JP5768734B2 - 冷鍛窒化用圧延鋼材 - Google Patents

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Description

本発明は、冷間鍛造窒化用圧延鋼材に関する。詳しくは、事前に熱処理することなく圧延ままの状態で冷間鍛造でき、冷間鍛造後に切削加工が施される場合には切削抵抗が低く被削性に優れ、しかも、冷間鍛造と窒化の処理を施された部品(以下、「冷鍛窒化部品」という。)に、高い芯部硬さを具備させることが可能であって、冷鍛窒化部品の素材として用いるのに好適な冷間鍛造窒化用圧延鋼材(以下、「冷鍛窒化用圧延鋼材」という。)に関する。「冷鍛窒化用圧延鋼材」とは、冷間鍛造と窒化を施して用いる圧延ままの状態の鋼材を指す。
本発明でいう「窒化」には「Nを侵入・拡散させる」厳密な意味での「窒化」だけではなく、「NおよびCを侵入・拡散させる」処理である「軟窒化」も含む。このため、以下の説明においては、「軟窒化」を含めて単に「窒化」ということがある。
自動車の摺動部品は、一般的に、熱間鍛造後に切削加工を施し、その後さらに浸炭焼入れなどの表面硬化熱処理を施して製造されている。しかし、近年の地球温暖化抑制を背景とした温室効果ガス削減の潮流に伴い、熱間鍛造や浸炭焼入れのような高い温度での保持を必要とする製法から、冷間鍛造や、窒化、軟窒化のような常温または従来よりも低い温度での熱処理を用いた製法への転換が要望されている。
しかしながら、従来の窒化用鋼には、次に示すような問題があった。
〈1〉窒化は高温のオーステナイト域からの焼入れ処理を行なわない、すなわちマルテンサイト変態を伴う強化ができない表面硬化熱処理である。このため、窒化部品に所望の芯部硬さを確保させるためには多量の合金元素を含有させる必要があり、この場合には冷間鍛造で成形加工することが困難で、熱間鍛造等による成形加工が必要となる。
〈2〉軟窒化は500〜650℃前後の温度域に数時間保持しながら、部品表面から窒素および炭素を侵入・拡散させる表面硬化熱処理である。しかし、部品の芯部はこの温度域に数時間保持されることで焼戻しを受けるため軟化しやすい。このため、軟窒化した部品に高面圧が負荷された場合、内部で、負荷応力が部品の降伏強度を超えてしまうことがある。この時、接触面はへこんで変形する。
そこで、前記した問題点を解消するべく、例えば、特許文献1〜4に窒化に関する技術が開示されている。
特許文献1に、圧延後の硬さがビッカース硬さで200以下であって、軟窒化性と冷間鍛造性が優れた軟窒化用鋼を提供することを目的とする「冷間鍛造性に優れた軟窒化用鋼」が開示されている。上記の「軟窒化用鋼」は、質量%で、C:0.05〜0.25%、Si:0.50%以下、Mn:0.55%以下、Cr:0.50〜2.00%、V:0.02〜0.35%およびAl:0.005〜0.050%を含有し、必要に応じてさらに、Nb:0.02〜0.35%を含有し、残部がFeおよび不純物元素からなるものである。
特許文献2に、軟窒化処理前の冷間鍛造性を高め、軟窒化処理後に十分な耐ピッチング性をもつ「冷間鍛造性および耐ピッチング性に優れた軟窒化用鋼」が開示されている。上記の「軟窒化用鋼」は、質量%で、Cu:2.0%以下(0%を含まない)、Ni:2.0%以下(0%を含まない)を含有する低炭素鋼で、必要に応じてさらに、Al、N、Cr、Mo、V、Nb、Ti、Ca、Zr、Te、BiおよびPbのうちの1種以上を含有するものである。
特許文献3に、「冷間鍛造−軟窒化による機械部品の製造方法」が開示されている。上記の「機械部品の製造方法」は、質量%で、C:0.15〜0.30%、Si:0.2%以下、Mn:0.4〜1.5%、Cr:0.6〜1.5%、s−Al:0.05〜0.20%およびV:0.05〜0.30%を含有し、残部が実質的にFeからなる合金組成を有する窒化鋼を、
1)一時均熱:900±15℃に加熱
2)中間冷却:10℃/秒の以下の速度で冷却
3)二次均熱:680±30℃に加熱
した後、冷間鍛造により部品形状を与え、500〜650℃におけるガス軟窒化により表面を硬化させることからなる製造方法である。
特許文献4に、軟窒化処理により、高い表面硬さと深い有効硬化深さを得られ、冷鍛性、疲労寿命、耐ピッチング性において優れた「軟窒化用鋼」が開示されている。上記の「軟窒化用鋼」は、質量%で、C:0.25%以下、Si:0.30%以下、Mn:0.30〜0.90%、S:0.020%以下、Cr:0.50〜1.50%、Al:0.030〜0.500%、V:0.05〜0.30%、Ti:0.10%以下、N:0.0060%以下、残部がFe及び不純物元素から成り、Ti/Nが4以上を満足するものである。
特開平5−171347号公報 特開平10−306343号公報 特開2006−63378号公報 特開平9−71841号公報
塑性と加工、Vol.22、No.241(1981)、pp.139−144 K.Osakada et al.:Annals of the CIRP、vol.30(1981)No.1、p.135
前述のとおり「冷鍛窒化部品」には、冷間鍛造および必要に応じて切削加工が施され、その後、窒化処理が施される。なお、部品によっては、冷間鍛造の自由端を、軽切削または研磨によって仕上げることもある。
前述の特許文献1で開示されている鋼は、大きな加工度で冷間鍛造を行うと、必ずしも表面粗さを小さくすることができない。このため、表面粗さが大きい場合には、部品によっては、冷間鍛造の自由端に生じた凹凸を、軽切削や研磨によって除去できないことがある。
特許文献2で開示されている鋼には、Cu、Niなどの合金元素が多量に含まれている。このため、大きな加工度で冷間鍛造を行うと、必ずしも、十分な冷間鍛造性が確保できず、問題となる場合がある。
