JP4377715B2 - 捻回特性に優れた高強度pc鋼線 - Google Patents

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Description

本発明は捻回特性に優れたPC(プレストレスドコンクリート)鋼線に関するものである。本発明は、また、上記PC鋼線を製造する場合において、伸線前の急冷を伴う熱処理(鉛パテンティング、溶融塩パテンティングなど)を省略する技術に関するものであり、より詳細にはそのような熱処理を省略しても捻回特性に優れた高強度PC鋼線が得られる技術、このPC鋼線を製造するための線材、及び前記PC鋼線から得られるPC鋼より線に関するものである。
土木・建築分野では建設現場の省力化や生産性を向上するため、コンクリート部材の高強度化や軽量化が指向されている。そのためコンクリート内部に埋設されるPC鋼より線も高強度化が求められている。そして高強度PC鋼より線を得るためには高強度のPC鋼線が必要となるが、PC鋼線は高強度になる程、また太径になる程、捻回時に縦割れが発生し易くなる。鋼線の縦割れ防止策としては、以下のような技術が提案されている。
例えば、鋼線をロール間で曲げ加工する方法が提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。この特許文献1では、具体的には、最大で直径13mm程度の鋼線材を鉛パテンティング処理した後、伸線することによって直径5mmの鋼線とし、直径500mmのロールで8方向に曲げを行うことにより、引張強さ184.8kgf/mm2(1812MPa)程度の鋼線を製造している。また特許文献2では、具体的には、線径5〜16mm程度の鋼線を、パテンティング熱処理に引き続き伸線加工を行うに際して、伸線加工中に曲げ角度10〜30°の繰り返し曲げ加工を行っている。この特許文献2の鋼線の引張強度は、直径5mmのとき190kgf/mm2以上(約1863MPa以上)であるとされている。
また線材を多段伸線して鋼線を製造するに際して、最終段階でスキンパス処理する方法も提案されている(例えば、特許文献3〜4参照)。例えば特許文献3では、最後の段階に減面率が1〜10%となるダイスを配設してスキンパス処理することにより、残留応力を±150の範囲に制御する方法が提案されている。より具体的には、熱処理した線材を伸線し、前記スキンパス処理し、さらには上述したようなロール間での曲げ加工を行うことにより、直径5mm、引張強さ2634MPaの捻回特性に優れた鋼線を製造している。
また特許文献4では、最終伸線加工工程において、減面率が小さい2つの引き抜きダイスを配置し、引張の残留応力を低減することを提案している。より具体的には、直径11.0mm程度の線材を鉛パテンティング処理した後で伸線し、最後に所定のスキンパス処理(仕上げダイス処理)することにより、直径4.0mm、引張強さ2357MPa程度の捻回特性の優れた鋼線を製造している。
非特許文献1は、主としてC、Cr、Siなどの成分設計を適切にすれば捻回特性に優れた高強度PC鋼線が得られることを開示しており、具体的にはC:0.98%、Si:1.20%、Mn:0.30%、Cr:0.19%の鋼を直径10mmの線材に熱間圧延し、直ちに溶融塩パテンティング装置によりパテンティング(冷却速度約25℃/秒)し、連続伸線機で伸線することによって直径4.22〜4.35mmの2300MPa級PCストランド用鋼線が得られることを開示している。
しかし特許文献1及び2の鋼線では、強度レベルが不十分である。また特許文献3〜4及び非特許文献1の場合でも(他の特許文献の場合も同様であるが)、線材を伸線して鋼線にする前に必ず急冷を伴う熱処理(鉛パテンティング処理、直接溶融塩パテンティングなど)が施されており、急冷を伴う熱処理なしで線材を伸線して鋼線を得る分野では、高強度・高捻回特性の鋼線は知られていない。そして上記特許文献1〜3では、何故、捻回特性が向上するか示唆しておらず、鉛パテンティング処理等を行うことなくPC鋼線の高強度と高捻回特性を両立させるためにどのようにすればよいかは不明である。また上記特許文献4は残留応力値に着目しているが、鉛パテンティング処理しない場合には残留応力値のみでPC鋼線の高強度と高捻回特性を両立させるのは困難である。さらに非特許文献1はC、Cr、Siなどに着目しているが、鉛パテンティング処理しない場合には非特許文献1の成分設計によって高強度と高捻回特性を両立するPC鋼線を製造するのは困難であり、より具体的には伸線時に断線が発生する。
なお特許文献5には、Bが縦割れ抑制元素であることが記載されている。
