JP3217943B2 - 被削性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特性に優れる機械構造用鋼の製造方法 - Google Patents

被削性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特性に優れる機械構造用鋼の製造方法

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JP3217943B2 JP20418595A JP20418595A JP3217943B2 JP 3217943 B2 JP3217943 B2 JP 3217943B2 JP 20418595 A JP20418595 A JP 20418595A JP 20418595 A JP20418595 A JP 20418595A JP 3217943 B2 JP3217943 B2 JP 3217943B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、被削性、冷間鍛造性お
よび焼き入れ・焼き戻し後の疲労強度特性を同時に改善
した、自動車等に使われる機械部品の素材として有用な
機械構造用鋼の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】機械構造用鋼は、切削や冷間鍛造によっ
て所定の形状に加工され、その後、焼き入れ・焼き戻し
処理されて、産業機械や自動車等の機械部品に供され
る。したがって、この鋼には、切削性、冷間鍛造性及び
焼き入れ・焼き戻し後の機械的特性、特に耐疲労強度が
要求される。このうち、被削性を改善する手段として
は、鋼中にPb, S,Bi, P等の快削性元素を単独または
複合添加する方法が一般的である。特に、Pbは被削性を
極めて改善する作用があることから多用される。しかし
Pbは、人体に有害な元素であるために、鋼材の製造工程
や部品の加工工程において大がかりな排気設備を必要と
するだけでなく、鋼材のリサイクルの上でも多大な問題
を抱えている。他方、これら元素は、鋼材の冷間鍛造性
の改善のためには有害である。このように快削性と冷間
鍛造性は一般に相矛盾する性質であるが、機械構造用鋼
はこれらの性質を兼ね備える必要がある。この問題を解
決するために、黒鉛鋼が提案されており、たとえば、特
開昭51-57621号公報、特開平03-140411 号公報、特開平
03-146618 号公報に記載の提案がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、発明者らの検
討によれば、これらの方法によるのでは、機械構造用鋼
としての特性、特に耐疲労特性において十分ではなかっ
た。すなわち、特開昭51-57621号公報記載の方法による
のでは、黒鉛粒の微細化を通じて、上記諸特性の改善を
目指すためには、黒鉛化処理前の焼き入れ処理が不可欠
であるという新たな問題をはらんでいた。また、特開平
03-140411号公報記載の方法は、特定の成分組成と焼鈍
処理を組み合わせる方法であるが、得られる黒鉛粒径は
28〜35μmと大きく、冷間加工性に劣り、焼き入れ・焼
き戻し後の疲労強度も十分でなかった。
【0004】そこで、本発明の目的は、従来技術が抱え
ている上述した問題,特に黒鉛鋼が抱えている問題を有
利に解決しようとするものであって、冷間鍛造性を害す
ることなく、従来のPb添加快削鋼と同等以上の被削性
と、優れた疲労強度特性を、焼き入れなどの前処理を施
さないでも得られる、機械構造用鋼の製造方法を提案す
ることにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明における要旨構成
は以下の通りである。 (1) C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt%、M
n:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、A
l:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、P≦0.020 w
t%、 S≦0.035 wt%、N:0.0015〜0.0150wt
%を含有し、残部がFeと不可避的不純物からなる成分組
成の鋼片を、BNおよびAlNの固溶限以上の温度に加熱し
て熱間圧延し、室温まで冷却後、 800〜980 ℃の温度域
に加熱して熱間圧延し、その後650 〜740 ℃の温度域に
加熱して5時間以上保持することを特徴とする被削性、
冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特性に優
れる機械構造用鋼の製造方法。
【0006】 (2) C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、 P≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 を含み、かつ下記a群〜e群の少なくとも1群から選ん
だ1種または2種以上を含有し、残部がFeと不可避的不
