JP3867471B2 - 鋼材の強化方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、鋼材の強化方法に関する。詳しくは、例えば、ボルト、ナットなどに用いられる棒鋼や線材、自動車の構造部材などに用いられる鋼管や鋼板、更には、ワイヤロープ、スチールコードなどに用いられる鋼線など、各種鋼材の強化方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼材の強化方法、つまり、鋼材を高強度化するための方法としては、鋼材の素材鋼に各種の合金元素を含有させる方法や、鋼材を熱処理する方法が一般的である。更に、所謂「冷間加工」を施して鋼材を加工硬化させ、強度を上昇させる手法もよく用いられる。
【0003】
上記鋼材の強化方法のうちで冷間加工は、熱間鍛造や熱間圧延などの熱間加工と比較して、鋼材の寸法を精度よく調整できる。このため、冷間加工には切削加工などコストが嵩む工程を省略できるという利点があるので、例えば、自動車の足周り部品やステアリング部品などに用いられるボルトやナットは、近年、冷間伸線及び冷間鍛造で成型すると同時に、強度を高めて製造されることが多くなっている。
【0004】
又、自動車のラジアルタイアの補強材として用いられるスチールコード用極細鋼線は、最終製造工程で強冷間伸線が施され、3000MPa以上の大きな引張強さが確保されている。
【0005】
しかしながら、鋼材に冷間加工を施すだけでは必ずしも所要の高強度が得られるというわけではない。したがって、産業界には、鋼材に一層の高強度を確実に付与することが可能な強化方法に対する強い要望がある。
【0006】
こうした要望に対して、冷間加工後の熱処理によって強度を高める技術が、例えば、特開平10−306345号公報や特開平7−90495号公報に提案されている。
【0007】
特開平10−306345号公報には、「歪時効特性に優れた冷間鍛造用線材・棒鋼及びその製造方法」が開示されている。しかし、この公報で提案された技術を用いて冷間加工と熱処理(歪時効処理)を施しても、その実施例にあるように、硬化量はビッカース硬度で高々35程度でしかない。
【0008】
特開平7−90495号公報には、「高強度鋼線及びその製造方法」が開示されている。この公報で提案された技術は、減面率で60〜98%の線引加工を施し、更に300〜500℃に加熱するものである。しかし、この方法を用いても、熱処理によって2次硬化して上昇する引張強度(以下、「引張強度」を「TS」という)は、上記公報の実施例の図2に記載されているように20kgf/mm2未満の小さいもので、十分な強化が達成されるとはいえない。
【0009】
前記の特開平10−306345号公報や特開平7−90495号公報で提案された技術を用いれば、一応は高強度の鋼材を得ることができる。しかし、既に述べたように、これらの技術によって達成される高強度化は必ずしも十分なものではない。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記現状に鑑みなされたもので、その目的は、例えば、ボルト、ナットなどに用いられる棒鋼や線材、自動車の構造部材などに用いられる鋼管や鋼板、更には、ワイヤロープ、スチールコードなどに用いられる鋼線など、各種鋼材の強化方法を提供することである。具体的には、各種鋼材に冷間加工だけを施した場合の強化量の指標としてのTSの増加量(以下、この冷間加工だけを施した場合のTSの増加量を△TS1という)の15%以上の高強度化が可能な鋼材の強化方法を提供することである。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、下記(1)〜(3)に示す鋼材の強化方法にある。
【0012】
(1)質量%で、0.010〜1.5%のC+N、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の関係式を満たす鋼材に、各回の減面率が5%以上となるn回の冷間加工を行い、1〜(n−1)回目の冷間加工の少なくともいずれかの冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させることを特徴とする鋼材の強化方法。ここで、nは2以上の整数である。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
【0013】
(2)質量%で、0.010〜1.5%のC+N、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の関係式を満たす鋼材に、各回の減面率が5%以上となるn回の冷間加工を行い、1〜(n−1)回目の冷間加工の少なくともいずれかの冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させ、更にn回目の冷間加工中にも120〜500℃に昇温させることを特徴とする鋼材の強化方法。ここで、nは2以上の整数である。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
