JPH08253809A - 加工硬化した球状化組織を有する鋼材の軟化焼鈍方法 - Google Patents

加工硬化した球状化組織を有する鋼材の軟化焼鈍方法

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JPH08253809A
JPH08253809A JP5311395A JP5311395A JPH08253809A JP H08253809 A JPH08253809 A JP H08253809A JP 5311395 A JP5311395 A JP 5311395A JP 5311395 A JP5311395 A JP 5311395A JP H08253809 A JPH08253809 A JP H08253809A
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steel material
sec
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JP5311395A
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English (en)
Inventor
Yoshihiro Ofuji
善弘 大藤
Kenji Aihara
賢治 相原
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Nippon Steel Corp
Original Assignee
Sumitomo Metal Industries Ltd
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Publication date
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Abstract

(57)【要約】 【目的】冷間加工を受けて加工硬化した球状化組織を有
する棒鋼や線材を短時間で軟化し、冷間加工を受ける前
と同等以上の特性を付与することが可能な、軟化焼鈍方
法の提供。 【構成】温度T1 に3℃/秒以上の加熱速度で昇温した
後、直ちに温度T2まで3℃/秒以上の冷却速度で冷却
し、更に、温度T3 までを0.02〜5℃/秒の冷却速
度で冷却する、球状化焼鈍を行った後に冷間加工を施し
た、重量%で0.2〜1.5%のC、0.5〜3.0%
のMn+Crおよび0〜0.6%のMoを含有する鋼材
の軟化焼鈍方法。温度T2 から温度T4 まで任意の冷却
速度で冷却して、温度T4 からAe1点−50℃の温度域
で5〜60分保持しても良い。但し、Ae1点+10℃≦
T1 ≦Ae1点+180℃、Ae1点−30℃≦T2 ≦Ae1
点+50℃、T3 ≦Ae1点−50℃、T2 ≦T1 、Ae1
点−50℃≦T4 ≦Ae1点−5℃、T4 ≦T2 、かつ、
Ae1点(℃)=723 −10.7×Mn(%)+29.1×Si
(%)+16.9×Cr(%)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、加工硬化した球状化組
織を有する鋼材の軟化焼鈍方法に関し、より詳しくは、
加工硬化した球状化組織を有する棒鋼および線材などの
短時間軟化焼鈍方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、軸受け、ボルト並びに自動車部品
などの素材として用いられる棒鋼および線材には、後加
工である切断や冷間鍛造、更には切削などの冷間成形を
容易にする目的から、熱間圧延後に球状化焼鈍が施さ
れ、この処理には10〜25時間を要している。
【0003】このうち一部の棒鋼および線材について
は、主として下記(a)、(b)の理由から、球状化焼
鈍をした後で10〜50%の冷間加工(例えば冷間伸
線)を行い、その後更にもう一度長時間かけて2回目の
球状化焼鈍を施すことが行われている。
【0004】(a)球状化焼鈍処理を1回行うだけでは
球状化率が低く、従って冷間加工性が悪いために、冷間
成形の際に強加工を受けると「ワレ」が生じてしまう。
【0005】(b)棒鋼および線材ではロール孔型の保
有の問題などから熱間圧延鋼材のサイズ(直径)が多く
ないので、所望のサイズに調整するために冷間伸線など
