JP3462922B2 - 強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法 - Google Patents

強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法

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JP3462922B2 JP02851195A JP2851195A JP3462922B2 JP 3462922 B2 JP3462922 B2 JP 3462922B2 JP 02851195 A JP02851195 A JP 02851195A JP 2851195 A JP2851195 A JP 2851195A JP 3462922 B2 JP3462922 B2 JP 3462922B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鋼構造(建築物、海洋
構造物、橋梁など)、船舶、ラインパイプ等に用いられ
る強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】近年、鋼構造、船舶等の大型化、使用条
件の過酷化にともない、より強靭で安全性の高い鋼の開
発が求められている。この様な要求に対し、従来、鋼板
の製造方法を改善し、金属組織の結晶粒の細粒化を図
り、鋼の強度、靭性を改善するための圧延方法が開発さ
れてきた。この様な方法の例としては、いわゆる制御圧
延法が挙げられ、加速冷却法と組み合わせた製造法とし
て、特開昭63−223124号公報や特開昭63−1
28117号公報などが提案されている。これら従来法
に示されている制御圧延法では、比較的高温のオーステ
ナイト(以下、γと略記)の再結晶温度域において圧延
パス間で生じる静的再結晶を利用し、γ粒を細粒化す
る。次いで、鋼板の温度が低下するのを待ち、γの再結
晶が生じない温度域(未再結晶温度域)で、再び圧延を
行うことによってγの結晶中に転位などの欠陥を導入す
ることが行われている。この様な欠陥は、γがフェライ
ト等に変態するに際して、γ粒界と同様に、フェライト
等の変態生成組織の核生成場所となるため、冷却時に多
数の結晶粒を一斉に生成させ、金属組織をいっそう微細
にすることが可能だからである。
【0003】しかし、このような圧延方法では、再結晶
温度域から未再結晶温度域までの間に長時間の温度低下
待ちが必要であるために、製造に要する時間が非常に長
い。また、通常の圧延速度での圧延では、再結晶温度
域、未再結晶温度域の圧延ともに、圧延機の荷重の制限
のために10〜20パスの多パス圧延となり、製造時間
を増加させ、上記の温度待ちとともに、生産性を阻害す
る要因となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は未再結晶温度
域の圧延負荷を低減、もしくは行うことなく、十分な細
粒化効果が得られ、かつ圧延パス数の低減が可能な圧延
方法によるさらに強靭な高張力鋼板の製造方法を提供す
ることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決する手段
として、以下の製造方法を創案した。 (1)重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.50%、 Mn:0.02〜5.0%、 Al:0.001〜0.1% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
片を鋳造後冷却することなくそのまま熱間圧延を行う
か、あるいは一度室温まで冷却した後に再びAc3点〜
1250℃の温度に再加熱して1100℃〜Ar3点の
温度で熱間圧延を行うに際して、一連の熱間圧延の最終
パスをAr3点以上900℃以下の温度かつ圧延の歪速
度を0.01/秒以上1.5/秒以下とし、圧延による
板厚中心部の歪量を以下の式で算出される0.9εc
1.25εcの条件で行い、その後、放冷することを特
徴とする強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【数2】
【0006】(2)前記(1)記載の一連の熱間圧延を
行った後、引き続いて、オーステナイトの未再結晶域
で、総圧下率が5%以上75%以下の範囲で仕上げ圧延
を行い、その後、放冷することを特徴とする強度・靭性
に優れた高張力鋼板の製造方法。
