JPH0414167B2 - - Google Patents
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Description
本発明は強加工性のすぐれた高強度低炭素鋼材
の製造方法に関する。 近年、プレス成形高強度薄鋼板として、フエラ
イトと低温変態生成相からなる低降伏比で高延性
の材料が開発されている。しかし、この材料は張
出し成形性にはすぐれるが、例えば、加工率が90
%程度の強加工である伸線加工によつて延性が著
しく劣化することが知られている。一方、パンテ
ンテイング処理したパーライト組織からなる共析
鋼材が鍛造性やプレス成形性に著しく劣ることも
知られている。 本発明者らは、プレス成形性のみならず、冷間
又は温間における伸線、引抜き、鍛造、圧延等の
強加工性にすぐれた鋼材を得るべく鋭意研究した
結果、低炭素鋼の組織を予め残留オーステナイト
を含有してもよいベイナイト、マルテンサイト又
はこれらの微細混合組織とし、これにより逆変態
した塊状オーステナイトを所定の冷却条件下に変
態させて、最終組織として、一部残留オーステナ
イトを含有していてもよい針状のベイナイト、マ
ルテンサイト又はこれらの混合組織からなる微細
な低温変態生成相がフエライト相中に均一に分散
されてなる複合組織を有せしめることにより、こ
の低炭素鋼材に上述のすぐれた強加工性を付与し
得ることを見出して本発明に至つたものである。 本発明による強加工性のすぐれた高強度低炭素
鋼材の製造方法は、重量%で C 0.01〜0.30%、 Si 1.5%以下、 Mn 0.3〜2.5%、 残部鉄及び不可避的不純物よりなる鋼の組織を
旧オーステナイト粒径が35μ以下のベイナイト、
マルテンサイト又はこれらの混合組織とした後、
Ac1〜Ac3温度域に加熱して、オーステナイト化
分率が約20%以上となるようにオーステナイト化
を進行させ、次いで、平均冷却速度40〜150℃/
秒にて常温乃至500℃まで冷却することを特徴と
する。 かかる本発明の方法によつて得られる鋼材は、
所定の化学組成を有すると共に、針状の低温変態
生成相がフエライト中に均一に分散分布されてな
る従来にない特異な複合組織を有し、且つ、上記
低温変態生成相の針状粒子の平均換算粒子が径
3μ以下であつて、著しく微細であるために、延
性のみならず、強加工性にすぐれ、例えば99.9%
の加工率による伸線加工を行なうことができ、し
かも、このようにして得られる伸線材もまた、高
強度高延性を有している。 尚、本発明において、針状(elongated又は
acicular)とは粒子が方向性を有することをい
い、塊状(globuar)とは粒子が方向性を有しな
いことをいう。また、針状粒子の換算粒子径と
は、針状粒子の面積を円に換算したときの直径を
意味する。 以下に本発明の方法による鋼材における成分の
限定理由について説明する。 Cは、本発明の方法による鋼材が前記した最終
金属組織を有するために0.01%以上を添加するこ
とが必要であるが、0.30%を越えるときは、針状
のマルテンサイト、ベイナイト又はこれらの混合
組織からなる低温変態生成相(以下、単に第2相
ということがある。)の延性が劣化するようにな
る。従つて、C含有量は0.01〜0.30%とする。 Siはフエライト相の強化元素として有効である
が、1.5%を越えると変態温度を著しく高温側に
ずらせ、また、鋼材の表面の脱炭を起こしやすく
するので1.5%を上限とする。 Mnは鋼を強化すると共に、第2相の焼入れ性
を高め、また、その形態を針状化するために0.3
%以上を添加することが必要であるが、2.5%を
越えて多量に添加しても、その効果が飽和するの
で、Mn含有量は0.3〜2.5%とする。 本発明によれば、鋼の金属組織を微細化するた
めに、Nb、V及びTiから選ばれる少なくとも1
種の元素を更に添加することができる。この組織
の微細化のためには、いずれの元素についても
0.005%以上の添加を必要とするが、しかし、過
多に添加してもその効果が飽和し、また、経済的
にも不利であるので、その上限は、Nbについて
は0.2%、V及びTiについてはそれぞれ0.3%とす
る。 更に、本発明の方法において鋼に不可避的に含
まれる元素又は含まれてもよい元素について説明
する。 Sは鋼中のMnS量を少なくするために、0.005
%以下とするのがよく、これにより鋼の延性が向
上する。Pは粒界偏析の著しい元素であるので、
その含有量を0.01%以下とするのが好ましい。N
は固溶状態で存在すると、最も時効しやすい元素
である。従つて、加工中に時効して加工性を阻害
し、或いは加工後にも時効して、加工材の延性を
劣化させるので、0.003%以下とするのが好まし
い。Alは酸化物系介在物を形成し、この酸化物
系介在物は変形し難いために、鋼材の加工性を阻
害する場合がある。特に、極細線材においては、
この介在物を起点として破断が生じやすい。従つ
て、鋼材の用途が線材であるとき、Alの含有量
は、通常、0.01%以下とするのが好ましい。 一方、CaやCe等の希土類元素を添加すること
によつて、MnS介在物の形状を調整することも
好ましい。 また、前記したNb、V及びTiを含めて、Al等
を添加することにより、固溶CやNを固定するこ
ともできる。更に、本発明においては、鋼材の用
途に応じて、Cr、Cu及び/又はMoをそれぞれ
1.0%以下、Niを6%以下、Al及び/又はPをそ
れぞれ0.1%以下、Bを0.02%以下適宜に添加す
ることもできる。 本発明の方法においては、先ず、最終的に金属
組織における第2相を微細な針状組織とするため
