JP7464495B2 - 局所的に軟化された部分を有する鋼部品の製造方法 - Google Patents

局所的に軟化された部分を有する鋼部品の製造方法 Download PDF

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Description

本開示は、局所的に軟化された部分を有する鋼部品の製造方法に関する。
近年、自動車衝突時の乗員保護のために、自動車骨格部品全体としては高強度に保ちつつ、衝突時には特定部分を優先的に変形させる技術が必要とされている。そのため、当該技術に利用される、特定部分が局所的に軟化された高強度鋼部品および/またはその製造方法が求められている。
特許文献1には、鋼板をオーステナイト単相温度域に加熱する際に、軟化させたい部分に遮熱カバーをかける方法が開示されている。これにより、遮熱カバーをかけた部分が加熱時においてもオーステナイト単相温度域未満となり、当該部分の急冷後のマルテンサイト変態が抑制され、当該部分が遮熱カバーをかけていない部分と比較して軟化する。
特許文献2には、オーステナイト単相温度域から鋼板を金型と接触させて急冷する際に、鋼板と金型との接触が悪い部分を設ける方法が開示されている。これにより、当該部分に軟質組織(フェライトおよび/またはパーライト)が析出して、当該部分が軟化する。
特開第2017-78189号公報 特開第2011-179028号公報
特許文献1および2では、鋼板中の熱伝達等の影響により、軟化させたい部分のみを軟化させることができない。例えば、特許文献1では遮熱カバーをかけた部分のみをオーステナイト単相温度域未満として軟化させるべきところ、遮熱カバーをかけた部分の端部においては、遮熱カバーをかけていない隣接部分から熱が伝達するため、結果として遮熱カバーをかけた部分の端部において十分に軟化させることができない。特許文献2では、金型との接触を悪くさせた部分のみを急冷させずに軟化させるべきところ、当該部分から金型との接触が良い隣接部分に熱が伝達するため、結果として金型との当該隣接部分にも軟化効果が及び得る。よって、特許文献1および2のように、局所的な温度制御により軟化させる方法では、軟化させたい部分のみを局所的に軟化させることは難しい。
本発明の実施形態は、このような状況を鑑みてなされたものであり、その目的の1つは、局所的な温度制御をすることなく、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造する方法を提供することである。
本発明の態様1は、
C :0.05~0.40質量%、
Si:0~2.0質量%、
Mn:1.0~3.0質量%、
Al:0.010~1.0質量%、
P:0質量%超0.100質量%以下、
S:0質量%超0.010質量%以下、
N:0質量%超0.010質量%以下、
B :0.0005~0.010質量%、および
残部:鉄および不可避不純物
からなる化学組成の鋼板を用意する工程と、
前記鋼板をAc1点(℃)以上Ac3点(℃)+10℃未満の温度に加熱する工程と、
前記加熱する工程後、675℃以上Ac3点(℃)+10℃未満の加工温度で、ひずみを0.5%以上加える加工工程と、
前記加工工程後、前記加工温度で1秒以上120秒以下保持するか、または0℃/秒超15℃/秒以下の平均冷却速度で1秒以上120秒以下徐冷する工程と、
前記保持または徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃まで冷却する工程と、を含み、
前記加熱する工程の前記温度から、Ms点(℃)-50℃までの平均冷却速度を10℃/秒以上に制御する、鋼部品の製造方法である。
本発明の態様2は、
C :0.05~0.40質量%、
Si:0~2.0質量%、
Mn:1.0~3.0質量%、
Al:0.010~1.0質量%、
P:0質量%超0.100質量%以下、
S:0質量%超0.010質量%以下、
N:0質量%超0.010質量%以下、
B :0.0005~0.010質量%、および
残部:鉄および不可避不純物
からなる化学組成の鋼板を用意する工程と、
前記鋼板をAc3点(℃)+10℃以上1100℃以下の温度に加熱する工程と、
前記加熱する工程後、Ms点(℃)+50℃以上Ac3点(℃)+10℃未満の加工温度でひずみを10%以上加える加工工程と、
前記加工工程後、前記加工温度で1秒以上120秒以下保持するか、または0℃/秒超15℃/秒以下の平均冷却速度で1秒以上120秒以下徐冷する工程と、
前記保持または徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃まで冷却する工程と、を含み、
前記加熱する工程における前記温度から、Ms点(℃)-50℃までの平均冷却速度を10℃/秒以上に制御する、鋼部品の製造方法である。
本発明の態様3は、前記鋼板が、
Cu:0質量%超0.50質量%以下、および
Ni:0質量%超0.50質量%以下
よりなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1または2に記載の製造方法である。
本発明の態様4は、前記鋼板が、
Ti:0質量%超0.10質量%以下、
Cr:0質量%超3.0質量%以下、および
Nb:0質量%超0.10質量%以下
よりなる群から選択される一種以上を更に含有する態様1~3のいずれか1つに記載の製造方法である。
本発明の態様5は、張り出し成形により前記ひずみを加えることを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製造方法である。
本発明の態様6は、鍛造により前記ひずみを加えることを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製造方法である。
本発明の態様7は、ドロー成形時の曲げ戻しにより前記ひずみを加えることを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製造方法である。
