JP3941749B2 - 軟質化鋼材の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、冷間加工性に優れる軟質な鋼材(棒鋼,線材等)の製造方法に関する。より詳しくは、熱間圧延された棒鋼や線材等の鋼材を軟化焼鈍や球状化焼鈍を施すことなく圧延ままで軟質化させる方法であって、棒鋼あるいは線材等を連続熱間圧延する際の加熱条件,粗圧延条件,中間圧延条件並びに仕上圧延条件、更には仕上圧延以降の温度履歴や冷却条件を調整することにより、強度バラツキが少なくて表層部にフェライト脱炭層を有さない“冷間加工性に優れる軟質化鋼材”を高い生産性の下で製造する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
一般に、熱間圧延にて製造された“JISのG3507に規定される冷間圧造用炭素鋼線材”や“JISのG3508に規定される冷間圧造用ボロン鋼線材"、あるいは熱間圧延にて製造された“JISのG4051,G4052,G4103,G4104,G4105,G4106等で規定された機械構造用鋼からなる棒鋼や線材”は、その後更に2次加工,3次加工と称されている伸線,引抜き,切断,鍛造,切削等の冷間での加工工程を経て所要の製品に仕上げられるのが普通である。
【0003】
しかし、熱間圧延されたままの上記棒鋼や線材の多くは、通常、その組織中にパーライト相,べイナイト相あるいはマルテンサイト相といった硬質相を有しており、そのため冷間加工性が劣る材料でもあった。そこで、これらの棒鋼,線材を製造する際には、熱間圧延後に軟化焼鈍や球状化焼鈍等の軟化熱処理を施して強度を低くし、これにより延性を高めて冷間加工性を向上させる手立てが採られてきた。
ところが、前記軟化熱処理には10〜20時間もの長時間を必要とすることが多く、そのため生産性の向上あるいは省エネルギーの観点から「熱間圧延後に軟化熱処理を施した場合と同等の軟質組織が圧延ままで得られる所謂“直接軟化”の技術」に対する要望が大きくなってきた。
【0004】
一般に、前述したJIS規格鋼の棒鋼や線材を軟化熱処理したものは炭化物が球状化した軟質組織となっており、同等の加工性を有する直接軟化材を得るためには、ベイナイト相やマルテンサイト相といった非常に硬い硬質相を可能な限り抑制し、軟質なフェライト相とパーライト相を主体とした組織とすることが必要である。加えて、可能な限りフェライト相の割合を高くしてパーライト相の割合を低くし、パーライト中のセメンタイト盤間隔を広くする必要がある。
【0005】
そのため、従来から、棒鋼,線材の連続熱間圧延における圧延条件や冷却条件を工夫して棒鋼や線材の製造過程での冷却速度を調整し、これにより軟化組織を得る技術が種々検討されてきた。
例えば、特開平2−185920号公報には、「熱間圧延により線材,棒鋼を製造する際に、 圧延を終了した後、500℃までを 0.1℃/秒以下の冷却速度で冷却することからなる直接軟化線棒材の製造方法」が提案されている。
【0006】
しかし、この方法では、例えば圧延終了温度が750℃以上となった場合には当然に750℃以上のオーステナイト域から緩冷却が開始されるので、フェライトとオーステナイトの2相領域を非常に遅い冷却速度で通過することとなり、そのため鋼材表層部に非常に多くの初析フェライト組織が生成し、甚だしい場合には鋼材表層全周にドーナツ状の初析フェライト(即ちフェライト脱炭層)が生じてしまって、前述したように焼入れ・焼戻し等の熱処理の際に表層硬度不良を引き起こすおそれがある。
【0007】
一方、特開平4−32514号公報には、「900〜1250℃に加熱した鋼に880℃以上の温度範囲で総減面率50%以上の圧延を施し、 その後880℃未満の温度範囲で“減面率10%以上の圧延を施した後、 直ちに鋼材表面温度が一旦Ms 点〜700℃となるように冷却し、 引き続き減面率10%以上の圧延を施す工程”を1回以上有する工程で圧延を行い、 最終出側での鋼材表面温度を750〜880℃とすると共に、 仕上圧延後は鋼材の表面温度が700〜800℃となるように急冷した後捲き取り、更にコイル状で700〜500℃の温度範囲を0.05〜 0.7℃/秒で冷却することからなる軟質線材の製造方法」が提案されている。
【0008】
しかし、この方法では、再結晶細粒化のために鋼材を一旦Ms 点〜700℃に急冷し引き続いて減面率10%以上の圧延を施す工程が必須であり、圧延機に対する負荷が大きいこのような“Ms 点〜700℃の低温域を圧延開始温度とする減面率10%以上の圧延”を行うためには設備的に多大な投資が必要となる。更に、急冷後の復熱が不十分なままで加工されるので組織的にも断面内の再結晶粒が不均一なものとなり、相変態後の軟質組織も不均一となる可能性がある。
また、仕上圧延後の徐冷開始温度は700〜800℃の範囲にあると考えられるが、これは2相領域を完全に回避しているとは言い難く、そのため鋼材表層部の初析フェライト生成量を完全に制御できないのでフェライト脱炭層の抑制が不十分であると言わねばならない。
更に、仕上圧延終了から徐冷開始までの時間が規定されておらず、仕上圧延後数秒以内に徐冷が開始された場合、徐冷開始から数十秒の間は過冷オーステナイトのままで徐冷されているために徐冷過程での十分なフェライト相変態,パーライト相変態が行われず、代わりにベイナイト相が生成してしまうので十分な軟質化効果が得られない。特に、捲取られた非同心円状のリング状材では線重なり量の少ないセンター部が線重なり量の多いエッジ部に比べて冷却速度が速いので、例え規定の徐冷条件を満足していてもセンター部はエッジ部に比べて徐冷開始までの時間確保が不十分となって過冷オーステナイト状態で徐冷される頻度が高くなり、そのためリング状材のセンター部で強度が高くなり易く、ひいてはリング状材の強度バラツキを生じてしまう。