特許文献3で開示されている製造方法は、圧延後の鋼材に対して前記1)〜3)という熱処理を施してから部品形状に冷間鍛造し、その後ガス軟窒化して表面を硬化させる技術である。つまり、冷間鍛造前に、圧延後の鋼材を熱処理する必要があるので、工程が複雑になることに加えて、コストも嵩んでしまう。
特許文献4で開示されている鋼は、冷間鍛造時の変形抵抗に関する検討はなされているものの、大きな加工度で冷間鍛造を行うと、必ずしも表面粗さを小さくすることができない。このため、表面粗さが大きい場合には、部品によっては、冷間鍛造の自由端に生じた凹凸を、軽切削や研磨によって除去できないことがある。
なお、冷間鍛造で成形加工された部品の場合には、コスト削減のために切削加工の工程を省略することが望ましい。しかしながら、全ての冷間鍛造後の部品について、切削加工の工程を省略することは難しい。したがって、冷間鍛造後の部品は、切削抵抗が低く被削性に優れるものであることも求められる。
本発明は、上記現状に鑑みてなされたもので、事前に熱処理することなく圧延ままの状態で冷間鍛造でき、冷間鍛造後の表面粗さが小さく、さらに冷間鍛造後に切削加工が施される場合には切削抵抗が低くて被削性に優れ、しかも、冷間鍛造と窒化の処理を施された部品に、高い芯部硬さを具備させることが可能で、冷鍛窒化部品の素材として用いるのに好適な冷鍛窒化用圧延鋼材を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記した課題を解決するために、種々調査、研究を重ねた。その結果、先ず、下記(a)〜(h)の知見を得た。
(a)事前に熱処理することなく圧延ままの状態で冷間鍛造できるという優れた冷間鍛造性を付与するためには、鋼材の硬さを低くしてビッカース硬さ(以下、「HV」ということがある。)で160以下にすればよい。
(b)圧延ままの鋼材の硬さをHVで160以下にするには、ミクロ組織をフェライトとパーライトからなる混合組織(以下、「フェライト・パーライト組織」ともいう。)にすればよい。
(c)冷間鍛造後の表面粗さには冷間鍛造前の鋼材のフェライト粒径が影響する。フェライト粒径を小さくすることによって、冷間鍛造の自由端に生じた凹凸を軽切削または研磨で除去することができる。
(d)冷間鍛造、冷間引抜きなど冷間加工の種類を問わず、真ひずみで0.5以上の冷間加工を加えれば、圧延ままの鋼材の硬さに拘わらず、加工硬化によるHVの増分(以下、HVの増分を「ΔHV」という。)は50以上となって、冷間加工前と比べて、切削加工時の切削抵抗が低減する。しかし、冷間加工前の鋼材の硬さが過度に低い場合は、冷間加工後も硬さが低く「むしれ」が生じやすくなるため、上記冷間加工による切削抵抗低減効果は小さく、また、却って切削抵抗が高くなることさえあって、この場合には被削性が低下する。なお、「むしれ」とは、切削加工時に被処理材が刃物に粘着しやすくなり、そのままむしり取られる現象をいう。
(e)鋼材のHVは、C、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNの含有量で規定される式と相関を有する。そして、その式の値を特定の範囲に調整すれば、圧延ままの鋼材に優れた冷間鍛造性を具備させることができ、また、冷間鍛造後に切削加工する際に「むしれ」の発生が抑制されて切削抵抗を低減することができるので、良好な被削性が確保される。
(f)前述した自動車の摺動部品には、摺動時に塑性変形し難いことが要求され、塑性変形のし難さは、部品の芯部硬さに依存する。そして、その芯部硬さは、冷間鍛造時の加工硬化により増大させることができ、上記のように、真ひずみで0.5以上の冷間加工を加えれば、圧延ままの鋼材の硬さに拘わらず、加工硬化によるΔHVは50以上になる。
(g)軟窒化処理温度である500〜650℃での数時間の保持中に部品は焼戻しされることになるので、上記の加工硬化によるΔHVは低下する。しかし、上記500〜650℃の温度域でVCやMo2Cを析出させれば、それらの析出硬化作用によって、逆に芯部の硬さを上昇させることができる。
(h)上記窒化処理温度での析出硬化作用を活用して、つまり、VをVCとしておよび/またはMoをMo2Cとして析出させ、窒化処理による芯部のΔHVを適正な範囲に維持して芯部硬さを高めるには、C、MoおよびVの含有量で規定される式の値を特定の範囲に調整すればよい。
本発明は、上記の知見に基づいて完成されたものであり、その要旨は、下記(1)〜(4)に示す冷鍛窒化用圧延鋼材にある。
(1)質量%で、C:0.06〜0.15%、Si:0.02〜0.35%、Mn:0.10〜0.90%、S:0.030%以下、Cr:0.50〜2.0%、V:0.10〜0.50%およびAl:0.025〜0.090%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のP、NおよびOがそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.0080%以下およびO:0.0030%以下であり、さらに、下記の(1)式で表されるFn1が5.0〜10.0、下記の(2)式で表されるFn2が1.8〜9.0である化学組成を有し、ミクロ組織がフェライト・パーライト組織で、フェライトの面積割合が70%以上であり、かつ、フェライトの平均粒径が50μm以下であることを特徴とする、冷鍛窒化用圧延鋼材。
Fn1=35(C+N)+5(Si+Mn)+Cr+3(Cu+Ni)+4(Mo+V)・・・(1)
Fn2={V+(9/20)Mo}/C・・・(2)
