JP4405026B2 - 結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱間圧延によって製造される鋼製品(薄鋼板、厚鋼板、線材、型鋼、棒鋼、鋼管など)において、その基本特性たる強度、靭性、延性に優れた高靱性高張力鋼の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、鋼製品の軽量化、鋼構造物の使用条件の過酷化にともない、より強靭で安全性の高い鋼の開発が求められている。この様な要求に対し、従来、鋼板の製造方法を改善し、金属組織の結晶粒の細粒化を図り、鋼の強度、靭性を改善するための圧延方法が開発されてきた。この様な方法の例としては、いわゆる制御圧延法が上げられ、加速冷却法と組み合わせた製造法として、特開昭63−223124号公報や特開昭63−128117号公報などに示されている。
【0003】
これら従来法に示されている制御圧延法では、比較的高温のオーステナイト(以下、γと略記)の再結晶温度域において圧延パス間で生じる静的再結晶を利用し、γ粒を細粒化する。次いで、鋼板の温度が低下するのを待ち、γの再結晶が生じない温度域(未再結晶温度域)で、再び圧延を行うことによってγの結晶中に転位などの欠陥を導入することが行われている。この様な欠陥は、γがフェライト等に変態するに際して、γ粒界と同様に、フェライト等の変態生成組織の核生成場所となるため、冷却時に多数の結晶粒を一斉に生成させ、金属組織をいっそう微細にすることが可能だからである。
しかし、このような方法で得られるフェライトの粒径は小さいといってもせいぜい5μm程度であり、より結晶粒を微細化する方法が求められている。特に700MPa以上の高強度鋼では5μm程度の粒径では、細粒化の効果だけで十分な靱性が得られなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、720MPaを超え、さらには800MPaを超える高張力鋼においても制御圧延や加速冷却といった従来の結晶粒微細化手段では得られないような顕著な細粒を得ることができる加工、冷却方法により、平均粒径で2μm以下の細粒を実現し、コスト的にも極めて有利な高靱性高張力鋼の製造方法を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
そこで発明者らは、上記のような変態を利用した細粒化の限界を打破し、著しく細粒化されたフェライト組織を得ることができ、720MPaを超えるような高張力鋼においても、細粒化効果だけで十分な靱性向上をもたらす以下のような製造方法を完成させたものである。
(1)質量%で、C:0.05〜0.8%、Si:0.01〜0.5%、Mn:0.5〜5%を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳片を鋳造し、圧延を行うかもしくは圧延することなくそのまま600℃以下に冷却した後、熱間圧延を行うに際して、再加熱を、550℃〜Ac 1 点の温度で行い、再加熱とそれに続く圧延を、550℃〜Ac1 点の温度で行い、かつ、最終パスを含む1パス以上の圧延を、Ac 1 点超〜Ac 1 点+30℃の温度で行い、また、その圧延を、1パスの圧下率を30%以上として1パスまたはパス間時間を10秒以内とする連続する2パス以上で、歪速度:0.1〜200/秒、総歪量:1以上10以下となる条件で行うことを特徴とする結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
【0006】
(2)熱間圧延の再加熱において、その昇温速度を0.1〜50℃/秒とすることを特徴とする前記(1)に記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
【0007】
(3)熱間圧延の再加熱に先だって、Ac3 点〜1450℃に加熱し、圧延を行うかもしくは圧延することなくそのまま0.2〜80℃/秒の冷却速度で600℃以下に冷却する均一化処理を、さらに行うことを特徴とする前記(1)または(2)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
(4)熱間圧延後90秒以内に、0.2〜80℃/秒の冷却速度で600℃以下に強制冷却することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
【0008】
(5)熱間圧延後600℃以下に放冷もしくは0.2〜80℃/秒の冷却速度で強制冷却した後に、550℃〜Ac1 点+30℃に加熱する再結晶処理を、さらに行うことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
(6)熱間圧延後300秒以内に、600℃以下に冷却することなく550℃〜Ac1 点+30℃に保持する再結晶処理を、さらに行うことを特徴とする前記(1)〜(4)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
【0009】
