JP2017141502A - 冷間鍛造調質品用圧延棒線 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】
本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線は、質量%で、C:0.22〜0.40%、Si:0.35〜1.5%、Mn:0.20〜0.40%、P:0.020%未満、S:0.015%未満、Cr:0.70〜1.45%、Al:0.005〜0.060%、Ti:0.01〜0.05%、B:0.0003〜0.0040%、N:0.0020〜0.0080%、及びO:0.0020%以下を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有し、マトリクス組織は、初析フェライト及びパーライトからなり、700MPa以下の引張強度を有する。
0.50≦C+Si/10+Mn/5+5Cr/22≦0.85 (1)
Si/Mn>1.0 (2)
【選択図】なし
Description
0.50≦C+Si/10+Mn/5+5Cr/22≦0.85 (1)
Si/Mn>1.0 (2)
ここで、上記式における元素記号は、それぞれ対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
0.50≦C+Si/10+Mn/5+5Cr/22≦0.85 (1)
ここで、式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Si/Mn>1.0 (2)
ここで、式(2)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
0.50≦C+Si/10+Mn/5+5Cr/22≦0.85 (1)
Si/Mn>1.0 (2)
ここで、式(1)及び式(2)における各元素記号は、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
Z=−ln(1−R)/t (3)
ここで、式(3)中のRは仕上げ圧延での断面減少率(%)であり、式(4)で定義される。tは仕上げ圧延時間(秒)である。
R=(A0−A)/A0 (4)
式(4)中のA0は、仕上げ圧延前のビレットの断面積(mm2)であり、Aは、仕上げ圧延後の圧延棒線の断面積(mm2)である。
本発明の冷間鍛造調質品用圧延棒線の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は、鋼の強度を高める。C含有量が0.22%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.40%を超えれば、鋼材の冷間加工性が低下する。したがって、C含有量は0.22〜0.40%である。焼入れ性をさらに高める場合のC含有量の好ましい下限は0.26%である。C含有量の好ましい下限は0.24%であり、さらに好ましくは0.26%である。冷間加工性をさらに高める場合のC含有量の好ましい上限は0.35%である。
シリコン(Si)は、鋼を脱酸する。Siはさらに、フェライトに固溶して鋼材を強化する。Siはさらに、セメンタイトの析出を抑制し、鋼材の焼戻し軟化抵抗を高める。
マンガン(Mn)は、鋼材の焼入れ性を高めたり、靭性を高める。Mn含有量が0.20%未満である場合、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、調質処理を実施した場合に、Mnが粒界に偏析して粒界破壊を助長する場合がある。さらに、適正なMnO−SiO2が得られにくい。そのため、耐水素脆化特性が低下する。JIS規格のクロム鋼で規定されているMn含有量(0.60〜0.85%)では、偏析による粒界破壊を抑制しにくく、適正なMnO−SiO2が得られにくい。したがって、Mn含有量は0.20〜0.40%である。Mn含有量の好ましい下限は0.22%であり、好ましい上限は0.35%である。
燐(P)は不純物である。Pはオーステナイト粒界に偏析しやすく、調質処理後、焼き割れや粒界破壊の原因となる。したがって、P含有量は0.020%未満である。P含有量の好ましい上限は0.010%未満である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。
硫黄(S)は不純物である。Sは硫化物を形成して冷間加工性を低下する。したがって、S含有量は0.015%未満である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。
クロム(Cr)は、鋼材の焼入れ性を高める。Cr含有量が0.70%未満であれば、この効果が得られない。一方、Cr含有量が1.45%を超えれば、焼入れ性が高くなりすぎて熱間圧延後の冷却中にベイナイトが生成する。この場合、鋼の強度が過剰に高くなり、圧延棒線の冷間加工性が低下する。したがって、Cr含有量は0.70〜1.45%である。Cr含有量の好ましい下限は0.90%であり、好ましい上限は1.20%である。
