JP6108924B2 - 冷間鍛造用鋼の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、自動車用部品や軸受け、建設機械用部品等の各種部品の製造に用いられる冷間鍛造用鋼を製造する方法に関するものである。
自動車用部品や軸受け、建設機械用部品等の各種部品は、通常、熱間圧延材を冷間鍛造し、その後、切削加工などを施して所定の形状に成形した後、焼入れ焼戻し処理を行って最終的な強度調整が行われて製造される。熱間圧延材の冷間鍛造性は、鋼材中に存在している炭化物の形状に影響を受け、棒状の炭化物が存在していると、それらが割れの起点となり、冷間鍛造性が悪くなる。そこで熱間圧延材を冷間鍛造するにあたっては、熱間圧延材の冷間鍛造性を良好にするために炭化物を球状化するための熱処理(球状化焼鈍)が施される。
球状化焼鈍方法としては、例えば、特許文献1〜3の技術が知られている。これらのうち特許文献1には、新たな焼鈍熱処理ヒートパターンを確立することによって、20時間以上要していた鋼の球状化焼鈍処理を1時間程度に短縮する技術が開示されている。しかし上記特許文献1に記載されている球状化焼鈍処理は、通常のバッチ炉では実施できず、特別な設備が必要となる。
特許文献2にはC:0.40〜0.80重量%、Cr:0.80重量%以下を含有する軸受用鋼材について、下記(1)〜(3)の処理の後、(4)〜(5)の処理を1回以上繰り返し、その後冷却する球状化焼鈍方法が開示されている。
(1)A3点以上に加熱保持後急速冷却を行う。
(2)A3点+(5〜30)℃の温度範囲に再加熱保持する。
(3)A1点−(5〜30)℃の温度範囲で保持する。
(4)(A1点+5)〜(A3点+30)℃の温度範囲で保持する。
(5)A1点−(5〜30)℃の温度範囲で保持する。
特許文献3には、C:0.1〜1.5%、Cr:0.1〜2.0%を含有する鋼を、第一保定温度(Ac1−100℃〜Ac1)で保持した後、第二保定温度(C≦0.8%の場合Ac1+5〜Ac3−5℃、C>0.8%の場合Ac1+5〜Accm−5℃)に加熱して保持し、冷却する球状化焼鈍方法が開示されている。
特開平8−246040号公報 特開平4−362123号公報 特開平4−333527号公報
近年、Crの価格が上昇しているため、低コスト化の観点から、Crの使用量を低減することが望まれている。ところがCr量を低減すると、上記特許文献2で指摘されているように、Crによる球状炭化物の安定化効果が小さくなるため、炭化物は球状化しにくくなり、球状化焼鈍条件が不適切であれば、棒状あるいは粗大炭化物が形成され、冷間鍛造性が低下することが知られている。
本発明は上記の様な事情に着目してなされたものであって、その目的は、上記特許文献1〜3に開示されている方法とは異なる方法で、Cr量の低い鋼材(具体的には、Cr量が0.4%以下の鋼材)中の炭化物を球状化した冷間鍛造用鋼を製造できる方法を提供することにある。
上記課題を解決するため鋭意検討を重ねてきた結果、Cr量が0.4%以下の鋼材を適切に球状化焼鈍するには、熱間圧延して得られた鋼材に、第1加熱保持、第2加熱保持、第1冷却、第2冷却の順に処理を施せばよく、特に、第1加熱保持は、700℃以上、725℃未満の相対的に低温の温度域において150分間以上の充分な時間行い、第2加熱保持は、735〜760℃の相対的に高温の温度域において10〜180分間として行えばよいことを見出し、本発明を完成した。
即ち、上記課題を解決することのできた本発明に係る冷間鍛造用鋼の製造方法とは、C:0.1〜1.5%(質量%の意味。以下同じ。)、Si:0.05〜0.7%、Mn:0.1〜1.5%、Cr:0.4%以下(0%を含む)、Al:0.001〜0.1%、P:0.05%以下(0%を含まない)、S:0.001〜0.05%およびN:0.015%以下(0%を含まない)を含有し、残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材を下記の第1加熱保持、第2加熱保持、第1冷却、第2冷却の順に処理することで鋼材中の炭化物を球状化する点に要旨を有している。
