JP5840376B2 - 鉄系材料およびその製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、産業機械や自動車等の機械部品に好適に用いられる機械構造用鉄系材料に関し、特に一部あるいは全体に硬質相を具え、優れた強度を有する鉄系材料に関する。
産業機械や自動車等の機械部品は一般的に、鋼材を切削または塑性加工、あるいはこれらの併用により所定の形状に加工した後、焼入れ焼戻し処理を施すことにより所望の特性を確保する方法により製造される。このような機械部品に用いられる鋼材は、機械部品として必要な強度を満足するために、通常0.4〜0.6mass%程度のCおよびMn、Cr、Mo等の合金元素を含有する。しかしながら、鋼材中に含有されるCおよび合金元素は鋼材の硬度上昇に寄与するため、切削、鍛造などの冷間加工を著しく困難にする。また、C含有鋼の焼入れ焼戻しにより得られる、焼戻しマルテンサイトは、常温で高い強度を有するものの、150℃程度を超える高温に長時間曝されると強度が低下するため、使用環境がこのような温度に達する用途には必ずしも適合しない。
機械部品を所定の形状に加工する際の冷間加工性と機械部品に要求される強度という、相反する特性を共に満足させる方法として、低C鋼素材に冷間加工を施して所望の形状とした後、浸炭焼入れする方法が従前行われている。しかしながら、浸炭にてC濃度を上昇させるといえども、やはり焼戻しマルテンサイトの強度を利用する上記方法では、依然として高温環境下での強度低下に関する問題は未解決のままであった。
また、上記浸炭焼入れに代えて、窒化処理により表面硬化層を形成する方法も知られている。窒化処理では、処理温度が比較的低温である上、焼入れ工程を必要としないため、発生する熱処理歪も小さい。そのため、寸法精度が要求される機械部品の強度を確保する方法としては極めて有効である。
しかしながら、多量の合金元素を添加しない鉄系材料に、従前の窒化処理を施した機械部品では、表面硬化層の硬度が不十分であった。例えば、特許文献1〜4には、鋼板を所望の形状に加工した後、窒化処理を施して表面硬化層を形成した機械部品について開示されているが、何れの文献に開示された機械部品においても、その表面硬化層の硬度は最大でもHV400程度である。特許文献5には硬度がHV803の表面硬化層を得る製法が記載されているが、硬化層の厚さが3〜15μmと薄く、面圧の高い部品への適用には課題があった。
一方で、鋼表層部にHV700を超える高い硬度を付与する為に、窒化時にAlやTi等の硬質窒化物を形成させる方法が従前行われているが、鋼中にAlやTi等の窒化物形成元素を多量に含有させる必要があり、鋼素材の製造コストを上昇させる等の問題を残していた。
特開平11−279686号公報 特開2002−20853号公報 特開2004−183006号公報 特開2005−336581号公報 特開2009−52745号公報
本発明は、上記現状を鑑みなされたものであり、鋼中に高濃度のCおよび合金元素を必ずしも含有させることなく、冷間加工性と最終部品強度を兼備し、更には高温使用環境における強度特性にも優れた機械部品が得られる機械構造用鉄系材料の提供を目的とする。
上記目的を達成すべく、本発明者らは冷間加工性に加え、最終的に高強度を有する機械部品が製造可能である、機械構造用材料を得るための方途について鋭意検討を進めた。その結果、特定範囲量のCを含有する鉄系材料に窒化処理を施すことにより、鉄系材料の少なくとも表層部にオーステナイト形成元素であるNを高濃度に含有させ、N高濃度領域をオーステナイト組織とし、窒化処理後に急冷して窒化処理時に形成させた上記オーステナイト組織を500℃以下の温度域まで残留させ、これを100〜500℃の温度域に加熱保持して、上記オーステナイト組織をα(フェライト)中に微細なγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N)が分散した組織に変化させることにより、HV700以上の高い硬質相が得られ、なおかつ高温に長時間曝された後も高い硬度を維持し得ることを知見した。さらに、窒化による硬質層(以下、窒化層とも言う)の性状についても、窒化層中に空隙が少なく、より強靭な窒化層が得られることが明らかとなった。
本発明は上記知見に基づきなされたものであり、その要旨構成は次のとおりである。
(1)C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる材料の表層を窒化して得た硬質相を有し、該硬質相は、N:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下を含有するとともに、構成ミクロ組織がフェライト中に1nm以上300nm以下のFe 4 Nおよび/またはFe 4 (C,N)が面積率で25〜60%分散した組織であり、かつ硬さがHV700以上であることを特徴とする鉄系材料。
