JP5142792B2 - 高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管およびその製造方法 - Google Patents

高疲労寿命焼入れ・焼戻し鋼管およびその製造方法 Download PDF

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本発明は、焼入れおよび焼戻しの処理を施して得られる疲労特性に優れた鋼管であって、特に硬度を高めて高強度化を図るとともに微細な炭化物を析出させることで高疲労寿命化を図った、機械構造部材用鋼管、およびその製造方法に関するものである。
自動車をはじめ、各種機械構造物においては、高強度と疲労特性が要求される部材に焼入れ・焼戻しの処理を施した「鋼管」を使用することが多々ある。
一般に鋼材の疲労特性を向上させるためには、表面を硬化する、あるいは平滑化することが有効であるとされる。
特開平6−264177号公報 特開平7−215038号公報 特開2005−76047号公報
昨今、機械構造物の各種部材には小型軽量化の要求が高まっている。鋼管で構成される高強度部材についても例外ではない。
鋼管部材を軽量化するには、肉厚の低減が最も有効である。しかし、薄肉化は強度や疲労寿命の面で不利となる。特に、鋼管は曲げ加工などにより所望の形状に加工される場合が多いが、曲げの外側では肉厚が薄くなり、耐久性の点で厳しい状況となる。したがって、薄肉化の要求に応えるには、鋼管自体の特性をレベルアップすること、すなわち、高強度を維持しながら疲労寿命を一層高レベルに引き上げることが望まれる。
このように、高強度鋼管の耐久性を維持しながら薄肉化を図ることは必ずしも容易ではない。この問題を解決する手段として、例えば特殊元素の添加により鋼材自体の強度・疲労特性レベルを向上させる手法が考えられる。しかし、多くの機械構造物において、そのような素材コストの増加を招く手法は許容されない。特許文献1、2に開示されるような表面を窒化させる方法や特許内面を研削する方法は、疲労特性の向上には有効であるが、工程の増加を伴い、現状の鋼管製造プロセスをそのまま適用できるものではない。内面を研削する手法ではさらに歩留低下の問題も生じる。特許文献3のように、熱間圧延で累積縮径率を40%以上として鋼管を製造する方法では、熱延での表面粗度の劣化を改善することが困難である。
本発明は、このような現状に鑑み、素材コストおよび製造コストを従来材と同等に抑えながら、高強度化と一層の疲労寿命の向上を図った鋼管であって、特に自動車用中空スタビライザーの薄肉化に適した鋼管を提供しようというものである。
上記目的は、質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下であり、必要に応じてさらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRa(JIS B0601)が0.5μm以下である平滑化表面を少なくとも片面に有する鋼板を素材鋼板に用いて、その平滑化表面が鋼管の内面になるように溶接造管したのち焼入れ・焼戻し処理する工程を経て得られる高疲労寿命鋼管によって達成される。肉厚tが1〜7mm、管の外径Dが10〜45mmであり、D/t≧4を満たす高疲労寿命鋼管が特に好適な対象となる。
また、このような鋼管の製造方法として、上記の成分組成を有する鋼を溶製し、下記[1]の条件で熱間圧延し、スケールを除去したのち下記[2]の条件で冷間圧延し、下記[3]の条件で焼鈍し、下記[4]の条件で造管し、下記[5]の条件で焼入れ・焼戻し処理を施す高疲労寿命鋼管の製造方法が提供される。
[1]〔熱間圧延〕加熱抽出温度を1100〜1280℃とする。熱延最終パスでワークロールとしてハイスロールを鋼管の内面側となる鋼板表面に適用することが望ましい。