(1)第1加熱保持
700℃以上、725℃未満の温度域における滞在時間:150分間以上
(2)第2加熱保持
加熱速度(725〜735℃間の平均):12℃/時間以上
735〜760℃の温度域における滞在時間:10〜180分間
(3)第1冷却
冷却速度(735〜725℃間の平均):10℃/時間以上
(4)第2冷却
冷却速度(720〜690℃間の平均):5℃/時間以下
前記鋼材は更に、
(1)Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素や、
(2)Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種の元素、
を含んでもよい。
本発明によれば、低温側と高温側の2段階の加熱保持と、その後の冷却条件を適切に制御しているため、Cr量が0.4%以下の鋼材であっても確実に球状化焼鈍することができる。その結果、冷間鍛造性に優れた鋼材を提供できる。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、第1加熱保持として、700℃以上、725℃未満の温度域における滞在時間を150分間以上とし、第2加熱保持として、725〜735℃間の平均加熱速度を12℃/時間以上としたうえで、735〜760℃の温度域における滞在時間を10〜180分間とし、更に735〜725℃間の平均冷却速度(第1冷却)および720〜690℃間の平均冷却速度(第2冷却)を適切に制御すれば、Cr量が0.4%以下の鋼材であっても、確実に球状化焼鈍できることを見出し、本発明を完成した。
以下、本発明法が対象とする鋼材について説明した後、本発明法について説明する。
1. 対象鋼
本発明法は、Cを0.1〜1.5%、Siを0.05〜0.7%、Mnを0.1〜1.5%、Crを0.4%以下(0%を含む)、Alを0.001〜0.1%、Pを0.05%以下(0%を含まない)、Sを0.001〜0.05%、Nを0.015%以下(0%を含まない)含有する鋼材を対象としている。
Cは、鋼材の強度(即ち、最終製品の強度)を確保するために必要な元素であり、冷間鍛造性に重要な影響を及ぼす。また炭化物を生じるため、球状化焼鈍方法の設計に当たって考慮しなければならない。本発明はCを0.1%以上含有する鋼材を対象とした。C量は、好ましくは0.30%以上、より好ましくは0.40%以上、更に好ましくは0.60%超である。しかしCを過剰に含有すると、強度が高くなり過ぎて冷間鍛造性が悪くなる。従ってC量は、1.5%以下とする。C量は、好ましくは1.30%以下、より好ましくは1.10%以下である。
Siは、脱酸元素として、および固溶体硬化による最終製品の強度を増加させるために含有させる元素であり、0.05%以上とする。Si量は、好ましくは0.08%以上、より好ましくは0.10%以上である。しかしSi量が0.7%を超えると、過度に強度が上昇して冷間鍛造性を劣化させることがある。従ってSi量は、0.7%以下とする。Si量は、好ましくは0.60%以下、より好ましくは0.50%以下である。
Mnは、焼入れ性を向上し、最終製品の強度を増加させるのに作用する元素であり、0.1%以上含有させる必要がある。Mn量は、好ましくは0.30%以上、より好ましくは0.50%以上である。しかし過剰に含有すると強度が過度に上昇して冷間鍛造性が劣化する。従ってMn量は、1.5%以下とする。Mn量は、好ましくは1.2%以下、より好ましくは1.0%以下である。
Crは、球状化の難しさに影響を与える元素である。本発明ではこのCrを0.4%以下に低減した場合でも、確実に球状化できることを目的として球状化焼鈍方法を設計するものである。本発明によればCrが0.30%以下、又は0.20%以下、更には0.10%以下であっても確実に球状化が可能であり、Cr量は0%であってもよい。なお、Crは、鋼材の焼入れ性を向上させ、最終製品の強度を高めるのに作用する元素である為、0.4%以下を満足する範囲で多く含有していてもよい。Cr量は、例えば、好ましくは0.01%以上、より好ましくは0.03%以上、さらに好ましくは0.05%以上であってもよい。