ただし、[C]は材料中のC含有量(at%)
(2)上記(1)に記載の鉄系材料が、更に、
Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、
Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、
V:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02 mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料。
(3)C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる材料に590℃以上の温度で窒化処理を施して該材料の表層にN:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下を含有させた後、500℃以下の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後100〜500℃の温度域に保持して、構成ミクロ組織がフェライト中に1nm以上300nm以下のFe 4 Nおよび/またはFe 4 (C,N)が面積率で25〜60%分散したミクロ組織であり、かつ硬さがHV700以上である硬質相を形成することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
ただし、[C]は材料中のC含有量(at%)
(4)上記(3)に記載の鉄系材料が、更に、
Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、
Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、
Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、
Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、
V:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mo:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、
Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、
Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下および
Co:0.02 mass%以上2.0 mass%以下
の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
産業機械や自動車等の機械部品に好適に用いられる機械構造用鉄系材料であって、優れた冷間加工性を有し、HV700以上という従来に無い硬質相を有する鉄系材料が得られる。
以下、本発明について具体的に説明する。
(組成の限定理由)
窒化による硬質相中のN含有量:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下
Nは、本発明の硬質相を形成する上で必須の元素である。先述の通り、本発明の鉄系材料においては、窒化処理による窒化層が形成され、この窒化層について、α(フェライト)中に微細なγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))が分散した組織とすることにより硬質相を形成する。そのため、本発明の鉄系材料においては、硬質相を形成すべき部分に、γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))の構成元素であるNを含有させる必要がある。硬質相のN含有量が(8−[C])at%未満では、Ms点が室温よりも高く、室温でオーステナイト組織を得ることが出来ず、また窒化冷却後の保持時に十分な量のα−Fe中に微細γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))が分散した組織が得られないため、HV700以上の硬化層を形成することができない。一方、N含有量が(11−[C])at%を超えると、窒化を目的とした加熱保持中の組織がオーステナイト単相とならず、材料中に過剰なε窒化物を形成する。このε窒化物はその後の硬化熱処理後も残留して、硬化熱処理後のミクロ組織中に多量の空孔を形成し、最終部品の強度および靭性を著しく劣化させる。したがって、N含有量は(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下に規定する。なお、[C]は材料中のC含有量(at%)であり、後述する鉄系材料中のC量0.1mass%〜1.5mass%をat%に換算した値(0.46〜6.6at%)の範囲内の値となる。
