JP5126844B2 - 熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法 - Google Patents

熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法 Download PDF

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本発明は、熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法、特に、熱間プレスに供する前の状態において、良好な加工性、鋼板平坦矯正性およびブランク加工性を有しながら、熱間プレス時の焼き入れ性に優れた熱間プレス用鋼板およびその製造方法ならびに熱間プレス鋼板部材の製造方法に関する。
近年、自動車の軽量化のため、鋼材の高強度化を図り、使用重量を減ずることが推進されている。自動車に広く使用される鋼板においては、鋼板強度の増加に伴って、プレス成形性が低下し、複雑な形状を製造することが困難になってきている。具体的には、延性が低下し加工度が高い部位で破断が生じる、スプリングバックや壁反りが大きくなり寸法精度が劣化するという問題が発生する。従って、高強度、特に引張強度が780MPa級以上の鋼板を用いて、プレス成形により部品を製造することは容易ではない。プレス成形ではなくロール成形によれば、高強度の鋼板の加工が可能であるが、長手方向に一様な断面を有する部品にしか適用できない。
これらを克服する近年の技術としては、特許文献1で開示されているように、加熱した鋼板をプレス成形する熱間プレスと呼ばれる方法が実用化されている。熱間プレスは、鋼板を高温に加熱した後の軟質で高延性の状態でプレス加工を施すため、複雑な形状を寸法精度よく成形することが可能である。さらに、鋼板をオーステナイト域に加熱しておき、金型内で急冷(焼入れ)することにより、引張強度1300MPa以上の高強度化を同時に達成することができる。また、熱間プレスにより製造された鋼板部材は、従来の冷間プレスでつくられた同強度の鋼板部材に比して耐遅れ破壊性に優れているという利点も有している。
一方、熱間プレスにより得られる熱間プレス鋼板部材は、適用される部品の範囲が拡大しつつあり、自動車用途としては、センターピラー部の補強材のような複雑な形状を有する部品にも適用されるようになってきている。このため、熱間プレス鋼板部材に求められる寸法精度も厳しくなっている。このような課題に対応すべく、特許文献2には、熱間プレス前に予め加工を施し、その後、熱間プレスする方法が提案されている。
特開2004−353026号公報 特開平10−96031号公報
上述したように、熱間プレスは優れた技術であるが、次のような課題を有している。
すなわち、熱間プレス後において1300MPa以上の引張強度を確保するためには、熱間プレスに供する熱間プレス用鋼板に、焼き入れ後の強度を確保するために多量のCを含有させ、焼き入れ性を確保するために多量のMnやCrを含有させ、靭性を確保するためにBを含有させるなど、多量の合金元素の含有が必要となってくる。さらに、不純物として存在するNなどの悪影響を無害化するためにTiなどの含有が必要となってくる。これらの合金元素の多量含有により、熱間プレスに供する熱間プレス鋼板の引張強度(TS)、降伏点(YP)が上昇し、鋼板の平坦性が劣化したり、ブランク加工時においてシャー刃の摩耗が大きくなったり、ランクフォード値(r値)や曲げ加工性が低下したりするなどの問題が発生する。
また、特許文献2に開示されている熱間プレス用鋼板および熱間プレスは優れた技術であるが、熱間プレス前の鋼板の強度を下げるために、熱間プレス鋼板について、焼き入れ元素、特にMnの含有量を低くしている。焼き入れ元素の含有量の減少は、焼き入れ性を低下させ、冷却設備の増強を必要とする場合がある。また、安定した焼き入れ性を得ることが困難となり、熱間プレスにより得られる熱間プレス鋼板部材に硬度ばらつきが生じ、この硬度ばらつきが、熱間プレス鋼板部材の靭性を低下させる場合もある。したがって、生産性や品質の安定性を考慮すると、焼き入れ性を向上させるためMnなどの焼き入れ元素の含有量を低減させない対応を取ることが好ましい。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、自動車や各種の産業機械に用いられる1300MPa以上の引張強度を有する熱間プレス鋼板部材の素材である熱間プレス用鋼板として、特に熱間プレスに供する前の状態において、良好な加工性、鋼板平坦矯正性およびブランク加工性を有しながら、熱間プレス時の焼き入れ性に優れた熱間プレス用鋼板およびその製造方法を提供すること、さらには、その鋼板を用いた熱間プレス鋼板部材の製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、以下の知見を得た。
(a)焼入れ性向上元素の含有量を低減させずに熱間プレス用鋼板の軟質化を図るには、硬質な低温変態生成相を含有しない組織とすること、すなわち、フェライトとセメンタイトとからなる鋼組織とすることが必要である。
(b)しかし、熱間プレス用鋼板の軟質化を図るには、上記鋼組織とするだけでは足りず、さらにセメンタイトに占める球状化セメンタイトの割合を高める必要がある。非球状化セメンタイトは熱間プレス用鋼板を硬質化させる作用を有するからである。
(c)ここで、セメンタイトの球状化には、高温・長時間の焼鈍が有効であることが知られている。しかし、安易に高温・長時間の焼鈍を施したのでは、熱間プレス用鋼板の軟質化を達成できるものの、本来必要とされる焼入れ性の低下を招くことがある。
(d)すなわち、熱間プレスは、熱間プレスに供する熱間プレス用鋼板を加熱して鋼中の炭化物を固溶させることにより、その後の熱間プレスにおける焼入れ性を確保するものであるが、上記加熱は、オーステナイトの粗大化に起因する熱間プレス鋼板部材の靭性劣化を抑制するために短時間で行われるので、高温・長時間の焼鈍の焼鈍により球状化セメンタイトが粗大となると、熱間プレスに供する際の加熱工程において、セメンタイトの固溶が十分に促進しなくなるのである。