純物からなる成分組成の鋼片を、BNおよびAlN の固溶限
以上の温度に加熱して熱間圧延し、室温まで冷却後、 8
00〜980 ℃の温度域に加熱して熱間圧延し、その後650
〜740 ℃の温度域に加熱して5時間以上保持することを
特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻
し後の疲労特性に優れる機械構造用鋼の製造方法。 a群…Ni:0.1 〜3.0 wt%、Cu:0.1 〜3.0 wt%、Co:
0.1 〜3.0 wt%のうちの1種または2種以上 b群…Mo:0.1 〜1.0 wt% c群…V:0.05〜0.5 wt%、Nb:0.005 〜0.05wt%のう
ちの1種または2種 d群…Ti:0.005 〜0.05wt%、Zr:0.005 〜0.2 wt%の
うちの1種または2種 e群…REM :0.0005〜0.2 wt%
【0007】(3) C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜
2.0 wt%、Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.01
50wt%、Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、P
≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、N:0.0015〜
0.0150wt%を含有し、残部がFeと不可避的不純物からな
る成分組成の鋼片を、BNおよびAlNの固溶限以上の温度
に加熱して熱間圧延し、引き続き 800〜980 ℃の温度域
から熱間圧延し、その後650 〜740 ℃の温度域に加熱し
て5時間以上保持することを特徴とする被削性、冷間鍛
造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特性に優れる機
械構造用鋼の製造方法。
【0008】 (4) C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、 P≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 を含み、かつ下記a群〜e群の少なくとも1群から選ん
だ1種または2種以上を含有し、残部がFeと不可避的不
純物からなる成分組成の鋼片を、BNおよびAlN の固溶限
以上の温度に加熱して熱間圧延し、引き続き 800〜980
℃の温度域から熱間圧延し、その後650 〜740 ℃の温度
域に加熱して5時間以上保持することを特徴とする被削
性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特性
に優れる機械構造用鋼の製造方法。 a群…Ni:0.1 〜3.0 wt%、Cu:0.1 〜3.0 wt%、Co:
0.1 〜3.0 wt%のうちの1種または2種以上 b群…Mo:0.1 〜1.0 wt% c群…V:0.05〜0.5 wt%、Nb:0.005 〜0.05wt%のう
ちの1種または2種 d群…Ti:0.005 〜0.05wt%、Zr:0.005 〜0.2 wt%の
うちの1種または2種 e群…REM :0.0005〜0.2 wt%
【0009】
【作用】発明者らは、前述した問題を解決すべく、被削
性、冷間鍛造性および疲労強度特性の全てがともに優れ
る鋼を、工業的に安定して製造するための方法について
検討し、以下の知見を得るにいたった。鋼中に球状セメ
ンタイトやMnS のような介在物が存在すると、鍛造時に
これら介在物と母相との界面から発生したボイドが連結
拡大して早期に破壊にいたることから、冷間鍛造性は低
下する。これに対し、鋼中のCを黒鉛化すると、黒鉛が
極めて軟質であるために、冷間鍛造時の母相の変形に追
従し、黒鉛−母相からのボイドの発生が抑制されて、破
壊にいたるまでの歪み量が大きくなり、冷間鍛造性が向
上する。一方、被削性は、黒鉛が存在すると、切削時に
潤滑剤として働き、工具の温度上昇を抑制する作用によ
り向上する。これらの現象を通じ、鋼中Cの黒鉛化によ
り、冷間鍛造性と被削性という相矛盾する特性を同時に
満足させることが可能となる。
【0010】発明者らは、また被削性および冷間鍛造性
に及ぼす黒鉛粒のサイズの影響についても検討した。そ
の結果、黒鉛粒を微細化すれば、被削性および冷間鍛造
性をともに一層向上させることができることが判った。
このことによって、上記の両特性が向上する機構につい
ては、明確ではないがおよそ以下のような理由によるも
のと考えられる。まず、被削性に関しては、鋼中に黒鉛
が存在すると切削時のせん断領域において大きな歪みが
作用するために、黒鉛と母相界面からボイドが発生し、
これが連結して切屑を生成させるわけであるが、同一C
量の場合には黒鉛の体積率は一定であるから、黒鉛が微
細なほどボイドの連結が容易に進行し、被削性が向上す
る。一方、冷間鍛造性については、黒鉛粒径が微細にな
ると、黒鉛−母相界面にボイドの発生する限界歪み量が
増大することにより、冷間鍛造性を向上させるものと考
えられる。
【0011】さらに、疲労強度特性に及ぼす黒鉛の影響
については、以下のような結論を得るに至った。すなわ
