JP4267375B2 - 高強度鋼線用線材、高強度鋼線およびこれらの製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、強度、靭性、延性等に優れた鋼線を、伸線中にパテンティング処理を施すことなしに製造しうる新規な高強度鋼線用線材または高強度鋼線とこれらの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
高強度鋼線の代表例であるスチールコード用鋼線を製造するには、通常、炭素含有量が0.7〜0.8%程度の高炭素鋼[JISG 3502(SWRS72A,SWRS82A)相当]を熱間圧延した後、冷却条件を制御することにより直径:5.0〜6.4mm程度の鋼線材とし、次いで一次伸線加工、パテンティング処理、二次伸線加工、再度のパテンティング処理、Cu−Zn二相めっき、拡散処理を施した後、最終的に湿式伸線加工(仕上げ伸線)を行うことによって所定の線径が得られるように製造されている。このパテンティング処理は、伸線加工に適した均一微細なパーライト組織を得るために行われるが、高炭素鋼における伸線限界は、通常、真歪みで4以下と低いために、最終線径が細くなればなるほど最終パテンティング後の線径も細くなり、その為、パテンティング回数を増やす必要があるという問題があった。
【0003】
そこで、伸線限界を向上させて線材の伸線加工性を高めることを目的として、種々の改良方法が提案されている。例えば特許文献1には、パテンティング処理時における冷却速度を制御することによって伸線に悪影響を及ぼす初析セメンタイトの析出を抑制する方法が、また特許文献2には熱間圧延線材の断面組織中の粗パーライト率を制御する技術が開示されている。また、特許文献3および特許文献4には、鋼線組織を加工硬化の少ないベイナイト組織にすることによって、伸線による強度上昇を低く抑えて伸線限界を向上させる技術が開示されている。更に、特許文献5には、炭素含有量が0.30〜0.60%の中炭素鋼線材を用いて、最終パテンティング後の引張強さ、パーライト組織および初析フェライトを制御することにより伸線限界の向上を図る技術が開示されている。
【0004】
これらの方法によれば、パテンティング回数を従来より少なくしても伸線加工性を高めることはできるが、いずれの方法においても、少なくとも伸線中に1回のパテンティング処理を必ず行う必要がある。
【0005】
一方、特許文献6には、線径0.15mm以下の極細線を工業的に製造し得る方法が開示されている。具体的には、低炭素鋼線(C:0.01〜0.30%)に熱処理を施して、フェライトと、針状マルテンサイトまたはベイナイトの混合組織に調整した後に、主として伸線加工により高強度を得る方法が開示されているが、熱処理強度が70kgf/mm2程度と低く、かつ加工硬化率もパーライト鋼と比較して低いために、0.2mm程度の極細線に適用する場合、熱処理線径をかなり太くして伸線加工ひずみを大きく取らなければ所定の強度が得られないこと、5.5mm以上の太径熱処理では鋼線表層から中心部間の組織が不均一になり易く、わずかな塊状マルテンサイトの生成で、早期の伸線破断や機械的性質の劣化につながるという問題があった。
【0006】
さらに特許文献7には、中高炭素鋼線(C:0.35〜0.9%)の熱間圧延後冷却し、20%以下の面積率で初析フェライトを含有した組織に調整した後に、パテンティングすること無しに伸線によって0.15〜0.4mmの線径の高強度鋼線を得る方法が開示されているが、パテンティングを全く実施しないためにフェライト以外の部分の組織のばらつきがおおきく、伸線後に所定の強度を得にくいという問題があった。
【0007】
【特許文献1】
特開平5−98349号公報
【特許文献2】
特公平3−60900号公報
【特許文献3】
特開平5−105965号公報
【特許文献4】
特開平5−117764号公報
【特許文献5】
特開平6−2039号公報
【特許文献6】
特公平1−15563号公報
【特許文献7】
特開平9−49018号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記事情に着目してなされたものであり、その目的は、線材圧延工程中に所定の熱処理を実施すること、あるいは圧延線材を再加熱して所定の熱処理を実施することにより、その後の伸線工程中にパテンティング処理を全く施さなくとも、強度・引張強さ等の機械的特性に優れた高強度鋼線用線材および高強度鋼線とこれらを製造することのできる新規な方法を提供するものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、炭素濃度0.1〜0.9%であるような鋼材を用い、まず種々の条件で圧延・冷却・パテンティング・一次伸線・ボンデ皮膜処理・仕上げ伸線を実施し、直径0.15〜0.4mmであるような種々の強度レベルの高強度鋼線を作製した。