【0009】
なお、上記の特開平4−32514号公報には、粒度調整を目的として素材鋼にTi,Nb,Vの1種以上を含有させることも提案されているが、このTi,Nb,Vの3元素は熱間加工後再結晶したオーステナイトからのフェライト相変態及びパーライト相変態を遅延させる作用を通じてベイナイト相の生成を助長してしまう元素でもあり、これらの元素の添加は軟質組織を実現する上で障害となるおそれがあった。
【0010】
また、特開2000−336456号公報には、「Ar3点からAr3点+150℃の温度範囲で熱間圧延を仕上げた後、700〜650℃の間を0.02〜 0.3℃/秒の冷却速度で冷却することからなる、線材,棒鋼の製造方法」が提案されている。
しかし、この方法も、前記の特開平4−32514号公報に示された方法と同様に徐冷開始温度の規定がないことからしてフェライト脱炭の発生を完全に抑制できるとは言い難い。また、規定された冷却速度はかなりの緩冷却条件と言えるが、この冷却速度では徐冷時間が167〜2500秒も必要であって生産能力の著しい低下につながるばかりか、徐冷のための大掛かりな設備が必要となって設備投資コストが多大なものとなる。
【0011】
更に、特開2000−336460号公報にも、「Ar3点からAr3点+150℃の温度範囲で熱間圧延を仕上げた後、700〜400℃の範囲内を5℃/秒以上の冷却速度で制御冷却し、続いて直ちに500〜700℃の炉雰囲気温度範囲に15分以上1時間未満保持することからなる、線材,棒鋼の製造方法」が示されている。
【0012】
しかしながら、この方法によれば、前記の特開2000−336456号公報に示された方法よりも更に長時間の徐冷もしくは長時間の炉雰囲気温度保持を必要とするので生産性の点で著しく不利となる。また、この方法では軟質組織を得やすくなるものの、2相域での滞留時間が非常に長くなってフェライト相変態が過剰に起こり、製品圧延材の表層部に脱炭が発生するおそれもある。更に、この方法を実施するためには圧延ラインの末端に熱処理炉を設置する必要があり、設備投資コストが多大なものとなる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
このようなことから、本発明が目的としたのは、従来の直接軟化技術に指摘される前記問題を解決し、熱間圧延のままの状態で冷間加工性に優れる軟質組織を有すると共に、表層部にフェライト脱炭層がなく、また長さ方向の強度バラツキが少ない軟質な鋼材(棒鋼,線材等)を高い生産性の下で製造する方法を確立することであった。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を行って幾つかの新しい知見を得ることができたが、以下その概要を説明する。
即ち、本発明者らは、まず、C:0.36%(以降、 成分割合を表す%は重量%とする),Si:0.21%,Mn:0.80%,P:0.020%,S:0.005%,Ni:0.04%,Cr:1.12%,Mo:0.21%を含み、残部がFe及び不純物である鋼(JISのSCM435相当鋼)の熱間圧延線材を準備し、これを機械加工によって「φ8mm×12mm」に加工して試験片を作成した。そして、この試験片を用い、熱間加工再現試験機{富士電波工機 (株) 製の THERMECMASTOR−Z}により以下の (a)〜 (c)項に示す実験を行った。
【0015】
(a) 実験1
加熱温度: 1050℃,
粗加工条件: 加工温度T℃,据込率30%,歪速度1/秒,
仕上加工条件: 加工温度950℃,据込率50%,歪速度10/秒,
粗加工と仕上加工のパス間時間: t秒
で熱間加工した後、室温まで緩冷却して組織観察する実験。
【0016】
図1は、前記熱加工履歴を加えた試験片の断面組織を観察した結果を示したグラフである。
この図1に示された結果によると、パス間時間が 0.5〜10秒でかつ粗加工温度が750〜800℃の場合にのみフェライト+パーライトの軟質組織が得られている。一方、これよりもパス間時間が長い条件、及び粗加工温度が高い条件では、硬質相であるベイナイト相を含んだ組織となっている。
【0017】
そこで、前記軟質化組織が得られる現象を、更に実圧延で検証した結果、次の結論に達した。
即ち、粗圧延や中間圧延のように歪速度が遅い領域においては、850℃未満の温度範囲で圧延するとその後30秒以下の間はオーステナイトの再結晶は起こらず、オーステナイト中に加工歪が導入される。この加工歪は、850℃未満の温度範囲で次パスまでのパス間時間を30秒以下とする圧延を1回以上繰り返すことによって導入可能である。そして、この加工歪を導入した未再結晶オーステナイトを引き続く圧延パスで再結晶させた場合にはオーステナイト粒を8〜9番程度に細粒化することが可能で、これによりフェライト変態やパーライト変態が促進されてベイナイト変態が抑制される。
【0018】
つまり、850℃未満の温度範囲でパス間時間を30秒以下とする圧延を1回以上繰り返すと粗圧延や中間圧延で生成した未再結晶オーステナイトが加工歪を蓄積し、続く圧延パスにおいてこの加工歪が再結晶の核となって再結晶が速やかになされると同時にこの加工歪が解放され、非常に微細な再結晶オーステナイトが生成されるようになる。そのため、その後のフェライト変態やパーライト変態が促進されてベイナイト変態が抑制される。
【0019】
(b) 実験2
加熱温度: 1050℃,
熱間加工条件: 加工温度850℃,据込率50%,歪速度10/秒,
加工後の過冷条件: “過冷なし”又は“550℃まで過冷”,
の処理を施したものを600〜750℃で等温変態させ、変態開始時間と変態終了時間を測定する実験。
【0020】
