JP6059569B2 - 冷間加工性及び被削性に優れた鋼材の製造方法 - Google Patents

冷間加工性及び被削性に優れた鋼材の製造方法 Download PDF

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本発明は、自動車用部品や軸受け、建設機械用部品等の各種部品の製造に用いられる冷間加工性又は被削性に優れた鋼材を製造する方法に関するものである。
自動車用部品や軸受け、建設機械用部品等の各種部品には高炭素鋼が使用されており、通常、熱間圧延材を冷間加工、切削加工などによって所定の形状に成形した後、焼入れ焼戻し処理を行って最終的な強度調整が行われて製造される。熱間圧延材の冷間加工性や被削性は、高炭素鋼中に析出している炭化物の形状に影響を受け、棒状の炭化物が存在していると、それらが割れの起点となり、冷間加工性や被削性が悪くなる。そこで熱間圧延材を冷間加工したり切削するにあたっては、熱間圧延材を焼鈍して炭化物を球状化する処理(球状化焼鈍)が施される。
一般に球状化焼鈍では、(1)鋼材をAc1点(約730℃)以上のやや高い温度(例えば760〜780℃)に1〜2時間加熱したのち、ゆっくり冷却する方法、(2)Ac1点の上下20〜30℃の間で加熱と冷却を繰り返す方法、(3)冷間加工後に温度680〜700℃に加熱するか、または焼入れ後に温度680〜700℃で焼戻しする方法、(4)変態点直上にあたる温度760〜780℃から温度700℃まで冷却し、この温度で約3時間程度保持してから空冷する方法などが採用されている。
ところで軸受鋼などに使用される高炭素鋼としては、SUJ2鋼が代表的であり、このSUJ2鋼も球状化焼鈍して用いられている。SUJ2鋼はC量が0.95〜1.10%と高く、またCr含有量も1.30〜1.60%と高い。
一方、C量は高いままCr量を減らした鋼材についても球状化焼鈍が適用されている(特許文献1、2など)。特許文献1ではC:1.41%、Cr:0.64%の鋼材Dに対して、Ac1−100℃〜Ac1の第1保定温度まで加熱して30〜120分間保定し、次いでAc1+5℃以上の第2保定温度まで加熱した後冷却する球状化焼鈍方法が開示されている。特許文献2ではC:0.40〜0.80重量%、Cr:0.80重量%以下の軸受用鋼材について、下記(1)〜(3)の処理の後、(4)〜(5)の処理を1回以上繰り返し、その後冷却する球状化焼鈍方法が開示されている。
(1)A3点以上に加熱保持後急速冷却を行う。
(2)A3点+(5〜30)℃の温度範囲に再加熱保持する。
(3)A1点−(5〜30)℃の温度範囲で保持する。
(4)(A1点+5)〜(A3点+30)℃の温度範囲で保持する。
(5)A1点−(5〜30)℃の温度範囲で保持する。
特開平4−333527号公報 特開平4−362123号公報
前記SUJ2鋼などの高Cr合金鋼は、比較的安定して球状化焼鈍が可能であるのに対して、高いC量を保ったままでCrを減らした高C低Cr鋼では、球状化焼鈍を安定して行うことが難しい。例えば線材コイルを炉で処理して球状化焼鈍する場合、一部で球状化焼鈍に成功しても、球状化焼鈍に失敗する部分が発生することがあり、歩留まりが低下する。そして全ての場所で球状化焼鈍に成功するには炉の条件設定が極めてシビアになるという課題がある。前記特許文献1及び2の方法でも高C低Cr鋼を安定して球状化することは難しい。さらに球状化焼鈍は一般に時間がかかる処理であり、その時間短縮が強く求められている。処理時間を短縮するほど、一般に工程の管理はシビアになるから、高C低Cr鋼を安定して球状化することはより一層、難しくなる。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、鋼材の冷間加工性又は被削性を担保するために球状化焼鈍するに際して、対象鋼が高C低Cr鋼であっても安定して球状化焼鈍できるだけでなく、その処理時間も短縮できる技術を確立することにある。
上記目的を達成し得た本発明の製造方法とは、C:0.7〜1.5%(質量%の意味。以下、同じ)、およびCr:0.9%未満(0%を含まない)を含有する鋼材を球状化焼鈍して冷間加工性又は被削性に優れた鋼材を製造する方法であって、ひずみ付与工程と、前記ひずみ付与工程によりひずみが導入された鋼材を球状化焼鈍する球状化焼鈍工程を含み、