(e)したがって、セメンタイトに占める球状化セメンタイトの割合を高めるとともに、球状化セメンタイトが過度に粗大とならないようにする必要がある。
本発明は上記知見に基づいてなされたものである。
以上の知見に基づき完成された本発明は次のとおりである。
(1)質量%で、C:0.18〜0.25%、Si:0.02〜0.3%、Mn:1.0〜2.0%、Cr:0.5%以下、B:0.0003〜0.0030%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.01〜0.06%およびN:0.006%以下を含有し、さらに下記式(1)を満足するTiを含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(2)を満足する化学組成を有し、フェライトとセメンタイトとからなるとともに、前記セメンタイトの60面積%以上が球状化セメンタイトであり、前記球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm以下である鋼組織を有し、圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、かつ限界曲げ半径≦0.5t(t:板厚)であり、さらに平均r値が0.80以上である機械特性を有することを特徴とする熱間プレス用鋼板。
0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04 (1)
Mn+Cr≦2.0 (2)
ここで、式(1)および(2)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
また、限界曲げ半径とは、板厚の3倍(3t)〜密着まで0.5tピッチで曲げ試験(JIS Z2248 押曲げ法 準拠)を実施したときの、曲げ部に目視で割れが認められない最小の板厚をいう。
平均r値は、圧延方向のr値(r0°値)、圧延方向と45°をなす方向のr値(r45°値)、圧延方向と直行する方向のr値(r90°値)を用いて、次式(6)で表される。
平均r値=(r0°値+2×r45°値+r90°値)/4 (6)
(2)前記化学組成が、Feの一部に代えて、Nb:0.03質量%以下を含有することを特徴とする上記(1)に記載の熱間プレス用鋼板。
(3)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有するとともに、下記式(3)を満足することを特徴とする上記(1)または(2)に記載の熱間プレス用鋼板。
Mn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0 (3)
ここで、式(3)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
(4)前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.005%以下およびCa:0.005%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板。
(5)下記工程(A)〜(F)を備えることを特徴とする熱間プレス用鋼板の製造方法:
(A)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の化学組成を含有するスラブを1200℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
(B)前記粗バーを1080℃以上として仕上熱間圧延を施し、かつ850℃超980℃以下で仕上熱間圧延を完了し、熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
(C)前記熱間圧延鋼板に、前記仕上熱間圧延完了後に70℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して、700℃超850℃以下で巻き取る冷却・巻取り工程;
(D)前記冷却・巻取り工程後の熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
(E)前記酸洗鋼板に冷圧率20%以上50%未満の冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;および
(F)前記冷間圧延鋼板を590℃〜760℃の温度域で0.5〜20時間焼鈍し、その後600℃/時以下の冷却速度で室温まで冷却する焼鈍工程。
(6)上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板を850〜1000℃の温度域に3分間以上保持し、当該保持終了後30秒間以内に700℃以上の温度域でプレスを施し、10℃/秒以上の冷却速度で350℃未満の温度域まで冷却することを特徴とする熱間プレス鋼板部材の製造方法。
本発明の熱間プレス用鋼板は、軟質化であるとともに安定した焼入れ性を有しているため、熱間プレス鋼板部材の素材として最適である。特に、熱間プレスに供する前に冷間プレスを施す用途に用いられると、その機能を効果的に発揮することが可能である。したがって、自動車や各種の産業機械に用いられる構造部材の素材、特に自動車の複雑な構造部材の素材として使用されることが特に好ましい。また、安価に製造できるので産業上格段の効果を奏する。
本発明に係る鋼板の化学組成、鋼組織、および機械特性、ならびに鋼板の製造方法およびその鋼板を用いる熱間プレス鋼板部材の製造方法について詳述する。なお、本明細書における鋼の化学組成を表す「%」は、特に断りのない場合には「質量%」を意味する。
1.化学組成