ただし、上記の(1)式および(2)式におけるC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNは、その元素の質量%での含有量を意味する。
(2)Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.50%以下を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の冷鍛窒化用圧延鋼材。
(3)Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下およびZr:0.50%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の冷鍛窒化用圧延鋼材。
(4)Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.30%以下およびNi:0.20%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする、上記(1)から(3)までのいずれかに記載の冷鍛窒化用圧延鋼材。
なお、残部としての「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトからなる混合組織を指す。
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、鋼材を事前に熱処理することなく圧延のままで冷間鍛造でき、冷間鍛造後の表面粗さが小さく、さらに冷間鍛造後に切削加工が施される場合には切削抵抗が低くて被削性に優れ、しかも、冷間鍛造と窒化の処理を施された部品に、高い芯部硬さを具備させることが可能である。このため、冷鍛窒化部品の素材として用いるのに好適である。
実施例で冷間鍛造性および冷間鍛造後の側面の表面粗さを測定するのに用いた平滑試験片の形状を示す図である。図中の寸法の単位は「mm」である。 実施例で軟窒化処理後の芯部硬さを測定するのに用いたブロック状試験片の形状を示す図である。図中の寸法の単位は、「Rq:0.10〜0.20μm」と記載の箇所を除いて「mm」である。 実施例で図2のブロック状試験片に施した、ガス軟窒化処理のヒートパターンを示す図である。 (1)式で表されるFn1と実施例の調査1における圧延後の鋼材の硬さ(HV)との関係を整理した図である。 (1)式で表されるFn1と実施例の調査5における冷間引抜き加工後の切削抵抗(主分力)との関係を整理した図である。 (2)式で表されるFn2と、実施例の調査5および調査6におけるガス軟窒化処理前後のΔHV、つまり「軟窒化処理後のHV−冷間引抜き加工後のHV」との関係を整理した図である。
以下、本発明の各要件について詳しく説明する。なお、各元素の含有量の「%」は「質量%」を意味する。
(A)化学組成
C:0.06〜0.15%
Cは、冷鍛窒化部品の強度確保のために必須の元素であり、0.06%以上の含有量が必要である。しかし、Cの含有量が多すぎると硬さが高くなりすぎて冷間鍛造性が低下する。このため、上限を設けて、Cの含有量を0.06〜0.15%とした。冷間鍛造性がより重視されるときは、Cの含有量は0.13%以下にすることが好ましい。
Si:0.02〜0.35%
Siは、脱酸作用を有する。この効果を得るには、0.02%以上のSi含有量が必要である。しかし、Siの含有量が多すぎると、フェライトが硬くなり冷間鍛造性を低下させる。このため、上限を設けて、Siの含有量を0.02〜0.35%とした。なお、Siの含有量は0.15%以下にすることが好ましい。
Mn:0.10〜0.90%
Mnは、冷鍛窒化部品の強度を確保する作用および脱酸作用を有する。これらの効果を得るには、0.10%以上のMn含有量が必要である。しかし、Mnの含有量が多すぎると、フェライトの硬さが高くなりすぎて冷間鍛造性が低下する。このため、上限を設けて、Mnの含有量を0.10〜0.90%とした。なお、冷間鍛造性が重視される場合には、Mnの含有量は0.70%以下にすることが好ましい。
S:0.030%以下
Sは、鋼に不純物として含有される元素である。また、Sは含有すると、Mnと結合してMnSを形成し、被削性を向上させる作用を有するものの、その含有量が0.030%を超えると、粗大なMnSを形成して、冷間鍛造性が低下する。そのため、Sの含有量を0.030%とした。なお、Sの含有量は、被削性がより重視されるときは、0.010%以上にすることが好ましく、また冷間鍛造性が重視される場合は、0.015%以下とすることが好ましい。
Cr:0.50〜2.0%
Crは、窒化での表面硬さを高め、冷鍛窒化部品の耐摩耗性を向上させる効果がある.Crの含有量が0.50%未満では前記の効果を得ることができない。一方、Crの含有量が2.0%を超えると、硬くなって冷間鍛造性が低下する。そのため、Crの含有量を0.50〜2.0%とした。なお、冷間鍛造性がより重視される場合には、Crの含有量は1.5%以下とすることが好ましい。
V:0.10〜0.50%
Vは、窒化温度域でCと結合し、VCとして析出することで、窒化後の芯部硬さを向上させる効果がある。この効果を得るには、Vを0.10%以上含有する必要がある。しかし、Vの含有量が多いと硬くなって冷間鍛造性が低下する。そのため、上限を設けて、Vの含有量を0.10〜0.50%とした。なお、Vの含有量は0.40%以下とすることが好ましい。
Al:0.010〜0.090%