ち、疲労強度は、一般に、鋼材の硬さの向上とともに向
上するが、一方で、鋼材中に含有される非金属介在物の
サイズにも影響されることが知られている。まず、前者
については、機械部品として必要とされる疲労強度を確
保するために、2次加工において焼入れ焼もどし処理が
行われるが、この場合、黒鉛粒の溶解挙動は、黒鉛のサ
イズに強く依存する。これは、黒鉛の溶解が、黒鉛が消
失した場所へのFeの自己拡散に律速されるからである。
したがって、黒鉛粒が粗大な場合には、短時間の加熱で
は黒鉛が十分に固溶せず、焼入れ・焼き戻し後の硬さが
低下するために疲労強度が低下する。また、黒鉛は非金
属介在物の一種であるから、黒鉛が粗大なために未溶解
の黒鉛が存在した場合には、この部分が疲労破壊の起点
として作用し、全体の硬さから予測されるよりもさらに
疲労強度を低下させる。この傾向は、高強度の場合ほど
顕著である。このことから、黒鉛鋼の焼入れ焼もどし後
の疲労強度を高めるためには、黒鉛の微細化が二重の意
味で有効である。本発明者らによる検討では、この疲労
強度に影響する臨界的な黒鉛のサイズは約20μm であ
り、これよりも大きい場合には、黒鉛の溶解は短時間で
は進行せず、また疲労破壊の起点となり、これら両者の
作用により疲労強度は低下する。
【0012】以上説明したように、機械構造用鋼の被削
性, 冷間鍛造性および焼き入れ焼き戻し後の疲労強度特
性を向上させるためには、黒鉛粒のサイズをより微細に
することが有利であることが判った。そこで、発明者ら
は、このような要請を具体的に実現するための化学組成
および製造方法について、さらに検討を加えた。以下
に、その検討結果の要点について述べる。
【0013】黒鉛粒を微細に分散させるためには、鋼中
に黒鉛結晶化の核形成サイトとなる析出物を多数生成さ
せることが必要である。このような析出物について詳細
に検討した結果、BN, AlN, TiN, ZrN, Nb(C,N), V(C,
N), (La, Ce)S 等が効果的であることがわかった。その
中でも、BNは黒鉛の結晶化のためのサイトとして最も有
効に作用し、AlN もまた黒鉛結晶化の核として有効に作
用する。そして、このBNとAlN とを複合化した場合に
は、より一層その作用効果が高まることを見いだした。
【0014】さて、上記AlNおよびBNの黒鉛微細化作
用を充分に発揮させるには、単にAlおよびBを上述した
成分範囲内において添加するだけでは不十分であり、あ
る特定の熱延条件および焼鈍条件を組み合わせなければ
ならない。すなわち、第一の重要な条件は、熱間圧延時
の加熱段階で、BN, AlN を完全に固溶させておくことで
ある。それは、鋼中の析出物が完全に固溶できない温度
域では、これらが粗大化してその数が減少し、その結
果、黒鉛化後の黒鉛粒径が粗大かつその個数も著しく減
少するためである。これに対し、BNおよびAlN を完全固
溶できる温度域まで昇温した後に熱間圧延を行うと、熱
間圧延後の冷却過程でBNが、黒鉛化焼鈍時の昇温過程に
於いてAlN が、微細に析出することを可能にする。
【0015】しかし、ここで、一旦固溶したBNおよびAl
N のうち、BNは熱間圧延後の冷却過程において極めて迅
速に析出するが、AlN については、Alの拡散速度が遅い
ので、AlN は熱間圧延の冷却過程ではほとんど析出せ
ず、固溶Alとして存在する。したがって、このままの状
態では、AlNを黒鉛核生成サイトとして有効に活用でき
ない。そこで、第二の重要な条件は、AlN の析出を促進
するための処理、すなわち上記熱間圧延(1回目の熱間
圧延)の後、800 〜980 ℃の温度域に加熱後、または80
0 〜980 ℃の温度域から2回目の熱間圧延を行うことで
ある。
【0016】すなわち、上述したように、1回目の熱間
圧延のままの状態では、鋼中に添加されたAlは、AlN と
して析出せずその殆どが固溶している。この状態から比
較的低温のγ域に加熱(または保持)すると、固溶Alの
一部がAlNとして微細に析出する。この析出温度は、比
較的低温であるため、AlN の成長速度が極めて遅く、析
出したAlNは微細なまま維持される。また、この微細な
AlNの存在により、2回目圧延時のγ粒の成長が抑制さ
れる。一方、1回目の熱間圧延時に析出したBNは、2回
目圧延時のγ域への加熱(またはγ域での保持)により
その一部はγ相中に固溶するものの、比較的低温である
ため、未固溶のままBNとして存在しているものが多
く、その成長も遅いので微細な分布を維持することが可
能となる。ただし、AlN による効果を用いなくとも、2
回目の圧延温度は十分に低く、圧延後のγ粒径の粗大化
の速度は低い。そのため、1回目圧延に引き続いて2回
目圧延をする場合でも、必ずしも2回目圧延開始温度で
一旦保持する必要はなく、1回目圧延の完了後、所定の
温度まで低下し次第、2回目圧延を開始することも可能
である。このような比較的低温における熱間圧延によ
り、2回目圧延後の母相組織も微細なフェライト−パー
ライト組織となり、フェライト−フェライト間或いはフ
ェライト−セメンタイト間の粒界が増加する。これらの
粒界はフェライト粒内よりCの拡散に有利であるので、
粒界の増加は、黒鉛の形成を促進させる作用ももたら
す。