特開昭63−179017号公報(請求項1、第1表No.14) 特許第2815722号(請求項1,段落0014,実施例) 特許第3173900号(特許請求の範囲、実施例No.22) 特開平7−001028号(特許請求の範囲、実施例21) 特開2000−355736号(段落0026) 樽井、外6名,「2000MPa級亜鉛めっき鋼線及び2300MPa級PCストランド用線材の開発」,新日鉄技報,新日本製鐵株式会社,1999年,第370号,p.45−49
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、鉛パテンティングなどの急冷を伴う熱処理を行うことなく伸線してPC鋼線を製造する場合であっても、高強度と捻回特性(縦割れ防止性)とを両立できるPC鋼線が得られる技術を確立することにある。
本発明者らは、鉛パテンティングなどを行わなくても高強度と基本靭性とを両立可能能とするためにC、Si、V、Crなどの成分を厳密にコントロールした上で、捻回特性を高めるためにBを所定量以上添加した。このようにして鋼の基本特性を高めた上で、鉛パテンティングなどを省略した場合でも高強度と捻回特性とを両立するために鋭意検討を重ねた結果、単にローラベンディング法やスキンパス法を採用したのでは高強度と捻回特性を両立できないにも拘わらず、X線回折におけるフェライトの(110)面ピークの半価幅等に着目して伸線・曲げ条件を設定すれば、高強度と捻回特性を両立できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明に係る捻回特性に優れた高強度PC鋼線とは、C:0.8〜0.95%(質量%の意、以下同じ)、Si:0.75〜2%、Mn:0.3〜0.9%、Cr:0.1〜0.3%、V:0.05〜0.2%、B:0.001〜0.005%と、さらにTi及びNを含み、
前記TiとNの質量比(Ti/N)が3〜5の範囲にあり、
引張強さ(TS)が下記式(1)に示される範囲にあり、
TS≧2750−830×logD …(1)
[式中、TSは引張強さ(MPa)を示し、DはPC鋼線の直径(mm)を示す]
鋼線表面におけるX線の回折角度と回折強度との関係を、鋼線の周方向に均等に4カ所測定したときのフェライトの格子面(110)に対応するピークの半価幅の平均値が2.0〜3.5°であり、
表面の残留応力が+50MPa以下であり、
降伏強さ(YS)と引張強さ(TS)の比(YS/TS)が80%以下である点に要旨を有するものである。
前記鋼線は、Tiが0.05%以下、Nが0.01%以下であり、残部がFe及び不可避的不純物であることが多い。
前記高強度PC鋼線を製造するための線材としては、
線材コイルの両端部及び中央部から、結束時の長さでコイル1周に相当する長さの線材を切り取ることにより合計3本のリング状線材を取得し、1つのリング状線材から略均等に16本の試験片を切り出し、残りのリング状線材においても同様にすることによって合計48本の試験片を切り出し、全試験片の引張強さを測定したときの最小値(TS−min)が下記式(2)に示される範囲にあり、
TS−min ≧ 3200−1570×logD …(2)
[式中、TS−minは引張強さの最小値(MPa)を示し、Dは線材の直径(mm)を示す]
フェライト+パーライト組織又はパーライト組織であることを特徴とする線材を使用する必要がある。
この線材は、上記のようにして全試験片の引張強さを測定したとき、引張強さの標準偏差(TS−σ)が50MPa以下であることが望ましい。
本発明には、上記高強度PC鋼線が複数本束ねられたPC鋼より線も含まれる。
本発明のPC鋼線は、半価幅、残留応力、及び降伏比が適切に制御されているため、急冷を伴う熱処理を施すことなく製造されているにも拘わらず、高強度と高捻回特性(縦割れ防止性)とを両立できている。また本発明の線材は、強度及び組織が適切な範囲に制御されているため、前記PC鋼線を製造するのに極めて有用である。加えて本発明のPC鋼より線は、前記PC鋼線から製造されているため、極めて高い強度を有する。
本発明は強度及び捻回特性に優れたPC鋼線を対象としている。より詳細には鉛パテンティングなどを省略することによって得られる従来のPC鋼線では、捻回特性をもたせた場合には達成することができなかったレベルの高強度を達成できるPC鋼線を提供するものである。
ところでPC鋼線は、元の線材の線径が同じ場合、線径が太くなるほど伸線加工率が低下するため、すなわち加工硬化しにくくなるため、その強度が低下する傾向にある。従って本発明のPC鋼線が対象とする強度レベルも線径に応じて設定でき、具体的には下記式(1)に示される強度を有するものを対象とする。
TS≧2750−830×logD …(1)
[式中、TSはPC鋼線の引張強さ(MPa)を示し、DはPC鋼線の直径(mm)を示す]