鉄系材料中のC含有量:0.1mass%以上1.5mass%以下
Cは、オーステナイト安定化元素であり、材料にCを添加した場合、窒化処理によりNを含有させる際に、Cの含有量(at%)分だけ低いN量でオーステナイトが形成するようになる。このオーステナイト組織を急冷して、オーステナイト組織を500℃以下の温度域まで残留させ、これを100〜500℃の温度域に加熱保持すると、CはNとともに鉄化合物γ´(Fe4(C,N))を形成し、α(フェライト)中に硬質のγ´(Fe4(C,N))が分散した組織が得られる。
また、Cを添加した場合、Cが添加されていない場合に比較して、窒化処理の際により低いN量でオーステナイトが形成するようになる。すなわち、Cが添加されていない場合には、オーステナイトを形成させるためには8〜11at%の窒素が必要となるが、Cを上記の範囲で添加している場合は、(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下の範囲でオーステナイトが形成するので、Cの添加量分だけ窒化により導入するNの量を低く抑えることができる。そのため、窒化層でのNガス分子の生成を抑制でき、これにより、窒化層中の空隙率が低下し、より強靭な窒化層が得られる。具体的には、硬質相における空隙率は10%以下とすることができる。空隙率が10%を超える場合、硬質相が脆化するので、硬質相の剥離が起こりやすくなり最終部品の強度および靭性が劣化するが、本発明の鉄系材料では、剥離が生じにくいため、窒化層を形成させた最終部品の強度および靭性を確保することができる。
また、Cは特に本発明においてHV700以上の硬質相を鉄系材料の表層のみに形成する場合、鉄系材料の表層部以外の強度を確保する上で有効な元素でもある。
このため、本発明においては鉄系材料中のCは0.1mass%以上添加する。0.1mass%未満の場合、空隙率が著しく増加し、最終部品の強度および靭性が劣化する。一方、1.5mass%を超えると、機械部品の寸法精度や冷間加工性に悪影響を及ぼすため、1.5mass%以下とする。より好ましいC含有量は、0.16mass%以上1.1mass%未満である。
さらに、本発明においては必要に応じて、Cr:0.05 mass%以上2.0 mass%以下、Al:0.005 mass%以上0.5 mass%以下、Ti:0.0005 mass%以上0.5 mass%以下、Nb:0.005 mass%以上0.1 mass%以下、V:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、Mo:0.02 mass%以上1.0 mass%以下、Mn:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、Si:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、Ni:0.02 mass%以上2.0 mass%以下、Cu:0.02 mass%以上2.0 mass%以下およびCo:0.02 mass%以上2.0 mass%以下の中から選択される少なくとも1種以上を含有することができる。
Cr、Al、Ti、Nb、VおよびMoは、いずれも鉄系材料中の窒素と結合して硬質な窒化物を形成し、主に表層において耐摩耗性を向上する作用を有するため、必要に応じて含有させる。含有量が各々の下限値に満たない場合にはその効果が不十分である。一方、各々の上限値を超えて含有してもその効果が飽和するとともに、過剰な窒化物が析出して体積変化をもたらし寸法精度に悪影響を及ぼす。また、体積変化が生じることにより空隙を含むミクロ組織が形成されるため、鉄系材料の強度が劣化する。
Mn、Si、Ni、CuおよびCoは、本発明の鉄系材料を製造する上で必要となる低温でのオーステナイト組織の形成に効果的に作用するため、必要に応じて含有する。含有量が各々の下限値に満たない場合にはその効果が不十分であり、一方、各々の上限値を超えて含有すると最終的な所望の組織、すなわち、α(フェライト)中に微細なγ´(Fe4N)が分散した組織の形成に悪影響を及ぼす。