図2は、上記実験2で得られた等温変態曲線(T.T.T.)である。
この図2によると、550℃まで急冷させてオーステナイトを一旦過冷させたもの(図2中の▲2▼)は、過冷させてないもの(図2中の▲1▼)に比べて、熱間加工後のフェライト変態開始時間(Fs)およびパーライト変態開始時間(Ps)、パーライト変態終了時間(Pf)が数秒短くなっている。
即ち、熱間加工後に再結晶したオーステナイトは、一旦過冷した場合にフェライト変態およびパーライト変態を促進することが分かる。
つまり、通常は、熱間加工と同時に加工歪がオーステナイト中に導入され、オーステナイトが再結晶すると同時に加工歪の解放が起こって再結晶粒の回復が進むが、熱間加工後に一旦「Ms 点〜650℃」の温度範囲まで急冷するとこれにより加工歪の解放が抑えられて再結晶粒の回復が抑制され、結果として、回復が抑制された再結晶オーステナイトはフェライト変態およびパーライト変態を促進するものと考えられる。
【0021】
なお、本実験では熱間加工後の相変態を等温条件下(所謂“等温変態”下)で行ったが、これは相変態挙動と時間因子を正確に調査するために等温変態を選択しただけの理由からである。
そこで、連続冷却条件下でも過冷によるフェライト変態及びパーライト変態の促進効果が得られるか否かの検証圧延を行った。
【0022】
即ち、JISのSCM435相当鋼及びSCM440相当鋼をφ10mm〜φ14mmに線材圧延する試験を実施したが、この際、仕上圧延機と捲取機の間に設置された製品水冷設備の水量や圧延速度を変えることによって仕上圧延後の過冷温度が種々の値となるように図った。また、捲取後は、徐冷カバーを使用し、リング状に捲取られた線材(コイルリング)の冷却速度を 0.1〜 0.5℃/秒の範囲に制御した緩冷却条件を創出した。そして、このようにして得られた線材を引張試験に付し、引張強度TSを測定した。なお、測定は、リング状に捲取られた線材のコイル胴中部から3リング以上試料採取を行い、各リングの8箇所以上の部位で実施した。
【0023】
図3は、上記試験で得られた過冷温度と引張強度の関係を示すグラフである。この図3に示される結果は、Ms 点〜650℃の温度範囲に過冷された条件のものはそれ以外の条件のものに比べて引張強度が低いことを示しており、これによって過冷によるフェライト変態及びパーライト変態の促進効果を確認することができた。
【0024】
(c) 実験3
加熱温度: 1150℃に5分間加熱,
第1加工条件:加工温度1000℃,据込率30%,歪速度10/秒,
第2加工条件:加工温度800℃,据込率50%,歪速度10/秒,
の条件で熱間加工した後、90℃/秒〜0.08℃/秒の冷却速度で100℃まで冷却して連続冷却変態曲線(C.C.T.)を作成する実験。
【0025】
図4は、上記実験3で得られた連続冷却変態曲線(C.C.T.)である。
この図4によると、熱間加工を加えた連続冷却変態線図(所謂、 加工C.C.T.)は、オーステナイト化後に連続冷却させる一般的な連続冷却変態線図(日本金属学会編「改訂3版金属データブック」P.442 等を参照)と比較するとフェライト及びパーライトノーズが高温短時間側に移動しており、熱間加工を加えることで再結晶オーステナイトからのフェライト変態及びパーライト変態が促進されることが分かる。
【0026】
また、上記図4からは、ベイナイト変態を抑制して(ベイナイト分率を低下して)フェライト+パーライト組織を得るためには、650〜750℃の温度域に保持するか、この温度域から緩冷却するのが良いことも分かる。
【0027】
更に、ベイナイト変態を抑制してフェライト+パーライト組織を得るための最適な冷却条件が、熱間加工から25秒以上経過した後、650〜750℃の温度域に保持するかあるいはこの温度域から緩冷却を開始する条件であることも分かる(図4中の▲2▼及び▲3▼)。
なお、図4中の曲線▲1▼は、熱間加工からの経過時間が25秒未満の状態から緩冷却を開始した場合には、フェライト及びパーライトノーズよりかなり手前から徐冷され、ベイナイト分率が高くなる傾向を示している。即ち、25秒未満から徐冷を開始しても、フェライトおよびパーライトノーズに達するまでの間は、過冷オーステナイト状態で徐冷されているだけであり、そのためノーズ通過以降に十分なフェライト変態,パーライト変態が行われにくくてベイナイト組織が生成する(ベイナイト分率が上昇する)ことが懸念される。従って、緩冷却(徐冷)により十分な軟質化効果を得るためには、徐冷開始ポイントをフェライト及びパーライトノーズを通過した以降とすること、即ち徐冷開始を熱間加工から25秒以上経過した後とするのが好ましいと言える。
【0028】
ところで、図5は、今回の上記実験等により明らかとなった「熱間圧延によって鋼材(線材,棒鋼等)の直接軟化を実施する際の好適な熱履歴」を基にして、これに冶金学的メカニズムを付与した模式図である。
この図5からは、仕上圧延を終了した鋼材をある一定の温度(650〜750℃)から600℃程度までの温度区間に550〜900秒の間だけ滞在させることにより、オーステナイトからのフェライト相変態及びパーライト相変態が十分に終了し、製品圧延材に良好な軟質組織を実現できることが分かる。
【0029】
一般に、直接軟化の熱間圧延では仕上圧延後に緩速冷却による徐冷が行われ、冷却速度が遅く規定される。しかし、この場合、徐冷の完了温度は、連続冷却曲線などから考えて400〜500℃程度とすることが多く、単に冷却速度を遅く設定するだけでは、莫大な時間を要してしまう。
ところが、本発明者らが得た前記図5に示されるような知見によると、600℃までの温度区間を550〜900秒の時間をかけて徐冷するか、この温度区間に550〜900秒間保持すると、フェライト相変態及びパーライト相変態はほぼ終了し軟質組織が得られる。これは、図5に示されるように、フェライト相変態及びパーライト相変態が起きる2相領域に550〜900秒間滞在させることで等温変態的な挙動が生じるためであると考えられる。