(1)C:0.18〜0.25%、
熱間プレスは、素材となる熱間プレス用鋼板を加熱することで軟質化させ、プレス成形を容易にすることが特徴の一つであるが、あわせて、プレス金型等で急冷することで鋼を焼き入れし、より高強度の成形品である熱間プレス鋼板部材を得ることも特徴である。鋼の焼き入れ後の強度は主にC含有量によって決定されるため、熱間プレス鋼板部材に要求される強度に応じてC含有量を設定する。C含有量が0.18%未満では、本発明が目的とする熱間プレス鋼板部材の引張強度を1300MPa以上とすることが困難となる。したがって、C含有量を0.18%以上とする。一方、C含有量が0.25%超では、熱間プレスに供する熱間プレス用鋼板が硬質となり、良好な深絞り性、曲げ加工性、鋼板平坦矯正性およびブランク加工性を確保することが困難となる。したがって、C含有量を0.25%以下とする。好ましいC含有量は0.20%〜0.23%であり、このようにすることにより、引張強度1400MPa以上で靭性劣化の少ない熱間プレス鋼板部材を安定して得ることができる。
(2)Si:0.02〜0.3%
Siは、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに有効な元素である。Si含有量が0.02%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、Si含有量を0.02%以上とする。好ましくは0.1%以上である。一方、Si含有量が0.3%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Si含有量を0.3%以下とする。
(3)Mn:1.0〜2.0%、
Mnは、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに非常に有効な元素である。Mn含有量を1.0%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、Mn含有量を1.0%以上とする。好ましくは1.1%以上である。一方、Mn含有量が2.0%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Mn含有量を2.0%以下とする。好ましくは1.6%以下である。
(4)Cr:0.5%以下
Crは、不純物として鋼中に含有される元素であるが、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに非常に有効な元素でもある。したがって、積極的に含有させてもよい。しかし、Cr含有量が0.5%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Cr含有量を0.5%以下とする。好ましくは0.4%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Cr含有量を0.1%以上とすることが好ましい。
(5)B:0.0003〜0.0030%
Bは、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに非常に有効な元素である。B含有量が0.0003%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、B含有量を0.0003%以上とする。好ましくは0.0005%以上である。一方、B含有量が0.0030%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、B含有量を0.0030%以下とする。好ましくは0.0025%以下である。
(6)P:0.025%以下
Pは、不純物として鋼中に含有される元素であるが、熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに有効な元素でもある。したがって、積極的に含有させてもよい。しかし、P含有量が0.025%を超えると、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となるとともに熱間プレス鋼板部材の靭性が劣化する。したがって、P含有量を0.025%以下とする。好ましくは0.020%以下である。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、P含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
(7)S:0.004%以下
Sは、不純物として鋼中に含有され、鋼中に硫化物を形成することにより熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させる。したがって、S含有量は少ないほど好ましく、本発明においては0.004%以下とする。好ましくは0.0020%以下である。S含有量の下限は特に規定する必要はない。しかし、S含有量の過剰な低減は著しいコスト増を招く。したがって、S含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
(8)Al:0.01〜0.06%
Alは、製鋼工程において脱酸材として添加され、鋼材を健全化する作用を有する。Al含有量が0.01%未満では、上記作用による効果を十分に得ることが困難となる。したがって、Al含有量を0.01%以上とする。好ましくは0.02%以上である。一方、Al含有量が0.06%を超えると、鋼中に多量の酸化物を形成して熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させる。したがって、Al含有量を0.06%以下とする。好ましくは0.05%以下である。
(9)N:0.006%以下