Alは、窒化での表面硬さを高め、冷鍛窒化部品の耐摩耗性を向上させる効果がある。この効果を得るには、Alを0.010%以上含有させる必要がある。しかし、Alの含有量が多すぎると、窒化での硬化層が浅くなり耐摩耗性が低下する問題が生じる。そのため、上限を設けて、Alの含有量を0.010〜0.090%とした。なお、Alの含有量は、0.020%以上とすることが好ましく、また0.050%以下とすることが好ましい。
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材の一つは、上述のCからAlまでの元素を含有し、残部がFeおよび不純物からなり、かつ後述するFn1およびFn2についての条件を満足する化学組成を有するものである。なお、既に述べたように、「Feおよび不純物」における「不純物」とは、鋼材を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入するものを指す。
ただし、本発明においては、不純物中のP、NおよびOは、厳しく制限する必要があり、その含有量をそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.0080%以下およびO:0.0030%以下にする必要がある。
以下、このことについて説明する。
P:0.030%以下
Pは、鋼に含有される不純物であり、結晶粒界に偏析して鋼を脆化させ、特に、Pの含有量が0.030%を超えると、脆化の程度が顕著になる場合がある。したがって、Pの含有量を0.030%以下とした。なお、Pの含有量は0.020%以下とすることが好ましい。
N:0.0080%以下
Nは、鋼に含有される不純物であり、フェライト中に固溶することにより、フェライト硬さを増大させ、冷間鍛造性を低下させる。また、Vと結合して固溶温度の高いVNを形成するため、固溶V量が低減し、窒化温度でのVCの析出硬化の効果が得にくくなる。そのため、上限を設けて、Nの含有量を0.0080%以下とした。なお、Nの含有量は0.0070%以下とすることが好ましい。
O:0.0030%以下
Oは、鋼に含有される不純物であり、酸化物系の介在物を形成し、冷間鍛造時の割れの原因となることがある。特に、Oの含有量が0.0030%を超えると、粗大な酸化物が生成して冷間鍛造性が低下する。そのため、Oの含有量を0.0030%以下とした。なお、Oの含有量は0.0020%以下とすることが好ましい。
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材の他の一つは、上述のFeの一部に代えて、Mo、Ti、Nb、Zr、CuおよびNiのうちの1種以上の元素を含有し、かつFn1およびFn2についての条件を満足する化学組成を有するものである。
以下、任意元素である上記Mo、Ti、Nb、Zr、CuおよびNiの作用効果と、含有量の限定理由について説明する。
Mo:0.50%以下
Moは、窒化温度でCと結合して、炭化物(Mo2C)を形成し、窒化後の芯部硬さを増大させる効果がある。したがって、Moを含有させてもよい。しかしながら、0.50%を超えてMoを含有すると、硬くなって冷間鍛造性が低下する。そのため、含有させる場合のMoの量を0.50%以下とした。なお、冷間鍛造性が重視される場合、含有させる場合のMoの量は0.40%以下とすることが好ましい。
一方、前記したMoの効果を安定して得るためには、含有させる場合のMoの量は0.05%以上とすることが好ましい。
Ti、NbおよびZrは、いずれも、表面硬さを高める作用を有する。このため、これらの元素を含有させてもよい。以下、上記のTi、NbおよびZrについて説明する。
Ti:0.50%以下
Tiは、窒化中に表面から侵入、拡散するNと結合して窒化物を生成することで表面硬さを高めるのに有効な元素である。したがって、Tiを含有させてもよい。しかしながら、0.50%を超える量のTiを含有させても上記の効果は飽和してコストが嵩むばかりである。そのため、含有させる場合のTiの量を0.50%以下とした。なお、含有させる場合のTiの量は0.20%以下とすることが好ましい。
一方、前記したTiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のTiの量は0.05%以上とすることが好ましい。
Nb:0.50%以下
Nbは、窒化中に表面から侵入、拡散するNと結合して窒化物を生成することで表面硬さを高めるのに有効な元素である。したがって、Nbを含有させてもよい。しかしながら、0.50%を超える量のNbを含有させても上記の効果は飽和してコストが嵩むばかりである。そのため、含有させる場合のNbの量を0.50%以下とした。なお、含有させる場合のNbの量は0.10%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNbの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNbの量は0.02%以上とすることが好ましい。
Zr:0.50%以下
Zrも窒化中に表面から侵入、拡散するNと結合して窒化物を生成することで表面硬さを高めるのに有効な元素である。したがって、Zrを含有させてもよい。しかしながら、0.50%を超える量のZrを含有させても上記の効果は飽和してコストが嵩むばかりである。そのため、含有させる場合のZrの量を0.50%以下とした。なお、含有させる場合のZrの量は0.10%以下とすることが好ましい。
一方、前記したZrの効果を安定して得るためには、含有させる場合のZrの量は0.02%以上とすることが好ましい。
上記のTi、NbおよびZrは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種以上の複合で含有させることができる。含有させる場合の合計量は、1.50%以下であってもよいが、0.40%以下とすることが好ましい。