【0030】
本発明者らは、実験1〜3による上記知見事項に加えて、更に次の事項をも確認することができた。
a) 軟質化鋼材を製造するための素材鋼が、最終製品(軟質化鋼材に更なる処理を施した最終製品)の強度確保のためにCr,Ni及びMoの1種以上を含有している場合であっても、実験1〜3に基づいて知見した条件で熱間加工処理することにより、熱間加工のままの状態で冷間加工性に優れる高品質の軟質化鋼材を得ることができる。
b) 軟質化鋼材を製造するための素材鋼が、最終製品(軟質化鋼材に更なる処理を施した最終製品)の被削性確保のためにS,Pb及びCaの1種以上を含有している場合であっても、実験1〜3に基づいて知見した条件で熱間加工処理することにより、熱間加工のままの状態で冷間加工性に優れる高品質の軟質化鋼材を得ることができる。
c) V,Nb並びにTiの3元素が素材鋼中に特定量以上存在すると、熱間加工後に再結晶したオーステナイトからのフェライト相変態及びパーライト相変態を遅延させ、これによってベイナイト相の生成を助長する作用が顕著となるので、軟質化鋼材を製造するための素材鋼ではV,Nb,Tiの含有量を極力低減するのが好ましい。
【0031】
本発明は、上記知見事項等に基づいて完成されたものであり、次の▲1▼〜▲7▼項に示す軟質化鋼材の製造方法を提供するものである。
▲1▼ C:0.10〜0.50%,Si:0.50%以下,Mn:0.25〜2.00%,Al:0.005〜 0.070%を含むと共に、残部がFe及び不純物から成り、かつ不純物中のPが 0.035%以下でNが0.0250%以下である素材鋼を、下記 1) 〜 5) の工程で順次処理することを特徴とする、軟質化鋼材の製造方法。
1) 鋼片を850〜1250℃に加熱する,
2) 粗圧延及び中間圧延を730℃以上で行うと共に、この際に850℃未満の温度範囲で「減面率が10%以上であって次パスまでのパス間時間が30秒以下の圧延」を少なくとも1回以上行う,
3) 仕上圧延を、総減面率が30%以上で被圧延材の仕上圧延機出側温度が800〜950℃となるように行う,
4) 仕上圧延後、直ちに被圧延材をMs 点〜650℃の温度範囲まで一旦急冷する,
5) 続いて被圧延材を捲取機でリング状に捲取り、捲取ったリング状材の温度を650〜750℃に復熱させた後、この温度域から600℃までの温度区間に550〜900秒間滞在させる。
▲2▼ “仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるに際しての滞在開始”までの時間を25秒以上とする、前記▲1▼項に記載の軟質化鋼材の製造方法。
▲3▼ 素材鋼として、Feの一部に代えCr:0.10〜 2.0%,Ni:0.10〜 2.5%及びMo:0.10〜 1.0%の1種以上を含有する鋼を用いる、前記▲1▼項又は▲2▼項に記載の軟質化鋼材の製造方法。
▲4▼ 素材鋼として、Feの一部に代えS:0.025〜 0.100%,Pb:0.01〜0.35%及びCa:0.0005〜0.0050%の1種以上を含有する鋼を用いる、前記▲1▼項乃至▲3▼項の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
▲5▼ 不純物中のVが 0.005%未満である素材鋼を用いる、前記▲1▼項乃至▲4▼項の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
▲6▼ 不純物中のNbが 0.005%未満である素材鋼を用いる、前記▲1▼項乃至▲5▼項の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
▲7▼ 不純物中のTiが 0.005%未満である素材鋼を用いる、前記▲1▼項乃至▲6▼項の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
【0032】
【発明の実施の形態】
次に、本発明に係る軟質化鋼材(棒鋼,線材等)の製造方法において、素材鋼の化学組成並びに処理条件を前記の如くに限定した理由を、発明の実施形態と共に説明する。
【0033】
[A] 素材鋼の化学組成
a) Cは、鋼の焼入性を高める作用を有しているので、最終製品強度を確保するのに有効な成分である。そして、この効果を得るためにはC含有量を0.10%以上とする必要があるが、その含有量が0.50%を超えると焼入性が高くなり過ぎて切削性や冷間加工性(冷間鍛造性等)を劣化させ、また靭性の劣化も招く。従って、C含有量は0.10〜0.50%と定めた。
【0034】
b) Siは、フェライト相強化元素であるため切削性や冷間加工性(冷間鍛造性等)を劣化させ、靭性の劣化も招く。更に、フェライトフォーマー元素(フェライト安定化元素)であるため熱間圧延過程でフェライト脱炭を助長するおそれもある。従って、Si含有量は上記の弊害が顕著化しない0.50%以下の範囲に抑えることとした。
なお、Si含有量の下限値は特に規定する必要はないが、Si脱酸の効果を期待するためにはSi含有量の下限値を0.10%とするのが良い。
【0035】
c) Mnも、鋼の焼入性を高める作用を有しているので、最終製品強度を確保するのに有効な成分である。そして、この効果を得るにはMn含有量を0.25%以上とする必要があるが、その含有量が2.00%を超えると焼入性が高くなり過ぎて切削性や冷間加工性(冷間鍛造性等)を劣化させ、また靭性劣化も招く。従って、Mn含有量は0.25〜2.00%と定めた。
【0036】