本発明における硬質相は、硬さがHV700以上であるものとする。HV700以上の硬質相は、構成ミクロ組織がα−Fe(フェライト)とγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))からなるか、あるいは、これに上述した合金元素の窒化物が析出したものであり、かつ、γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))が微細に分散した形態となることで達成できる。γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))は、面積率で25〜60%であることが必要である。すなわち、γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))は面積率が25%に満たないと、HV700以上の硬さの確保が困難となる。また、γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))は面積率が60%超で生成させようとすると、ε(Fe3N)の析出回避が困難となり、この場合もHV700以上の硬さの確保が困難になる。
また、生成したγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))は、サイズが300nm以下のγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))が分散した形態となっている必要がある。γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))のサイズがこれより大きい場合にも、HV700以上の硬さの確保が困難になる。なお、析出物観察は後述する実施例に示したように透過電子顕微鏡(TEM)にて行い、これで観察可能な1nm以上の析出物について観察して、300nm以下のγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))の分散の有無が確認できる。
また、本発明において、硬さHVは、荷重25gf(0.245N)、荷重保持時間15sの条件にて測定したビッカース硬さを意味する。
次に、本発明の鉄系材料の製造方法について説明する。
本発明の鉄系材料は、所定の組成を有する鉄系素材に、590℃以上の温度で窒化処理を施して該鉄系素材の一部または全体にN:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下を含有させた後、500℃以下の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後、100〜500℃の温度域に加熱保持してHV700以上の硬質相を形成する方法により好適に製造することができる。
(窒化処理条件)
窒化処理温度を590℃以上とすることにより、鉄系素材中への十分な窒素の拡散速度を
得ることが可能になるとともに、窒化処理中に安定なオーステナイト相を得ることができ、オーステナイト相厚さの確保が可能となる。これによりその後の硬質相形成処理で硬化層厚さの確保が可能となる。ただし、窒化温度を極端に高くすると、窒化処理中の窒化進行速度の制御が困難になるとともに、窒化処理中に組織のオーステナイト粒の粗大化を引き起こし、窒化処理後の鉄系材料の延性および靱性に悪影響を及ぼす。そのため、窒化処理温度は1000℃以下にすることが好ましい。
なお、上記窒化処理としては、ガス窒化法、ガス軟窒化法、プラズマ窒化法、塩浴窒化法等、公知の方法を適用することができるが、本発明の鉄系材料を製造する上では、特に、窒化ポテンシャルの制御が比較的容易でかつ処理コストが低廉な、ガス窒化法を適用することが好ましい。また、鉄系材料中の窒化濃度制御の観点から、窒化処理時間は60〜1000minとすることが好ましい。
(冷却条件)
上記条件で窒化処理を施した鉄系材料の少なくとも表層部は、N:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下を含有するオーステナイト組織が形成される。本発明においては、これを1℃/s以上の冷却速度で500℃以下の温度まで冷却することにより、上記オーステナイト組織を室温近傍まで残留させる。冷却速度が1℃/s未満である場合には、冷却中にフェライト相が形成してしまい、冷却終了時点におけるオーステナイト含有量が減少するため、その後の熱処理により所望の硬度を有する硬質相が得られない。なお、冷却速度の上限値は特に限定しないが、簡易な冷却方法で達成するために、50℃/s以下とすることが好ましい。
冷却停止温度が500℃超である場合には、冷却停止後の放冷時に組織中に粗大なフェライト相が形成されてしまい、冷却後のオーステナイト含有量が減少する。また、冷却速度が1℃/s以上の冷却は、−10℃以上の温度で停止することが望ましい。すなわち、冷却を−10℃未満の低温域まで行うと、オーステナイトの少なくとも一部にマルテンサイト変態が生じる。マルテンサイト自体は、硬質な組織であるが、その後の硬質化処理時および、高温使用環境に曝された場合、焼戻しが進行して硬度が低下し、所望の硬度を得ることが困難となるため、冷却停止温度は−10℃以上であることが好ましい。