アルミニウム(Al)は鋼を脱酸する。Alはさらに、Nと結合してAlNを形成し、Nを固定する。Alはさらに、AlN粒子のピンニング効果により、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。Al含有量が0.005%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が0.060%を超えれば、Al2O3が過剰に生成して冷間加工性が低下する。したがって、Al含有量は0.005〜0.060%である。冷間加工性を高める場合、Al含有量の好ましい上限は0.050%であり、さらに好ましくは0.045%である。本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線の化学組成において、Al含有量は、鋼中に含有する全Al量を意味する。
チタン(Ti)は、Nと結合してTiNを形成し、Nを固定する。Tiはさらに、TiN粒子のピンニング効果により、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。Ti含有量が0.01%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Ti含有量が0.05%を超えれば、Ti(C,N)が多く析出して、鋼材の強度が過剰に高くなる。この場合、鋼の冷間加工性が低下する。したがって、Ti含有量は0.01〜0.05%である。Ti含有量の好ましい下限は0.015%である。Ti含有量の好ましい上限は0.045%である。
ボロン(B)は鋼の焼入れ性を高める。Bはさらに、Pの粒界偏析を抑制して、鋼の耐水素脆化特性を高める。B含有量が0.0003%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、B含有量が0.0040%を超えれば、焼入れ性向上の効果が飽和する。さらに、粗大なBNが生成して冷間加工性及び靭性が低下する。したがって、B含有量は0.0003〜0.0040%である。Bが固溶Nと結合してBNを形成する場合、固溶B量が低下するため、焼入れ性が低下する。固溶B量を十分に確保し、焼入れ性をさらに高めるためのB含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。冷間加工性及び靭性の低下をさらに抑制するためのB含有量の好ましい上限は0.0030%であり、さらに好ましくは0.0025%である。
窒素(N)は、鋼中のAlやTiと結合して窒化物を生成し、加熱時のオーステナイト粒の粗大化を抑制する。N含有量が0.0020%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が0.0080%を超えれば、BNが過剰に生成し、固溶B量が低下する。この場合、鋼の焼入れ性が低下する。したがって、N含有量は0.0020〜0.0080%である。N含有量の好ましい下限は0.0022%である。焼入れ性をさらに高めるためのN含有量の好ましい上限は0.0070%未満であり、さらに好ましくは0.0060%である。
酸素(O)は不純物である。Oは酸化物を形成して冷間加工性を低下する。O含有量が0.0020%を超えれば、酸化物が多量に生成するとともに、MnSが粗大化して、冷間加工性が顕著に低下する。したがって、O含有量は0.0020%以下である。O含有量の好ましい上限は0.0018%である。O含有量はなるべく低い方が好ましい。
上述の冷間鍛造調質品用圧延棒線はさらに、Feの一部に代えて、Cu、Ni、Mo、及びVからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素はいずれも任意元素であり、鋼の焼入れ性を高める。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Cuは鋼の焼入れ性を高める。しかしながらCu含有量が0.50%を超えれば、焼入れ性が高くなりすぎてベイナイトが生成しやすくなる。この場合、冷間加工性が低下する。したがって、Cu含有量は0〜0.50%である。上記効果を有効に得るためのCu含有量の好ましい下限は0.02%であり、さらに好ましくは0.05%である。冷間加工性を高める場合、Cu含有量の好ましい上限は0.30%であり、さらに好ましくは0.20%である。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは鋼の焼入れ性を高め、さらに、粒界強度も高める。しかしながら、Ni含有量が0.30%を超えれば、その効果が飽和し、鋼材コストも高くなる。したがって、Ni含有量は0〜0.30%である。上記効果を有効に得るためのNi含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.03%である。冷間加工性を高める場合、Ni含有量の好ましい上限は0.20%であり、さらに好ましくは0.10%である。