d) Alは、鋼の脱酸成分として有用である。また、Alは鋼中のNと結合し窒化物を形成し、熱間圧延中のオーステナイト結晶粒の微細化に効果を発揮する。しかし、Al含有量が 0.005%未満の場合にはこれらの効果が十分に発揮されず、一方、 0.070%を超えて含有させてもその効果が飽和するばかりか、逆に靭性を劣化させる。従って、Al含有量を 0.005〜 0.070%と定めた。
【0037】
e) Pは、鋼中に不純物として存在し、粒界に偏析して冷間加工性を著しく劣化させる元素であり、また粒界の靭性を劣化させるために耐遅れ破壊性の劣化を招く元素でもある。従って、P含有量は上記の弊害がそれほど顕著化しない 0.035%以下の範囲に抑えることとしたが、この許容範囲内でも可能な限り低くすることが好ましい。
【0038】
f) Nも、鋼中に不純物として存在する元素であり、Alと結合してAlNを形成し熱間圧延中のオーステナイト結晶粒の微細化に効果があるが、多量に含有すると鋼材の靭性を劣化させる。従って、N含有量は上記の弊害がそれほど顕著化しない0.0250%以下の範囲に抑えることとしたが、この許容範囲内でも可能な限り低くすることが好ましい。
【0039】
g) 本発明に係る軟質化鋼材の製造方法に適用される素材鋼(鋼片)は、前記の化学成分を含有すると共に残部はFe及び不純物からなるものであるが、Feの一部に代えてCr:0.10〜 2.0%,Ni:0.10 〜 2.5%及びMo:0.10〜 1.0%の1種以上を含有させても良い。
これらの成分は、何れも鋼の焼入性を高めて最終製品強度を確保するが、それぞれの成分の含有量がそれぞれの下限値未満の場合には前記効果が十分でない。一方、これらの成分を多量に含有させると、焼入性が高くなり過ぎて熱間圧延のままでベイナイト組織,マルテンサイト組織を生成し、均一な軟質組織が確保できなくなるだけでなく、鋼材コストの上昇をも招く。従って、これらの成分を含有させる場合には、それぞれの含有量範囲をCr:0.10〜 2.0%,Ni:0.10〜 2.5%,Mo:0.10〜 1.0%に規制することと定めた。
【0040】
h) 本発明に係る軟質化鋼材の製造方法に適用される素材鋼(鋼片)は、前記成分のほか、更にFeの一部に代えてS:0.025〜 0.100%,Pb:0.01〜0.35%及びCa:0.0005〜0.0050%の1種以上を含有させても良い。
これらの成分は何れも鋼の被削性を向上させるのに有効な元素であるが、それぞれの元素の含有量がそれぞれの下限値未満の場合には前記効果が十分でない。一方、これらの成分を多量に含有させてもその効果が飽和するだけでなく、逆に靭性の劣化を招く。従って、これらの成分を含有させる場合には、それぞれの含有量範囲をS:0.025〜 0.100%,Pb:0.01〜0.35%,Ca:0.0005〜0.0050%に規制することと定めた。
【0041】
i) 本発明に係る軟質化鋼材の製造方法に適用される素材鋼(鋼片)は、前記の化学成分を含有すると共に残部はFe及び不純物からなるものであるが、製造される鋼材(棒鋼,線材等)を更に軟質化させるためには不純物中のVを 0.005%未満に制限するのが好ましい。また、同様の目的で不純物中のNbを 0.005%未満に制限するのも好ましい。更に、同じ目的で不純物中のTiを 0.005%未満に制限するのも好ましい。
即ち、これらV,NbあるいはTiが上述した上限値を超えて素材鋼中に含まれると、熱間加工後再結晶したオーステナイトからのフェライト相変態及びパーライト相変態を遅延させるためにベイナイト組織の生成を助長してしまい、製造される鋼材に十分な軟質組織が得られないおそれがある。そのため、V,NbあるいはTiの含有量はV:0.005%未満,Nb:0.005%未満,Ti:0.005%未満に規制することが推奨される。
【0042】
[B] 素材鋼の処理条件(鋼材製造条件)
a) 工程1)について
素材鋼(鋼片)の加熱温度が850℃未満では、圧延機に対する負荷が大きくなると共に、鋼片断面内で均一な温度分布を得るために長時間の加熱が必要となって生産性を阻害する上、圧延時における表面疵の発生原因ともなる。一方、鋼片の加熱温度が1250℃を超えると加熱中における脱炭層の発生量が急激に増加し、最終製品の脱炭層発生を防止することが困難となる。従って、鋼片の加熱温度は850〜1250℃と定めた。
なお、本発明において「温度」とは特に指定のない場合は鋼片,被圧延材又は圧延を終えてリング状に捲取られたコイルの表面温度を意味するものである。
【0043】
b) 工程2)について
粗圧延及び中間圧延での圧延温度及び通材温度が730℃未満となった場合、鋼材表層部においてフェライト変態が開始してオーステナイトとフェライトの2相組織となる。そして、この鋼材表層部に生成したフェライト相は引き続く仕上圧延や復熱などによってオーステナイトに逆変態するものの、再びオーステナイトからフェライトに変態する際にフェライト変態を促進するため、表層部にフェライト脱炭層を形成し易くなり、所定部品加工後の焼入れ・焼戻しなどの熱処理の際に表層硬度不良を引き起こす可能性がある。従って、粗圧延及び中間圧延を730℃以上で実施することと定めた。
【0044】
また、この際、850℃未満の温度範囲で「減面率が10%以上であって次パスまでのパス間時間を30秒以下とする圧延」を少なくとも1回以上行うことによって加工歪が導入された未再結晶オーステナイトを得ることができ、そのため続く圧延パスでこの未再結晶オーステナイトを再結晶させれば8〜9番程度までオーステナイト粒を細粒化することが可能となって、フェライト相変態やパーライト相変態が促進されベイナイト相変態が抑制される。