好ましい強度レベルは下記式(1a)、特に下記式(1b)に示される。
TS≧2800−830×logD …(1a)
TS≧2830−830×logD …(1b)
[式中、TS及びDは、上記式(1)に同じ]
なおSWP−B鋼の強度のおおよその上限は、JIS規格において、下記式(3)で規定される数値以下であるとされており、この点からも本発明のPC鋼線の強度が十分に高いものであることが推察される。
TS=2470−830×logD …(3)
[式中、TS及びDは、上記式(1)に同じ]
なおPC鋼線の線径は特に限定されないが、例えば、3mm以上(好ましくは4mm以上)、8mm以下(好ましくは6.8mm以下)程度である。
上記のような高強度を満足する本発明の捻回特性に優れたPC鋼線は、下記に示す元素を含有している。
C :0.8〜0.95%
CはPC鋼線の強度を向上するのに有効であるとともに、伸線時の断線の原因となる初析フェライトを低減するのにも有用である。従ってC量は、0.8%以上、好ましくは0.85%以上、さらに好ましくは0.87%以上とする。一方Cが過剰な場合も延性が低下し、伸線性や捻回特性が低下する。従ってC量は、0.95%以下、好ましくは0.93%以下とする。
Si:0.75〜2%
Siはフェライトに固溶して固溶強化を示すため、PC鋼線の強度を向上するのに有効である。またPC鋼線を束ねてPC鋼より線とした後における熱処理(ホットストレッチ処理など)の際の強度低下を抑制するのにも有効である。従ってSi量は、0.75%以上、好ましくは0.8%以上、特に0.9%以上とする。一方Siが過剰な場合には、フェライトの延性が劣化し、伸線性や捻回特性が低下する。従ってSi量は、2%以下、好ましくは1.8%以下、さらに好ましくは1.5%以下とする。
Mn:0.3〜0.9%
Mnは焼入性を高め、PC鋼線の強度を向上するのに有効である。従ってMn量は、0.3%以上、好ましくは0.4%以上、さらに好ましくは0.5%以上とする。一方Mnが過剰となると、偏析を引き起こしやすくなる。従ってPC鋼線の原料素材となる線材を圧延によって製造するときの圧延後の調製冷却中に中心部にマルテンサイト組織を生成させてしまい、その後伸線して線材を製造するとき又は製造した後で結束したときに断線が生じる。このためMn量は、0.9%以下、好ましくは0.8%以下、さらに好ましくは0.75%以下とする。
Cr:0.1〜0.3%
Crはフェライトを強化するためにPC鋼線の強度を向上するのに有効である。従ってCr量は、0.1%以上、好ましくは0.15%以上、さらに好ましくは0.2%以上とする。しかしCrが過剰になると線材の延性が劣化し、伸線性や捻回特性が低下する。従ってCr量は、0.3%以下、好ましくは0.28%以下とする。
V :0.05〜0.2%
Vはフェライトに固溶するため、PC鋼線の強度を高めるのに有効である。従ってV量は、0.05%以上、好ましくは0.07%以上、さらに好ましくは0.1%以上とする。一方Vを過剰としても強度向上効果が飽和してしまい、経済的ではない。従ってV量は、0.2%以下、好ましくは0.18%以下とする。
B :0.001〜0.005%
Bは縦割れの原因となる初析フェライトを抑制するため、PC鋼線の捻回特性を高めるのに有用である。またパーライト組織を強化できるため、PC鋼線の強度を高めるのにも有用である。従ってB量は、0.001%以上、好ましくは0.0015%以上とする。しかしBはフリーの状態で前記効果を発揮するところ、B量を過剰にしてもFe23(CB)6を形成してしまうため前記効果が飽和してしまう。従ってB量は、例えば、0.005%以下、好ましくは0.004%以下、さらに好ましくは0.003%以下とする。
Ti,N
また本発明のPC鋼線は、Ti及びNも含有している。すなわちNは、不可避的不純物として鋼線中に通常含まれる成分である。そしてこのNはBと結合するため、フリーBを少なくしてしまい、上記Bの効果を阻害する。そこでTiを含有させることにより、NをTiで固定してBNを生成させない、すなわちフリーBを多く残存させておく必要がある。
Tiの量はN量に応じて設定できる。すなわちTi/N(質量比)を3以上、好ましくは3.5以上とするのが有効である。しかしTiが過剰になると、余剰TiはTiCを形成し、ラメラフェライトを析出強化して伸線性や捻回特性が劣化する。従ってTi/N(質量比)は5以下、好ましくは4以下とする。
PC鋼線中の具体的なN量及びTi量は、例えば、以下の通りである。
N :フリーBを残存させる観点からすればN量は少ないほど望ましく、例えば0%であってもよい。しかしN量を少なくするのはコスト高となるため、例えば0.009%以下の範囲(0%を含まない)、特に0.01%以下の範囲(0%を含まない)で制御するのが望ましい。