の加工を施す場合が多く、このため加工硬化を起こし、
冷間成形の時に「ワレ」を生じてしまう。
【0006】この2回目の球状化焼鈍においても、機械
構造用鋼(例えば、JISのSCM435鋼)の場合で
10〜20時間、軸受鋼(例えば、JISのSUJ2
鋼)の場合では20時間以上も要しており、製造コスト
低減の観点から球状化焼鈍時間の短縮化に対する産業界
の要望が大きい。
【0007】球状化処理時間の短縮については、例えば
特開平2−221323号公報において、C含有量が
0.8重量%以下のパーライト組織を有する共析鋼また
は亜共析鋼に30%以上の冷間加工を加えた後、特定条
件で熱処理する球状化処理方法が提案されている。しか
しながら、球状化焼鈍を施して軟化させた場合とは異な
って、熱間圧延のままの硬いパーライト組織を有する鋼
材に30%以上の冷間加工を施すためには強力な加工機
が必要であるし、特に、鋼材のC含有量が高い場合には
極めて硬く、30%以上の冷間加工を行うことが困難な
場合も多い。更に棒鋼や線材の冷間加工として一般的な
冷間伸線の場合には、鋼板における冷間圧延の場合とは
異なって、特に鋼材の表層部に加工が集中するため、前
記公報における冷間加工の目的とするパーライト(層状
炭化物)の一様な分断・微細化が困難であり、加えて炭
化物からのクラックの発生やフェライトにおける加工硬
化が重なって、鋼材の表層部に「ワレ」を生ずるという
問題が避けられなかった。
【0008】特開昭61−153229号公報には、鋼
線素材をその仕上げ圧延時に制御圧延した後でマルテン
サイト組織にすることによって迅速球状化が可能な線材
の製造方法が開示されている。しかしながら、オーステ
ナイト未再結晶温度域で仕上げ圧延を行うのは圧延機へ
の負担が大きいばかりか、圧延の温度域や圧下率を制御
しなければならないので生産性が低下するという問題が
ある。更に、球状化焼鈍の時間は、例えば、20時間か
ら9.5時間へと約1/2に短縮できる程度であって、
処理時間の大幅な短縮は望めないものである。
【0009】ところで、前記の特開平2−221323
号公報や特開昭61−153229号公報に提案された
方法を用いれば、パーライト組織やマルテンサイト組織
を有する鋼材の球状化焼鈍時間の短縮は一応は可能であ
る。しかしながら、本発明の対象とする加工硬化した球
状化組織を有する鋼材を、短時間で軟質化する方法につ
いては一切言及されていない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、冷間
加工を受けて加工硬化した球状化組織を有する棒鋼や線
材を短時間で軟化し、これに冷間加工を受ける前と同等
以上の特性を付与することが可能な、棒鋼および線材の
短時間軟化焼鈍方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、実験・研
究を重ねた結果、冷間加工によって加工硬化した球状化
組織を有する棒鋼および線材に、冷間加工前と同等以上
の特性(冷間加工前と同等以上にして且つ85%以上の
球状化率、冷間加工前と同等以下の強度レベル)を付与
するためには、下記のからを満たさねばならないこ
とを知見した。
【0012】ここで前記の「球状化率」とは、顕微鏡観
察した時、「その視野における全炭化物数に対しての、
(短径)/(長径)の比が0.5以上である炭化物の割
合(%)」を意味する。
【0013】球状化組織のマトリックスであるフェラ
イトが再結晶するかオーステナイトに変態する温度以上
に加熱せねばならないこと。
【0014】溶解した球状セメンタイト中に固溶して
いるCrとMnとを拡散させてはならないこと。このた
めには急速加熱と急速冷却を行えばよいこと。
【0015】徐冷前に、未溶解の球状セメンタイトが
なるべく多く残存していること。
【0016】未溶解の球状セメンタイトをなるべく多
く残存させるためにはセメンタイト中にCrやMnなど
の第3元素が適正量溶存しておればよいこと。
【0017】球状セメンタイトを充分に成長させるた
めはAc1点直下近傍の温度域を徐冷するか、前記温度域
に保持すればよいこと。
【0018】上記知見に基づく本発明は下記(1)と
(2)に示す加工硬化した球状化組織を有する鋼材の軟
化焼鈍方法を要旨とする。
【0019】(1)球状化焼鈍を行った後に冷間加工を
施した、重量%で0.2〜1.5%のC、0.5〜3.
