JP3720525B2 - 伸線加工性に優れる高炭素鋼線材およびその製造方法 - Google Patents

伸線加工性に優れる高炭素鋼線材およびその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、スチールコード用素線等の、高い耐久性と高い強度が要求される鋼線の製造に好適な、伸線加工性に優れる高炭素鋼線材およびその製造方法を提案するものであり、特に、優れる伸線加工性をもたらす金属組織およびそれを得るための熱処理方法に関するものである。
【0002】
なお、この明細書において、鋼線あるいは高強度鋼線とは、伸線加工により最終的に製造された線のことを、鋼線材あるいは高炭素鋼線材とは、伸線加工に供するために熱処理を施した線のことを、原線材あるいは高炭素鋼原線材とは、熱処理を施すために中間線径まで伸線した線のことを、および、鋼材あるいは高炭素鋼材とは、鋼線を製造するための原材料である鋼材のことを云う。
【0003】
【従来の技術】
スチールコード用素線等に用いる鋼線は、一般に次のようにして製造されている。▲1▼0.70から0.90重量%程度の炭素を含む高炭素鋼材を所定の中間線径まで伸線して高炭素鋼原線材とし、▲2▼原線材に熱処理と必要に応じて黄銅めっき処理とを施して高炭素鋼線材とし、▲3▼さらに、高炭素鋼線材を最終線径まで伸線して鋼線を製造する。
熱処理においては、下記の各段階からなる、いわゆるパテンティング処理によりパーライト組織とするのが一般的である。
(1)炭化物を溶解して均一なオーステナイト組織とする加熱段階。
(2)変態が開始しない速度で冷却し、過冷オーステナイトとする冷却段階。
(3)温度を保持し、変態を終了させる保持段階。
【0004】
さて、省エネ、省資源に対する要請の高まりを背景として、より高強度な鋼線の発現が望まれている。上記のような製造方法により高強度な鋼線を製造するためには、鋼線材に施す伸線加工量を増加する必要がある。ところが、伸線加工量を増加すると鋼線の延性が低下し、製造中の断線あるいは使用時の耐久性の低下等の問題が生じ易くなる。そして、可能な伸線加工量、すなわち達成可能な強度に対しては特に表層部の延性低下が支配的要因となることがある。これは、鋼線の内部よりも表層部に伸線加工による歪みが集中し易く、内部よりも表層部の方が先に加工に堪えなくなるためである。さらに、ダイスとの摩擦による発熱による時効硬化も加わって、表層部の延性低下を助長する。そこで、このような延性の低下の問題を解決すべく、伸線技術や熱処理技術すなわち鋼線材についての改良が行われている。
【0005】
まず高強度鋼線の製造のための伸線技術としては、伸線中の発熱を抑制し、時効硬化による鋼線の延性低下を抑制する技術がある。例えば、特開平8−24938号公報(捻回特性の優れた高強度極細鋼線の製造方法)には、最終ダイスの摩擦係数を規制しつつ減面率を2〜11%としたスキンパス伸線を施すことにより、最終ダイスにおける発熱を抑制する技術が開示されている。また、特開平8−218282号公報(ゴム補強用超高強度スチールワイヤおよびスチールコード)には、▲1▼ダイスのペアリング長さを短めにして引き抜き抵抗を下げ、▲2▼最終引き抜きはダブルダイスを用いてスキンパス伸線とし、▲3▼伸線下流の数枚のダイスとして焼結ダイヤモンドニブのものを用いて引き抜き力を低減し、▲4▼潤滑液温度を低く保持する伸線方法が開示されている。
【0006】
しかしながら、上記のような伸線方法により時効硬化による延性低下を抑制しても、表層部の歪み集中については本質的に改善されるものではなく、減面率を過小にした場合、表層部の歪み集中についてはかえって悪化する場合もある。このため、伸線加工直後の鋼線の延性は改善されるものの、撚線等の加工を加えたとき、あるいは伸線後の時効硬化が進行したときの延性の低下がかえって大きくなる場合がある。
【0007】
また、特開平7−305285号公報(ゴム物品の補強に供するスチールコード用素線の製造方法)には、生産性を考慮しつつ表層部の加工歪み集中の緩和を図ったダイスパススケジュールの設計方法が開示されている。しかしながら、生産性と表層部の加工歪み緩和とは二律背反の関係にあり、両者の妥協点をより向上させる技術が必要である。
【0008】
一方、伸線に供する鋼線材については、より良好な加工性を付与すべく、金属組織についての改善が行われている。例えば、特開昭63−161124号公報(伸線加工性に優れた高炭素鋼線の製造方法)には、加熱段階における加熱速度を100から200℃/秒とすることにより、オーステナイト粒度番号を10以上とし、パーライト組織を微細化することで延性を改善する高炭素鋼線材の製造方法が開示されている。また特開平5−302120号公報(高強力鋼線の製造方法)には、オーステナイト化したのち、変態開始前あるいは変態中の鋼線に加工を施し、微細なパーライト組織をもつ鋼線を製造する方法が開示されている。しかしながら、上記のような製造方法によりパーライト組織を微細化しても、製造される鋼線の延性向上に対する効果が不十分なものになってしまい易い。これは、パーライト組織を微細化すると伸線による加工硬化率が低下するために、所要の強度とするためには伸線加工量の増加が必要となるためである。