【0014】
(3)質量%で、0.010〜1.5%のC+N、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の関係式を満たす鋼材に、各回の減面率が5%以上となるn回の冷間加工を行い、1〜(n−1)回目の冷間加工の少なくともいずれかの冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させ、n回目の冷間加工後、更に120〜500℃に昇温させることを特徴とする鋼材の強化方法。ここで、nは2以上の整数である。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
【0015】
なお、C+NはCとNの質量%での含有量の和を指し、(各回の)「減面率」とは、加工前の断面積をA0、加工後の断面積をA1として(A0−A1)/A0で表されるものをいい、これを100倍すれば%表示になる。又、本発明でいう「冷間加工」とは、加工を行う前の被加工鋼材の温度が100℃以下であるものをいう。
【0016】
本発明者らは、前記した課題を解決するために、すなわち、その強化処理後の最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度化の達成が可能な鋼材の強化方法を提供するために、冷間加工と熱処理を組み合わせた場合の鋼材の強度変化について種々の調査、研究を行った。その結果、下記の知見を得た。
【0017】
(a)鋼材を冷間加工した後で低温熱処理を行うと、従来から知られているように、歪時効により強度が上昇するが、1回あるいは多段の加工で冷間加工し、その冷間加工の終了後に低温熱処理を(1回)行う場合に比べて、冷間加工を多段階に分け、少なくともいずれか1回の冷間加工中に被加工鋼材を特定温度域に昇温させ、その後更に冷間加工を施せば、最終的に得られる強度は、合計の冷間加工量(減面率)が同じであっても高くなる。これは、冷間加工中に被加工鋼材を特定温度域に昇温させれば、転位の周辺にC(炭素)、N(窒素)が固着されて転位が安定化され、この状態で更に冷間加工を加えることで転位が複雑に絡み合い、このため、合計の冷間加工量(減面率)が同じでも強度が高くなるのである。
【0018】
(b)その冷間加工中に被加工鋼材を特定温度域に昇温させる冷間加工の回数が多ければ多いほど、合計の冷間加工量(減面率)が同じでもより高強度になる。
【0019】
(c)1回あるいは多段の加工で冷間加工し、その冷間加工の終了後に低温熱処理を(1回)行う場合に比べて、冷間加工を多段階に分け、少なくともいずれか1回の冷間加工の合間に被加工鋼材を特定温度域に昇温させ、その後更に冷間加工を施せば、最終的に得られる強度は、合計が同じ加工量でも高強度になる。これは、前記(a)の場合と同様に、冷間加工の合間に被加工鋼材を特定温度域に昇温させれば、転位の周辺にC、Nが固着されて転位が安定化され、この状態で更に冷間加工を加えることで転位が複雑に絡み合い、このため、合計の冷間加工量(減面率)が同じでも強度が高くなるのである。
【0020】
(d)被加工鋼材を特定温度域に昇温させる冷間加工の合間の数が多ければ多いほど、合計の冷間加工量(減面率)が同じでもより高強度になる。
【0021】
(e)上記(a)〜(d)の現象は、冷間加工前の被加工鋼材中にCやNが固溶していないと想定される場合にも生じ、CとNをその和で特定量含有する鋼材に共通して生ずる現象である。
【0022】
(f)冷間加工における加工量(減面率)が増加すると、鋼材における炭化物や炭窒化物、窒化物の中に存在するCやNは、鋼材中の転位の周辺に移動することが可能になる。このため、鋼材がCとNをその和で特定量含有しておりさえすれば、上記(a)〜(d)に記載した現象が生じる。
【0023】
本発明は、上記の知見のうちでも特に(a)、(b)、(e)及び(f)の知見に基づいて完成されたものである。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」表示は「質量%」を意味する。
【0025】
(A)化学組成
本発明が対象とする鋼材は、熱間鍛造や熱間圧延などの熱間加工後に、冷間加工と昇温の工程を経て、所望の特性(強度、延性、耐食性など)及び最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度を付与される。ここで、△TS1が冷間加工だけを施した場合のTSの増加量を指すことは既に述べたとおりである。
【0026】
本発明においては、上記の特性の付与と、冷間加工性の確保及び工業的な生産性を確保する意味合いから、鋼材の化学組成は、必須構成元素としてのC+N、Si及びMnの含有量を下記の範囲に限定する。
【0027】
C+N:0.010〜1.5%