【0007】(3)前記(1)または(2)記載の熱間
圧延を行った後、90秒以内にAr3 点以上の温度から
650℃〜500℃の温度までを2℃/秒以上、40℃
/秒以下の冷却速度で強制冷却することを特徴とする強
度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法。
【0008】(4)前記(1)または(2)記載の熱間
圧延を行った後、90秒以内にAr3 点以上の温度から
室温〜500℃まで、10〜80℃/秒の冷却速度で強
制冷却し、その後、250℃〜Ac1 の温度で焼き戻し
を行うことを特徴とする強度・靭性に優れた高張力鋼板
の製造方法。
【0009】(5)重量%で、 Nb:0.001〜0.05%、Ti:0.001〜
0.1%、V :0.001〜0.1%のいずれか1
種、または2種以上を含有することを特徴とする前記
(1)〜(4)のいずれか1項に記載の強度・靭性に優
れた高張力鋼板の製造方法。
【0010】(6)重量%で、 Mo:0.01〜1%、Ni:0.01〜5%、Cr:
0.01〜3%、Cu:0.01〜3%、B :0.0
001〜0.003%のいずれか1種、または2種以上
を含有することを特徴とする前記(1)〜(5)のいず
れか1項に記載の強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造
方法。
【0011】(7)重量%で、 REM:0.002〜0.10%、Ca :0.000
3〜0.0030%のいずれか1種、または2種以上を
含有することを特徴とする前記(1)〜(6)のいずれ
か1項に記載の強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方
法。
【0012】
【作用】以下、本発明について詳細に説明する。まず、
従来の制御圧延による細粒化方法を冶金的な見地から検
討してみると前述したように、主に以下の効果によるも
のであると考えられる。
【0013】比較的高温のオーステナイト(以下、γ
と略記)の再結晶温度域において圧延パス間で生じる静
的再結晶を利用し、γ粒を細粒化する。 さらに、比較的低温であるところのγの再結晶が生じ
ない温度域(未再結晶温度域)で圧延を行うことによっ
て、γの結晶中に転位などの欠陥を多数導入する。 上記のようなγ粒界や転位などの欠陥は、γがフェラ
イト等に変態するに際して、変態生成組織の核生成場所
となるため、金属組織を微細にする。
【0014】これらのうち、はいずれもフェライト
等の変態生成組織の核生成場所を提供するものであっ
て、の効果により十分な細粒化が達成されれば、生産
性の見地から問題であるの未再結晶温度域圧延を省略
可能である。
【0015】そこで、次に、従来法における再結晶を利
用した細粒化方法について考えてみる。通常の圧延速度
での再結晶温度域における圧延では、圧延機にかかる荷
重の制限のために10パス程度の多パス圧延で行われる
ことが多い。この様な圧延は、再結晶による細粒化とい
う冶金的な見地から以下のような点で、必ずしも最適な
金属組織が得られているとは言い難い。まず、多パス圧
延では、圧延によって導入された転位がパス間に回復
(金属組織中の転位密度が減少する現象)してしまうた
めに、再結晶後の結晶粒径が圧延条件から期待されるほ
ど微細とならない。静的再結晶後の結晶粒径は、圧延後
の転位密度が高いほど微細となるので、1パスの圧下率
はできるだけ大きく、パス数はできるだけ少ないことが
必要である。次に、多パス圧延では、パス間で、再結晶
した後のγ粒が成長してしまうので、パス数を減らすか
パス間時間を短時間とすることが必要である。すなわ
ち、従来行われているようなパス数の多い圧延では、圧
延によって導入された歪みエネルギーが有効にγ粒の微
細化に作用しているとは言えず、圧延パス数を低減し、
パス間での回復や再結晶後の粒成長の悪影響を低減する
ことによって、十分な細粒化が達成でき、未再結晶温度
域圧延を省略可能であると考えられる。
【0016】しかしながら、圧延パス数の低減は、1パ
ス当りの圧下率を増加させることになり、従来の圧延方
法のままでは、鋼の加工硬化によって圧延の変形抵抗が
過大となり、さきに述べたように、圧延機の許容荷重の
制限によって実現できない。そこで本発明者らは、圧延
時の圧延速度を従来法に比較して著しく低減し、圧延途
中、ロール下において再結晶を生ぜしめる(動的再結
晶)ことにより、図1に示すように圧延荷重を著しく低
減することができる。
【0017】図1は0.1%C−1.37%Mn−0.