前記ひずみ付与工程では、鋼材に0.05以上の真ひずみを導入し、
前記球状化焼鈍工程は、1段目熱処理と、これに続く2段目熱処理とから構成され、これら1段目熱処理及び2段目熱処理の条件は以下の通りである点にその要旨を有するものである。
(1)1段目熱処理
昇温速度:400℃/hr未満
加熱温度:A1点+10℃〜A1点+30℃でありかつ780℃未満
加熱保持時間:0.5〜1時間
冷却速度:A1点〜A1点−20℃の温度範囲を3℃/hr以下
冷却終了温度:A1点−35℃以下
(2)2段目熱処理
昇温速度:400℃/hr未満
加熱温度:A1点+5℃〜A1点+25℃でありかつ780℃未満
加熱保持時間:0.5〜2時間
冷却速度:A1点−15℃〜A1点−50℃の温度範囲を5℃/hr以下
前記鋼材は、Si:0.001〜0.7%、Mn:0.1〜2.0%、Al:0.001〜0.1%を更に含有していてもよく、残部が鉄および不可避的不純物であってもよい。この不可避的不純物は、例えば、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.001〜0.05%、N:0.015%以下(0%を含まない)などである。前記鋼材は、更に、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有していてもよく、またTi:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有していてもよい。
本発明によれば、あらかじめ鋼材に所定のひずみを導入した後で特定の2段階熱処理法で鋼材を処理しているため、球状化が困難な高C低Cr鋼であっても、またその処理時間を短縮しても、安定して確実に球状化焼鈍することができ、歩留まりを高めることができる。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、A1変態点よりも十分に低い温度まで冷却する過程を間に挟むようにして2段階に分けて熱処理を行い、かつ1段階目の熱処理の熱処理条件は比較的強く、そして2段階目の熱処理は比較的弱くなるようにしつつ一定の条件範囲内でコントロールすると、高C低Cr鋼であっても、安定して確実に球状化焼鈍することができることを見い出した。そして、1段階目の熱処理前に鋼材に所定量のひずみを導入しておくと、球状化の安定性に悪影響を与えることなく、球状化処理時間を短縮できることを見い出し、本発明を完成した。以下、本発明法が対象とする鋼材について説明した後、本発明法について説明する。
1. 対象鋼
本発明は、高C低Cr鋼を対象とする。高C低Cr鋼には、球状化焼鈍を安定して行うという課題がある。前記高C低Cr鋼は、具体的にはCを0.7〜1.5%(質量%の意味。以下、同じ)、Crを0.9%未満(0%を含まない)含有する。
前記Cは、鋼材の強度(即ち、最終製品の強度)を確保するために必要な元素であり、冷間加工性や被削性に重要な影響を及ぼす。また炭化物を生じるため、球状化焼鈍方法の設計に当たっては必ず考慮しなければならない。C量は、好ましくは0.8%以上である。しかしCを過剰に含有すると、強度が高くなり過ぎて冷間加工性や被削性が悪くなるため、上限を設定した。C量は、好ましくは1.2%以下、さらに好ましくは1.1%以下である。
Crは球状化の難しさに影響を与える元素である。本発明ではこのCrを0.9%未満に低減した場合でも、安定して確実に球状化できることを目的として球状化焼鈍方法を設計するものであり、Cr量の特定は必須である。本発明によればCrが0.8%以下、又は0.6%以下、特に0.4%以下、更には0.3%以下であっても確実に球状化が可能であり、さらにはCr量は0.1%以下であってもよい。なおCrは、鋼材の焼入れ性を向上させ、最終製品の強度を高めるのに作用する元素である為、0.9%未満を満足する範囲で多く含有していてもよい。Cr量は、例えば、0.01%以上、好ましくは0.05%以上、さらに好ましくは0.1%以上であってもよい。