【0017】このような理由により、1回目の熱間圧延
の後、2回目の熱間圧延を行うことにより、微細なBN
とAlNとを併存させることが可能となり、同時に微細な
フェライト−パ−ライト組織の生成によって、微細な黒
鉛を一様に分布させることが可能となり、しかも黒鉛化
のための所要熱処理時間の短縮が可能となる。
【0018】次に、本発明において、鋼の成分組成につ
いて説明する。 C : 0.1〜1.5 wt% Cは、黒鉛相を形成するために必須の成分である。0.1
wt%未満では被削性を確保する上で必要な黒鉛相を確保
することが困難になるので、0.1 wt%以上の添加を必要
とするが、1.5 wt%を超えて添加すると熱間圧延時の変
形抵抗が上昇するとともに、変形能が低下し、熱間圧延
材の割れ、きずの発生が増大するので、0.1 〜1.5 wt%
の範囲に限定した。なお、好ましい含有量は0.2 〜0.8
wt%である。
【0019】Si :0.5 〜2.0 wt% Siは、鋼中のセメンタイト中に固溶せず、このセメンタ
イトを不安定にして黒鉛化を促進させる元素である。そ
の含有量が0.5 wt%未満ではその効果に乏しく、一方、
2.0wt%を超えて添加しても黒鉛化促進の効果が飽和に
達するだけでなく、液相の発生する温度域が低下し、熱
間圧延時の適正温度域が狭まるので、0.5 〜2.0 wt%の
範囲に限定した。なお、好ましい含有量は1.0 〜1.9 wt
%である。
【0020】Mn : 0.1〜2.0 wt% Mnは、鋼の脱酸に有効であるばかりでなく、焼入れ性を
高めて鋼の強度を確保する上で有用な元素であるが、一
方でセメンタイト中に固溶して黒鉛化を阻害する。0.1
wt%未満の添加では、脱酸に効果がなく、かつ強度の向
上に対する寄与も少ないので、少なくとも0.1 wt%以上
の添加が必要である。しかし、2.0 wt%を超えて添加す
ると黒鉛化を阻害するので、0.1 〜2.0 wt%の範囲に限
定した。なお、好ましい含有量は0.2 〜0.8 wt%であ
る。
【0021】B: 0.0003〜0.0150wt% Bは、鋼中のNと結合してBNを形成し、これが黒鉛の核
形成サイトとして作用することにより黒鉛化を促進する
とともに、黒鉛粒を微細化する作用がある。また、鋼の
焼入れ性を高めて焼入後の強度を確保する上でも有用な
元素であるので、本発明においては重要な成分である。
0.0003wt%未満の添加では、黒鉛化および焼入れ性向上
への効果が小さく、0.0003wt%以上の添加を必須とする
が、0.0150wt%を超えて添加するとBがセメンタイト中
に固溶してセメンタイトを安定化することにより、逆に
黒鉛化を阻害することになるので、0.0003〜0.0150wt%
の範囲に限定した。なお、好ましい含有量は0.0005〜0.
0035wt%である。
【0022】Al : 0.005〜0.1 wt% Alは、鋼中のNと反応してAlN となり、これが黒鉛の核
形成サイトとして作用することにより、黒鉛化を促進す
る元素である。0.005 wt%未満の添加では、その作用が
小さく、少なくとも0.005 wt%以上の添加を必要とす
る。一方、0.1 wt%を超えて添加すると、鋳造工程にお
いてAl系酸化物が多数生成する。この酸化物は、単独で
も疲労破壊の起点となるばかりでなく、この酸化物を核
として著しく粗大な黒鉛粒が形成される。また、Al系酸
化物は硬質なため、切削時に工具を摩耗させることによ
り被削性を低下させる。このような理由により、Alの添
加量は0.005 〜0.1 wt%の範囲に限定した。なお、好ま
しい含有量は0.01〜0.05wt%である。
【0023】O:0.0030wt%以下 Oは、酸化物系非金属介在物を形成し、冷間鍛造性、被
削性および疲労強度をともに低下させるので極力低減す
べきであるが、上限は0.0030wt%まで許容される。な
お、好ましい含有量は0.0018wt%以下である。
【0024】P:0.020 wt%以下 Pは、黒鉛化を阻害するとともに、フェライト層を脆化
させることにより冷間鍛造性を劣化させる元素である。
また、焼入れ焼もどし時に粒界に偏析し粒界強度を低下
させることにより、疲労亀裂の伝搬に対する抵抗を低下
させ、疲労強度を低下させる。したがって、極力低減す
べきであるが、上限は0.020 wt%まで許容される。な
お、好ましい含有量は0.010 wt%以下である。
【0025】S:0.035 wt%以下 Sは、鋼中でMnS を形成し、これが冷間鍛造時の割れ発
生の起点となり冷間鍛造性を劣化させる。また、MnS は
それ自身が疲労破壊の起点となることとともに、黒鉛の
結晶化の核として作用することにより粗大な黒鉛を形成
し、これが疲労強度を低下させる作用があるので極力低
減すべきであるが、上限は0.035wt %まで許容される。
なお、好ましい含有量は0.010 wt%以下である。
【0026】N:0.0015〜0.0150wt% Nは、Bと化合してBNを形成し、このBNが黒鉛結晶化の
核となることにより、著しく黒鉛粒を細粒化するととも
に黒鉛化を促進するので必須の元素である。0.0015wt%
未満の添加ではBNが十分に形成されず、一方、0.0150wt
%を超えて添加すると連続鋳造時に鋳片の割れを促進す