Alは、脱酸元素として作用すると共に、鋼材中に存在する固溶NをAlNとして固定し、冷間鍛造性を向上させる元素である。従ってAl量は0.001%以上とする必要があり、好ましくは0.005%以上、より好ましくは0.010%以上である。しかしAl量が過剰になると、鋼材中にAl23が過剰に生成し、冷間鍛造性が劣化する。従ってAl量は、0.1%以下とする必要があり、好ましくは0.080%以下、より好ましくは0.050%以下である。
Pは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、粒界偏析を起こすと延性劣化の原因となる。従ってP量は、0.05%以下とする。P量は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.030%以下である。
Sは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であるが、鋼材の被削性を向上させるのに作用する。従ってS量は、0.001%以上とする。S量は、好ましくは0.002%以上、より好ましくは0.003%以上である。しかし過剰に含有すると、Sは鋼材中にMnSとして存在し、延性を劣化させて冷間鍛造性を悪化させる。従ってS量は、0.05%以下とする。S量は、好ましくは0.040%以下、より好ましくは0.030%以下である。
Nは、鋼材中に不可避的に含まれる元素であり、鋼材中に固溶Nとして存在すると、歪み時効による硬度上昇および延性低下を招き、冷間鍛造性を劣化させる。従ってN量は、0.015%以下とする。N量は、好ましくは0.013%以下、更に好ましくは0.010%以下である。
残部成分は特に限定されないが、鉄と、P、SおよびN以外の不可避不純物である。
上記鋼材は更に、(1)Cu、Ni、MoおよびBよりなる群から選択される少なくとも1種の元素、および/または(2)Ti、NbおよびVよりなる群から選択される少なくとも1種の元素、等を含んでもよい。
(1)の場合、Cu:0.25%以下(0%を含まない)、Ni:0.25%以下(0%を含まない)、Mo:0.25%以下(0%を含まない)およびB:0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有させる。これらの元素は、いずれも鋼材の焼入れ性を向上させて最終製品の強度を高めるのに有効に作用する元素である。これらの元素は単独で、または2種以上含有させてもよい。前記作用を確実に発揮させる観点から、Cuは0.01%以上、Niは0.01%以上、Moは0.01%以上、Bは0.001%以上含有させることが好ましく、より好ましくは、Cuは0.03%以上、Niは0.03%以上、Moは0.03%以上、Bは0.0015%以上である。しかし過剰に含有すると、強度が高くなり過ぎて、冷間鍛造性が劣化することがある。従ってCuは0.25%以下、Niは0.25%以下、Moは0.25%以下、Bは0.01%以下であることが好ましく、より好ましくは、Cuは0.15%以下、Niは0.15%以下、Moは0.20%以下、Bは0.008%以下である。
(2)の場合、Ti:0.2%以下(0%を含まない)、Nb:0.2%以下(0%を含まない)およびV:0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含有させる。これらの元素は、いずれも鋼材中に存在するNと結合して窒化物を形成し、固溶Nを低減することにより、変形抵抗を低下させて冷間鍛造性を向上させる元素である。これらの元素は単独で、または2種以上を含有させてもよい。こうした作用を確実に発揮させるには、Tiは0.02%以上、Nbは0.02%以上、Vは0.05%以上含有させることが好ましく、より好ましくは、Tiは0.04%以上、Nbは0.05%以上、Vは0.08%以上である。しかし過剰に含有すると、形成される窒化物が変形抵抗を高め、冷間鍛造性を劣化させることがある。従ってTiは0.2%以下、Nbは0.2%以下、Vは0.5%以下であることが好ましく、より好ましくは、Tiは0.10%以下、Nbは0.10%以下、Vは0.25%以下である。