CとNは、冷間加工中に鋼材を後述する温度に昇温させた場合に、鋼材中の転位周辺に固着して転位を安定化させ、この状態で更に冷間加工を加えることで、鋼材の強度を大きく高める効果を有する。この効果は、CとNが単独で含有されるか複合して含有されるかに拘わらず得られる。しかし、CとNの含有量の和が0.010%未満では最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度が得られない。一方、CとNの含有量がその和で1.5%を超えると、鋼が凝固する際に巨大な共晶型の炭化物や炭窒化物が生成して、高温で長時間の均質化熱処理を行っても、共晶型の炭化物や炭窒化物が消失し難いため、冷間加工中のトラブル(例えば、伸線中の断線や鍛造中の割れ)が多発する。したがって、CとNの含有量の和であるC+Nを0.010〜1.5%とした。なお、CとNの含有量の和であるC+Nの量は0.10〜1.2%とすることが好ましい。
【0028】
Si:Siは、強度を高める作用がある。更に、脱酸作用も有する。こうした効果を確実に得るために、Siは0.1%以上の含有量とする。しかし、その含有量が2.0%を超えると冷間加工性が大きく低下し、冷間伸線中の断線や冷間鍛造中の割れが多発する。したがって、Siの含有量は0.1〜2.0%とする。
【0029】
Mn:Mnは、強度を高める作用及び鋼中のSをMnSとして固定して熱間脆性を防止する作用を有する。これらの効果を確実に得るために、Mnは0.1%以上の含有量とする。しかし、Mnは偏析しやすい元素であり、その含有量が3.0%を超えると特に鋼材中心部への偏析傾向が大きくなり、冷間加工性を低下させるため、冷間伸線中の断線や冷間鍛造中の割れが多発する。したがって、Mnの含有量は0.1〜3.0%とする。
【0030】
本発明が対象とする鋼材のC+N、Si及びMn以外の他の化学成分の組成に関しては、最終製品において要求される特性及び最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度の付与が可能であり、且つ、冷間加工性の確保及び工業的な生産性の確保ができるように、次に述べる成分範囲とする。
【0031】
すなわち、C+N、Si及びMn以外の元素として、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFeと不純物からなり、下記の関係式を満たすものとする。なお、不純物としてのPが0.05%以下、Sが0.05%以下のものが好ましい。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13 Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
【0032】
なお、鋼材又は最終製品における特性向上などを目的に、C+N、Si及びMn以外の元素を追加含有させる場合には、各元素について、Cu:0.05〜2.0%、Ni:0.2〜3.0%、Cr:0.1〜3.0%、Mo:0.05〜2.0%、W:0.05〜1.0%、V:0.02〜0.5%、Nb:0.01〜0.5%、Ti:0.01〜0.5%、Zr:0.005〜0.2%、Al:0.005〜0.1%、B:0.0003〜0.005%、Pb:0.02〜0.3%、希土類元素:0.02〜0.1%、Ca:0.0005〜0.01%、Mg:0.0005〜0.01%の含有量とすることが好ましい。更に、不純物としてのPは0.05%以下、Sは0.05%以下とすることが好ましい。
【0033】
C、N、Si及びMn以外の各元素の含有量の範囲を上記のようにした理由を以下に述べる。
【0034】
Cu:Cuは添加しなくてもよいが、添加すれば、耐食性を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Cuは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が2.0%を超えると結晶粒界に偏析して鋼塊の分塊圧延や線材の熱間圧延など熱間加工時における割れや疵の発生が顕著になる。したがって、Cuの含有量は0〜2.0%とするのがよく、添加する場合には0.05〜2.0%の含有量とするのがよい。
【0035】
Ni:Niも添加しなくてもよいが、添加すれば、フェライト中に固溶してフェライトの靱性を向上させる効果を発揮する。この効果を確実に得るには、Niは0.2%以上の含有量とすることが好ましい。一方、3.0%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Niの含有量は0〜3.0%とするのがよく、添加する場合には0.2〜3.0%の含有量とするのがよい。
【0036】
Cr:Crは添加しなくてもよいが、添加すれば、パーライトのラメラ間隔を小さくしたり、鋼中に固溶することによって鋼材の強度を高める作用がある。こうした効果を確実に得るには、Crは0.1%以上の含有量とすることが望ましい。しかし、Crは偏析しやすい元素であり、3.0%を超えると特に鋼材中心部への偏析傾向が大きくなり、冷間加工性を低下させるので、冷間伸線中の断線や冷間鍛造中の割れが多発する。したがって、Crの含有量は0〜3.0%とするのがよく、添加する場合には0.1〜3.0%の含有量とするのがよい。
【0037】