(7)再結晶処理において、保持温度:550〜850℃、保持温度までの昇温または降温速度:0.5〜50℃/秒、保持時間:300秒以内とし、その後600℃以下に放冷または0.1〜80℃/秒の冷却速度で強制冷却することを特徴とする前記(5)または(6)に記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
(8)室温まで冷却後、300℃〜Ac1 点+30℃の温度の温度で焼き戻しを、さらに行うことを特徴とする前記(1)〜(7)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
【0010】
(9)鋳片が、質量%で、N:0.002〜0.1%と、Ti:0.003〜0.6%、Nb:0.003〜0.5%、V:0.001〜0.5%の1種または2種以上とを、さらに含有し、かつ、C%≧0.05+12×(Ti%/48+Nb%/93+V%/23−N%/14)を満たすことを特徴とする前記(1)〜(8)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
(10)鋳片が、質量%で、Mo:0.01〜1%、Ni:0.01〜5%、Cr:0.01〜3%、Cu:0.01〜3%、B:0.0001〜0.003%の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(1)〜(9)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
(11)鋳片が、質量%で、REM:0.002〜0.1%、Ca:0.0003〜0.003%の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする前記(1)〜(10)のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法である。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、従来の制御圧延による細粒化方法を冶金的な見地から検討してみると前述したように、主に以下の効果によるものであると考えられる。
▲1▼比較的高温のオーステナイト(以下、γと略記)の再結晶温度域において圧延パス間で生じる静的再結晶を利用し、γ粒を細粒化する。
▲2▼さらに、比較的低温であるところのγの再結晶が生じない温度域(未再結晶温度域)で圧延を行うことによって、γの結晶中に転位などの欠陥を多数導入する。
▲3▼上記のようなγ粒界や転位などの欠陥は、γがフェライト等に変態するに際して、変態生成組織の核生成場所となるため、金属組織を微細にする。
【0012】
これらのうち▲1▼〜▲3▼はいずれもフェライト等の変態生成組織の核生成場所を提供するものであって、これにより最終的なフェライトの結晶粒径を微細にするものであり、いずれもオーステナイトからフェライトへの変態時に発生するフェライト粒数を増加させ微細化を図る。しかし、このような変態を利用した微細化では通常の鋼のオーステナイトからフェライトへの変態開始温度は750℃から800℃と比較的高温であり結晶粒成長が速いためにせいぜい5μm程度の結晶粒しか得られない。
また、強制冷却によりフェライト変態の温度を強制的に低下させることができるが、このような場合には生成するフェライトが針状であったり、ベイナイトが生成するなど靱性の観点から好ましくない組織となる。
【0013】
本発明の根幹となる技術の要点は以下の通りである。
(1)フェライトの動的再結晶による微細化
フェライトの動的再結晶により結晶粒は1μm以下に微細化できる。このときの、微細かつ均一なフェライト粒を得るためには以下のような前処理、加工および冷却に関する条件が必要である。
まず、動的再結晶を生じせしめる加工前の組織は、フェライト中にセメンタイトが分散した混合組織が望ましいことが見出された。これは、第2相とフェライトの間の変形抵抗差のためフェライトがより加工されやすくなることと加工によりフェライトが伸延、再結晶する際に第2相による分断やピンニング効果により、再結晶後の粒成長、合体も押さえられる為と考えられる。
【0014】
このような前組織としてはフェライトとパーライトに比較してフェライトとベイナイトまたはマルテンサイトとの混合組織もしくはパーライト、ベイナイトもしくは焼き戻しマルテンサイト組織の様な微細にセメンタイトが分散した組織が望ましい。この様な状態で、フェライトを再結晶させる為の加工を行うAc1 ℃以下550℃以上の温度へ再加熱することが必要であることが判った。また、この再加熱に先だっては、鋼片をそのまま用いるか一度Ac3 〜1450℃で一度再加熱し、その後に0.2〜80℃/秒の冷却速度で室温〜600℃冷却することは、鋼片の均一化などにより細粒化にさらに有効に作用するものと考えられる。特に、600℃以下の温度まで冷却するのは加工前の組織を特にベイナイトあるいはマルテンサイトを含む組織とするためである。
【0015】
次に、このようにして得られた組織(フェライトとセメンタイトとの混合組織)を再加熱して、加工を行いフェライトを微細に再結晶させるのであるが、この時の再加熱温度は、フェライトとセメンタイトの2相が共存する温度でなければならず、これを安定的に達成するには加工前の加熱温度は、Ac1 以下であることが必要である。