【0009】
そこで、伸線加工量増加に伴う延性低下を抑制しつつ、生産性を阻害することなく、より高強度な鋼線を製造できるようにするためには、伸線による加工硬化率および表層部の歪み集中について十分考慮した改善が必要である。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
この発明の目的は、上記の従来技術の問題点をふまえ、より高強度でかつ延性の高い鋼線の製造を可能にする高炭素鋼線材と、その製造方法を提案することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
発明者らは種々実験・検討の結果、前記問題を解決するためには、伸線加工に供する熱処理を施した線、すなわち高炭素鋼線材の表層部とその内部とのパーライトノジュールサイズが極めて重要であることを新規に知見し、この発明を達成したものである。
すなわち、この発明の要旨とするところは以下の通りである。
【0012】
請求項1から4の発明は、伸線加工における表層部の延性低下が少なく、かつ加工硬化特性が良好な高炭素鋼線材に関するものであり、
請求項1の発明は、0.70〜0.90重量%の炭素を含有し、表層部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm未満であり、内部の平均パーライトノジュールサイズが、3.0μm以上である高炭素鋼線材である。
【0013】
請求項2の発明は、請求項1に記載の発明において、表層部の平均パーライトノジュールサイズが2.8μm未満であり、内部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm以上4.0μm未満である高炭素鋼線材である。
請求項3の発明は、請求項1または2に記載の発明において、炭素含有量を0.80から0.87重量%とし、引張強さが1225MPaから1323MPaとする高炭素鋼線材である。
【0014】
請求項4の発明は、請求項1、2または3に記載の発明の高炭素鋼線材の表面に黄銅めっき層を付加した高炭素鋼線材である。
【0015】
また、請求項5から8に記載の発明は、この発明の高炭素鋼線材の製造方法に関するものであり、請求項5の発明は、0.70から0.90重量%の炭素を含有する高炭素鋼原線材を加熱してオーステナイト相とする加熱段階と、オーステナイト相とした原線材を冷却して過冷オーステナイトとする冷却段階と、バーライト変態が進行する温度に保持する保持段階とを含む熱処理を施す、高炭素鋼線材の製造方法において、加熱段階における到達線温度が800℃以上、1000℃未満であり、冷却段階以降パーライト変態開始前に、線材の表層部温度がその内部温度よりも低くなる時期を設けることを特徴とする高炭素鋼線材の製造方法である。
【0016】
請求項6の発明は、請求項5に記載の発明におけるパーライト変態開始前に線材の表層部温度がその内部温度よりも低くなる時期において、線材の表層部温度とその内部温度との差が5℃以上であることを特徴とする高炭素鋼線材の製造方法である。
【0017】
請求項7の発明は、請求項5または6に記載の発明において、冷却段階用の冷却手段と保持段階用の保持手段とを設け、冷却手段と保持手段との熱交換能力をそれぞれ独立して制御する高炭素鋼線材の製造方法である。
【0018】
請求項8の発明は、請求項7に記載の発明において、冷却手段と保持手段とがともに流動層であり、冷却用流動層の温度を、保持用流動層の温度よりも30℃以上低くする高炭素鋼線材の製造方法である。
【0019】
ここで、パーライトノジュールとはパーライト組織を構成するセメンタイトラメラの方向がほぼ一定となっている領域を指し、平均パーライトノジュールサイズとは、断面に現れたパーライトノジュールの平均円相当直径を指す。また、表層部とは、鋼線材の表面からの深さが約100μm未満の部分を指し、内部とは、鋼線材の表面からの深さが約100μm以上の部分を指す。
【0020】
【発明の実施の形態】
この発明の高炭素鋼線材は、図1に模式的に示すように表層部のパーライトノジュール組織が内部のパーライトノジュール組織よりも細かく、表層部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm未満であり、内部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm以上である。