Mo:Moは添加しなくてもよいが、添加すれば、熱処理で微細な炭化物として析出し強度と疲労特性を高める作用がある。この効果を確実に得るには、Moは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Moを2.0%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Moの含有量は0〜2.0%とするのがよく、添加する場合には0.05〜2.0%の含有量とするのがよい。
【0038】
W:Wも添加しなくてもよいが、添加すれば、熱処理で微細な炭化物として析出し強度を高める効果がある。又、Wは耐食性の向上にも有効に作用する。これらの効果を確実に得るには、Wは0.05%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Wを1.0%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Wの含有量は0〜1.0%とするのがよく、添加する場合には0.05〜1.0%の含有量とするのがよい。
【0039】
V:Vは添加しなくてもよいが、添加すれば、炭化物、窒化物を生成して、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Vは0.02%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.5%を超えてVを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Vの含有量は0〜0.5%とするのがよく、添加する場合には0.02〜0.5%の含有量とするのがよい。
【0040】
Nb:Nbは添加しなくてもよいが、添加すれば、炭化物、窒化物を生成して、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Nbは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Nbを0.5%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Nbの含有量は0〜0.5%とするのがよく、添加する場合には0.01〜0.5%の含有量とするのがよい。
【0041】
Ti:Tiは添加しなくてもよいが、添加すれば、炭化物、窒化物を生成して、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Tiは0.01%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.5%を超えてTiを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Tiの含有量は0〜0.5%とするのがよく、添加する場合には0.01〜0.5%の含有量とするのがよい。
【0042】
Zr:Zrも添加しなくてもよいが、添加すれば、炭化物、窒化物を生成して、オーステナイト結晶粒を微細化させ、延性及び靱性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Zrは0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、0.2%を超えてZrを含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Zrの含有量は0〜0.2%とするのがよく、添加する場合には0.005〜0.2%の含有量とするのがよい。
【0043】
Al:Alは添加しなくてもよいが、添加すれば、脱酸作用がある。この効果を確実に得るには、Alは0.005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Alの含有量が0.1%を超えると、伸線加工中に断線が多発する。したがって、Alの含有量は0〜0.1%とするのがよく、添加する場合には0.005〜0.1%の含有量とするのがよい。
【0044】
B:Bは添加しなくてもよいが、添加すれば、パーライト中のセメンタイトの成長を促進させて線材の延性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Bは0.0003%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.005%を超えると、熱間や温間での加工時に割れが生じ易くなる。したがって、Bの含有量は0〜0.005%とするのがよく、添加する場合には0.0003〜0.005%の含有量とするのがよい。
【0045】
Pb:Pbは添加しなくてもよいが、添加すれば、被削性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、Pbは0.02%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、その含有量が0.3%を超えると、熱間加工性が低下して熱間での加工時に割れが生じ易くなる。したがって、Pbの含有量は0〜0.3%とするのがよく、添加する場合には0.02〜0.3%の含有量とするのがよい。
【0046】