るので、0.0015〜0.0150wt%の範囲に限定した。なお、
好ましい含有量は0.0015〜0.0050wt%である。
【0027】本発明においては、必要に応じさらに上記
の主要成分に加えて下記;Ni, Cu,Co, Mo, V, Nb, Zr,
TiおよびREM のうちから選ばれた1種または2種以上
の成分を含有させることにより、上掲の各主要成分のも
つ作用効果を助成することにあわせて、他の諸特性の付
与、改善を図ることが可能である。以下に、これら添加
成分についての組成限定の理由を述べる。
【0028】Ni,Cu,Co:各0.1 〜3.0 wt% これらの元素は、いずれも黒鉛化を促進し、焼入れ性を
向上させる作用を有する元素である。このため、黒鉛化
を阻害せずに焼入れ性を向上させることができる。この
添加量としては、いずれも0.1 wt%未満では、その添加
効果が小さく、一方、3.0 wt%を超えて添加してもその
効果は飽和するので、0.1 〜3.0 wt%の範囲に限定し
た。なお、好ましい含有量は0.5 〜2.5 wt%である。
【0029】Mo : 0.1〜1.0 wt% Moは、焼入れ性を高めると同時にMn, Crなどに比較する
とセメンタイトへの分配が小さいという特徴がある。こ
のために、黒鉛化を阻害することなく鋼材の焼入れ性を
高めることができる。また、Moを添加した鋼材は、焼も
どし軟化抵抗が大きいために、同じ焼もどし温度での硬
さを向上させることができ、それ故に疲労強度を向上さ
せる。また、焼入れ性が高いために熱間圧延ままの状態
においては、微細な黒鉛を形成するベイナイト組織とす
ることが容易であり、この結果、焼入れ時の黒鉛の溶解
を短時間に完了させることができる。このために、疲労
強度特性を一層向上させる必要があるときに用いるが、
0.1 wt%未満の添加ではその添加効果が小さく、一方
1.0wt%を超えて添加すると黒鉛化を阻害し、冷間鍛造
性および被削性を低下させるので、0.1 〜1.0 wt%の範
囲内に限定した。なお、好ましい含有量は0.1 〜0.3 wt
%である。
【0030】V : 0.05 〜0.5 wt%/Nb : 0.005〜0.05
wt% V,Nbはともに炭化物形成元素であるが、セメンタイト
中にはほとんど固溶しないので、黒鉛化をさほど阻害し
ない。また、炭・窒化物を形成し、この析出強化作用に
より強度を上昇させる。ともに焼入れ性を向上させる元
素でもあるので疲労強度を向上させる必要のある場合に
用いて好適である。Vの場合には、0.05wt%未満の添加
ではこれらの効果は小さく、一方、0.5 wt%を超えて添
加しても効果が飽和するので、0.05〜0.5 wt%の範囲内
の添加とした。他方、Nbの場合には0.005 wt%未満の添
加では、上述の効果が小さく、0.05wt%を超えて添加し
ても効果が飽和するので、0.005 〜0.05wt%の範囲内の
添加とした。なお、それぞれ好ましい含有量は0.05〜0.
3 wt%および0.01〜0.04wt%である。
【0031】Zr : 0.005〜0.2 wt%、Ti : 0.005〜0.05
wt% ZrおよびTiは、ともに炭・窒化物を形成し、これらが黒
鉛の結晶化の核として作用することにより、黒鉛粒を微
細化するので、黒鉛粒をさらに微細化する必要のある場
合に用いて好適である。また、炭・窒化物を形成するこ
とにより、焼入れ時にBを焼入れ性に有効に作用させる
ことが可能である。このような作用効果を発揮させるた
めには、Zr, Tiともに0.005 wt%以上の添加が必要であ
る。一方、Zr, Tiをそれぞれ0.2 wt%および0.05wt%を
超えて添加すると、BNを形成するためのNが不足し、そ
の結果、黒鉛粒が粗大化するとともに黒鉛化時間が極め
て長くなるので、それぞれ0.005 〜0.2 wt%および0.00
5 〜0.05wt%の範囲に限定した。なお、それぞれ好まし
い含有量は0.05〜0.2 wt%および0.01〜0.03wt%であ
る。
【0032】REM : 0.0005〜0.2 wt% REM 、中でもとくにLa, Ceは、Sと結合し、(La, Ce)S
を形成し、これが黒鉛化の核となって黒鉛化を促進する
とともに黒鉛粒を微細化する。しかし、その量が0.0005
wt%未満では添加効果が乏しく、一方、0.2 wt%を超え
て添加しても効果が飽和するので、0.0005〜0.2 wt%の
範囲に限定した。なお、好ましい含有量は0.005 〜0.03
wt%である。
【0033】次に、熱間圧延条件および黒鉛化のための
焼鈍条件について説明する。本発明において、熱間圧延
時の鋼材加熱温度をBNおよびAlN の固溶限以上とする。
これは熱間圧延時の加熱温度がこの温度に満たないと黒
鉛結晶化の核となるBNが鋼中に完全に固溶せずに粗大化
し、熱間圧延後の黒鉛化焼鈍時に粗大な黒鉛粒を生成す
る。その結果、上述したように被削性、冷間鍛造性およ
び疲労強度を低下させることになるからである。これに
対して、熱間圧延前の加熱時にBNおよびAlN を完全に固
溶させると、これらは、熱間圧延後の冷却過程、2回目
圧延の加熱保持、黒鉛化焼鈍の加熱時に微細に再析出
し、これらが黒鉛結晶化の核となることにより黒鉛粒が