また、加工による動的再結晶後の粒成長をセメンタイトが抑制する観点からも加工温度はAc1 以下であることが望ましい。しかし、加工温度が低すぎると原子の拡散が著しく遅延し安定的に動的再結晶を生じさせられないこのような観点から550℃以上の温度で加工することが必要である。また、上記したような温度に加熱するにあたっては、第2相粒子であるセメンタイトを過度に粗大化させないために急速加熱を適用することが望ましい。
【0016】
また、加工における歪み量および歪み速度は安定的に動的再結晶を生じさせ、かつ再結晶後の結晶粒径を微細にできるように設定することが必要である。動的再結晶は加工による歪み量がある値以上に大きな場合に限って発生し、歪み速度は遅いほど生成しやすい。我々は加工量としては1パスあたり30%以上の大歪加工かつ総歪量で1〜10程度によって安定的に再結晶し1μm以下の微細化が達成されることを見出した。また歪速度については、歪み速度が遅い場合には、得られる結晶粒は歪み速度が速い場合比較して大きい傾向があるが、歪み速度が大きすぎると動的再結晶が生じず、加工時の荷重も極めて大きくなる。このような特性を鑑み、動的再結晶により均一かつ微細な金属組織を得る条件を実験的に検討した結果、本願発明の温度範囲では概ね1以上の歪みが必要で、適当な歪み速度の範囲は概ね0.1〜200/秒であることが判った。
【0017】
次に、上記の加工は1パスで行っても2パス以上で行ってもパス間時間を短時間とすればその効果は基本的に変わらない。本願発明の温度範囲では加工温度が比較的低くパス間での回復がそれほど速くなくパス間時間を10秒以内とすれば、その間の回復は小さく、多パスでの歪みがほぼ累積するからである。但し、1パス当たりの圧下率を増加させパス数を低減させるほど細粒化効果および再結晶を誘起する効果は大きい。次に、上記の加工により加工直後には極めて微細なフェライト組織を得ることができるが、これを加工終了後、速やかに冷却するはフェライトの結晶粒成長を抑制を可能とし、より微細な組織を得ることを可能とする。
【0018】
なお、上記加工により通常は再結晶を試料全体に誘起し、細粒組織を得ることができるが、加工条件や成分により、一部に再結晶を誘起できない場合があるこの場合には、圧延終了後に一度冷却した後に再結晶処理を行うことにより組織を微細化することができる。この再結晶処理は通常のは通常の昇温速度によっても行うことができるが、圧延後に冷却することなく連続的にかつ急速加熱によって行うことが細粒化の点で有効である。これは、通常の再結晶処理ではその昇温過程や保持中に過度に再結晶が生じ、粒成長が生じてしまうからであって、同時に進行するセメンタイト等の第2相粒子の成長も細粒化にとって好ましくないことが判明したからである。
また、加工時の第2相を調質、軟化させるために加工、冷却後に焼き戻しを行うことで結晶粒の非常に微細な鋼の製造ができる。
【0019】
(2)Tiによる粒成長抑制
上記の細粒化方法に対して、TiおよびNの添加およびこれらの添加量に応じて炭素量を適正化することによりTiNやTiCの加工転移の増加や結晶粒成長の抑制等により顕著な細粒化効果を発現することが見出された。このような多量のTiやNの添加は従来には靭性の観点から好ましくないと考えられていたが、今回得られたような顕著な細粒組織においてはその影響は極めて小さいことを見出した。Tiの窒化物は1200℃以上の高温まで安定に存在し、オーステナイトの細粒化に寄与する。また、Tiの炭化物はフェライト中に極めて微細に析出する。この両者を適正な割合で鋼中に分散させるとともに、さらにセメンタイトを形成するための炭素量を確保することによって、フェライトの再結晶粒を極めて微細に生成し得ることが見出された。さらに、NbやVの添加もTiのような窒化物の効果は期待できないが炭化物の形成により一定の効果を得ることができることも知見された。
【0020】
(3)上記の製造過程において圧延の最終パスを含む1パス以上をγ、αの2相温度域にて行うことやその後の再結晶処理や焼き戻しなどをγ、αの2相温度域で付加的に行うことは、その際にαからγに濃縮した炭素原子の効果により冷却後の金属組織中に高炭素濃度のマルテンサイト相を微細に分散させることができる。これは通常の結晶粒径を有する鋼では加工硬化を大きくするが靭性を顕著に劣化させることことが知られている。しかしながら、本発明のごときに極めて微細な結晶粒径を有する場合には靭性の劣化が極めて少ないことが判明した。これにより、結晶粒の微細な鋼では降伏強度が高いために加工硬化が小さくく引っ張り試験における一様伸びが小さいという欠点が、本処理によって、払拭されることが見出された。
【0021】
上記したような発見に基づき、本願の細粒鋼の製造条件を明確にした。以下には、各成分、製造条件の限定の理由について述べる。
Cは、鋼の強化を行うのに有効な元素であり0.05未満では十分な強度が得られない。一方、その含有量が0.75%を越えると、溶接性を劣化させる。また、細粒化効果を顕著に得るためには金属組織中にセメンタイトの分散を行う必要があり、このような観点から添加すべき炭素量は、C%≧0.05+12×(Ti%/48+Nb%/93+V%/23−N%/14)を満たす必要がある。Siは、脱酸元素として、また、鋼の強化元素として有効であるが、0.01%未満の含有量ではその効果がない。一方、0.5%を越えると、鋼の表面性状を損なう。