[2]〔冷間圧延〕冷間圧延率を25%以上とし、鋼管の内面側となる鋼板表面について、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRaを0.5μm以下とする。この場合、ロール軸に平行方向の表面粗さRaが0.3μm以下のスムース仕上げワークロールを鋼管の内面側となる鋼板表面に適用することが一層効果的である。
[3]〔焼鈍〕非酸化性雰囲気中で加熱して、再結晶組織を得る。
[4]〔造管〕溶接造管により、肉厚t、管の外径Dが、D/t≧4を満たす鋼管を得る。
[5]〔焼入れ・焼戻し処理〕900〜1100℃で10〜60秒保持した後急冷する焼入れ処理と、280〜380℃で10〜60分保持する焼戻し処理を施す。
本発明に従えば、従来材と同等の安価な鋼を用いて、各種機械構造部材に用いる高強度鋼管の疲労寿命を顕著に向上させることが可能になった。この特性向上により、自動車用中空スタビライザーその他の機械構造用鋼管において、更なる耐久性の向上、あるいは部材の薄肉化が実現できる。
《成分組成》
本発明では各元素の含有量を以下のように調整した鋼を使用する。合金元素含有量の「%」は「質量%」を意味する。
Cは、機械構造用鋼疲労寿命鋼管に望まれる強度とばね性を確保するために、0.1%以上の含有が必要である。ただし、0.4を超えると靭性低下による脆性破壊が生じやすくなるとともに、粒界強度の低下による疲労寿命の低下が懸念される。また、造管時の加工性や溶接部の健全性が劣化する。このためC含有量は0.1〜0.4%とする。
Siは、焼入れ性および焼戻し軟化抵抗を高め、焼戻し後の強度を確保する上で有効な元素である。また、焼戻しの際にフィルム状の炭化物の生成を抑制し、平均粒径0.5μm以下の微細な炭化物を析出させることで粒界強度の低下を抑える作用を有する。高疲労寿命化には不可欠な元素であり、0.5%以上のSi含有が必要である。ただし、Si含有量が1.5%を超えると粒界に粗大な炭化物が形成されやすくなり、逆に疲労寿命の低下を招く要因となる。このためSi含有量は0.5〜1.5%とする。
Mnは、焼入れ性および強度を確保する上で有効な元素であり、その効果を十分に得るためには0.3%以上含有させる必要がある。しかし、過剰に添加すると、炭素当量も高くなり、加工性および溶接部の健全性に悪影響を及ぼす。Mn含有量は0.3〜2%の範囲に規定される。
Pは、焼入れ時にオーステナイト粒界に偏析し、粒界強度の低下により、疲労寿命を低下させる。このためP含有量は0.02%以下に制限される。
Sは、鋼中でMnSを形成し、これが亀裂の起点となって強度、靭性を低下させる要因になる。また、粒界に偏析し、疲労寿命低下に繋がる。このためS含有量は0.01%以下に制限される。
Crは、Mnと同様に焼入れ性の向上に有効であるとともに、焼戻し軟化抵抗を高めるため、少なくとも0.1%以上の含有が必要である。しかし、2%を超えると焼入れ・焼戻し後の組織が未溶解炭化物を多量に含むものとなり、この炭化物が亀裂を助長させる起点となって靭性や疲労寿命の低下を招く。このためCr含有量は0.1〜2%とする。
Tiは、鋼中のNをTiNとして固定することにより、焼入れ性向上に有効な固溶Bの確保に寄与する。また、焼入れ時に旧オーステナイト粒径の粗大化を抑制し、疲労寿命を向上させる。これらの効果を十分に得るには0.01%以上のTi含有が必要となる。ただし、0.1%を超えてTiを添加しても旧オーステナイト粒径の粗大化抑制効果は飽和し、却って疲労破壊の起点となるTi系介在物が増加する。このためTi含有量は0.01〜0.1%とする。
Nbは、炭窒化物を形成し、旧オーステナイト結晶粒の粗大化を抑制して靭性を向上させるとともに疲労寿命を向上させる作用がある。これらの効果を十分に得るためには0.01%以上のNb含有が必要である。ただし、0.1%を超えると上記効果は飽和し、不経済となる。このためNb含有量は0.01〜0.1%とする。