Nは、不純物として鋼中に含有され、鋼中にTiN、BN、AlNなどの窒化物を形成することにより熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させる。したがって、N含有量は少ないほど好ましく、本発明においては0.006%以下とする。好ましくは0.0020%以下である。N含有量の下限は特に規定する必要はない。しかし、N含有量の過剰な低減は著しいコスト増を招く。したがって、N含有量を0.0003%以上とすることが好ましい。さらに好ましくは0.0005%以上である。
(10)Mn+Cr≦2.0
上述したように、MnとCrはともに熱間プレス用鋼板を硬質にする作用を有するので、MnとCrの合計含有量が2.0%超であると熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、MnおよびCrの含有量を、下記式(2)を満足させるようにする。
Mn+Cr≦2.0 (2)
ここで、式(2)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
(11)0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04
上述したBによる作用効果は固溶状態にあるBによってもたらされるため、また、鋼中におけるBNやAlNの形成は熱間プレス鋼板部材の靭性を劣化させるため、鋼中におけるBNやAlNの形成を抑制する必要がある。Tiは、BおよびAlよりも窒化物形成能が高いので、Tiを十分に含有させることにより鋼中におけるBNやAlNの形成を抑制することが可能となる。Tiは、鋼中のNおよびSと結合してTiNおよびTiSを形成するので、これらを考慮してTi含有量を下記式(4)を満足させるようにする。
0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S (4)
ここで、式(4)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
一方、Ti含有量が過剰であると、Tiが鋼中のCと結合してTiCを多量に形成してしまうので、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Ti含有量を下記式(5)を満足させるようにする。
Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04 (5)
ここで、式(5)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
(12)Nb:0.03%以下
Nbは、熱間プレスに際しての熱間プレス用鋼板の加熱時におけるオーステナイトの粒成長を抑制し、熱間プレス鋼板部材の旧オーステナイト粒径を細粒化することにより、熱間プレス鋼板部材の靭性を向上させる作用を有する。したがって、積極的に含有させてもよい。しかし、Nb含有量が0.03%を超えると熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Nb含有量を0.03%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、Nb含有量を0.005%以上とすることが好ましい。
(13)Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上をMn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0
Mo、CuおよびNiは、いずれも熱間プレス用鋼板の焼入れ性を高め、かつ熱間プレス鋼板部材の強度を安定して確保するのに有効な元素である。したがって、これらの元素から選ばれる1種または2種以上を積極的に含有させてもよい。しかし、それぞれ0.5%を超えて含有させても上記作用による効果は飽和してしまい、徒にコストの増加を招くのみである。したがって、Mo、CuおよびNiの含有量を、それぞれ0.5%以下とする。
一方、これらの元素はMnおよびCrと同様に熱間プレス用鋼板を硬質にする作用を有するので、MnとCrとこれらの元素の合計含有量が2.0%超であると熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、Mn、Crおよびこれらの元素の含有量を下記式(3)を満足させるようにする。
Mn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0 (3)
(14)REM:0.1%以下、Mg:0.005%以下およびCa:0.005%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上
REM(希土類元素)、MgおよびCaは、いずれも鋼中の介在物の形態を微細化する作用を有し、介在物による熱間プレス時の割れを防止するのに有効な元素である。したがって、これらの元素から選ばれる1種または2種以上を積極的に含有させてもよい。しかし、REMについては0.1%を超えて、MgおよびCaについては0.5%を超えてそれぞれ含有させても上記作用による効果は飽和してしまい、徒にコストの増加を招くのみである。したがって、REMの含有量は0.1%以下、MgおよびCaの含有量をそれぞれ0.005%以下とする。なお、上記作用による効果をより確実に得るには、これらの元素の合計含有量を0.0005%以上とすることが好ましく、いずれかの元素の含有量を0.0005%以上とすることがさらに好ましい。
2.鋼組織
本発明に係る熱間プレス用鋼板の鋼組織は、フェライトとセメンタイトとからなるとともに、前記セメンタイトの60面積%以上が球状化セメンタイトであり、前記球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm以下とする。