微細化し、疲労強度、被削性および冷間鍛造性を向上さ
せる。上述したように、BNおよびAlN の完全固溶を達成
するための加熱温度は、下記の溶解度積の計算により算
出することができる。すなわち、 log 〔Al〕・〔N〕=−7400/T+1.95 log 〔B〕・〔N〕=−13970 /T+5.24 ここで〔Al〕,〔N〕,〔B〕は、Al, NおよびBの添
加量、Tは絶対温度である。
【0034】なお、熱間圧延時の仕上圧延温度およびそ
の後の冷却条件については、本発明においては特に規定
しないが、仕上げ圧延温度は、γの再結晶温度以上であ
ることが望ましい。これは、黒鉛結晶化の核となるBNは
γ粒界に形成されるが、再結晶によりγ粒が細粒化され
た場合にはBNの分布がより微細均一化するためである。
また、冷却速度に関しては、この速度が極めて遅い場合
には、析出したBNが粗大化することにより黒鉛が粗大化
し被削性、冷間鍛造性および疲労特性を低下させるの
で、0.01℃/sを下回らない冷却速度であることが望まし
い。
【0035】また、2回目の熱間圧延における加熱(ま
たは加工開始)温度は、800 〜980℃とする必要があ
る。その理由は、800 ℃未満の温度では、完全にγ化し
ないので、一部固溶したBNが極めて不均一に再析出
し、最終的な黒鉛化組織において黒鉛粒の分布に粗密を
生じるとともに、圧延温度の低下による変形抵抗の上昇
を招き圧延そのものが困難になるためである。一方、98
0 ℃を超えると析出したAlNおよび未固溶のBNの成長
速度が増大するとともにγ粒も粗大となり、微細なAlN
およびBNが得られず、微細な黒鉛粒が得られなくなる
からである。なお、2回目の熱間圧延の際の加熱速度が
著しく遅くなると、未固溶のBNが粗大化し、黒鉛化処
理後の黒鉛が粗大化し所期の目的の達成が困難になるの
で、加熱速度は0.01℃/sec を下回らないようにするの
が望ましい。
【0036】次に、焼鈍条件は、650 〜740 ℃の温度域
に加熱昇温したのち5時間以上保持する必要がある。そ
の理由は、650 ℃未満の温度では、黒鉛化の反応が遅く
なり、黒鉛化を完了するまでに必要な時間が極めて長く
なり、一方、740 ℃を超える温度では鋼中にγ相が多量
に発生して黒鉛化が進行しなくなるからである。また、
保持時間を5時間以上としたのは、この時間に満たない
と被削性、冷間鍛造性を満たすに足る黒鉛化が進行しな
いからである。なお、好ましい温度範囲は680〜720 ℃
である。
【0037】
【実施例】以下、実施例に即して本発明を説明する。表
1に示す成分組成の鋼を、転炉−連続鋳造の工程により
溶製し、300 ×400mm のブルームにした。表1におい
て、鋼A〜Lは成分組成が本発明法に適合する鋼であ
り、鋼M〜Pは、B,P,AlおよびSiが本発明法の鋼素
材の範囲外にある比較例である。また、鋼Qは、従来よ
り機械構造用として用いられているJIS 規格のS30C相当
鋼、鋼Rは、S45C相当鋼に快削性向上元素であるS,Ca
およびPbを添加した快削鋼、鋼Sは、Cr−Mo鋼であるSC
M435の例である。なお、S30Cの鋼Qは、冷間鍛造性に優
れるために冷間鍛造鋼として、また、S45C+(S,Ca,Pb)
快削鋼Rは、被削性に優れるために高い被削性の要求さ
れる用途に、さらに、SCM435の鋼Sは、焼入れ性に優
れ、焼入れ焼もどし後の機械的性質および回転曲げ疲労
強度に優れるために、高い疲労強度が要求される機械部
品として用いられているものである。
【0038】
【表1】
【0039】これらの溶製されたブルームを1回目熱間
圧延により150mm 角とした後、2回目熱間圧延により52
mmφの棒鋼に圧延し、さらに、焼鈍炉により黒鉛化焼鈍
処理を行った。なお、1回目熱間圧延に際しては、鋼の
成分組成から計算されるBNおよびAlNの固溶温度を算出
し、これを目安として圧延温度を設定した。2回目熱間
圧延は、1回目熱間圧延のあと一旦室温まで冷却したあ
と所定温度に加熱して行う場合(No. 1、3〜6、8、
9、11、13、14、16、17、23、24、2
6、28〜35、以後「再加熱圧延」と略記する)と、
1回目熱間圧延のあと引き続き所定温度から2回目圧延
を開始する場合(No. 2、10、12、15、19、2
1、22、25、27、以後「連続圧延」と略記する)
とについて行った。また、黒鉛化焼鈍(焼なまし)は、
鋼中のCがほぼ完全に黒鉛化するまで実施した。各鋼に
おけるBN,AlNそれぞれの固溶温度、圧延方法(再加
熱圧延/連続圧延の別)、1回目および2回目の各圧延
条件、焼鈍条件を表2まとめて示す。なお再加熱圧延の
際の、1回目圧延完了後の冷却速度は0.02〜0.20℃/se
c 、2回目圧延に際しての加熱速度は、0.03〜0.20℃/
sec の範囲でそれぞれ行った。また、200時間以上焼
鈍しても黒鉛化が十分進行しなかった材料については、
その時点で黒鉛化処理を中止した。表2中の保持時間の
欄の**の記号は、黒鉛化処理を中断したことを示してい
る。
【0040】
【表2】
【0041】なお、黒鉛粒径は、焼鈍後の材料より光学
顕微鏡用サンプルを作成し、画像解析装置により1000〜
2000個以上の黒鉛粒の直径を測定し、その平均径を用い