Alは、脱酸に有効な元素であるが、焼入れ時のオーステナイト結晶粒の粗大化抑制にも有効である。トータルAl(T.Al)として0.01%以上のAl含有量を確保することがより効果的である。ただし、過剰のAl含有は電縫溶接部の靭性および疲労寿命に悪影響を及ぼす。したがってAl含有量(T.Al)は0.1%以下に制限され、0.05%以下とすることがより好ましい。
Bは、微量の添加で焼入れ性を高める作用がある。また、焼入れ・焼戻し後の旧オーステナイト粒界を強化して脆性破壊を抑制し、靭性を向上させる作用を有する。これらの作用を十分に発揮させるためには0.0005%以上のB含有が必要である。ただし、0.01%を超えるとこれらの作用は飽和する。このためB含有量は0.0005〜0.01%に規定される。0.002〜0.01%の範囲とすることがより好ましい。
Nは、BNの形成によってBを消費し、前記のB添加の作用を引き出す上でマイナスの要因となる。このためN含有量はできるだけ低い方が望ましい。種々検討の結果、N含有量は0.01%まで許容されるが、0.006%以下とすることがより好ましい。
Niは、炭窒化物を形成し、焼入れ性、靭性および疲労寿命の向上に有効であるため、必要に応じて添加することができる。0.1%以上の含有量を確保することが一層効果的である。ただし、0.5%を超えると上記作用は飽和し、不経済となる。このためNiを添加する場合は0.5%以下の範囲で行う。
Caは、MnS系介在物の形態を球状化する作用があり、それによって鋼材の異方性が軽減される。このため、必要に応じてCaを添加することができ、その含有量を0.001%以上とすることが一層効果的である。しかし、多量に添加するとCa系介在物が増加して疲労特性に悪影響を及ぼすので、Caを添加する場合は0.02%以下の範囲で行う。
Moは、焼入れ性と焼戻し軟化抵抗の向上に有効な元素であり、Mn、Crの過剰な添加による靭性劣化を抑えるために補助的に添加することができる。Mo含有量は0.1%以上とすることが効果的であり、0.15%以上とすることが一層効果的である。ただしMoは高価な元素であり多量添加は経済性を損なう。このため、Moを添加する場合は0.5%以下の範囲で行う。
Vは、焼入れ時に結晶粒を微細化する作用があり、靭性向上に有効であるため、必要に応じて添加される。0.1%以上の含有量を確保することが一層効果的である。ただしVも高価な元素であり、多量添加は経済性を損なうので、Vを添加する場合は0.5%以下の範囲で行う。
《鋼管内面の平滑性》
発明者らの詳細な検討によれば、最終的に得られる焼入れ・焼戻し鋼管の疲労特性は、鋼管を製造する前の「素材鋼板」の性状に大きく依存することが明らかになった。すなわち、「素材鋼板」段階で鋼管の内面側になる表面を平滑化しておけば、その素材鋼板に由来する鋼管の疲労特性を改善することが可能になるのである。
具体的には、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRaが0.5μm以下である平滑化表面を少なくとも片面に有する素材鋼板を用意し、その平滑化表面が鋼管の内面になるように溶接造管し、その後、焼入れ・焼戻し処理を施すことによって得られる鋼管において、疲労特性の顕著な改善をもたらす平滑性の高い鋼管内面が形成される。造管後の内面は素材鋼板の表面よりも若干平滑性が低下するが、Raが0.5μm以下であれば造管に起因する内面肌荒れはスタビライザー等の鋼管部材の疲労特性にほとんど悪影響を及ぼさない。
《鋼管の寸法形状》
上記のような、疲労特性の顕著な改善をもたらす平滑性の高い鋼管内面を得るためには、肉厚tと円形断面の管の外径Dの関係にいて、D/t≧4を満たす寸法形状とすることがより好ましい。すなわち、外径の割に肉厚が薄い方が、造管時の加工において生じる内表面の凹凸(肌荒れ)を小さくする上で効果的であり、これが疲労特性の改善に有効となる。この薄肉化はスタビライザー等の鋼管部材の軽量化にもつながる。スタビライザー用途等においては、例えば肉厚tが1〜7mm、管の外径Dが10〜45mmの範囲においてD/t≧4を満たすことが望ましい。
《製造工程》