【0021】
ここで、図1は、この発明に適合する高炭素鋼線材の表層部および内部のパーライトノジュール組織を模式的に示した説明図である。
また、図2は、表層部のパーライトノジュール組織が内部と同様に粗い、従来の高炭素鋼線材の組織を模式的に示した説明図であり、図3は、パーライトノジュール組織が全体に一様に細かい、従来の高炭素鋼線材の組織を模式的に示した説明図である。
【0022】
表層部のパーライトノジュールサイズについては、図4に示すように、鋼線材の表層部の平均パーライトノジュールサイズが小さいほど、伸線加工後の鋼線の表層部のフェライトの実質歪みが小さくなるという関係がある。このため、鋼線材の表層部の平均パーライトノジュールサイズはより小さい方が望ましく、3.0μm未満とすることで顕著な効果が得られる。
【0023】
ここで、図4は、鋼線材の表層部パーライトノジュールサイズと、それらを伸線して製造した鋼線表層部のフェライト211面のX線回折ピーク半価幅との関係を示すグラフであり、鋼線材表層部のパーライトノジュールサイズが小さい方が鋼線表層部のフェライト211面のX線ピーク半価幅は小さくなる、すなわち、フェライトの実質歪みは小さくなる。
【0024】
一方、鋼線材の内部の平均パーライトノジュールサイズについては、3.0μm以上とする。これは、内部の平均パーライトノジュールサイズをも3.0μm未満まで微細にして例えば図3に模式的に示したような状態にすると、伸線加工による強度の増加率が低下し、高強度鋼線を得るには伸線加工量を増加しなければならなくなるため、鋼線の延性改善に対する効果が損なわれることによる。
【0025】
また、表層部の平均パーライトノジュールサイズについては、2.8μm未満とし、同時に内部の平均パーライトノジュールサイズについては、3.0μm以上4.0μm未満とすることが好ましい。このような鋼線材は、特に、抗張力が3400MPaを超えるような高強力鋼線の製造に好適である。表層部および内部の平均パーライトノジュールサイズを上記の範囲とすれば鋼線の表層部のフェライトの実質歪みがさらに顕著に抑制されると同時に内部の加工性も良好になり、強度増加のために下記の式(1)で表される伸線加工歪みが3.5を超えるような大きな伸線加工を施した場合でも内部クラック等の発生を抑制することができる。
ε=2・1n(D0 /D) …(1)
ただし
0 :伸線加工前鋼線材の直径(mm)
D :伸線加工された鋼線の直径(mm)
【0026】
この発明の鋼線材の平均炭素含有量は、得られた鋼線の強度と生産性、経済性を考慮し、0.70から0.90重量%、好ましくは、0.80から0.87重量%とし、鋼線材の引張り強さが1225MPaから1323MPaとなるようにする。
【0027】
また、表層部の脱炭を抑制し、表層部と内部の炭素含有量の差を、0.05重量%以内とすることが望ましい。これは、脱炭により表層部が軟化していると、伸線加工時に加工歪みがより表層部に集中し易くなるためである。
【0028】
さらに、表面に黄銅めっき層を付加すれば、ゴム補強用の黄銅めっき鋼線の製造に適用することができる。
【0029】
次に、この発明の鋼線材の製造方法について説明する。この発明の鋼線材の製造方法の主たる特徴は、パーライト変態開始前に線材の表層部温度が内部温度よりも低くなる時期を設けることであり、好ましくは、表層部温度と内部温度との差が5℃以上、さらに好ましくは10℃以上となる時期を設ける。すなわち、表層部のオーステナイトの過冷度を内部のオーステナイトの過冷度よりも大きくすることにより、続くパーライト変態での表層部におけるパーライト核発生の頻度を内部よりも多くし、表層部の平均パーライトノジュールサイズを内部よりも小さくするものである。
【0030】
このような温度履歴を与えるためには、加熱によりオーステナイト相とした線材を冷却して過冷オーステナイトとする段階において、線材表面から熱を奪う速度を、線材の内部から表層部に熱が移動する速度よりも大きくすることが必要である。一方、パーライト変態が進行する温度に保持する段階においては、パーライト変態に伴って発生する潜熱を奪いつつも線温度が過剰に低下しないように保持し、ベイナイトの発生を抑制しつつ鋼線材の強度を確保することが好ましい。そこで、冷却段階に用いる冷却手段と保持段階に用いる保持手段とをそれぞれ設け、それらの冷却能力を個別に制御できるようにすることがこの発明の実施において有利である。冷却手段および保持手段としては溶融鉛浴、流動層浴、強制空冷および水冷却等を用いることができる。また、冷却手段と保持手段とが同じ手段である必要はなく、異なる手段を組み合わせてもよい。