なお、1℃/s以上の冷却速度での冷却は、500℃まで行えばよく、500℃に達した後の冷却速度は任意である。
(硬質相形成処理条件)
上記冷却工程を経た鉄系材料は、少なくともその表層部に軟質なオーステナイト組織を有する。しかし、この鉄系材料を100〜500℃の温度域に保持することにより、上記オーステナイト組織がα(フェライト)中に微細なγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))が分散した組織に変化し、HV700以上の硬質相が形成される。保持温度が100℃未満では上記の組織変化が不十分となり、所望の硬度を有する硬質相が形成されない。また、保持温度が500℃を超えると、形成される組織の粗大化を生じるとともに、表層部で脱窒が発生し、やはり硬質相の硬度が不十分となる。また、鉄系材料を所望の組織とするためには、上記温度における保持時間を60min以上とする。上記温度における保持時間を60min未満とすると、組織変化が不十分となり、HV700以上の硬質相が得られない。なお、60000minを超えて保持しても、それ以上の硬度の上昇は望めないため、60000min以下とすることが好ましい。
上記方法においては、フェライトとFe4Nおよび/またはFe4(C,N)すなわち熱的に安定な相により硬質な相が形成されているため、硬質相の形成のために保持された温度で長時間保持された後にも十分な強度を有している。そのため、本発明に係る鉄系材料を用いて機械部品を製造するに際しては、窒化処理前の鉄系素材は比較的軟質であるため、冷間加工を施す場合であっても容易に所望の形状に成形することができる。なお、一部に硬質相を形成する鉄系材料について、硬質相以外の部分に冷間加工を施す場合においては、硬質相形成後に冷間加工を施すことも可能である。さらに、比較的高温に曝される環境で長時間使用した後にも、十分な強度を有する部品を得ることが可能である。
表1に示す化学組成の鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造によりブルームとした。次いで、ビレット圧延を経て、更に圧延によりφ35mmの棒材とし、これを素材とした。こうして得た素材のビッカース硬さを測定するとともに、以下に示す種々の熱処理に供し、特性を調査した。
すなわち、表2に示す条件にて、窒化処理、冷却、その後の硬化熱処理(硬質相形成処理)を行った。窒化処理後の鉄系材料および、硬化熱処理後の鉄系材料について、EPMAを用いて、表面から深さ20μm近傍の窒素濃度(at%)を測定した。また、窒化処理後および、硬化熱処理後の鉄系材料について、表面から深さ20μm部を光学顕微鏡により観察し、構成ミクロ組織の判定を行うとともに、その部分のビッカース硬さを測定した。さらに、硬化熱処理後の鉄系材料については、20μm間隔で深さ方向にビッカース硬さ測定を行い、硬さがHV700を超える領域の厚さを測定した。
ここで、ビッカース硬さの測定はいずれも、荷重25gf(0.245N)、荷重保持時間15sの条件にて行った。
さらにまた、薄膜TEM観察により硬化熱処理後の鉄系材料中に生成したγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))のサイズおよび面積率の測定を行った。サイズ測定は、各実施例について30個以上のγ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))を測定し、サイズが300nm以下であったγ´相の個数の、全γ´相に対する個数比を微細γ´率として求めた。
なお、表1中の材料Lは、代表的な機械構造用鋼であるJIS−S53Cに相当する。当該
材料は、本発明との比較を目的として特性を調査したものであり、素材としての比較には、上記の通り35mmφの棒材とした後に、球状化焼なましを行ったものを用いた。さらに、表2に示すように、焼入れ焼戻しを行った材料について、表層から20μm部のビッカース硬さ、構成ミクロ組織、硬さがHV700を超える領域の厚さを測定した。
Figure 0005840376
Figure 0005840376
本発明条件を満足する鉄系材料(実施例No.1およびNo.10〜22)は、いずれも、代表的機械構造用鋼であるJIS−S53Cの焼なまし材(No.24)よりも低い素材硬さを有しており、冷間加工性に優れている。また、これらの鉄系材料では、窒化→硬化熱処理後には、JIS−S53Cの焼入れ焼戻し材よりも優れた表層部の硬さを有している。
一方、窒化あるいはその後の冷却の条件が適切でない場合(No.2〜6)には、窒化冷却後における表面から20μm部におけるオーステナイト(γ)組織の形成がなされず、その後の硬化熱処理によっても十分な硬さが得られなかった。すなわち、窒化処理温度が低いNo.2および窒化処理時間が短いNo.3は、窒化の進行が不十分であり、十分な窒素濃度が得られなかった。窒化処理温度が高いNo.4では、過剰な窒化の進行に伴い、窒素濃度が本発明範囲を超えてしまい、不適な窒化物(ε(Fe3N、Fe3(C,N)))が窒化処理段階で生成し、硬化処理後もこれが残留して硬さに悪影響を及ぼした。