【0022】
Mnは、鋼の強化および焼き入れ性を向上させ圧延前の組織を適正に導くのに有効な元素であり、0.5%未満では十分な効果が得られない。一方、その含有量が5%を越えると鋼の加工性を劣化させる。
Nは、Tiと窒化物を形成し、オーステナイトの細粒化およびフェライトの再結晶粒の微細化に有効に作用するため靭性を劣化させない範囲で添加する。このような観点からその上限を0.1%、下限を0.002%とする。また、過剰の窒素添加を抑制し靭性を良好に保つために炭素、窒素の添加量がC%≧0.05+12×(Ti%/48+Nb%/93+V%/23−N%/14)を満たす必要がある。
【0023】
Ti、Nb、Vは、結晶粒の微細化と析出強化の面で有効に機能する。特に、これらによる結晶粒の微細化の効果は顕著なので靭性を劣化させない範囲で使用する。このような観点からその添加量の上限をTi:0.6%、Nb:0.5%、V:0.5%とする。また、その添加量の下限をTi:0.003%、Nb:0.003%、V:0.001%とするのは、これ未満では効果がないからである。また、その細粒化効果をより顕著にするためには、Nの添加を行いかつ炭素、窒素含有量との関係C%≧0.05+12×(Ti%/48+Nb%/93+V%/23−N%/14)を満たす必要がある。
【0024】
Cu,Ni,Cr,Mo,Bは、いずれも鋼の焼入れ性を向上させる元素であり、本発明の場合、その添加により鋼の強度を高めることができる。しかし、過度の添加は鋼の靭性および溶接性を損なうため、0.01%≦Cu≦3%、0.01%≦Ni≦5%、0.01%≦Cr≦3%、0.01%≦Mo≦1%、0.0001%≦B≦0.003%に限定する。Cu,Ni,Cr,Moのそれぞれの下限を0.01%、Bの下限を0.0001%としたのはこれ未満では効果がないからである。
【0025】
REM、Caは、Sの無害化に有効であるが、添加量が少ないとその効果が無く、また、過度の添加は靭性を損なうためREMについては0.002〜0.10%、Caについては0.0003〜0.003%に限定する。
なお、Alは、脱酸元素として添加され、特に規定しないが、0.001%未満の含有量ではその効果がなく、0.1%を越えると、鋼の表面性状を劣化させるため、0.001〜0.1%の範囲で添加されることが好ましい。
その他、不可避的不純物であるP、Sの含有量はそれぞれ0.02%以下、0.008%以下とすることが、また、O:0.0005〜0.002%の範囲とし、Zr:0.001〜0.3%、Ta:0.001〜0.3%、Hf:0.001〜0.3%を、必要に応じ添加することが好ましい。
【0026】
次に、本発明における製造条件に付いて述べる。
本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片についても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要はない。また、本発明の根幹となる加工の方法は、一度、変態を完了させた後で550℃〜Ac1 に加熱し、その温度域でフェライトの動的再結晶を生じさせる加工を行い、その一部をAc1 超〜Ac1 +30℃の範囲で行う方法(請求項1に関する方法)であり、Ti、炭素および窒素の量を適正に制御することによりさらに顕著な細粒化が得られること、さらにはそれぞれその処理に先だって、組織微細化のための再加熱・加工処理や均一化のための均熱・加工処理を行うものである。
【0027】
請求項1に示す方法の場合には、請求項1もしくは請求項9〜11に示す鋼を、一度冷却することなく圧延を行った後かあるいはそのまま圧延をせず、一度600℃以下の温度まで冷却し、通常の加熱もしくは必要に応じて請求項2に示す0.1〜50℃/秒の急速加熱によって、Ac1 以下550℃以上の温度に再加熱し、Ac1 以下550℃以上の温度で熱間圧延を行うに際して、その一部をAc 1 超〜Ac 1 +30℃の範囲で行う、一連の熱間圧延のうち、1パスの圧下率を30%以上として、1パスまたはパス間時間を10秒以内とした連続する2パス以上の圧延をAc1 以下550℃以上の温度かつ圧延の歪速度を0.1〜200/秒とし、その総歪量を1以上10以下となる条件で熱間圧延を行う。
【0028】
熱間圧延後は、特に規定しないが、放冷もしくは請求項4に示す熱間加工終了後90秒以内に室温〜600℃の温度まで0.2℃/秒〜80℃/秒以下の冷却速度で強制冷却し、さらに、必要に応じて、冷却後もしくは熱間圧延直後に請求項5または請求項6または請求項7に示す再結晶処理をおこなう。
また、その後さらに、必要に応じて、請求項8に示す300℃〜Ac1 +30℃の温度で焼き戻しを行う。
また、熱間圧延前に行うAc1 以下550℃以上の温度の再加熱に先だって、鋼片を鋳造後一度600℃以下の温度まで冷却した後に、Ac3 〜1450℃の温度に再加熱し、Ar3 以上の温度から600℃以下の温度まで0.2〜80℃/秒で冷却する請求項3に示す前処理を行う。
【0029】