に、前記所定の組成を有する鋼をAc1〜Ac3温度
域に加熱する前に、その組織を、一部残留オース
テナイトを含有していてもよい旧オーステナイト
粒径が35μ以下、好ましくは20μ以下のベイナイ
ト、マルテンサイト又はこれらの微細混合組織
(以下、これらを単に前組織ということがある。)
とする。前組織をこのように微細化することによ
り、最終的組織を微細化して鋼の延性及び靭性を
向上させ、かくして鋼に所要の強度を付与するこ
とができる。 旧オーステナイト粒径を35μ以下に調整するに
は、造塊又は連続鋳造により得られた鋼を熱間加
工するに際して、オーステナイトの再結晶や粒成
長の進行が著しく遅い温度域、即ち、980℃以下
であつて、且つ、Ar3点以上の温度範囲において
減面率30%以上で熱間加工することが必要であ
る。熱間加工温度が980℃を越える温度であると
きは、オーステナイトが再結晶や粒成長しやす
く、また、加工減面率が30%よりも少ないとき
は、オーステナイト粒径を細粒化することができ
ないからである。更に、10〜20μ程度のオーステ
ナイト細粒を得るには、上記加工条件に加えて、
最終加工パスを900℃以下とする必要があり、5
〜10μ程度の極細粒を得るためには、上記最終加
工を歪速度300/秒以上とする必要がある。 尚、旧オーステナイト粒径を調整するための上
記熱間加工後に冷間加工を加えて所望の形状とす
ることもできるが、この場合、冷間加工の加工率
は40%までとする。上記前組織に40%よりも大き
い冷間加工を加えたときは、後述するAc1〜Ac3
温度域への加熱時にマルテンサイトの再結晶が起
こり、目的とする最終組織を得ることができな
い。 次に、前組織をベイナイト、マルテンサイト又
はこれらの混合組織とするためには、次の方法に
よることができる。 その第1は、圧延工程中に所要の前組織を得る
方法であつて、鋼を制御圧延するか、又は熱間圧
延した後に加速冷却する。その冷却速度は5℃/
秒以上とすることが必要である。これよりも小さ
い冷却速度では、通常のフエライト・パーライト
組織となるからである。 前組織を得るための第2の方法は、圧延した鋼
を改めて熱処理する方法であり、鋼をAc3点以上
のオーステナイト域に加熱した後に調整冷却す
る。この方法による場合も、加熱温度は、第1の
方法について説明したと同様に、Ac3〜Ac3+150
℃の範囲であることが望ましい。 本発明の方法によれば、このようにAc1〜Ac3
域に加熱する前の組織を、従来のフエライト・パ
ーライト組織に替えて、残留オーステナイトを含
有していてもよいマルテンサイト、ベイナイト又
はこれらの混合組織からなる低温変態生成相とし
た鋼をAc1〜Ac3域に加熱することにより、低温
変態生成相のラス境界に存在している残留オース
テナイト若しくはセメンタントを優先核として、
初期オーステナイト粒が多数生成し、上記ラス境
界に沿つて成長する。 次いで、所定の条件下での冷却によつてこのオ
ーステナイトから変態するマルテンサイト又はベ
イナイトを針状にして、周囲のフエライト相に対
して整合性のよいものとし、かくして、従来のフ
エライト・パーライト前組織に比較して、第2相
粒子を格段に微細化する。従つて、本発明の方法
においては、Ac1〜Ac3域への加熱及び冷却の条
件が重要である。即ち、条件によつては、第2相
が塊状化し、或いは第2相に塊状の粒子が混在し
て、強加工性を損なうこととなるからである。 より詳細に説明すれば、微細なベイナイト、マ
ルテンサイト又はこれらの混合組織からなる前組
織をオーステナイト域に加熱する際の逆変態は、
オーステナイト分率が約20%までは旧オーステナ
イト粒界から塊状オーステナイトが生成し、ま
た、粒内からは針状オーステナイトが生成するこ
とにより開始されるので、この状態から、例えば
150〜200℃/秒以上の冷却速度で急冷することに
より、針状と塊状の低温変態生成相がフエライト
中に分散した組織を得る。従つて、旧オーステナ
イトが細粒であるほど、塊状オーステナイトの生
成頻度が高い。オーステナイト化が更に約40%以
上進行すると、針状オーステナイト粒子相互が合
体して塊状オーステナイトへと変化するので、こ
の状態から急冷すると、フエライトを粗大な塊状
の低温変態生成相との混合組織を形成する。更に
オーステナイト化が約90%以上進行すれば、塊状
オーステナイト相互が合体成長してオーステナイ
ト化が完了するので、この状態から急冷すれば、
低温変態生成相が主体の組織となる。 そこで、本発明の方法においては、前記前組織
に調整した鋼をAc1〜Ac3域に加熱するに際して、
そのオーステナイト化をオーステナイト化分率が
約20%以上とし、この状態から平均冷却速度40〜
150℃/秒にて常温乃至500℃の温度まで冷却する
ことにより、冷却中の変態過程において塊状オー
ステナイトからフエライトと針状オーステナイト
とを分離させ、この針状オーステナイトを低温変
態生成相に変態させることにより、一部残留オー
ステナイトを含有していてもよい針状ベイナイ
ト、マルテンサイト又はこれらの混合物組織から
なる微細な低温変態生成相がフエライト相中に均
一に分散された最終金属組織を得るのである。 本発明の方法においては、平均冷却速度は上記
のように限定される。冷却速度が40℃/秒よりも
遅い場合には、塊状オーステナイトからポリゴナ
ルフエライトが生成し、残留する塊状オーステナ
イト粒子は塊状第2相に変態し、一方、冷却速度
が150℃/秒よりも速い場合には、上記したよう
に塊状第2相が生成するからである。また、本発
明の方法においては、フエライト相中における第
2相の体積分率を15〜40%の範囲とする。第2相