本発明の態様8は、せん断加工により前記ひずみを加えることを含む、態様1~4のいずれか1つに記載の製造方法である。
本発明の態様9は、複数回の加工により前記ひずみを加えることを含む、態様1~8のいずれか1つに記載の製造方法である。
本発明の態様10は、前記複数回の加工が、変形を加える加工と、前記変形を戻すように行う加工とを含む態様9に記載の製造方法である。
本発明の実施形態によれば、局所的な温度制御をすることなく、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造する方法を提供することが可能である。
図1は、フォーマスタ試験で鋼板を低温から加熱した際の、温度と変位の関係を示すグラフである。 図2は、図1の関係に加え、フォーマスタ試験で鋼板を高温から冷却した際の、温度と変位の関係を示すグラフである。 図3は、実施例の評価用サンプルの採取位置を示す模式図である。 図4は、図3に示すX-X線断面模式図である。
本願発明者らは、局所的な温度制御をすることなく、局所的に軟化された高強度鋼部品の製造方法を実現するべく、様々な角度から検討した。
その結果、所定の化学組成の鋼板を、オーステナイトとフェライトの二相領域などのオーステナイトが比較的不安定な状態に加熱し、軟化させたい部分に若干のひずみを加えることで、軟化させたい部分のみに軟質組織(フェライトおよび/またはパーライト)の核生成を促進し、一定時間保持又は徐冷させることで、当該部分から軟質組織を成長させる製造方法を見出した(以下、本発明の実施形態1と称する)。
また、上記加熱において、オーステナイト単相領域などのオーステナイトが比較的安定な状態に加熱した場合においても、軟化させたい部分に比較的大きなひずみを加えることによって、本発明の実施形態1と同様に、軟化させたい部分のみに軟質組織の核生成を促進することができることも同時に見出した(以下、本発明の実施形態2と称する)。
以下に、本発明の実施形態1および2が規定する各要件の詳細を示す。
なお、本明細書において、「鋼部品」とは、本発明の実施形態1および2の加工する工程により所定形状に加工された鋼板のことをいう。
<本発明の実施形態1>
本発明の実施形態1に係る製造方法は、
(a)鋼板を用意する工程と、
(b)工程(a)の後、加熱する工程と、
(c)工程(b)の後、加工する工程と、
(d)工程(c)の後、保持または徐冷する工程と、
(e)工程(d)の後、冷却する工程と、
を含む。
以下、各工程について説明する。
(a)鋼板を用意する工程
本発明の実施形態1に係る鋼板の化学組成は、C:0.05~0.40質量%、Si:0~2.0質量%、Mn:1.0~3.0質量%、Al:0.010~1.0質量%、P:0質量%超0.100質量%以下、S:0質量%超0.010質量%以下、N:0質量%超0.010質量%以下、B:0.0005~0.010質量%、および残部:鉄および不可避不純物からなる。
以下、各元素について詳述する。
(C:0.05~0.40質量%)
C含有量は、鋼部品の強度を決定する。鋼部品の十分な強度を得るために、C含有量は0.05質量%以上であり、好ましくは0.10質量%以上であり、より好ましくは、0.20質量%以上である。
一方で、C含有量が過剰になると、鋼部品の靭性が顕著に低下するとともに、鋼部品の遅れ破壊が生じやすくなる。このため、C含有量は0.40質量%以下であり、好ましくは0.38質量%以下であり、より好ましくは0.36質量%以下である。
(Si:0~2.0質量%)
Siは任意で鋼板に含まれる元素である。Siは焼戻し軟化抵抗を高めることにより、鋼板の硬度安定性に寄与する。そのため、Siは鋼板に0質量%超で含まれていることが好ましい。
一方、Siは、残留オーステナイト(γ)を生成し易くすると共に、降伏強度(YS)の低下やMnの偏析を助長する。このため、Si含有量は、2.0質量%以下とし、好ましくは1.8質量%以下である。
(Mn:1.0~3.0質量%)
Mnは、鋼板の焼入れ性を高めることにより鋼部品の高強度化に寄与する。この効果を発揮させるために、Mn含有量は、1.0質量%以上とし、好ましくは1.2質量%以上であり、より好ましくは1.4質量%以上である。
一方、Mn含有量が過剰になると鋼部品中に粗大な炭化物が析出する可能性がある。そのため、Mn含有量は3.0質量%以下とし、好ましくは2.8質量%以下であり、より好ましくは2.6質量%以下である。
(Al:0.010~1.0質量%)
Alは、脱酸剤として作用する元素である。こうした効果を発揮させるために、Al量は、0.010質量%以上とする。Al量は、好ましくは0.020質量%以上、より好ましくは0.025質量%以上である。しかしながら、Alを過剰に含有させることは、製造上のコストアップに繋がると共に、Ac3点を著しく高め、素材加熱温度の高温化による表面品質の悪化(脱炭や減肉)を引き起こす。そのため、Al量は1.0質量%以下とする。Al量は、好ましくは0.80質量%以下であり、より好ましくは0.70質量%以下である。
(P:0質量%超0.100質量%以下)
Pは、不可避的に含有する元素であり、鋼板の溶接性を劣化させる元素であるが、フェライト相の固溶強化に寄与する効果を有する元素でもある。このような効果を発揮させつつ鋼板の溶接性を劣化させないためには、P量は0.100質量%以下とする。P量は、好ましくは0.050質量%以下であり、より好ましくは0.020質量%以下である。なお、Pは鋼中に不可避的に混入してくる不純物であり、その量を0質量%にすることは工業生産上不可能であり、通常0質量%超、さらには0.00050質量%以上で含有し得る。
(S:0質量%超0.010質量%以下)
Sは、不可避的に含有する元素であり、鋼板の溶接性を劣化させる。したがって、S量は0.010質量%以下とする。S量は、好ましくは0.0080質量%以下であり、より好ましくは0.0050質量%以下である。S量は、できるだけ少ない方が良いため、下限は特に限定されないが、その量を0質量%にすることは工業生産上不可能であり、通常0質量%超、さらには0.00010質量%以上で含有し得る。