なお、この850℃未満での未再結晶圧延は、任意の圧延スタンドにおいて連続もしくは不連続で1回以上行えば良く、これによってフェライト変態やパーライト変態の促進効果が認められる。また、未再結晶圧延に続く再結晶圧延も、粗圧延や中間圧延、更には仕上圧延における任意の圧延スタンドで行えば良い。
【0045】
ここで、当該圧延の圧延温度が850℃以上であるとオーステナイトが再結晶するために加工歪の蓄積が不十分となり、前述した細粒化効果,フェライト相変態やパーライト相変態の促進効果が得られない。また、前記のパス間時間が30秒を超えると、加工歪が静的に解放されてオーステナイトが静的に再結晶するために前述した細粒化効果が得られない。更に、前記の減面率が10%未満では、加工度が小さいために加工歪の導入が不十分である。
【0046】
ところで、上記「温度」は、例えば粗圧延機列と中間圧延機列との間に被圧延材の材料表面温度を測定できる温度計を複数個設置すると共に、圧延中、各温度計からの温度データを常時測定し、この測定結果に基づき圧延速度を変化させるなどして制御することができる。
【0047】
c) 工程3)について
仕上圧延における総減面率を30%以上としたのは、再結晶によるオーステナイト結晶粒を微細化し、焼入性を低下させ、その後の相変態における初析フェライトの生成を促進させるためである。この総減面率が30%未満ではその効果が不十分である。
【0048】
また、被圧延材の仕上圧延機出側温度が800℃未満であると、圧延負荷が高くなり過ぎるために生産性を阻害したり設備故障の原因となるほか、オーステナイトの再結晶化が不十分なために部分的に未再結晶域で圧延されることとなり、製品における圧延材ミクロ組織が長手方向へバンド状となって冷間鍛造時の加工割れを助長する。一方、被圧延材の仕上圧延機出側温度が950℃を超えるような場合には、再結晶後のオーステナイト粒が粗大化してしまうために焼入性が高くなり、十分な軟質組織が得られない。従って、仕上圧延は、総減面率が30%以上で被圧延材の仕上圧延機出側温度が800〜950℃となるように実施することと定めた。
【0049】
なお、上記の「温度」は、例えば仕上圧延機列の直前及び途中に水冷設備を設置し、また仕上圧延機列の出側に被圧延材の表面温度を測定できる温度計を設置して、測定した温度に応じて水冷設備の冷却水量や圧延速度を変化させることにより制御することができる。
【0050】
d) 工程4)について
仕上圧延後は直ちに前記被圧延材をMs 点〜650℃の温度範囲まで一旦急冷するが、この工程は本発明において極めて重要である。
即ち、仕上圧延後、直ちに被圧延材をMs 点〜650℃の温度範囲まで急冷すると、再結晶したオーステナイトが一旦過冷されることによってその後の所定温度区間滞在工程でのフェライト変態及びパーライト変態が著しく促進されてフェライト変態及びパーライト変態が早く始まりそれらの十分な変態が早く終了することとなるので、フェライト分率,パーライト分率が高くなり、その分だけベイナイト分率,マルテンサイト分率が低くなって速やかにかつ安定して軟質組織が得られるようになる。
【0051】
この場合、急冷温度がMs 点未満にまで達すると急冷過程で既にマルテンサイト変態が起こり、これがそのまま製品に残存して製品の強度を著しく上昇させ冷間加工性を劣化させる。一方、上記急冷温度が650℃にまで達しなかった場合には、前記の過冷オーステナイトを利用したフェライト変態及びパーライト変態の促進効果が得られない。
【0052】
なお、上記「急冷温度」については、例えば仕上圧延機列の出側から捲取機までの間に水冷設備及び被圧延材の表面温度を測定できる温度計を設置し、測定した温度に応じて水冷設備の冷却水量や圧延速度を変化させることにより制御することができる。
【0053】
ところで、本発明で言う「Ms 点」とは、鋼(被圧延材)の成分含有量を下記の式に代入して算出される値を意味するものである。
Figure 0003941749
【0054】
e) 工程5)について
本発明では、仕上圧延後に一旦急冷した被圧延材を捲取機でル−ズな非同心円のリング状に捲取ってから保有熱等により650〜750℃に復熱させ、この温度域から600℃までの温度区間に550〜900秒間滞在させる処理がなされる。
この際、捲取機で捲取ったリング状材の温度が750℃を超えてしまってこの温度から550〜900秒間の滞在処理を実施した場合には、フェライトとオーステナイトの2相域で長時間保持される状態が懸念され、このような状態に置かれると鋼材(リング状の捲取り材)表面の初析フェライト生成が必要以上に助長されてフェライト脱炭層の発生を回避できなくなる。一方、リング状材の復熱温度が650℃未満であると、その温度から600℃までの温度区間が短いために軟質組織の形成に極めて厳密な温度制御を有することとなり、実際作業上の困難性が増大する。
【0055】
650〜750℃に復熱せしめられたリング状材は、この温度域から600℃までの温度区間に550〜900秒間滞在せしめられることによって十分な軟質組織の形成が図られるが、この時間は再結晶オーステナイトからのフェライト変態及びパーライト変態を終了させるための時間であり、当該時間が550秒未満では、上記フェライト相とパーライト相からなる軟質組織を十分に得ることができず、C濃度の高いオーステナイトから硬質組織であるベイナイト組織の生成を招く。一方、軟質組織を得る上では前記時間の上限を定める必要はないが、この時間が長いと生産性の点で不利になる上、フェライト脱炭層の発生を助長するおそれや、酸洗性を劣化させる厚いスケールを生成させるおそれがあるので、上限を900秒とした。
【0056】
なお、“生産性の向上",“フェライト脱炭抑制”あるいは“酸洗性を考慮した生成スケ−ルの厚肉化の抑制”という観点からすれば、前記温度区間に550〜900秒間滞在させた後は放冷とするのが望ましく、より好ましくは急冷とするのが良い。