窒化後冷却条件が不適なNo.5およびNo.6では、冷却途中または冷却完了後にフェライト(α)相が生じ、硬化熱処理後には微細γ´率が低くなって十分な硬さが得られなかった。
また、No.7およびNo.9は、窒化処理後の冷却によりオーステナイト(γ)組織が得られたが、No.7ではその後の硬化熱処理温度が低いため、また、No.9では硬化熱処理時間が短いため、窒化冷却処理で得られたオーステナイトからの組織変化が十分に進行せず、結果として硬化熱処理後の構成ミクロ組織がオーステナイトとなり、十分な硬さが得られなかった。
さらに、No.8の場合、窒化冷却によりオーステナイト組織が得られているものの、その後の硬化熱処理温度が高いため、オーステナイト相からの組織変化によって形成されたフェライト(α)相、および、γ´(Fe4Nおよび/またはFe4(C,N))相が粗大化し、十分な硬さが得られなかった。
また、C量が本発明範囲より低いNo.23では、窒化層の空隙率が高く、窒化層が脆化している。
産業機械や自動車等の機械部品に好適に用いられる機械構造用鉄系材料を提供する。

Claims (4)

  1. C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる材料の表層を窒化して得た硬質相を有し、該硬質相は、N:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下を含有するとともに、構成ミクロ組織がフェライト中に1nm以上300nm以下のFe 4 Nおよび/またはFe 4 (C,N)が面積率で25〜60%分散した組織であり、かつ硬さがHV700以上であることを特徴とする鉄系材料。
    ただし、[C]は材料中のC含有量(at%)
  2. 請求項1に記載の鉄系材料が、更に、
    Cr:0.05mass%以上2.0mass%以下、
    Al:0.005mass%以上0.5mass%以下、
    Ti:0.0005mass%以上0.5mass%以下、
    Nb:0.005mass%以上0.1mass%以下、
    V:0.02mass%以上1.0mass%以下、
    Mo:0.02mass%以上1.0mass%以下、
    Mn:0.02mass%以上2.0mass%以下、
    Si:0.02mass%以上2.0mass%以下、
    Ni:0.02mass%以上2.0mass%以下、
    Cu:0.02mass%以上2.0mass%以下および
    Co:0.02mass%以上2.0mass%以下
    の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料。
  3. C:0.1mass%以上1.5mass%以下を含有し、残部Feおよび不可避的不純物からなる材料に590℃以上の温度で窒化処理を施して該材料の表層にN:(8−[C])at%以上(11−[C])at%以下を含有させた後、500℃以下の温度域まで1℃/s以上の速度で冷却し、その後100〜500℃の温度域に保持して、構成ミクロ組織がフェライト中に1nm以上300nm以下のFe 4 Nおよび/またはFe 4 (C,N)が面積率で25〜60%分散したミクロ組織であり、かつ硬さがHV700以上である硬質相を形成することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
    ただし、[C]は材料中のC含有量(at%)
  4. 請求項3に記載の鉄系材料が、更に、
    Cr:0.05mass%以上2.0mass%以下、
    Al:0.005mass%以上0.5mass%以下、
    Ti:0.0005mass%以上0.5mass%以下、
    Nb:0.005mass%以上0.1mass%以下、
    V:0.02mass%以上1.0mass%以下、
    Mo:0.02mass%以上1.0mass%以下、
    Mn:0.02mass%以上2.0mass%以下、
    Si:0.02mass%以上2.0mass%以下、
    Ni:0.02mass%以上2.0mass%以下、
    Cu:0.02mass%以上2.0mass%以下および
    Co:0.02mass%以上2.0mass%以下
    の中から選択される少なくとも一種以上を含有することを特徴とする鉄系材料の製造方法。
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