(N:0質量%超0.010質量%以下)
Nは、不可避的に含有する元素であり、過剰に含まれるとAlNを生成させ、Alによる脱酸効果を低減させる。したがって、N量は0.010質量%以下とする。N量は、好ましくは0.0080質量%以下であり、より好ましくは0.0050質量%以下である。N量は、できるだけ少ない方が良いため、下限は特に限定されないが、その量を0質量%にすることは工業生産上不可能であり、通常0質量%超、さらには0.00010質量%以上で含有し得る。
(B:0.0005~0.010質量%)
Bは、鋼板の焼入れ性を高めることにより鋼部品の高強度化に寄与する。この効果を発揮させるために、B含有量は、0.0005質量%以上とし、好ましくは0.0010質量%以上であり、より好ましくは0.0015質量%以上である。
一方、B含有量が過剰になると、粗大な鉄ボロン化合物が析出し、鋼部品の靭性が低下する。そのため、B含有量は、0.010質量%以下とし、好ましくは0.0080質量%以下であり、より好ましくは0.0060質量%以下である。
(残部:鉄および不可避不純物)
好ましい1つの実施形態では、残部は鉄および不可避不純物である。不可避不純物は、原料、資材、製造設備等の状況によって持ち込まれる元素である。
なお、例えば、P、SおよびNのように、通常、含有量が少ないほど好ましく、従って不可避不純物であるが、その組成範囲について上記のように別途規定している元素がある。このため、本明細書において、残部を構成する「不可避不純物」という場合は、別途その組成範囲が規定されている元素を除いた概念である。
さらに、本発明の実施形態1に係る鋼板は、必要に応じて以下の任意元素を選択的に含有してよく、含有される成分に応じて鋼部品の特性が更に改善される。
(Cu:0質量%超0.50質量%以下、およびNi:0質量%超0.50質量%以下よりなる群から選択される一種以上)
Cuを含むことにより、鋼板自体の耐食性が向上するため、鋼板の腐食による水素発生を抑制し、耐遅れ破壊性を改善することができる。またCuは、大気中で生成する錆の中でも熱力学的に安定で保護性があるといわれている酸化鉄:α-FeOOHの生成を促進する効果も有している。当該錆の生成促進を図ることで、発生した水素の鋼板への侵入を抑制でき、過酷な腐食環境下において水素による助長割れを抑制することができる。そのため、Cu含有量は0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.10質量%以上である。一方、Cu含有量が過剰になると、鋼板製造時のめっき工程でのめっき性およびホットスタンプ後の化成処理性が劣化する。そのため、Cu含有量は0.50質量%以下とすることが好ましい。
NiもCuと同様の効果があることが知られている。そのため、Ni含有量も0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.05質量%以上であり、さらに好ましくは0.10質量%以上である。一方、Ni含有量は0.50質量%以下とすることが好ましい。
(Ti:0質量%超0.10質量%以下、Cr:0質量%超3.0質量%以下、およびNb:0質量%超0.10質量%以下よりなる群から選択される一種以上)
Tiは、TiNを生成することにより鋼板中におけるBNの生成量を少なくする。これにより、鋼板中における固溶Bの量が増加し、Bによる焼入れ性向上の効果を高めることができる。この効果を発揮させるために、Ti含有量は、0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.0050質量%以上であり、さらに好ましくは0.0250質量%以上、0.050質量%以上である。
一方、鋼板中にTiが過剰に含まれると、結晶粒界に炭化物が析出し、鋼板の焼入れ性が劣化する。このため、Ti含有量は、0.10質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.080質量%以下であり、さらに好ましくは0.070質量%以下である。
Crは、硬度の確保に寄与するとともに、冷却中の粗大な炭化物の析出の抑制に寄与する。これらの効果を発揮させるために、Cr含有量は0質量%超とすることが好ましい。
一方、鋼板中にCrが過剰に含まれると、鋼板の割れ等を引き起こすおそれがあり、Cr含有量は、3.0質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは2.5質量%以下であり、さらに好ましくは2.0質量%以下である。
炭化物形成元素であり、鋼板の組織微細化に寄与する元素である。そのためNb含有量は0質量%超とすることが好ましく、より好ましくは0.0050質量%以上である。
一方、鋼板の組織が微細化することで、熱処理時の逆変態は促進されるものの、冷却中にフェライト生成を促進し、鋼部品の強度低下を招き得る。このような効果は、その含有量が増加するにつれて大きくなる。また、冷間圧延性が悪化するという不都合も生じる。こうした観点から、Nbは0.10質量%以下で含有させることが好ましい。好ましくは、0.070質量%以下であり、より好ましくは0.050質量%以下である。
(b)加熱する工程
本発明の実施形態1では、上記鋼板をAc1点(℃)以上Ac3点(℃)+10℃未満に加熱する。
Ac1点未満では、オーステナイト変態が起きず、後述する(e)冷却する工程後に高強度鋼部品とすることが困難となる。一方、Ac3点+10℃未満にしておくことで、後述する(c)加工する工程において、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成を促進しやすくなる。