そしてこれら鋼線の引張り強さ、ねじり特性等の機械的特性と調査した。以上の試験を行うことによって、高強度鋼線の機械的特性を向上させる鋼材成分、圧延条件、パテンティング条件、伸線条件の影響等について検討を重ねた。この結果、質量%で、C:0.2〜0.35、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.1%、Al:0.01%以下を含有し、残部が鉄および不可避的不純物よりなる鋼線材を熱間圧延し、次いで700℃以上800℃以下の温度に冷却し、該圧延材の初析フェライトを面積率で20%以上50%以下とした時点で450℃以上600℃以下の温度に急冷し、引き続きこの温度でパテンティング処理を施した線材に、再びパテンティング処理を施すこと無しに伸線を行うことによって、2800MPa以上の引張り強さを満足し、かつ縦割れ(以下デラミネーションという。)発生のない鋼線を得ることができるという結論に達し、本発明をなしたものである。
【0010】
本発明は以上の知見に基づいてなされたものであって、その要旨とするところは、次の通りである。
(1)質量%で、C:0.2〜0.55%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.1%、Al:0.01%以下(0%を含む)を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、フェライト面積率が20%以上50%未満で残部の90%以上がパーライトであることを特徴とする線径4〜7mmの高強度鋼線用線材。
(2)更に、質量%で、Cr:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、Co:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:0.2%以下(0%を含まない)、Mo:0.2%以下(0%を含まない)、W:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.01%以上0.1%以下、B:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする(1)に記載の高強度鋼線用線材。
(3)更に、前記フェライトの平均粒径が30μm以下であることを特徴とする(1)または(2)に記載の高強度鋼線用線材。
(4)(1)〜(3)のいずれかに記載の線材を用いて製造された、2800MPa以上の引張り強さを満足し、かつ、ねじり試験時のデラミネーション発生のない高強度鋼線。
(5)(1)または(2)記載の鋼成分の鋼片を熱間圧延し、次いで700℃以上1000℃以下、好ましくは700℃以上800℃以下の温度に冷却し、該圧延材の初析フェライトを面積率で20%以上50%以下とした時点で450℃以上600℃以下の温度に急冷し、引き続きこの温度でパテンティング処理を施すことを特徴とする高強度鋼線用線材の製造方法。
(6)(1)または(2)記載の鋼成分の鋼片を熱間圧延し、次いで700℃以上1000℃以下、好ましくは700℃以上800℃以下の温度に冷却し、その後450℃以上700℃以下の温度域を10〜50℃/secの冷速で冷却することを特徴とする高強度鋼線用線材の製造方法。
(7)(1)または(2)記載の鋼成分の線材を700〜850℃に再加熱し、初析フェライトを面積率で20%以上50%以下とした時点で450℃以上600℃以下の温度に急冷し、引き続きこの温度でパテンティング処理を施すことを特徴とする高強度鋼線用線材の製造方法。
(8)(1)〜(3)のいずれかに記載の線材に、再びパテンティング処理を施すこと無しに伸線を行うことによって、2800MPa以上の引張り強さを満足し、かつ、デラミネーション発生のない鋼線を得ることを特徴とする高強度鋼線の製造方法。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の製造工程について順次説明する。まず、本発明に用いられる鋼線材の成分限定理由について説明する。なお、鋼成分の量はいずれも質量%である。
C:0.2〜0.55%
Cは強度の上昇に有効で、且つ経済的な元素であり、C含有量の増加に伴って伸線時の加工硬化量、伸線後の強度が増大する。更に、C量が少ないと圧延線材の初析フェライト量を低減させることが困難となる。従って、本発明ではその下限を0.2%とすることが必要である。好ましい下限値は0.3%である。一方、C量が多くなり過ぎると所定の初析フェライト量を確保することが困難になり、伸線中あるいは伸線後における鋼線の靭性・延性を劣化させるため、C量の上限を0.55%とする。好ましい上限は0.45%である。
Si:0.1〜1.0%
Siは脱酸剤として有用な元素であり、0.1%未満ではその効果が不十分となるため、0.1%以上とした。また、Siはパテンティング後に得られるパーライト中のフェライト相に固溶して線材強度を上げるが、反面フェライトの靭性を低下させ、伸線後の延性を低下させるため、上限を1.0%とした。