CuおよびNiは、いずれも、芯部硬さを向上させる作用を有する。このため、これらの元素を含有させてもよい。以下、上記のCuおよびNiについて説明する。
Cu:0.30%以下
Cuは、芯部硬さを増大させる作用を有する。したがって、Cuを含有させてもよい。しかしながら、0.30%を超えてCuを含有すると、硬くなって冷間鍛造性が低下することに加えて、熱間脆性が生じやすくなる。そのため、含有させる場合のCuの量を0.30%以下とした。なお、冷間鍛造性が重視される場合、含有させる場合のCuの量は0.20%以下とすることが好ましい。
一方、前記したCuの効果を安定して得るためには、含有させる場合のCuの量は0.10%以上とすることが好ましい。
Ni:0.20%以下
Niは、芯部硬さを増大させる作用を有する。Niには、Cuによる熱間脆性の発生を抑制する作用もある。したがって、Niを含有させてもよい。しかしながら、0.20%を超えてNiを含有すると、硬くなって冷間鍛造性が低下する。そのため、含有させる場合のNiの量を0.20%以下とした。なお、含有させる場合のNiの量は0.10%以下とすることが好ましい。
一方、前記したNiの効果を安定して得るためには、含有させる場合のNiの量は0.05%以上とすることが好ましい。
上記のCuおよびNiは、そのうちのいずれか1種のみ、または、2種の複合で含有させることができる。CuとNiを複合して含有させる場合の合計量は、0.50%以下であってもよいが、0.30%以下とすることが好ましい。また、Cuを含有させる場合には、前記したCuによる熱間脆性の発生を避けるために、Niを複合して含有させることが好ましい。
Fn1:5.0〜10.0
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、
Fn1=35(C+N)+5(Si+Mn)+Cr+3(Cu+Ni)+4(Mo+V)・・・(1)
で表されるFn1が5.0〜10.0でなければならない。ただし、(1)式におけるC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNは、その元素の質量%での含有量を意味する。
上記のFn1は、圧延後の鋼材の硬さ(HV)の指標となるパラメータであり、Fn1が大きいとHVも高くなる。Fn1が大きくなって、特に、10.0を超えると、硬さが高くなり過ぎ、冷間鍛造性が低下する。さらに、冷間鍛造後の切削抵抗が増大して、被削性の低下も生じる。しかしながら、Fn1が10以下の場合には、圧延後の鋼材の硬さが安定してHVで160以下になって、事前に熱処理することなく冷間鍛造できるという優れた冷間鍛造性が得られる。一方、Fn1が過度に小さくなって、特に、5.0を下回ると、圧延後の鋼材の硬さは容易にHVで100を下回るので冷間鍛造性には優れるものの、冷間鍛造後に切削加工する際に「むしれ」が生じやすくなり、切削抵抗が増大して被削性が低下することになる。これらのことから、Fn1を5.0〜10.0とした。Fn1は、6.0以上であることが好ましく、また9.5以下であることが好ましい。
Fn2:1.8〜9.0
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、
Fn2={V+(9/20)Mo}/C・・・(2)
で表されるFn2が1.8〜9.0でなければならない。ただし、(2)式におけるC、MoおよびVは、その元素の質量%での含有量を意味する。
上記のFn2は、冷間鍛造後の窒化による芯部の硬さの増分、つまり、窒化による芯部のΔHVの指標となるパラメータである。Fn2が1.8〜9.0であれば、窒化中に芯部でΔHVが20〜60という適度の析出硬化が生じるため、冷鍛窒化部品の摺動時における塑性変形量を低減することができる。
Fn2が1.8未満の場合は、鋼材のC含有量に対してVおよびMoの含有量が少なく十分な析出硬化が生じないため、ΔHVが20を下回り、冷鍛窒化部品の摺動時における塑性変形量が大きくなってしまう。また、Fn2が9.0を超える場合は、鋼材のV、Moの含有量に対して、Cの含有量が少なく、やはり十分な析出硬化が生じないため、ΔHVが20を下回って、冷鍛窒化部品の摺動時における塑性変形量が大きくなってしまう。Fn2は、2.0以上であることが好ましく、また8.0以下であることが好ましい。
(B)ミクロ組織
(B−1)相
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、ミクロ組織(相)が、フェライト・パーライト組織でなければならない。たとえ、前記(A)項に記載の化学組成を有していても、ミクロ組織に、低温変態組織、具体的には、ベイナイトまたは/およびマルテンサイトが含まれる場合には、硬さが高いため、事前に熱処理しなければ冷間鍛造することができないし、冷間鍛造できたとしても、その後の切削加工時の被削性が極めて低下してしまうからである。
フェライト・パーライト組織に占めるパーライトの面積割合が多くなって、特に、50%を超えると、圧延後の鋼材の硬さがHVで160を超えて、冷間鍛造性が低下する場合があるため、フェライト・パーライト組織における主相(つまり、面積割合で50%を超える相)は、フェライトであることが好ましい。フェライト・パーライト組織において、フェライトの面積割合が70%以上であれば、極めて好ましい。
なお、鋼が前記(A)項に記載の化学組成を有している場合、、例えば、後述する製造方法によれば、フェライト・パーライト組織に占めるフェライトの面積割合の上限は、85%程度となる。既に述べたように、「フェライト・パーライト組織」とは、フェライトとパーライトからなる混合組織を指す。