まずここで、Ac1 以下550℃以上の温度で大歪による熱間加工を行うに際して、鋳片を鋳造後、一度冷却することなく圧延を行った後かあるいはそのまま圧延をせずに一度600℃以下の温度まで冷却した後に、再びAc1 以下550℃以上の温度に再加熱して行うのは、鋳造後に直接熱間加工を行ってから冷却しても熱間加工を行わずして冷却しても、一度600℃以下に冷却して完全に金属組織を変態させから再びAc1 以下550℃以上の温度に再加熱すれば、鋼の金属組織はフェライトとベイナイト、マルテンサイトの混合組織あるいはパーライト、ベイナイト、焼き戻しマルテンサイトとなり、フェライト中にセメンタイトが微細に分散した金属組織となり本発明の基本的な要件を満たすからである。Ac1 を超える温度ではセメンタイトがオーステナイに変態し、フェライト、セメンタイトの2相組織とならないからである。また550℃以上とするのは、これ未満の温度では、引き続いて実施する加工により鋼が再結晶しないからである。
【0030】
また、請求項2でAc1 以下550℃以上の温度への加熱を0.1〜50℃/秒の急速加熱によって行うのは、この昇温過程で生じるセメンタイトの粗大化を抑制するためであり、0.1℃/秒未満ではその成長を抑制し得ないからであって、50℃/秒超の昇温速度は通常の加熱装置では得にくいからである。
次に、フェライトの動的再結晶生じさせる加工は、Ac1 以下〜550℃で行う必要がある。これは、Ac1 を超えるの温度では、セメンタイトのオーステナイトへの逆変態によりセメンタイトによるフェライトへの加工歪導入促進や粒成長抑制効果を十分に受けられないからである。また、Ac1 点を超える温度は概ね700℃を超える場合が多く、動的再結晶したフェライトは粒成長しやすく、加工温度が高くなるに従い粗大化する傾向があり、加工温度はできるだけ低い方が好ましいからである。しかしながら、加工温度が低すぎると原子の拡散が生じにくくなり、再結晶が起こりにくくなる。このような場合、加工されたフェライト粒は単に扁平するだけとなり、微細な整粒組織が得られない。そこで、安定的にフェライトの動的再結晶が生じるためには550℃以上の温度域で加工を行う必要がある。
【0031】
次に、Ac1 〜550℃での加工における歪み量は、この温度域で加工中に組織全体に再結晶が生じ、かつ再結晶後の結晶粒径が微細であることが必要である。組織全体に再結晶が生じるためには加工量が一定量以上必要であり、このような観点から一連の加工による総歪み量は1以上が必要である。また、歪み量は1以上確保されれば、大きければ大きいほど細粒化の観点で好ましいが、通常の圧延等の加工においては10以上の歪み量を確保するのは難しい。そこで本発明では与える歪み量の上限を10とした。また、1パスあたりの加工量は、大きいほど導入した加工の効果が散逸せず微細化に有効であり、特に30%以上加工量の場合に1μm以下の細粒組織が得られるので30%以上と限定した。
【0032】
また、加工時の歪み速度は小さいほど動的再結晶は生じやすく、歪み速度が大きいほど生じにくい。一方、歪み速度が小さいと加工中の転位の減少(動的回復)が大きく、その結果、再結晶後に得られる結晶粒径は大きく、歪み速度が大きいほど結晶粒径は小さい。このような動的再結晶の生じ易さと再結晶後の結晶粒径の両者を考慮すると歪み速度には適正な範囲が存在する。この観点から加工中の歪み速度は0.1/秒以上200/秒以下と限定した。0.1/秒未満では加工に要する時間が長すぎこの間に転位の回復が生じてしまい、フェライト中に多数の転位を導入することができず、動的再結晶が生じたとしても微細な結晶粒を得られないからである。また、加工時の歪み速度を200/秒以下としたのはこれ以上に歪み速度では、Ac1 〜550℃の温度域で動的再結晶を生じさせるのが難しいからである。また、上記の圧延は、1パスで行うことが望ましいが、多パスで行う場合には、パス間時間を10秒以内とすることが必要である。これはパス間時間を10秒超とするとパス間でフェライトの回復が生じてしまい歪みの累積効果が得られないからである。
【0033】
次に、動的再結晶を生ぜしめる一連の熱間加工に引き続いて、請求項4に示す強制冷却を行う方法について説明する。まず、強制冷却の効果は、加工後に得られた微細なフェライト組織がその後の放冷の間に結晶粒成長によって成長し、微細組織が損なわれることを抑制するためである。本発明においてはこのような観点から動的変態を生じさせる熱間加工に引き続いて、90秒以内に強制冷却を開始し、600℃以下の温度までを0.2〜80℃/秒で冷却を行うことの有効性を規定している。ここで、冷却開始を加工終了から90秒以内としたのは、加工時に動的再結晶により生成した微細なフェライト組織が粒成長によって粗大化するのを防止するために可及的に速やかに冷却を開始することを意味するもので、これを超えてからの冷却ではその効果が最大限に発揮されず、加工後に放冷した場合とあまり変わらなくなり、強制冷却の効果が顕著に現れないからである。
【0034】
つぎに、冷却の終了温度を600℃以下としたのは、600℃超の温度ではまだ温度が高すぎ、原子の拡散も容易に生じ、加工によって得られた微細なフェライト組織やセメンタイトの粒成長を抑制できないからであり、室温以上としたのはこれ以下の温度への冷却は通常の水冷等では容易に実施できないからである。