Mn:0.2〜1.1%
MnもSiと同様、脱酸剤として有用な元素であり、その効果を十分なものとするためには0.2%以上が必要である。一方Mnは鋼の焼入性を高めて圧延材の初析フェライト量を低減させる効果がある。また偏析し易い元素でもあるため、過剰に添加するとMnの偏析部にマルテンサイト、ベイナイトなどの過冷組織が生成して伸線加工性が劣化する恐れがある。従って、Mn量の上限を1.1%とする。好ましい上限値は0.8%である。
Al:0.01%以下
Alの含有量は、硬質非変形のアルミナ系非金属介在物が生成して鋼線の延性劣化と伸線性劣化を招かないように0%を含む0.01%以下と規定した。
【0012】
なお、不純物であるPとSは特に規定しないが、従来の極細鋼線と同様に延性を確保する観点から、各々0.02%以下とすることが望ましい。
【0013】
本発明に用いられる鋼線材は上記元素を基本成分とするものであるが、更に強度、靭性、延性等の機械的特性の向上を目的として、以下の様な選択的許容添加元素を1種または2種以上、積極的に含有してもよい。
【0014】
Cr:0.5%以下,Ni:0.5%以下,Co:0.5%以下,V :0.5%以下,Cu:0.2%以下、Mo:0.2%以下、W:0.2%以下、Nb:0.1%以下、Ti:0.1%以下、B:0.01%以下(いずれも0%を含まない) 。以下、各元素について説明する。
Cr:0.5%以下
Crはパーライトのラメラ間隔を微細化し、線材の強度や伸線加工性等を向上させるのに有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。 一方、Cr量が多過ぎると変態終了時間が長くなり、熱間圧延線材中にマルテンサイトやベイナイトなどの過冷組織が生じる恐れがあるほか、メカニカルでスケーリング性も悪くなるので、その上限を0.5%とした。
Ni:0.5%以下
Niは線材の強度上昇にはあまり寄与しないが、伸線材の靭性を高める元素である。この様な、作用を有効に発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Niを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値を0.5%とした。
Co:1%以下
Coは、圧延材における初析セメンタイトの析出を抑制するのに有効な元素である。この様な作用を有効に発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Coを過剰に添加してもその効果は飽和して経済的に無駄であるので、その上限値を0.5%とした。
V:0.5%以下
Vはフェライト中に微細な炭窒化物を形成することにより、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を防止するとともに、圧延後の強度上昇にも寄与する。この様な作用を有効に発揮させるには0.05%以上の添加が好ましい。しかし、過剰に添加し過ぎると、炭窒化物の形成量が多くなり過ぎると共に、炭窒化物の粒子径も大きくなるため上限を0.5%とした。
Cu:0.2%以下
Cuは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。しかし過剰に添加すると、Sと反応して粒界中にCuSを偏析するため、線材製造過程で鋼塊や線材などに疵を発生させる。この様な悪影響を防止するために、その上限を0.2%とした。
【0015】
Mo:Moは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Moを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値を0.2%とした。
【0016】
W:Wは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.1%以上の添加が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値を0.2%とした。
【0017】
Nb:Nbは、極細鋼線の耐食性を高める効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.05%以上の添加が好ましい。一方、Wを過剰に添加すると変態終了時間が長くなるので、上限値を0.1%とした。
【0018】
Ti:Tiは有効な脱酸元素であり、その作用を有効に発揮させるためには0.01%以上の添加が好ましい。一方、Tiを多量に添加すると炭素あるいは窒素と結合して延性を劣化させるため、上限値を0.1%とした。
【0019】
B:Bは線材の加工硬化能を増大させる効果がある。この様な作用を有効に発揮させるには0.001%以上必要である。一方、Bを多量に添加すると窒素と結合して窒化物を形成し、延性を劣化させるため、上限値を0.01%とした。