2. 製造方法
本発明法は、球状化焼鈍が困難な上記のような低Cr鋼であっても、確実に球状化焼鈍してその冷間鍛造性を改善する発明である。本発明の製造方法で採用する球状化焼鈍法は、2段階に分けて熱処理(第1加熱保持、第2加熱保持)を行う点と、熱処理後、冷却するにあたり、2つの温度域における冷却条件(第1冷却、第2冷却)を適切に制御している点に特徴がある。以下、熱処理パターンに沿って順に説明する。
2.1 第1加熱保持
第1加熱保持では、上記成分組成を満足する鋼材を、700℃以上、725℃未満の温度域で150分間以上滞在させる。Cr量を0.4%以下に低減した鋼材を、この温度域で150分間以上滞在させることによって、鋼材中の炭化物を成長、粗大化させることができる。その結果、後述する735〜760℃の温度域(第2加熱保持)で滞在させることによって、炭化物を未固溶炭化物として安定的に確保でき、更に720〜690℃間(第2冷却)を適切な条件で冷却することによって、球状化組織を得ることができる。即ち、圧延材ままの低Cr鋼をAc1点より高い温度域(例えば、Ac1点+50℃以上)で加熱すると、未固溶炭化物が消失し易く、逆に、加熱温度が低い場合(例えば、Ac1点−50℃以下)には圧延材組織中にラメラ−パーライトが残存し、鋼材の硬さが低くなったり、棒状炭化物の生成を抑制できない。
従って本発明では、2段階に分けた加熱保持を行うこととし、第1加熱保持での加熱温度は、700℃以上とする。上記700℃以上、725℃未満の温度域において恒温保持する場合の温度は、好ましくは705℃以上、より好ましくは710℃以上とする。滞在時間は、150分間以上とし、好ましくは180分間以上、より好ましくは210分間以上とする。しかし加熱温度が高過ぎると、鋼材中の炭化物は成長せず、オーステナイト組織中に溶解するため、球状化組織は得られない。従って第1加熱保持での加熱温度は、725℃未満とする。上記700℃以上、725℃未満の温度域において恒温保持する場合の温度は、好ましくは723℃以下、より好ましくは720℃以下とする。滞在時間の上限は特に限定されないが、長時間滞在させてもその効果は飽和し、生産性が低下する。従って滞在時間の上限は、例えば、20時間以下とすればよい。
上記鋼材を700℃以上、725℃未満の温度域で150分間以上滞在させるにあたっては、上記鋼材は、この温度域内で恒温保持してもよいし、この温度域内で徐々に加熱および/または冷却を行なってもよく、鋼材がこの温度域内に滞在した合計時間が150分間以上であればよい。また、鋼材の温度が途中で一時的に700℃を下回ってもよいが、例えば、695℃を下回らないように温度管理することが好ましい。
なお、第1加熱保持までの平均加熱速度は適宜設定すればよく、例えば、0.1〜10℃/分程度、好ましくは0.3〜6℃/分程度、より好ましくは1〜5℃/分程度の範囲で設定できる。
2.2 第2加熱保持
第1加熱保持の後は、引き続いて第2加熱保持を行う。第2加熱保持では、725〜735℃間を平均加熱速度12℃/時間以上で加熱したうえで、735〜760℃の温度域における滞在時間を10〜180分間とする。