上記の「相」は、例えば、圧延材から試料を切り出し、適宜の切断面が被検面になるように鏡面研磨した後、ナイタルで腐食してミクロ組織を現出させて、光学顕微鏡を用いて観察することによって同定することができる。また、フェライトの面積割合は、上記の光学顕微鏡観察して撮影した写真を通常の方法で画像処理して求めることができる。
(B−2)フェライトの平均粒径
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、ミクロ組織であるフェライト・パーライト組織におけるフェライトの平均粒径が50μm以下でなければならない。たとえ、ミクロ組織が、フェライト・パーライト組織であっても、フェライトの平均粒径が50μmを超えると、冷間鍛造後の表面粗さが大きくなるため、冷間鍛造の自由端に生じた凹凸を軽切削または研磨で除去することができないからである。上記フェライトの平均粒径は30μm以下であることが好ましい。
なお、鋼が前記(A)項に記載の化学組成を有している場合、例えば、後述する製造方法によれば、フェライト・パーライト組織におけるフェライトの平均粒径の下限は、16μm程度となる。
上記「フェライトの平均粒径」は、例えば、圧延材から試料を切り出し、適宜の切断面が被検面になるように鏡面研磨した後、ナイタルで腐食してミクロ組織を現出させ、次いで、光学顕微鏡を用いて、倍率1000倍でランダムに5視野観察して撮影した写真を通常の方法で画像処理して個々のフェライト粒の面積を算出し、円形に換算することによって求めることができる。
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、例えば、次に述べる方法によって製造することができる。
通常の方法によって、(A)項に記載の化学組成を有する鋼を溶製した後、連続鋳造して鋳片とし、次いで、その鋳片を1250℃以上の温度で加熱して分塊圧延して、鋼片を作製する。燃料費が嵩むため、分塊圧延の加熱温度は1350℃以下が好ましい。
このようにして得た鋼片を、1000〜850℃の温度域で熱間圧延を開始し、総減面率が50%以上となるように熱間圧延して仕上げ圧延を行った後、800〜500℃の温度域における平均冷却速度が0.8〜1.5℃/sとなる条件で冷却する。なお、上記の「総減面率」は、鋼片面積からの減面率を指す。
そして、本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材を素材として、冷間鍛造によって、例えば、真ひずみで0.5以上、好ましくは0.7以上の加工を施して部品形状にし、必要に応じて切削加工、研磨を施し、その後、通常の方法で400〜650℃で1〜30時間の窒化処理を施すことによって、冷鍛窒化部品を製造することができる。
以下、実施例によって本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
表1に示す化学成分を有する鋼1〜21を180kg真空溶解炉によって溶製し、インゴットに鋳造した。
表1中の鋼1〜11は、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼であり、一方、鋼12〜21は、化学組成が本発明で規定する条件から外れた比較例の鋼である。
Figure 0005768734
各インゴットは、1250℃で5時間保持する溶体化処理を施して均質化した後、熱間鍛造によって、直径が55mmで長さが300mmの丸棒を製作した。
次いで上記の直径55mmの各丸棒を、1250℃に30分保持し、孔型圧延機を用いて、鋼5に関しては、1200〜850℃の種々の温度から圧延を開始して、また、その他の鋼に関しては、900℃から圧延を開始して、いずれも直径38mmの丸棒に仕上げ、その後空冷した。この時の丸棒表面の800〜500℃の温度域における平均冷却速度は0.8〜1.5℃/sであった。なお、上記直径55mmの丸棒を熱間圧延して直径38mmの丸棒に仕上げた際の総減面率は52%である。
このようにして得た鋼1〜21の直径が38mmの各丸棒から、圧延ままの状態で各種試験片を採取した。
先ず、丸棒を軸方向に対して垂直に切断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨し、この試料を圧延後の硬さ測定および組織観察に供した。
また、冷間鍛造性および冷間鍛造後の側面の表面粗さを測定するために、図1に示す形状の平滑試験片を、丸棒と試験片の軸方向を揃えて軸心部分から切り出した。なお、図1中の寸法の単位は「mm」であり、また、仕上記号「▽▽」および「▽▽▽」は、JIS B 0601(1982)の解説表1に記載されていた表面粗さを示す「三角記号」である。
さらに、上記のようにして得た鋼1〜21の直径が38mmの各丸棒を、圧延ままの状態で直径35mmにピーリング加工し、酸洗および潤滑処理を施した後、直径が24.0mmとなるよう冷間で引抜き加工(以下、引抜き加工を単に「引抜き」という。)を施した。なお、直径35mmから24.0mmに引抜きした際の総減面率は53%(平均の真ひずみは0.9に相当)である。
冷間引抜き後の丸棒は、硬さ測定および旋削による切削抵抗測定に供した。さらに、上記引抜き後の丸棒からは、図2に示す形状のブロック状試験片を切り出し、図3に示すヒートパターンでガス軟窒化処理した後、芯部硬さの測定に供した。
なお、図2中の寸法の単位は、「Rq:0.10〜0.20μm」と記載の箇所を除いて「mm」である。また、仕上記号「▽」は、JIS B 0601(1982)の解説表1に記載されていた表面粗さを示す「三角記号」を、そして、「▽」に付した「Rq:0.10〜0.20μm」は、JIS B 0601(2001)に規定される二乗平均平方根粗さ「Rq」が0.10〜0.20μmであることを意味する。