の体積分率がこの範囲にあるとき、第2相粒子は
針状であり、且つ、その平均換算粒子径が3μ以
下となり、かくして、本発明の方法により得られ
る鋼材は、従来にない独特の複合組織を有するた
めに、すぐれた強加工性を有する。また、第2相
の体積分率が上記範囲をはずれるとき、上記条件
下での冷却によつても、最終組織中に塊状第2相
が混入しやすい。 冷却変態生成相としてベイナイト、マルテンサ
イト又はこれらの混合組織を得るためであると共
に、この温度範囲内で冷却速度を遅くし、又は停
止することによつて、生成した第2相の焼戻しを
兼ねさせることもできるからである。 以上のように、本発明の方法によれば、低炭素
鋼の組織を予めベイナイト、マルテンサイト又は
これらの微細混合組織とし、これにより逆変態し
たオーステナイトを所定の冷却条件下に変態させ
て、針状の低温変態生成相を15〜40%の体積分率
でフエライト相中に均一に分散させてなる複合組
織を有する鋼材を得ることができ、この鋼材は、
上記のような独特の複合組織であるため、冷間又
は温間におけるプレス成形、伸線、引抜き、鍛
造、圧延等の強加工性にすぐれ、更に加工後にも
強度・延性バランスにすぐれる。 実施例 第1表に示すように、本発明で規定する化学組
成を有する鋼A及びBを圧延後に水冷して、前組
織を微細なマルテンサイト組織としたものをそれ
ぞれA1及びB1とし、比較鋼として、鋼Aを圧延
後空冷して、前組織をフエライト・パーライト組
織としたものをA2とする。旧オーステナイト粒
径はいずれも20μ以下である。 次に、上記A1及びB1を異なるオーステナイト
分率を有するようにAc1〜Ac3域に3分間加熱保
持し、種々の平均冷却速度にて常温まで冷却し
た。加熱温度及び冷却速度に対する第2相粒子の
形態とその体積分率を第1図に示す。実線はフエ
ライトと針状第2相との均一な混合組織を有し、
破線はフエライトと塊状第2相、又はフエライト
と針状若しくは塊状第2相との混合組織を示す。 本発明に従つて、平均冷却速度125℃/秒又は
80℃/秒で冷却したとき、鋼の第2相形態は針状
であつて、組織はこの第2相がフエライト相中に
均一に分散して形成されており、また、第2相の
体積分率は加熱温度にかかわらずにほぼ一定であ
る。これに対して、前組織が同じであつても、平
均冷却速度が170℃/秒以上のときは、第2相形
態は塊状、又は塊状と針状の混合物となり、更に
第2相分率は加熱温度が高いほど多くなる A1から得られた本発明鋼の代表例の組織の顕
微鏡写真を第2図A及びBに示す。倍率はA及び
B図がそれぞれ700倍及び1700倍であつて、白い
部分がフエライト相、黒い部分が針状マルテンサ
イト相である。第2図Cは後述する比較例として
の第2表鋼番号7の鋼の組織を示す顕微鏡写真で
ある。 第3図は最終組織に含まれる第2相体積分率と
第2相粒子の平均換算粒子径の関係をマルテンサ
イト前組織のA1及びB1、並びにフエライト・パ
ーライト前組織A2及びB2についてそれぞれ示
す。ここで、平均換算粒子径は、いずれの形態に
ついても、前記したように面積を円に換算したと
きの平均直径を意味する。 いずれの鋼材についても、第2相粒子の粒子径
は第2相積分率の増加に伴つて大きくなるが、第
2相分率が同一である場合は、マルテンサイト前
組織から得られる粒子の粒子径はフエライト・パ
ーライト前組織から得られる粒子の粒子径に比べ
て著しく小さい。即ち、同一の組成を有する鋼で
あつても、前組織をフエライト・パーライトから
マルテンサイト組織に調整することにより、第2
相粒子を格段に微細化できる。この第2相粒子の
微細化により、鋼の延性は大幅に改善されるが、
必ずしも強加工性に富むとは限らない。即ち、本
発明に従つて、第2相の体積分率を15〜40%の範
囲とすることによつて、第2相の形態は針状が主
体となり、且つ、第2相が平均換算粒子径3μ以
下の微細な針状粒子からなり、更に、このような
微細な針状第2相がフエライト中に均一に分散さ
れるために強加工性にすぐれるのである。勿論、
上記は第2相が針状ベイナイト又はこれとマルテ
ンサイトとの混合組織の場合にも当てはまる。 次に、本発明鋼A1及び比較鋼A2について、加
熱及び冷却条件、最終組織並びに機械的性質を第
2表に示す。前組織が微細なマルテンサイトであ
るA1をオーステナイト化分率が20%以上となる
ようにAc1〜Ac3域に加熱した後、125℃/秒で冷
却して得られた鋼番号3,4,5及び6は、フエ
ライト相中に微細な針状マルテンサイト(第2
相)が体積分率15〜40%の範囲内で均一に混合分
散されてなる複合組織を有する本発明による鋼で
あつて、強度・延性バランス格段にすぐれている
ことが明らかである。 これに対して、前組織がフエライト・パーライ
トである比較鋼A2は、加熱及び冷却条件にかか
わらずに、第2相の形態が塊状である番号10,11
又は12を与え、これらはいずれも強度・延性バラ
ンスに劣つている。一方、前組織はマルテンサイ
トであるが、鋼番号1はAc1〜Ac3域に加熱後の
冷却速度が遅すぎるために、また、銅番号2は
Ac1〜Ac3域に加熱した際のオーステナイト化分
率が16%であるために、いずれもその組織がフエ
ライトと塊状及び針状マルテンサイトとの微細な
混合組織であり、上記鋼番号10〜12よりは強度・
延性バランスにすぐれているが、上記本発明によ
る鋼に比べて劣ることが明らかである。また、鋼
番号7〜9はいずれもフエライトと塊状マルテン
サイトの混合組織であつて、強度・延性バランス
に劣る。 次に、異なる第2相形態を有する6.4mm径線材
に冷間伸線による強加工を加えた。この加工後の
性質を第3表に示す。銅番号1の本発明の方法に