【0020】
次に、上述した様な鋼線材を熱間圧延した後、冷却条件を制御することによって圧延材の初析フェライト面積率を20%以上50%以下とする。本発明では、延材の初析フェライト面積率をこのように制御することによって、伸線中に中間パテンティング処理を全く施さなくとも優れた機械的特性を備えた高強度鋼線が得られることを見出した点に最大の特徴を有するものである。尚、この初析フェライト面積率を制御する為の手段として施される熱間圧延および冷却の条件については特に限定されず、上記要件を満足することのできるよう、通常の適用範囲から適宜好ましい範囲を選択することができる。具体的には、圧延終了後の巻き取り温度を700〜1000℃、好ましくは700〜800℃の範囲とし、その後450〜600℃の範囲で数〜数十秒保持することによってパテンティング処理を施すあるいは450℃から700℃の温度域で10〜50℃/secの冷速で冷却する方法、等が採用される。また、圧延・冷却終了後の線材を再加熱し、フェライトとオーステナイトの2相を存在させた状態からパテンティング処理して得ることも可能である。
【0021】
以下、本発明において最も重要な要件である圧延材の初析フェライトの限定理由についてスチールコード用鋼線の場合を具体例として述べる。
【0022】
通常、スチールコード用鋼線を得るためには共析鋼に近い炭素濃度を有する線材を、オーステナイト化した後、450〜600℃で数〜数十秒保持するパテンティング処理を施し、ほぼ完全なパーライト組織にした後、伸線を実施する。しかし、この方法では伸線前の線材強度が高く、伸線時の加工硬化係数も大きいため、4程度の真ひずみで伸線時の破断あるいは伸線後のデラミネーションが発生する。本発明らの検討によれば、鋼中炭素量を0.3〜0.4%程度まで低減した線材に通常のパテンティング処理を施し、3〜10%の初析フェライトを含むパーライト組織とした後に伸線することによって、伸線破断の限界の真ひずみを5以上まで改善できるが、デラミネーションは真ひずみ4程度で発生する。これに対し、20%以上50%以下のフェライトを含有するパーライト組織を有する線材を伸線した場合、伸線破断の限界の真ひずみ、デラミネーション発生の限界真ひずみをともに5以上まで改善できることが分かった。
【0023】
図1に種々の成分を有する伸線前線材のフェライトの面積%と伸線材のデラミネーションが発生する真ひずみの下限値の関係を示す。図1中フルマークは当該する真ひずみにおいて、まだデラミネーション発生限界に到達していないことを示す。
【0024】
また、図2に伸線前線材のフェライトの面積%と伸線ひずみ5以上で伸線した場合の強度の関係を示す。図2中フルマークはデラミネーション無し、オープンマークはデラミネーション発生を意味する。ここで、フェライトの面積率は、線材を湿式研磨した後、飽和ピクリン酸によって数秒腐食させ、光学顕微鏡で金属組織の写真撮影を実施し、この写真の画像解析によって得た。また、伸線前の線材の直径は4〜5.5mmである。
【0025】
図1から明らかなように、初析フェライトの面積率が20%以下の場合、デラミネーションが発生する真ひずみが5未満と小さい。一方初析フェライトが20%以上であればデラミネーションが発生する真ひずみが5.5以上に改善される。圧延線材の直径は通常4〜6mm程度であり、これを一般的なスチールコード用鋼線の太さである0.3mmまで、中間パテンティング無しに伸線した場合の真ひずみは5〜6となるため、フェライト面積率が20%以上であれば、圧延線材を直接スチールコード用鋼線のサイズまで伸線しても、デラミネーションの発生しない鋼線を得ることが可能となる。
【0026】
一方、図2より、伸線後強度はフェライト面積率が大きくなると共に低下する傾向にあり、フェライト面積率が50%より大きくなると6.5の真ひずみでも2800MPaに到達しないことが分かる。そのためフェライト面積率は50%以下に抑える必要がある。
【0027】
なお、伸線限界を向上させるためには、フェライト平均粒径を30μm以下とすることが望ましい。このフェライト粒径を30μm以下とするためにはパテンティング時の保定時間を30〜30秒とすることで達成しうる。
【0028】
また、本発明はスチールコード用鋼線だけではなく、ビードワイヤでも適用可能である。
【0029】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する供試材を熱間圧延した後、種々の巻き取り温度で巻き取り、直ちに種々の温度範囲でパテンティング、あるいは徐冷し、直径4〜5.5mmの線材を得た。その後これらの線材を再パテンティングすること無しに直径0.15〜0.4mmまで伸線した。伸線のダイススケジュールにおける各パスでサンプルを採取し、引張試験により、引張り強さを、捻回試験によってデラミネーション特性を調べた結果を表2に示す。表1、表2のA〜Pが本発明例で、その他は比較例である。同表に見られるように本発明例はいずれも伸線前線材のフェライト面積率が20%以上50%以下であり、5以上の真ひずみにて直径0.15〜0.4mmまで伸線した場合に、引張り強さ2800MPa以上でかつデラミネーションが発生していない。