Ac1点およびAc3点は、フォーマスタ試験で加熱中の温度およびその加熱に伴う鋼の膨張収縮による変位履歴を調査することで求めることができる。図1は、フォーマスタ試験で鋼板を低温から加熱した際の、温度と変位の関係を示すグラフである。低温域では、鋼は温度上昇と共にフェライトの結晶構造(bcc)に応じた膨張率で直線的に膨張し得る。さらに温度を上げると、より稠密な結晶構造(fcc)のオーステナイトが生成して、収縮し始め得る。直線から乖離し始めた温度をAc1点とすることができる。さらに温度を上げた高温域では、フェライトがすべてオーステナイトに変態し、オーステナイトの結晶構造に応じた膨張率で再度直線的に膨張し得る。直線に沿って膨張し始める温度をAc3点とすることができる。
(c)加工する工程
上記の(b)加熱する工程後、675℃以上Ac3点+10℃未満の温度でひずみを0.5%以上加える加工を行う。
上記のような温度では、鋼板中に、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成サイトである結晶粒界が多く存在し得る。このような不安定な状態で、若干の(すなわち0.5%以上の)ひずみを加えることで、当該ひずみを加えた部分に、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成を顕著に促進することができる。より好ましくは、5.0%以上のひずみを加えることであり、さらに好ましくは9.0%以上のひずみを加えることである。
なお、ひずみは下記式(1)により計算され得る。

ひずみ(%)=|(d-d)/d×100| ・・・(1)

は加工前の鋼板の板厚または加工後の鋼板における非加工部分の板厚であり、dは加工後の鋼板のうち加工部分の板厚である。いずれも単位はmmである。
なお、ひずみは、例えばFEM解析により求めた相当塑性ひずみとしてもよい。すなわち、FEM解析で求めた相当塑性ひずみが0.5%以上であれば、同様に軟化させることができる。
Ms点は、フォーマスタ試験で冷却中の温度およびその冷却に伴う鋼の膨張収縮による変位履歴を調査することで求めることができる。図2は、図1で説明した加熱時の温度-変位の関係に加えて、当該加熱後に鋼板を比較的速い冷却速度で冷却した際の、温度と変位の関係を示すグラフである。中・高温域では、鋼は温度降下と共にオーステナイトの結晶構造に応じた収縮率で直線的に収縮し得る。さらに温度を下げると、マルテンサイトに変態し、膨張し始め得る。直線から乖離し始めた温度をMs点とすることができる。
上記(b)加熱する工程の加熱温度をAc1点(℃)以上Ac3点(℃)+10℃未満とした上で、加工温度を675℃未満にすると、軟質組織への変態が活発になるため、非加工部の軟化も顕著となり、加工部のみ局所的に軟化された鋼部品を製造することが困難となる。
上記(b)加熱する工程の加熱温度をAc1点(℃)以上Ac3点(℃)+10℃未満とした上で、加工温度をAc3点+10℃以上とすると、軟質組織の核生成サイトである結晶粒界が少なくなり、若干のひずみを加えるだけでは、軟質組織の核生成を促進することができなくなる。
上記加工温度は、上記(b)加熱する工程の加熱温度と同じでも異なっていてもよい。異なっている場合、上記(b)工程と(c)工程との間で、追加の加熱する工程および/または冷却する工程を含んでいてもよい。また、上記(b)工程後(c)工程前に、一定温度に保持する工程を含んでいてもよい。
上記の加工はどのような加工であってもよいが、例えばプレス加工、張り出し成形、鍛造、ドロー成形時の曲げ戻し、せん断加工等が好適に用いられる。
(d)保持または徐冷する工程
上記の(c)加工する工程後、0~15℃/秒の平均冷却速度で1秒以上120秒以下保持または徐冷する。すなわち、上記加工温度で1秒以上120秒以下保持するか、0℃/秒超15℃/秒以下の平均冷却速度で1秒以上120秒以下徐冷する。これにより、上記の(c)加工する工程で核生成された、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトを成長させることができる。
15℃/秒超の平均冷却速度の場合、または、保持時間または徐冷時間が1秒未満である場合、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトを十分に析出および成長させることができない。保持時間または徐冷時間は、1秒超であることが好ましく、より好ましくは3秒以上であり、さらに好ましくは6秒以上である。
一方、保持または徐冷する時間が120秒超だと、非加工部分においても軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトが析出および成長してしまい、高強度鋼部品を得ることができない。好ましくは12秒以下である。
(e)冷却する工程
上記の(d)保持または徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃まで冷却する。この際、上記(b)加熱する工程の加熱温度(すなわち、Ac1点(℃)以上Ac3点(℃)+10℃以下)から、Ms点(℃)-50℃までの平均冷却速度を10℃/秒以上に制御する。これにより、少なくとも非加工部分において、マルテンサイト変態を起こすことができ、非加工部分の強度を十分に確保できる。平均冷却速度10℃/秒以上の冷却をMs点(℃)-50℃超で終了させてしまうと、非加工部分において十分にマルテンサイト変態を起こすことができない。また、平均冷却速度が10℃/秒未満であっても、非加工部分において十分にマルテンサイト変態を起こすことができない。
上記の(e)冷却する工程後、例えば室温まで冷却することができる。Ms点(℃)-50℃から室温までの冷却速度は特に限定されない。
<本発明の実施形態2>
本発明の実施形態2に係る製造方法は、本発明の実施形態1に係る製造方法と比較して、(b)加熱する工程および(c)加工する工程の条件が異なる。以下、本発明の実施形態1とは異なるそれらの工程を、(b’)加熱する工程および(c’)加工する工程として以下に説明する。
(b’)加熱する工程