25%Si−0.01%Ti−0.01%Nbを含有す
る鋼を850℃で圧縮加工した際に得られた圧力−歪曲
線である。歪速度が10/秒の場合(a)では、動的再
結晶が生じず加工応力が歪みとともに増加していくのに
対して、歪速度0.1/秒の場合(b)では、動的再結
晶が生じているために加工途中で応力が低下しているこ
とが判る。このように動的再結晶を生じさせれば、圧延
荷重を低減することができ1パスの圧下率を極めて大き
く取ることが可能となり、十分な細粒化効果が得られる
ことが判明した。
【0018】図3(a)は、0.1%C−1.37%M
n−0.25%Si−0.01%Ti−0.01%Nb
を含有する鋼を圧延し、最終圧延パスを820℃で圧下
率50%、圧延の歪速度を10/秒に相当する速さで行
った後、水冷するところの制御圧延+制御冷却を行って
得られた金属組織写真である。一方、図3(b)は、同
鋼を圧延し、最終圧延パスを850℃で圧下率50%、
圧延の歪速度を0.1/秒に相当する速さで行い動的再
結晶を生じさせた後、水冷して得られた金属組織写真で
ある。明らかに(b)は(a)に比べて細粒の金属組織
となっていることが確認できる。
【0019】本発明者らはこれらの現象を調査、解析
し、請求項1〜7の強度・靭性に優れた高張力鋼板の製
造法を発明した。
【0020】以上、本発明の基本となる考え方を要約す
ると以下のようになる。 未再結晶温度域の圧延負荷を低減、もしくは行うこと
なく、十分な細粒化効果を得るため、圧延パス数を低減
し、1パス当りの圧下率を大きく取り、パス間での回
復、粒成長による悪影響を低減する。 圧延機の荷重制限内で1パス当りの圧下率を大きく取
るため、圧延速度を低減し、動的再結晶を生ぜしめる。 で生成したγの再結晶粒は微細であると共に、加工
中に生じた再結晶粒であるのでγ粒内に多少の転位が含
まれており、いわゆる未再結晶温度域圧延の効果もあ
り、変態後の組織を極めて微細なものとすることができ
る。 上記の方法により、未再結晶温度域圧延を行うことな
く、かつ圧延パス数を低減しながら強靭な鋼の製造が可
能である。 さらに、未再結晶温度域圧延や加速冷却、焼入−焼き
戻し処理を行うことによってより強靭な鋼の製造が可能
である。
【0021】以下には、各成分の限定の理由について述
べる。Cは鋼の強化を行うのに有効な元素であり0.0
1%未満では十分な強度が得られない。一方、その含有
量が0.45%を超えると、溶接性を劣化させる。
【0022】Siは脱酸元素として、また、鋼の強化元
素として有効であるが、0.01%未満の含有量ではそ
の効果がない。一方、0.50%を超えると、鋼の表面
性状を損なう。
【0023】Mnは鋼の強化に有効な元素であり、0.
02%未満では十分な効果が得られない。一方、その含
有量が5.0%を超えると鋼の加工性を劣化させる。
【0024】Alは脱酸元素として添加されるが0.0
01%未満の含有量ではその効果がなく、0.1%を超
えると、鋼の表面性状を劣化させる。
【0025】Ti、VおよびNbは、いずれも微量の添
加で結晶粒の微細化と析出強化の面で有効に機能するの
で溶接部の靭性を劣化させない範囲で使用しても良い。
このような観点からその添加量の上限をTi、Vでは
0.1%、Nbでは0.05%とする。また、その添加
量の下限を0.001%とするのはこれ未満では効果が
ないからである。
【0026】Cu、Ni、Cr、Mo、Bはいずれも鋼
の焼入れ性を向上させる元素であり、本発明の場合、そ
の添加により鋼の強度を高めることができる。しかし、
過度の添加は鋼の靭性および溶接性を損なうため、0.
01%≦Cu≦3.0%、0.01%≦Ni≦5.0
%、0.01%≦Cr≦3.0%、0.01%≦Mo≦
〜1.0%、0.0001%≦B≦0.003%に限定
する。Cu、Ni、Cr、Moのそれぞれの下限を0.