モリブデン(Mo)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Moは鋼の焼入れ性を高める。しかしながら、Mo含有量が0.05%を超えれば、焼入れ性が高くなりすぎて、ベイナイト及びマルテンサイトが生成しやすくなる。この場合、鋼の冷間加工性が低下する。したがって、Mo含有量は0〜0.05%である。上記効果を有効に得るためのMo含有量の好ましい下限は0.005%である。Mo含有量の好ましい上限は0.03%であり、さらに好ましくは0.02%である。
バナジウム(V)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Vは鋼の焼入れ性を高める。Vはさらに、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成して鋼の強度を高める。しかしながら、V含有量が0.05%を超えれば、炭化物等が粗大化して冷間加工性を低下する。したがって、V含有量は0〜0.05%である。上記効果を有効に得るためのV含有量の好ましい下限は0.005%である。冷間加工性を高める場合、V含有量の好ましい上限は0.03%であり、さらに好ましくは0.02%である。
ニオブ(Nb)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、NbはC及びNと結合して、炭化物、窒化物又は炭窒化物を形成し、結晶粒を微細化する。Nbはさらに、本発明の圧延棒線を用いて製造した冷間鍛造調質品の耐水素脆化特性を高める。しかしながら、Nb含有量が0.05%を超えれば、粗大な炭化物等が生成して圧延棒線の冷間加工性が低下する。したがって、Nb含有量は0〜0.05%である。上記効果を有効に得るためのNb含有量の好ましい下限は0.0015%である。Nb含有量の好ましい上限は0.04%であり、さらに好ましくは0.03%である。
カルシウム(Ca)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Caは、CaS又は(Mn,Ca)Sを生成して、MnSを球状化する。これにより、鋼材の異方性を低減し、さらに、冷間加工性を高める。しかしながら、Ca含有量が0.005%を超えれば、その効果が飽和し、さらに、鋼材コストも高くなる。したがって、Ca含有量は0〜0.005%である。上記効果を有効に得るためのCa含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Ca含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
マグネシウム(Mg)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Mgは、炭化物や硫化物を生成してMnSの晶出核として働き、MnSを均一かつ微細な分散を促進する。さらに、MgOを含有するMnSは変形能が低く、延伸しにくい。そのため、鋼材の異方性が低減し、冷間間加工性が高まる。しかしながら、Mg含有量が0.005%を超えれば、過剰なMgOが生成し、鋼材の被削性を低下する。したがって、Mg含有量は0〜0.005%である。上記効果を有効に得るためのMg含有量の好ましい下限は0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。Mg含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線の化学組成はさらに、式(1)を満たす。
0.50≦C+Si/10+Mn/5+5Cr/22≦0.85 (1)
式(1)中の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線の化学組成はさらに、式(2)を満たす。
Si/Mn>1.0 (2)
ここで、式(2)の各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線のマトリクス組織は、初析フェライトとパーライトとからなる。本明細書でいう「マトリクス組織が初析フェライトとパーライトとからなる」とは、マトリクス組織において、初析フェライトとパーライトとの総面積率が90%以上であることを意味する。さらに、本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線の引張強度は700MPa以下である。
好ましくは、圧延棒線の直径は、臨界直径DC以下である。ここで、臨界直径DC(mm)は、以下の式(A)で定義される。
DC=4×(0.70Si+1.0)×(3.33Mn+1.0)×(2.16Cr+1.0) (A)
ここで、各元素記号には、対応する元素の含有量(質量%)が代入される。
f(Si)=0.70Si+1.0
f(Mn)=3.33Mn+1.0
f(Cr)=2.16Cr+1.0
したがって、本発明において、焼入れ性が確保された圧延棒線の臨界直径DCは、次の式(A)で定義される。
DC=4×(0.70Si+1.0)×(3.33Mn+1.0)×(2.16Cr+1.0) (A)