また、請求項5、6には上記のような圧延後の放冷もしくは強制冷却を行った後に動的再結晶が、完全に得られなかった場合に付加的に適用される再結晶処理方法を示す。このような完全に再結晶が得られなかった部分は強度に加工されたフェライト組織であり、その後の再加熱により再結晶を誘起することができる。このような再結晶処理は請求項5に示すような550℃〜Ac1 +30℃の範囲で実施する。このような範囲に限定するのは550℃未満では再結晶を誘起することができず、Ac1 +30℃超では過度に再結晶が進み、結晶粒が粗大化してしまうからである。
【0035】
このような再結晶処理は請求項6に示すような急速加熱により実施することが望ましいことが判っている。これは、急速加熱することにより短時間で再結晶処理を終了し、結晶粒が無駄に成長することを回避できるためである。この際昇温過程でセメンタイトやその他の析出物の粗大化を抑制できることによって、さらに結晶粒の粗大化を抑制する効果も重畳しているものと考えられる。ここで昇温速度の下限を0.5℃/秒としたのはこれ以下では急速加熱の効果が得られないためであり、上限を50℃/秒としたのは、これ以上の昇温速度は現状の設備制約等から容易に得られないからである。また、処理温度の上限が850℃の高温まで可能なのは急速加熱だからである。また、再結晶処理時間を300秒以下と限定したのはこれ以上では、この保持中に結晶粒の粗大化が生じ急速加熱を行った効果が消滅してしまうためである。
【0036】
また、このような再結晶処理をより有効に実施するためには請求項5、6のように圧延後に一度冷却を行うのではなく、請求項7に示すごとく、圧延終了後可及的速やかに0.5〜50℃/秒の昇温速度で550〜850℃の温度で300秒以内の時間に終了することが必要である。このように圧延直後に再結晶処理を行うのは、圧延後の冷却中や再結晶処理の昇温過程で析出物の粗大化が生じ、ひいては再結晶処理中に結晶粒の粗大化が生じてしまうからである。ここで昇温速度の下限を0.5℃/秒としたのはこれ以下では急速加熱の効果が得られないためであり、上限を50℃/秒としたのは、これ以上の昇温速度は現状の設備制約等から容易に得られないからである。また、処理温度の上限が850℃の高温まで可能なのは急速加熱だからである。また、再結晶処理時間を300秒以下と限定したのはこれ以上では、この保持中に結晶粒の粗大化が生じ急速加熱を行った効果が消滅してしまうためである。
【0037】
次に、請求項4の強制冷却を行った場合や請求項6および7の再結晶処理後に強制冷却を行った際にはフェライト中に固溶している炭素原子がセメンタイトとして析出せず室温でもフェライト中に過飽和となって固溶し、著しい靭性の劣化を生じさせる可能性がある。このような場合、300℃〜Ac1 +30℃の温度で焼き戻しを行うことによって、固溶炭素をセメンタイトとして析出させ強度靭性の優れた金属組織とすることができる。焼き戻し処理はこのような目的のために実施するものであり、300℃未満では温度が低すぎ炭素原子が容易に拡散せず焼き戻しが短時間で実施できないからであり、Ac1 +30℃以下としたのはこれを超えると逆変態が大量に生じてしまい、せっかく生成した微細組織を破壊してしまうからである。
【0038】
請求項1に示す方法の場合の最後に、上記したようなAc1 以下550℃以上の温度に再加熱した際の金属組織を微細化に有利なフェライトと微細なセメンタイトの混合組織状態とするためには、Ac1 以下550℃以上の温度への再加熱に先だって、請求項3に示すように鋼片を、一度Ac3 〜1450℃に加熱し、Ar3 点以上の温度から0.2〜80℃/秒の冷却速度で冷却することを選択することが可能である。ここで再加熱温度をAc3 〜1450℃とするのは、固溶原子の拡散を促し、金属組織を均一化する目的とオーステナイト粒径を比較的大きくし冷却後の金属組織をフェライトとベイナイト、マルテンサイトの混合組織もしくはパーライト、特に好ましいベイナイト、あるいはマルテンサイトとしやすいためである。
【0039】
これをAc1 以下550℃以上の温度へ再加熱することによって、加工前の金属組織として所望されるフェライトとセメンタイトの微細分散組織が得られる。また、このような温度範囲で再加熱するのは、添加したTi等の元素を一度固溶させ、引き続く冷却中にフェライト中に微細に析出させる効果があるからである。このような効果はAc3 以上の温度で得られるので加熱温度はAc3 以上に限定するが、特に1150℃以上の温度で顕著であり、これ以上の加熱温度が望ましい。しかしながら1450℃以上に加熱すると金属組織の粗大化が顕著となり、後の金属組織微細化に好ましくないからである。
【0040】
また、均熱化処理後に0.2〜80℃/秒の冷却速度で冷却を行うのは、均熱処理により均一に拡散したTi等の原子をできるだけそのままの状態に保持したいからである。このような冷却条件の限定の理由は、冷却速度0.2℃/秒未満では、フェライト変態時に生じるTi等の元素の分配(フェライト−オーステナイト間で生じる元素の移動)や析出物の粗大化を回避できないからであり、これを回避するためには、冷却速度は速いほうがよいが、現在の設備能力では80℃/秒超の冷却速度は得難いからである。
【0041】
次に、請求項1に示す方法の場合について追説明する。