本発明の実施形態2では、前記鋼板をAc3点(℃)+10℃以上1100℃以下に加熱する。本発明の実施形態1とは異なり、加熱する工程においてAc3点+10℃以上に加熱しても、後述する(c’)加工する工程で比較的大きなひずみを加えれば、本発明の実施形態1と同様に、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成を顕著に促進できる。一方、1100℃超だと鋼表面の脱炭が顕著になり狙いの強度が確保できなくなる。また、酸化が進み減肉する可能性もある。めっき材であれば、酸化や合金化が進み、めっきの硬度が高くなりすぎて後の加工工程で剥離してしまう(鋼板の酸化、押しキズ)などの問題が生じる。
(c’)加工する工程
上記の(b’)加熱する工程後、Ms点(℃)+50℃以上Ac3点(℃)+10℃未満の温度でひずみを10%以上加える加工を行う。Ms点(℃)+50℃以上Ac3点(℃)+10℃未満では、オーステナイトが比較的不安定な状態となるため、比較的大きな(10%以上の)ひずみを加えることで、当該ひずみを加えた部分に、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成を顕著に促進することができる。より好ましくは、15%以上のひずみを加えることであり、さらに好ましくは40%以上のひずみを加えることである。なお、ひずみは上記式(1)により計算され得る。また、ひずみは、例えばFEM解析により求めた相当塑性ひずみとしてもよい。すなわち、FEM解析で求めた相当塑性ひずみが10%以上であれば、同様に軟化させることができる。
Ac3点+10℃以上の温度では、オーステナイトが比較的安定な状態となり、比較的大きなひずみを加えても、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成を促進することが困難となる。一方、Ms点(℃)+50℃未満だと、マルテンサイト変態が起こる可能性があり、軟質組織であるフェライトおよび/またはパーライトの核生成を促進することが困難となる。
(b’)加熱する工程後の温度(Ac3点(℃)+10℃以上1100℃以下)から、(c’)加工する工程の温度(Ms点(℃)+50℃以上Ac3点(℃)+10℃未満)までの冷却については特に制限されず、どのような平均冷却速度であってもよい。また、上記(b’)工程後(c’)工程前に、一定温度に保持する工程を含んでいてもよい。
上記(c’)加工する工程の加工はどのような加工であってもよいが、例えばプレス加工、張り出し成形、鍛造、ドロー成形時の曲げ戻し、せん断加工等が好適に用いられる。
本発明の実施形態1および2において、上記の(c)および(c’)の加工する工程におけるひずみを、複数回の加工により加えてもよい。
上記(c)および(c’)の加工する工程におけるひずみを、複数回の加工により加える場合、複数回の加工によるひずみは、下記式(2)のように計算され得る。
Figure 0007464495000001
はn回目の加工後の鋼板のうち加工部分の板厚であり、単位はmmである。
なお、上記式(2)のひずみは、例えば各加工後におけるFEM解析により求めた相当塑性ひずみの総和としてもよい。
例えば、上記(c)および(c’)の加工する工程が単工程の場合に、所定のひずみ(実施形態1では0.5%以上、実施形態2では10%以上)を加えるのが困難な場合がある。そのような場合に、上記(c)および(c’)工程を複数回の加工により行ってひずみを累積させることで、ひずみを所定値以上にしやすくなり有利である。
また、上記(c)および(c’)の加工する工程が単工程の場合に、上記(c)および(c’)工程から上記(e)冷却する工程までの搬送時間が1秒未満であり、上記(d)保持または徐冷する工程の時間(1秒以上)を確保しにくい場合がある。そのような場合に、上記(c)および(c’)工程を複数回の加工により行うことで、複数回の加工工程間の搬送時間を上記(d)工程の保持または徐冷する時間に充てることができるため、有利である。
また、上記複数回の加工が、変形を加える加工と、その変形を戻すように行う加工とを含んでもよい。これにより、初期の鋼板形状に対して、最終的な鋼部品形状を変化させることなしに、上記ひずみを加えることが可能となる。
上記の(c)および(c’)加工する工程が複数回の加工を含む場合、上記(d)保持又は徐冷する工程を各加工後に行ってもよい。例えば、2回の加工を含む場合、1回目の加工を施してから、1回目の保持又は徐冷する工程を行い、その後2回目の加工を施してから、2回目の保持又は徐冷する工程を行ってもよい。この場合、1回目の保持又は徐冷する工程の時間と、2回目の保持又は徐冷する工程の時間の合計が、本発明の実施形態1および2の(d)工程で規定する時間、すなわち1秒以上120秒以下であればよい。
上記(a)~(e)、(b’)および(c’)工程の温度は、鋼板(または鋼部品)の表面温度であり、熱電対や放射温度計を用いて測定してもよい。また、事前に加熱ライン等の雰囲気温度と、熱電対等で測定した鋼板(または鋼部品)の表面温度との対応関係を調査しておき、加熱ライン等の雰囲気温度から鋼板(または鋼部品)の表面温度を読み取ってもよい。
本発明の実施形態1および2によれば、局所的な温度制御をすることなく、加工により所定以上のひずみを加えた部分のみが局所的に軟化された高強度鋼部品を製造する方法を提供することが可能である。
以下、実施例を挙げて本発明の実施形態をより具体的に説明する。本発明の実施形態は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前述および後述する趣旨に合致し得る範囲で、適宜変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の実施形態の技術的範囲に包含される。
表1の鋼種No.Aに示される化学組成の鋼(Ac1点:778℃、Ac3点:875℃、Ms点:385℃)を用いて、板厚1.6mm、面積100mm×100mmの鋼板を用意し、その鋼板を880℃に加熱した。その後、750℃まで約12℃/秒で放冷し、750℃で張出成形を行った。張出成形は、100mm×100mmの鋼板中央部に対し、φ10mmの半球パンチを裏面から押し当てることにより行った。張出高さは3.0mmとした。張出成形後、10.8℃/秒の平均冷却速度で6秒間徐冷した。その後、Ms点(℃)-50℃(すなわち、335℃)まで水冷し、880℃~335℃までの平均冷却速度が39.5℃/秒となるようにした。その後室温まで放冷した。以上を製造例1-2とする。