Ti:Ti量の上限は前記Ti/Nの範囲を満足する限り特に限定されず、N量に応じて適宜設定できるが、例えば0.05%以下程度(特に0.04%以下程度)であることが多い。またTi量の下限も前記Ti/Nの範囲を満足する限り特に限定されず、N量に応じて適宜設定できる。
なお残部はFe及び不可避的不純物であることが多いものの、必要に応じて適宜種々の元素を添加することができる。
そして本発明のPC鋼線は、下記(a)、(b)、及び(c)に示す特性を有している。
(a)鋼線表面におけるX線の回折角度と回折強度との関係を、鋼線の周方向に均等に4カ所測定したときのフェライトの格子面(110)に対応するピークの半価幅の平均値(これを鋼線の半価幅とする)が2.0〜3.5°である。
(b)表面の残留応力が+50MPa以下である。なお該残留応力は、コイル状に巻かれた鋼線の内側を起点にして鋼線の周方向に均等に4カ所測定することによって求めることができ、最も残留応力の大きい部分の値(最大残留応力値)でも+50MPa以下であるという意味である。
(c)降伏強さ(YS)と引張強さ(TS)の比(YS/TS;すなわち降伏比YR)が80%以下である。
これら半価幅要件(a)、最大残留応力(b)、及び降伏比要件(c)を満足するとき、PC鋼線は、急冷を伴うような熱処理(鉛パテンティング、溶融塩パテンティングなど)を施すことなく製造しても、また上記強度範囲となるようにしても、高い捻回特性を有するようになり縦割れを防止することができる。
なお好ましい半価幅(a)は、2.2°以上(特に2.4°以上)、3.4°以下(特に3.3°以下)である。
好ましい最大残留応力値(b)は、+40以下、特に+30以下である。最大残留応力値(b)は低いほど望ましく下限は特に設定されないが、通常、−20以上程度(例えば−10以上程度)である。なお最大残留応力値(b)は、例えば、ショットピーニングなどで圧縮残留応力を与えることによっても小さくできるが、このようにして最大残留応力値(b)を小さくしても表面硬化によって延性が劣化し、捻回特性が低下する。従って本発明の最大残留応力値(b)は、表面硬化がない(すなわち表面部と内部との硬度差が実質的にない)ときにおける値であるということができる。
好ましい降伏比(c)は、例えば、75%以下、特に70%以下である。なお降伏比の下限は特に限定されないが、例えば、60%程度、特に65%程度である。
前記半価幅要件(a)、残留応力要件(b)、及び降伏比要件(c)は、原料素材である線材をPC鋼線に加工するときの条件を適切に設定することにより、制御できる。換言すれば、半価幅要件(a)、残留応力要件(b)、及び降伏比要件(c)は、本発明のPC鋼線の製造条件を設定するときの有力な目安ともなる。
例えば、線材を伸線加工する際に、下記(i)、(ii)、(iii)の手段を適当に利用することによって、半価幅要件(a)、残留応力要件(b)、及び降伏比要件(c)を変動させることができる。
(i)マルチダイス処理
マルチダイス処理とは、複数のダイスを用い、ダイス間に冷却を入れることなく連続的に線材を伸線処理することをいい、例えば1つのダイスボックス内に複数のダイスを設置することによって行う。マルチダイス処理は、複数段の伸線過程の少なくとも最後の段階で行えばよい。マルチダイス処理におけるダイスの数は、例えば、2〜3個程度(好ましくは2個)である。
(ii)繰り返し曲げ加工処理(ローラベンディング法)
線材を伸線することによって得られた鋼線をローラ間で走らせる。この際、ローラを段違いに配置することにより、ローラの外周に沿って鋼線を曲げる。例えば図1に示すように、鋼線を1平面内で一方向及び逆方向に(図示例では上下方向に)ゆるく繰り返しベンディングした後、前記平面と略直交する平面内で一方向及び逆方向に(図示例では左右方向に)ゆるく繰り返しベンディングすればよい。
なおローラベンディングは、図2に示すようにローラに鋼線を巻き付けるようにして行うことも可能であり、また図3に示すように上下方向又は左右方向のどちらかのみにベンデングすることも可能である。
(iii)逆引き処理
伸線を複数段階に亘って行うこととし、その途中で伸線材のテールとヘッドとを入れ替え、逆方向に伸線する(逆引き)。
そして上記(i)、(ii)、(iii)の処理は、以下に示すような特徴を有しているため、これら特徴を踏まえて(i)、(ii)、(iii)の処理条件を選択すれば、半価幅要件(a)、残留応力要件(b)、及び降伏比要件(c)を制御できる。
(i)マルチダイス処理
最後のダイスでの減面率が小さくなる程、半価幅(a)、最大残留応力値(b)が小さくなる傾向にある。なお減面率が小さすぎると(例えば1%未満)、マルチダイス処理の効果を喪失する。