0%のMn+Crおよび0〜0.6%のMoを含有する
鋼材を、温度T1 に3℃/秒以上の加熱速度で昇温した
後、直ちに温度T2 まで3℃/秒以上の第1冷却速度で
冷却し、更に、温度T3 までを0.02〜5℃/秒の第
2冷却速度で冷却することを特徴とする、加工硬化した
球状化組織を有する鋼材の軟化焼鈍方法。
【0020】但し、Ae1点+10℃≦T1 ≦Ae1点+1
80℃、Ae1点−30℃≦T2 ≦Ae1点+50℃、T2
≦T1 、T3 ≦Ae1点−50℃、とする。
【0021】(2)球状化焼鈍を行った後に冷間加工を
施した、重量%で0.2〜1.5%のC、0.5〜3.
0%のMn+Crおよび0〜0.6%のMoを含有する
鋼材を、温度T1 に3℃/秒以上の加熱速度で昇温した
後、直ちに温度T2 まで3℃/秒以上の第1冷却速度で
冷却し、更に、温度T4 までは任意の第2冷却速度で冷
却し、温度T4 からAe1点−50℃の温度域で5〜60
分保持することを特徴とする、加工硬化した球状化組織
を有する鋼材の軟化焼鈍方法。
【0022】但し、Ae1点+10℃≦T1 ≦Ae1点+1
80℃、Ae1点−30℃≦T2 ≦Ae1点+50℃、Ae1
点−50℃≦T4 ≦Ae1点−5℃、T2 ≦T1 、T4 ≦
T2 、とする。
【0023】
【作用】以下、本発明について、その作用効果と共に説
明する。なお成分元素量における「%」は「重量%」を
意味する。
【0024】(A)化学組成 本発明が対象とする棒鋼および線材は、所定の形状に加
工された後、最終工程で焼入れ焼戻しなどの熱処理を施
されて、所望の特性(強度、靭性、耐食性や耐摩耗性な
ど)を付与される。この最終製品における特性の付与
と、2回目の軟化焼鈍を短時間で完了させる意味合いか
ら、冷間加工を受けて加工硬化した球状化組織を有する
棒鋼および線材の化学組成としてC量、Mn+Cr量お
よびMo量のみを下記の範囲に限定する。
【0025】C:0.2〜1.5% Cは強度(硬さ)を確保するのに有効な元素である。し
かし、その含有量が0.2%未満では所望の効果が得ら
れず、一方、1.5%を超えると靭性の著しい低下をき
たす。従って、Cの含有量は、0.2〜1.5%とし
た。
【0026】Mn+Cr:0.5〜3.0% MnとCrはいずれもセメンタイト中に固溶してセメン
タイトを安定化し、加熱時に未溶解の球状セメンタイト
を適正量残存させる効果を有する。更に、MnおよびC
rには焼入れ性を高めて、強度や靭性を向上させる作用
がある。前記した作用はMnとCrが単独で含有される
か複合で含有されるかを問わず発揮される。すなわちM
nとCrのうちのいずれかが0であっても良い。しか
し、MnとCrの含有量の和が0.5%未満では所望の
効果が得られない。一方、MnとCrの含有量の和で
3.0%を超えてMnとCrを含有させると、今度は球
状セメンタイトの成長が著しく遅くなり短時間で球状化
できなくなる。従って、Mn+Crの含有量は、0.5
〜3.0%とした。
【0027】Mo:0〜0.6% Moは添加しなくても良い。添加すれば高温強度、耐食
性や溶接性を向上させる効果がある。この効果を確実に
得るには、Moは0.05%以上の含有量とすることが
好ましい。しかし、その含有量が0.6%を超えるとC
の拡散速度が著しく低下してしまうので、未溶解の球状
セメンタイトが充分に成長できなくなる。従って、Mo
の含有量の上限を0.6%とした。
【0028】本発明が対象とする棒鋼および線材のC、
Mn+CrおよびMo以外の他の化学成分の組成につい
ては特別な限定を加える必要はない。最終製品における
特性の付与が可能であり、かつ、2回目の軟化焼鈍が短