01%、Bの下限を0.0001%としたのはこれ未満
では効果がないからである。
【0027】REM、CaはSの無害化に有効である
が、添加量が少ないとその効果が無く、また、過度の添
加は靭性を損なうためREMについては0.002〜
0.10%、Caについては0.0003〜0.003
0%に限定する。
【0028】その他、不可避的不純物であるP、Sの含
有量はそれぞれ0.02%以下、0.008%以下が好
ましい。
【0029】次に、本発明における製造条件について述
べる。本発明はいかなる鋳造条件で鋳造された鋼片につ
いても有効であるので、特に鋳造条件を特定する必要は
ない。また、鋳片を鋳造後、冷却すること無くそのまま
熱間圧延を開始しても一度室温まで冷却した鋳片をAc
3 点〜1250℃に再加熱した後に圧延を開始しても良
い。ここで再加熱の温度をAc3 点以上としたのはこれ
未満では圧延時の鋼の金属組織がフェライトとオーステ
ナイトの不均一な混合組織となり最終的な鋼の靭性が劣
ってしまうからである。また再加熱温度の上限を125
0℃としたのはこれより高い温度では鋼の金属組織が粗
大化し、所望の強度・靭性が得られないからである。
【0030】圧延に際しては、1100℃〜Ar3 点の
温度で熱間圧延を行うとしたのは、1100℃を超える
温度での圧延は、オーステナイトの細粒化効果が少ない
か場合によっては逆に粗大化が生じてしまうからであ
る。また、熱間圧延の温度をAr3 点以上としたのは、
Ar3 点未満の温度での圧延はフェライトが圧延加工さ
れるために鋼の靭性が劣化すると共に強度、靭性に異方
性が発生してしまうからである。
【0031】次に、一連の熱間圧延の最終パスをAr3
点以上900℃以下の温度で行うのは、Ar3点未満の
温度での圧延はフェライトが圧延加工されるために鋼の
靭性が劣化すると共に強度、靭性に異方性が発生してし
まうからであり、900℃超では温度が高すぎ、圧延に
よりγ中に多数の転位を導入することができず、動的再
結晶が生じたとしても微細な結晶粒を得られないからで
ある。
【0032】また、圧延時の歪速度を0.01/秒以上
1.5/秒以下としたのは、0.01/秒未満では圧延
に要する時間が長すぎこの間に転位の回復が生じてしま
い、γ中に多数の転位を導入することができず、動的再
結晶が生じても微細な結晶粒を得られないからである。
圧延時の歪速度を1.5/秒以下としたのは1.5/秒
では900℃以下の温度域で動的再結晶を生じさせる
のが難しいからである。
【0033】また、圧延による歪量を0.9εc 以上
1.25εc 以下としたのは、以下の理由によるもので
ある。まず、動的再結晶が生じる場合には、図2
(a)、(b)の応力−歪曲線に見られるように軟化が
生じる。図2(b)は軟化が繰り返し生じており、動的
再結晶が繰り返し生じていることが判る。この様な場
合、第1回目の軟化の極小点における金属組織が最も細
粒かつ均一であり、好ましい組織であることからそのよ
うな状態が得られる最適な歪量をεc として定め、圧延
の歪量を0.9εc 以上1.25εc 以下、好ましくは
1εc 以上1.1εc 以下と限定した。εc については
加工温度、歪速度を変化させた実験より実験式として以
下の式を求めた。
【数3】
【0034】また、圧延の歪量の範囲を設けたのは、実
圧延では種々の操業上の制約から必ずしもεc の歪が与
えられない場合もあるためであり、εc に対して±10
%程度の差異は許容されるからである。
【0035】また、上記したような動的再結晶を生じさ
せるような圧延を一連の熱間圧延の最終パスに行うよう
に限定したのは、このパスの後にさらに静的再結晶が生
じるような圧延を行った場合には、条件によって異なる
が、動的再結晶によって得られた微細な金属組織が新た
な再結晶によって解消されてしまうからである。
【0036】次に、動的再結晶を生ぜしめる一連の熱間
圧延に引き続いて、オーステナイトの未再結晶状態での
圧延を追加する方法について説明する。本発明はその目
的の一つとしてオーステナイトの未再結晶状態での圧延
を緩和、省略することであるが、強度、靭性を改善する
という目的からは、動的再結晶を生ぜしめる一連の熱間
圧延に引き続いて、オーステナイトの未再結晶状態での
圧延を追加する方法は有効に作用する。動的再結晶を生
ぜしめる一連の熱間圧延によって得られた微細組織中に
多数の転位等の欠陥を導入することによって、変態後の
金属組織をさらに微細にすることが可能だからである。
この様な圧延に当たっては、圧延の総圧下率を5%以
上、75%以下とすることが好ましい。これは5%未満
の圧下率では、鋼中に導入される転位密度が少なくフェ