本発明の疲労特性に優れた鋼管は、上記の成分組成を有する鋼を溶製し、「熱間圧延→スケール除去処理→冷間圧延→焼鈍→造管→焼入れ・焼戻し処理」の工程を経ることによって製造することができる。その際、熱間圧延、冷間圧延、焼鈍、造管焼入れ・焼戻し処理の各工程はそれぞれ以下の[1]〜[5]の条件で行えばよい。
[1]〔熱間圧延〕加熱抽出温度を1100〜1280℃とする。
加熱抽出温度を低くするとスラブ表面の酸化スケール生成量が低減し、熱延板を酸洗した後の表面肌荒れを軽減することができる。種々検討の結果、造管に供する素材鋼板の表面粗さRaを0.5μm以下に平滑化するには加熱抽出温度を1280℃以下とすることが非常に有利となる。ただし、1100℃より低くすると変形抵抗が大きくなり、熱延板表面にクラックが入りやすくなる。この場合も所望の平滑化が困難となる。
また、熱延最終パスのワ―クロールにハイスロールを用いることが望ましい。表面硬度の高いハイスロールで最終パスでの圧下を行うと、熱延板の段階でかなりの平滑効果が得られる。
熱延巻取温度は600℃以下とすることがより好ましい。これにより熱延でのスケール層を薄くすることができ、後工程での平滑化がより行いやすくなる。
得られた熱延板の表面酸化スケールを除去する必要があるが、その手段としては表面の平滑性を劣化させない限り、酸洗や機械的研磨など種々の手法が採用できる。前記[1]の条件に従えば、通常の酸洗により良好な結果が得られる。
[2]〔冷間圧延〕冷間圧延率を25%以上とし、鋼管の内面側となる鋼板表面について、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRaを0.5μm以下とする。
冷間圧延率が25%未満では平滑化の効果が少ない。冷間圧延率が高くなるにしたがって、通常、冷間圧延による平滑化の効果が増大する。また、平滑化には使用する冷間圧延ワークロールの表面性状も影響する。したがって、冷間圧延率25%以上の範囲で、ワークロールの表面性状に応じて圧延率を調整することにより上記表面粗さRaを0.5μm以下にコントロールすることができる。
本発明においては、ロール軸に平行方向の表面粗さRaが0.3μm以下のスムース仕上げワークロールを鋼管の内面側となる鋼板表面に適用することが一層効果的である。このようなワークロールを用いると、比較的圧延率が低い段階から所望の平滑化が達成でき、後述の焼鈍と併せた条件設定の自由度が拡がる。
[3]〔焼鈍〕非酸化性雰囲気中で加熱して、再結晶組織を得る。
素材鋼板は冷間での造管に供されるため、十分に軟化され、良好な加工性を呈する状態とする必要がある。このため、この焼鈍では再結晶組織を得る。ただし、冷間圧延で形成した表面の平滑性を維持するためには、この焼鈍段階でスケールが生成すること自体好ましくなく、またそれを酸洗や機械的手段で除去することは表面凹凸が増大するのでなおさら好ましくない。そこで本発明では、この焼鈍を酸化スケールが発生しにくい非酸化性雰囲気で行う。非酸化性雰囲気としては、70体積%以上の水素−窒素混合ガス、露点−60℃以下の雰囲気や、水素ガス雰囲気が採用できる。これにより、その後の酸化スケール除去工程が不要となる。また、既に所定の平滑化が済んでいるので,研磨仕上げ等に供することなくそのまま造管できる。水素ガス雰囲気の場合は、水素濃度99.99%以上が好適である。
焼鈍温度および時間は、前工程での冷間圧延率に応じて適正な条件が採用される。冷間圧延率が高いものほど一般的には低温、短時間で微細な再結晶組織を得ることができる。鋼の成分組成により最適条件には多少の相違が生じるが、25%以上のトータル冷間圧延率を確保したものだと例えば670〜750℃、10〜40時間の条件が採用できる。
[4]〔造管〕溶接造管により、肉厚t、管の外径Dが、D/t≧4を満たす鋼管を得る。