ここで、球状化セメンタイトとは、アスペクト比が3.0未満で粒径が0.1μm以上のセメンタイトである。そして、アスペクト比は、個々のセメンタイトについて長径をもとめ、その長径の方向に直角な方向の径を短径とした場合における、長径/短径の比である。また、球状化セメンタイトの平均粒径は、画像解析にて個々の球状化セメンタイトの面積を求め、それらの面積を有する真円の直径値の平均値として求められる。なお、球状化セメンタイトを粒径が0.1μm以上のセメンタイトとするのは、後述するように球状化セメンタイトの粒径の規定が熱間プレスにおける焼入れ性確保を目的とするものであるところ、0.1μm未満の粒径の球状化セメンタイトは熱間プレスに供する際の加熱工程においてオーステナイト中に速やかに固溶して分散するため、焼入れ性を損なうことがなく、したがって、規定する必要がないからである。
鋼組織がフェライトおよびセメンタイト以外の相や組織を含有したり、セメンタイトに占める球状化セメンタイトの面積割合が60%未満であったりすると、熱間プレス用鋼板が硬質化してしまい、JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPaとすることが困難となる。したがって、鋼組織はフェライトおよびセメンタイトの2相からなるものとし、さらにセメンタイトに占める球状化セメンタイトの面積割合を60%以上とする。なお、本発明に係る熱間プレス用鋼板は低温変態生成相を含有しないため、フェライトおよびセメンタイトの個々の面積率は化学組成によって自ずと決定されるので規定する必要はない。
また、球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm超では、熱間プレスに供する際の加熱工程においてオーステナイト中にCを均一に分散させることが困難となり、熱間プレス鋼板部材の引張強度を1300MPa以上とすることが困難となる。オーステナイト中へのCの均一分散を促進させるには、高温または長時間の加熱を施せばよいが、そのようにするとオーステナイトの粗大化が顕著となり、熱間プレス鋼板部材の靭性の劣化を招く。したがって、球状化セメンタイトの平均粒径は1.0μm以下とする。なお、セメンタイトのうち球状化セメンタイトでないものは、球状化セメンタイトに比して微細であり、熱間プレスに供する際の加熱工程においてオーステナイト中に速やかに固溶して均一分散するので、これらの粒径を規定する必要はない。
3.機械特性
本発明に係る熱間プレス用鋼板は、機械特性として、JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、かつ限界曲げ半径≦0.5t(t:板厚)であり、さらに平均r値が0.8以上であることを備える。
JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のいずれかにおいて、TS>540MPaまたはYP>320MPaとなるものが存在すると、熱間プレス用鋼板の平坦矯正が困難となり、ブランキング加工時のシャー刃の摩耗も激しくなり、シャー刃の寿命が短くなる。したがって、JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPaかつYP≦320MPaとする。
また、JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のいずれかにおいて、El<26%もしくは限界曲げ半径>0.5tとなるものが存在すると、または、平均r値が0.8未満であると、熱間プレスに供する前に、熱間プレス用鋼板に冷間プレスにより絞り加工や曲げ加工といった予成形を施す場合において、加工割れが生じたり複雑な形状への予成形が困難になったりする。したがって、JIS5号試験片における圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、El≧26%かつ限界曲げ半径≦0.5tとし、さらに平均r値を0.8以上とする。
ここで、限界曲げ半径とは、板厚の3倍(3t)〜密着まで0.5tピッチで曲げ試験(JIS Z2248 押曲げ法 準拠)を実施したときの、曲げ部に目視で割れが認められない最小の板厚をいう。
また、平均r値は、圧延方向のr値(r0°値)、圧延方向と45°をなす方向のr値(r45°値)、圧延方向と直行する方向のr値(r90°値)を用いて、次式(6)で表される。
平均r値=(r0°値+2×r45°値+r90°値)/4 (6)
4.鋼板の製造方法
本発明に係る熱間プレス用鋼板は、上記の化学組成、鋼組織、および機械特性を有するのであれば、いかなる製造方法により製造されてもよいが、次の製造方法を採用することにより、本発明に係る鋼板を効率的かつ安定に製造することが実現される。
(1)粗熱間圧延に供するスラブの温度:1200℃以上
粗熱間圧延に供するスラブ温度が1200℃未満では、仕上熱間圧延前のオーステナイトが細粒となり、その結果、巻取後のフェライトも細粒となり、熱間圧延鋼板の強度が高くなる。熱間圧延鋼板の強度が高くなると、その後に冷間圧延および焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度も高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、粗熱間圧延に供するスラブの温度は1200℃以上とする。
粗熱間圧延に供するスラブ温度の上限は特に規定する必要はないが、過度に高温となると生産性が低下するので、1350℃以下とすることが好ましい。
(2)仕上熱間圧延に供する粗バーの温度:1080℃以上
仕上熱間圧延に供する粗バーの温度が1080℃未満では、仕上熱間圧延前のオーステナイトが細粒となり、上述した粗熱間圧延に供するスラブ温度が1200℃未満である場合と同様の問題が生じる。したがって、仕上熱間圧延に供する粗バーの温度を1080℃以上とする。
仕上熱間圧延に供する粗バーの温度の上限は特に規定する必要はないが、過度に高温となると厚いスケールが生成して表面疵を誘発する場合があるので、1250℃以下とすることが好ましい。
(3)仕上温度:850℃超980℃以下