なお、上記Ac1点、Ac3点およびMs点は、フォーマスタ試験により求めた。フォーマスタ試験は、以下の条件で行った。
フォーマスタ試験機:富士電波工機製FTM-10
試験片サイズ:板厚2.0mm×幅3.0mm×長さ10mm(ただし、熱電対を挿入するため、Φ0.7mm×深さ2.0mmの穴2箇所あり)
試験回数:7回(冷却速度のみ変更し、他は一定条件)
加熱速度:10℃/s(室温~加熱温度)
加熱温度:950℃
加熱温度での保持時間:180秒
冷却速度:2、5、10、15、20、30、および40℃/s(加熱温度~室温)
また、表1において、鋼種No.AのCu含有量は、不可避不純物レベル(0.01質量%未満)であったため、「-」と記載した。
Figure 0007464495000002
製造例1-2により得られた鋼部品のひずみおよび硬度を評価するために、評価用サンプルを採取した。評価用サンプルの採取位置を図3に示す。図3に示すように、鋼部品中央の張出成形部A(縦25mm×横5mm)および張出成形部Aから縦方向に離れた位置の非加工部B(縦10mm×横5mm)を採取した。
サンプルのひずみを評価するために、光学顕微鏡により断面観察を行って板厚を求めた。
張出成形部Aの板厚は、鋼部品の中央部、中央部から縦方向に3.75mm離れた位置(中間部と称する)、中央部から縦方向に7.5mm離れた位置(裾部と称する)においてそれぞれ求めた。そして、上記式(1)を用いて、鋼部品の中央部、中間部および裾部の板厚を加工部分の板厚dとし、非加工部Bの板厚を加工前の鋼板の板厚dとして、鋼部品の中央部、中間部および裾部のひずみを求めた。
張出成形部Aの3箇所(中央部、中間部および裾部)、ならびに非加工部Bにおいてビッカース硬度を測定した。測定は、ビッカース硬度試験機を使用して、荷重1kg、保持時間10秒の条件で行った。測定位置は、板厚をdとしたとき、板厚方向において鋼部品表面からd/4の位置を3点測定した。図4は、図3に示すX-X線断面模式図であり、張出成形部Aの硬度測定位置を示している。
非加工部Bの硬度測定位置については図示していないが、非加工部Bの縦および横方向における略中央、且つ板厚方向における鋼部品表面からd/4の位置を3点測定した。
張出成形部Aの3箇所(中央部、中間部および裾部)、ならびに非加工部Bの3点のビッカース硬度平均値を、それぞれのビッカース硬度として採用した。
製造例1-2から張出成形を行った温度(℃)(成形温度と称する)、張出高さ(mm)、徐冷時の冷却速度(℃/秒)、徐冷時間(秒)および加熱温度~Ms点-50℃までの平均冷却速度(℃/秒)を変更して、鋼部品を製造した(製造例1-1および1-3~1-8と称する)。そして、製造例1-2で得られた鋼部品と同様に、各鋼部品について、ひずみおよびビッカース硬度を評価した。結果を表2に示す。
なお、表2において、下線を付した数値は本発明の実施形態1の範囲から外れていることを示す。
Figure 0007464495000003
製造例1-1~1-8のうち、中央部、中間部および裾部の少なくとも1つが、非加工部のビッカース硬度と比較して、20HV以上ビッカース硬度が低下し、かつ非加工部の硬度が310HV以上であるものを、「局所的に軟化された高強度鋼部品」としての基準を満たす製造例であると判断した。
なお、「局所的に軟化された」鋼部品として、より好ましい製造例は、中央部、中間部および裾部の少なくとも1つが、非加工部のビッカース硬度と比較して、40HV以上ビッカース硬度が低下したものであり、さらに好ましい製造例は、100HV以上ビッカース硬度が低下したものである。
また、「高強度鋼部品」として、より好ましい製造例は、非加工部のビッカース硬度が、400HV以上であり、さらに好ましい製造例は、500HV以上である。
後述する実施例2および3においても同様に判断している。
表2の結果より、次のように考察できる。表2の製造例1-1~1-4は、いずれも本発明の実施形態1で規定する全ての要件を満足する例であり、局所的な温度制御をすることなく、加工により所定以上のひずみ(本発明の実施形態1では0.5%以上)を加えた部分のみが局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができた。
一方、表2の製造例1-5~1-8は、本発明の実施形態1で規定する要件を満たしていない例であり、加工により所定以上のひずみ(本発明の実施形態1では0.5%以上)を加えた部分において、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができなかった。
製造例1-5~1-8は、成形温度が650℃または550℃であり、675℃未満であったため、非加工部含む鋼部品全体が軟化してしまい、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができなかった。
表1の鋼種No.Aに示される化学組成の鋼を用いて、板厚1.6mm、面積100mm×100mmの鋼板を用意し、その鋼板を880℃に加熱した。その後、750℃まで約12℃/秒で放冷し、750℃で1回目の張出成形を行った。1回目の張出成形は、100mm×100mmの鋼板中央部に対し、φ10mmの半球パンチを裏面から押し当てることにより行った。張出高さは3.0mmとした。1回目の張出成形後、10.8℃/秒の平均冷却速度で6秒間徐冷した。1回目の徐冷する工程後、2回目の張出成形を行った。2回目の張出成形は、1回目の張出成形を行った箇所に対して、1回目の張出成形とは逆方向から(即ち、表面から)φ10mmの半球パンチを押し当てることにより行った。2回目の張出成形後、6.7℃/秒の平均冷却速度で6秒間徐冷した。2回目の徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃(すなわち、335℃)まで水冷し、880℃~335℃までの平均冷却速度が26.2℃/秒となるようにした。その後室温まで放冷した。以上を製造例2-1とする。