(ii)繰り返し曲げ加工処理(ローラベンディング法)
曲げ角度の合計が大きくなる程、半価幅(a)、最大残留応力値(b)、及び降伏比(c)が小さくなる傾向にある。
(iii)逆引き処理
逆引き処理を行うと、半価幅(a)、最大残留応力値(b)、及び降伏比(c)が小さくなる傾向にある。
前記(i)、(ii)、(iii)の処理の具体的な条件は、半価幅(a)、最大残留応力(b)、降伏比(c)の要件を満足するように設定する必要があり、(i)、(ii)、(iii)のいずれを採用するか(又はどのように組み合わせるか)や、使用する線材の特性などに応じて異なりうるが、例えば、以下のようにすることが多い。
(i)マルチダイス処理
マルチダイス処理の最後のダイスでの減面率は、例えば、1〜10%程度、好ましくは2〜9%程度の範囲から設定されることが多い。またマルチダイス処理でのトータル減面率は、例えば、18%超とすることが多い。
(ii)繰り返し曲げ加工処理(ローラベンディング法)
ローラベンディングによる処理量は、曲げ角度(すなわちローラの外周のうち鋼線と接触する部分を円弧とする扇形の中心角度)の合計によって表すことができる。巻き付けることなくローラベンディングする場合、該曲げ角度の合計(トータル曲げ角度)は、例えば、1400〜1800°程度の範囲から設定されることが多い。また巻き付けるようにしてベンディングする場合、曲げ角度の合計は、前記巻き付けない場合よりも少なめに設定することが多く、例えば、1000〜1400°程度の範囲から設定されることが多い。
(iii)逆引き処理
通常、線材からのトータルの減面率が60〜80%以上となったところで、減面率5〜25%程度で1回以上逆引きする。
上記(i)、(ii)、(iii)は、いずれか一つを採用してもよく、適宜組み合わせて採用してもよい。(i)及び/又は(ii)を採用することが好ましく、(i)と(ii)を組み合わせて採用することが特に好ましい。
また急冷を伴う熱処理を省略したPC鋼線において上記所定の強度とするためには、線材を伸線する際の加工硬化も利用する必要がある。例えば、伸線に際しては、トータル減面率が70%以上、好ましくは80〜90%程度の伸線を行うのが望ましい。
上記のようにして製造条件を設定することにより本発明のPC鋼線を製造するためには、その前提として適切な線材(線材コイル)を使用する必要がある。具体的には、下記に示す要件(X)及び(Y)を線材が満足している必要がある。
(X)線材の下限強度
線材コイルの両端部及び中央部からコイル約1周に相当する長さの線材を切り取ることにより合計3本のリング状線材を取得し、1つのリング状線材から略均等に16本の試験片を切り出し、残りのリング状線材においても同様にすることによって合計48本の試験片を切り出し、全試験片の引張強さを測定したときの最小値(TS−min)が下記式(2)に示される範囲にあること
TS−min ≧ 3200−1570×logD …(2)
[式中、TS−minは線材の引張強さの最小値(MPa)を示し、Dは線材の直径(mm)を示す]
線材の引張強さが小さいと、上記のようにして伸線加工しても、PC鋼線の引張強さが不足してしまう。線材の好ましい引張強さ(TS−min)は、下記式(2a)で示される範囲、特に下記式(2b)で示される範囲である。
TS−min≧3230−1570×logD …(2a)
TS−min≧3260−1570×logD …(2b)
[式中、TS−min及びDは、上記式(2)に同じ]
(Y)線材の上限強度
前記引張強さ(TS−min)は、組織が適切である限り大きいほど望ましいものの、引張強さ(TS−min)を大きくする場合には、鋼材の焼入性を高めることが多く、マルテンサイトやベイナイト組織が生成し易くなる。またC量を増やすことも多く、初析セメンタイトが発生し易くなる。これらマルテンサイト組織、ベイナイト組織、及び初析セメンタイト組織は、線材の延性を低下させるため断線の原因となり、さらには運良くPC鋼線にまで伸線できたとしてもPC鋼線の捻回特性を低下させる。従って線材強度の上限は、組織の観点から特定するのが有効である。本発明の線材では、組織がフェライト+パーライト組織又はパーライト組織(全面パーライト組織)である必要があり、前記マルテンサイト組織、ベイナイト組織、及び初析セメンタイト組織などが実質的に存在しない必要がある。
また前記線材は、下記要件(Z)も満足しているのが望ましい。
(Z)上記(X)のようにして全試験片の引張強さの測定したとき、引張強さの標準偏差(TS−σ)が50MPa以下であること
TS−σが小さい程、線材を伸線加工するときの断線を防止できるため、上記処理(i)、(ii)、(iii)の条件設定の幅を広げることができ、簡便に上記特性(a)、(b)、及び(c)を満足するPC鋼線を得ることができる。