なお、冷却手段および保持手段として流動層を用いる場合は、冷却用流動層の温度を保持用流動層の温度よりも30℃以上低くし、冷却段階において線材表面から速やかに熱を奪うようにすることが好ましい。さらに好ましくは、冷却用流動層の温度を保持用流動層の温度よりも50℃以上低くすることがよい。
【0031】
また、加熱してオーステナイト相とする段階においては、オーステナイト化を完全にするために、到達線温度を800℃以上にする。そして、表層部の平均パーライトノジュールサイズを3μm未満とするためには、到達線温度を800℃以上1000℃以下、好ましくは950℃以下とし、オーステナイト粒の大きさが過大にならないようにする。
【0032】
さらに、線材の黒化処理、高周波誘導炉加熱等により、オーステナイト化のための加熱の昇温速度を速くして短時間でオーステナイト化を行えば、この発明をさらに有利に実施することができる。すなわち、このようにすることにより、オーステナイト粒の大きさをより小さくすることができるため、表層部の平均パーライトノジュールサイズをこの発明の範囲に収めることがより容易となる。
【0033】
【実施例】
重量%にして、C:0.82%、Mn:0.50%、Si:0.21%、P:0.009%以下およびS:0.009%以下とその他不可避的不純物を含む、非金属介在物が少ない直径:5.5mmのスチールコード用高炭素鋼材に乾式伸線を施し、直径が約1.45mmの高炭素鋼原線材を得た。この高炭素鋼原線材に、図5の熱処理−めっき工程フローの説明図に示すような設備を用いて熱処理と黄銅めっきを施し、黄銅めっき高炭素鋼線材を得た。
【0034】
熱処理条件は表1に示す3種類とし、各々約1tを製造した。
【0035】
【表1】
Figure 0003720525
【0036】
表1中の比較例は、冷却用流動層と保持用流動層との温度差を小さくした比較例である。なお、この発明の適合例2では、高炭素鋼原線材を炭素懸濁液中に通した後に乾燥する黒化処理を施し、加熱段階での昇温速度を速くして加熱時間を短縮した。
【0037】
かくして得られた各高炭素鋼線材について調査した平均パーライトノジュールサイズ、抗張力および絞りを表2に示す
【0038】
【表2】
Figure 0003720525
【0039】
表2において、平均パーライトノジュールサイズは次のようにして測定した。
(1)高炭素鋼線材を樹脂に埋め込み横断面を鏡面研磨したのちに、1%硝酸アルコール溶液にてエッチングした。
(2)エッチングした横断面をSEMにて5000倍に拡大し、写真撮影した。写真撮影の総視野面積は、表層部および内部の各々の部分について1000μm2 以上とした。
(3)撮影した総視野中のパーライトノジュールの個数を求め、パーライトノジュール1個当たりの平均面積を求めた。
(4)上記平均面積と同面積となる円の直径を求め、平均パーライトノジュールサイズとした。
【0040】
表2に示すように、冷却用流動層と保持用流動層との温度差を小さくした比較例の高炭素鋼線材は、表層部の平均パーライトノジュールサイズが十分に小さくならなかった。また、黒化処理により加熱段階での昇温速度を速くして時間を短縮した適合例2の高炭素鋼線材は、適合例1の高炭素鋼線材よりも、パーライトノジュールサイズが表層部内部とも小さくなった。
【0041】
つぎに、伸線加工性を評価するために、各々の鋼線材約1tずつをスリップ式の湿式連続伸線機を用いて22パスにて伸線し、直径:0.19mmの高炭素鋼線を製造した。図6は、伸線機の各パスにおけるダイス減面率を示すグラフである。
【0042】
なお、伸線に当たっては、伸線機の最終ダイスを通過した鋼線にローラーにて繰り返し曲げ加工を施してから巻き取り、鋼線表面の軸方向の残留応力を0から圧縮となるように調整した。さらに、製造した鋼線を用いて3+8構造のスチールコードを製造し、撚線加工性を評価した。
【0043】
それぞれの高炭素鋼線材を伸線して製造した鋼線の抗張力、並びに伸線工程および撚線工程での断線率を表3に示す。
【0044】
【表3】
Figure 0003720525
【0045】
表中の断線率は、比較例を1とした指数である。表3から明らかなように、適合例1および2の鋼線材を伸線して製造した鋼線の抗張力は、表層部のパーライトノジュールサイズが大きい比較例の鋼線材を伸線した鋼線の抗張力と同等であるが、伸線工程および撚線工程での断線率は、比較例に比し適合例は大幅に減少している。なお、伸線工程での断線のほとんどは、残留応力制御のための曲げ加工時に生じたものであった。
【0046】