希土類元素:希土類元素は添加しなくてもよいが、添加すれば、熱間加工性を高める作用を有する。この効果を確実に得るには、希土類元素は0.02%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、希土類元素を0.1%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、希土類元素の含有量は0〜0.1%とするのがよく、添加する場合には0.02〜0.1%の含有量とするのがよい。なお、本発明でいう「希土類元素の含有量」は、「希土類元素の合計の含有量」を指す。
【0047】
Ca:Caは添加しなくてもよいが、添加すれば、熱間加工性を高める作用を有する。又、被削性を高める作用も有する。これらの効果を確実に得るには、Caは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Caを0.01%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Caの含有量は0〜0.01%とするのがよく、添加する場合には0.005〜0.01%の含有量とするのがよい。
【0048】
Mg:Mgも添加しなくてもよいが、添加すれば、熱間加工性を高める作用を有する。又、被削性を高める作用も有する。これらの効果を確実に得るには、Mgは0.0005%以上の含有量とすることが好ましい。しかし、Mgを0.01%を超えて含有させても前記の効果は飽和し、コストが嵩むばかりである。したがって、Mgの含有量は0〜0.01%とするのがよく、添加する場合には0.0005〜0.01%の含有量とするのがよい。
【0049】
なお、鋼材が前記した各元素のうちMo、W、V、Nb、TiやZrを含有する場合には、NとAlの含有量に応じて、下記の関係式を満足する含有量とするのがよい。
【0050】
(1)N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:
C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。ここで前記関係式における各元素記号は、その元素の含有量を表す。
【0051】
(2)N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:
C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。ここで前記関係式における各元素記号も、その元素の含有量を表す。
【0052】
P:不純物としてのPは、冷間加工時の変形能を低下させてしまう。特に、Pの含有量が0.05%を超えると、冷間加工時の変形能の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのPの含有量は0.05%以下とするのがよい。
【0053】
S:不純物としてのSも、冷間加工時の変形能を低下させてしまう。特に、Sの含有量が0.05%を超えると、冷間加工時の変形能の低下が著しくなる。したがって、不純物元素としてのSの含有量は0.05%以下とするのがよい。
【0054】
なお、ボルト、ナットなどに用いられる棒鋼や線材の用途に対しては、例えば、C:0.1〜0.5%、Si:0.1〜1.0%、Mn:0.1〜1.5%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜2.0%、Cr:0〜1.5%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、V:0〜0.2%、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Al:0.005〜0.05%、N:0.003〜0.02%、B:0〜0.003%、P:0.05%以下、S:0.05%以下の化学組成の鋼を素材鋼とすればよい。
【0055】
又、自動車の構造部材などに用いられる鋼管や鋼板の用途に対しては、例えば、C:0.03〜0.3%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜2.0%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜2.0%、Cr:0〜1.5%、Mo:0〜1.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.2%、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Al:0.003〜0.03%、N:0.003〜0.02%、B:0〜0.005%、P:0.05%以下、S:0.05%以下の化学組成の鋼を素材鋼とすればよい。
【0056】
更に、ワイヤロープ、スチールコードなどに用いられる鋼線の用途に対しては、例えば、C:0.6〜1.2%、Si:0.1〜1.5%、Mn:0.1〜1.0%、Cu:0〜0.5%、Ni:0〜1.0%、Cr:0〜1.0%、Mo:0〜0.5%、W:0〜0.5%、V:0〜0.2%、Nb:0〜0.1%、Ti:0〜0.1%、Al:0〜0.03%、N:0.02%以下、B:0〜0.002%、P:0.05%以下、S:0.05%以下の化学組成の鋼を素材鋼とすればよい。