た。焼なましままの硬さは、ビッカース硬度計を用いて
測定した。冷間鍛造性は、焼鈍後の素材より15mmφ×2
2.5mml の円柱状試験片を作製し、300tプレスを用いて
圧縮試験を行い、試験時の荷重より変形抵抗を算出し
た。ここでは、圧縮率(高さ減少率)を60%に取ったと
きの変形抵抗として示した。また、試験片側面の割れ発
生の有無を確認し、試験した試験片の半数に割れの発生
する圧縮率を限定圧縮率として変形能の指標とした。被
削性試験は、高速度工具鋼SKH4を用い、切削速度80m/mi
n 、無潤滑の条件により外周旋削を行い工具が切削不能
となるまでの時間を工具寿命として評価した。焼入れ焼
もどし後の特性は、素材より15mmφ×85mml の試験を作
製し、900 ℃×30min 加熱後、水溶性焼入れ液中の焼入
れ、その後500 ℃×1h 保持後の水冷の焼もどし処理を
施し、さらに8mmφの引張試験片を作製し、引張試験に
より測定した。回転曲げ疲労試験は、上記と同様な焼入
れ焼もどし処理を行った後、8mmφの試験片を作製し小
野式回転曲げ疲労試験機を用い、常温に於いて3600rpm
の速度で実施した。これらの試験結果を、表3に合わせ
て示す。
【0042】
【表3】
【0043】なお、従来鋼は、黒鉛化することができな
かったため、一般の加工工程に即して実施し、鋼Q(S3
0C相当鋼)および鋼R(SCM435相当鋼)については、74
5 ℃×15h 保持後徐冷の球状化焼なまし処理を行った後
に、上記各試験を実施した。また、S45C−S−Ca−Pb鋼
については、被削性のみ圧延ままで,その他の試験は74
5 ℃×15h 保持、徐冷した球状化焼なまし処理を行った
後実施した。表3中の黒鉛化後硬さの欄において、No.3
3 (鋼Q)および No.35(鋼S)については球状化焼き
なまし後の硬さを、No.33 (鋼R)については圧延まま
の硬さをそれぞれ示した。
【0044】表2、表3に示すように、鋼種ごとに若干
異なるものの、本発明法に従って製造した場合には、短
時間で黒鉛化が終了した。これに対し、熱間圧延条件が
本発明範囲外にある場合(例えばNo.7、No.8) は、本発
明例(例えばNo.4、No.5) に比較して焼鈍時間が長くか
かった。また、B量が本発明範囲外にある鋼Mは、鋼B
に比較して黒鉛化時間は約10倍以上長くかかってい
る。P,Alがそれぞれ本発明範囲外にある鋼N,Oも、
鋼Bに比較して黒鉛化時間は3〜4倍長くかかってい
る。また、Siが本発明範囲外にある鋼Pは、黒鉛化が不
可能であった。
【0045】表中の黒鉛化組織の欄に示すように、黒鉛
粒径(サイズ)は本発明法を採用した場合は、いずれも
15μm 未満であるのに対し、本発明の範囲外である場合
には、黒鉛粒径は最大約55μm までに著しく粗大になっ
ている。また、硬さおよび冷間鍛造時の変形抵抗には、
黒鉛粒径の影響は認められないが、冷間鍛造時の限界圧
縮率および被削性(外周旋削時の工具寿命)は黒鉛粒径
が粗大になると低下している。また、成分組成あるいは
製造条件が本発明の範囲外であり黒鉛粒が粗大な場合に
は、焼入れ焼もどし後の機械的性質はいずれも低下して
いる。これは、黒鉛の溶解が遅く焼入れ性が低下する結
果、YSおよびTSを低下させ、一方で残留黒鉛がELおよび
RAを低下させることによる。
【0046】次に、冷間鍛造性、被削性および疲労強度
特性についてみる。本発明例と従来例とを比較すると、
冷間鍛造時の変形抵抗および限界圧縮率は冷間鍛造鋼S3
0C鋼よりも優れている。また、被削性についてもS45C−
Pb−Ca−S快削鋼よりも優れている。また、疲労強度も
SCM435に比較して本発明法の方が優れている。なお、熱
間圧延条件および焼鈍条件が本発明を満足せず、成分組
成のみが本発明を満足する場合も、一部の条件では冷間
鍛造性および被削性について、従来鋼と同等以上の特性
が得られているので、これらの特性のみが必要な場合に
は、熱間圧延および焼鈍条件は必ずしも本発明の範囲内
である必要はない。一方、疲労強度は、本発明法を適用
した場合には、硬さの約1.5 〜1.7 倍の疲労強度が得ら
れており、硬さと相関関係が認められるが、本発明の範
囲外およびS45C−Pb−Ca−S鋼の場合には、硬さに見合
って疲労強度が上昇していない。これは、本発明の範囲
外の場合には黒鉛粒が大きいために未固溶の黒鉛が、S4
5C−Pb−Ca−S快削鋼の場合には被削性を向上させる粗
大な非金属介在物がそれぞれ存在し、これらが疲労破壊
の起点として作用することに起因している。なお、本発
明では特にCaを添加する必要がないが、疲労強度が要求
されない場合には、Caの添加は黒鉛化の促進および被削
性の改善に対して有効である。
【0047】
【発明の効果】以上説明したように本発明によれば、黒
鉛化のための焼き入れ処理を施さなくても黒鉛化を短時
間で実現することができると共に、得られる黒鉛粒も著
しく微細化できる。その結果、Pbを用いるまでもなく従
来のPb快削鋼と同程度以上の被削性を有し、かつ冷間鍛
造性および焼入れ焼もどし後の機械的性質ならびに疲労
強度にも優れた鋼材を提供することが可能となり、機械