鋼帯を連続的に成形ロールの間を通して管状に変形させ、相対する端面同士を溶接する一般的な造管方法が採用できる。溶接は高周波溶接またはTIG溶接が適用できる。上述のように、外径の割に肉厚が薄い方が、造管時の加工において生じる内表面の凹凸(肌荒れ)を小さくする上で効果的であり、これが疲労特性の改善に有効となる。そのため、鋼管の寸法形状がD/t≧4を満たすように造管することが望ましい。
[5]〔焼入れ・焼戻し処理〕900〜1100℃で10〜60秒保持した後急冷する焼入れ処理と、280〜380℃で10〜60分保持する焼戻し処理を施す。
この焼入れ・焼戻し処理によって、鋼管長手方向に対して垂直な断面(以下「C断面」ということがある)における肉厚中心部の硬さが400HV以上の強度レベルを維持しながら、疲労寿命を顕著に改善することができる。焼入れ処理時の「急冷」は、マルテンサイト変態が起こるに足る冷却速度であるが、例えば水中に浸漬する「水冷」が採用できる。
その後、用途に応じて鋼管の外表面に硬化処理を施すことができる。例えば通常のショットピーニングなどの手段が採用できる。
表1に示す鋼を溶製し、スラブを1050〜1320℃×60分加熱したのち抽出して熱間圧延を行い、530〜580℃で巻き取った。その際、仕上げ圧延機の各スタンドのワークロールとして通常のグレンロールを使用した例、および硬質なハイスロールを使用した例を設定した。巻取り温度はいずれも530〜580℃の範囲とした。次いで通常の酸洗を行なった。この段階の素材を「熱延まま」と呼ぶ。その後、後述表2に示すように冷間圧延を行わないか(冷延率0%と表示)、あるいは種々の圧延率で冷間圧延を行うことにより、表面粗度を調整した。冷間圧延のワークロールとしてダルロールを使用した例、およびロール軸方向の表面粗さRaが0.3μm以下のスムース仕上げワークロールを使用した例を設定した。熱間圧延率と冷間圧延率の調整により、いずれも板厚4.0mmの冷延鋼板に仕上げた。冷間圧延後に水素雰囲気(H2:99.99%)中、700℃×15時間保持の焼鈍を行って、板厚4.0mmの「素材鋼板」を得た。熱間圧延→冷間圧延→焼鈍の工程を経たものを「冷延・焼鈍材」、冷間圧延を行わず熱間圧延→焼鈍の工程を経たものを「熱延・焼鈍材」と呼ぶ。ここでは、素材鋼板の両面を特に区別無く同様の仕上とした。
素材鋼板の表面について、表面粗さ形状測定器(東京精密株式会社製;1400D−12)を用いて圧延方向に直交する方向(C方向)の表面粗さRaを測定した。測定長さ3mm、カットオフ0.25mm、傾斜補正は最小二乗曲線補正とした。
次に、上記の素材鋼板を用いて外径D=25.4mmの鋼管を高周波溶接による造管で作製した。肉厚t=4.0mmである。表面粗さを測定した面が鋼管の内面となるようにした。
溶接造管後の鋼管(素材鋼管)を長さ1mに切断し、「1000℃×30秒保持→水中へ急冷」の焼入れ処理と、「340℃×45分保持→空冷」の焼戻し処理を施した。その後、鋼管の外表面にショットピーニングによる通常の硬化処理を施した。
各鋼管(電縫管)について鋼管の両端部100mmを掴み、円周方向にねじり応力を付与させる方法で疲労試験を行った。その際、各鋼管の長手方向中央位置の外表面に歪みゲージを貼付し、ねじり応力が700N・mm-2となる条件で疲労試験を実施した。この試験による破断寿命が20万回以上(すなわち2×105回以上)であれば、従来の中空スタビライザー材と比較して疲労寿命が大幅に向上していると認められるので、ここでは、破断寿命が20万回以上のものを○(合格)、それ未満のものを×(不合格)と評価した。なお、100万回(10×105回)を超えた時点で疲労試験を停止した。
結果を表2に示す。
表2からわかるように、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRaが0.5μm以下に平滑化された素材鋼板を用いて、その平滑化表面が鋼管の内面になるように溶接造管した本発明例の鋼管は、いずれも破断寿命が20万回以上であり、自動車用中空スタビライザーとして耐え得る優れた疲労特性を呈した。特に熱延ロールをハイスロール、冷延ロールをスムースロールとしたNo.5およびNo.8は極めて優れた疲労特性を有している。なお、発明例鋼管については造管後の内面のC方向の表面粗さRaがいずれも0.5μm以下に維持されていることを確認している。