【0057】
(B)冷間加工
最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度を鋼材に付与するためには、冷間加工をn回に分け、少なくともいずれか1回の冷間加工中に被加工鋼材を後述の温度域に昇温させ、前記の昇温後更に冷間加工を施す必要がある。このため冷間加工回数であるnを2以上の整数とした。
【0058】
上記n回の冷間加工における各回の減面率を5%以上としたのは、5%未満では冷間加工と昇温とを組み合わせる方法によっても鋼材に所望の高強度(最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度)を付与できないからである。なお、(各回の)「減面率」が、加工前の断面積をA0、加工後の断面積をA1として(A0−A1)/A0で表されるものをいい、これを100倍すれば%表示になることは既に述べたとおりである。
【0059】
冷間加工の回数及び減面率に関し、その上限値については特に制限はない。最初の冷間加工を行う前の鋼材の寸法・形状及び最終製品の寸法・形状、並びに設備能力を勘案して、加工回数と減面率とを適宜決定すればよい。冷間加工の方法も特に制限はなく、必要に応じて、ダイスによる冷間伸線、圧延機による冷間圧延、金型を用いた冷間鍛造など、いずれの方法を用いてもよい。
【0060】
(C)昇温処理
本発明においては、冷間加工中に行う昇温処理の温度は、120〜500℃とする必要がある。前記昇温処理における温度が120℃を下回る場合には、所望の高強度(最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度)が極めて得難い。所望の高強度が得られる場合でも、鋼材を長時間その温度に保持する必要が生じ工業的な生産性の面で極めて劣ってしまう。一方、前記昇温処理における温度が500℃を上回る場合には、その温度での保持時間を短くしても強度低下が大きく、前記した所望の高強度が得られない。したがって、冷間加工中に行う昇温処理の温度を120〜500℃とした。なお、前記昇温処理の温度が350℃を超える場合には、その温度での保持時間によって強度のバラツキが大きくなる場合があるため、冷間加工中に行う昇温処理の温度は、120〜350℃とすることが好ましい。
【0061】
なお、前記(B)冷間加工の項で述べたように、最終的なTSの増加量が1.15×△TS1以上となる高強度を鋼材に付与するためには、冷間加工をn回に分け、少なくともいずれか1回の冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させ、前記の昇温後更に冷間加工を施す必要があるが、この冷間加工中に行う昇温処理は1回以上(n−1)回まで何回行ってもよい。又、昇温処理を冷間加工中に行う場合には、最終のn回目の冷間加工中にも120〜500℃に昇温させてもよい。
【0062】
n回すべての冷間加工を終了した後、更に、120〜500℃に昇温させれば、一層の高強度化が可能である。このため、n回目の冷間加工後、更に120〜500℃に昇温させてもよい。このn回目の冷間加工後に行う120〜500℃への昇温処理は、n回目の冷間加工中に120〜500℃に昇温させない場合に行うことで大きな効果が得られる。n回目の冷間加工中に120〜500℃に昇温させた後、更にこの120〜500℃への昇温処理を行ってもよいが、この場合には加工後の120〜500℃への昇温処理の効果は小さい。
【0063】
昇温処理を冷間加工中に行う場合の加熱には、加工発熱を利用すればよい。
【0064】
以下、実施例により本発明を詳しく説明する。
【0065】
【実施例】
表1に示す化学組成を有する鋼A〜Mを通常の方法によって150kg真空炉を用いて溶製した。
【0066】
表1における鋼B〜Mは化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼、鋼Aは化学組成が本発明で規定する含有量の範囲から外れた鋼である。
【0067】
【表1】
【0068】
(参考例1)
上記のようにして溶製した鋼のうち、表1に示す鋼A〜Cの鋼塊を1200℃に加熱した後、通常の方法で熱間鍛造して厚さ40mmの鋼片とした。次いで、上記の各鋼片を1100℃に加熱した後、圧延仕上げ温度800℃、巻取り温度650℃となるように熱間圧延し、板厚4.0mmの鋼板とした。
【0069】
このようにして得た板厚4.0mmの鋼板を通常の方法で酸洗した後、1パス当たり0.5mmずつ冷間圧延して減厚し、計6パスの冷間圧延により板厚1.0mmの冷延鋼板を得た。冷間圧延速度は0.5m/分以下として、圧延中に鋼板の温度が100℃以上にならないように管理した。なお、冷間圧延の際、圧延機に入る直前及び圧延機から出た直後の鋼板の温度を放射式温度計で測定し、このうち圧延機から出た直後に測定した鋼板の温度を冷間圧延中の鋼板の温度として管理した。
【0070】