好ましいTS−σは、45MPa以下、特に40MPa以下程度である。
なお線材の直径は、鋼線としたときに必要となる加工硬化を確保できる限り特に限定されないが、例えば、12mm以上(好ましくは13mm以上)、17mm以下(好ましくは16mm以下)程度の範囲から選択できる。
前記線材強度(X)及び(Y)を満足する線材は、上記PC鋼線と同様の化学成分を有する鋼を溶製した後、下記に示す特定の条件で圧延することによって得ることができる。
まずCを炭化物としてではなく上記パーライト組織中のセメンタイトとして有効利用して、線材の強度を高める必要がある。そのため圧延時の鋼片加熱温度を通常よりも高くし、V、Cr、及びBを鋼中に固溶させて炭化物の生成を防止する。加熱温度は、例えば、1050〜1200℃程度の範囲から選択できる。また加熱後の保持時間は、鋼片の大きさに応じて適宜選択できるが、例えば、30分以上である。
圧延の仕上げ温度(仕上げ圧延温度)も、鋼材の焼入性を高めて線材の強度を高めるために、通常(850℃程度)よりも高くする必要がある。仕上げ圧延温度は、例えば、900〜1000℃程度とする。
圧延することによって得られる線材の冷却条件も、線材の強度コントロール上重要である。すなわち仕上げ圧延温度からAr3点までの温度範囲の冷却速度が遅いと、結晶粒が粗大化して焼入性が高くなり過ぎ、マルテンサイト組織などの望ましくない組織が発生し易くなる。特に本発明では圧延仕上げ温度を高く設定しているため、オーステナイト状態が長くなるため、通常よりも冷却速度を速くする必要がある。具体的には、圧延仕上げ温度からAr3点(例えば、750℃程度)までの冷却時間を、20〜30秒以内とする。その間の冷却速度パターンは、特に限定されない。またこの間に鋼材の焼入性が決定されるため、冷却時間はパーライトノジュールサイズを指標として設定することもできる。パーライトノジュールサイズを指標とする場合は、例えば、♯7〜10の範囲となるように冷却速度を設定する。
さらにAr3点からAr1点まで(例えば、750℃程度から600℃程度まで)の冷却速度も重要である。この間の冷却速度によって、圧延線材の強度をコントロールできる。ところが線材の冷却速度(ひいては線材の強度)を所定の範囲に制御するのは一般的に困難である。すなわち圧延された線材は、連続するリングを形成しながらコンベア上を移動していく。より詳細には、圧延によって得られる線材は、前記コンベア平面(すなわち線材の巻き半径と同一平面)上において巻き中心が略直線状に移動するようなリング状連続体となっている。このリング状連続体は、前記コンベア平面に対して垂直に見たとき、単位面積当たりの線材が占める面積が大きい部分、すなわち密部(具体的には、リング状連続体の巻き中心の移動軌跡に対して直交する直径の両端部分)と、単位面積当たりの線材が占める面積が小さい部分、すなわち粗部(具体的には、リング状連続体の巻き中心の移動軌跡上の部分)とが存在している。そして前記密部では、線材が密集しているため冷却速度が遅くなりやすく、前記粗部では相対的に冷却速度が速くなりやすい。そのため線材の冷却速度を所定の範囲に制御するのは一般的に困難である。そこで本発明では、密部(リング状連続体の巻き中心の移動軌跡に対して直交する直径の両端部分、すなわちベルトの両端部付近)と、粗部(リング状連続体の巻き中心の移動軌跡上の部分、すなわちベルト中央部付近)とで冷却風の当て方を変えて、密部と粗部の冷却速度を制御している。具体的には、粗部の冷却速度を3〜10℃/秒程度の範囲に制御すると共に、密部の冷却速度を前記粗部の80〜100%の範囲に制御している。このようにして冷却することにより、圧延線材の強度を所定の範囲にコントロールできると共に、強度のばらつきも抑制できる。冷却速度が前記範囲よりも速すぎるとマルテンサイト組織が発生し、遅すぎると強度が不十分となるだけでなく初析セメンタイト組織が発生する。
上記のようにして得られる本発明のPC鋼線は、鉛パテンティング処理、溶融塩パテンティング処理することなく製造されているため製造コストを低減できる。また捻回特性に優れていながらも高強度を達成できているため、PC鋼より線を製造するのに極めて有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例1