ここで、前記温度区間に550〜900秒間滞在させるための手法としては、当該滞在時間を満足する緩冷却(十分な軟質組織を安定して得るためには冷却速度0.01℃/秒未満の緩冷却が好ましい)あるいは等温保持が適用される。
【0057】
一般に熱間圧延を施された鋼材のフェライト相変態,パーライト相変態は連続冷却により行われるとされるているが、本発明法に従った処理過程では再結晶オーステナイトからのフェライト変態及びパーライト変態は極めて等温変態に近い挙動の下で生じるので、相変態に要する時間のみを管理すれば、フェライト相とパーライト相を主体とした軟質組織が得られる。そのため、前記温度区間の冷却速度は0℃/秒(所謂“等温変態”)でも構わないわけである。
【0058】
一旦急冷した被圧延材を650〜750℃に復熱させ、この温度域から600℃までの温度区間に550〜900秒間滞在させる処理の実施には、例えばヒーター等の加熱装置を有した徐冷カバーや徐冷ポットを設置する手段を採用することができる。また、550〜900秒間の滞在を開始する鋼材温度は、例えば捲取機から徐冷カバーの間にコンベア設備を設置すると共に、徐冷カバー直前にリング状材(鋼材)の表面温度を測定できる温度計を設置し、測定した温度に応じてコンベア速度を変化させることで制御できる。そして、前記温度区間における滞在時間の制御は、コンベア速度を調整したり、ポット内での滞在時間を調整することにより可能である。
【0059】
この方法によれば、数千秒もの長時間徐冷を必要としないので生産性の阻害もなく、規定した必要十分な滞在時間を確保すればその後の冷却は放冷もしくは急冷でも良いので、さらに生産性を向上させることも可能であり、また余分な脱炭を助長することもない。
【0060】
ところで、本発明に係る軟質化鋼材の製造方法においては、“仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるに際しての滞在開始”までの時間を25秒以上に調整することが推奨される。
なぜなら、当該時間が25秒未満の場合には、鋼材(リング状材)が過冷オーステナイトを有したままの状態で前記温度区間にて550〜900秒間滞在せしめられることになりがちで、そのため前記温度区間での滞在中に十分なフェライト変態,パーライト変態が行われずにベイナイト組織が生成し、軟質化効果が十分に得られないことが懸念されるからである。
また、当然、捲取られたリング状材のエッジ部(両外側部)とセンター部(リング状の中央を結ぶ領域部)では放冷速度が異なるので、仕上圧延終了から前記滞在処理の開始までの時間を十分に採って復熱温度の均一化を図らないとリング内での材料強度がばらついてしまうおそれもある。
【0061】
しかし、“仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるにあたっての滞在開始”までの時間を25秒以上に制御した場合には、エッジ部とセンター部の温度状態が多少ばらついていてもそのバラツキを最小限に抑えることができ、従ってリング内での材料強度バラツキも最小限にくい止めることが可能である。
この観点からは、“仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるにあたっての滞在開始”までの時間は長くても差し支えないが、生産性を考慮すると100秒以下に止めるのが妥当であると考えられる。
【0062】
なお、“仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるに際しての滞在開始”までの時間は、例えば圧延速度や捲取機から徐冷設備までの間のコンベア速度を変化させることにより制御可能である。また、予め、この時間を考慮して捲取機から徐冷設備までの間に設置するコンベアの長さを設計しておくことも考慮すべきである。
【0063】
以下、本発明を実施例によって説明する。
【実施例】
表1に示す化学成分組成の鋼をそれぞれ転炉溶製した後(必要に応じて炉外精錬も加えた)、これを連続鋳造し、更に分塊圧延にて2Ton ビレットを作成して供試材とした。
【0064】
【表1】
Figure 0003941749
【0065】
次に、このビレットを表2又は表3に示す条件で熱間圧延して直径がφ5.5mm 乃至はφ18mmの線材又は棒鋼とし、直ちに表2又は表3に示す熱履歴で捲取り冷却制御した。
なお、圧延材の直径は粗圧延,中間圧延,仕上圧延の総減面率を変えることによって造り分けた。
【0066】
【表2】
Figure 0003941749
【0067】
【表3】
Figure 0003941749
【0068】
このようにして得られたリング状の線材コイル及び棒鋼コイルにつき、通常の端切り処理を行った後、コイル全長、即ち先端,胴中,後端の5箇所以上から各1リングずつ試料採取し、引張試験及びミクロ観察を実施した。
なお、引張試験は各リングについて8件以上行い、その引張強さの平均値(以下“引張平均強度”と称す)と最大値/最小値の差(以下“引張強度バラツキ”と称す)を確認した。
また、ミクロ観察試料は各リングから3件以上採取し、その横断面表層部におけるフェライト脱炭層の有無を各試料当り8箇所で確認した。
これらの結果を表2及び表3に併せて示す。
【0069】
さて、表2に示す結果から明らかなように、本発明方法(区分1〜24)によれば、何れも引張平均強度が850MPa以下、引張強度バラツキも100MPa未満で、表層部に脱炭が発生していない軟質棒鋼,線材が得られている。
【0070】
