは困難である。そのため、本発明では、鋼管の伸びの改善策として焼鈍を施すことにより室温で曲げ加工を可能としている。
発明者等の実験によれば、請求項に示した成分系の鋼では、380℃以上の温度で焼鈍すれば、曲げ角度90度の曲げ加工が可能になった。またCr、Mo,Tiといった軟化抵抗が高い元素を適切に添加していても、焼鈍温度が710℃を超えると保持時間が短時間であっても目標の強度を下回った。
この焼鈍においては、鋼管全体を焼鈍しても良いし、曲げ加工を行う部位やその近傍のみを部分的に焼鈍しても良い。鋼管全体を焼鈍する方法としては、例えば、予め所定の温度に達している炉の中に電縫鋼管を挿入して加熱する、あるいは電縫鋼管の両端に電極を接続し、電縫鋼管自体を導体として通電することによって電縫鋼管全体を加熱することができる。部分的に焼鈍する方法としては、焼鈍したい部位の外側に高周波コイルを置いて加熱する高周波加熱等の手段を利用することができる。
さらに、このような予備実験から、所要の強度と曲げ加工性の両方を発現させるためには、焼鈍の到達温度と保持時間の組み合わせを調整する必要があり、さらに検討したところ、380〜710℃の温度で焼鈍する場合に、次のような関係に整理できることを見出した。
(T+273)/33+log(t) ≧23 ・・・(4)
保持時間tについて、焼鈍温度が高ければ保持時間が短時間でも鋼管に十分な焼鈍を施すことができるが、保持時間を実用的に0.1秒未満に管理することは困難であるため、本発明ではt≧0.1秒以上とする。
(4)式の根拠について説明する。
炭素鋼の焼戻しに伴う軟化挙動を焼戻し条件から予測する手段として、非特許文献1に記載されているとおり、焼戻し温度Tと焼戻し時間tの関数として式(5)で与えられる焼戻しパラメータが知られている。
T(C+logt) ・・・(5)
ここで、C:定数であり、一般的に20前後の値が用いられる。
炭素鋼の焼戻しは炭化物の析出、またはその凝集に関る現象であり、鉄中における各元素の拡散に関係する現象であるから、上式のように温度と時間の関係によって表わすことができ、このパラメータは、炭素鋼に限らず炭素量や合金元素の添加量が多い特殊鋼にも適用でき、ベイナイトの焼戻しにも適用できることが分かっている。
本発明では、焼戻し後の硬さは焼戻し温度と時間で決まるから、実用的には、この焼戻しパラメータの値が等しくなるような焼戻し条件であれば硬さが同じになり、同等の加工性を発揮することを利用する。すなわち、本発明の鋼成分において、中空スタビライザ用の曲げ加工が可能となる焼鈍の到達温度と保持時間の条件を予備試験により求めておき、これらを焼戻しパラメータの値に置き換える。それ以降は、具体的な焼鈍の到達温度と保持時間が変わっても、この値が予備実験により求めた値以上であれば十分に焼戻しされていて、電縫鋼管は中空スタビライザ用として利用可能、と判定する。
「鉄鋼材料学」改訂版、門間改三著、実教出版株式会社(1994),p.179
ここで、上述の焼戻しパラメータの式(5)をそのまま使うのは煩雑であるので、発明者等は本発明で実用する焼鈍処理の到達温度、保持時間の範囲を考慮して簡略化し、近似式を利用できることを見出した。一例として、到達温度500℃、保持時間5秒の場合、式(5)の値は16,000となる。その場合、図1に示すように、式(5)の関係は双曲線を描くが、本発明の焼鈍処理に用いる温度である380〜710℃の範囲に限定すれば、図1中に示したような直線近似が可能である。その場合、式(5)を次のように変形できる。
α(T+273)+logt=B ・・・(6)
ここで、T:到達温度(℃)、
t:到達温度での保持時間(秒)、
α,B: 定数
2つの定数は、実験的に決定できる。
曲げ加工
本発明の中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法では、上記のように素管となる電縫鋼管に伸びを改善するために焼鈍処理を施している。
このため、室温での曲げ加工によっても曲げ角度90度の曲げ加工が可能となる。常法によって曲げ加工を行うことにより、曲げ加工によってスタビライザの形状となった後に再度の熱処理を施すことなく、スタビライザとして使用することができる。
なお、本発明の中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法は、全体が主としてベイナイト主体の金属組織を呈するものを用いれば、焼入れ焼戻しの処理を施さなくても1000N/mm2以上の強度と良好な加工性を有する中空スタビライザ用の素管として用いることができる電縫鋼管が得られるものである。
そして、ベイナイト主体の金属組織を呈する電縫鋼管を得るためにその製造条件を規定したものの他に、既に製造された電縫鋼管であっても、その後の熱処理によりベイナイト主体の金属組織を持たせた鋼管であれば、所定の焼鈍処理を施すことにより室温で容易にスタビライザ形状に曲げ加工することができる。
ところで、一般に自動車部品として用いられる中空スタビライザは、板厚1.5〜6.0mm,外径10〜40mmのものが多用されているので、本発明にあっても、板厚1.5〜6.0mmの熱延コイルを用い、外径10〜40mmの電縫鋼管を製造し、この鋼管を素材としてスタビライザ形状に曲げ加工を施すことが好ましい。