ライトの細粒化に有効に作用しないからであり、75%
以下に限定するのは、これを超えた圧下率ではγ粒の圧
延方向への伸長が著しくなり、圧延方向と板幅方向の強
度、靭性の異方性が顕著になってしまうことを避けるた
めである。
【0037】次に、動的再結晶を生ぜしめる一連の熱間
圧延に引き続いて、強制冷却を行う方法について説明す
る。まず、強制冷却の効果については以下の2点が考え
られる。まず、強制的に冷却することによって、γを未
変態のまま平衡状態における変態開始点(A 3点)以
下の温度に持ち来たし、過冷度の高い状態から変態を生
ぜしめることにより、変態組織の核生成の駆動力を著し
く上昇させ、多数の結晶粒を一斉に生成させてフェライ
トやパーライトといった変態後組織の微細化を図る
第一点の目的であり、このような微粒化効果は、γが未
再結晶温度域での加工を受け、γ粒内に多くの転位等の
欠陥が導入されている場合に顕著に現れる。また、冷却
により変態を低温で生じさせることによって、金属組織
の一部もしくは全部を比較的強度の高いベイナイト組織
とし、鋼の強度を向上することができるがベイナイト組
織の靭性は必ずしも良好ではないので、あまり低温で変
態させベイナイト体積分率を上昇させることは好ましく
ない。
【0038】本発明においては、これらの観点から強制
冷却による微粒化効果を十分に発揮させ、さらに場合に
よってはベイナイトを若干生成させることにより強化を
図りながらも靭性を劣化させないために、動的再結晶を
生ぜしめる熱間圧延に引き続いて、90秒以内に、Ar
3 点以上の温度から強制冷却を開始し、500〜650
℃の温度までを冷却速度2〜40℃/秒で冷却を行うこ
とが好ましい。以下に限定の理由を述べる。
【0039】まず、冷却開始の温度をAr3 点以上の温
度としたのは、Ar3 点未満の温度からでは、冷却開始
の時点までにすでにフェライトの核生成がかなり生じて
しまっているために、強制冷却により過冷度の高い状態
から変態を生ぜしめることにより、変態組織の核生成の
駆動力を著しく上昇させ、多数の結晶粒を一斉に生成さ
せてフェライトやパーライトといった変態後組織の細粒
化を図るといった強制冷却の本来の効果が発揮されない
からである。
【0040】また、冷却開始を圧延終了から90秒以内
としたのは、圧延時に動的再結晶により形成された微細
で若干の転位密度を含有する金属組織の細粒化に適した
γ組織が粒成長や回復によって破壊されるのを防ぐため
であって、これを超えてからの冷却開始ではその効果が
最大限に発揮されないからである。
【0041】つぎに、冷却終了温度を500〜650℃
としたのは、650℃を超える温度では変態の生じる温
度が高過ぎ、金属組織を十分微細とする過冷度が得られ
ないとともに粗大なパーライトが生成し強度、靭性の観
点から好ましくないからである。
【0042】また、冷却終了温度を500℃以上とした
のは、500℃未満では、変態の生じる温度が低すぎ、
靭性に好ましくないベイナイト体積分率を上昇させてし
まうからである。また、500℃未満の冷却停止温度で
は、先に生じたフェライト変態のために炭素原子の濃縮
が進んだ未変態γ部分が、非常に硬い高炭素のマルテン
サイトとなるために靭性に極めて悪影響をおよぼすの
で、これを回避するためでもある。
【0043】最後に、強制冷却の冷却速度を2℃以上と
したのは、これ未満の冷却速度では冷却時にフェライト
変態を抑制することができず、変態が比較的高温で生じ
てしまい、フェライト組織を十分微細とする過冷度が得
られないからである。また、冷却速度を40℃/秒以下
としたのは、これを超える冷却速度ではフェライトに加
え、ベイナイトやマルテンサイトがかなりの量生成して
しまい、靭性の観点から好ましい組織とはならないから
である。
【0044】なお、このような加速冷却により、さらな
る細粒化を行う方法については、動的再結晶を生ぜしめ
る一連の熱間圧延に引き続いて、オーステナイトの未再
結晶状態での圧延を追加する場合においても同様であ
る。ただし、この場合、冷却開始を圧延終了から90秒
以内とする理由は、これを超える時間からの冷却では、
冷却開始までに、圧延によって導入された転位が回復し
てしまうこと及び場合によっては、この間に静的再結晶
が生じてしまい、転位等の欠陥を核生成場所として利用
するという本来の効果が得にくくなるからである。
【0045】次に、動的再結晶を生ぜしめる一連の熱間
圧延に引き続いてすぐに、もしくは動的再結晶を生ぜし
める一連の熱間圧延に引き続いてγの未再結晶状態での
圧延を行った後に直接焼入を行い、さらに焼戻しを行う
方法について述べる。
【0046】まず、本圧延方法が直接焼入鋼においても