上記平均加熱速度を12℃/時間以上とすることによって、上記第1加熱保持終了時点で残存した棒状炭化物を分断できるため、後述する720〜690℃間における第2冷却時に球状化組織が得られる。即ち、上記725〜735℃間における加熱速度を大きくすることによって、オーステナイトの核生成を均一に行うことができる。その結果、オーステナイトが均一に生成するため、第1加熱終了時点で棒状炭化物の分断が均一に起こる。よって第2冷却時に球状化組織が得られる。また、上記加熱速度を大きくすることで、上記第1加熱保持で粗大化させた炭化物の溶解を抑制できるため、未固溶炭化物を均一に残存させることができ、後述する第2冷却時に球状化組織が得られる。従って上記平均加熱速度は12℃/時間以上とし、好ましくは15℃/時間以上、より好ましくは20℃/時間以上である。上記平均冷却速度の上限は特に限定されないが、設備上600℃/時間以下とすることが好ましい。
735〜760℃の温度域に加熱した後は、この温度域で10〜180分間滞在させる。この温度域で滞在させることによって、上記第1加熱保持終了時点で残存した棒状の炭化物を溶解消失させることができる。加熱温度が735℃を下回ると棒状の炭化物を充分に溶解消失させることができないため、球状化組織が得られない。従って加熱温度は735℃以上とする。上記735〜760℃の温度域において恒温保持する場合の温度は、好ましくは740℃以上である。また、滞在時間が10分間を下回ると、棒状炭化物を分断させることができず、球状化組織が得られない。従って滞在時間は、10分間以上とし、好ましくは30分間以上とする。しかし加熱温度が760℃を超えるか、滞在時間が180分間を超えると、上記第1加熱保持で成長させた炭化物が溶解消失するため、球状化組織を得ることができない。従って加熱温度は760℃以下とする。上記735〜760℃の温度域において恒温保持する場合の温度は、好ましくは755℃以下、より好ましくは750℃以下である。滞在時間は、180分間以下とし、好ましくは150分間以下、より好ましくは120分間以下である。
上記鋼材を735〜760℃の温度域で10〜180分間滞在させるにあたっては、上記鋼材は、この温度域内で恒温保持してもよいし、この温度域内で徐々に加熱および/または冷却を行なってもよく、鋼材がこの温度域内に滞在した合計時間が10〜180分間であればよい。また、鋼材の温度が途中で一時的に735℃を下回ってもよいが、例えば、730℃を下回らないように温度管理することが好ましい。
2.3 第1冷却、第2冷却
第2加熱保持した後は、冷却するが、本発明では、第1冷却として、735〜725℃間を平均冷却速度10℃/時間以上で冷却し、第2冷却として、720〜690℃間を平均冷却速度5℃/時間以下で徐冷する必要がある。
上記第1冷却では、上記第2加熱保持終了時点で得られている未固溶炭化物を溶解消失させないように、比較的に速やかに冷却することを目的とする。従って本発明では、735〜725℃間の平均冷却速度は10℃/時間以上とし、好ましくは15℃/時間以上、より好ましくは20℃/時間以上、更に好ましくは25℃/時間以上である。この温度域における平均冷却速度の上限は特に限定されないが、例えば、60℃/時間以下である。
上記第2冷却では、再生パーライトのような棒状の炭化物の析出を抑制しつつ、上述した未固溶の炭化物を球状化することを目的とする。従って本発明では、720〜690℃間の平均冷却速度は5℃/時間以下とし、好ましくは4℃/時間以下、より好ましくは3℃/時間以下とする。この温度域における平均冷却速度の下限は、例えば、0.5℃/時間以上であり、好ましくは1℃/時間以上である。
第2冷却以後もさらに冷却(第3冷却)を実施してもよく、この第3冷却の最終温度は適宜設定できるが、例えば、600℃以下、好ましくは400℃以下、より好ましくは100℃以下であってもよく、室温であってもよい。
なお、本明細書において、各温度は、線材コイル表面の温度を指し、線材コイルの表面に取り付けられた熱電対、もしくは線材コイルの近傍に設置された熱電対によって測定される温度である。
2.4 球状化焼鈍前工程
本発明の鋼材を製造するに当たり、球状化焼鈍前の工程は特に限定されず、例えば、通常の鋼材の製造方法に従えばよい。例えば、所定の成分に調整した鋼材を鋳造し、必要に応じて分塊圧延した後、熱間圧延した鋼材を使用することができる。また他の方法によって得られた鋼材であっても、炭化物の球状化がなされていない鋼材であれば、いずれであっても使用できる。