時間で完了するような成分組成でありさえすれば良い。
【0029】具体的には、例えば、CとMn+Crおよ
びMo以外の元素としてはSi:0〜2.0%、Cu:
0〜2.0%、Ni:0〜4.0%、V:0〜0.4
%、Nb:0〜0.05%、Ti:0〜0.1%、A
l:0〜0.10%、N:0〜0.03%、B:0〜
0.005%、S:0〜0.10%、Pb:0〜0.3
0%、稀土類元素:0〜0.10%、Ca:0〜0.0
1%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFeと不
可避的不純物からなり、不純物としてのP:0.05%
以下のものであれば良い。
【0030】なお、鋼材または最終製品における特性向
上などを目的に、CとMn+CrおよびMo以外の上記
した元素を追加含有させる場合には、Si:0.05〜
2.0%、Cu:0.05〜2.0%、Ni:0.3〜
4.0%、V:0.05〜0.4%、Nb:0.002
〜0.05%、Ti:0.005〜0.1%、Al:
0.001〜0.10%、N:0.001〜0.03
%、B:0.0003〜0.005%、S:0.005
〜0.10%、Pb:0.02〜0.30%、稀土類元
素:0.002〜0.10%、Ca:0.0005〜
0.01%、Mg:0.0005〜0.01%の含有量
とすることが好ましい。更に、不純物としてのPは0.
05%以下とすることが好ましい。
【0031】(B)加熱条件 加工硬化した球状化組織を有する鋼材を軟化するには、
先ず、球状化組織のマトリックスである加工硬化したフ
ェライトを再結晶させるかオーステナイトに変態させ、
かつ球状セメンタイトを残存させることが必要である。
この時、溶解した球状セメンタイト中に固溶していたC
rとMnとを拡散させないようにし、球状セメンタイト
部分をできるだけ多く残存させるようにしなければなら
ない。このためには急速加熱処理で昇温させる必要があ
る。
【0032】この場合、Ae1点+10℃からAe1点+1
80℃の間の温度であるT1 まで加熱昇温させなければ
ならない。これは後の実施例で示すように、加熱温度T
1 がAe1点+10℃未満であれば加工硬化したフェライ
トの再結晶やオーステナイトへの変態が一部分しか起こ
らず2回目の軟化焼鈍を行っても強度が充分には低下し
ないからである。一方、Ae1点+180℃を超える温度
に加熱すれば、球状セメンタイトの多くが固溶してしま
うため、軟化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高くな
る。従って、加熱温度T1 はAe1点+10℃からAe1
+180℃の間の温度とした。なおAe1点(℃)は下記
によるものとする。
【0033】Ae1点=723 −10.7×Mn(%)+29.1×
Si(%)+16.9×Cr(%)。
【0034】更に、上記温度T1 への加熱昇温処理は前
記したように、急速加熱としなければならず、3℃/秒
以上の加熱速度で昇温させることが必要である。これも
後の実施例で示すように、加熱速度が3℃/秒未満であ
ると球状セメンタイトの多くが固溶してしまうため、軟
化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高くなるからであ
る。従って、加熱速度の下限を3℃/秒とした。ところ
で、加熱速度の上限は特に規定する必要はない。設備的
な面からの上限加熱速度とすれば良く、例えば、通電加
熱設備を用いた10000℃/秒程度の超急速加熱速度
であっても良い。
【0035】(C)冷却条件 加工硬化した球状化組織を有する鋼材を軟化するには、
上記(B)に示した条件で加熱した後、球状セメンタイ