製造例2-1で得られた鋼部品について、実施例1と同様に、ひずみおよびビッカース硬度を評価した。ひずみについて、上記式(2)を用いて計算した。なお、1回目の張出成形は製造例1-2と同様に行っているため、1回目の張出成形後の板厚は製造例1-2と同じ板厚であったと仮定して、ひずみを計算している。結果を表3に示す。なお、2回目の張出成形は、1回目とは逆方向に成形しているので、2回目の張出高さは負の値とした。
Figure 0007464495000004
表3の結果より、次のように考察できる。表3の製造例2-1は、本発明の実施形態1で規定する要件の全てを満足する例であり、局所的な温度制御をすることなく、加工により所定以上のひずみ(本発明の実施形態1では0.5%以上)を加えた部分のみが局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができた。
表1の鋼種No.Aに示される化学組成の鋼を用いて、板厚1.6mm、面積100mm×100mmの鋼板を用意し、その鋼板を950℃に加熱し、60秒間保持した。その後、550℃まで約12℃/秒で放冷し、550℃で張出成形を行った。張出成形は、100mm×100mmの鋼板中央部に対し、φ10mmの半球パンチを裏面から押し当てることにより行った。張出高さは0.1mmとした。張出成形後、4.7℃/秒の平均冷却速度で6秒間徐冷した。その後、Ms点(℃)-50℃(すなわち335℃)まで水冷し、950℃~335℃までの平均冷却速度が12.5℃/秒となるようにした。その後室温まで放冷した。以上を製造例3-1とする。
製造例3-1により得られた鋼部品について、実施例1と同様に、ひずみおよびビッカース硬度を評価した。
製造例3-1から鋼種、張出成形を行った温度(℃)(成形温度と称する)、張出高さ(mm)、徐冷時の冷却速度(℃/秒)、徐冷時間(秒)および加熱温度~Ms点-50℃までの平均冷却速度(℃/秒)を変更して、鋼部品を製造した(製造例3-2~3-19と称する)。そして、製造例3-1と同様に、各鋼部品について、ひずみおよびビッカース硬度を評価した。結果を表4および表5に示す。なお、表1の鋼種No.Bに示される化学組成の鋼のAc1点は778℃、Ac3点は875℃、Ms点は385℃であった。
なお、表4および表5において、下線を付した数値は本発明の実施形態2の範囲から外れていることを示す。
Figure 0007464495000005
Figure 0007464495000006
表4および表5の結果より、次のように考察できる。表4の製造例3-4~3-6、3-9、3-11および3-14~3-16ならびに表5の製造例3-20~3-27、3-30~3-32および3-34~3-38は、いずれも本発明の実施形態2で規定する全ての要件を満足する例であり、局所的な温度制御をすることなく、加工により所定以上のひずみ(本発明の実施形態2では10%以上)を加えた部分のみが局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができた。
一方、表4の製造例No.3-1~3-3、3-7~3-8、3-10、3-12~3-13、3-17および3-19、ならびに表5の製造例3-28、3-29および3-33は、本発明の実施形態2で規定する要件を満たしていない例であり、加工により所定以上のひずみ(本発明の実施形態2では10%以上)を加えた部分において、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができなかった。
表4の製造例3-1~3-3、3-8、3-10、3-13および3-19ならびに表5の製造例3-33は、中央部、中間部、裾部の全てにおいて、ひずみが10%未満であったため、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができなかった。
表4の製造例3-7は、(d)保持または徐冷する工程において徐冷速度が15℃/秒超であり(すなわち徐冷時間1秒未満)、且つ中央部、中間部、裾部の全てにおいてひずみが10%未満であったため、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができなかった。
表4の製造例3-12および3-17ならびに表5の製造例3-28および3-29は、(d)保持または徐冷する工程において徐冷速度が15℃/秒超(すなわち徐冷時間1秒未満)であったため、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができなかった。
なお、表4の製造例3-18は、中央部において、加工により加えられたひずみが8%であり、本発明の実施形態2で規定するひずみ10%以上を満たさないものの、非加工部との硬度差が20HV以上であった。これは、部品No.3-18の中央部において、ひずみ以外の製造条件(加熱温度、冷却速度および徐冷時間等)が好ましい条件であった可能性があるが、詳細は不明である。
表1の鋼種No.Aに示される化学組成の鋼を用いて、板厚1.6mm、面積100mm×100mmの鋼板を用意し、その鋼板を950℃に加熱した。その後、750℃まで約12℃/秒で放冷し、750℃で1回目の張出成形を行った。1回目の張出成形は、100mm×100mmの鋼板中央部に対し、φ10mmの半球パンチを裏面から押し当てることにより行った。張出高さは4.0mmとした。1回目の張出成形後、9.7℃/秒の平均冷却速度で6秒間徐冷した。1回目の徐冷する工程後、2回目の張出成形を行った。2回目の張出成形は、1回目の張出成形を行った箇所に対して、1回目の張出成形とは逆方向から(即ち、表面から)φ10mmの半球パンチを押し当てることにより行った。2回目の張出成形後、5.3℃/秒の平均冷却速度で6秒間徐冷した。2回目の徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃(すなわち、335℃)まで水冷し、950℃~335℃までの平均冷却速度が16.6℃/秒となるようにした。その後室温まで放冷した。以上を製造例4-1とする。