よる鋼によれば、加工度99%の場合にもすぐれた
延性を有し、強加工が可能であると共に、加工後
にも加工材は強度・延性バランスにすぐれてい
る。一方、塊状の第2相を有する鋼番号2の線材
は加工度の増大につれて急激に延性が劣化し、約
90%の加工度において断線が生じた。鋼番号3の
鋼は鋼番号2の鋼よりも微細な組織を有して、強
加工性は鋼番号2よりもすぐれるものの、鋼番号
1に比較して加工後の性質劣化が著しい。 第4図は第2表鋼番号4の本発明による鋼を
300℃の温度で所定時間熱処理した場合の特性の
変化を示す。強度・延性変化は比較的少なく、特
に、降伏比は300℃で30分間保持しても低い値を
示している。このことは、本発明による鋼が冷却
のままの状態で固溶C及びNが低いことにも関連
している。一方、加工後に同様の熱処理を施せば
降伏比が著しく高くなり、目的に応じて加工、低
温熱処理の組合せが可能である。 次に、第1表に示すように、本発明で規定する
化学組成を有する鋼B及びCを本発明に従つてフ
エライトと針状マルテンサイトの均一な微細複合
組織を有する5.5mm線径の線材とした。これらを
それぞれB1及びC1とする。このB1及びC1の機械
的性質及びこれらを1.0mm以下の線径の極細線に
強加工した伸線材の機械的性質を第4表に示す。
の製造方法に関する。 近年、プレス成形高強度薄鋼板として、フエラ
イトと低温変態生成相からなる低降伏比で高延性
の材料が開発されている。しかし、この材料は張
出し成形性にはすぐれるが、例えば、加工率が90
%程度の強加工である伸線加工によつて延性が著
しく劣化することが知られている。一方、パンテ
ンテイング処理したパーライト組織からなる共析
鋼材が鍛造性やプレス成形性に著しく劣ることも
知られている。 本発明者らは、プレス成形性のみならず、冷間
又は温間における伸線、引抜き、鍛造、圧延等の
強加工性にすぐれた鋼材を得るべく鋭意研究した
結果、低炭素鋼の組織を予め残留オーステナイト
を含有してもよいベイナイト、マルテンサイト又
はこれらの微細混合組織とし、これにより逆変態
した塊状オーステナイトを所定の冷却条件下に変
態させて、最終組織として、一部残留オーステナ
イトを含有していてもよい針状のベイナイト、マ
ルテンサイト又はこれらの混合組織からなる微細
な低温変態生成相がフエライト相中に均一に分散
されてなる複合組織を有せしめることにより、こ
の低炭素鋼材に上述のすぐれた強加工性を付与し
得ることを見出して本発明に至つたものである。 本発明による強加工性のすぐれた高強度低炭素
鋼材の製造方法は、重量%で C 0.01〜0.30%、 Si 1.5%以下、 Mn 0.3〜2.5%、 残部鉄及び不可避的不純物よりなる鋼の組織を
旧オーステナイト粒径が35μ以下のベイナイト、
マルテンサイト又はこれらの混合組織とした後、
Ac1〜Ac3温度域に加熱して、オーステナイト化
分率が約20%以上となるようにオーステナイト化
を進行させ、次いで、平均冷却速度40〜150℃/
秒にて常温乃至500℃まで冷却することを特徴と
する。 かかる本発明の方法によつて得られる鋼材は、
所定の化学組成を有すると共に、針状の低温変態
生成相がフエライト中に均一に分散分布されてな
る従来にない特異な複合組織を有し、且つ、上記
低温変態生成相の針状粒子の平均換算粒子が径
3μ以下であつて、著しく微細であるために、延
性のみならず、強加工性にすぐれ、例えば99.9%
の加工率による伸線加工を行なうことができ、し
かも、このようにして得られる伸線材もまた、高
強度高延性を有している。 尚、本発明において、針状(elongated又は
acicular)とは粒子が方向性を有することをい
い、塊状(globuar)とは粒子が方向性を有しな
いことをいう。また、針状粒子の換算粒子径と
は、針状粒子の面積を円に換算したときの直径を
意味する。 以下に本発明の方法による鋼材における成分の
限定理由について説明する。 Cは、本発明の方法による鋼材が前記した最終
金属組織を有するために0.01%以上を添加するこ
とが必要であるが、0.30%を越えるときは、針状
のマルテンサイト、ベイナイト又はこれらの混合
組織からなる低温変態生成相(以下、単に第2相
ということがある。)の延性が劣化するようにな
る。従つて、C含有量は0.01〜0.30%とする。 Siはフエライト相の強化元素として有効である
が、1.5%を越えると変態温度を著しく高温側に
ずらせ、また、鋼材の表面の脱炭を起こしやすく
するので1.5%を上限とする。 Mnは鋼を強化すると共に、第2相の焼入れ性
を高め、また、その形態を針状化するために0.3
%以上を添加することが必要であるが、2.5%を
越えて多量に添加しても、その効果が飽和するの
で、Mn含有量は0.3〜2.5%とする。 本発明によれば、鋼の金属組織を微細化するた
めに、Nb、V及びTiから選ばれる少なくとも1
種の元素を更に添加することができる。この組織
の微細化のためには、いずれの元素についても
0.005%以上の添加を必要とするが、しかし、過
多に添加してもその効果が飽和し、また、経済的
にも不利であるので、その上限は、Nbについて
は0.2%、V及びTiについてはそれぞれ0.3%とす
る。 更に、本発明の方法において鋼に不可避的に含
まれる元素又は含まれてもよい元素について説明
する。 Sは鋼中のMnS量を少なくするために、0.005
%以下とするのがよく、これにより鋼の延性が向
上する。Pは粒界偏析の著しい元素であるので、
その含有量を0.01%以下とするのが好ましい。N
は固溶状態で存在すると、最も時効しやすい元素