ト部分を残存させるために、直ちにAe1点−30℃から
Ae1点+50℃の間の温度であるT2 まで第1次の冷却
を行う必要がある。この場合にも一部溶解した球状セメ
ンタイト中に固溶していたCrとMnとを拡散させない
ようにし、球状セメンタイト部分をできるだけ多く残存
させるようにしなければならないので、この第1冷却速
度はできるだけ速くする必要がある。
【0036】後の実施例で示すように、冷却温度T2 が
Ae1点−30℃未満であれば球状セメンタイトが充分に
成長できないので軟化焼鈍後の球状化率が低く、強度も
高くなる。一方、冷却温度T2 がAe1点+50℃を超え
る場合には、球状セメンタイトの多くが固溶してしまう
ため、軟化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高くなって
しまう。従って、冷却温度T2 はAe1点−30℃からA
e1点+50℃の間の温度とした。
【0037】更に、上記温度T2 への冷却処理は前記し
たように、急速冷却としなければならず、3℃/秒以上
の第1冷却速度で冷却させることが必要である。これも
後の実施例で示すように、第1冷却速度が3℃/秒未満
であると球状セメンタイトの多くが固溶してしまうた
め、軟化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高くなるから
である。従って、第1冷却速度の下限を3℃/秒とし
た。ところで、第1冷却速度の上限は特に規定する必要
はない。設備的な面からの上限冷却速度とすれば良い。
【0038】更に、加工硬化した球状化組織を有する鋼
材を軟化するには、上記の温度T2への第1次の冷却処
理に引き続いて、球状セメンタイトを充分に成長させる
ために、(イ)温度T2 からAe1点−50℃以下の温度
であるT3 までを0.02〜5℃/秒の第2冷却速度で
冷却するか、(ロ)Ae1点−50℃からAe1点−5℃の
間の温度であるT4 まで任意の第2冷却速度で冷却した
後、温度T4 からAe1点−50℃の温度域で5〜60分
保持することが必要である。
【0039】上記(イ)の連続冷却の場合、5℃/秒を
超える第2冷却速度では球状セメンタイトが充分に成長
できないため、軟化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高
くなるからである。一方、上記の第2冷却速度が0.0
2℃/秒を下回る場合には、焼鈍時間の短縮の効果が十
分得られず所期の目的を果たせなくなる。従って、第2
冷却速度は0.02〜5℃/秒とした。この第2冷却の
終了温度T3 がAe1点−50℃を超える場合には、後の
実施例に示すように、球状セメンタイトが充分に成長で
きないため、軟化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高く
なってしまう。
【0040】従って、第2次の連続の制御冷却は温度T
2 からAe1点−50℃以下の温度まで行わねばならな
い。ところで、温度T3 の下限は特に規定する必要はな
いが、2回目の焼鈍をより速やかに行うために、Ae1
−50℃以下でできるだけAe1点−50℃に近い温度と
することが好ましい。なお、上記の条件で第2次の連続
冷却を行えば対象とする加工硬化した球状化組織を有す
る鋼材は充分に軟化し、冷間加工前と同等以上にして且
つ85%以上の球状化率並びに、冷間加工前と同等以下
の強度レベルとなるので、前記の温度T3 を下回る温度
域における冷却速度は任意に選んで良く、短時間処理の
ためにはできるだけ速い冷却速度とすることが好まし
い。
【0041】また、上記(ロ)の、前記した温度T4 ま