仕上温度が850℃以下では、巻取後のフェライトが細粒となり、上述した粗熱間圧延に供するスラブ温度が1200℃未満である場合と同様の問題が生じる。したがって、仕上温度は850℃超とする。
一方、仕上温度が980℃超では、スケール生成が顕著となり、その後の工程においてスケール噛み込みによる表面疵が発生する可能性が高くなる。したがって、仕上温度は980℃以下とする。
(4)巻取温度:700℃超850℃以下
巻取温度が700℃以下では、フェライトの粒成長が不十分となり、さらにTiCやTi−Nb−Cといった析出物が微細に分散するため、熱間圧延鋼板の強度が高くなる。熱間圧延鋼板の強度が高くなると、その後に冷間圧延および焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度も高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、巻取温度は700℃超とする。
一方、巻取温度が850℃超では、巻取後のスケール生成が顕著となり、その後の工程においてスケール噛み込みによる表面疵が発生する可能性が高くなる。したがって、巻取温度は850℃以下とする。
(5)仕上熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度:70℃/秒以下
仕上熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度が70℃/秒超では、硬質相の生成が促進され、熱間圧延鋼板の強度が高くなる。熱間圧延鋼板の強度が高くなると、その後に冷間圧延および焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度も高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、仕上熱間圧延完了から巻取りまでの平均冷却速度は70℃/秒以下とする。仕上熱間圧延完了から巻取りまでの冷却は、水冷、空冷およびガス冷のいずれであっても構わない。平均冷却速度の下限は特に限定する必要はないが、生産性の観点から5℃/秒以上とすることが好ましい。
(6)酸洗
熱間圧延工程により得られた熱延鋼板には、表面に形成されたスケールを除去するために酸洗が施される。酸洗は常法で構わない。
(7)冷圧率(冷間圧延での圧下率):20%以上50%未満
酸洗工程により得られた酸洗鋼板には冷間圧延が施されるが、このときの冷圧率が20%未満では、冷圧率が低すぎるために板幅方向や長手方向の板厚の変動が大きくなる。板厚の変動が大きいと、熱間プレス時の変形態様が不均一となって寸法精度が低下したり、金型との接触が不均一となって焼入れの程度に変動が生じ、硬度分布が大きくなる場合がある。したがって、冷圧率は20%以上とする。
一方、冷圧率が50%以上では、フェライト粒の展伸の程度が大きくなり、その後に焼鈍を施して得られる熱間プレス用鋼板の強度が高くなり、軟質化することが困難となる。したがって、冷圧率は50%未満とする。
(8)焼鈍温度:590〜760℃
焼鈍温度が590℃未満では、フェライトの再結晶が不十分となり、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、焼鈍温度は590℃以上とする。一方、焼鈍温度が760℃超では、球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm超となってしまい、熱間プレスに供する際の加熱工程においてオーステナイト中にCを均一に分散させることが困難となり、熱間プレス鋼板部材の引張強度を1300MPa以上とすることが困難となる場合がある。したがって、焼鈍温度は760℃以下とする。
(9)焼鈍時間:0.5〜20時間
焼鈍時間が0.5時間未満では、セメンタイトに占める球状化セメンタイトの面積割合を60%以上とすることが困難となり、熱間プレス用鋼板の軟質化が困難となる。したがって、焼鈍時間は0.5時間以上とする。
一方、焼鈍時間が20時間超では、球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm超となってしまい、熱間プレスに供する際の加熱工程においてオーステナイト中にCを均一に分散させることが困難となり、このため熱間プレス鋼板部材の引張強度を1300MPa以上とすることが困難となる場合がある。したがって、焼鈍時間は20時間以下とする。
(10)焼鈍後室温まで冷却する際の平均冷却速度:600℃/時以下
焼鈍後室温まで冷却する際の平均冷却速度が600℃/時超では、冷却速度が速すぎるため熱間プレス用鋼板が硬質となり、軟質化が困難となる。したがって、焼鈍後室温まで冷却する際の平均冷却速度は600℃/時以下とする。本発明は低温変態相を含有させるものではないので、平均冷却速度の下限は特に限定する必要はないが、通常5℃/時以上である。
なお、上記焼鈍が終了した鋼板をもって本発明に係る熱間プレス用鋼板としてもよいが、上記焼鈍が終了した鋼板に対して、表面に電気めっき層や溶融めっき層を施したものを本発明に係る熱間プレス用鋼板としてもよい。あるいは、次に説明する熱間プレス鋼板部材の製造時に発生する可能性のあるスケールを抑制するため、および/または熱間プレス時の形状加工を容易にするために、金属、有機物もしくは無機物もしくはこれらの複合化合物またはこれらの混合物からなる被覆層を表面に形成したものを本発明に係る熱間プレス用鋼板としてもよい。
5.熱間プレス鋼板部材の製造方法
上記の本発明に係る熱間プレス用鋼板、好ましくは上記の製造方法により得られた熱間プレス用鋼板を、次の方法で熱間プレスすることによって、本発明に係る熱間プレス鋼板部材が得られる。
(1)加熱条件:850〜1000℃の温度域に3分間以上保持
上記熱間プレス用鋼板を熱間プレスに供する際にオーステナイト単相状態となるように加熱を施す。