下記表1に示す成分を含有する鋼A〜Hを3トン級の真空溶解炉で溶製した後、分解することにより155mm×155mm角のビレットを作製した。良塊は約2トンであった。このビレットを温度1100℃まで加熱した後、下記表2に示す線径にまで圧延し、得られた線材を巻きながら、巻き半径と同一平面上において巻き中心を略直線状に移動させることによって線材コイルを作製した(R−A1〜R−H1)。なお前記圧延に際しては、下記表2に示すように、圧延仕上げ温度、圧延後の衝風冷却パターンを変化させ、得られる線材の機械的性質(引張強さ)及び組織を調整した。衝風冷却パターンについてより詳細に説明すると、リング状連続体の粗部(すなわち、リング状連続体の巻き中心の移動軌跡上の部分)と、密部(すなわち、リング状連続体の巻き中心の移動軌跡に対して直交する直径の両端部分)とを表2に示す冷却速度で冷却した。
得られた線材コイルの特性(引張強さ、組織、基本靭性)は、以下のようにして調べた。
[引張強さ]
線材コイルの両端部及び中央部から、それぞれ、コイル約1周に相当する長さ(この例では、4m)の線材(リング)を切り取った。各リング(合計3本)から、略均等に16本(合計3×16=48本)の試験片を採取した。これら48本の試験片の引張強さ(TS)を測定し、その標準偏差(TS−σ)と最小値(TS−min)とを求めた。
[組織]
前記引張試験によって引張強さが最大となる部分及び最小となる部分の組織を電子顕微鏡にて調べた。
[基本靭性]
線材コイルを、出荷用の荷姿とするために結束し、この結束の際に線材コイルが破断するか否かを目視にて確かめた。
結果を表2に示す。
Figure 0004377715
Figure 0004377715
表1及び表2より明らかなように、線材(ロッド)がマルテンサイトを有する場合(線材R−F1)、結束時に破断が生じた。
実験例2
結束時に破断しなかった線材(R−F1以外)を、鉛パテンティング処理することなく下記表3に示す条件で伸線(線速:120m/分)することにより、鋼線(ワイヤ)を製造した(W−A1〜W−E1、W−G1〜W−H1)。
伸線中の断線の有無を観察し、鋼線(ワイヤ)の引張強さを測定すると共に、得られた鋼線(ワイヤ)を下記条件で捻回し、捻回時の縦割れ(デラミネーション)の有無も調べた。
[鋼線の捻回試験条件]
鋼線[長さ100×D(D:直径)に切断したもの]を1方向に速度50回転/分で捻回し、デラミネーションが発生するか否かで捻回特性を評価した。
結果を表3に示す。
Figure 0004377715
表3及び前記表1〜2より明らかなように、ロッドR−C1はC量が多すぎるため、またロッドR−D1はCr量が多すぎるため、伸線時に断線した。一方、ロッドR−E1はSi量やV量が少なすぎて引張強さ(TS−min)が小さい為、伸線によって得られるワイヤW−E1の引張強さも不足した。ロッドR−G1は、C量、Si量、Mn量、Cr量、V量などが適切であるが、圧延の冷却速度が遅すぎるために引張強さ(TS−min)が小さくなっており、従って得られるワイヤW−G1の引張強さも不足した。またロッドR−H1でも、C量、Si量、Mn量、Cr量、V量などが適切であるが、圧延の冷却速度が遅すぎるために引張強さ(TS−min)が小さくなっていた。さらにロッドR−H1では、粗部と密部とで冷却速度が大きく異なっているために引張強さのバラツキ(TS−σ)が大きく、さらには初析セメンタイトが発生しているため、伸線中に断線が発生した。
これらに対してロッドR−A1及びロッドR−B1は、いずれもC量、Si量、Mn量、Cr量、V量などが適切であって圧延条件も適切であるため、断線することなく引張強さの優れたワイヤW−A1及びW−B1を得ることができた。しかしこれらワイヤW−A1及びW−B1であっても、捻回特性が不十分であった。
実験例3
前記ロッドR−A1及びR−B1を、下記に示す伸線方法、曲げ方法を適宜組み合わせて得られるワイヤの半価幅、最大残留応力、YS/TS比を制御した。
[伸線方法]
(1)通常法
直径16mmの線材を、1つのダイスによる伸線及び冷却を繰り返しながら11段階で伸線することによって直径を5.6mmとし、さらに1つのダイスで伸線(線速:120m/分)することによって直径5.0mmの鋼線を得る。
(2)ダブルダイス法
直径16mmの線材を、1つのダイスによる伸線及び冷却を繰り返しながら11段階で伸線することによって直径を5.6mmとした後、次のダイスボックス内において2つのダイスで2段階の伸線することによって直径5.0mmの鋼線を得る。ダブルダイスの1段後の線径を5.1〜5.4mmの範囲で変化させることで、2段目の減面率を3.9〜14.3%の範囲で変化させる。なお表4中、四角括弧で囲まれている部分がダブルダイス法における線径の変化を示しており、丸括弧内は2段目の伸線のときの減面率を示している。
(3)逆引き法
直径16mmの線材を、1つのダイスによる伸線及び冷却を繰り返しながら11段階で伸線することによって直径を5.6mmとしたもの(中間材)を、一旦リールに巻き取る。次いで該リールから中間材を引きだし、1つのダイスで伸線することによって直径5.0mmの鋼線を得る。