である。従つて、加工中に時効して加工性を阻害
し、或いは加工後にも時効して、加工材の延性を
劣化させるので、0.003%以下とするのが好まし
い。Alは酸化物系介在物を形成し、この酸化物
系介在物は変形し難いために、鋼材の加工性を阻
害する場合がある。特に、極細線材においては、
この介在物を起点として破断が生じやすい。従つ
て、鋼材の用途が線材であるとき、Alの含有量
は、通常、0.01%以下とするのが好ましい。 一方、CaやCe等の希土類元素を添加すること
によつて、MnS介在物の形状を調整することも
好ましい。 また、前記したNb、V及びTiを含めて、Al等
を添加することにより、固溶CやNを固定するこ
ともできる。更に、本発明においては、鋼材の用
途に応じて、Cr、Cu及び/又はMoをそれぞれ
1.0%以下、Niを6%以下、Al及び/又はPをそ
れぞれ0.1%以下、Bを0.02%以下適宜に添加す
ることもできる。 本発明の方法においては、先ず、最終的に金属
組織における第2相を微細な針状組織とするため
に、前記所定の組成を有する鋼をAc1〜Ac3温度
域に加熱する前に、その組織を、一部残留オース
テナイトを含有していてもよい旧オーステナイト
粒径が35μ以下、好ましくは20μ以下のベイナイ
ト、マルテンサイト又はこれらの微細混合組織
(以下、これらを単に前組織ということがある。)
とする。前組織をこのように微細化することによ
り、最終的組織を微細化して鋼の延性及び靭性を
向上させ、かくして鋼に所要の強度を付与するこ
とができる。 旧オーステナイト粒径を35μ以下に調整するに
は、造塊又は連続鋳造により得られた鋼を熱間加
工するに際して、オーステナイトの再結晶や粒成
長の進行が著しく遅い温度域、即ち、980℃以下
であつて、且つ、Ar3点以上の温度範囲において
減面率30%以上で熱間加工することが必要であ
る。熱間加工温度が980℃を越える温度であると
きは、オーステナイトが再結晶や粒成長しやす
く、また、加工減面率が30%よりも少ないとき
は、オーステナイト粒径を細粒化することができ
ないからである。更に、10〜20μ程度のオーステ
ナイト細粒を得るには、上記加工条件に加えて、
最終加工パスを900℃以下とする必要があり、5
〜10μ程度の極細粒を得るためには、上記最終加
工を歪速度300/秒以上とする必要がある。 尚、旧オーステナイト粒径を調整するための上
記熱間加工後に冷間加工を加えて所望の形状とす
ることもできるが、この場合、冷間加工の加工率
は40%までとする。上記前組織に40%よりも大き
い冷間加工を加えたときは、後述するAc1〜Ac3
温度域への加熱時にマルテンサイトの再結晶が起
こり、目的とする最終組織を得ることができな
い。 次に、前組織をベイナイト、マルテンサイト又
はこれらの混合組織とするためには、次の方法に
よることができる。 その第1は、圧延工程中に所要の前組織を得る
方法であつて、鋼を制御圧延するか、又は熱間圧
延した後に加速冷却する。その冷却速度は5℃/
秒以上とすることが必要である。これよりも小さ
い冷却速度では、通常のフエライト・パーライト
組織となるからである。 前組織を得るための第2の方法は、圧延した鋼
を改めて熱処理する方法であり、鋼をAc3点以上
のオーステナイト域に加熱した後に調整冷却す
る。この方法による場合も、加熱温度は、第1の
方法について説明したと同様に、Ac3〜Ac3+150
℃の範囲であることが望ましい。 本発明の方法によれば、このようにAc1〜Ac3
域に加熱する前の組織を、従来のフエライト・パ
ーライト組織に替えて、残留オーステナイトを含
有していてもよいマルテンサイト、ベイナイト又
はこれらの混合組織からなる低温変態生成相とし
た鋼をAc1〜Ac3域に加熱することにより、低温
変態生成相のラス境界に存在している残留オース
テナイト若しくはセメンタントを優先核として、
初期オーステナイト粒が多数生成し、上記ラス境
界に沿つて成長する。 次いで、所定の条件下での冷却によつてこのオ
ーステナイトから変態するマルテンサイト又はベ
イナイトを針状にして、周囲のフエライト相に対
して整合性のよいものとし、かくして、従来のフ
エライト・パーライト前組織に比較して、第2相
粒子を格段に微細化する。従つて、本発明の方法
においては、Ac1〜Ac3域への加熱及び冷却の条
件が重要である。即ち、条件によつては、第2相
が塊状化し、或いは第2相に塊状の粒子が混在し
て、強加工性を損なうこととなるからである。 より詳細に説明すれば、微細なベイナイト、マ
ルテンサイト又はこれらの混合組織からなる前組
織をオーステナイト域に加熱する際の逆変態は、
オーステナイト分率が約20%までは旧オーステナ
イト粒界から塊状オーステナイトが生成し、ま
た、粒内からは針状オーステナイトが生成するこ
とにより開始されるので、この状態から、例えば
150〜200℃/秒以上の冷却速度で急冷することに
より、針状と塊状の低温変態生成相がフエライト
中に分散した組織を得る。従つて、旧オーステナ
イトが細粒であるほど、塊状オーステナイトの生
成頻度が高い。オーステナイト化が更に約40%以
上進行すると、針状オーステナイト粒子相互が合
体して塊状オーステナイトへと変化するので、こ
の状態から急冷すると、フエライトを粗大な塊状
の低温変態生成相との混合組織を形成する。更に
オーステナイト化が約90%以上進行すれば、塊状
オーステナイト相互が合体成長してオーステナイ
ト化が完了するので、この状態から急冷すれば、
低温変態生成相が主体の組織となる。 そこで、本発明の方法においては、前記前組織
に調整した鋼をAc1〜Ac3域に加熱するに際して、
そのオーステナイト化をオーステナイト化分率が