さらに、鋼線の表層部のフェライトの実質歪みを比較評価するために、それぞれの条件にて製造した鋼線を多数サンプリングし、表層部のフェライト211面のX線回折ピークの半価幅を測定した。その結果を前掲した図4に示した。図4から明らかなように、適合例1および2による鋼線の表層部のフェライト211面のX線回折ピークの半価幅は、比較例による鋼線に比し低い領域に分布しており、適合例1および2では表層部のフェライトの実質歪みが小さく延性の良好な鋼線が安定して製造されていることを示している。また、鋼線材表層部の平均パーライトノジュールサイズが小さいほど、それを伸線して製造した鋼線の表層部のフェライトの実質歪みが小さくなるという関係が認められる。
【0047】
【発明の効果】
この発明は、伸線に供する高炭素鋼線材の表層部のパーライトノジュールサイズをその内部より小さくして特定するものであり、この発明による高炭素鋼線材は、これに伸線加工を施した際の表層部の延性低下が安定して抑制されるため、優れた伸線加工性を示すとともに伸線加工を施して製造された鋼線は、優れた加工性を有する。
【0048】
特に、例えば実施例に挙げたように、高いε値の伸線加工を施して超高強度鋼線を製造する場合でも鋼線の加工性は安定して保たれる。このため、残留応力の調整のための曲げ加工や撚線加工を施しても断線の発生頻度は低く、高品質の超高強度スチールコード等を安定して経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に適合する高炭素鋼線材の表層部および内部のパーライトノジュール組織を模式的に示した説明図である。
【図2】表層部のパーライトノジュール組織が内部と同様に粗い、従来の高炭素鋼線材の組織を模式的に示した説明図である。
【図3】パーライトノジュール組織が全体に細かい、従来の高炭素鋼線材の組織を模式的に示した説明図である。
【図4】鋼線材の表層部パーライトノジュールサイズと、それらを伸線して製造した鋼線表層部のフェライト211面のX線回折ピーク半価幅との関係を示すグラフである。
【図5】熱処理−めっき工程フローの説明図である。
【図6】伸線機の各パスにおけるダイス減面率を示すグラフである。
【符号の説明】
1 高炭素鋼線材
1a 高炭素鋼線材の表層部
1b 高炭素鋼線材の内部
2 加熱炉
3 冷却用流動層
4 保持用流動層
5 黒化処理装置
6 酸洗装置
7 銅めっき装置
8 亜鉛めっき装置
9 熱拡散装置

Claims (8)

  1. 0.70から0.90重量%の炭素を含有し、表層部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm未満であり、その内部の平均パーライトノジュールサイズが、3.0μm以上である伸線加工性に優れる高炭素鋼線材。
  2. 表層部の平均パーライトノジュールサイズが2.8μm未満であり、内部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm以上、4.0μm未満である請求項1に記載の伸線加工性に優れる高炭素鋼線材。
  3. 0.80から0.87重量%の炭素を含有し、引張強さが1225MPaから1323MPaの範囲である請求項1または2に記載の伸線加工性に優れる高炭素鋼線材。
  4. 表面に黄銅めっき層を持つ請求項1、2または3に記載の伸線加工性に優れる高炭素鋼線材。
  5. 0.70から0.90重量%の炭素を含有する高炭素鋼原線材を加熱してオーステナイト相とする加熱段階と、オーステナイト相とした線材を冷却して過冷オーステナイトとする冷却段階と、パーライト変態が進行する温度に保持する保持段階とを含む熱処理を施す、高炭素鋼線材の製造方法において、加熱段階における到達線温度を800℃以上、1000℃未満とし、冷却段階以降パーライト変態開始前に、線材の表層部温度がその内部温度よりも低くなる時期を設けて、表層部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm未満、その内部の平均パーライトノジュールサイズが3.0μm以上の組織とすることを特徴とする伸線加工性に優れる高炭素鋼線材の製造方法。
  6. パーライト変態開始前に線材の表層部温度がその内部温度よりも低くなる時期において、線材の表層部温度とその内部温度との差が5℃以上であることを特徴とする請求項5に記載の伸線加工性に優れる高炭素鋼線材の製造方法。
  7. 冷却段階用の冷却手段と保持段階用の保持手段とを設け、冷却手段と保持手段との熱交換能力をそれぞれ独立して制御する請求項5または6に記載の伸線加工性に優れる高炭素鋼線材の製造方法。
  8. 冷却手段と保持手段とがともに流動層であり、冷却用流動層の温度を、保持用流動層の温度よりも30℃以上低くする請求項7に記載の伸線加工性に優れる高炭素鋼線材の製造方法。
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