本発明で焼鈍方法を設計するにあたって考慮すべき鋼材成分は上述したC量及びCr量であるが、実際に本発明の焼鈍方法に使用する鋼材は、通常、Si、Mn、Alを下記の範囲で更に含有する。また残部は特に限定されないが、鉄および不可避的不純物であってもよい。Si、Mn、Alの添加量及びその添加理由は以下の通りである。
Siは、脱酸元素として、および固溶体硬化による最終製品の強度を増加させるために含有させることが好ましい元素である。Si量は、0.001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.05%以上、更に好ましくは0.1%以上、特に好ましくは0.2%以上である。しかしSi量が0.7%を超えると、過度に強度が上昇して冷間加工性を劣化させることがある。従ってSi量は、0.7%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.6%以下、更に好ましくは0.5%以下である。
Mnは、焼入れ性を向上し、最終製品の強度を増加させるのに有効に作用する元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、0.1%以上含有させることが好ましく、より好ましくは0.3%以上、更に好ましくは0.5%以上である。しかし過剰に含有すると強度が過度に上昇して冷間加工性が劣化することがある。従ってMn量は、2.0%以下とすることが好ましく、より好ましくは1.5%以下、更に好ましくは1.2%以下、特に好ましくは1.0%以下である。
Alは、脱酸元素として作用すると共に、鋼材中に存在する固溶NをAlNとして固定し、冷間加工性を向上させる元素である。こうした作用を有効に発揮させるには、Al量は0.001%以上とすることが好ましく、より好ましくは0.005%以上、更に好ましくは0.01%以上である。しかしAl量が過剰になると、鋼材中にAl23が過剰に生成し、冷間加工性が劣化することがある。従ってAl量は、0.1%以下であることが好ましく、より好ましくは0.08%以下、更に好ましくは0.05%以下である。
上記不可避的不純物としては、例えば、P、SおよびNを例示できる。これらの制限理由と、その許容し得る含有量は、例えば、以下の通りである。
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、粒界偏析を起こすと延性劣化の原因となる。従ってP量は、0.05%以下(0%を含まない)であることが好ましく、より好ましくは0.04%以下、更に好ましくは0.03%以下である。
Sは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、鋼材中にMnSとして存在し、延性を劣化させて冷間加工性を悪化させることがある。従ってS量は、0.05%以下であることが好ましく、より好ましくは0.04%以下、更に好ましくは0.03%以下である。一方、Sは、鋼材の被削性を向上させる作用も有する。従ってS量は、0.001%以上であることが好ましく、より好ましくは0.002%以上、更に好ましくは0.003%以上である。
Nは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、鋼材中に固溶Nとして存在すると、歪み時効による硬度上昇および延性低下を招き、冷間加工性を劣化させることがある。従ってN量は、0.015%以下(0%を含まない)であることが好ましく、より好ましくは0.013%以下、更に好ましくは0.010%以下である。
上記鋼材は更に、(1)Cu、Ni、MoおよびBなど、および/または(2)Ti、NbおよびVなどを含んでもよい。