約20%以上とし、この状態から平均冷却速度40〜
150℃/秒にて常温乃至500℃の温度まで冷却する
ことにより、冷却中の変態過程において塊状オー
ステナイトからフエライトと針状オーステナイト
とを分離させ、この針状オーステナイトを低温変
態生成相に変態させることにより、一部残留オー
ステナイトを含有していてもよい針状ベイナイ
ト、マルテンサイト又はこれらの混合物組織から
なる微細な低温変態生成相がフエライト相中に均
一に分散された最終金属組織を得るのである。 本発明の方法においては、平均冷却速度は上記
のように限定される。冷却速度が40℃/秒よりも
遅い場合には、塊状オーステナイトからポリゴナ
ルフエライトが生成し、残留する塊状オーステナ
イト粒子は塊状第2相に変態し、一方、冷却速度
が150℃/秒よりも速い場合には、上記したよう
に塊状第2相が生成するからである。また、本発
明の方法においては、フエライト相中における第
2相の体積分率を15〜40%の範囲とする。第2相
の体積分率がこの範囲にあるとき、第2相粒子は
針状であり、且つ、その平均換算粒子径が3μ以
下となり、かくして、本発明の方法により得られ
る鋼材は、従来にない独特の複合組織を有するた
めに、すぐれた強加工性を有する。また、第2相
の体積分率が上記範囲をはずれるとき、上記条件
下での冷却によつても、最終組織中に塊状第2相
が混入しやすい。 冷却変態生成相としてベイナイト、マルテンサ
イト又はこれらの混合組織を得るためであると共
に、この温度範囲内で冷却速度を遅くし、又は停
止することによつて、生成した第2相の焼戻しを
兼ねさせることもできるからである。 以上のように、本発明の方法によれば、低炭素
鋼の組織を予めベイナイト、マルテンサイト又は
これらの微細混合組織とし、これにより逆変態し
たオーステナイトを所定の冷却条件下に変態させ
て、針状の低温変態生成相を15〜40%の体積分率
でフエライト相中に均一に分散させてなる複合組
織を有する鋼材を得ることができ、この鋼材は、
上記のような独特の複合組織であるため、冷間又
は温間におけるプレス成形、伸線、引抜き、鍛
造、圧延等の強加工性にすぐれ、更に加工後にも
強度・延性バランスにすぐれる。 実施例 第1表に示すように、本発明で規定する化学組
成を有する鋼A及びBを圧延後に水冷して、前組
織を微細なマルテンサイト組織としたものをそれ
ぞれA1及びB1とし、比較鋼として、鋼Aを圧延
後空冷して、前組織をフエライト・パーライト組
織としたものをA2とする。旧オーステナイト粒
径はいずれも20μ以下である。 次に、上記A1及びB1を異なるオーステナイト
分率を有するようにAc1〜Ac3域に3分間加熱保
持し、種々の平均冷却速度にて常温まで冷却し
た。加熱温度及び冷却速度に対する第2相粒子の
形態とその体積分率を第1図に示す。実線はフエ
ライトと針状第2相との均一な混合組織を有し、
破線はフエライトと塊状第2相、又はフエライト
と針状若しくは塊状第2相との混合組織を示す。 本発明に従つて、平均冷却速度125℃/秒又は
80℃/秒で冷却したとき、鋼の第2相形態は針状
であつて、組織はこの第2相がフエライト相中に
均一に分散して形成されており、また、第2相の
体積分率は加熱温度にかかわらずにほぼ一定であ
る。これに対して、前組織が同じであつても、平
均冷却速度が170℃/秒以上のときは、第2相形
態は塊状、又は塊状と針状の混合物となり、更に
第2相分率は加熱温度が高いほど多くなる A1から得られた本発明鋼の代表例の組織の顕
微鏡写真を第2図A及びBに示す。倍率はA及び
B図がそれぞれ700倍及び1700倍であつて、白い
部分がフエライト相、黒い部分が針状マルテンサ
イト相である。第2図Cは後述する比較例として
の第2表鋼番号7の鋼の組織を示す顕微鏡写真で
ある。 第3図は最終組織に含まれる第2相体積分率と
第2相粒子の平均換算粒子径の関係をマルテンサ
イト前組織のA1及びB1、並びにフエライト・パ
ーライト前組織A2及びB2についてそれぞれ示
す。ここで、平均換算粒子径は、いずれの形態に
ついても、前記したように面積を円に換算したと
きの平均直径を意味する。 いずれの鋼材についても、第2相粒子の粒子径
は第2相積分率の増加に伴つて大きくなるが、第
2相分率が同一である場合は、マルテンサイト前
組織から得られる粒子の粒子径はフエライト・パ
ーライト前組織から得られる粒子の粒子径に比べ
て著しく小さい。即ち、同一の組成を有する鋼で
あつても、前組織をフエライト・パーライトから
マルテンサイト組織に調整することにより、第2
相粒子を格段に微細化できる。この第2相粒子の
微細化により、鋼の延性は大幅に改善されるが、
必ずしも強加工性に富むとは限らない。即ち、本
発明に従つて、第2相の体積分率を15〜40%の範
囲とすることによつて、第2相の形態は針状が主
体となり、且つ、第2相が平均換算粒子径3μ以
下の微細な針状粒子からなり、更に、このような
微細な針状第2相がフエライト中に均一に分散さ
れるために強加工性にすぐれるのである。勿論、
上記は第2相が針状ベイナイト又はこれとマルテ
ンサイトとの混合組織の場合にも当てはまる。 次に、本発明鋼A1及び比較鋼A2について、加
熱及び冷却条件、最終組織並びに機械的性質を第
2表に示す。前組織が微細なマルテンサイトであ
るA1をオーステナイト化分率が20%以上となる
ようにAc1〜Ac3域に加熱した後、125℃/秒で冷
却して得られた鋼番号3,4,5及び6は、フエ
ライト相中に微細な針状マルテンサイト(第2
相)が体積分率15〜40%の範囲内で均一に混合分
散されてなる複合組織を有する本発明による鋼で