[冷間鍛造調質品用圧延棒線の製造方法]
本発明による冷間鍛造調質品用圧延棒線の製造方法の一例について説明する。本実施形態の圧延棒線の製造方法は、ビレットを製造する工程(分塊圧延工程)と、製造されたビレットを棒線に圧延する工程(仕上げ圧延工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
初めに、上記化学組成を有する素材を準備する。たとえば、素材は次の方法で製造される。上述の化学組成を有する溶鋼を、転炉及び電気炉等を用いて製造する。溶鋼を用いて連続鋳造法により鋳片を製造する。又は、溶鋼を用いて造塊法によりインゴットを製造する。
分塊圧延工程により製造されたビレットに対してさらに熱間圧延を実施して、冷間鍛造調質品用圧延棒線を製造する。
仕上げ温度は、仕上げ圧延機列の複数のスタンドのうち、最後にビレットを圧下するスタンド(以下、仕上げスタンドという)の出側でのビレットの表面温度(℃)を意味する。仕上げ温度は、仕上げスタンドの出側に配置された赤外線放射温度計を用いてビレットの表面温度を測定して求める。
加工速度Z(/秒)は式(3)で定義される。
Z=−ln(1−R)/t (3)
式(3)中のRは仕上げ圧延機列による仕上げ圧延での断面減少率(%)である。tは仕上げ圧延時間(秒)である。
R=(A0−A)/A0 (4)
式(4)中のA0は、仕上げ圧延前のビレットの断面積(mm2)であり、Aは、仕上げ圧延後の棒線の断面積(mm2)である。
仕上げ圧延後、圧延棒線の表面温度が500℃になるまでの間の冷却速度は0.2〜5℃/秒である。冷却速度が5℃を超えれば、鋼中に硬質のベイナイト等が生成しやすくなり、圧延棒線の引張強度が700MPaを超える。冷却速度の下限は特に限定されないが、実際の生産操業を考慮すれば、冷却速度の下限はたとえば0.2℃/秒である。
上述の圧延棒線を用いた冷間鍛造調質品の製造方法の一例として、ボルトの製造方法を説明する。本製造方法は、伸線工程、冷間鍛造工程、及び、調質処理工程(焼入れ及び焼戻し工程)を含む。以下、それぞれの工程について説明する。
初めに、上述の圧延棒線に対して伸線加工を実施して鋼線を製造する。伸線加工は、一次伸線のみであってもよいし、二次伸線等、複数回の伸線加工を実施してもよい。伸線時において、線材の表面に潤滑被膜を形成する。潤滑被膜はたとえば、リン酸塩被膜や非リン系の潤滑被膜である。
伸線後の鋼線を所定の長さに切断して、切断された鋼線に対して冷間鍛造を実施して冷間鍛造品(ここではボルト)を製造する。
従前の冷間鍛造品の製造方法では、引張強度が高すぎる棒線の軟化を目的として、伸線加工前及び冷間鍛造前に、軟化熱処理を複数回実施している。しかしながら、本発明による圧延棒線では、式(1)を満たすことにより、冷間加工性に優れる。そのため、軟化熱処理を省略、又は、簡素化できる。
冷間鍛造品に対して、周知の条件で調質処理(焼入れ及び焼戻し)を実施して、冷間鍛造調質品を製造する。上述の圧延棒線の焼入れ性は高いため、調質処理を実施することにより、高強度の冷間鍛造調質品が得られる。具体的には、焼入れ温度及び焼戻し温度を適宜調整することにより、1000〜1300MPaの引張強度を有する冷間鍛造調質品を製造できる。
各試験番号の丸棒を圧延方向と垂直な方向に切断し、切断面のR/2部(丸棒の中心軸と外周面とを結ぶ線分の中心部分)からサンプルを採取した。上記切断面が観察面になるように樹脂埋めし、鏡面研磨を行った。その後、上述の方法でミクロ組織観察を実施して、初析フェライト及びパーライトの総面積率(%)を求めた。求めた結果を表2に示す。表2中の「F+P」は、マトリクス組織が初析フェライト及びパーライトからなり、初析フェライト及びパーライトの総面積率が90%以上であることを意味する。「F+B」は、マトリクス組織が初析フェライトとベイナイトからなることを意味する。「F+P+B」は、マトリクス組織が初析フェライト、パーライト、及び、ベイナイトからなることを意味する。
各試験番号の丸棒の中心位置から、JIS Z 2241(2011)に規定される14A号試験片を採取した。試験片の長手方向は線材の圧延方向であり、平行部の直径は6mm、標点距離は30mmであった。採取した試験片に対して、室温(25℃)で引張試験を実施して、引張強度TS(MPa)を求めた。得られた引張強度TSを表2に示す。引張強度が700MPa以下であれば、優れた冷間加工性を有すると判断した。
各試験番号の丸棒の中心位置から、円柱状試験片を採取した。円柱状試験片の直径は14mmであり、長さは21mmであった。円柱状試験片の長手方向は、丸棒の長手方向と平行であった。
冷間鍛造調質品を模擬した試験片を作製し、ビッカース硬さを求めた。具体的には、各試験番号の丸棒から、上述の円柱状試験片を採取した。円柱状試験片を表2に示す焼入れ温度(℃)で1時間加熱し、その後、60℃の油に浸漬して焼入れした。焼入れされた円柱状試験片に対して、表2に示す焼戻し温度(℃)で焼戻しを実施した。焼戻し温度の保持時間は1時間とした。焼戻し後、円柱状試験片を放冷した。以上の工程により、調質処理された円柱状試験片を作製した。