製造例4-1で得られた鋼部品について、実施例1と同様に、ひずみおよびビッカース硬度を評価した。ひずみについて、上記式(2)を用いて計算した。なお、製造例4-1において2回目の張出成形を行わなかった場合の中央部の板厚は1.39mm、中間部の板厚は1.22mmおよび裾部の板厚は1.58mmであることを別途確認したため、これらの板厚を製造例4-1における1回目の張出成形後の板厚として、ひずみを計算している。結果を表6に示す。なお、2回目の張出成形は、1回目とは逆方向に成形しているので、2回目の張出高さは負の値とした。
Figure 0007464495000007
表6の結果より、次のように考察できる。表6の製造例4-1は、本発明の実施形態2で規定する要件の全てを満足する例であり、局所的な温度制御をすることなく、加工により所定以上のひずみ(本発明の実施形態2では10%以上)を加えた部分のみが局所的に軟化された高強度鋼部品を製造することができた。
本発明の実施形態では、局所的な温度制御をすることなく、局所的に軟化された高強度鋼部品を製造する方法を提供することが可能である。そのような高強度鋼部品は、例えば自動車骨格の素材に好適である。
1 鋼部品
2 中央部における硬度測定1箇所目
3 中央部における硬度測定2箇所目
4 中央部における硬度測定3箇所目
5 中間部における硬度測定1箇所目
6 中間部における硬度測定2箇所目
7 中間部における硬度測定3箇所目
8 裾部における硬度測定1箇所目
9 裾部における硬度測定2箇所目
10 裾部における硬度測定3箇所目
A 張出成形部
B 非加工部

Claims (10)

  1. C :0.05~0.40質量%、
    Si:0~2.0質量%、
    Mn:1.0~3.0質量%、
    Al:0.010~1.0質量%、
    P:0質量%超0.100質量%以下、
    S:0質量%超0.010質量%以下、
    N:0質量%超0.010質量%以下、
    B :0.0005~0.010質量%、および
    残部:鉄および不可避不純物
    からなる化学組成の鋼板を用意する工程と、
    前記鋼板をAc1点(℃)以上Ac3点(℃)+10℃未満の温度に加熱する工程と、
    前記加熱する工程後、675℃以上Ac3点(℃)+10℃未満の加工温度でひずみを0.5%以上加える加工工程と、
    前記加工工程後、前記加工温度で1秒以上120秒以下保持するか、または0℃/秒超15℃/秒以下の平均冷却速度で1秒以上120秒以下徐冷する工程と、
    前記保持または徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃まで冷却する工程とを含み、
    前記加熱する工程の前記温度から、Ms点(℃)-50℃までの平均冷却速度を10℃/秒以上に制御する、鋼部品の製造方法。
  2. C :0.05~0.40質量%、
    Si:0~2.0質量%、
    Mn:1.0~3.0質量%、
    Al:0.010~1.0質量%、
    P :0質量%超0.100質量%以下、
    S :0質量%超0.010質量%以下、
    N :0質量%超0.010質量%以下、
    B :0.0005~0.010質量%、および
    残部:鉄および不可避不純物
    からなる化学組成の鋼板を用意する工程と、
    前記鋼板をAc3点(℃)+10℃以上1100℃以下の温度に加熱する工程と、
    前記加熱する工程後、Ms点(℃)+50℃以上Ac3点(℃)+10℃未満の加工温度で前記鋼板の一部にひずみを10%以上加える加工工程と、
    前記加工工程後、前記加工温度で1秒以上120秒以下保持するか、または0℃/秒超15℃/秒以下の平均冷却速度で1秒以上120秒以下徐冷する工程と、
    前記保持または徐冷する工程後、Ms点(℃)-50℃まで冷却する工程とを含み、
    前記加熱する工程の前記温度から、Ms点(℃)-50℃までの平均冷却速度を10℃/秒以上に制御する、鋼部品の製造方法。
  3. 前記鋼板は、
    Cu:0質量%超0.50質量%以下、および
    Ni:0質量%超0.50質量%以下
    よりなる群から選択される一種以上を更に含有する請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記鋼板は、
    Ti:0質量%超0.10質量%以下、
    Cr:0質量%超3.0質量%以下、および
    Nb:0質量%超0.10質量%以下
    よりなる群から選択される一種以上を更に含有する請求項1~3のいずれか一項に記載の製造方法。
  5. 張り出し成形により前記ひずみを加えることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
  6. 鍛造により前記ひずみを加えることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
  7. ドロー成形時の曲げ戻しにより前記ひずみを加えることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
  8. せん断加工により前記ひずみを加えることを含む、請求項1~4のいずれか一項に記載の製造方法。
  9. 複数回の加工により前記ひずみを加えることを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の製造方法。
  10. 前記複数回の加工は、変形を加える加工と、前記変形を戻すように行う加工とを含む請求項9に記載の製造方法。
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