(1)の場合、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有させる。これらの元素は、いずれも鋼材の焼入れ性を向上させて最終製品の強度を高めるのに有効に作用する元素であり、単独で含有させてもよく、2種以上含有させてもよい。前記作用を確実に発揮させる観点から、Cuは0.01%以上、Niは0.01%以上、Moは0.01%以上、Bは0.001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは、Cuは0.03%以上、Niは0.03%以上、Moは0.03%以上、Bは0.0015%以上である。しかし過剰に含有すると、強度が高くなり過ぎて、冷間加工性が劣化することがある。従って前記範囲よりもその上限を限定してもよく、例えば、Cuは0.15%以下、Niは0.15%以下、Moは0.2%以下、Bは0.008%以下とするのが好ましい。
(2)の場合、Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)、およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有させる。これらの元素はいずれも、鋼材中に存在するNと結合して窒化物を形成し、固溶Nを低減することにより、変形抵抗を低下させて冷間加工性を向上させる元素であり、これらの元素は単独で、または2種以上を含有させることが好ましい。こうした作用を有効に発揮させるには、Tiは0.02%以上、Nbは0.02%以上、Vは0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは、Tiは0.04%以上、Nbは0.05%以上、Vは0.08%以上である。しかし過剰に含有すると、形成される窒化物が変形抵抗を高め、冷間加工性を劣化させることがある。従って前記範囲よりもその上限を限定してもよく、例えば、Tiは0.1%以下、Nbは0.1%以下、Vは0.25%以下とするのが好ましい。
2. 製造方法
2.1 ひずみ付与工程
本発明は、球状化焼鈍に先立って鋼材にひずみを付与している点に特徴がある。高C低Cr鋼は、それを安定して球状化することが難しく、工程条件の僅かな違いに感応して、一部で球状化に成功しても一部で球状化が不十分となることがある。そこで本発明では、後述する特定の2段階の熱処理によって、高C低Cr鋼であっても安定して球状化することを可能にできた。第1の熱処理に供する鋼材にあらかじめひずみを付与しておくと、この安定球状化効果を損なうことなく、第1の熱処理時間を短縮することが可能となった。
ひずみの付与手段は特に限定されず、公知の手法を適宜採用できる。例えば、熱間圧延線材にひずみを付与する場合は、該熱間圧延線材を冷間または温間(好ましくは冷間)で伸線すればよい。
鋼材へのひずみ導入量は、真ひずみによって規定できる。ひずみ付与工程で導入される真ひずみは、0.05以上、好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.20以上である。真ひずみの上限はその導入が可能な限り特に限定されないが、例えば、0.80以下、好ましくは0.60以下、さらに好ましくは0.50以下である。
なお鋼材に導入する真ひずみの量εは、例えば、伸線時の減面率をA(%)とすると、下記式から算出できる。
ε=ln(1/(1−A/100))
2.2 球状化焼鈍工程
本発明では、ひずみを導入した高C低Cr鋼を球状化焼鈍する。本発明の球状化焼鈍方法によれば、安定した球状化焼鈍が困難な上記のような高C低Cr鋼であっても、確実に球状化焼鈍してその冷間加工性と被削性を改善できる。本発明の製造方法で採用する球状化焼鈍法は、2段階に分けて熱処理を行う点に特徴があり、1段階目の熱処理を比較的強く設計し、2段階目の熱処理は比較的弱く設計している。1段階目の熱処理についてより詳細に説明すると、以下の通りである。
2.2.1 1段目熱処理
1段目の熱処理では、まず鋼材を昇温速度:400℃/hr未満で加熱する。この加熱は、A1点+10℃以上、A1点+30℃以下の温度(ただし、780℃未満)まで行い、この温度で0.5〜1時間保持する。次いで冷却を開始し、この冷却では、A1点以下、A1点−20℃以上の温度範囲を3℃/hr以下の速度で徐冷する。冷却はA1点−35℃以下まで実施する。この1段目の熱処理で、元々のパーライト組織をある程度の球状化組織とし、また粒界セメンタイトも大幅に低減できる。そのため、続く2段目の熱処理で、全ての部位で確実に球状化組織を得ることができる。なおA1点は、オーステナイト+セメンタイトの相からオーステナイト+セメンタイト+フェライトの相への変態温度であり、総合熱力学計算ソフトウエア(Thermo−Calc。CRC総合研究所から購入可能。データベースはTTLFE)に、鋼材の化学成分組成を入力して求まる値である。