有効である理由は、フェライト変態の場合と同様にベイ
ナイトやマルテンサイト変態の場合にもγ結晶粒界や転
位などの欠陥が核生成場所となり、γを微細かつ転位等
の欠陥が多く含む状態にしておくことによって、これら
の結晶粒は微細なものとなるからである。また、さらに
は、γ中に導入された転位は、マルテンサイト変態後も
金属組織中に残留すると考えられており、金属組織の強
化の点でさらに有効に作用する。また、焼戻し処理にお
いてはセメンタイトを始めとする添加元素の炭窒化物の
析出が生じるが、この際、焼戻し前の金属組織が微細か
つ転位等の欠陥を多く含む場合には、析出物が微細なも
のとなり、これも強度、靭性の観点から有効に作用す
る。即ち、焼入−焼戻し鋼においてもγ粒を微細かつ転
位を含んだ状態とする本圧延法の有効性が失われない。
以下に焼入−焼戻しの製造条件の限定理由を述べる。
【0047】まず、冷却開始の温度をAr3 点以上の温
度としたのは、Ar3 点未満の温度からでは、冷却開始
の時点までにすでにフェライトが生成しており、金属組
織をベイナイトやマルテンサイトの金属組織にすること
ができないからである。このような場合に生成するフェ
ライトとベイナイトやマルテンサイトの不均一な混合組
織は靭性が極めて悪い。
【0048】次に、圧延終了より冷却開始までの時間を
90秒以内としたのは、先に説明したように、圧延時に
動的再結晶により形成された微細で若干の転位密度を含
有する金属組織の細粒化に適したγ組織が粒成長や回復
によって破壊されるのを防ぐためであって、これを超え
てからの冷却開始ではその効果が最大限に発揮されない
からである。また、動的再結晶を生ぜしめる一連の熱間
圧延に引き続いて、オーステナイトの未再結晶状態での
圧延を追加する場合においてはこれを超える時間からの
冷却では、冷却開始までに、圧延によって導入された転
位が回復してしまうこと及び場合によっては、この間に
静的再結晶が生じてしまい、転位等の欠陥を核生成場所
として利用するという本来の効果が得にくくなるからで
ある。
【0049】つぎに、冷却終了温度を500℃以下とし
たのは、これを超える温度では変態の生じる温度が高過
ぎ、強度の比較的に低いフェライトやパーライト、強度
はやや高いが靭性の良くない上部ベイナイト等が生成し
てしまい、目的とする下部ベイナイトやマルテンサイト
の金属組織を得られないからである。また、冷却終了温
度を室温以上としたのは、これ未満の温度への冷却は通
常の冷却装置では容易に達成できないからである。
【0050】強制冷却の冷却速度を10℃以上としたの
は、これ未満の冷却速度では冷却時にフェライト変態や
上部ベイナイトの生成を抑制することができず、下部ベ
イナイトやマルテンサイトを安定的に生成させ得ないか
らである。また、冷却速度を80℃以下としたのはこれ
を超える冷却速度は現状の設備では容易に達成できない
からである。
【0051】最後に、上記の強制冷却終了後に行う焼戻
しにおいて、焼戻し温度を250℃以上としたのは、こ
れ未満では温度が低すぎ固溶炭素を短時間で容易に析出
させることができないからである。また、焼戻し温度を
Ac1 点以下としたのはAc1 点を超えると変態が生じ
てしまい強度の低下や組織の不均一さのために靭性が劣
化してしまうからである。
【0052】
【実施例】次に本発明の実施例によって本発明の有効性
を示す。表1は実施例の鋼の成分を示すものである。な
お表中で、○印で示した鋼は比較鋼であることを示して
おり、本発明の規定範囲に合致しない項目を下線で示し
た。
【0053】次に、このような成分の鋼を種々の製造条
件で製造した場合に得られた強度、靭性を製造条件とと
もに表2および表3に示す。表2−1、表2−2、表3
−1は圧延ままの鋼の製造条件と強度、靭性を示すもの
であり、表2−3、表2−4、表3−2は加速冷却鋼の
製造条件と強度、靭性を示すものである。また表2−
5、表2−6、表3−3は焼入−焼戻し鋼についての製
造条件と強度、靭性を示すものである。
【0054】なお、強度としては降伏強度(YS (kgf/
mm2 ) )および引張強度(TS (kgf/mm2 ) )を示して
ある。また、靭性はシャルピー衝撃試験における延性−
脆性遷移温度(vTrs(℃))を示した。
【0055】本発明法はいずれも比較法に比べ明らかに
良い特性を示している。本発明法により強度・靭性・溶
接性に優れた鋼を製造することが可能であり、本発明は
有効である。
【0056】
【表1】
【0057】
【表2】
【0058】
【表3】
【0059】
【表4】
【0060】
【表5】
【0061】
【表6】
【0062】
【表7】
【0063】
【表8】
【0064】
【表9】
【0065】