[曲げ方法]
伸線によって得られた鋼線を図1のようにしてローラ間で波状に走らせる。トータル曲げ角度は、1350〜1950°の範囲で変化させた。
鋼線(ワイヤ)の半価幅、残留応力、引張強度(TS)、降伏強度(YS)、降伏比(YS/TS)は下記のようにして測定した。
[半価幅]
鋼線の円周方向に沿って均等に4箇所を選択し、各箇所における回折角と回折強度との関係を、下記に示す条件のX線回析法によって調べる。なおX線回折は、各箇所毎に4点以上(今回は4点)行う。各測定ごとにフェライトの格子面(110)に対応する回折ピークの半価幅を計測した後、その平均値を求め、これを鋼線の半価幅とする。
X線回折条件
入射スリット:φ1.0mm
電圧 :40kV
電流 :40mA
測定時間 :100秒
[最大残留応力値]
鋼線表面の残留応力を、鋼線の周方向に場所を変えながら4カ所(コイル状に巻かれた鋼線の内側を起点にして、均等に4カ所)測定した。そして最も残留応力の大きい部分の値を鋼線の残留応力値とした。
[降伏比(YS/TS)]
引張強度(TS)及び降伏強度(YS)を、いずれもn数3以上(今回はn数3)で測定し、その平均値を鋼線の引張強度(TS)及び降伏強度(YS)とした。そしてこの値から、降伏比(YS/TS)を求めた。
上記のようにして得られた鋼線の捻回試験を上記実験例1と同様にして行った。結果を表4に示す。
Figure 0004377715
表4から明らかなように、所定の半価幅、最大残留応力値、YS/TSを示すように伸線・曲げ条件を選択すると、縦割れ(デラミネーション)を防止することができる(W−A5〜W−A8)。
これに対して、たとえダブルダイス法やローラベンディング法を採用しても、所定の半価幅、最大残留応力値、又はYS/TSが所定の範囲を外れる場合には、縦割れが発生する(W−A2〜W−A4)。なおダブルダイス法やローラベンディング法ではなく、通常の伸線で得られた上記鋼線W−A1においても、半価幅、最大残留応力値、及びYS/TSが所定の範囲を外れていた。
なおW−B1〜W−B7は、C量、Si量、Mn量、Cr量、V量が適切であるが、Bを含有せず、またTi/N比が小さすぎるために、どのようにしても縦割れ(デラミネーション)が発生した。
図1はローラベンディング法の一例を示す概略斜視図である。 図2はローラベンディング法の他の例を示す概略斜視図である。 図3はローラベンディング法のさらに他の例を示す概略斜視図である。

Claims (4)

  1. C:0.8〜0.95%(質量%の意、以下同じ)、Si:0.75〜2%、Mn:0.3〜0.9%、Cr:0.1〜0.3%、V:0.05〜0.2%、B:0.001〜0.005%と、さらにTi:0.05%以下(0%を含まない)及びN:0.01%以下(0%を含まない)を含み、残部がFe及び不可避的不純物であり、
    前記TiとNの質量比(Ti/N)が3〜5の範囲にあり、
    引張強さ(TS)が下記式(1)に示される範囲にあり、
    鋼線表面におけるX線の回折角度と回折強度との関係を、鋼線の周方向に均等に4カ所測定したときのフェライトの格子面(110)に対応するピークの半価幅の平均値が2.0〜3.5°であり、
    表面の残留応力が+50MPa以下であり、
    降伏強さ(YS)と引張強さ(TS)の比(YS/TS)が80%以下であることを特徴とする捻回特性に優れた高強度PC鋼線。
    TS≧2750−830×logD …(1)
    [式中、TSは引張強さ(MPa)を示し、DはPC鋼線の直径(mm)を示す]
  2. 請求項1に記載の高強度PC鋼線を製造するための線材であって、
    線材コイルの両端部及び中央部から、結束時の長さでコイル1周に相当する長さの線材を切り取ることにより合計3本のリング状線材を取得し、1つのリング状線材から略均等に16本の試験片を切り出し、残りのリング状線材においても同様にすることによって合計48本の試験片を切り出し、全試験片の引張強さを測定したときの最小値(TS−min)が下記式(2)に示される範囲にあり、
    フェライト+パーライト組織又はパーライト組織であることを特徴とする線材。
    TS−min ≧ 3200−1570×logD …(2)
    [式中、TS−minは引張強さの最小値(MPa)を示し、Dは線材の直径(mm)を示す]
  3. 請求項に記載のようにして全試験片の引張強さを測定したとき、引張強さの標準偏差(TS−σ)が50MPa以下であることを特徴とする請求項に記載の線材。
  4. 請求項1に記載の高強度PC鋼線が複数本束ねられているPC鋼より線。
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