1段目の熱処理で鋼材の昇温速度を前記範囲に設定したのは、これを超えると、温度がオーバーシュートしやすくなって、加熱温度、時間に影響を与えるためである。昇温速度は、好ましくは300℃/hr以下、より好ましくは200℃/hr以下である。なお昇温速度が遅すぎると生産効率が低下する。よって昇温速度は、例えば、5℃/hr以上、好ましくは10℃/hr以上、より好ましくは20℃/hr以上である。
1段目の加熱温度および加熱時間を前記範囲に設定したのは、この加熱で未固溶のパーライトと網状セメンタイトを消滅させ、かつセメンタイトが若干残存する様にするためである。加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎたりすると、未固溶のパーライトまたは網状セメンタイトが残存し、球状化が不十分な部分が発生する。逆に加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎたりすると、セメンタイトが溶けすぎ、その後の冷却でパーライトが発生しやすくなる結果、球状化が不十分な部分が発生する。前記加熱温度は、好ましくはA1点+12℃〜A1点+28℃、より好ましくはA1点+15℃〜A1点+25℃である。また該加熱温度は、好ましくは770℃以下、より好ましくは765℃以下である。前記加熱時間は、ひずみを導入した鋼材を熱処理対象としているため、そうでない鋼材を熱処理対象とする場合に比べて大幅に短縮されている。この加熱時間は、好ましくは0.6〜0.9時間である。
1段目の冷却速度を前記範囲に設定したのは、微細な再生パーライトの発生を抑制するためである。微細な再生パーライトが発生すると2段目の加熱時に溶けすぎて、その後の冷却でパーライトが発生しやすくなり、球状化が不十分な部分が発生する。冷却速度は、好ましくは2℃/hr以下である。また該冷却速度の下限は適宜設定できるが、例えば、0.1℃/hr以上、好ましくは0.5℃/hr以上であってもよく、また1℃/hr以上であってもよい。
1段目の冷却終了温度を前記範囲に設定したのは、オーステナイトが残ったまま2段目の加熱に入ることを防止するためである。オーステナイトが残ったまま2段目の加熱に入ると、セメンタイトが溶けすぎ、その後の冷却でパーライトが発生しやすくなって、球状化が不十分な部分が発生する。冷却終了温度は、A1点−37℃以下であってもよく、A1点−40℃以下であってもよい。なお冷却終了温度の下限は特に設定されないが、生産効率の観点から、例えば、A1点−100℃以上、好ましくはA1点−50℃以上程度であってもよい。
2.2.2 2段目熱処理
2段目の熱処理では、1段目の冷却終了後、鋼材を昇温速度:400℃/hr未満で加熱する。この加熱は、A1点+5℃以上、A1点+25℃以下の温度(ただし、780℃未満)まで行い、この温度で0.5〜2時間保持する。次いで冷却を開始し、この冷却では、A1点−15℃以下、A1点−50℃以上の温度範囲を5℃/hr以下の速度で徐冷する。前記1段目の熱処理の後、これよりも比較的弱い2段目の熱処理を行うことで、パーライトの再生を防止しつつ、球状化が困難な部位でも確実に球状化できる。
2段目の熱処理で鋼材の昇温速度を前記範囲に設定したのは、これを超えると、温度がオーバーシュートしやすくなって、加熱温度、時間に影響を与えるためである。昇温速度は、好ましくは300℃/hr以下、より好ましくは200℃/hr以下である。なお昇温速度が遅すぎると生産効率が低下する。よって昇温速度は、例えば、5℃/hr以上、好ましくは10℃/hr以上、より好ましくは20℃/hr以上である。