請求項1に示す方法の場合には、鋼片を鋳造後、冷却すること無くそのまま熱間圧延を開始しても一度600℃以下の温度まで冷却した鋳片をAc1 点〜550℃に再加熱した後に圧延を開始する。
また、必要に応じて請求項2に示す0.1〜50℃/秒の急速加熱によって、550℃以上Ac1 以下の温度に再加熱を行う点、その再加熱の後の一連の熱間加工のうち、1パスの圧下率を30%以上として1パスまたはパス間時間を10秒以内とした連続する2パス以上の加工を圧延の歪速度を0.1〜200/秒とし、その総歪量を1以上10以下となる条件で加工を行い、その後、放冷もしくは請求項4に示す熱間加工終了後90秒以内に室温〜600℃の温度まで0.2℃/秒〜80℃/秒以下の冷却速度で強制冷却し、必要に応じて請求項5または請求項6または請求項7に示す再結晶処理をおこなう。
【0042】
さらに、必要に応じて請求項8に示す300℃〜Ac1 +30℃の温度で焼き戻しを行う。また、上記Ac1 以下550℃以上の温度に再加熱に先だって、鋼片を一度600℃以下の温度まで冷却した後に再びAc3 〜1450℃の温度に再加熱し、Ar3 以上の温度から600℃以下の温度まで0.2〜80℃/秒で冷却する請求項3に示す前処理を行う。再加熱後に実施する1パスの圧下率を30%以上として行う1パスまたはパス間時間を10秒以内とした連続する2パス以上の圧延を、歪速度を0.1〜200/秒、総歪量を1以上10以下となる条件で行うだけでなく、最終圧延パスを含む少なくとも1パス以上の圧延終了温度をAc1 点を超えAc1 +30℃以下とすることを特徴とする。
【0043】
このようなAc1 点を超える温度への昇温は、大歪圧延による加工発熱の増加という特徴的な現象によって実施可能である。すなわち、圧延中に加えられる歪エネルギーが熱エネルギーに変換され鋼板の温度が上昇するもので、この加工発熱を最大限に利用するためには、1パス以上のパスの圧下率を50%以上とすることが好ましい。
このように、加工発熱を利用することにより、再加熱温度をAc1 点を超える温度にすることなく、熱間圧延中の温度をAc1 点を超えAc1 +30℃以下の温度にし、以下に述べるように部分的なオーステナイト化による硬質相を導入し、材質をさらに向上させることが可能である。最終圧延パスを含む少なくとも1パス以上の圧延終了温度をAc1 点を超えAc1 +30℃以下とするためには、上記のように加工発熱を利用することが、特殊な設備や製造プロセスを必要としないので好ましいといえるが、熱間圧延中に誘導加熱するなど加工発熱以外の方法によってもよく、熱間圧延中の鋼板をAc1 点を超えAc1 +30℃以下にする具体的な方法については、本発明はそれを特に制限するものではない。
【0044】
上記したように最終圧延パスを含む少なくとも1パス以上の圧延終了温度をAc1 点を超えAc1 +30℃以下で圧延する目的は、請求項1の方法で示した結晶粒の微細な金属組織を、Ac1 点を超えAc1 +30℃以下の温度で圧延を終了することにより、微細金属組織中に微量のオーステナイト化する部分を生ぜしめ、その後の冷却によりその部分を高炭素のマルテンサイトもしくはベイナイトなどの硬質相に変態させるためである。
【0045】
このような硬質相は最終的な鋼材の引っ張り特性を改善する。これは以下のような理由によるものである。まず、結晶粒の微細な鋼の引っ張り特性は、結晶粒の微細さによる降伏応力の上昇により加工硬化係数が低下し、均一伸びが低下するという欠点がある。一方、材料中に導入された硬質相は材料の引っ張り強度を上昇させ、材料の加工硬化係数を上昇させる結果として材料の均一伸びを上昇させる。しかし、このような硬質相は変形時の材料中の応力集中を誘起し靭性が低下すると考えられている。
【0046】
しかしながら、本願発明においては、細粒化効果が顕著であり、このような場合でも靭性の劣化がほとんど見られないことが判明した。そこで、本願では請求項1に示すように一連の圧延のうち少なくとも1パスの加工後の温度をAc1 点を超えAc1 +30℃以下の温度で実施することにより、微細金属組織中にこれも微細な高炭素のマルテンサイトもしくはベイナイトなどの硬質相を導入し、細粒鋼の均一伸びを改善することが可能となった。ここで、Ac1 点を超える温度が必要な理由はこれ以下では部分的なγ化が生じず、上記したような硬質相を形成できないからである。また、Ac1 +30℃以下の温度としたのはこれ以上の温度では硬質相の体積分率が高すぎ靭性を劣化させるからであるとともに結晶粒の成長を生じさせてしまうからである。
【0047】
【実施例】
次に、本発明の実施例によって発明の有効性を示す。
表1は実施例の鋼の成分を示すものである。なお、表中で、アンダーラインを付した番号の鋼は比較鋼であることを示しており、本発明に一致しない条件もアンダーラインで示してある。
次にこのような成分の鋼を用い種々の製造条件で製造した鋼片について得られた結晶粒径、硬度、降伏強度(YS)、引っ張り強度(TS)、シャルピー衝撃試験の延性−脆性遷移温度(vTrs)を製造条件とともに表2〜3に示す。いずれも鋼の加工後の板厚は3〜10mmである。また、表中で硬度のみを測定した鋼については硬度から推定される強度を引っ張り強度欄に示した。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