これに対し、比較例No.1、No.3、No.4、No.10、No.15はいずれも熱延ままあるいは熱延・焼鈍材を素材鋼板としたものであり、鋼板素材の表面粗さが0.5μmを上回り、疲労寿命が低下した。No.11は熱延抽出温度が高過ぎたことによりスケール層が厚くなり、表面性状が劣化して疲労寿命に劣った。No.12は熱延抽出温度が低過ぎたので熱延鋼板に微小なクラックが生成し、冷延および焼鈍を行ったにもかかわらず表面平滑化は不十分となり、疲労寿命に劣った。No.13は冷延率が22%とやや低かったことにより表面平滑化が不十分となり、疲労寿命が低下した。
参考のため、図1に、本発明例No.5の素材鋼板の圧延方向に垂直な断面(C断面)の金属組織写真(光学顕微鏡写真)を例示する。
本発明例の素材鋼板の圧延方向に垂直な断面(C断面)の光学顕微鏡写真。

Claims (7)

  1. 質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる組成を有し、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRaが0.5μm以下である平滑化表面を少なくとも片面に有する素材鋼板を用いて、その平滑化表面が鋼管の内面となり、肉厚t(mm)および管の外径D(mm)がD/t≧4を満たすように溶接造管したのち焼入れ・焼戻し処理する工程を経て得られる高疲労寿命鋼管。
  2. さらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有する組成を有する請求項1に記載の高疲労寿命鋼管。
  3. 肉厚tが1〜7mm、管の外径Dが10〜45mmであ請求項1または2に記載の高疲労寿命鋼管。
  4. 質量%で、C:0.1〜0.4%、Si:0.5〜1.5%、Mn:0.3〜2%、P:0.02%以下、S:0.01%以下、Cr:0.1〜2%、Ti:0.01〜0.1%、Nb:0.01〜0.1%、Al:0.1%以下、B:0.0005〜0.01%、N:0.01%以下、残部Feおよび不可避的不純物からなる鋼を溶製し、下記[1]の条件で熱間圧延し、スケールを除去したのち下記[2]の条件で冷間圧延し、下記[3]の条件で焼鈍し、下記[4]の条件で造管し、下記[5]の条件で焼入れ・焼戻し処理を施す高疲労寿命鋼管の製造方法。
    [1]〔熱間圧延〕加熱抽出温度を1100〜1280℃とする。
    [2]〔冷間圧延〕冷間圧延率を25%以上とし、鋼管の内面側となる鋼板表面について、鋼管長手方向となる方向に対し直角方向(C方向)の表面粗さRaを0.5μm以下とする。
    [3]〔焼鈍〕非酸化性雰囲気中で加熱して、再結晶組織を得る。
    [4]〔造管〕溶接造管により、肉厚t、管の外径Dが、D/t≧4を満たす鋼管を得る。
    [5]〔焼入れ・焼戻し処理〕900〜1100℃で10〜60秒保持した後急冷する焼入れ処理と、280〜380℃で10〜60分保持する焼戻し処理を施す。
  5. 前記鋼は、さらにNi:0.5%以下、Ca:0.02%以下、Mo:0.5%以下、V:0.5%以下の1種以上を含有するものである請求項4に記載の高疲労寿命鋼管の製造方法。
  6. 前記[1]の熱間圧延において、熱延最終パスでワークロールとしてハイスロールを鋼管の内面側となる鋼板表面に適用する、請求項4または5に記載の高疲労寿命鋼管の製造方法。
  7. 前記[2]の冷間圧延において、ロール軸に平行方向の表面粗さRaが0.3μm以下のスムース仕上げワークロールを鋼管の内面側となる鋼板表面に適用する、請求項4〜6のいずれかに記載の高疲労寿命鋼管の製造方法。
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