で任意の第2冷却速度で冷却した後に温度T4 からAe1
点−50℃の温度域で5〜60分保持する場合、温度T
4 がAe1点−5℃を超える場合には、球状セメンタイト
の成長速度が極端に遅くなるので軟化焼鈍後の球状化率
は低く、強度も高くなってしまう。一方、温度T4 がA
e1点−50℃未満の場合には、微細な球状セメンタイト
やパーライトが生成してしまい、強度が高くなってしま
う。従って、冷却温度T4 はAe1点−50℃からAe1
−5℃の間の温度とした。更に、前記温度域での保持時
間が5分を下回る場合には、球状セメンタイトが充分成
長できず、軟化焼鈍後の球状化率は低く、強度も高くな
ってしまう。一方、保持時間が60分を超えると所期の
目的とする焼鈍時間の短縮化が充分には図れない。従っ
て、前記の温度域における保持時間は5〜60分とし
た。
【0042】ところで、上記(ロ)において、「温度T
4 からAe1点−50℃の温度域で5〜60分保持する」
というのは、(ハ)「温度T4 からAe1点−50℃の間
にある任意の温度T5 (Ae1点−50℃≦T5 ≦T4 )
で5〜60分保持」しても良く、(ニ)「温度T4 から
上記の温度T5 までの温度域を、例えば連続的にあるい
はステップ状に冷却して、前記の温度域内に保持してい
る時間が合計で5〜60分」あれば良い、という意味で
ある。なお、上記の条件で保持を行えば対象とする加工
硬化した球状化組織を有する鋼材は充分に軟化し、冷間
加工前と同等以上にして且つ85%以上の球状化率並び
に、冷間加工前と同等以下の強度レベルとなるので、上
記(ハ)および(ニ)の場合とも前記した温度T5 を下
回る温度域における冷却速度は任意に選んで良く、短時
間処理のためにはできるだけ速い冷却速度とすることが
好ましい。
【0043】
【実施例】表1に示す化学組成を有する鋼を通常の方法
により50kg真空炉を用いて溶製した。表1における鋼
A〜F、I、J、LおよびMは本発明方法の対象鋼、鋼
G、H、KおよびNは成分のいずれかが本発明方法の対
象鋼として規定する含有量の範囲から外れた比較鋼であ
る。
【0044】次いで、これらの本発明方法の対象鋼およ
び比較鋼を通常の方法によって直径9.5mmに圧延
し、その後これらの鋼材を780℃に加熱した後、10
℃/時の冷却速度で600℃まで冷却する通常の1回目
の球状化焼鈍を行った。更にこの後、通常の方法によっ
て直径8.2mmまで冷間伸線を行った。表2に鋼A〜
Nにおける1回目の球状化焼鈍後の(すなわち冷間伸線
前の)引張強さと球状化率並びに冷間伸線した後の引張
強さを示す。
【0045】上記のようにして得られた、加工硬化した
球状化組織を有する冷間伸線材を供試鋼材として、表3
〜5に示す種々の条件で熱処理を行い、熱処理後の球状
化率と引張強さおよび鋼材表面の脱炭とスケール状況を
調査した。試験結果を表3〜5に併せて示す。
【0046】なお表3〜5に記載の熱処理時の加熱手段
としては、加熱速度50℃/秒未満では高周波加熱を、
また加熱速度50℃/秒以上では通電加熱を用いた。
【0047】表3〜5から本発明の方法によれば、熱処
理(焼鈍処理)後に冷間加工前と同等以上の特性(冷間
加工前と同等以上にして且つ85%以上の球状化率、冷
間加工前と同等以下の強度レベル)を有する鋼材が極め
て短時間で得られることが明らかである。
【0048】これに対して、供試鋼材の化学成分または
熱処理条件が本発明から外れた比較法の場合には、球状
化率、引張強さのいずれかまたは両方において劣ってい
る。
【0049】すなわち、試験番号5は加熱速度が3.0
℃/秒を下回るため、試験番号7は第1冷却速度が3.