また、V,Nb,Tiをそれぞれ 0.005%未満, 0.005%未満, 0.005%未満に管理したものは、これらの元素をそれら管理値を超える“不純物レベルの量”で含有しているものに比べて引張強度バラツキが低くなっていることも確認できる。これは、表2における区分6(D鋼を適用)と区分9(E鋼を適用)との結果の対比、区分11(F鋼を適用)と区分12及び13(G鋼及びH鋼を適用)との結果の対比、区分15(J鋼を適用)と区分18(K鋼を適用)との結果の対比、区分22(M鋼を適用)と区分23(N鋼を適用)との結果の対比より明らかである。
【0071】
更に、“仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるに際しての滞在開始”までの時間を25秒以上に管理すると、このような管理を行わない場合に比べて引張平均強度が低く、引張強度バラツキも小さくなって、冷間加工性が一段と向上することが分かる。
これは、区分5と区分4(何れもC鋼を適用)との結果の対比、区分6と区分7(何れもD鋼を適用)との結果の対比、区分11と区分10(何れもF鋼を適用)との結果の対比、区分15と区分16(何れもJ鋼を適用)との結果の対比より明らかである。
【0072】
これに対して、表3の結果が示すように、圧延条件や熱履歴が本発明の規定条件から外れた方法(区分25〜48)では、得られた棒鋼,線材は表層部に脱炭が生成したり、引張強度の上昇やバラツキが顕著となっている。
【0073】
例えば、粗圧延から中間圧延の工程で被圧延材の温度が730℃未満となったもの(区分27,41,45)や、再結晶オーステナイトからのフェライト変態及びパーライト変態を行わせるための熱処理の開始温度が750℃を超えたもの(区分28,29,31,34,38〜40,42,46〜48)では、得られた棒鋼,線材の表層にフェライト脱炭を発生している。
また、それ以外の条件が本発明の規定から外れているもの(区分25,26,30,32〜33,35〜37,42〜44)については、引張強度が本発明に係るものよりも高く、引張強度のバラツキも100MPa以上となっている。
【0074】
【発明の効果】
以上に説明した如く、この発明によれば、熱間圧延のままの状態で、表層部に脱炭層がなく、かつ軟質組織を有し、しかも強度バラツキが少ない冷間加工性に優れた軟質化鋼材(棒鋼,線材等)を優れた生産性の下で製造することが可能になるなど、産業上有用な効果がもたらされる。
【図面の簡単な説明】
【図1】JISのSCM435相当鋼における熱加工履歴(粗加工温度及び加工間のパス間時間)とミクロ組織の関係を示したグラフである。
【図2】JISのSCM435相当鋼における熱間加工後の等温変態曲線(T.T.T.)である。
【図3】JISのSCM435相当鋼及びSCM440相当鋼における仕上圧延後の過冷温度と得られた圧延材の引張強度との関係を示したグラフである。
【図4】JISのSCM435相当鋼における熱間加工終了後の連続冷却変態曲線(C.C.T.)である。
【図5】本発明法による直接軟化鋼材の製造方法に係る熱履歴と冶金学的メカニズムの模式図である。
【符号の説明】
Fs:フェライト変態開始時間
Ps:パーライト開始時間
Pf:パーライト変態終了時間

Claims (7)

  1. 重量%にて、C:0.10〜0.50%,Si:0.50%以下,Mn:0.25〜2.00%,Al:0.005〜 0.070%を含むと共に、残部がFe及び不純物から成り、かつ不純物中のPが 0.035%以下でNが0.0250%以下である素材鋼を、下記1)〜5)の工程で順次処理することを特徴とする、軟質化鋼材の製造方法。
    1) 鋼片を850〜1250℃に加熱する,
    2) 粗圧延及び中間圧延を730℃以上で行うと共に、この際に850℃未満の温度範囲で「減面率が10%以上であって次パスまでのパス間時間が30秒以下の圧延」を少なくとも1回以上行う,
    3) 仕上圧延を、総減面率が30%以上で被圧延材の仕上圧延機出側温度が800〜950℃となるように行う,
    4) 仕上圧延後、直ちに被圧延材をMs 点〜650℃の温度範囲まで一旦急冷する,
    5) 続いて被圧延材を捲取機でリング状に捲取り、捲取ったリング状材の温度を650〜750℃に復熱させた後、この温度域から600℃までの温度区間に550〜900秒間滞在させる。
  2. “仕上圧延終了”から“リング状材を650〜750℃に復熱させた後600℃までの温度区間で550〜900秒間滞在させるに際しての滞在開始”までの時間を25秒以上とする、請求項1に記載の軟質化鋼材の製造方法。
  3. 素材鋼として、Feの一部に代えCr:0.10〜 2.0%,Ni:0.10〜 2.5%及びMo:0.10〜 1.0%の1種以上を含有する鋼を用いる、請求項1又は2に記載の軟質化鋼材の製造方法。
  4. 素材鋼として、Feの一部に代えS:0.025〜 0.100%,Pb:0.01〜0.35%及びCa:0.0005〜0.0050%の1種以上を含有する鋼を用いる、請求項1乃至3の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
  5. 不純物中のVが 0.005%未満である素材鋼を用いる、請求項1乃至4の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
  6. 不純物中のNbが 0.005%未満である素材鋼を用いる、請求項1乃至5の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
  7. 不純物中のTiが 0.005%未満である素材鋼を用いる、請求項1乃至6の何れかに記載の軟質化鋼材の製造方法。
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