2.5 球状化焼鈍後工程
上記のようにして球状化焼鈍された鋼材は、冷間鍛造性に優れているため、簡便に所定の形状に成形できる。この成形体は、焼入れ焼戻し処理などの最終的な強度調整を行い、鋼部品となる。本発明は、軸受けなどの自動車用部品、建設機械用部品等の各種部品を製造するのに極めて有用である。
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
下記表1に示す成分組成(残部は、鉄およびP、S、N以外の不可避不純物)の鋼材(鋼種A〜N)を熱間圧延した後、オーステナイト温度域から冷却(風冷)してパーライト変態させ、φ15mmの線材コイル(1個あたり2トン)を製造した。得られた線材コイルを、バッチ式炉に入れて球状化焼鈍を行った。具体的には、下記表2に示す第1加熱保持の加熱温度に加熱した後、下記表2に示す第2加熱保持の加熱温度に加熱した。下記表2には、第1加熱保持として、700℃以上、725℃未満の温度域における滞在時間(分)、第2加熱保持として、735〜760℃の温度域における滞在時間(分)を示す。
なお、下記表2に示すNo.2は、第1加熱保持における加熱温度が700℃を下回る例であり、この例では、685℃で200分間恒温保持した。従ってこの例では、700℃以上、725℃未満の温度域で滞在させていないが、下記表2では、便宜上、第1加熱保持の滞在時間の欄に200分と表記した。また、下記表2に示すNo.6は、第2加熱保持における加熱温度が735℃を下回る例であり、この例では、725℃で70分間恒温保持した。従ってこの例では、735〜760℃の温度域で滞在させていないが、下記表2では、便宜上、第2加熱保持の滞在時間の欄に70分と表記した。また、下記表2に示すNo.11は、第2加熱保持における加熱温度が760℃を超える例であり、この例では、780℃で70分間恒温保持した。従ってこの例では、735〜760℃の温度域で滞在させていないが、下記表2では、便宜上、第2加熱保持の滞在時間の欄に70分と表記した。
第1加熱保持終了後、第2加熱保持の保持温度に昇温したときにおける725〜735℃間の平均加熱速度(℃/時間)を下記表2に示す。なお、下記表2に示すNo.5は、第1加熱保持を行わなかった例である。
次に、第2加熱保持後、室温まで冷却した。このとき第1冷却として、735〜725℃間の平均冷却速度、第2冷却として、720〜690℃間の平均冷却速度を夫々下記表2に示す。
球状化焼鈍後、次の手順で金属組織を観察し、炭化物の形状を調べ、球状化焼鈍が適切に行なわれているか否かを評価した。即ち、球状化焼鈍して得られた線材コイルの端部から試験片を切り出し、D/8位置(Dは試験片の直径)の横断面を走査型電子顕微鏡(SEM)で、倍率4000倍で観察し、写真を10枚撮影した。撮影した写真を夫々画像解析し、写真内に観察された炭化物のアスペクト比(長径/短径の比)を算出した。写真内に観察された炭化物の個数(総数)に対し、アスペクト比が3.0以下の炭化物の個数割合を算出した。撮影した10枚の写真について、全ての写真においてアスペクト比が3.0以下の炭化物の個数割合が90%以上である場合を球状化焼鈍合格(下記表2では○印)、1枚でもアスペクト比が3.0以下の炭化物の個数割合が90%未満である場合を球状化焼鈍不合格(下記表2では×印)と評価した。評価結果を下記表2に示す。
下記表1、表2から次のように考察できる。No.1、4、7、10、13、15〜22は、本発明で規定している要件を満足している例である。いずれも線材コイルに含まれるCr量が0.4%以下であるにもかかわらず、球状化組織が得られている。従って冷間鍛造性に優れていると考えられる。
一方、No.2、3、5、6、8、9、11、12、14、23は、いずれも本発明で規定している要件を満足していない例であり、球状化組織が得られなかった。よって冷間鍛造性を改善できていないと考えられる。詳細には、次の通りである。