あつて、強度・延性バランス格段にすぐれている
ことが明らかである。 これに対して、前組織がフエライト・パーライ
トである比較鋼A2は、加熱及び冷却条件にかか
わらずに、第2相の形態が塊状である番号10,11
又は12を与え、これらはいずれも強度・延性バラ
ンスに劣つている。一方、前組織はマルテンサイ
トであるが、鋼番号1はAc1〜Ac3域に加熱後の
冷却速度が遅すぎるために、また、銅番号2は
Ac1〜Ac3域に加熱した際のオーステナイト化分
率が16%であるために、いずれもその組織がフエ
ライトと塊状及び針状マルテンサイトとの微細な
混合組織であり、上記鋼番号10〜12よりは強度・
延性バランスにすぐれているが、上記本発明によ
る鋼に比べて劣ることが明らかである。また、鋼
番号7〜9はいずれもフエライトと塊状マルテン
サイトの混合組織であつて、強度・延性バランス
に劣る。 次に、異なる第2相形態を有する6.4mm径線材
に冷間伸線による強加工を加えた。この加工後の
性質を第3表に示す。銅番号1の本発明の方法に
よる鋼によれば、加工度99%の場合にもすぐれた
延性を有し、強加工が可能であると共に、加工後
にも加工材は強度・延性バランスにすぐれてい
る。一方、塊状の第2相を有する鋼番号2の線材
は加工度の増大につれて急激に延性が劣化し、約
90%の加工度において断線が生じた。鋼番号3の
鋼は鋼番号2の鋼よりも微細な組織を有して、強
加工性は鋼番号2よりもすぐれるものの、鋼番号
1に比較して加工後の性質劣化が著しい。 第4図は第2表鋼番号4の本発明による鋼を
300℃の温度で所定時間熱処理した場合の特性の
変化を示す。強度・延性変化は比較的少なく、特
に、降伏比は300℃で30分間保持しても低い値を
示している。このことは、本発明による鋼が冷却
のままの状態で固溶C及びNが低いことにも関連
している。一方、加工後に同様の熱処理を施せば
降伏比が著しく高くなり、目的に応じて加工、低
温熱処理の組合せが可能である。 次に、第1表に示すように、本発明で規定する
化学組成を有する鋼B及びCを本発明に従つてフ
エライトと針状マルテンサイトの均一な微細複合
組織を有する5.5mm線径の線材とした。これらを
それぞれB1及びC1とする。このB1及びC1の機械
的性質及びこれらを1.0mm以下の線径の極細線に
強加工した伸線材の機械的性質を第4表に示す。
【表】
【表】
【表】
【表】
(注) (a) 第2表と同じ。
(b) 伸線途中で断線した。
(b) 伸線途中で断線した。
【表】
B1及びC1は共に高延性を有し、99.9%の強加
工が可能である。また、伸線材も高強度及び高延
性を有し、従つて、本発明による鋼材は極細線材
用材料として好適である。また、鋼C1を加工率
97%で伸線して線材(線径0.95mm)とし、これを
300〜400℃の温度で低温焼鈍した後の機械的性質
をも第4表に示す。線材が低温焼鈍によつて延性
が改善されていることが明らかである。強度低下
は認められない。従つて、本発明の方法による鋼
材は、これを伸線材とするとき、低温焼鈍熱処理
によつてその延性改善を図ることができ、また、
伸線途中工程に低温焼鈍を組み合わせることによ
つて最終伸線材の延性を一層増すこともできる。
更に、低温焼鈍を伸線工程や最終伸線後に施され
るメツキ層の拡散熱処理として適用することもで
きる。
工が可能である。また、伸線材も高強度及び高延
性を有し、従つて、本発明による鋼材は極細線材
用材料として好適である。また、鋼C1を加工率
97%で伸線して線材(線径0.95mm)とし、これを
300〜400℃の温度で低温焼鈍した後の機械的性質
をも第4表に示す。線材が低温焼鈍によつて延性
が改善されていることが明らかである。強度低下
は認められない。従つて、本発明の方法による鋼
材は、これを伸線材とするとき、低温焼鈍熱処理
によつてその延性改善を図ることができ、また、
伸線途中工程に低温焼鈍を組み合わせることによ
つて最終伸線材の延性を一層増すこともできる。
更に、低温焼鈍を伸線工程や最終伸線後に施され
るメツキ層の拡散熱処理として適用することもで
きる。
第1図は本発明で規定する組成を有する鋼を
Ac1〜Ac3域に加熱し、冷却したときの加熱温度
と平均冷却速度とに対する低温変態生成相の形態
とそのフエライト相中における体積分率の関係を
示すグラフ、第2図A及びBは本発明の方法によ
る鋼の代表的な組織を示す顕微鏡写真、Cは比較
鋼の組織を示す顕微鏡写真、第3図は第2相体積
分率と第2相の形態及び粒子の平均換算粒子径と
の関係を示すグラフ、第4図は本発明鋼を300℃
の温度に保持したときの物性の変化を示すグラフ
である。
Ac1〜Ac3域に加熱し、冷却したときの加熱温度
と平均冷却速度とに対する低温変態生成相の形態
とそのフエライト相中における体積分率の関係を
示すグラフ、第2図A及びBは本発明の方法によ
る鋼の代表的な組織を示す顕微鏡写真、Cは比較
鋼の組織を示す顕微鏡写真、第3図は第2相体積
分率と第2相の形態及び粒子の平均換算粒子径と
の関係を示すグラフ、第4図は本発明鋼を300℃
の温度に保持したときの物性の変化を示すグラフ
である。
Claims (1)
- 【特許請求の範囲】 1 重量%で C 0.01〜0.30%、 Si 1.5%以下、 Mn 0.3〜2.5%、 残部鉄及び不可避的不純物よりなる鋼の組織を
旧オーステナイト粒径が35μ以下のベイナイト、
マルテンサイト又はこれらの混合組織とした後、
Ac1〜Ac3温度域に加熱して、オーステナイト化
分率が約20%以上となるようにオーステナイト化
を進行させ、次いで、平均冷却速度40〜150℃/