2段目の加熱温度および加熱時間を前記範囲に設定したのは、この加熱で未固溶のパーライトを消滅させる一方で、セメンタイトを多く残存させるためである。加熱温度が低すぎたり、加熱時間が短すぎたりすると、未固溶のパーライトが残存する部分が発生し、球状化が不十分な部分が発生する。逆に加熱温度が高すぎたり、加熱時間が長すぎたりするとセメンタイトが溶けすぎる部分が発生し、その後の冷却でパーライトが発生しやすくなり、球状化が不十分な部分が発生する。前記加熱温度は、好ましくはA1点+7℃〜A1点+23℃、より好ましくはA1点+10℃〜A1点+20℃である。また該加熱温度は、好ましくは760℃以下、より好ましくは755℃以下である。前記加熱時間は、好ましくは1.0〜2時間である。
2段目の冷却速度を前記範囲に設定したのは、再生パーライトの発生を抑制するためである。再生パーライトが発生すると、球状化が不十分となる。冷却速度は、好ましくは4.5℃/hr以下、より好ましくは4.0℃/hr以下である。また該冷却速度の下限は適宜設定できるが、例えば、0.5℃/hr以上、好ましくは1.0℃/hr以上であってもよく、また2℃/hr以上であってもよい。
2.3 ひずみ付与前工程
本発明の鋼材を製造するに当たり、前記ひずみ付与前の工程は特に限定されず、例えば、通常の鋼材の製造方法に従えばよい。例えば、所定の成分に調整した鋼材を鋳造し、必要に応じて分塊圧延した後、熱間圧延した鋼材を使用することができる。また他の方法によって得られた鋼材であっても、炭化物の球状化がなされていない鋼材であれば、いずれであっても使用できる。
上記のようにして球状化焼鈍された鋼材は、冷間加工性や被削性に優れている。そのため、冷間加工(特に冷間鍛造)、切削加工などによって簡便に所定の形状に成形できる。この成形体は、焼入れ焼戻し処理などの最終的な強度調整を行い、鋼部品となる。本発明は、軸受けなどの自動車用部品、建設機械用部品等の各種部品を製造するのに極めて有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
実験例
下記表1に示す成分組成の鋼材(鋼種A〜G)を熱間圧延することでφ15mmの線材コイル(1トン)を一鋼種当たり21個製造した。次いで冷間で伸線することで下記表2に示す真ひずみを導入した。3段(層)積み型のバッチ式加熱炉に、一段(層)当たり7個(3段(層)の合計で21個)の伸線後の線材コイルを挿入し、下記表2に示す条件で1段目(1回目)の熱処理を行った後、2段目(2回目)の熱処理を行った。
熱処理終了後、21個の線材コイルから偏りなく6個の線材コイルを選択し、評価用のコイルとした。1つのコイルについて、端部からサンプルを採取し、横断面のD/8位置(Dは直径)を一周に亘って観察し、観察部におけるLC(Lamellar Content:ラメラ量)番号及びCN(carbide network:炭化物網)番号の最大値をASTM A892−88に従って求めた。この評価を選択した6つのコイル全てにおいて実施し、最も大きい番号を、その鋼種のLC番号、CN番号とした。結果を表2に示す。なおLCは、層状セメンタイトの割合を示すパラメータであり、数値が小さいほど層状セメンタイトが少なく、球状化度がよいことを意味する。CNは、粒界のセメンタイト(主に初析セメンタイト)の割合を示すパラメータであり、数値が小さいほど粒界のセメンタイトが少なく、球状化度が良いことを示す。これらLC及びCNの両方が小さいときは、良好な球状化組織が得られていると評価でき、従って冷間加工性および被削性が向上していると判断できる。
Figure 0006059569
Figure 0006059569
No.16は1段目の熱処理の加熱条件が弱すぎた為に未固溶のパーライトや網状セメンタイトが残存した。そして1段目熱処理の冷却終了温度が高すぎてオーステナイトのままの部分を残したまま2段目の加熱に入ってしまった。そのためパーライトや網状セメンタイトの球状化が不十分となる一方、オーステナイト部分ではセメンタイトが溶けすぎ、再生パイライトも発生し、LC番号とCN番号が共に悪化した。No.17は1段目熱処理の加熱条件が弱すぎた為にパーライト又は網状セメンタイトが残存する部分が発生し、球状化が不十分となってLC番号が悪化した。No.18は2段目熱処理の加熱条件が強すぎるためにセメンタイトが溶けすぎる部分が発生し、その後の冷却で再生パーライトとなるためLC番号が悪化した。No.19は1段目熱処理の加熱条件及び2段目熱処理の加熱条件が共に強すぎるために球状化焼鈍ができない部分が発生し、LC番号が悪化した。No.20は1段目加熱後の冷却速度が速すぎるために微細な再生パーライトを生じる部分が発生した。また2段目の加熱条件が弱すぎるためにパーライトが未固溶のまま残り、LC番号が悪化した。No.21はCr含有量が多い従来鋼であって本熱処理条件の対象鋼ではないため、LC番号とCN番号が共に悪化した。