部品の製造に資するところが極めて大である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 天野 虔一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 平7−97659(JP,A) 特開 昭61−15918(JP,A) 特開 昭59−197523(JP,A) 特開 昭58−52424(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/00 - 8/10 C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、 P≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%を含有し、残部がFeと不可避的
    不純物からなる成分組成の鋼片を、BNおよびAlNの固溶
    限以上の温度に加熱して熱間圧延し、室温まで冷却後、
    800〜980 ℃の温度域に加熱して熱間圧延し、その後65
    0 〜740 ℃の温度域に加熱して5時間以上保持すること
    を特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き
    戻し後の疲労特性に優れる機械構造用鋼の製造方法。
  2. 【請求項2】 C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、 P≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 を含み、かつ下記a群〜e群の少なくとも1群から選ん
    だ1種または2種以上を含有し、残部がFeと不可避的不
    純物からなる成分組成の鋼片を、BNおよびAlN の固溶限
    以上の温度に加熱して熱間圧延し、室温まで冷却後、 8
    00〜980 ℃の温度域に加熱して熱間圧延し、その後650
    〜740 ℃の温度域に加熱して5時間以上保持することを
    特徴とする被削性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻
    し後の疲労特性に優れる機械構造用鋼の製造方法。 a群…Ni:0.1 〜3.0 wt%、Cu:0.1 〜3.0 wt%、Co:
    0.1 〜3.0 wt%のうちの1種または2種以上 b群…Mo:0.1 〜1.0 wt% c群…V:0.05〜0.5 wt%、Nb:0.005 〜0.05wt%のう
    ちの1種または2種 d群…Ti:0.005 〜0.05wt%、Zr:0.005 〜0.2 wt%の
    うちの1種または2種 e群…REM :0.0005〜0.2 wt%
  3. 【請求項3】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、 P≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%を含有し、残部がFeと不可避的
    不純物からなる成分組成の鋼片を、BNおよびAlNの固溶
    限以上の温度に加熱して熱間圧延し、引き続き 800〜98
    0 ℃の温度域から熱間圧延し、その後650 〜740 ℃の温
    度域に加熱して5時間以上保持することを特徴とする被
    削性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特
    性に優れる機械構造用鋼の製造方法。
  4. 【請求項4】 C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0 wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 B:0.0003〜0.0150wt%、 Al:0.005 〜0.1 wt%、 O≦0.0030wt%、 P≦0.020 wt%、 S≦0.035 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 を含み、かつ下記a群〜e群の少なくとも1群から選ん
    だ1種または2種以上を含有し、残部がFeと不可避的不
    純物からなる成分組成の鋼片を、BNおよびAlN の固溶限
    以上の温度に加熱して熱間圧延し、引き続き 800〜980
    ℃の温度域から熱間圧延し、その後650 〜740 ℃の温度
    域に加熱して5時間以上保持することを特徴とする被削
    性、冷間鍛造性および焼き入れ・焼き戻し後の疲労特性
    に優れる機械構造用鋼の製造方法。 a群…Ni:0.1 〜3.0 wt%、Cu:0.1 〜3.0 wt%、Co:
    0.1 〜3.0 wt%のうちの1種または2種以上 b群…Mo:0.1 〜1.0 wt% c群…V:0.05〜0.5 wt%、Nb:0.005 〜0.05wt%のう
    ちの1種または2種 d群…Ti:0.005 〜0.05wt%、Zr:0.005 〜0.2 wt%の
    うちの1種または2種 e群…REM :0.0005〜0.2 wt%
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