また、通常のスタビライザ製造工程にあっては、疲労特性を向上させるためのショットピーニングや防錆のための塗装が施されているが、本発明における中空スタビライザ製造方法においても、ショットピーニングや塗装が施されてもよいことは言うまでもない。
表1の組成を持つ各種鋼を溶製した。次いで、仕上げ圧延温度880℃,巻取り温度500℃の条件で熱間圧延し、板厚1.6〜6.0mmの熱延鋼帯を得た。
次いで、スキンパス圧延,酸洗の後、ロール成形法により造管、続いて電縫溶接して外径19.1〜38.1mmの鋼管を得た。表2に、得られた電縫鋼管の板厚、外径等を示している。なお、鋼管外面のビードカットを実施しており、さらに溶接部は溶接直後にMs点以下である150℃に水冷し、次いで高周波加熱により溶接部を680℃で焼きなました。
その後、焼鈍として鋼管の一部に高周波加熱を行った。焼鈍条件は表2に示したとおりである。加熱に用いた高周波電源の定格は、周波数3kHz、出力400kWである。鋼管の温度は、鋼管表面に接触させた熱電対を用いて測定した。
次に、焼鈍を施した各電縫鋼管について、室温での曲げ試験と引張試験を行った。
曲げ試験は、前述の高周波加熱による焼鈍済みの部分を含むように長さ1mに切断した鋼管を用意し、パイプベンダー装置を用いて焼鈍済みの部分が曲げ位置になるように位置決めし、引曲げ法によって曲げ加工した。曲げの中立線における曲げ半径は35mm,曲げ角度は90度に設定した。評価は、曲げ部(曲げ外側)での割れの発生の有無で判定し、破断に至らないような亀裂であっても亀裂が認められれば割れ発生と評価した。
引張試験は、前述の高周波加熱による焼鈍済みの部分を含むように長さ50cmの試験片を切り出し、JIS Z2241に準拠して、両端つかみ部の管内部に内径とほぼ等しい棒状冶具を挿入した状態で実施した。表2には、曲げ試験での割れの有無、引張強さの試験結果も合わせて示した。
表2により、所定の成分を有する鋼管に所定の焼鈍を施した試験片にあっては、1000N/mm以上の引張強度と優れた曲げ加工性を有していた。
これに対して、380℃よりも焼鈍温度が低かったNo.1,7や、焼鈍時間と焼鈍温度の組み合わせが式(1)を満足していなかったため焼鈍が不充分であったNo.12は、1000N/mm2を超える強度を有していたものの、曲げ部に割れが生じており、曲げ加工性が不良であった。さらに、No.19〜22は鋼成分が本発明の範囲外であるため、適正条件で焼鈍を施した場合でも、強度と曲げ加工性を両立させることができなかった。
また、図2に、各試験片の焼鈍条件(到達時間T、保持時間t)と曲げ試験での割れの有無の関係を示した。到達温度が高い、または保持時間が長ければ十分に焼鈍されることにより加工割れが起こらないことが示されている。そして、同図中の破線は、この破線よりも右側に該当する焼鈍条件を選択すれば、加工割れが起こらないことを示すものであり、最小二乗法により2つの定数を決定することにより、次のように表すことができる。
(T+273)/33+log(t) ≧23 ・・・(4)
本発明に従う(1)〜(3)を満足する範囲内の条件で焼鈍処理をしたものは、曲げ試験での割れが発生せず、良好な曲げ加工性を示した。
Figure 0004859240
Figure 0004859240
焼戻しパラメータ値が、ある一定値を示す焼鈍処理条件(到達温度と保持時間)の関係を示す図 焼鈍処理条件(焼鈍の到達温度、保持時間)と曲げ試験での加工割れ有無の関係を示す図

Claims (2)

  1. C:0.15〜0.30質量%,Si:0.5質量%以下,Mn:1.0〜2.5質量%,P:0.03質量%以下,S:0.01質量%以下,Cr:0.5〜1.5質量%,Mo:0.1〜0.5質量%,B:0.0005〜0.010質量%,Ti:0.01〜0.1質量%,N:0.01質量%以下及びAl:0.02〜0.08質量%を含み、残部がFe及び不可避的不純物からなる成分組成をもつ鋼を、800〜950℃の温度域で仕上げ熱延した後、400〜600℃の温度域で巻き取ることによってベイナイト主体の金属組織を呈する熱延コイルとし、さらに酸洗した後に該熱延コイルを電縫鋼管とする際に、電縫溶接部をMs点以下の温度に冷却した後に連続して電縫溶接部を(Ac1変態点)〜(Ac1変態点−100℃)の温度域で焼きなまして製造した電縫鋼管を素管とし、続いて下記式(1)〜(3)の条件を満たす焼鈍を行った後に冷却することを特徴とする中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法。
    (T+273)/33+log(t) ≧23 ・・・(1)
    ここで、T:到達温度(℃)、t:到達温度での保持時間(秒)であり、さらに
    到達温度T:380〜710℃ ・・・(2)
    到達温度での保持時間:0.1秒以上 ・・・(3)
  2. 素管となる鋼管の寸法範囲が、板厚1.5〜6.0mm,外径10〜40mmである請求項1に記載の中空スタビライザ用電縫鋼管の製造方法。
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