これらに対してNo.13およびNo.15は、1段目熱処理と2段目熱処理とが適切に行われているため、LC番号とCN番号が共に1になった。しかし1段目熱処理前にひずみ導入されていない為、1段目の熱処理に3〜4時間も要した。一方、ひずみを導入しないNo.12およびNo.14の結果より明らかな様に、ひずみを導入することなく1段目熱処理を短縮すると、1段目加熱時に未固溶のパーライトや網状セメンタイトが残り、球状化焼鈍ができない部分が発生して、LC番号またはCN番号が悪化した。そこでひずみを導入した上で1段目の加熱時間を短縮すると(No.1〜6)、1段目熱処理と2段目熱処理とが適切になり、短時間でLC番号とCN番号を共に1にする事ができた。
No.7〜11でも、ひずみを導入した鋼材を適切な条件で1段目熱処理し、ついで2段目熱処理しているため、短時間でLC番号とCN番号を共に1にする事ができた。

Claims (5)

  1. C:0.7〜1.5%(質量%の意味。以下、同じ)、およびCr:0.9%未満(0%を含まない)を含有する鋼材を球状化焼鈍して冷間加工性及び被削性に優れた鋼材を製造する方法であって、
    ひずみ付与工程と、前記ひずみ付与工程によりひずみが導入された鋼材を球状化焼鈍する球状化焼鈍工程を含み、
    前記ひずみ付与工程では、鋼材に0.05以上の真ひずみを導入し、
    前記球状化焼鈍工程は、1段目熱処理と、これに続く2段目熱処理とから構成され、これら1段目熱処理及び2段目熱処理の条件は以下の通りである冷間加工性及び被削性に優れた鋼材の製造方法。
    (1)1段目熱処理
    昇温速度:400℃/hr未満
    加熱温度:A1点+10℃〜A1点+30℃でありかつ780℃未満
    加熱保持時間:0.5〜1時間
    冷却速度:A1点〜A1点−20℃の温度範囲を3℃/hr以下
    冷却終了温度:A1点−35℃以下
    (2)2段目熱処理
    昇温速度:400℃/hr未満
    加熱温度:A1点+5℃〜A1点+25℃でありかつ780℃未満
    加熱保持時間:0.5〜2時間
    冷却速度:A1点−15℃〜A1点−50℃の温度範囲を5℃/hr以下
  2. 前記鋼材として、Si:0.001〜0.7%、Mn:0.1〜2.0%、Al:0.001〜0.1%を更に含有し、残部が鉄および不可避的不純物であるものを用いる請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記不可避的不純物として、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.001〜0.05%、N:0.015%以下(0%を含まない)を含む請求項に記載の製造方法。
  4. 前記鋼材が更に、
    Cu:0.25%以下(0%を含まない)、
    Ni:0.25%以下(0%を含まない)、
    Mo:0.25%以下(0%を含まない)および
    B :0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. 前記鋼材が更に、
    Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.2%以下(0%を含まない)および
    V :0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
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