前記6パスの冷間圧延の各パスにおける減面率は1パス目から順に13%、14%、17%、20%、25%、33%である。
【0071】
上記の冷間圧延を行うに際し、一部のパスの後で表2に記載の条件で熱処理を施した。この熱処理には通常の電気炉を用いた。
【0072】
熱間圧延したままの板厚4.0mmの鋼板、及び、表2に記載の処理を施した板厚1.0mmの鋼板からそれぞれJIS Z 2201に記載の13B号引張試験片を採取し、引張試験を行った。表2に、引張試験の結果を併せて示す。なお、表2における△TSは、最終処理後の鋼板のTSと冷間圧延前(つまり熱間圧延したまま)の鋼板のTSとの差を示す。熱処理、つまり昇温処理せずに冷間圧延(圧延を行う前の被圧延鋼材の温度が100℃以下である圧延)だけを施した試験番号1、5、10の△TSは、既に述べた△TS1に相当する。
【0073】
【表2】
【0074】
(参考例2)
前記のようにして溶製した鋼のうち、表1に示す鋼D〜Iの鋼塊を1200℃に加熱した後、通常の方法で熱間鍛造して直径80mmの丸棒とした。次いで、上記の各丸棒を1150℃に加熱した後、圧延仕上げ温度が880℃となるように熱間圧延し、直径10.5mmの線材とした。なお、鋼D、G、H、Iを用いた場合の仕上げ圧延後の冷却は放冷(自然冷却)とし、鋼E、Fを用いた場合の仕上げ圧延後の冷却は空冷とした。
【0075】
このようにして得た直径10.5mmの線材を通常の方法で酸洗した後、リン酸塩皮膜処理を施し、仕上げ直径が8.8mmと7.6mmの2つのダイスを用いて、直径7.6mmまで2パスで冷間伸線した。なお、上記の2つのダイスはいずれもダイス角度が14度の超硬ダイスである。
【0076】
冷間伸線速度は0.5m/分以下として、伸線中に線材の温度が100℃以上にならないように管理した。なお、冷間伸線の際、ダイスに入る直前及びダイスから出た直後の線材の温度を放射式温度計で測定し、このうちダイスから出た直後に測定した線材の温度を冷間伸線中の線材の温度として管理した。
【0077】
上記の冷間伸線を行うに際し、一部のパスの後で表3及び表4に記載の条件で熱処理を施した。この熱処理には通常の電気炉を用いた。
【0078】
熱間圧延したままの直径10.5mmの線材、及び、表3、表4に記載の処理を施した直径7.6mmの線材からそれぞれJIS Z 2201に記載の9A号引張試験片を採取し、引張試験を行った。表3及び表4に、引張試験の結果を併せて示す。なお、表3、表4における△TSも、最終処理後の線材のTSと冷間伸線前(つまり熱間圧延したまま)の線材のTSとの差を示す。熱処理(つまり昇温処理)せずに冷間伸線だけを施した試験番号15、19、24、29、32、35の△TSは、既に述べた△TS1に相当する。
【0079】
【表3】
【0080】
【表4】
【0081】
(実施例1)
前記のようにして溶製した鋼のうち、表1に示す鋼J及び鋼Kの鋼塊を1200℃に加熱した後、通常の方法で熱間鍛造して直径80mmの丸棒とした。次いで、上記の各丸棒を1150℃に加熱した後、圧延仕上げ温度が880℃となるように熱間圧延し、直径10.5mmの線材とした。なお、鋼Kを用いた場合の仕上げ圧延後の冷却は放冷(自然冷却)とし、鋼Jを用いた場合の仕上げ圧延後の冷却は空冷とした。
【0082】
このようにして得た直径10.5mmの線材を通常の方法で酸洗した後、リン酸塩皮膜処理を施し、各ダイスでの減面率が19%となるパススケジュールで6パスの冷間伸線を行い、直径5.5mmの線材にした。なお、伸線に用いた6個のダイスはいずれもダイス角度が14度の超硬ダイスである。
【0083】
冷間伸線速度は0.5〜400m/分とした。なお、冷間伸線の際、ダイスに入る直前及びダイスから出た直後の線材の温度を放射式温度計で測定し、このうちダイスから出た直後に測定した線材の温度を冷間伸線中の線材の温度とした。表5に記載のいずれの試験番号の場合にも、各ダイスに入る直前の線材の温度は20〜50℃と低いものであった。
【0084】
熱間圧延したままの直径10.5mmの線材、及び、表5に記載の条件で冷間伸線した直径5.5mmの線材からそれぞれJIS Z 2201に記載の9A号引張試験片を採取し、引張試験を行った。表5に、引張試験の結果を併せて示す。なお、表5における△TSも、伸線処理後の線材のTSと冷間伸線前(つまり熱間圧延したまま)の線材のTSとの差を示す。冷間伸線中に被加工鋼材が100℃を超える温度に達していない試験番号38、39、42の△TSは、既に述べた△TS1に相当する。なお、表5においては鋼Jに係る試験番号38、39のうち試験番号38の場合を△TS1として記載した。
【0085】
【表5】
【0086】
表5から、C+Nの量が本発明の条件を満たす鋼を用いて、本発明に係る条件で冷間伸線中に昇温させた試験番号40、41、43、44の場合には、所望の高強度(1.15×△TS1以上となる高強度)が達成できることが明らかである。
【0087】
これに対して、C+Nの量が本発明の条件を満たす鋼を用いても、処理条件が本発明の規定を満たさない試験番号45の場合には所望の高強度が達成できていない。
【0088】