【表3】
【0052】
いずれの鋼の場合も本発明法の要件を満たす鋼は結晶粒径が2μm未満と非常に微細であり、強度、靭性も良好な特性を有する。これに対し、本発明の要件を満たさない鋼では結晶粒径が2μm以上か扁平粒あるいは硬度の高い高炭素マルテンサイトを含有するものであった。扁平粒あるいは高炭素マルテンサイトを含む鋼では強度が高くても靭性の劣化が顕著である。以上のことより、本発明法により結晶粒径が非常に微細な鋼の製造が可能であり、強度、靭性に優れた高靱性高張力鋼を製造することが可能であることが明らかであり、本発明は有効である。
【0053】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の製造方法によれば結晶粒径が非常に微細な鋼の製造が可能であり、特に720MPaを超える高張力鋼においても靭性にも優れた高靱性高張力鋼を安価に生産できる製造方法を提供することができる。
Claims (11)
- 質量%で、
C :0.05〜0.8%、
Si:0.01〜0.5%、
Mn:0.5〜5%
を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋳片を鋳造し、圧延を行うかもしくは圧延することなくそのまま600℃以下に冷却した後、熱間圧延を行うに際して、再加熱を、550℃〜Ac 1 点の温度で行い、それに続く圧延を、550℃〜Ac1 点の温度で行い、かつ、最終パスを含む1パス以上の圧延を、Ac 1 点超〜Ac 1 点+30℃の温度で行い、また、その圧延を、1パスの圧下率を30%以上として1パスまたはパス間時間を10秒以内とする連続する2パス以上で、歪速度:0.1〜200/秒、総歪量:1以上10以下となる条件で行うことを特徴とする結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。 - 熱間圧延の再加熱において、その昇温速度を0.1〜50℃/秒とすることを特徴とする請求項1に記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 熱間圧延の再加熱に先だって、Ac3 点〜1450℃に加熱し、圧延を行うかもしくは圧延することなくそのまま0.2〜80℃/秒の冷却速度で600℃以下に冷却する均一化処理を、さらに行うことを特徴とする請求項1または2に記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 熱間圧延後90秒以内に、0.2〜80℃/秒の冷却速度で600℃以下に強制冷却することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 熱間圧延後600℃以下に放冷もしくは0.2〜80℃/秒の冷却速度で強制冷却した後に、550℃〜Ac1 点+30℃に加熱する再結晶処理を、さらに行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 熱間圧延後300秒以内に、600℃以下に冷却することなく550℃〜Ac1 点+30℃に保持する再結晶処理を、さらに行うことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 再結晶処理において、保持温度:550〜850℃、保持温度までの昇温または降温速度:0.5〜50℃/秒、保持時間:300秒以内とし、その後600℃以下に放冷または0.1〜80℃/秒の冷却速度で強制冷却することを特徴とする請求項5または6に記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 室温まで冷却後、300℃〜Ac1 点+30℃の温度の温度で焼き戻しを、さらに行うことを特徴とする請求項1〜7のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
- 鋳片が、質量%で、
N :0.002〜0.1%と、
Ti:0.003〜0.6%、
Nb:0.003〜0.5%、
V :0.001〜0.5%
の1種または2種以上とを、さらに含有し、かつ、C%≧0.05+12×(Ti%/48+Nb%/93+V%/23−N%/14)を満たすことを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。 - 鋳片が、質量%で、
Mo:0.01〜1%、
Ni:0.01〜5%、
Cr:0.01〜3%、
Cu:0.01〜3%、
B :0.0001〜0.003%
の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。 - 鋳片が、質量%で、
REM:0.002〜0.1%、
Ca:0.0003〜0.003%
の1種または2種以上を、さらに含有することを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の結晶粒の微細な高靱性高張力鋼の製造方法。
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