また、図3における「120℃油冷却」は油温120℃の油中に投入して冷却したことを示す。
以下、調査内容について詳しく説明する。
調査1:圧延後の硬さ測定
圧延後の鋼1〜21の直径38mmの丸棒の、前記樹脂に埋め込んで鏡面研磨した断面の中心部1点とR/2部(「R」は丸棒の半径を表す。)4点の計5点について、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さを測定し、5点の算術平均値を圧延後のHVと定義した。なお、圧延後の硬さは、HVで100〜160を目標とした。
調査2 圧延後のミクロ組織観察
圧延後の鋼1〜21の直径38mmの丸棒の、前記樹脂に埋め込んで鏡面研磨した断面をナイタルで腐食し、倍率を1000倍として光学顕微鏡で径方向に5視野観察して「相」を同定した。
また、得られたミクロ組織写真を通常の方法で画像処理して、各視野でのフェライトの面積割合を求め、さらに、個々のフェライト粒の面積を算出して円形に換算することで、各視野での平均フェライト粒径を算出した。そして、上記5視野の平均フェライト粒径を算術平均して、フェライトの平均粒径を求めた。
調査3:圧延後の変形抵抗測定
圧延後の鋼1〜21の直径38mmの丸棒から採取した図1に示す形状の平滑試験片を冷間圧縮(冷間鍛造)して、変形抵抗を調査した。この時、圧縮面の滑りを拘束するため日本塑性加工学会の冷間据え込み試験法の暫定基準である非特許文献1を参考に、同心円溝付きの圧縮板を用いた。10%刻みで10〜70%の圧縮率(平均の真ひずみは0.13〜1.40に相当)で冷間圧縮し、プレスに取り付けられたロードセルでそのときの荷重を計測した。荷重は小坂田らの提案した非特許文献2に準拠して応力に換算した。なお、試験片中心部の相当塑性ひずみの値が1となるときの応力を変形抵抗として定義した。なお、圧延後の変形抵抗は550MPa以下を目標とした。
調査4:冷間鍛造した場合の側面の表面粗さ測定
圧延後の鋼1〜21の直径38mmの丸棒から採取した図1に示す形状の平滑試験片を高さ4.2mmまで80%の圧縮率(平均の真ひずみは2.23に相当)で冷間圧縮(冷間鍛造)した。この時、圧縮板には平滑な板を用い、圧縮板には事前に二硫化モリブデンを塗布した。高さ4.2mmまで冷間圧縮した試験片は、超音波洗浄した後、側面部の表面粗さを軸方向に測定した。なお、触針先端半径2μm、測定長さは1.0mm、測定速度は0.3mm/s、傾斜補正は最小自乗曲線補正とし、粗さ曲線を採取した。得られた粗さパラメータのうち、JIS B 0601(2001)に記載の最大高さ粗さ(「RZ」)を冷間鍛造後の側面の表面粗さとした。なお、冷間鍛造した場合の側面の表面粗さは、RZが10μm以下であることを目標とした。
調査5:冷間引抜き後の硬さ測定
冷間引抜きした直径が24mmの丸棒を軸方向に対して垂直に切断し、切断面が被検面になるように樹脂に埋め込んだ後、鏡面研磨し、断面の中心部1点とR/2部4点の計5点について、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を9.8Nとしてビッカース硬さを測定し、5点の算術平均値を冷間引抜き後のHVとした。なお、冷間引抜き後の硬さは、HVで200以上を目標とした。
調査6:冷間引抜き後の切削抵抗測定と「むしれ」発生の調査
冷間引抜きした直径が24mmの丸棒から長さ400mmの円柱状試験片を切り出し、旋削加工を実施して、切削抵抗を測定するとともに「むしれ」の発生を調査した。切削条件は、P20種の超硬工具を使用して、20倍に希釈した水溶性エマルジョンによる湿式加工(供給量:20L/min)、切削速度を150m/min、送りを0.20mm/rev、切り込み量を0.8mmとした。なお、旋削加工中に超硬工具にかかる反力のうち、円周方向反力である主分力の値を切削動力計で測定し、これを切削抵抗とした。なお、冷間引抜き後の切削抵抗は600N以下を目標とした。また、「むしれ」の発生がないことを目標とした。
調査7:ガス軟窒化後の芯部硬さ測定
冷間引抜きした直径が24mmの丸棒から採取後、図3に示すヒートパターンでガス軟窒化処理した、図2に示す形状のブロック状試験片を中央部で横断し、樹脂に埋め込んで鏡面研磨した。軟窒化表面から3mm位置にある任意の5点について、JIS Z 2244(2009)に記載の「ビッカース硬さ試験−試験方法」に準拠して、試験力を2.94Nとしてビッカース硬さを測定し、5点の算術平均値を軟窒化後の芯部のHVとした。なお、軟窒化後の芯部硬さはHVで250以上を目標とした。
表2に、上記の各試験結果をまとめて示す。なお、表2には、直径55mmの丸棒を1250℃に30分保持し、孔型圧延機を用いて直径38mmの丸棒に仕上げた際の圧延開始温度を併記した。
図4に、(1)式で表されるFn1と調査1における圧延後の硬さ(HV)との関係を整理して、また、図5に、Fn1と調査5における冷間引抜き後の切削抵抗(主分力)との関係を整理して、それぞれ示す。さらに、図6に、(2)式で表されるFn2と、調査5および調査6における軟窒化処理前後のHVの増分(ΔHV)、つまり「軟窒化処理後のHV−冷間引抜き後のHV」との関係を整理して示す。
Figure 0005768734
表2から、本発明で規定する条件を満たす試験記号C〜Pの「本発明例」の場合は、圧延後の特性(硬さ(HV)、変形抵抗)、冷間鍛造した場合の側面の表面粗さ、冷間引抜き後の特性(硬さ(HV)、切削抵抗および「むしれ」)、軟窒化処理後の芯部硬さ(HV)の全てが目標を達成していることが明らかである。