No.2は、第1加熱保持における加熱温度が低過ぎた例であり、No.8は、第1加熱保持における滞在時間が短過ぎた例であり、いずれも炭化物が充分に成長せずにオーステナイト中に溶解したため、球状化組織は得られなかった。No.3は、第2加熱保持の後、第2冷却(720〜690℃間)における平均冷却速度が大き過ぎた例であり、再生パーライトのような棒状の炭化物が新たに析出したため、球状化組織は得られなかった。No.5は、第1加熱保持を行わずに、748℃まで一気に加熱した例である。従って炭化物を充分に成長させることができなかったため、球状化組織は得られなかった。No.6は、第2加熱保持における加熱温度が低過ぎた例であり、第1加熱保持終了時において残存した棒状炭化物を固溶消失させることができなかったため、球状化組織が得られなかった。
No.9は、第2加熱保持の後、第1冷却(735〜725℃間)における平均冷却速度が小さ過ぎたため、第2加熱保持終了時において残存した未固溶炭化物が固溶消失してしまい、球状化組織は得られなかった。No.11は、第2加熱保持における加熱温度が高過ぎた例であり、No.12は、第2加熱保持における滞在時間が長過ぎた例であり、第1加熱保持で粗大化させた炭化物が固溶消失したため、球状化組織は得られなかった。No.14は、第1加熱保持と第2加熱保持の間において、725〜735℃間における平均加熱速度が小さ過ぎた例であり、第1加熱保持終了時において部分的に残存した棒状炭化物の分断を促進できなかったため、球状化組織は得られなかった。No.23は、Cr量が本発明で規定している範囲を超えている例であり、表2に示した熱処理条件では、球状化組織が得られなかった。
以上の通り、本発明によれば、Cr量が0.4%以下の鋼材であっても、球状化組織を得ることができる。
Figure 0006108924
Figure 0006108924

Claims (4)

  1. C :0.1〜1.5%(質量%の意味。以下同じ。)、
    Si:0.05〜0.7%、
    Mn:0.1〜1.5%、
    Cr:0.4%以下(0%を含む)、
    Al:0.001〜0.1%、
    P :0.05%以下(0%を含まない)、
    S :0.001〜0.05%および
    N :0.015%以下(0%を含まない)を含有し、
    残部が鉄および不可避不純物からなる鋼材を下記の第1加熱保持、第2加熱保持、第1冷却、第2冷却の順に処理することで鋼材中の炭化物を球状化する冷間鍛造用鋼の製造方法。
    (1)第1加熱保持
    700℃以上、725℃未満の温度域における滞在時間:150分間以上
    (2)第2加熱保持
    加熱速度(725〜735℃間の平均):12℃/時間以上
    735〜760℃の温度域における滞在時間:10〜180分間
    (3)第1冷却
    冷却速度(735〜725℃間の平均):10℃/時間以上
    (4)第2冷却
    冷却速度(720〜690℃間の平均):5℃/時間以下
  2. 前記(4)第2冷却における冷却速度(720〜690℃間の平均)は4℃/時間以下である請求項1に記載の製造方法。
  3. 前記鋼材が更に、
    Cu:0.25%以下(0%を含まない)、
    Ni:0.25%以下(0%を含まない)、
    Mo:0.25%以下(0%を含まない)および
    B :0.01%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 前記鋼材が更に、
    Ti:0.2%以下(0%を含まない)、
    Nb:0.2%以下(0%を含まない)および
    V :0.5%以下(0%を含まない)よりなる群から選択される少なくとも1種を含む請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
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