このときの加熱温度が850℃未満では、鋼板中のセメンタイトの固溶が不十分となり、熱間プレス鋼板部材の強度1300MPa未満となる場合がある。したがって、加熱温度は850℃以上とする。一方、加熱温度が1000℃超では、オーステナイトの粒成長が著しくなり、熱間プレス鋼板部材の靭性が著しく劣化する。したがって、加熱温度は1000℃以下とする。
また、加熱時間が3分間未満では、鋼板中のセメンタイトの固溶が不十分となり、熱間プレス鋼板部材の強度1300MPa未満となる場合がある。したがって、加熱時間は3分間以上とする。加熱時間の上限は通常の設備であれば規定する必要はないが、加熱時間が過度に長時間となるとオーステナイトの粒成長が進行し、熱間プレス鋼板部材の靭性が劣化する場合があるので、20分間以下とすることが好ましい。
(2)熱間プレス条件:700℃以上の温度でプレスを施し、10℃/秒以上の冷却速度で350℃未満の温度域まで冷却
熱間プレスを施す温度が700℃未満であったり、冷却速度が10℃/秒未満であったりすると、熱間プレスの途中やその後の冷却過程においてフェライトが生成し始めるため、熱間プレス鋼板部材の強度を1300MPa以上とすることが困難となる。また、冷却を350℃以上の温度で停止してしまったのでは、マルテンサイト以外の相や組織が生成してしまい、熱間プレス鋼板部材の強度を1300MPa以上とすることが困難となる。したがって、700℃以上の温度で熱間プレスを施し、10℃/秒以上の冷却速度で350℃未満の温度域まで冷却する。
本発明を,実施例を参照しながらより具体的に説明する。
1.熱間プレス鋼板部材の製造
表1に示す化学組成を有する鋼を試験転炉で溶製し、試験連続鋳造機にて連続鋳造を実施し、スラブとした。その後、試験熱間圧延機にて、得られたスラブを表2に示す条件にて、加熱した後、熱間圧延を実施した。熱延鋼板の板厚は、4.1〜2.4mmの範囲で実施した。その後、ラボにて酸洗を行い、試験冷間圧延機で冷圧率を変更し板厚2.0mm冷延鋼板とした。冷延鋼板はその後、焼鈍試験装置にて焼鈍を実施した。冷間圧延および焼鈍条件を表2に併せて示す。得られた冷延鋼板を300mm角に切り出し、平板の熱間プレス試験装置を用いて、熱間プレスを行い、熱間プレス鋼板部材を得た。このときの熱間プレスは、供試材を900℃に4分間保持し、保持終了後3秒後に850℃の温度でプレスを施し、50℃/秒で100℃まで冷却する条件で行った。
Figure 0005126844
Figure 0005126844
なお、各表における下線が付された数値等は、その数値等が本発明の規定の範囲外であることを意味している。
2.熱間プレス鋼板部材の評価方法
焼鈍後の熱間プレス用鋼板および熱間プレスを施して得られた熱間プレス鋼板部材について以下の試験を行った。
(1)熱間プレス用鋼板の評価
(A)鋼組織
鋼板の圧延方向に平行な断面について、ナイタールエッチングを施し、走査型電子顕微鏡を用いて、5000倍の倍率で20視野の鋼組織を観察した。球状化セメンタイトは、アスペクト比が3.0未満で大きさ0.1μm以上のセメンタイトとして、全セメンタイトに占める面積割合と平均粒径を求めた。球状化セメンタイトの平均粒径は、ドットによる画像解析にて個々の球状化セメンタイトの面積を求め、そこから得られた面積を有する真円の直径を求めて、これらを平均化することにより求めた。セメンタイトのアスペクト比は、個々のセメンタイトの形状から長径を求め、その長径に直角な方向の径を短径とし、長径/短径の比として求めた。
(B)機械特性
得られた鋼板に対して、引張試験および限界曲げ試験を実施した。
(a)引張試験
各鋼板の圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向からJIS5号引張試験を採取し、JISZ2241に準じて引張試験を行い、降伏点YP、引張強さTS、全伸びElおよびr値を測定した。また、上記3方向のr値から平均r値を求めた。
平均r値は、圧延方向のr値(r0°値)、圧延方向と45°をなす方向のr値(r45°値)、圧延方向と直行する方向のr値(r90°値)を用いて、上記式(6)により求めた。
(b)限界曲げ試験
各鋼板の圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向から、300L×30Wの曲げ試験片を採取し、板厚の3倍(3t)〜密着まで0.5tピッチ(t:板厚)で、JISZ2248に記載されている方法に準拠して曲げ試験を実施した。そして、鋼板の曲げ部に目視で割れが認められない最小の板厚を限界曲げ半径とした。ただし、密着状態でも割れが認められない場合には「密着」とした。なお、評価にあたっては、3方向の限界曲げ試験のうち最も劣った結果をその鋼板の限界曲げ半径とした。
(2)熱間プレス鋼板部材の評価
(A)機械特性
(a)引張試験
熱間プレス後の熱間プレス鋼板部材について、上記熱間プレス用鋼板の場合と同様に引張試験を行い、引張強度を求めた。
(b)シャルピー衝撃試験
熱間プレス鋼板部材からシャルピー試験片を切り出してシャルピー衝撃試験を実施した。
試験片は、5枚を重ね合わせてビス止めをして板厚10mmとしたものであり、試験片形状は、JISZ2202に記載されているVノッチシャルピー試験片とした。試験方法は、JISZ2242に記載されている方法に準じ、−120℃温度における吸収エネルギーを調査した。
3.熱間プレス鋼板部材の評価結果
評価結果を表3に示す。
Figure 0005126844
(1)本発明例
本発明である供試材No.1〜15は、圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、限界曲げ半径≦0.5tであり、かつ平均r値が0.80以上であり、加工性に優れている。
(2)比較例