秒にて常温乃至500℃まで冷却することを特徴と
する強加工性のすぐれた高強度低炭素鋼材の製造
方法。 2 重量%で C 0.01〜0.30%、 Si 1.5%以下、 Mn 0.3〜2.5%及び、 Nb 0.005〜0.20%、V0.005〜0.30%及び
Ti0.005〜0.30%から選ばれる少なくとも1種、 残部鉄及び不可避不純物よりなる鋼の組織を旧
オーステナイト粒径が35μ以下のベイナイト、マ
ルテンサイト又はこれらの混合組織とした後、
Ac1〜Ac3温度域に加熱して、オーステナイト化
分率が約20%以上となるようにオーステナイト化
を進行させ、次いで、平均冷却速度40〜150℃/
秒にて常温乃至500℃まで冷却することを特徴と
する強加工性のすぐれた高強度低炭素鋼材の製造
方法。
Priority Applications (7)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP905684A JPS60152635A (ja) | 1984-01-20 | 1984-01-20 | 強加工性のすぐれた高強度低炭素鋼材の製造方法 |
US06/686,884 US4578124A (en) | 1984-01-20 | 1984-12-27 | High strength low carbon steels, steel articles thereof and method for manufacturing the steels |
DE3588099T DE3588099T2 (de) | 1984-01-20 | 1985-01-04 | Hochfester, niedriggekohlter Stahl, Gegenstände daraus und Verfahren zur Herstellung dieses Stahls |
CA000471526A CA1231631A (en) | 1984-01-20 | 1985-01-04 | High strength low carbon steels, steel articles thereof and method for manufacturing the steels |
EP85300046A EP0152160B1 (en) | 1984-01-20 | 1985-01-04 | High strength low carbon steels, steel articles thereof and method for manufacturing the steels |
EP90123192A EP0429094B1 (en) | 1984-01-20 | 1985-01-04 | High strength low carbon steels, steel articles thereof and method for manufacturing the steels |
DE8585300046T DE3586662T2 (de) | 1984-01-20 | 1985-01-04 | Hochfester, niedrig gekohlter stahl, gegenstaende daraus und verfahren zur herstellung dieses stahls. |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP905684A JPS60152635A (ja) | 1984-01-20 | 1984-01-20 | 強加工性のすぐれた高強度低炭素鋼材の製造方法 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPS60152635A JPS60152635A (ja) | 1985-08-10 |
JPH0414167B2 true JPH0414167B2 (ja) | 1992-03-12 |
Family
ID=11709967
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP905684A Granted JPS60152635A (ja) | 1984-01-20 | 1984-01-20 | 強加工性のすぐれた高強度低炭素鋼材の製造方法 |
Country Status (1)
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JP (1) | JPS60152635A (ja) |
Families Citing this family (5)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
JPS61157625A (ja) * | 1984-12-29 | 1986-07-17 | Nippon Steel Corp | 高強度鋼板の製造方法 |
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1984
- 1984-01-20 JP JP905684A patent/JPS60152635A/ja active Granted
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Also Published As
Publication number | Publication date |
---|---|
JPS60152635A (ja) | 1985-08-10 |
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