これに対して、本発明で規定する条件から外れた「比較例」の試験記号A、BおよびQ〜Zは、目標とする圧延後の特性(硬さ(HV)、変形抵抗)、冷間鍛造した場合の側面の表面粗さ、冷間引き抜き後の特性(硬さ(HV)、切削抵抗および「むしれ」)、軟窒化処理後の芯部硬さ(HV)のいずれかが達成できていない。
すなわち、試験記号AおよびBは、化学組成が本発明で規定する範囲内にある鋼5を用いて圧延したものであるが、圧延後の平均フェライト粒径がそれぞれ、97.3μmおよび81.5μmと大きく、本発明で規定する条件から外れているため、冷間鍛造した場合の側面の表面粗さが大きい。
試験記号Qは、用いた鋼12のC含有量が0.02%、Fn1が4.8であり、いずれも本発明で規定する範囲よりも低いので、圧延後の硬さもHVで98と低い。このため、冷間引抜き後の硬さもHVで195と低くなって、旋削加工時に「むしれ」が生じて、切削抵抗は744Nと高い。また、前記鋼12のFn2が11.0で、本発明で規定する範囲よりも大いので、軟窒化後の芯部硬さがHVで213と低い。
試験記号Rは、用いた鋼13のCu含有量が0.50%、Ni含有量が0.30%、Fn1が11.1であり、いずれも本発明で規定する範囲よりも高い。このため、圧延後の硬さがHVで183と高く、また、変形抵抗が560MPaと高い。さらに、切削抵抗も618Nと高い。
試験記号Sは、、用いた鋼14のN含有量が0.0120%で本発明で規定する範囲よりも高く、Fn2が1.3で本発明で規定する範囲よりも低い。このため、軟窒化後の芯部硬さがHVで211と低い。
試験記号Tは、用いた鋼15のV含有量が0.05%、Fn2が0.4であり、いずれも本発明で規定する範囲よりも低い。この結果、軟窒化後の芯部硬さがHVで189と低い。
試験記号Uは、用いた鋼16のC含有量が0.17%、V含有量が0.60%、Fn1が12.7であり、いずれも本発明で規定する範囲よりも高い。このため、圧延後の硬さがHVで175と高く、また、変形抵抗が559MPaと高い。さらに、切削抵抗も607Nと高い。
試験記号Vは、用いた鋼17のC含有量が0.17%、Mn含有量が1.00%、Fn1が14.2であり、いずれも本発明で規定する範囲よりも高い。このため、圧延後の硬さがHVで178と高く、また、変形抵抗が591MPaと高い。さらに、切削抵抗も613Nと高い。
試験記号Wは、用いた鋼18のFn1が12.4で本発明で規定する範囲よりも高い。このため、圧延後の硬さがHVで178と高く、また、変形抵抗が577MPaと高い。さらに、切削抵抗も620Nと高い。
試験記号Xは、用いた鋼19のFn2が1.3で本発明で規定する範囲よりも低い。このため、軟窒化処理時の析出硬化量が小さくなって、軟窒化後の芯部硬さは、HVで230と低い。
試験記号Yは、用いた鋼20のFn2が10.4で本発明で規定する範囲よりも高い。このため、軟窒化処理時の析出硬化量が小さくなって、軟窒化後の芯部硬さは、HVで230と低い。
試験記号Zは、用いた鋼21のFn1が4.9で本発明で規定する範囲よりも低いので、圧延後の硬さがHVで98と低い。このため、冷間引抜き後の硬さがHVで196と低くなり、旋削加工時に「むしれ」が生じて、切削抵抗は660Nと高い。
本発明の冷鍛窒化用圧延鋼材は、鋼材を事前に熱処理することなく圧延ままの状態で冷間鍛造でき、冷間鍛造後の表面粗さが小さく、さらに冷間鍛造後に切削加工が施される場合には切削抵抗が低くて被削性に優れ、しかも、冷間鍛造と窒化の処理を施された部品に、高い芯部硬さを具備させることが可能である。このため、冷鍛窒化部品の素材として用いるのに好適である。

Claims (4)

  1. 質量%で、C:0.06〜0.15%、Si:0.02〜0.35%、Mn:0.10〜0.90%、S:0.030%以下、Cr:0.50〜2.0%、V:0.10〜0.50%およびAl:0.025〜0.090%を含有し、残部はFeおよび不純物からなり、不純物中のP、NおよびOがそれぞれ、P:0.030%以下、N:0.0080%以下およびO:0.0030%以下であり、さらに、下記の(1)式で表されるFn1が5.0〜10.0、下記の(2)式で表されるFn2が1.8〜9.0である化学組成を有し、ミクロ組織がフェライト・パーライト組織で、フェライトの面積割合が70%以上であり、かつ、フェライトの平均粒径が50μm以下であることを特徴とする、冷鍛窒化用圧延鋼材。
    Fn1=35(C+N)+5(Si+Mn)+Cr+3(Cu+Ni)+4(Mo+V)・・・(1)
    Fn2={V+(9/20)Mo}/C・・・(2)
    ただし、上記の(1)式および(2)式におけるC、Si、Mn、Cu、Ni、Cr、Mo、VおよびNは、その元素の質量%での含有量を意味する。
  2. Feの一部に代えて、質量%で、Mo:0.50%以下を含有することを特徴とする、請求項1に記載の冷鍛窒化用圧延鋼材。
  3. Feの一部に代えて、質量%で、Ti:0.50%以下、Nb:0.50%以下およびZr:0.50%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする、請求項1または2に記載の冷鍛窒化用圧延鋼材。
  4. Feの一部に代えて、質量%で、Cu:0.30%以下およびNi:0.20%以下のうちの1種以上を含有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれかに記載の冷鍛窒化用圧延鋼材。
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