供試材No.16は、スラブ加熱温度が1180℃と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.17は、仕上熱間圧延前の粗バーの温度が1070℃と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.18は、仕上温度が840℃と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.19は、仕上熱間圧延後の平均冷却速度が75℃/秒と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.20は、巻取温度が690℃と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.21は、冷間圧延時の冷圧率が51.2%と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.22は、焼鈍温度が580℃と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.23および26は、焼鈍温度が770℃と本発明外であった。そのため、球状化セメンタイトの平均粒径が本発明外となった。そのため、熱間プレス鋼板部材の引張強度が1300MPa未満となりシャルピー吸収エネルギーが劣化した。
供試材No.24は、焼鈍時間が0.4時間と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.25は、焼鈍時間が21時間と本発明外であった。そのため、熱間プレス鋼板部材の引張強度が1300MPa未満となりシャルピー吸収エネルギーが劣化した。
供試材No.27は、焼鈍後の冷却速度が640℃/時と本発明外であった。そのためセメンタイトではなくパーライトが生成し、熱間プレス用鋼板が硬質となった。したがってTSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。
供試材No.28は、C含有量が0.27%と本発明外であった。そのため、熱間プレス用鋼板が硬質となり、TSおよびYPが高く、Elおよび平均r値が低く、曲げ性に劣っていた。

Claims (6)

  1. 質量%で、C:0.18〜0.25%、Si:0.02〜0.3%、Mn:1.0〜2.0%、Cr:0.5%以下、B:0.0003〜0.0030%、P:0.025%以下、S:0.004%以下、Al:0.01〜0.06%およびN:0.006%以下を含有し、さらに下記式(1)を満足するTiを含有し、残部がFeおよび不純物からなるとともに、下記式(2)を満足する化学組成を有し、
    フェライトとセメンタイトとからなるとともに、前記セメンタイトの60面積%以上が球状化セメンタイトであり、前記球状化セメンタイトの平均粒径が1.0μm以下である鋼組織を有し、
    圧延方向に対して0°方向、45°方向および90°方向のすべてにおいて、TS≦540MPa、YP≦320MPa、El≧26%、かつ限界曲げ半径≦0.5t(t:板厚)であり、さらに平均r値が0.80以上である機械特性を有することを特徴とする熱間プレス用鋼板。
    0.002≦Ti−(48/14)N−(48/32)S≦0.04 (1)
    Mn+Cr≦2.0 (2)
    ここで、式(1)および(2)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
  2. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、Nb:0.03質量%以下を含有することを特徴とする請求項1に記載の熱間プレス用鋼板。
  3. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.5%以下、Cu:0.5%以下およびNi:0.5%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有するとともに、下記式(3)を満足することを特徴とする請求項1または2に記載の熱間プレス用鋼板。
    Mn+Cr+Mo+Cu+Ni≦2.0 (3)
    ここで、式(3)における元素記号は各元素の含有量(単位:質量%)を示す。
  4. 前記化学組成が、Feの一部に代えて、質量%で、REM:0.1%以下、Mg:0.005%以下およびCa:0.005%以下からなる群から選ばれた1種または2種以上を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板。
  5. 下記工程(A)〜(F)を備えることを特徴とする熱間プレス用鋼板の製造方法:
    (A)請求項1〜4のいずれかに記載の化学組成を含有するスラブを1200℃以上として粗熱間圧延を施して粗バーとする粗熱間圧延工程;
    (B)前記粗バーを1080℃以上として仕上熱間圧延を施し、かつ850℃超980℃以下で仕上熱間圧延を完了し、熱間圧延鋼板とする仕上熱間圧延工程;
    (C)前記熱間圧延鋼板に、前記仕上熱間圧延完了後に70℃/秒以下の平均冷却速度で冷却して、700℃超850℃以下で巻き取る冷却・巻取り工程;
    (D)前記冷却・巻取り工程後の熱間圧延鋼板に酸洗を施して酸洗鋼板とする酸洗工程;
    (E)前記酸洗鋼板に冷圧率20%以上50%未満の冷間圧延を施して冷間圧延鋼板とする冷間圧延工程;および
    (F)前記冷間圧延鋼板を590℃〜760℃の温度域で0.5〜20時間焼鈍し、その後600℃/時以下の冷却速度で室温まで冷却する焼鈍工程。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載の熱間プレス用鋼板を850〜1000℃の温度域に3分間以上保持し、当該保持終了後30秒間以内に700℃以上の温度域でプレスを施し、10℃/秒以上の冷却速度で350℃未満の温度域まで冷却することを特徴とする熱間プレス鋼板部材の製造方法。
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