【0030】
比較例であるQ、R、Tは、パテンティング前の温度が適当でなかったために、フェライト面積率が20%未満であり、伸線後の強度は2800MPa以上であるもののデラミネーションが発生した例である。
【0031】
比較例であるSは、パテンティング前の温度が適当でなかったために、フェライト面積率が50%を超えており、伸線後デラミネーションは発生しないものの強度が2800MPa未満であった例である。また、比較例であるUは炭素量の高い鋼材を用いたため、所定の線径まで伸線できずに破断した例である。
【0032】
更に、比較例であるWはパテンティング処理温度が低すぎたためにパーライト組織が粗く、一部ベイナイトが発生したため、伸線後の強度が2800MPaに達しなかった例であり、比較例であるV,Xはいずれも従来の製造方法で製造したものである。完全オーステナイトである温度域からパテンティングを施し、フェライト面積率がゼロに近い。所定の線径まで伸線できずに破断した例である。
【0033】
【表1】
【0034】
【表2】
【0035】
【発明の効果】
伸線工程中にパテンティング処理を施さなくとも製造可能な、強度・引張強さ等の機械的特性に優れた鋼線および同鋼線を製造するための線材、およびこれらの製造方法を提供するものであり、産業上の効果は極めて顕著なものがある。
【図面の簡単な説明】
【図1】伸線前線材のフェライトの面積%と伸線材にデラミネーションが発生する真ひずみの下限値の関係を示す図である。
【図2】伸線前線材のフェライトの面積%と伸線ひずみ5以上で伸線した場合の強度の関係を示す図である。
Claims (8)
- 質量%で、C:0.2〜0.55%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.1%、Al:0.01%以下(0%を含む)を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなり、フェライト面積率が20%以上50%未満で残部の90%以上がパーライトであることを特徴とする線径4〜7mmの高強度鋼線用線材。
- 更に、質量%で、Cr:0.5%以下(0%を含まない)、Ni:0.5%以下(0%を含まない)、Co:0.5%以下(0%を含まない)、V:0.5%以下(0%を含まない)、Cu:0.2%以下(0%を含まない)、Mo:0.2%以下(0%を含まない)、W:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.1%以下(0%を含まない)、Ti:0.01%以上0.1%以下、B:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種以上を含有することを特徴とする請求項1に記載の高強度鋼線用線材。
- 更に、前記フェライトの平均粒径が30μm以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の高強度鋼線用線材。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の線材を用いて製造された、2800MPa以上の引張り強さを満足し、かつ、ねじり試験時の縦割れ(デラミネーション)発生のない高強度鋼線。
- 請求項1または2記載の鋼成分の鋼片を熱間圧延し、次いで700℃以上1000℃以下の温度に冷却し、該圧延材の初析フェライトを面積率で20%以上50%以下とした時点で450℃以上600℃以下の温度に急冷し、引き続きこの温度でパテンティング処理を施すことを特徴とする高強度鋼線用線材の製造方法。
- 請求項1または2記載の鋼成分の鋼片を熱間圧延し、次いで700℃以上1000℃以下の温度に冷却し、その後450℃以上700℃以下の温度域を10〜50℃/secの冷速で冷却することを特徴とする高強度鋼線用線材の製造方法。
- 請求項1または2記載の鋼成分の線材を700〜850℃に再加熱し、初析フェライトを面積率で20%以上50%以下とした時点で450℃以上600℃以下の温度に急冷し、引き続きこの温度でパテンティング処理を施すことを特徴とする高強度鋼線用線材の製造方法。
- 請求項1〜3のいずれかに記載の線材に、再びパテンティング処理を施すこと無しに伸線を行うことによって、2800MPa以上の引張り強さを満足し、かつ、縦割れ(デラミネーション)発生のない鋼線を得ることを特徴とする高強度鋼線の製造方法。
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