【表10】
【0066】
【表11】
【0067】
【発明の効果】本発明によれば強度、靭性に優れた高張
力鋼板を安価に提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)、(b)は動的再結晶による変形抵抗の
低下の説明図。
【図2】(a)、(b)は動的再結晶による変形抵抗の
変化の説明図。
【図3】(a)、(b)は動的再結晶による細粒化の効
果を示す金属組織写真。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 間渕 秀里 千葉県富津市新富20−1 新日本製鐵株 式会社 技術開発本部内 (56)参考文献 特開 昭56−119725(JP,A) 特開 昭63−121618(JP,A) 特開 平4−235218(JP,A) 特開 平3−223421(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/02 C22C 38/00 - 38/60

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、 C :0.01〜0.45%、 Si:0.01〜0.50%、 Mn:0.02〜5.0%、 Al:0.001〜0.1% を含有し、残部がFeおよび不可避的不純物からなる鋼
    片を鋳造後冷却することなくそのまま熱間圧延を行う
    か、あるいは一度室温まで冷却した後に再びAc3点〜
    1250℃の温度に再加熱して1100℃〜Ar3点の
    温度で熱間圧延を行うに際して、一連の熱間圧延の最終
    パスをAr3点以上900℃以下の温度かつ圧延の歪速
    度を0.01/秒以上1.5/秒以下とし、圧延による
    板厚中心部の歪量を以下の式で算出される0.9εc
    1.25εcの条件で行い、その後、放冷することを特
    徴とする強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方法。 【数1】
  2. 【請求項2】 請求項1記載の一連の熱間圧延を行った
    後、引き続いて、オーステナイトの未再結晶域で、総圧
    下率が5%以上75%以下の範囲で仕上げ圧延を行い、
    その後、放冷することを特徴とする強度・靭性に優れた
    高張力鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2記載の熱間圧延を行っ
    た後、90秒以内にAr3 点以上の温度から650℃〜
    500℃の温度までを2℃/秒以上、40℃/秒以下の
    冷却速度で強制冷却することを特徴とする強度・靭性に
    優れた高張力鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 請求項1または2記載の熱間圧延を行っ
    た後、90秒以内にAr3 点以上の温度から室温〜50
    0℃まで、10〜80℃/秒の冷却速度で強制冷却し、
    その後、250℃〜Ac1 の温度で焼き戻しを行うこと
    を特徴とする強度・靭性に優れた高張力鋼板の製造方
    法。
  5. 【請求項5】 重量%で、 Nb:0.001〜0.05%、 Ti:0.001〜0.1%、 V :0.001〜0.1% のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴
    とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の強度・靭性
    に優れた高張力鋼板の製造方法。
  6. 【請求項6】 重量%で、 Mo:0.01〜1%、 Ni:0.01〜5%、 Cr:0.01〜3%、 Cu:0.01〜3%、 B :0.0001〜0.003% のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴
    とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の強度・靭性
    に優れた高張力鋼板の製造方法。
  7. 【請求項7】 重量%で、 REM:0.002〜0.10%、 Ca :0.0003〜0.0030% のいずれか1種、または2種以上を含有することを特徴
    とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の強度・靭性
    に優れた高張力鋼板の製造方法。
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