0℃/秒未満であるため、試験番号13は加熱温度T1
がAe1点+180℃を超えるため、試験番号14は第1
次の冷却終了温度(第2次の冷却開始温度)であるT2
がAe1点+50℃を上回るため、試験番号19はMn+
Crの含有量が0.5%を下回った鋼材を用いたため
に、それぞれ球状セメンタイトが多く溶解してしまうこ
ととなって、熱処理(焼鈍処理)後の球状化率が低く、
引張強さも高い。
【0050】また、試験番号9では、加熱温度T1 がA
e1点+10℃を下回るので、加工硬化したフェライトの
再結晶やオーステナイトへの変態が一部分しか起こら
ず、従って、熱処理後の引張強さが高い。
【0051】更に、試験番号17は、第1次の冷却終了
温度(第2次の冷却開始温度)であるT2 がAe1点−3
0℃を下回るため、試験番号20は第2冷却速度が5℃
/秒を超えるため、試験番号25は第2次の冷却終了温
度T3 がAe1点−50℃を上回るために、それぞれ球状
セメンタイトの充分な成長が起こらない。従って、熱処
理しても球状化率が低く、引張強さも高い。
【0052】試験番号28はMoの含有量が0.6%を
超える鋼材を用いたので、未溶解の球状セメンタイトが
充分には成長できず、従って、熱処理後の球状化率は低
く、更に、引張強さも高い。
【0053】試験番号18と試験番号24はいずれもM
n+Crの含有量が3%を上回る鋼材を用いたために、
球状セメンタイトの成長が著しく遅くなってしまい、熱
処理後の球状化率は低く、引張強さも高い。
【0054】試験番号29は第1次の冷却終了温度T2
がAe1点+50℃を超えるとともに第2冷却速度が5℃
/秒を超えるため、球状セメンタイトの充分な成長が起
こらない。従って、熱処理後の球状化率が低く、引張強
さも高い。
【0055】また、試験番号30と37は、保持を開始
した温度T4 がAe1点−5℃を超えるため、試験番号3
4は上記の温度T4 がAe1点−50℃を下回るため、試
験番号36は保持時間が5分に達しないために、それぞ
れ球状セメンタイトが充分には成長せず、従って、熱処
理後の球状化率が低く、引張強さも高い。
【0056】試験番号39は加熱温度T1 がAe1点+1
0℃を下回り、かつ、保持を開始した温度T4 がAe1
−50℃を下回るため、加工硬化したフェライトの再結
晶やオーステナイトへの変態が一部分しか起こらず、熱
処理後の引張強さが高い。
【0057】
【表1】
【0058】
【表2】
【0059】
【表3】
【0060】
【表4】
【0061】
【表5】
【0062】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の方法によ
れば、冷間加工を受けて加工硬化した球状化組織を有す
る棒鋼や線材を、短時間で軟化して、これに冷間加工を
受ける前と同等以上の特性を付与させることができるの
で、産業上の効果は極めて大きい。
【0063】

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】球状化焼鈍を行った後に冷間加工を施し
    た、重量%で0.2〜1.5%のC、0.5〜3.0%
    のMn+Crおよび0〜0.6%のMoを含有する鋼材
    を、温度T1 に3℃/秒以上の加熱速度で昇温した後、
    直ちに温度T2 まで3℃/秒以上の第1冷却速度で冷却
    し、更に、温度T3 までを0.02〜5℃/秒の第2冷
    却速度で冷却することを特徴とする、加工硬化した球状
    化組織を有する鋼材の軟化焼鈍方法。但し、Ae1点+1
    0℃≦T1 ≦Ae1点+180℃、Ae1点−30℃≦T2
    ≦Ae1点+50℃、T2 ≦T1 、T3 ≦Ae1点−50
    ℃、とする。
  2. 【請求項2】球状化焼鈍を行った後に冷間加工を施し
    た、重量%で0.2〜1.5%のC、0.5〜3.0%
    のMn+Crおよび0〜0.6%のMoを含有する鋼材
    を、温度T1 に3℃/秒以上の加熱速度で昇温した後、
    直ちに温度T2 まで3℃/秒以上の第1冷却速度で冷却
    し、更に、温度T4 までは任意の第2冷却速度で冷却
    し、温度T4 からAe1点−50℃の温度域で5〜60分
    保持することを特徴とする、加工硬化した球状化組織を
    有する鋼材の軟化焼鈍方法。但し、Ae1点+10℃≦T
    1 ≦Ae1点+180℃、Ae1点−30℃≦T2 ≦Ae1
    +50℃、Ae1点−50℃≦T4 ≦Ae1点−5℃、T2
    ≦T1 、T4 ≦T2 、とする。
JP5311395A 1995-03-14 1995-03-14 加工硬化した球状化組織を有する鋼材の軟化焼鈍方法 Pending JPH08253809A (ja)

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Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2001001031A (ja) * 1999-06-21 2001-01-09 Honda Motor Co Ltd 冷間鍛造用ビレットの製造方法

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