冷間鍛造調質品を模擬した試験片を用いて、疲労試験を実施した。各試験番号の丸棒に対して調質処理(焼入れ焼戻し)を実施して、表面のビッカース硬さが360〜370HVとなるように調整した。調質処理後の丸棒から、図1に示す疲労試験片を作製した。図1中の各数値は、対応する箇所の寸法(mm)を示す。図1中の「R24」は対応する湾曲部分の曲率半径が24mmであることを示し、「φ8」は直径が8mmであることを示す。疲労試験片の中心軸は、丸棒の中心軸と同軸であった。
冷間鍛造調質品を模擬した試験片を用いて、耐水素脆化特性評価試験を実施した。各試験番号の丸棒に対して調質処理(焼入れ焼戻し)を実施して、表面のビッカース硬さが360〜370HVとなるように調整した。ただし、焼戻し温度が435℃で表面硬さ320HV以上を得られない場合については、強度不足と判断し、耐水素脆化特性評価は実施せず、本発明の対象外と判断した。
HR=Hc/Href (B)
表2に試験結果を示す。
鋼種aのブルームを複数製造した。ブルームを表3に示す加熱温度T1(℃)で加熱した後、分塊圧延を実施して、横断面が162mm×162mmのビレットを製造した。ビレットを表3に示す製造条件(加熱温度T2、仕上げ温度T3、加工速度Z、冷却速度)で直径20mmの丸棒を製造した。
表3に評価結果を示す。試験番号16では、分塊圧延工程及び仕上げ圧延工程の製造条件(加熱温度T1、加熱温度T2、仕上げ温度T3、加工速度Z、冷却速度)がいずれも適切であった。そのため、マトリクス組織は初析フェライト及びパーライトからなり、引張強度TSは700MPa以下であった。その結果、冷間加工性に優れた。
Claims (5)
- 質量%で、
C:0.22〜0.40%、
Si:0.35〜1.5%、
Mn:0.20〜0.40%、
P:0.020%未満、
S:0.015%未満、
Cr:0.70〜1.45%、
Al:0.005〜0.060%、
Ti:0.01〜0.05%、
B:0.0003〜0.0040%、
N:0.0020〜0.0080%、
O:0.0020%以下、
Cu:0〜0.50%、
Ni:0〜0.30%、
Mo:0〜0.05%、
V:0〜0.05%、
Nb:0〜0.05%、
Ca:0〜0.005%、及び、
Mg:0〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、式(1)及び式(2)を満たす化学組成を有し、
マトリクス組織は、初析フェライト及びパーライトからなり、
700MPa以下の引張強度を有する、冷間鍛造調質品用圧延棒線。
0.50≦C+Si/10+Mn/5+5Cr/22≦0.85 (1)
Si/Mn>1.0 (2)
ここで、上記式における元素記号は、それぞれ対応する元素の含有量(質量%)が代入される。 - 請求項1に記載の冷間鍛造調質品用圧延棒線であって、
前記化学組成は、
Cu:0.02〜0.50%、
Ni:0.01〜0.30%、
Mo:0.005〜0.05%、及び、
V:0.005〜0.05%からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、冷間鍛造調質品用圧延棒線。 - 請求項1又は請求項2に記載の冷間鍛造調質品用圧延棒線であって、
前記化学組成は、
Nb:0.0015〜0.05%を含有する、冷間鍛造調質品用圧延棒線。 - 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の冷間鍛造調質品用圧延棒線であって、
前記化学組成は、
Ca:0.0005〜0.005%、及び、
Mg:0.0005〜0.005%からなる群から選択される1種または2種を含有する、冷間鍛造調質品用圧延棒線。 - 請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の化学組成を有する素材を1200℃以上の温度に加熱した後、分塊圧延を実施してビレットを製造する分塊圧延工程と、
前記ビレットを1050℃以下の温度に加熱した後、仕上げ圧延を実施して圧延棒線を製造する仕上げ圧延工程とを備え、
前記仕上げ圧延工程は、
前記ビレットの表面温度が750〜850℃の範囲において、式(3)で定義される加工速度Zを5〜15/秒として前記ビレットを仕上げ圧延して前記圧延棒線を製造する工程と、
前記圧延完了直後から500℃までの冷却速度を0.2〜5.0℃/秒として、前記圧延棒線を冷却する工程とを含む、冷間鍛造調質品用圧延棒線の製造方法。
Z=−ln(1−R)/t (3)
ここで、式(3)中のRは仕上げ圧延での断面減少率(%)であり、式(4)で定義される。tは仕上げ圧延時間(秒)である。
R=(A0−A)/A0 (4)
式(4)中のA0は、仕上げ圧延前の前記ビレットの断面積(mm2)であり、Aは、仕上げ圧延後の前記圧延棒線の断面積(mm2)である。
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