(参考例3)
前記のようにして溶製した鋼のうち、表1に示す鋼L及び鋼Mの鋼塊を1200℃に加熱した後、通常の方法で熱間鍛造して直径80mmの丸棒とした。次いで、上記の各丸棒を1150℃に加熱した後、圧延仕上げ温度が880℃となるように熱間圧延し、直径5.5mmの線材とした。なお、鋼Kを用いた場合の仕上げ圧延後の冷却は放冷(自然冷却)とし、鋼Lを用いた場合の仕上げ圧延後の冷却は空冷とした。
【0089】
このようにして得た直径5.5mmの線材に通常の方法で、酸洗、リン酸塩皮膜処理、冷間伸線を施して直径1.2mmの鋼線にし、次いで、パテンティング処理を行った。なお、パテンティング処理は、鋼線が980℃で20秒間保持されるように加熱炉で加熱した後、570℃の鉛浴中に30秒間浸漬して行った。 パテンティング処理後は酸洗し、次いで、通常の方法でブラスメッキを行った後、各ダイスでの減面率が16%となるパススケジュールで20パスの湿式伸線を行い、直径0.20mmの鋼線にした。なお、湿式伸線に用いた20個のダイスはいずれもダイス角度が14度のダイヤモンドダイスである。
【0090】
湿式伸線速度は巻取り部で1m/分とし、伸線中の加工発熱のために鋼線温度が100℃以上になることを避けた。なお、湿式伸線の際、ダイスに入る直前及びダイスから出た直後の鋼線の温度を放射式温度計で測定し、このうちダイスから出た直後に測定した鋼線の温度を湿式伸線中の鋼線の温度とした。
【0091】
上記の湿式伸線を行うに際し、一部のダイスの後方位置に高周波加熱装置を設置し、表6に記載の条件で伸線加工の合間で適宜加熱処理を施した。
【0092】
パテンティング処理したままの直径1.2mmの鋼線、及び、表6に記載の条件で湿式伸線した直径0.2mmの鋼線からそれぞれJIS Z 2201に記載の9A号引張試験片を採取し、引張試験を行った。表6に、引張試験の結果を併せて示す。なお、表6における△TSは、湿式伸線処理後の鋼線のTSと湿式伸線前(つまりパテンティング処理したまま)の鋼線のTSとの差を示す。熱処理(つまり昇温処理)せずに湿式伸線だけを施した試験番号46、50の△TSは、既に述べた△TS1に相当する。
【0093】
【表6】
【0094】
【発明の効果】
本発明の方法によれば、各種鋼材を比較的容易に大きく強化することができるので産業上の効果は大きい。
Claims (3)
- 質量%で、0.010〜1.5%のC+N、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の関係式を満たす鋼材に、各回の減面率が5%以上となるn回の冷間加工を行い、1〜(n−1)回目の冷間加工の少なくともいずれかの冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させることを特徴とする鋼材の強化方法。ここで、nは2以上の整数である。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。 - 質量%で、0.010〜1.5%のC+N、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の関係式を満たす鋼材に、各回の減面率が5%以上となるn回の冷間加工を行い、1〜(n−1)回目の冷間加工の少なくともいずれかの冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させ、更にn回目の冷間加工中にも120〜500℃に昇温させることを特徴とする鋼材の強化方法。ここで、nは2以上の整数である。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。 - 質量%で、0.010〜1.5%のC+N、Si:0.1〜2.0%、Mn:0.1〜3.0%、Cu:0〜2.0%、Ni:0〜3.0%、Cr:0〜3.0%、Mo:0〜2.0%、W:0〜1.0%、V:0〜0.5%、Nb:0〜0.5%、Ti:0〜0.5%、Zr:0〜0.2%、Al:0〜0.1%、B:0〜0.005%、Pb:0〜0.3%、希土類元素:0〜0.1%、Ca:0〜0.01%、Mg:0〜0.01%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、下記の関係式を満たす鋼材に、各回の減面率が5%以上となるn回の冷間加工を行い、1〜(n−1)回目の冷間加工の少なくともいずれかの冷間加工中に被加工鋼材を120〜500℃に昇温させ、n回目の冷間加工後、更に120〜500℃に昇温させることを特徴とする鋼材の強化方法。ここで、nは2以上の整数である。
N(%)−0.52Al(%)の値が0以上の場合:C+0.86(N−0.52Al)−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
N(%)−0.52Al(%)の値が0未満の場合:C−0.13Mo−0.065W−0.24V−0.13Nb−0.25Ti−0.13Zr≧0.0068。
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